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色とりどり、民と騎士と祭りと

「そこの君たち!暇だったら手伝ってくれよ!」
街は活気あふれる人々で賑わっていた。見たところ何か催し物の準備をしているようだ。そんな街中を歩いていた君たちは『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)に引き留められる。
「辺りを見ての通り、この街は明日お祭りがあるのさ。木霊祭って言うんだけど……」
神暦以前に信じられ祈られてきた森の神に、今年も豊かな自然の恵みをくださいますようにという願いを込めて行われていた祭りが、名残だけ残って現在も続いているらしい。当日は祈祷師と街長が街の外にある森の神木、その社で儀式を行う。そして街の人々はこの日のために何日も前から屋台やイベントの企画をし、準備をしてきたのだそうだ。そしてそれを明日に控えた本日、準備もまた一層熱気が高まりつつある。のだが……
「活気づいてるのは大変喜ばしいんだが、テンション上がっても人手が増えるわけじゃないからな……。俺も手伝ってやりたいが、あいにく今から所用でな。つまり、君たちに準備を手伝ってほしいってわけさ。ついでに明日の祭りで遊んだって、いいんだぜ?」
敵国との小競り合いが絶えないこんな情勢でも、そこに生きる人々はこうして日々を過ごしているのだ。日々戦いに明け暮れる自由騎士たちもまた国民。時には民に雑じって祭りという非日常な日常に溶け込み、心の疲労を癒すのも良いかもしれない。君たちは祭りの準備を手伝おうと人々の中へ入り混じっていく。
街は活気あふれる人々で賑わっていた。見たところ何か催し物の準備をしているようだ。そんな街中を歩いていた君たちは『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)に引き留められる。
「辺りを見ての通り、この街は明日お祭りがあるのさ。木霊祭って言うんだけど……」
神暦以前に信じられ祈られてきた森の神に、今年も豊かな自然の恵みをくださいますようにという願いを込めて行われていた祭りが、名残だけ残って現在も続いているらしい。当日は祈祷師と街長が街の外にある森の神木、その社で儀式を行う。そして街の人々はこの日のために何日も前から屋台やイベントの企画をし、準備をしてきたのだそうだ。そしてそれを明日に控えた本日、準備もまた一層熱気が高まりつつある。のだが……
「活気づいてるのは大変喜ばしいんだが、テンション上がっても人手が増えるわけじゃないからな……。俺も手伝ってやりたいが、あいにく今から所用でな。つまり、君たちに準備を手伝ってほしいってわけさ。ついでに明日の祭りで遊んだって、いいんだぜ?」
敵国との小競り合いが絶えないこんな情勢でも、そこに生きる人々はこうして日々を過ごしているのだ。日々戦いに明け暮れる自由騎士たちもまた国民。時には民に雑じって祭りという非日常な日常に溶け込み、心の疲労を癒すのも良いかもしれない。君たちは祭りの準備を手伝おうと人々の中へ入り混じっていく。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.祭りを手伝う・そして楽しむ!
日常回が書きたかったんじゃ。どうもリクヲです。
早速依頼の説明に行きましょう。
【日付】祭りの前日と当日
【やる事】
前日は準備を手伝ってあげてください。屋台の準備や組み立てみたいな力仕事などなど。準備を頑張ってる街の人たちに差し入れをしてあげてもいいかもしれません。
当日は屋台(食材、料理、酒、薬草、雑貨など、色んなお店があるでしょう)を楽しむ・飛び入りで屋台を出す・企画ステージで芸大会に参加などなど
以上に挙げなかったことでも祭りっぽいことならオールオッケーです。街の人たちと関わって、楽しんじゃってください。
一応起きそうなトラブル、仕事も挙げときます(やる事が思いつかなかったり、他にも何かやりたい!と思ったらどうぞ。無理にやらなくても良いです)
・迷子の男の子を発見、喋ったりしながら親探し
・社がある森まで祈祷師と街長を護衛。祭りや森のことなどを話しながら森の奥の神木のところまで付いていく
【プレイングについて】
前日と当日、何をするか、何を思うか、書いてくださいませ。特定の参加者と行動する場合はプレイングに書いてください。また、祭り・日々の戦闘からのひと時の休息・楽しむ国民・自然、などなどに対する心情も自由に書いてくださると嬉しいです。
皆様のアイデア溢れるプレイングをお待ちしております~~
早速依頼の説明に行きましょう。
【日付】祭りの前日と当日
【やる事】
前日は準備を手伝ってあげてください。屋台の準備や組み立てみたいな力仕事などなど。準備を頑張ってる街の人たちに差し入れをしてあげてもいいかもしれません。
当日は屋台(食材、料理、酒、薬草、雑貨など、色んなお店があるでしょう)を楽しむ・飛び入りで屋台を出す・企画ステージで芸大会に参加などなど
