MagiaSteam




お前が俺で君が私で

●
暴力的な陽射しが石畳によって容赦なく跳ね返る港町、アデレード。ともすれば喧嘩腰と取られそうな人々の喧騒の中に、紛うことなき騒動の罵り合いが響く。
「――のは、おまえのせいだろ!?」
「いえ、そのっ、私は――」
威勢のいい茶屋の看板娘とどこか及び腰の水夫の姿に、痴情のもつれかと周囲の興味はすぐに散らされた。
「――へえ。噂はホントだったみたいねェ」
路地裏で弧を描く、ルージュの唇の持ち主を除いては。
●
まるで芋洗いされてるかのような人混みの中を、大柄な人影が縫うように歩いていく。その視線は時折あちらこちらへと動いて、尋ね人を探していた。
「――こっちよ!」
耳に届いた低い美声の方へ視線を向け。アダム・クランプトン(CL3000185)はしばらくぶりに会う知人へと破顔しながら駆け寄った。
「キースさん、久しぶ」
「アーダムぅ?」
皮手袋の指先と咎めるような声音がアダムの唇を縫い付ける。長身痩躯の美丈夫がやったにしては妙にしっくりくるその仕草に目を瞬かせ――得心が行ったように再び口を開いた。
「久しぶりだね、キッスさん」
「ん、イイ子ね」
合格、とばかりに笑んだルージュから、早速本日の用件が語られ始める。曰く。
「入れ替わり、かい?」
「そ。そのまんま言葉の通り、ぶつかった拍子に中身が入れ替わっちゃうの。まだ被害は数組なんだけど、犯人が捕まってなくって。入れ替わる以上の被害もなし、おそらく悪戯好きな妖精種の仕業だと思うんだけど……」
どうにもすばしっこいのよねえ、と溜息が嘆く。緊急要素も低く、昨今の情勢による人手不足でどうも後回しにされている様子。
「ごめんなさいね、アタシ、こういう時に頼れる知り合い、アダムちゃんしかいなくって」
「いや、僕が役に立てるならこれほど嬉しい事はないよ」
「ありがと! 終わったらたぁっぷりお礼しちゃうんだから! ――そうそう、それでアタシ考えたんだけどね?」
入れ替わる以上の被害はない、ということは犯人は入れ替わりの騒動そのものを面白がっているのではないか、という予測をもとにキースが立てた作戦、それは。
「なるほど、入れ替わったはずなのに何事もなく過ごしていたら不思議がった犯人が尻尾を見せるのでは? ということだね」
「ええ、入れ替わりやすい場所や条件なんかは絞り込んでおいたわ。他にも何人かお願いしてあるから――ふふ、サポートは任せて頂戴」
準備はバッチリ、とウィンクするキースに頷き。更に作戦の細かな部分を詰め、アダムは己の準備をすべく雑踏に紛れる。その背が見えなくなるまで笑顔で手を振ってから。
「――ごめんなさいねェ? アタシ、こういう時に面白そうな知り合い、アダムちゃんしかいなくって」
路地裏と同じ弧を描き、ルージュの持ち主は笑みの色を変えた。
暴力的な陽射しが石畳によって容赦なく跳ね返る港町、アデレード。ともすれば喧嘩腰と取られそうな人々の喧騒の中に、紛うことなき騒動の罵り合いが響く。
「――のは、おまえのせいだろ!?」
「いえ、そのっ、私は――」
威勢のいい茶屋の看板娘とどこか及び腰の水夫の姿に、痴情のもつれかと周囲の興味はすぐに散らされた。
「――へえ。噂はホントだったみたいねェ」
路地裏で弧を描く、ルージュの唇の持ち主を除いては。
●
まるで芋洗いされてるかのような人混みの中を、大柄な人影が縫うように歩いていく。その視線は時折あちらこちらへと動いて、尋ね人を探していた。
「――こっちよ!」
耳に届いた低い美声の方へ視線を向け。アダム・クランプトン(CL3000185)はしばらくぶりに会う知人へと破顔しながら駆け寄った。
「キースさん、久しぶ」
「アーダムぅ?」
皮手袋の指先と咎めるような声音がアダムの唇を縫い付ける。長身痩躯の美丈夫がやったにしては妙にしっくりくるその仕草に目を瞬かせ――得心が行ったように再び口を開いた。
「久しぶりだね、キッスさん」
「ん、イイ子ね」
合格、とばかりに笑んだルージュから、早速本日の用件が語られ始める。曰く。
「入れ替わり、かい?」
「そ。そのまんま言葉の通り、ぶつかった拍子に中身が入れ替わっちゃうの。まだ被害は数組なんだけど、犯人が捕まってなくって。入れ替わる以上の被害もなし、おそらく悪戯好きな妖精種の仕業だと思うんだけど……」
どうにもすばしっこいのよねえ、と溜息が嘆く。緊急要素も低く、昨今の情勢による人手不足でどうも後回しにされている様子。
「ごめんなさいね、アタシ、こういう時に頼れる知り合い、アダムちゃんしかいなくって」
「いや、僕が役に立てるならこれほど嬉しい事はないよ」
