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薬草畑のならず者

●森の薬草畑
イ・ラプセルは南部にある、とある森林地帯では、薬草が産出されるのだという。
主に飲み薬として、滋養強壮に――軽症な風邪などの治療に幅広く使われているものだ。
この村は、そんな薬草の採取と出荷を生業としている。薬草の人工栽培は難しく、野生のそれを、捕り過ぎぬように管理しながら、慎ましく暮らしていた。
――ところが、である。
「だからよぉ、あの辺は俺たちが買い上げた、って言ってんだよ。だからあそこの薬草は俺たちのモン。ちげぇか?」
ガラの悪い男は、にやにやと笑いながら、村民たちを恫喝する。
薬草の群生地に、ガラの悪い男たちが現れたのは、つい最近の事だ。草地を囲い、村人たちを追い払った男たちは、土地の所有を宣言。薬草の採取をしたければ、金をよこせ……と言う、お決まりの文句をつけてきたという。
「で、ですが……お支払いするほどのたくわえは、この村には……」
その要求金額は法外である。薬草による収入を差し引いても、僅かな期間で村が立ちいかなくなるのは目に見えていた。
「あ? あー。別に、良いんじゃねぇの? 薬草はこれから俺たちが捌くって事でさ! 新しい仕事でも探してくれや!」
そう言って、男はげたげたと笑った。このような暴挙、許されていいはずがない――。
●ならず者たちを撃退せよ
「ちゅう、胸糞悪い連中が居ってな。あんたはんらには、こいつらをもう、ギッタンギッタンにしてやって欲しいんですわ!」
『発明家』佐クラ・クラン・ヒラガ(nCL3000008)は、憤懣やるかたない、と言った表情で、自由騎士たちに告げた。
イ・ラプセルはとある山村、その住民達より生活の手立てを奪い無法を働くならず者たちを成敗してほしい……と言うのが、今回のお仕事である。
ならず者たちは、いずれも非オラクル。一般人である。12名ほどで徒党を組んでおり、いずれも剣などで武装しているようだ。
「連中は、森の中、薬草が生えてる所に住民たちが休憩するために建てた小屋があるんやけど、そこを占拠しててな? 基本的に、この小屋周辺で戦う事になりますわ」
小屋は二階建ての小さなものだ。内部に立てこもれる程でもないため、入り口の見張りに発見されれば、ぞろぞろと全員が建物から出てくるだろう。
一般人相手ゆえ、実力はさほど恐れるものではないが、数は自由騎士たちより多い。油断はしない方が良いだろう。
「んー、こんな所やろか。ほな、あんじょう、よろしゅう頼んますわ!」
そう言って、佐クラは自由騎士たちを送り出したのであった。
イ・ラプセルは南部にある、とある森林地帯では、薬草が産出されるのだという。
主に飲み薬として、滋養強壮に――軽症な風邪などの治療に幅広く使われているものだ。
この村は、そんな薬草の採取と出荷を生業としている。薬草の人工栽培は難しく、野生のそれを、捕り過ぎぬように管理しながら、慎ましく暮らしていた。
――ところが、である。
「だからよぉ、あの辺は俺たちが買い上げた、って言ってんだよ。だからあそこの薬草は俺たちのモン。ちげぇか?」
ガラの悪い男は、にやにやと笑いながら、村民たちを恫喝する。
薬草の群生地に、ガラの悪い男たちが現れたのは、つい最近の事だ。草地を囲い、村人たちを追い払った男たちは、土地の所有を宣言。薬草の採取をしたければ、金をよこせ……と言う、お決まりの文句をつけてきたという。
「で、ですが……お支払いするほどのたくわえは、この村には……」
その要求金額は法外である。薬草による収入を差し引いても、僅かな期間で村が立ちいかなくなるのは目に見えていた。
「あ? あー。別に、良いんじゃねぇの? 薬草はこれから俺たちが捌くって事でさ! 新しい仕事でも探してくれや!」
そう言って、男はげたげたと笑った。このような暴挙、許されていいはずがない――。
●ならず者たちを撃退せよ
「ちゅう、胸糞悪い連中が居ってな。あんたはんらには、こいつらをもう、ギッタンギッタンにしてやって欲しいんですわ!」
『発明家』佐クラ・クラン・ヒラガ(nCL3000008)は、憤懣やるかたない、と言った表情で、自由騎士たちに告げた。
イ・ラプセルはとある山村、その住民達より生活の手立てを奪い無法を働くならず者たちを成敗してほしい……と言うのが、今回のお仕事である。
ならず者たちは、いずれも非オラクル。一般人である。12名ほどで徒党を組んでおり、いずれも剣などで武装しているようだ。