以上に挙げなかったことでも祭りっぽいことならオールオッケーです。街の人たちと関わって、楽しんじゃってください。
一応起きそうなトラブル、仕事も挙げときます(やる事が思いつかなかったり、他にも何かやりたい!と思ったらどうぞ。無理にやらなくても良いです)
・迷子の男の子を発見、喋ったりしながら親探し
・社がある森まで祈祷師と街長を護衛。祭りや森のことなどを話しながら森の奥の神木のところまで付いていく
【プレイングについて】
前日と当日、何をするか、何を思うか、書いてくださいませ。特定の参加者と行動する場合はプレイングに書いてください。また、祭り・日々の戦闘からのひと時の休息・楽しむ国民・自然、などなどに対する心情も自由に書いてくださると嬉しいです。
皆様のアイデア溢れるプレイングをお待ちしております~~
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
1個
1個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
7/10
7/10
公開日
2020年06月11日
2020年06月11日
†メイン参加者 7人†

●祭り前日だよ
「明日は人間達のお祭りだってな。ちょっと騒がしくするが、勘弁してくれよ」
祭りの準備の手伝いを引き受けた後、森の社へと向かっていった『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は、道すがらの木々に〈自然共感〉で話しかけていく。
「以前に来た時も思ったが、この森は良い森だな。神木を敬う街の人間達とうまく共存できているのだろうな」
「オルパさんは、以前にもこの森に来たことがあるのですか?」
手伝いを引き受けはしたものの、人の多い所は苦手だから……とオルパと共に森へ入ったサーナ・フィレネ(CL3000681)は森の木々と会話するオルパの言葉に反応する。
「ああ。この前依頼でな。ちょっと事情があって木々がトレント化してたんだが、元気いっぱいの良い木々だったぜ」
「そうだったのですね。……この森の木々は、豊かな大地の恵みを与えられてるみたいですね。私にも、分かります」
オルパと同じく自然の声を聴くことができるサーナにも、この森の豊かさはありありと感じられた。神木を敬う街の人々と共存する木々の道を、二人のヨウセイは進む。
森を進む二人は開けた空間へと出る。その中心には神木。傍らには社。そして明日の儀式の準備をする人々がちらほらと見える。神木を初めて見るサーナは、その圧倒的な佇まいに感嘆の声を上げる。
「わあ……すごい、ですね。本当に……街の人々が神と讃えてきたのも分かります」
「そうだろ?本当に良い木だ……よぉ、ひさしぶり!って程でもないか。最近、調子はどうだ?悪くないか?……明日はよろしく頼むぜ。万一イブリースが出ても、俺がいるから安心しておけよ」
そう言いながらスタスタと神木に近付いて再会の挨拶を交わすオルパ。神木とオルパのフランクなやり取りを微笑ましく思いつつも、サーナは社の人々に手伝いを申し出る。
「あの、何か手伝えることはないでしょうか?」
サーナの声を聞いたオルパは「じゃ、また後でな」と神木との会話を切り上げ、社の方へ向かってくる。
「俺たち、人手不足だって聞いて社の準備を手伝いに来たんだ。何か手伝えることはないか?」
二人から最も手前に居た男はサーナとオルパの言葉に振り返り、「人手が増えて助かった」とでも書いてあるかのような表情を見せる。男は頭一つ以上身長の離れた二人を見定め、それぞれに役割を振ってくる。
「おお!助かるよ。じゃあ君は周りの木々をつたって、この開けた場所を注連縄で囲んでほしい。小さい君は社周りの掃除と、斎竹を立てて注連縄を張るのを手伝ってくれ」
「了解だ。木々を飛び移るのは得意だぜ!」
「分かりました。あの、よかったら当日の護衛も手伝わせてもらいたいのですが」
「本当かい!何も起きないと思うけど、森では何が出るか分からないからねぇ。是非お願いしたい。設営が終わったら、護衛の段取りの話をしよう」
明日の護衛も引き受けたサーナとオルパはそれぞれに任された手伝いに取り掛かる。
●時はちょっと遡って街の方
「ソウクマデス曰く『戦いが常であるのなら 祭りとは非日常である』」
「……なんだって?」
「いや、お祭りって良いよなーって思ってな」
祭りの前の忙しなさかな。そう形容したくなるほどに準備で賑わう街中で、荷物を運びながら言葉を交わす『エレガントベア』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)とルエ・アイドクレース(CL3000673)。普段は戦いの渦中に身を投じる自由騎士も、こう市民に混ざってしまえば祭りの準備に勤しむ一市民だ。
「わかるわかる!いいよな~祭り!」
ウェルスとルエの背後から、同じく荷物運びを手伝っていた『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)が話しかけてくる。こんな情勢下だからこそ日常のささやかな楽しみって大事だよね、というリュエルなりの思いもあるみたいだが、彼にはそれを言葉にするための語彙力は無い。
