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イエローベリルとピンクの象




「ぱおぱおぱお~~ん♪ ぱおぱお~~~ん♪」
 深夜に聞こえる象の鳴き声。その鳴き声はリズミカルで心地よい。
 その象はピンク色だった。大きさも通常の象の倍はある。
「ぱおぱおぱお~~ん♪ ぱおぱお~~~ん♪」
 その鳴き声は夜が明けるまで様々な場所で聞こえていた。

 そして翌日。寝たまま起きない人々が続出する。
 敵国による集団催眠か──街は大混乱に陥っていた。


「ピンクの象がでるんだ」
『演算士』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)が突拍子も無い事を言った。
「……は?」
「だからピンクの象だ」
 全く意味がわからない。困惑する自由騎士たち。
「いいか。よく聞いてくれ──」

 テンカイの話を要約するとイブリース化した本物の象らしい。
 だがなぜかイブリース化の副作用で巨大化した上にピンク色になっているのだそうだ。
 その象が人々を眠らせて周り、街が大混乱に陥るのだという。
「……わかった。じゃぁその象を倒せばいいんだな」
「その通りだ。ただこの象なんだが……一つ厄介な事があってな」
 テンカイがその厄介の内容を伝える。

「な、なんだってぇぇぇぇーーーーーっ!!??」

 自由騎士はその内容に驚愕するのであった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
麺二郎
■成功条件
1.イブリース化した魔物の討伐
麺です。純戦に見せかけたコメディ依頼かもしれない依頼です。

ピンクの象が現れました。
なぜかかっこいいセリフを言いながらでないとダメージを与えられないという特異体質を持つ強敵です。(歯が浮くようなキザでカッコいいセリフほどダメージの通りがよくなります)
どれだけカッコいいセリフを準備できるかが勝利の鍵となりますのです。……のです。


●ロケーション

深夜。首都外れの大きな通り。そこに3匹のピンクの象は現れます。
明かりは殆どありませんが、ピンクの象は月明かりでも目立ちます。
付近の住人は寝静まっていますが、討伐に時間がかかりすぎると、起きてくる可能性があります。その場合、寝ぼけ眼の住人の前でカッコいいセリフを言いながら戦う事になります。少し恥ずかしいかもしれません。恥ずかしくないかもしれません。


●敵

・ピンクの象 3匹
 イブリース化により巨大化し全身ピンク色になった象。その額には石が埋め込まれています。
 なぜか超かっこいいセリフを言いながらの攻撃でしかダメージを受けません。
 3匹はそれぞれ、体力が異様に高い、攻撃力が異様に高い、異様に素早いという別々の特徴を持っています。
 また自由騎士の眠気を誘う、全体に有効な特殊な歌を歌う事があります。
 この歌をまともに聴いてしまうと猛烈な眠気に誘われます。


●サポート

サポートの方が考えたカッコいいセリフはふとメイン参加メンバーの脳裏に浮かぶ可能性があります。


皆さまのご参加お待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
13モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
6/6
公開日
2019年04月12日

†メイン参加者 6人†




「うわ~ほんとにピンクだね」
『ビーラビット』オズワルド・ルイス・アンスバッハ(CL3000522)は目の前の光景に改めて驚きを見せた。
 全身がピンクの象。神話にでも出てきそうな生き物が今目の前にいる。
「こいつか。確かにあいつらの言ってたとおりだな」
 そう言いながら煙草に火を灯したのは『演技派』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)。
 言葉から察するに、ルークはプラロークからの情報以前に象の存在を知っていたようだ。
「乗りかかった船だしな……まぁついでだ」
 そう呟くとルークは銃を構え一歩前に出る。
「ぴんくの、ぞう」
 思わず口に出したのはなんだかいつもいい匂いがする『うらはらな心は春の風』ヴァイオラ・ダンヒル(CL3000386)。その異様な光景に、わかってはいてもつい口にしてしまう。
 だがこのままにしてはおけない。この象たちの歌は人々を覚めない夢へと誘う。
 しっかりとイブリース化を解いて象を元の姿にもどしてあげなくては──決意と共にヴァイオラは銃を構える。
「……ってデカいわね」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はその大きさに驚きを隠せないでいた。話を聞いた当初はかわいらしいイメージを持っていたエルシーだったが、実物を前にするとその考えを改めざるを得ない。可愛いなどでは形容しえぬほどには今回の標的は巨大。この時のために考えてきたセリフ達が、一瞬エルシーの脳内から零れ落ちそうになるほどにだ。