「連中は、森の中、薬草が生えてる所に住民たちが休憩するために建てた小屋があるんやけど、そこを占拠しててな? 基本的に、この小屋周辺で戦う事になりますわ」
小屋は二階建ての小さなものだ。内部に立てこもれる程でもないため、入り口の見張りに発見されれば、ぞろぞろと全員が建物から出てくるだろう。
一般人相手ゆえ、実力はさほど恐れるものではないが、数は自由騎士たちより多い。油断はしない方が良いだろう。
「んー、こんな所やろか。ほな、あんじょう、よろしゅう頼んますわ!」
そう言って、佐クラは自由騎士たちを送り出したのであった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.すべてのならず者の撃退
お世話になっております。洗井落雲です。
薬草畑を占拠する、卑劣なならず者たちを撃退しましょう。
●状況
皆さんには、薬草畑のある森へと向かい、休憩小屋を占拠するならず者たちを襲撃、すべて無力化してください。特に生死は問いません。
作戦結構時間は昼。森の中ですが、小屋の周囲はある程度整備がされていて、日の光などもあり、明るく、動きやすい地点となっています。
小屋のある場所までの地図などはありますので、迷うことなく、スムーズに到着できるものとします。
小屋はあまり大きくはなく、入り口で戦闘が始まったり、入り口にいる見張りに見つかったりした場合は、中にいるならず者たちはすべて外へと出てきて、自由騎士たちに襲い掛かるでしょう。
基本的にどのような作戦をとっても構いませんが、隣接する薬草畑や、森に被害を与えてしまうような大掛かりなものは、本末転倒となってしまうため推奨はされません。
●エネミー
ならず者 ×12
特徴
非オラクルの一般人です。
実力の程は自由騎士たちに劣りますが、数は多めのため油断はできません。
基本的に、物理属性の攻撃を行ってきます。
武器に毒を仕込んでいるのか、稀に『ポイズン1』or『パラライズ1』
を付与する攻撃も行います。
以上となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
薬草畑を占拠する、卑劣なならず者たちを撃退しましょう。
●状況
皆さんには、薬草畑のある森へと向かい、休憩小屋を占拠するならず者たちを襲撃、すべて無力化してください。特に生死は問いません。
作戦結構時間は昼。森の中ですが、小屋の周囲はある程度整備がされていて、日の光などもあり、明るく、動きやすい地点となっています。
小屋のある場所までの地図などはありますので、迷うことなく、スムーズに到着できるものとします。
小屋はあまり大きくはなく、入り口で戦闘が始まったり、入り口にいる見張りに見つかったりした場合は、中にいるならず者たちはすべて外へと出てきて、自由騎士たちに襲い掛かるでしょう。
基本的にどのような作戦をとっても構いませんが、隣接する薬草畑や、森に被害を与えてしまうような大掛かりなものは、本末転倒となってしまうため推奨はされません。
●エネミー
ならず者 ×12
特徴
非オラクルの一般人です。
実力の程は自由騎士たちに劣りますが、数は多めのため油断はできません。
基本的に、物理属性の攻撃を行ってきます。
武器に毒を仕込んでいるのか、稀に『ポイズン1』or『パラライズ1』
を付与する攻撃も行います。
以上となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年07月04日
2019年07月04日
†メイン参加者 8人†
●薬草畑までの途
穏やかな日の差す森の中。
「素敵な場所ですね……森の香りが心地よいです。こんな場合でなければ、お散歩をするのによい所なのですが……」
森の空気を胸いっぱいに吸い込んで『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)が言った。ならず者による悪意など知らぬように、森は静けさと穏やかさを保っている。
ならず者たちが占拠しているという森の小屋へと向かって、自由騎士たちは歩みを進めていた。手にした地図は、村人たちから提供されたものである。日ごろから村人たちが行き交っていたこともあり、小屋まで迷う事はなさそうだった。
「ならず者たちの言い分に関してだが――」
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)が、ふむ、と唸りつつ、言った。ならず者たちは、この土地を買い上げた……と主張しているのだ。
「商人たちとのコネも利用して調べてみたが、近辺の土地の所有権が動いた形跡がない……というか、この辺りは、個人が所有するような土地ではないはずだぜ」