三人で荷物を運び一段落したところで、ルエは別の手伝いに向かおうとする。
「じゃあ俺はステージの設営を手伝ってくる」
「オレも行く!明日のステージの流れとか聞いときたいし。あんたも出るんだろ?楽しみだな~」
誰にでも友好的なリュエルは明日の同じステージ参加者のルエに興味があるらしい。ルエに色々と話題を振りながら二人はステージの設営をしている方へと向かっていく。
「……さて、俺はまだまだ荷物運びをするか。ついでにこいつらの試験運用もしてみるか」
一人取り残されたウェルスは技師部隊に簡単な屋台の組み立てと機械の修理を指示する。練習も無しに戦場でいきなり連携というのは不明な点も多くリスクが大きい。だからこの機会に問題点を洗い出しておこうというわけだ。例え祭りの準備を手伝っていても、戦場のことは考えなければならない。真に戦場から逃れられるのは、果たしていつになるのやら。
「……はい、これでおっけー。あんま無理しないようにね」
ここは屋台村を設営している端の即席休憩所。……といっても日差しを遮るためのテントと、その下に簡易組み立ての椅子がいくつか並んでいるだけなのだが。リィ・エーベルト(CL3000628)は設営の途中で軽いケガをしてしまった住民に手当を施しながら、給水所を運営していた。力仕事は苦手だ―というかめんどくさい―し、治癒魔法も使えるし、適材適所だろう。日陰だし。本来は戦闘用魔法の〈アイスコフィン〉で氷を生成し、疲労回復効果のあるハーブを使ったお茶を冷やして置いておく。ものは使い様だ。何より氷の近くは涼しいし。
「よし、できた!」
リィの近くでカセットコンロを借りてきて鍋にお湯を沸かしたり、〈アイスコフィン〉の氷を少し貰ったりしていた『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)が元気よく立ち上がる。
「カノン、さっきから何作ってたの……?」
「差し入れ!旬の枇杷を使った寒天寄せだよ!リィさんも食べる?」
「……ん、冷たいくておいしい。いいんじゃない?」
「よかった!冷たく冷やした方が皆喜んでくれるかな?って思って!忙しくてここまで休憩しに来れない人にもあげに行ってくる!」
そういうなりカノンはとたたーっと設営途中の屋台村の方へと駆けて行った。
「……元気だなぁ。ボクは……まぁいいや、ここにいよ」
めんどくさいし?いやいや、いつ誰が怪我してここに来るか分からないじゃん?まぁみんな、休憩は適宜取るようにね。
騎士達の協力もあって、祭りの準備は前日の内に無事終えられた。あとは当日を迎えるのみ。
●祭りの日になりました
午前10時。街から少し離れた森の社では、祭事に伴う儀式が行われようとしていた。街からここまで特に問題は起きず、護衛を務めたオルパとサーナは祭儀の様子を見物していた。住民の代表である街長が神木の周りをゆっくりと一周し、神木に向かって祈りの言葉を述べた後、社で祈祷師とともに祈りを捧げる。祭儀の準備を手伝っていた住民たちも、街長と祈祷師が祈ると同時に、同様の所作で祈りを捧げる。
「豊かな自然の恵みを願う祭りか。いいね、俺好みだ」
蒸気文明が広がってからというもの、自然破壊という言葉をしばしば見聞きするようになってしまった。もちろん蒸気技術も生活を豊かにしてくれるし嫌いではないのだが、こうして自然と人間が共存している様子を見られるのはやはり嬉しいものがある。ヨウセイという種族としてなのか、それとも人間としてなのか、なんだかほっとする。そんな思いを巡らせるオルパだった。
「……神暦以前ということは、相当長い間人々に祀られてきたのですね。あの、街の近くで祭られて過ごしてきて、どんな思いでしたか……?やはり、自然を想ってくれるのは嬉しい、ですか……?そうですか……ありがとうございます」
儀式が終わった後、人々が街へ戻ったり社で個人的に祈りを捧げたりしている中、サーナは神木と対話をしていた。想像もつかないほど多くの年月を生きたこの木は、人々に思いを込めて祀られてきて一体何を感じてきたのだろうか。それに共感し知ることができるのは、彼女たちヨウセイの特権なのだ。
●街は屋台と人々で賑わう
ステージの芸大会企画に参加登録を済ませたカノンは、出番が来るまでまだ時間があるので屋台村をぶらぶら見て回ることにした。その矢先、広場の隅っこに俯いた男の子……遠くからでも、泣いているように見える。
「どうしたの?」
男の子の元へ走り寄ってそっと話しかける。だがえぐえぐ、と泣いていて話せる状況ではない。こういう時は、まず泣き止ませるべし。ほらほら、と手招きして、があがあ、ぶいっ、とアヒルや子豚の真似をしてみせる。いつしか男の子が泣き止んで見てくれるようになっていたので、もう一度「どうしたの?」と問いかける。
「パパとママ、いなくなっちゃった……」
「そっかぁ。どこでいなくなっちゃった?」
「あそこ……」
少年が指を差す方向には屋台村。う~んこれは中々時間がかかりそうだ。でも勿論、放っておくわけにはいかない。