 かっこいいセリフを言いながらじゃないとダメージを与えられないんだ──

 ──何故!? 依頼の説明を受けた時に皆が思ったであろう。だが問うてみたところで誰も答えなど持ち合わせてはいない。麺にだってわからないのだ。
 だが勇敢な自由騎士たちはそのような理不尽に躊躇するものはいない。いないのだ。

「じゃあ打ち合わせどおりにっ」
 オズワルドの合図で皆が戦闘態勢に入ったその時だった。屋根の上に颯爽と現れた人影が一つ──『異世界転生したら兎になっていた件』篁・三十三(CL3000014)だ。
「今宵……桃色の象が誘う微睡の世界……覚めない夢は穏やかなるも偽りの安寧……」
 腕を組みポーズを決める三十三。目線はしっかりカメラ目線。わかっていらっしゃる。
「我、暁を齎さんと見参! イ・ラプセル自由騎士団が一人、篁三十三、ここに!」
 今回は噛まなかった。ばっちりおっけい! と言わんばかりの表情を見せる三十三。
 ……ん? 三十三はふと考える。のっけからかっこよく決めては見たものの……これいつもどおりじゃね? 普通にいつもこんな感じで名乗ってるし、いつもどおりって感じだよ。
 あれれ? あれあれ? もしかして今まで俺が言ってた名乗りみたいなセリフって実は恥ずかしい事だったんだろうか……。
 葛藤し始める三十三。うんうんいいながら頭を抱えこむ。そんな様子を照らす月明かりは優しい。
「で、でもいいんだもん! これが俺! 俺だから!」
 吹っ切れた様子の三十三。すっと立ち上がり……ポーズを決める。
「俺のカッコいい台詞とポーズで虚無の海に誘ってやるさ……!」
 三十三の瞳がきらりと光った。その表情にすでに照れなど皆無。
「いくぜっ!!」

「さぁ始めましょう……我が身は完全無欠の城塞! 誓いを貫く為、神の温厚篤実たる祝福を! スティールハイッ!」
『はくばにのったおじさま(幻想)』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)が気合を込め、己が防御力を一気に高める。
 ──え? カッコいいセリフは攻撃のとき必要であって、自己強化には必要ないのでは? 確かに。確かにその通りであるのだが……。デボラは後のインタビューでこう答えている──気にしたらそれまで、と。細かい事に縛られず自分の思い描くカッコいいを全力で示す。これもまた一つの形。一つの生き様。
 セリフは元気よく大声で──それはデボラが今回の依頼に対応するに当たり何度となく心で唱えた呪文。大切なのでもう一度。リピートアフターミー? セリフは元気よく大声で。住人起きても気にしない。……って増えてるやん!!
 だがその言葉にも魂が宿り、象たちにも少なからず影響を及ぼす。デボラはそう信じている。
「先ずは攻撃力が高い象を狙うって話だけど……」
 オズワルドが少し困った顔をした。異様にすばやい象。これは誰が見ても明らかだ、一匹だけ残像が見えるほど早い。では残り二匹のうちどちらが攻撃力が高いのか。見た目では判断できそうに無い。
「そういえば見分ける方法……は考えてなかったわね」
 エルシーが仲間を見渡すが敵の能力を探るスキルを持っているものはいなさそうだ。
「手っ取り早い方法がありますよ」
 前に出たのはデボラ。防御タンク。防御力強化済み。ロストペイン持ち。もしや──
「うぉぉぉおおおおぉぉぉぉ!!! 無辜の民を怠惰な眠りに誘う魔物よ! 我ら自由騎士がお相手する! 我が盾は我が王と民を守る誓い! 我が剣は折れぬ信念! デボラ・ディートヘルム、ここに見参!」
 口上と共にデボラが一匹の象に向けて突進する。
「ぱぉぉぉ~~~~~ん」
 そこに鼻の強烈な一撃。鈍い衝撃音と共に吹き飛ばされるデボラ。
「デボラッ!? 大丈夫かっ」
 慌てて駆け寄るルーク。
「痛てて……って痛みは感じないのでした。思ったほどダメージは無いようですね……こっちがきっと体力が高いほうです」
 受けたダメージを冷静に判断しながらそう言うデボラ。ルークはふぅと安堵のため息を漏らす。
「こんなやり方はあんまり感心しないな……だがよくやった」
 さぁ反撃です──
「我が身は完全無欠の城塞!誓いを貫く為、神の温厚篤実たる祝福を!スティールハイッ!」
 デボラが防御を固める。
「じゃぁあっちが最初の目標だね」
 三十三が自身にラピッドジーンをかけ、肩を回す。皆が最初の対象(ターゲット)に目を向けた。さぁここからが本番だ。