「こちらは諸侯の面々にも確認してみたけれど、答えは同じだったよ。個人が――ましてや、アウトローが所有できるはずがない」
ウェルスの言葉に続いたのは、『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)だ。二人の調べによれば、ならず者たちの主張は、根本的に成立していないという事になる。
「という事は、完全に、ならず者たちのでっち上げ……という事ですねー?」
些かの怒りの色を乗せながら、『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は言った。
「それか、あの連中も、いい加減な詐欺師に騙されたか――」
(「他国の工作員に焚きつけられたか。まぁ、そこは証拠がない」)
テオドールの言葉に、ウェルスは胸中で続ける。証拠も確証もない以上、ここで口に出す必要はないだろう。思い過ごし、という事も充分にありうる。
「だとしても、同情はしないけれど」
肩をすくめるテオドール。自由騎士たちにとっての憂いは、ここが正規な取引によってならず者たちに譲渡されていた場合、というケースであったが、どうやらその可能性は0となったようだ。こうなれば、状況は純粋な悪党退治へと切り替わる。
「ならば、遠慮はいらないわね。依頼通り、ギッタンギッタンにしてやらないと」
うん、と頷いて、『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)はそう言った。自由騎士たちの決意も固まった。遠慮なく捕まえて、しかるべきところへ叩きだすだけだ。
「みなさん、よろしくおねがいしますっ。リリー……あ、いえ、私も、がんばりますっ」
緊張の色を乗せながら、『新米自由騎士』リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)が言った。まだ、こういった場には慣れていないのかもしれない。
「こちらこそ、よろしくです。頑張りましょう!」
頷いて返すのは、『まだ炎は消えないけど』キリ・カーレント(CL3000547)だ。
「頼りにしていますよ、二人とも」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は、微笑で二人へと、告げる。初対面の者もいたかもしれないが、今は、運命を共にする仲間だ。信頼し合って戦う事が重要だろう。
●下準備は入念に
さて、しばし森の中を進めば、やがて左手に開けた草原のような場所と、正面に二階建ての小屋が見えた。正面には、見るからに粗野な男が二人、あたりを威嚇するような視線を送っている。ならず者の集団、その見張りだろう。
自由騎士たちは、まず見張りに見つからぬように、付近に潜んだ。それから、パーティを二手に分ける。
エルシー、ウェルス、テオドール、フーリィン……この4人は、正面から攻撃を仕掛けるために、ひとまずここで待機する。
残るアリア、モカ、リリアナ、キリの4人は、正面から迂回し、静かに、建物の裏手へと回っていった。
「……」
しずかに、というジェスチャーを仲間に向けたアリアは、スキルを利用し、自身、そして仲間たちが発する音を可能な限り抑えた。
「準備は良い? いち、にの、さん、で跳ぶよ?」
アリアが続ける。スキルの範囲から出てしまえば、仲間たちの発する音はあたりに響くことになる。可能な限り、近い範囲で動いた方が良い。
「いち」
「にの……」
キリ、そしてモカが声をあげる。さん! その合図に合わせて、仲間たちは一斉に跳躍した。モカは、その能力で飛行し、高く飛ぶ。目指すは、屋根の上へ。建物の大きさ自体は、10mには届いていないため、跳躍可能な距離の範囲内だったと言えるだろう。
たん、と、仲間たちは屋根の上へと着地する。わずかな音がしたが、それもスキルによりかき消されているはずだ。とはいえ、些か緊張もする。
「……ふぅ」
キリがほっと、胸をなでおろした。皆、無事に屋根の上へと到着しつつ、しかし内部のならず者たちには、自分たちの存在は発覚していないようだった。
休む間もなく、キリは耳を澄ませた。階下に響く、人の生活音。ならず者たちが発する音を、ひとつ残らず確認していく。
「ひとり……ふたり……情報通り、12人。ほかに人はいない……と、思います」
キリが言うのへ、リリアナが頷いた。
「それじゃあ、皆に合図しますね」
と、屋根の上からひょこりと顔と手を出して、ぱたぱたと振って見せる。
「正面側が動き出したら、行動開始ですね。悪い人たちは、ちゃんと懲らしめてあげましょう」