「分かった。一緒にパパとママを探そう!ほら、手つなご?」
カノンは男の子の手を引いて、情報を得ようと周りの人から順番に声をかけ始める。
男の子の両親は逸れてからそれほど大きく動いてはいなかったため、見つけるのに特別な苦労はしなかった。少女に手を引かれた息子の姿を目にした両親と思しき男女は、安堵の表情を浮かべながらカノンの元へと向かってきた。男の子はパパ!ママ!と叫んでカノンの手から離れ、両親それぞれからお礼を言われる。
「よかったね!もう逸れたらだめだよ?」
「おねーちゃん、ありがとう!!」
両親としっかり手を繋いで、去っていく親子に手を振るカノン。その仲良さげな様子や、探している最中に男の子から聞いたお父さんやお母さんとの温かい話たちは、自ずとかつての自分と両親の姿を思い出させる。もう思い出の中にしかいない人達……いや、と軽く頭を振る。もうすぐステージの時間だ、行こう!と一人気合を入れ直す。
「劇団アマリリス所属のカノンだよ。よろしくね♪」
ステージに上がり笑顔で挨拶をするカノンに先ほどの面影はない。カノンは劇の中で歌った歌を歌う。
どんなに遠くに離れていても 例えもう会えなくても
何時も貴方を見守っている 何時も貴方を思っている
だから涙を拭いて 顔を上げて 前を向いて歩いておくれ
我が愛し子よ 何時でも貴方の幸せを願っている
両親も見守ってくれている、きっと。歌詞にそんな気持ちの籠った歌が人々を立ち止まらせる。
「カノン!すごく良かったぜ!!」
バックステージに戻ってきたカノンに次の出番のリュエルは声をかける。リュエルは目をキラキラと輝かせ、今この場でもう歌い出してしまいそうなほどだ。
「ありがとう。リュエルさんも、盛り上げてきてね!」
「よし任せろ!オレもいくぜー!!」
リュエルの声は既にステージ前の観客にも聞こえていた。ドドドッと勢いよくステージに上がってくる姿が微笑ましい。
「リュエル・ステラ・ギャレイだ!血沸き胸躍る英雄譚、聞いてくれ!!」
ステージの真ん中で殺した勢いを全部声に変換して高らかに名乗る。そしてリュートを奏で、この国の英雄伝説をアクション活劇風にアレンジして謳いあげる。
どんな大義があっても、戦争ってのは人間同士の争いだ。直接戦火が届かなくてもみんなの心はすり減っていく。だから、せめて今だけはめんどくさい事を忘れて楽しんでほしい。
思いを言葉にはできなくても、歌でならあるいは。ズガガガガーン!!ドガガガガーン!!と擬音語を多用した彼の歌は、大きくそして元気いっぱいの声も相まって会場を盛り上げる。彼が歌い終え、盛り上がりが最高潮となっていた会場は少し落ち着きを取り戻す。
「おっと、これで終わりじゃないぜ?楽しい時間はまだまだ続く!祭はまだまだ盛り上がる!みんな!聞いてくれてありがとな!!」
そう言ってバックステージに戻ったリュエルは、次の参加者ルエにバトンタッチする。
「ちょっとクールダウンしよう。でももちろん、来てくれた皆が楽しんでくれる様に」
ステージに立ったルエは即興のラブソングを歌ってみせる。一人の男の、想い人へ送る言葉を詠った切ない歌詞と、それを歌うにふさわしいセクシーな男性アイドルを思わせる歌声が男女問わず会場を魅了する。盛り上がり切った会場を落ち着けつつ、人々は静かに彼の歌声に聞き惚れ、ステージの周りに更に人を惹きつける。
「みんな中々上手いじゃないか……そうだな、俺もハープで一曲披露するか」
神木と森の木々に挨拶をしながら街へと戻ってきたオルパは、遠くのステージから響く仲間達の歌に感化され自前のハープを奏でる。その感性はなんとも独特なものではあるが。ひとしきり奏でた後、ステージとは反対側の路地に他の仲間と思われる人影に気付く。
「……ん、あれは……ウェルス殿か?あんなところで何をしているんだ?」
●またまた時をちょっとだけ遡ります
「ねえ、ここの特産の薬草ってあるの?」
屋台村を巡り歩いていたリィは、薬草を専門に売るお店を見つけしばし立ち止まっていた。前日とは打って変わって、本業のこととなると真剣だ。別に前日怠けていたわけではないが。一応。
「ん~そうだねぇ。特産ってほどじゃないが、これなんかは珍しいと思うよ。身体全般の痺れに効くし、温感作用で冷えにも良い。おまけに血行促進!」
「ふーん。じゃあそれちょうだい。……あ、あとこれとこれも。お祭りの準備手伝ったしちょっとくらいおまけしてほしいなー」
珍しい薬草を見つけたらとりあえず買ってみる。何に使うかはまぁ、研究してみよう。普段使っている薬草も調達し、ついでにおまけもせがんでみる。
「ハハハ。街の祭りの準備は皆でやるもんさ!手伝って当たり前よ。……だがまぁ、君みたいな年の子が買いに来てくれることは珍しいからな。ちょっとおまけしといてあげるよ」
店主からすれば、リィは少年か少女か。そんな風に見えるのだろう。このまま訂正しない方が都合が良さそうなので、リィは「ありがとね」とだけ言ってちょっと多めにしてくれた薬草を受け取る。
「……うん。中々旨いな。地酒も悪くない。次はあっちの方に行ってみるか」