「ありがと! 終わったらたぁっぷりお礼しちゃうんだから! ――そうそう、それでアタシ考えたんだけどね?」
入れ替わる以上の被害はない、ということは犯人は入れ替わりの騒動そのものを面白がっているのではないか、という予測をもとにキースが立てた作戦、それは。
「なるほど、入れ替わったはずなのに何事もなく過ごしていたら不思議がった犯人が尻尾を見せるのでは? ということだね」
「ええ、入れ替わりやすい場所や条件なんかは絞り込んでおいたわ。他にも何人かお願いしてあるから――ふふ、サポートは任せて頂戴」
準備はバッチリ、とウィンクするキースに頷き。更に作戦の細かな部分を詰め、アダムは己の準備をすべく雑踏に紛れる。その背が見えなくなるまで笑顔で手を振ってから。
「――ごめんなさいねェ? アタシ、こういう時に面白そうな知り合い、アダムちゃんしかいなくって」
路地裏と同じ弧を描き、ルージュの持ち主は笑みの色を変えた。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.入れ替わりの人物になり切ってすごす
※このシナリオはアダム・クランプトン(CL3000185)のリクエストによって作成されたシナリオです。リクエストした以外のPCも参加する事ができます。
初リクエスト依頼がこうなるとは思いませんでした日方です。プレイングが恐ろしいような楽しみなような。
入れ替わりの妖精種をおびき出すために、入れ替わった人物になりきって何事もない日常をすごしてもらいます。
入れ替わる相手をプレイングに明記してください。なければランダムで決めますが、おもしろ……描写上の理由で基本は男女ペアになるかと思います。奇数の場合のお相手はどこぞのモブになるかと。
入れ替わり方はペア同士で自由に決めてくださって構いません。特になければ食パン咥えて曲がり角でごっつんことか朝起きたら入れ替わってたとかになります。
捕まえた妖精種をどうするかはお任せします。特になければマッスルな騎士の方々にこってり絞られるくらいになるかと。
色々と許してくださる方、お待ちしております。
初リクエスト依頼がこうなるとは思いませんでした日方です。プレイングが恐ろしいような楽しみなような。
入れ替わりの妖精種をおびき出すために、入れ替わった人物になりきって何事もない日常をすごしてもらいます。
入れ替わる相手をプレイングに明記してください。なければランダムで決めますが、おもしろ……描写上の理由で基本は男女ペアになるかと思います。奇数の場合のお相手はどこぞのモブになるかと。
入れ替わり方はペア同士で自由に決めてくださって構いません。特になければ食パン咥えて曲がり角でごっつんことか朝起きたら入れ替わってたとかになります。
捕まえた妖精種をどうするかはお任せします。特になければマッスルな騎士の方々にこってり絞られるくらいになるかと。
色々と許してくださる方、お待ちしております。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
1個
5個
1個




参加費
100LP
100LP
相談日数
6日
6日
参加人数
4/4
4/4
公開日
2020年09月10日
2020年09月10日
†メイン参加者 4人†
●
走る、走る、走る。
「うおおお!」
路地裏を走るのは、どこにでもいる自由騎士『白騎士』アダム・クランプトン(CL3000185)。
「遅刻遅刻ー!」
大通りを走るのは、念入りに身支度を整えた美少女騎士『剣の誓い』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)。
「走るの?走るのね、了解」
磯香る港を走るのは、その筋に見える騎士『何やってんだよお父さん』ニコラス・モラル(CL3000453)。
「入れ替わるってどんな拍子よ?」
商店街を走るのは、清廉なるシスター騎士『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。
キース・ハモンドの連絡を受けた四人は悪戯な妖精種を追って各々アデレードを走り回り――そして。
\ばちこーーーん☆/
煌く爆発音と共にとある四つ辻でごっつんこした。
●
もうもうと立ち込める煙を風が散らした後、座り込む人影たちの視線だけが忙しなく行き交う静寂の中。
「落ち着け落ち着こうクールだクール」
「いやどこから出したのよ!? 私そんなの持ってなかったけど!」