「紙片の如く砕け散れ! うおおぉぉぁ!! ウォークライ!」
 デボラが突撃する。
「今日はいい月夜だね……オレと一曲踊りませんか?」
 オズワルドが鎌を振るう。
「どうして君はピンク色をしているの? 恥ずかしがり屋さんなのかな?」
 その言葉と共に象にダメージを与えていく。確かに……効いている!
 驚くほど流暢に言葉が出てくる二人はその後もダメージを積み重ねていく。だがそんな中、思考の迷路に迷い込んだのはエルシーとヴァイオラの2人。
(カッコいいキザなセリフを言いながら戦えばいいのよね)
 やってやるわ。エルシーの口から発せられたのは──
「さて、お前達が私にお仕置きされたいイケナイ子ね?」
 ……少しエッチな感じになっていませんか。お色気的ではありませぬか。……だがそれがいい。そんな事を言われた日には男性諸君は堪らない。きっと頬を染めながら「そうです」というに違いない。
 一方のヴァイオラ。
「そもそも何故かっこいいセリフ???」
 わけがわからないわ、とばかりにヴァイオラの思考がぐるぐると渦を巻く。何度考えても理屈に合わない。いやむしろ理屈など存在しないのだ。だが言わなければ攻撃は意味を成さない。動揺するヴァイオラ。頭ではわかっている……そう、わかってはいるのだ。カッコいいセリフを言えばいいと。だが、いざその時が来ると様々な感情が複雑に絡み合いなかなか言葉に出来ない。
「え、ええと、ええと……今は夜よね? い、言うわよ。覚悟はいい? ……つ、月に代わっておしお──」