時を同じく、ウェルスは普段食べないような料理や飲み物を選びながら屋台村を練り歩いていた。やはり祭りというのは良い。屋台に芸人、老若男女とも笑顔で楽しい。移民の多いこの国なら大小含めて毎日は何かしらのお祭りだろう。そのせいか民の方向性も平和で気の良い奴が多い。少し心配になるくらいだが。そうこの国民たちの様子を眺めるウェルスだったが――
(……それはそうと、あそこにけしからん商売をしてる薄着のケモノビト美女がいるな。この祭りは全年齢だから小さい子供もいるのにいけませんなぁ。よし、俺に任せろ)
抗えない欲求に上書きされてしまったようだ。
●いいね。お祭りは
ステージで歌い終えたルエは、一人で祭りを見て回っていた。
(のんびり祭りを楽しむってあまり出来なかったからなー。ガキの頃はその日暮らしもいい所だったし……大人になってもそうだったな。イ・ラプセルに来るまで大変だったなあ)
ふと自らの幼少期、そしてこれまでの半生を振り返る。各地を転々として生きてきたルエに祭りを楽しむ余裕などは無かった。だからこそ、今こういった機会を得られていることは良いと思うし、そうさせてくれるこの国の為に戦いたいという思いを強めてくれる。ただ、今日くらいはゆっくり楽しもう。
「おっ、あの娘はなかなか……。そっちの娘もいいねぇ、俺好みだ」
一方その頃、オルパは祭りを楽しむ綺麗な女性たちを眺めて幸せをかみしめていた。……まぁ、何に平和を感じてどう祭りを楽しむかは人それぞれ。多種多様な人々がいて、上手く共存している。それがこの国の良いところなのだ。うん。うまくまとまった。
「いいねぇ。お祭りを楽しむ女性の笑顔は最高だぜ!」
とても良いと思います。
出番を終えた後、カノンと街を歩いていたリュエルは、街と人々の様子を見ていたというサーナと、買い物を終え疲れて休んでいたリィにばったり出くわす。平和な人々の様子を眺めながら、騎士たちは我が国へ、そしてそこに生きる人々へ思いを馳せる。
途中からやり取りを聞いていたのか、4人の後ろからウェルスが現れる。
「出来るならこんな平和がずっと続いて欲しいもんだ。……まぁそれ以前に数ヶ月先、俺自身がどうなってることやら、だがな」
「ウェルスさん、怪我してません!?どうなさったのですか?」
何やら怪我をしたらしいウェルスの姿を見て、声を掛けたサーナ含む一同は心配する。数ヶ月先もかもしれないが、今の心配もした方がいい。しかし、おそらくまだ純粋であろう未成年の少年少女たちには言い出しにくい事情なようで。渋る様子から、リィにはなんとなく察しがついてしまったわけだが。
「……その、なんだ。キミたちにはまだ早い事情ってやつだな。軽い傷だし大丈夫だ。ハハハ」
ずっと昔、ご先祖様達が森の神に祈った時みたいに「明日が今日よりもきっといい日になる」と信じられるように。
自由騎士達の闘いの日々は続く。
「明日は人間達のお祭りだってな。ちょっと騒がしくするが、勘弁してくれよ」
祭りの準備の手伝いを引き受けた後、森の社へと向かっていった『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は、道すがらの木々に〈自然共感〉で話しかけていく。
「以前に来た時も思ったが、この森は良い森だな。神木を敬う街の人間達とうまく共存できているのだろうな」
「オルパさんは、以前にもこの森に来たことがあるのですか?」
手伝いを引き受けはしたものの、人の多い所は苦手だから……とオルパと共に森へ入ったサーナ・フィレネ(CL3000681)は森の木々と会話するオルパの言葉に反応する。
「ああ。この前依頼でな。ちょっと事情があって木々がトレント化してたんだが、元気いっぱいの良い木々だったぜ」
「そうだったのですね。……この森の木々は、豊かな大地の恵みを与えられてるみたいですね。私にも、分かります」
オルパと同じく自然の声を聴くことができるサーナにも、この森の豊かさはありありと感じられた。神木を敬う街の人々と共存する木々の道を、二人のヨウセイは進む。
森を進む二人は開けた空間へと出る。その中心には神木。傍らには社。そして明日の儀式の準備をする人々がちらほらと見える。神木を初めて見るサーナは、その圧倒的な佇まいに感嘆の声を上げる。
「わあ……すごい、ですね。本当に……街の人々が神と讃えてきたのも分かります」
「そうだろ?本当に良い木だ……よぉ、ひさしぶり!って程でもないか。最近、調子はどうだ?悪くないか?……明日はよろしく頼むぜ。万一イブリースが出ても、俺がいるから安心しておけよ」
そう言いながらスタスタと神木に近付いて再会の挨拶を交わすオルパ。神木とオルパのフランクなやり取りを微笑ましく思いつつも、サーナは社の人々に手伝いを申し出る。
「あの、何か手伝えることはないでしょうか?」
サーナの声を聞いたオルパは「じゃ、また後でな」と神木との会話を切り上げ、社の方へ向かってくる。
「俺たち、人手不足だって聞いて社の準備を手伝いに来たんだ。何か手伝えることはないか?」
二人から最も手前に居た男はサーナとオルパの言葉に振り返り、「人手が増えて助かった」とでも書いてあるかのような表情を見せる。男は頭一つ以上身長の離れた二人を見定め、それぞれに役割を振ってくる。