おもむろにあんぱんを食べ始めるエルシーに激しく突っ込むアダム。どことなくチグハグなその様子に。
「なーるほどねぇ?こうなるわけだ」
と、シニカルに唇の端を持ち上げるジュリエット。そのままどっかり胡坐をかき始めた彼女を、わなわなと指差してニコラスは叫んだ。
「……わ、わたくし達、入れ替わってますわーーーー!!!??」
どこかで聴いたかもしれない軽快なサウンドがバックに流れる。屋根の上でキースが蒸気ラジカセを片手にこっそりサムズアップした。それはともかく。
「こうなっては仕方ありませんわ」
ジュリエット、いやニコラス、ええい真ジュリは拳を握った。アダムと一緒に楽しいお仕事が出来るという以外何もわからないがこれだけはわかる。強い眼差しを向けられた真ニコは肩を竦めて頷いた。
「はいはい、分かってますよ。変なトコ触ったりなんて――」
「わたくしの姿になったからには完璧にジュリエット・ゴールドスミスの流儀を叩き込んで差し上げますわ!」
「そっち!?」
派手に華麗に美しくないジュリエットなどゴールドスミスの名が廃る、と演技指導を始める真ジュリに、真ニコは視線を下に向け、そしてエルシーを見た。
「い、いけない! 自分で言うのもなんだが1日中あんぱんを食べている様な自由騎士は僕ことアダム・クランプトン位しかいない!」
あんぱんを食べながら悲嘆に暮れていた。苦悩に打ち震えるたび装備されたたわわな二つのあんぱんが揺れる。その肩にそっと手が置かれた。
「へ~い、か~のじょ~、お茶しな~い?」
爽やかに歯を光らせたアダムがエルシーを覗き込む。気付いたのだ、あんぱん食ってる姿でさえも美人。こんなクール系美女がアデレードにいたなんて。なんで誰もナンパしないのかしら。これは私がナンパするしかないわ。私だけど。
「うっっわ! マジ美人! 美しい赤髪! 均整の取れたプロポーション! 女神かっ!」
大袈裟に叫ぶアダム、いや真エル。プロポーションの辺りで真ニコも大きく頷いた。とても素晴らしいあんぱんだ。それに比べて。
「どうせならそっちがよかったぜ」
もう一度視線を下に向けて溜息を吐いた真ニコ。だっておとこのこだもん。たゆんたゆん揺れるあんぱんを美味しそうに眺めている背後で、聖剣ロミオが高々と振り被られ――
そしてナンパにも気付かず心の平穏を保つべく一心不乱にあんぱんを食べていたエルシー、いやさ真アダ。このままではあまりに不自然、犯人に違和感を覚えられてしまう!
「ちょっと美人過ぎる私大丈夫? そういえば女性苦手だったわよね? 息してる?」
「えぇい、すまない僕の姿の君! 違和感を覚えられない為にあんぱんを食べてくれ!」
「大丈夫? 脳まであんぱん詰まってない? グハッ!?」
さすがのあんぱん祭に冷静になった真エルが覗き込んだ所へ無理矢理あんぱんをねじこむ真アダ。息が出来なくてがむしゃらに振り回される真エルの腕が良い感じにラリアットし――
\奇跡のクロスタイミング!/
再びもうもうと立ち込める煙がはけた後、大の字に伸びていたジュリエットとエルシーが起き上がる。
「ううっ、何故かいきなり後頭部に違和感が」
「喉は痛ぇし腹は重てぇ……おっ?」
しーーーん。再び交わされる視線。あんぱんが詰まってフゴフゴ言ってるアダムの代わりにニコラスは聖剣を放り投げて叫んだ。
「また入れ替わってるーーーーーーっ!?」
さっきはキジンの、つまり機械の身体だったからそこまで生々しくなかったけど。今度ははっきりとわかる。付いてる。(胸は)盛ってない。付いてる。
「いやまて私、落ち着け、冷静になるのよ、深呼吸よ」
「そうね、はいヒッヒッフー」
「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
「それおじさんでも分かるレベルで違くね??」
とまれ屋根から降りて来たキースは冷静になった一同の前でコホンと咳払い。
「無事に入れ替わったようね。とってもおもしrいえ順調で何よりだわ」
「本音が漏れてませんこと?」
「本題はここからよ、着いてきて頂戴」
半眼のアダムな真ジュリを華麗にスルーし、キースは真面目くさった顔で歩き始めた。
●
導かれてきた先は、買い物客で賑わう商店街。そう、本題はここから。妖精種をおびき出す為に普段通りに過ごさなければならない。顔を引き締める四人に頷き、キースはまずエルシー的な真ニコを手招いた。
「ただ歩けばいいって?」
分かりやすくていいけどよ、と首を傾げながらも歩き始める真ニコを見つめる真エル。普段ならこの後――
「やあ彼女、雑誌のモデルとか興味ない?」
「そうそう、よく用心棒に勧誘され……えっ?」
えっ?