 /アッカーーーーン\

 ドコからともなくどこかのダイスケさんのようなダメ出しの声がした。ダメ!? ダメってどういうことよ!? さらに動揺するヴァイオラだが致し方ない。ダメなものはダメなのだ。
「く……っ! わかったわよ、他のを考えればいいんでしょ」
 そういうヴァイオラがこっちを見ている。ヴァイオラ、こっち見ちゃダメ! 戦いに集中、集中!
 大きく息を吐くヴァイオラ。意を決して発した言葉は。
「今宵の私の銃は血に飢えているの。その桃色の血、吸わせて頂戴な」
 言葉と共に放った弾丸が象を貫く。
「ぱぉぉぉぉぉーーーーん!!!」
 嘶く象。その声に他の象達も反応する。
 異様にすばやい象が後衛の二人へ向かうのをブロックするエルシー。が、その巨体ゆえブロックしきれなずじわじわと後退させられていく。エルシーの悪い予感が的中したのだ。
「く……っ。抑えきれ……」
 エルシーの力が緩みかけたその時だった。
「うぉぉぉぉーーーー!!!! 絶対に止めるっ!!」
「行かせやしねえぜ」
 デボラとルークが加勢に入り、渾身の力を込めて象を押し返す。
「いまのうちよっ!!」
 ヴァイオラ、オズワルド、三十三の3人が一斉に攻撃を集中させる。
「私の美しさに見惚れているうちに終わらせてあげるわ、可愛らしい象さんたち」
 ヴァイオラの二連の弾丸が象を射抜く。
「どうして君はピンク色をしているの? 恥ずかしがり屋さんなのかな? ……大丈夫、ちゃんとオレがリードしてあげるから。だから安心して身を任せて?」
 オズワルドの華麗なステップからの攻撃が象へダメージを蓄積していく。
「受けて見よ!我が奥義三十三が一手、風月!」
 三十三が手に持った刀をぐるりと1回転させる。剣の軌跡が満月を描き出す。
「今宵の月の風と共に去るがいい!」
「ぱぉぉぉぉーーーーーーーん!!!!」
 一際大きく嘶き一匹目の象は倒れた。すると象たちの動きが変わる。
「ぱおぱおぱお~~~ん♪」
 聞こえてくるのは楽しげなリズム。ピンクの象の奏でる睡眠を誘う歌。
「まあ、いい声で鳴くのね……小夜啼鳥か、鶯か……」
 ヴァイオラは待ってましたとばかりにカッコいいセリフを言葉にしようとしたのだが。
(って眠くなってきたんですけど!)
 セリフで歌が無効化されることはなく、ヴァイオラは睡魔に襲われ始める。周りを見れば他の自由騎士たちも同様のようだ。
「くっ……そんなの聴いてる余裕なんかないわよ!」
 皆がお互いや自らの手で頬をつねるなどして眠気に対抗する中、ルークは自らの頭に銃把を打ち付け眠気を強制的に振り払う。打ちつけた箇所からは血が滲む。だがそんな事はいい。悠長に寝てなどいられるものか──
「寝るには五月蝿過ぎる……心がな、叫び続けてるんだよ――お前らを倒せと」
 ルークが銃を構える。二丁拳銃から放たれた弾丸は象の歌声をかき消す。
「ぱぉぉぉぉぉーーーーん!!!」
 歌が途切れた。これをチャンスと捉えた自由騎士たちが一斉に速度特化の象へと攻撃を仕掛ける。
「君がくれるものなら……傷だって痛みだってオレは受け入れるよ。ねえ……君のこと、捕まえちゃってもいいかな」
 オズワルドが妖艶な表情を浮かべながら鎌を振るう。
「この拳は水の女神の祝福を受けた、穢れを祓う疾風の刃!」
 エルシーの拳が象に深く突き刺さる。
「我が信念の剣の冴え、とくと味わえ!」
 デボラのサーベルが象の中心を突く。
「今宵の私の銃は血に飢えているの。その桃色の血、吸わせて頂戴な」
 ヴァイオラの大型口径銃が火を噴く。
「速度で俺に勝てるかな……」
 三十三は速度で象を翻弄しながら叢雨を打ち込む。怒涛の連続攻撃に怯む象の前に立ったのはルーク。暴走する象を正面から受け止める。
「ぐっ……つ、捕まえたぞ」
 弱ってはいても巨大な象の突進。ルークの体力の殆どは持っていかれてしまう。だがそれでも不敵に笑い、立ち続けるルーク。
「この距離なら外さん――チェックメイトだ」
 超至近距離。ルークのゼロレンジバーストが象へ直撃する。そしてついに……速度特化の象の動きが止まる。そこへ最後の一撃を放ったのはメンバーの中でも特出した攻撃力を持つエルシー。
「闇夜を切り裂くは緋色の拳。受けなさい、紅き閃光──」
 エルシ-が拳を強く握りこむ。
「緋色の衝撃(すかーれっといんぱくとぉぉぉぉぉーーー)!!!!」
 強い気持ちを込めたエルシーの一撃が象に直撃する。  
「パォォォォーーーー……ン」
 どすぅん、と大きな音とともに速度特化の象は倒れた。残すは体力特化の象。
「ぱ、ぱぉ……」
 少し逃げ腰となった象に自由騎士たちは最後の攻撃を浴びせていく。
「この綺麗な肌に、オレの印を付けてもいいかな?」
「私は!罪無き民を脅かす者がいる限り戦う!潰れろぉぉぉ!」
「あ、痛かった? ごめんね、でもオレを夢中にさせる君が悪いんだよ?」
「自由騎士に同じ攻撃が何度も通用するとは思わない事ね」
「我が血肉を友に捧げよう!サクリファイス!」
「まるで気まぐれな恋のように、春の宵は一瞬で過ぎ去ってしまう……そんな美しい時間を乱すものは許さなくてよ」
 様々な決め台詞と共に自由騎士たちは、残り1匹となったピンクの象へ全身全霊を込めた攻撃を叩き込んでいく。
「これが女神の祝福を受けし可能性オラクルの力…!その身にしかと刻め!」
「おやすみ、夢の中でまた会おうね」
 オズワルドがセリフを言い終わるかどうかの瀬戸際。ピンクの象は静かに膝を折り、地に伏した。
「終わったわね」
 エルシーがふぅと一息つく。私の言葉……ちょっとナルシストだったかしら──そんな事を思いながら。
「えーっと……終わり、ました?」
 デボラもまた戦闘終了と共にふと我に返る。自身が発した言葉の数々を思い出す。ぽわわと頬が熱くなるのを感じる。
「あ、あの先程まで聞いた事は忘れていただけると……」
 あぁ……またお父様に怒られる……デボラの脳裏に父親の顔が浮かぶ。今日の事は早く皆に忘れて欲しいと願うばかりだ。
「……すっごく疲れたわ」
 正直今夜のことはさっさと忘れたい気分よ。ヴァイオラはそんな事を呟いた。変なセリフを言っているところをあの男(婚約者)に見られなかったのがせめてもの救い。
「さぁ早く帰って寝ましょ。夜更かしは肌に悪いのよっ!」
「元居た場所に戻るんだよ」
 三十三はイブリース化の解けた象たちと意思疎通を図り、住んでいた場所へ帰るように促す。
 すると象たちはぱぉおん、ひと鳴きするとゆっくりと歩き出した。住んでいた森へ帰るのだ。 
(ピンクの象もかわいかったんだけどな~)
 実は三十三はそんな事も思っていたのだが、そういう訳にもいかないのが現実だ。
 さぁ帰ろう。自由騎士たちが帰路につく中、ルークは窓から人影に目を向ける。そこには小さな兄妹。
 ルークはさっさと寝ろといわんばかりの仕草をすると背を向け歩き始める。
 兄妹は嬉しそうにその背中が見えなくなるまで手を振っていた。 
  