「おお!助かるよ。じゃあ君は周りの木々をつたって、この開けた場所を注連縄で囲んでほしい。小さい君は社周りの掃除と、斎竹を立てて注連縄を張るのを手伝ってくれ」
「了解だ。木々を飛び移るのは得意だぜ!」
「分かりました。あの、よかったら当日の護衛も手伝わせてもらいたいのですが」
「本当かい!何も起きないと思うけど、森では何が出るか分からないからねぇ。是非お願いしたい。設営が終わったら、護衛の段取りの話をしよう」
明日の護衛も引き受けたサーナとオルパはそれぞれに任された手伝いに取り掛かる。
●時はちょっと遡って街の方
「ソウクマデス曰く『戦いが常であるのなら 祭りとは非日常である』」
「……なんだって?」
「いや、お祭りって良いよなーって思ってな」
祭りの前の忙しなさかな。そう形容したくなるほどに準備で賑わう街中で、荷物を運びながら言葉を交わす『エレガントベア』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)とルエ・アイドクレース(CL3000673)。普段は戦いの渦中に身を投じる自由騎士も、こう市民に混ざってしまえば祭りの準備に勤しむ一市民だ。
「わかるわかる!いいよな~祭り!」
ウェルスとルエの背後から、同じく荷物運びを手伝っていた『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)が話しかけてくる。こんな情勢下だからこそ日常のささやかな楽しみって大事だよね、というリュエルなりの思いもあるみたいだが、彼にはそれを言葉にするための語彙力は無い。
三人で荷物を運び一段落したところで、ルエは別の手伝いに向かおうとする。
「じゃあ俺はステージの設営を手伝ってくる」
「オレも行く!明日のステージの流れとか聞いときたいし。あんたも出るんだろ?楽しみだな~」
誰にでも友好的なリュエルは明日の同じステージ参加者のルエに興味があるらしい。ルエに色々と話題を振りながら二人はステージの設営をしている方へと向かっていく。
「……さて、俺はまだまだ荷物運びをするか。ついでにこいつらの試験運用もしてみるか」
一人取り残されたウェルスは技師部隊に簡単な屋台の組み立てと機械の修理を指示する。練習も無しに戦場でいきなり連携というのは不明な点も多くリスクが大きい。だからこの機会に問題点を洗い出しておこうというわけだ。例え祭りの準備を手伝っていても、戦場のことは考えなければならない。真に戦場から逃れられるのは、果たしていつになるのやら。
「……はい、これでおっけー。あんま無理しないようにね」
ここは屋台村を設営している端の即席休憩所。……といっても日差しを遮るためのテントと、その下に簡易組み立ての椅子がいくつか並んでいるだけなのだが。リィ・エーベルト(CL3000628)は設営の途中で軽いケガをしてしまった住民に手当を施しながら、給水所を運営していた。力仕事は苦手だ―というかめんどくさい―し、治癒魔法も使えるし、適材適所だろう。日陰だし。本来は戦闘用魔法の〈アイスコフィン〉で氷を生成し、疲労回復効果のあるハーブを使ったお茶を冷やして置いておく。ものは使い様だ。何より氷の近くは涼しいし。
「よし、できた!」
リィの近くでカセットコンロを借りてきて鍋にお湯を沸かしたり、〈アイスコフィン〉の氷を少し貰ったりしていた『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)が元気よく立ち上がる。
「カノン、さっきから何作ってたの……?」
「差し入れ!旬の枇杷を使った寒天寄せだよ!リィさんも食べる?」
「……ん、冷たいくておいしい。いいんじゃない?」
「よかった!冷たく冷やした方が皆喜んでくれるかな?って思って!忙しくてここまで休憩しに来れない人にもあげに行ってくる!」
そういうなりカノンはとたたーっと設営途中の屋台村の方へと駆けて行った。
「……元気だなぁ。ボクは……まぁいいや、ここにいよ」
めんどくさいし?いやいや、いつ誰が怪我してここに来るか分からないじゃん?まぁみんな、休憩は適宜取るようにね。
騎士達の協力もあって、祭りの準備は前日の内に無事終えられた。あとは当日を迎えるのみ。
●祭りの日になりました
午前10時。街から少し離れた森の社では、祭事に伴う儀式が行われようとしていた。街からここまで特に問題は起きず、護衛を務めたオルパとサーナは祭儀の様子を見物していた。住民の代表である街長が神木の周りをゆっくりと一周し、神木に向かって祈りの言葉を述べた後、社で祈祷師とともに祈りを捧げる。祭儀の準備を手伝っていた住民たちも、街長と祈祷師が祈ると同時に、同様の所作で祈りを捧げる。
「豊かな自然の恵みを願う祭りか。いいね、俺好みだ」
蒸気文明が広がってからというもの、自然破壊という言葉をしばしば見聞きするようになってしまった。もちろん蒸気技術も生活を豊かにしてくれるし嫌いではないのだが、こうして自然と人間が共存している様子を見られるのはやはり嬉しいものがある。ヨウセイという種族としてなのか、それとも人間としてなのか、なんだかほっとする。そんな思いを巡らせるオルパだった。