「美味しいクレープ屋があるんだけど」
「夜景とか好き?」
群がってくるナンパ共にちょっと考え。真ニコは腕を組むと、どっこらせいと持ち上げた。
「ごめんなさい、お誘いは嬉しいのだけれど少し肩が凝ってしまって」
アンニュイにゆれるたわわなあんぱんに突き刺さる視線。あんぱんだいすきだよね、だっておとこのこだもん。真ニコはワカッテル風に頷く。その誘蛾灯のような情景に真エルは膝から崩れ落ちた。おかしい、見た目は同じなのにこんなにモテたことない。
「どういう、ことなの……?」
ゆらぁり、ナンパ野郎の背後から肩に手を置く。この世の終わりを詰め込んだ顔をされた。
「どういうことなのかしらーー!?!?」
千切っては投げ千切っては投げ。血涙を流した真エルは暴風と化し、真ニコの今は無いはずのタマタマがヒュンッてした。
「絶対に妖精種をブラッディ・カーニバルしてやるわ」
「そういうとこじゃねえかな……」
小さな声は風に溶け、赤いシスターに手を出すなという噂だけが商店街に増えたのだった。
妖精種が血祭にあげられるのが決定した頃。ジュリエットとアダムはキースに連れられとある店の前にいた。
「アダッダッダッ」
「キッ、キッスさんこのお店はッ」
可愛らしくも妖艶なテイスト、少女が華香る大人のオンナへと花開く手助けをするアイテム――そう、ここは。
「ランジェリーアデレードよ」
「「ランジェリーアデレード」」
「そう、女の子といったらお買い物、お買い物といったらランジェリーよ!」
「ちょっ、おま、お待ちなさムグッ」
真っ赤な顔で声を荒げるアダム、つまり真ジュリの口をあんぱんで塞いで耳に素早く口を寄せるキース。
「アダムちゃんの好み……知りたくなぁい?」
悪魔の囁きと共にランジェリーアデレードのショーウィンドウを指さす。そこに写るのはアダム。中身は違ってもアダム。うっかり見惚れる真ジュリの耳元へさらに流し込まれる甘言。
『ジュリエット……君にお願いがあるんだ』
「何でもおっしゃって、アダム……もぐもぐ」
うっとりと手を伸ばす(ガラスの)アダム。あんぱん食べてるけど。
『これ(ショーウィンドウの中に展示してあるおぱんてぃ)を僕だと思って身に着けて欲しい。そして結婚した暁には「けっ、けけけけっこ、ん! アダムったら気が早いですわーー!」
照れる真ジュリによってミシミシと音を立てるショーウィンドウ。だが夢見る真ジュリは気付かないまま(ガラスの)アダムにスリスリむっちゅーしようとしている。キースは隠し持っていた蒸気カメラに収めると、店の前でフリーズしたままの真アダの背を押した。
「僕に任せて、って言ってくれたのに」
「ウッ」
「大丈夫、これは潜入捜査よ」
「そっ、そうだねセンニュウソウサだ頑張れ僕」
最前線の激戦区に乗り込む以上の緊張感をもって足を踏み出す。なんかいい匂いがふわっと香り、真アダは痙攣し始めた。慣れない様子を見て取ったか店員がスススと寄ってくる。
「いらっしゃいませお好みをお伺いしますよ」
「こっこっこのみかいどんぐりかな!!」
一瞬固まるがそこはプロ、在庫をひっくり返してどんぐり柄の上下セットを探し出す。
「試着しますか?」
「シチャク……? ああクジャクの親戚かい? そうだよね? そうだと言ってくれないかジョニー?」
誰だよ。後ろで笑い崩れるキースに気付く余裕もなく必死に首を振る真アダ。だがしかし! 首を振ることでさらに周囲のヒラヒラキラキラめくるめくスカートの中にある布が視界にダイレクトアタック!
「わかった言い値で買う、あっちからそっちまで言い値で買うからもう許してくれーー!!」
(ジュリエットの)財布ごと叩き付け、真アダはダッシュで逃げ出したのだった。
●
(主にキースが)普段通りすごしている一日もそろそろオヤツ時。なんやかやあって疲れたので、カフェで休むことにした。
「おかわり自由よ、経費で落とすから気にせず飲んじゃって」
「あら気が利くわね」
「喉がカラカラですわ! 一番良い紅茶をお持ちになって」
「おじさんキンキンに冷えたビールとか飲みたいんだけど……無い?そっかー」
「僕は冷えた緑茶を貰おうかな、ジョッキで」
太っ腹なキースに歓声を上げてがぶ飲みする四人。にこにこと見守るキースの口の端が、抑えた掌の裏でニヤリと上がる。――異変は、真アダから。
「うっ!?」
ガタリ。真っ赤な顔で立ち上がる真アダ。落ち着かなげに辺りを見回し、自分の身体を見下ろし、そして顔色が蒼白になった。
「どうなさったのわたくし、いえアダム?」
「いっ、いや、その……」
尋常でない様子に心配そうに覗き込む真ジュリ。何でもないと言いながらも、真アダは段々と内股になって震えていって。ぽんっ、と真ニコが手を叩いた。
「あー、生理現象きちゃったんだろ。おじさんもそろそろすっきりしたいんだが……」
ちらっと真エルを見る真ニコ。親指で首ちょんぱされた。これ以上言ったら確実に半殺しされる。