 遡ること少し前──。
 ルークの探偵事務所に可愛らしい依頼者が来た。それは兄妹と思われる子供たち。
 聞くと不思議な夢を見たのだという。その夢の内容はこうだ。
 深夜、目が覚めてしまった兄。何気なく窓から外を見ると、そこに全身ピンク色の象が、踊るように闊歩していた。驚いた兄は妹を起こし、静かにするよう伝えると窓の外をそっと覗く。
 やっぱりいる。踊るようにステップを踏みながら、歌っている象たち。
 その歌を聴いていると……なんだか気持ちいい。うとうとし始める妹。自分もなんだか眠くなってきた。
 なんだかおかしい──そう感じた兄は自身の耳を傍にあった粘土で塞ぐと、妹の耳を両手で塞ぐ。この歌は聴いちゃいけない気がする。なぜかそう思った。
 そしてしばらくの後、気付けば窓の外にいた象たちはいなくなっていた。歌も聞こえない。
 一体何だったのだろう──そんな事を思いながらベッドに入った翌朝。
 そこには気持ちよさそうに眠り続ける両親の姿があったのだという。
 まるで御伽噺のような話。
 きっとこれは正夢なんだと少年は言った。でも大人は誰も信じてくれない。だからここにきたの、と。
 大事そうに抱えているのは貯金箱。きっとこの子達が大切に貯めてきたものなのだろう。
「……ふぅ」
 ルークはため息を一つつくと、兄妹の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「おかしな事件なら自由騎士が動く。何も心配することは無い。お前達はうちへ帰れ」
 助けてと懇願する子供達をそう宥めると、家へ帰すためルークは街まで送っていった。

 ルークが事務所へ戻るのを待っていたかのようにマキナ=ギアに通信が入る。
「ああ、繋がった。ルークさんですか。街にイブリースが──」

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
特殊成果
『イエローベリル』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員

†あとがき†

無事ピンクの象は自由騎士によって浄化。人々が眠り続ける事件は解決しました。

MVPはセリフの光っていた貴方へ。

ご参加ありがとうございました。
FL送付済