「……神暦以前ということは、相当長い間人々に祀られてきたのですね。あの、街の近くで祭られて過ごしてきて、どんな思いでしたか……?やはり、自然を想ってくれるのは嬉しい、ですか……?そうですか……ありがとうございます」
儀式が終わった後、人々が街へ戻ったり社で個人的に祈りを捧げたりしている中、サーナは神木と対話をしていた。想像もつかないほど多くの年月を生きたこの木は、人々に思いを込めて祀られてきて一体何を感じてきたのだろうか。それに共感し知ることができるのは、彼女たちヨウセイの特権なのだ。
●街は屋台と人々で賑わう
ステージの芸大会企画に参加登録を済ませたカノンは、出番が来るまでまだ時間があるので屋台村をぶらぶら見て回ることにした。その矢先、広場の隅っこに俯いた男の子……遠くからでも、泣いているように見える。
「どうしたの?」
男の子の元へ走り寄ってそっと話しかける。だがえぐえぐ、と泣いていて話せる状況ではない。こういう時は、まず泣き止ませるべし。ほらほら、と手招きして、があがあ、ぶいっ、とアヒルや子豚の真似をしてみせる。いつしか男の子が泣き止んで見てくれるようになっていたので、もう一度「どうしたの?」と問いかける。
「パパとママ、いなくなっちゃった……」
「そっかぁ。どこでいなくなっちゃった?」
「あそこ……」
少年が指を差す方向には屋台村。う~んこれは中々時間がかかりそうだ。でも勿論、放っておくわけにはいかない。
「分かった。一緒にパパとママを探そう!ほら、手つなご?」
カノンは男の子の手を引いて、情報を得ようと周りの人から順番に声をかけ始める。
男の子の両親は逸れてからそれほど大きく動いてはいなかったため、見つけるのに特別な苦労はしなかった。少女に手を引かれた息子の姿を目にした両親と思しき男女は、安堵の表情を浮かべながらカノンの元へと向かってきた。男の子はパパ!ママ!と叫んでカノンの手から離れ、両親それぞれからお礼を言われる。
「よかったね!もう逸れたらだめだよ?」
「おねーちゃん、ありがとう!!」
両親としっかり手を繋いで、去っていく親子に手を振るカノン。その仲良さげな様子や、探している最中に男の子から聞いたお父さんやお母さんとの温かい話たちは、自ずとかつての自分と両親の姿を思い出させる。もう思い出の中にしかいない人達……いや、と軽く頭を振る。もうすぐステージの時間だ、行こう!と一人気合を入れ直す。
「劇団アマリリス所属のカノンだよ。よろしくね♪」
ステージに上がり笑顔で挨拶をするカノンに先ほどの面影はない。カノンは劇の中で歌った歌を歌う。
どんなに遠くに離れていても 例えもう会えなくても
何時も貴方を見守っている 何時も貴方を思っている
だから涙を拭いて 顔を上げて 前を向いて歩いておくれ
我が愛し子よ 何時でも貴方の幸せを願っている
両親も見守ってくれている、きっと。歌詞にそんな気持ちの籠った歌が人々を立ち止まらせる。
「カノン!すごく良かったぜ!!」
バックステージに戻ってきたカノンに次の出番のリュエルは声をかける。リュエルは目をキラキラと輝かせ、今この場でもう歌い出してしまいそうなほどだ。
「ありがとう。リュエルさんも、盛り上げてきてね!」
「よし任せろ!オレもいくぜー!!」
リュエルの声は既にステージ前の観客にも聞こえていた。ドドドッと勢いよくステージに上がってくる姿が微笑ましい。
「リュエル・ステラ・ギャレイだ!血沸き胸躍る英雄譚、聞いてくれ!!」
ステージの真ん中で殺した勢いを全部声に変換して高らかに名乗る。そしてリュートを奏で、この国の英雄伝説をアクション活劇風にアレンジして謳いあげる。
どんな大義があっても、戦争ってのは人間同士の争いだ。直接戦火が届かなくてもみんなの心はすり減っていく。だから、せめて今だけはめんどくさい事を忘れて楽しんでほしい。
思いを言葉にはできなくても、歌でならあるいは。ズガガガガーン!!ドガガガガーン!!と擬音語を多用した彼の歌は、大きくそして元気いっぱいの声も相まって会場を盛り上げる。彼が歌い終え、盛り上がりが最高潮となっていた会場は少し落ち着きを取り戻す。
「おっと、これで終わりじゃないぜ?楽しい時間はまだまだ続く!祭はまだまだ盛り上がる!みんな!聞いてくれてありがとな!!」
そう言ってバックステージに戻ったリュエルは、次の参加者ルエにバトンタッチする。
「ちょっとクールダウンしよう。でももちろん、来てくれた皆が楽しんでくれる様に」
ステージに立ったルエは即興のラブソングを歌ってみせる。一人の男の、想い人へ送る言葉を詠った切ない歌詞と、それを歌うにふさわしいセクシーな男性アイドルを思わせる歌声が男女問わず会場を魅了する。盛り上がり切った会場を落ち着けつつ、人々は静かに彼の歌声に聞き惚れ、ステージの周りに更に人を惹きつける。
「みんな中々上手いじゃないか……そうだな、俺もハープで一曲披露するか」