モカの言葉に、仲間達は頷くのであった。
一方、こちらは正面待機チーム。
「あれは……リリアナさんですね。どうやら、上手くいったようです」
そう言うのは、エルシーだ。エルシー達からは、リリアナが手を振っているのが良く見える。位置についた、という事だ。
「さて、じゃあ、悪党退治を始めるか」
ウェルスが声をあげるのへ、仲間達は頷く。正面待機チームの自由騎士たちは、一気に駆けだすと、小屋の正面へと陣取った。見張りの男たちが、一瞬、驚きの様子を見せるが、すぐのこちらを威嚇するような表情を見せ、
「なんだテメェら!!」
と、語気を強めて吐き捨てる。
「……わかりやすく悪党、という感じですねー」
呆れた様子で苦笑するフーリィン。あるいは、他の自由騎士たちも、同感だったかもしれない。
「我等は自由騎士である! その小屋と薬草地の件で参った! 何を根拠に労働者に法外な金銭を要求するか伺おう!」
テオドールが朗々と声を張り上げる。自由騎士。その言葉に、二人のならず者に動揺の色が見える。その様子から、なるほど、これは詐欺の類だな、と、テオドールは確信した。
「あー、失礼失礼。自由騎士様が、何の御用で?」
と、声をあげながら小屋からやってきたのは、おそらくリーダー格と思わしき男であった。リーダーはこちらを値踏みするような視線を送り付ける。
「先ほど申しあげたとおりだ。貴殿らが村の労働者に対し、法外な金銭を要求する、その根拠を提示願いたい!」
「根拠ってそりゃあ……この辺の土地は俺らが買ったんですよ。ほら、証文もここに」
ひらひらと、証文とされる紙を手にするリーダー。臆することなく、ウェルスは続けた。
「はぁ、よく見えねぇな? その証文、ちっと渡しちゃくれねぇか?」
その言葉に、リーダーが顔をしかめた。
「何を根拠に、見せなきゃならないんで?」
「それを見せてもらえれば、素直に帰りますよ」
エルシーが、言った。
「それとも……見せられない理由でもあるんですかねー? 偽造だとかー?」
フーリィンの言葉に、リーダーはぎくり、とした表情を見せた。確定した。真っ黒だ。
「ちっ……自由騎士サマ方よぉ、森に散歩に来て遭難ってなぁ、なんともなさけねぇ末路だとは思わねぇか?」
リーダーが合図をする。と、小屋からぞろぞろと、ならず者たちがやって来る。それは、キリが確認したとおりの、総勢12名だ。
「まったく……わかりやすいにもほどがありますね。こうなっては、仕方がありません。おとなしく捕まるか、痛い目をみてから捕まるか、好きな方を選びなさい」
エルシーが肩をすくめる。
「うるせぇ! たった4人で何ができる! 野郎ども、やっちまえ! 死体を埋める場所は山ほどある!」
わかりやすく醜悪な本性をさらけ出すならず者たち。
「……こいよならずもの! こやになんかこもってないでかかってこーい!」
と、慣れぬ挑発の声をあげるフーリィン。その声に乗ってか乗らずか、ならず者たちはじりじりと、自由騎士たちを包囲すべくにじり寄る。
「馬鹿な奴らだ。この数に勝てるわけがねぇだろ」
リーダーがあざ笑うのへ、ウェルスは答えた。
「いくつか勘違いしている。まず一つ、質の問題だ。多少の数の差なんて、俺たちは覆せる。それからもう一つ。俺たちは、4人で来たわけじゃない」
と――ならず者たちの背後へと、4つの影が降り立った。
降り立った4つの影――屋根の上にて待機していた自由騎士たちは、このタイミングで、地上へと降り立ち、ならず者たちを逆に包囲する形をとったのだ。
「私たちは、8人できたのよ。これで逃げ場はないわよ、あなた達。卑怯とは、言わせませんよ」
アリアが声をあげる。
「一応、聞いておきます。もし皆さんがやったことを反省して、村の皆さんに謝ってくれるなら、手荒な真似はしません」
モカが投降を促すが、ならず者たちには効果が無い様だった。
「うるせぇ! 4人増えたからなんだ! 少し手間が増えただけだ!」
「貴方たちがやっていることの意味が解りますか? 村人の皆さんが困るだけでなく……本当に、薬草を必要としている人たちが困るっていう事が」
静かな怒りを乗せて、キリが言う。だが、その言葉も、欲に染まったならず者たちには届かないようだ。
「うるせぇ! やるぞテメェら! こいつらを返り討ちにしてやれ!」
ならず者たちの間に殺気が漲る。
「皆さん、毒を刃に塗っている人は、私が調べます! 気を付けてください!」
リリアナの言葉に、仲間達は頷く。それを合図にしたかのように、怒号と共に、ならず者たちは自由騎士たちへと襲い掛かってきたのであった。
●薬草畑を取り返せ!