「そっ、それは困りますわ……あっでもアダムにならわたくし……きゃーやっぱり無理無理無理ですわっ!」
別な意味で真っ赤になる真ジュリ。見た目はキジンの大男が両頬に手を当てイヤンイヤンと身悶える姿は、いくら美形とは言えちょっと審議が問われるような。
「でも、たしかにちょっと辛いわね……」
真エルももぞもぞし始める。とはいえ男子トイレとか入れない。清純可憐な乙女だし。ここテストに出るよ。アンニュイっぽい溜息を吐く肩を叩いて真ニコはサムズアップした。
「やり方教えとく?」
真エルはフフっと笑うと小首を傾げた。
「そうねえ。いっそ……切っちゃう?」
「ごめんなさいすいません勘弁してください」
あっこれあかんやつや。刃物を探す血走った眼に真ニコは悟った。皆わりと限界で余裕がない。気軽に揶揄ったらしぬ、おじさんのきんのたまが弾けしんじゃう。緊迫した空気を余所に、ススッと真アダに寄ったキースは神妙な声で耳元に囁いた。
「アダムちゃん……我慢は、身体によくないわ」
「でっでも」
「大丈夫よ、見なければいいの、そりゃあちょっと感触とか音とかは感じるかもしれないけどぉ」
「なるほどそのくらいなら……って無理無理無理無理ーーー!!!!!」
\がっしゃーーーん!!/
想像しかけた真アダは思い切り頭を横の窓に叩き付けた。そしてそのまま逃走する。血まみれな事に気付かないまま。
「犯人ーーー!! 出ちゃう前に出て来てくれーーーー!!」
後日、ケタケタ叫び回るブラッディお嬢様の噂が流れるがそれはさておき。
「お待ちになってアダム!?」
「そうよ! 殺っちゃえば出ないわ!」
「それ犯人の事だよな? おじさんの息子じゃないよな!?」
真アダを追いかける三人。普段通りに過ごせていたかだいぶ疑問だけどそろそろ大人の事情により犯人が見つかってもいいはず。
「見つけましたわ!!」
「いくらなんでも早くね?」
「見つけちゃったのね……」
「何でそんな残念そうなの!? 止めて! おじさんの息子の辺り見るの止めて!?」
人気のない砂浜にて追い詰められた本能が第六感を宇宙からシンパシー的なアレソレで発見された妖精種は、一見するとただの茶色いリス。こいつら何なのコワイ的な眼差しで尻尾を掴まれぶら下げられている。
「手間をかけさせてくれたわね。まぁ、かわいい悪戯……では済まされない大事件よ。乙女の尊厳が危なかったのよ」
「キッ、キキッ」
次は切るわ、と真顔で呟く真エルのハイライトの消えた眼に震える妖精種と真ニコ。
「わたくしは……もう少しこのままでも……」
「君! 頼む、早く元に戻してくれ限界なんだ!」
「ちょっとアダムのお願いが聞けませんの貴方!?」
「キキーッ!?」
血まみれのお嬢様と大柄なキジンにも迫られ命の危機に毛を逆立てる妖精種。そこへ。
「あら、無事に見付かったのね」
「キッスさ、あっ!?」
よかったわー、と手を叩きながら現れるキース。皆の意識がそちらに向いた一瞬の隙を突いて拘束を振り解いた妖精種は、空を蹴りキースの方向へ跳んだ。
「っと危なかったわね、ここまできて逃がしちゃうところよ。何にせよお疲れ様、後は任せて、しかるべきところにお願いするから」
両手でキャッチして握り締め、キースは笑顔で背を向けて足早に立ち去っていく。
「これで戻ってしまいますのね。わたくしは……やっぱりもう少しこのままでも……」
「それにしても最後、手をスルっと抜けた時は焦ったわ」
「本当だね、たまたまキッスさんがいてくれたから助かったよ」
「ああ、手の中に一目散に飛び込んでってくれたからなぁ?」
無事に解決した安堵の空気を纏い、姦しく話が弾む中。ニコラスはふと、キースが立ち去った方へ視線を投げる。
「――まるで『味方が来た』、みたいにな」
口内で小さく呟かれたと同時。遠く離れたルージュの唇が、至極楽しそうに弧を描いた。
走る、走る、走る。
「うおおお!」
路地裏を走るのは、どこにでもいる自由騎士『白騎士』アダム・クランプトン(CL3000185)。
「遅刻遅刻ー!」
大通りを走るのは、念入りに身支度を整えた美少女騎士『剣の誓い』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)。
「走るの?走るのね、了解」
磯香る港を走るのは、その筋に見える騎士『何やってんだよお父さん』ニコラス・モラル(CL3000453)。
「入れ替わるってどんな拍子よ?」
商店街を走るのは、清廉なるシスター騎士『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。
キース・ハモンドの連絡を受けた四人は悪戯な妖精種を追って各々アデレードを走り回り――そして。
\ばちこーーーん☆/
煌く爆発音と共にとある四つ辻でごっつんこした。
●