神木と森の木々に挨拶をしながら街へと戻ってきたオルパは、遠くのステージから響く仲間達の歌に感化され自前のハープを奏でる。その感性はなんとも独特なものではあるが。ひとしきり奏でた後、ステージとは反対側の路地に他の仲間と思われる人影に気付く。
「……ん、あれは……ウェルス殿か?あんなところで何をしているんだ?」
●またまた時をちょっとだけ遡ります
「ねえ、ここの特産の薬草ってあるの?」
屋台村を巡り歩いていたリィは、薬草を専門に売るお店を見つけしばし立ち止まっていた。前日とは打って変わって、本業のこととなると真剣だ。別に前日怠けていたわけではないが。一応。
「ん~そうだねぇ。特産ってほどじゃないが、これなんかは珍しいと思うよ。身体全般の痺れに効くし、温感作用で冷えにも良い。おまけに血行促進!」
「ふーん。じゃあそれちょうだい。……あ、あとこれとこれも。お祭りの準備手伝ったしちょっとくらいおまけしてほしいなー」
珍しい薬草を見つけたらとりあえず買ってみる。何に使うかはまぁ、研究してみよう。普段使っている薬草も調達し、ついでにおまけもせがんでみる。
「ハハハ。街の祭りの準備は皆でやるもんさ!手伝って当たり前よ。……だがまぁ、君みたいな年の子が買いに来てくれることは珍しいからな。ちょっとおまけしといてあげるよ」
店主からすれば、リィは少年か少女か。そんな風に見えるのだろう。このまま訂正しない方が都合が良さそうなので、リィは「ありがとね」とだけ言ってちょっと多めにしてくれた薬草を受け取る。
「……うん。中々旨いな。地酒も悪くない。次はあっちの方に行ってみるか」
時を同じく、ウェルスは普段食べないような料理や飲み物を選びながら屋台村を練り歩いていた。やはり祭りというのは良い。屋台に芸人、老若男女とも笑顔で楽しい。移民の多いこの国なら大小含めて毎日は何かしらのお祭りだろう。そのせいか民の方向性も平和で気の良い奴が多い。少し心配になるくらいだが。そうこの国民たちの様子を眺めるウェルスだったが――
(……それはそうと、あそこにけしからん商売をしてる薄着のケモノビト美女がいるな。この祭りは全年齢だから小さい子供もいるのにいけませんなぁ。よし、俺に任せろ)
抗えない欲求に上書きされてしまったようだ。
●いいね。お祭りは
ステージで歌い終えたルエは、一人で祭りを見て回っていた。
(のんびり祭りを楽しむってあまり出来なかったからなー。ガキの頃はその日暮らしもいい所だったし……大人になってもそうだったな。イ・ラプセルに来るまで大変だったなあ)
ふと自らの幼少期、そしてこれまでの半生を振り返る。各地を転々として生きてきたルエに祭りを楽しむ余裕などは無かった。だからこそ、今こういった機会を得られていることは良いと思うし、そうさせてくれるこの国の為に戦いたいという思いを強めてくれる。ただ、今日くらいはゆっくり楽しもう。
「おっ、あの娘はなかなか……。そっちの娘もいいねぇ、俺好みだ」
一方その頃、オルパは祭りを楽しむ綺麗な女性たちを眺めて幸せをかみしめていた。……まぁ、何に平和を感じてどう祭りを楽しむかは人それぞれ。多種多様な人々がいて、上手く共存している。それがこの国の良いところなのだ。うん。うまくまとまった。
「いいねぇ。お祭りを楽しむ女性の笑顔は最高だぜ!」
とても良いと思います。
出番を終えた後、カノンと街を歩いていたリュエルは、街と人々の様子を見ていたというサーナと、買い物を終え疲れて休んでいたリィにばったり出くわす。平和な人々の様子を眺めながら、騎士たちは我が国へ、そしてそこに生きる人々へ思いを馳せる。
途中からやり取りを聞いていたのか、4人の後ろからウェルスが現れる。
「出来るならこんな平和がずっと続いて欲しいもんだ。……まぁそれ以前に数ヶ月先、俺自身がどうなってることやら、だがな」
「ウェルスさん、怪我してません!?どうなさったのですか?」
何やら怪我をしたらしいウェルスの姿を見て、声を掛けたサーナ含む一同は心配する。数ヶ月先もかもしれないが、今の心配もした方がいい。しかし、おそらくまだ純粋であろう未成年の少年少女たちには言い出しにくい事情なようで。渋る様子から、リィにはなんとなく察しがついてしまったわけだが。
「……その、なんだ。キミたちにはまだ早い事情ってやつだな。軽い傷だし大丈夫だ。ハハハ」
ずっと昔、ご先祖様達が森の神に祈った時みたいに「明日が今日よりもきっといい日になる」と信じられるように。
自由騎士達の闘いの日々は続く。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
依頼お疲れ様です。日常回、いいですね。
ちょっと長くなっちゃいましたが、楽しく書かせていただきました。ありがとうございました。
MVPは男の子の家族を探し、自らの亡き両親を想う若き戦士へ
ちょっと長くなっちゃいましたが、楽しく書かせていただきました。ありがとうございました。
MVPは男の子の家族を探し、自らの亡き両親を想う若き戦士へ
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