もうもうと立ち込める煙を風が散らした後、座り込む人影たちの視線だけが忙しなく行き交う静寂の中。
「落ち着け落ち着こうクールだクール」
「いやどこから出したのよ!? 私そんなの持ってなかったけど!」
おもむろにあんぱんを食べ始めるエルシーに激しく突っ込むアダム。どことなくチグハグなその様子に。
「なーるほどねぇ?こうなるわけだ」
と、シニカルに唇の端を持ち上げるジュリエット。そのままどっかり胡坐をかき始めた彼女を、わなわなと指差してニコラスは叫んだ。
「……わ、わたくし達、入れ替わってますわーーーー!!!??」
どこかで聴いたかもしれない軽快なサウンドがバックに流れる。屋根の上でキースが蒸気ラジカセを片手にこっそりサムズアップした。それはともかく。
「こうなっては仕方ありませんわ」
ジュリエット、いやニコラス、ええい真ジュリは拳を握った。アダムと一緒に楽しいお仕事が出来るという以外何もわからないがこれだけはわかる。強い眼差しを向けられた真ニコは肩を竦めて頷いた。
「はいはい、分かってますよ。変なトコ触ったりなんて――」
「わたくしの姿になったからには完璧にジュリエット・ゴールドスミスの流儀を叩き込んで差し上げますわ!」
「そっち!?」
派手に華麗に美しくないジュリエットなどゴールドスミスの名が廃る、と演技指導を始める真ジュリに、真ニコは視線を下に向け、そしてエルシーを見た。
「い、いけない! 自分で言うのもなんだが1日中あんぱんを食べている様な自由騎士は僕ことアダム・クランプトン位しかいない!」
あんぱんを食べながら悲嘆に暮れていた。苦悩に打ち震えるたび装備されたたわわな二つのあんぱんが揺れる。その肩にそっと手が置かれた。
「へ~い、か~のじょ~、お茶しな~い?」
爽やかに歯を光らせたアダムがエルシーを覗き込む。気付いたのだ、あんぱん食ってる姿でさえも美人。こんなクール系美女がアデレードにいたなんて。なんで誰もナンパしないのかしら。これは私がナンパするしかないわ。私だけど。
「うっっわ! マジ美人! 美しい赤髪! 均整の取れたプロポーション! 女神かっ!」
大袈裟に叫ぶアダム、いや真エル。プロポーションの辺りで真ニコも大きく頷いた。とても素晴らしいあんぱんだ。それに比べて。
「どうせならそっちがよかったぜ」
もう一度視線を下に向けて溜息を吐いた真ニコ。だっておとこのこだもん。たゆんたゆん揺れるあんぱんを美味しそうに眺めている背後で、聖剣ロミオが高々と振り被られ――
そしてナンパにも気付かず心の平穏を保つべく一心不乱にあんぱんを食べていたエルシー、いやさ真アダ。このままではあまりに不自然、犯人に違和感を覚えられてしまう!
「ちょっと美人過ぎる私大丈夫? そういえば女性苦手だったわよね? 息してる?」
「えぇい、すまない僕の姿の君! 違和感を覚えられない為にあんぱんを食べてくれ!」
「大丈夫? 脳まであんぱん詰まってない? グハッ!?」
さすがのあんぱん祭に冷静になった真エルが覗き込んだ所へ無理矢理あんぱんをねじこむ真アダ。息が出来なくてがむしゃらに振り回される真エルの腕が良い感じにラリアットし――
\奇跡のクロスタイミング!/
再びもうもうと立ち込める煙がはけた後、大の字に伸びていたジュリエットとエルシーが起き上がる。
「ううっ、何故かいきなり後頭部に違和感が」
「喉は痛ぇし腹は重てぇ……おっ?」
しーーーん。再び交わされる視線。あんぱんが詰まってフゴフゴ言ってるアダムの代わりにニコラスは聖剣を放り投げて叫んだ。
「また入れ替わってるーーーーーーっ!?」
さっきはキジンの、つまり機械の身体だったからそこまで生々しくなかったけど。今度ははっきりとわかる。付いてる。(胸は)盛ってない。付いてる。
「いやまて私、落ち着け、冷静になるのよ、深呼吸よ」
「そうね、はいヒッヒッフー」
「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
「それおじさんでも分かるレベルで違くね??」
とまれ屋根から降りて来たキースは冷静になった一同の前でコホンと咳払い。
「無事に入れ替わったようね。とってもおもしrいえ順調で何よりだわ」
「本音が漏れてませんこと?」
「本題はここからよ、着いてきて頂戴」
半眼のアダムな真ジュリを華麗にスルーし、キースは真面目くさった顔で歩き始めた。
●
導かれてきた先は、買い物客で賑わう商店街。そう、本題はここから。妖精種をおびき出す為に普段通りに過ごさなければならない。顔を引き締める四人に頷き、キースはまずエルシー的な真ニコを手招いた。
「ただ歩けばいいって?」
分かりやすくていいけどよ、と首を傾げながらも歩き始める真ニコを見つめる真エル。普段ならこの後――
「やあ彼女、雑誌のモデルとか興味ない?」
「そうそう、よく用心棒に勧誘され……えっ?」
えっ?
「美味しいクレープ屋があるんだけど」
「夜景とか好き?」
群がってくるナンパ共にちょっと考え。真ニコは腕を組むと、どっこらせいと持ち上げた。
「ごめんなさい、お誘いは嬉しいのだけれど少し肩が凝ってしまって」
アンニュイにゆれるたわわなあんぱんに突き刺さる視線。あんぱんだいすきだよね、だっておとこのこだもん。真ニコはワカッテル風に頷く。その誘蛾灯のような情景に真エルは膝から崩れ落ちた。おかしい、見た目は同じなのにこんなにモテたことない。
「どういう、ことなの……?」
ゆらぁり、ナンパ野郎の背後から肩に手を置く。この世の終わりを詰め込んだ顔をされた。
「どういうことなのかしらーー!?!?」
千切っては投げ千切っては投げ。血涙を流した真エルは暴風と化し、真ニコの今は無いはずのタマタマがヒュンッてした。
「絶対に妖精種をブラッディ・カーニバルしてやるわ」
「そういうとこじゃねえかな……」
小さな声は風に溶け、赤いシスターに手を出すなという噂だけが商店街に増えたのだった。
妖精種が血祭にあげられるのが決定した頃。ジュリエットとアダムはキースに連れられとある店の前にいた。
「アダッダッダッ」
「キッ、キッスさんこのお店はッ」
可愛らしくも妖艶なテイスト、少女が華香る大人のオンナへと花開く手助けをするアイテム――そう、ここは。
「ランジェリーアデレードよ」
「「ランジェリーアデレード」」
「そう、女の子といったらお買い物、お買い物といったらランジェリーよ!」
「ちょっ、おま、お待ちなさムグッ」
真っ赤な顔で声を荒げるアダム、つまり真ジュリの口をあんぱんで塞いで耳に素早く口を寄せるキース。
「アダムちゃんの好み……知りたくなぁい?」
悪魔の囁きと共にランジェリーアデレードのショーウィンドウを指さす。そこに写るのはアダム。中身は違ってもアダム。うっかり見惚れる真ジュリの耳元へさらに流し込まれる甘言。
『ジュリエット……君にお願いがあるんだ』
「何でもおっしゃって、アダム……もぐもぐ」
うっとりと手を伸ばす(ガラスの)アダム。あんぱん食べてるけど。
『これ(ショーウィンドウの中に展示してあるおぱんてぃ)を僕だと思って身に着けて欲しい。そして結婚した暁には「けっ、けけけけっこ、ん! アダムったら気が早いですわーー!」
照れる真ジュリによってミシミシと音を立てるショーウィンドウ。だが夢見る真ジュリは気付かないまま(ガラスの)アダムにスリスリむっちゅーしようとしている。キースは隠し持っていた蒸気カメラに収めると、店の前でフリーズしたままの真アダの背を押した。
「僕に任せて、って言ってくれたのに」
「ウッ」
「大丈夫、これは潜入捜査よ」
「そっ、そうだねセンニュウソウサだ頑張れ僕」
最前線の激戦区に乗り込む以上の緊張感をもって足を踏み出す。なんかいい匂いがふわっと香り、真アダは痙攣し始めた。慣れない様子を見て取ったか店員がスススと寄ってくる。
「いらっしゃいませお好みをお伺いしますよ」
「こっこっこのみかいどんぐりかな!!」
一瞬固まるがそこはプロ、在庫をひっくり返してどんぐり柄の上下セットを探し出す。
「試着しますか?」
「シチャク……? ああクジャクの親戚かい? そうだよね? そうだと言ってくれないかジョニー?」
誰だよ。後ろで笑い崩れるキースに気付く余裕もなく必死に首を振る真アダ。だがしかし! 首を振ることでさらに周囲のヒラヒラキラキラめくるめくスカートの中にある布が視界にダイレクトアタック!
「わかった言い値で買う、あっちからそっちまで言い値で買うからもう許してくれーー!!」
(ジュリエットの)財布ごと叩き付け、真アダはダッシュで逃げ出したのだった。
●
(主にキースが)普段通りすごしている一日もそろそろオヤツ時。なんやかやあって疲れたので、カフェで休むことにした。
「おかわり自由よ、経費で落とすから気にせず飲んじゃって」
「あら気が利くわね」
「喉がカラカラですわ! 一番良い紅茶をお持ちになって」
「おじさんキンキンに冷えたビールとか飲みたいんだけど……無い?そっかー」
「僕は冷えた緑茶を貰おうかな、ジョッキで」
太っ腹なキースに歓声を上げてがぶ飲みする四人。にこにこと見守るキースの口の端が、抑えた掌の裏でニヤリと上がる。――異変は、真アダから。
「うっ!?」
ガタリ。真っ赤な顔で立ち上がる真アダ。落ち着かなげに辺りを見回し、自分の身体を見下ろし、そして顔色が蒼白になった。
「どうなさったのわたくし、いえアダム?」
「いっ、いや、その……」
尋常でない様子に心配そうに覗き込む真ジュリ。何でもないと言いながらも、真アダは段々と内股になって震えていって。ぽんっ、と真ニコが手を叩いた。
「あー、生理現象きちゃったんだろ。おじさんもそろそろすっきりしたいんだが……」
ちらっと真エルを見る真ニコ。親指で首ちょんぱされた。これ以上言ったら確実に半殺しされる。
「そっ、それは困りますわ……あっでもアダムにならわたくし……きゃーやっぱり無理無理無理ですわっ!」
別な意味で真っ赤になる真ジュリ。見た目はキジンの大男が両頬に手を当てイヤンイヤンと身悶える姿は、いくら美形とは言えちょっと審議が問われるような。
「でも、たしかにちょっと辛いわね……」
真エルももぞもぞし始める。とはいえ男子トイレとか入れない。清純可憐な乙女だし。ここテストに出るよ。アンニュイっぽい溜息を吐く肩を叩いて真ニコはサムズアップした。
「やり方教えとく?」
真エルはフフっと笑うと小首を傾げた。
「そうねえ。いっそ……切っちゃう?」
「ごめんなさいすいません勘弁してください」
あっこれあかんやつや。刃物を探す血走った眼に真ニコは悟った。皆わりと限界で余裕がない。気軽に揶揄ったらしぬ、おじさんのきんのたまが弾けしんじゃう。緊迫した空気を余所に、ススッと真アダに寄ったキースは神妙な声で耳元に囁いた。
「アダムちゃん……我慢は、身体によくないわ」
「でっでも」
「大丈夫よ、見なければいいの、そりゃあちょっと感触とか音とかは感じるかもしれないけどぉ」
「なるほどそのくらいなら……って無理無理無理無理ーーー!!!!!」
\がっしゃーーーん!!/
想像しかけた真アダは思い切り頭を横の窓に叩き付けた。そしてそのまま逃走する。血まみれな事に気付かないまま。
「犯人ーーー!! 出ちゃう前に出て来てくれーーーー!!」
後日、ケタケタ叫び回るブラッディお嬢様の噂が流れるがそれはさておき。
「お待ちになってアダム!?」
「そうよ! 殺っちゃえば出ないわ!」
「それ犯人の事だよな? おじさんの息子じゃないよな!?」
真アダを追いかける三人。普段通りに過ごせていたかだいぶ疑問だけどそろそろ大人の事情により犯人が見つかってもいいはず。
「見つけましたわ!!」
「いくらなんでも早くね?」
「見つけちゃったのね……」
「何でそんな残念そうなの!? 止めて! おじさんの息子の辺り見るの止めて!?」
人気のない砂浜にて追い詰められた本能が第六感を宇宙からシンパシー的なアレソレで発見された妖精種は、一見するとただの茶色いリス。こいつら何なのコワイ的な眼差しで尻尾を掴まれぶら下げられている。
「手間をかけさせてくれたわね。まぁ、かわいい悪戯……では済まされない大事件よ。乙女の尊厳が危なかったのよ」
「キッ、キキッ」
次は切るわ、と真顔で呟く真エルのハイライトの消えた眼に震える妖精種と真ニコ。
「わたくしは……もう少しこのままでも……」
「君! 頼む、早く元に戻してくれ限界なんだ!」
「ちょっとアダムのお願いが聞けませんの貴方!?」
「キキーッ!?」
血まみれのお嬢様と大柄なキジンにも迫られ命の危機に毛を逆立てる妖精種。そこへ。
「あら、無事に見付かったのね」
「キッスさ、あっ!?」
よかったわー、と手を叩きながら現れるキース。皆の意識がそちらに向いた一瞬の隙を突いて拘束を振り解いた妖精種は、空を蹴りキースの方向へ跳んだ。
「っと危なかったわね、ここまできて逃がしちゃうところよ。何にせよお疲れ様、後は任せて、しかるべきところにお願いするから」
両手でキャッチして握り締め、キースは笑顔で背を向けて足早に立ち去っていく。
「これで戻ってしまいますのね。わたくしは……やっぱりもう少しこのままでも……」
「それにしても最後、手をスルっと抜けた時は焦ったわ」
「本当だね、たまたまキッスさんがいてくれたから助かったよ」
「ああ、手の中に一目散に飛び込んでってくれたからなぁ?」
無事に解決した安堵の空気を纏い、姦しく話が弾む中。ニコラスはふと、キースが立ち去った方へ視線を投げる。
「――まるで『味方が来た』、みたいにな」
口内で小さく呟かれたと同時。遠く離れたルージュの唇が、至極楽しそうに弧を描いた。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『初めてのランジェリー』
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)
『ブラッディお嬢様』
取得者: ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)
『ブラッディ・カーニバル』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『おじさんの息子は守られた』
取得者: ニコラス・モラル(CL3000453)
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)
『ブラッディお嬢様』
取得者: ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)
『ブラッディ・カーニバル』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『おじさんの息子は守られた』
取得者: ニコラス・モラル(CL3000453)
FL送付済