ならず者が繰り出したナイフを、アリアは前に出て、『萃う慈悲の祈り』にて受け止めた。蛇腹の剣がナイフと接触し、甲高い金属音を奏でる。アリアはナイフを打ち払うと、もう片手の刃、『葬送の願い』を振るって、ならず者を斬りつけた。とはいえ、刃は立てぬ、不殺の一撃。ぎゃあ、という声と共に、ならず者は意識を手放す。
「なるほど、実力はそこまでではない……」
しかし、次のならず者が、長剣を手にアリアへと襲い掛かる。これは受けられないと判断したアリアが、身をひねって刃を回避。
「けど数の多さは脅威ね……けれど!」
反撃に、ならず者の長剣を叩くアリア。
「ハァッ!」
気合と共にきらめく紅竜の籠手が、ならず者を殴り飛ばす。拳の主、エルシーは再び構えをとると、言った。
「さて、貴方達には手加減無用みたいだから、思いっきり行くわよ?」
襲い来るならず者を攻撃を、エルシーは踊るような動きで回避。情熱的なステップと共に、繰り出された拳が、脚が、ならず者を滅多打ちにする。
「皆の笑顔を奪うような人たちは、許しません!」
モカは飛行、そして急降下による疾風の如き刃が、ならず者を吹き飛ばした。その場にとどまらずに跳躍。跳んで、飛んで、再び疾風の刃を振るう。
「言っただろう? これが質の差ってやつだ」
ウェルスは『ウルサマヨル・ルナティクス』の銃口へと、特殊弾頭を詰め込み、発射。上空で破裂したそれは、無数の鉄矢の雨を降り注がせる。次々と落下する鉄の矢に、ならず者たちはたまらず怯んだ。
「くそ、はったりだ! ビビるんじゃねぇ!」
実力差を理解できないのか、あるいは虚勢か。リーダーが吠える。
リーダーの号令に従って、ならず者は自由騎士たちへと襲い掛かった。ならず者が持つ、奇妙に濡れたナイフを見たリリアナが、
「そのナイフは……毒ですねっ!」
刃を振るい、そのナイフをはたき落す。
「ここの薬草は、自然の営み……それを独占するなんて、いけない、ですっ!」
「そう言う事だ。公共の物を自己の利益のために独占しようというのは、頂けないな」
テオドールが指を鳴らすと、ならず者たちの足元、その地面が巨大な泥沼へと変貌する。泥に足をとられ、動きを制限されたならず者たちへと、
「キリは、怒ってます……!」
静かに告げるキリの生成した魔力膜が、光の刃を作り上げた。それは、緑の光から橙色の光へ。暴れるように震えるその巨大な、ニンジンのような刃が、泥に足をとられたならず者たちを、次々と撃墜していく。
「クソが! 使えねぇ連中だ!」
部下が次々と倒れていくのへ、毒づくリーダー。
「……っ!」
仲間たちへ、癒しの魔術を放ちながら、フーリィンは歯噛みした。
「どうして……! 貴方たちは、そうなんですか! 健康な体が有って……それを大切にするわけでも、感謝するわけでもなく……! どうして、その健康な体で、人を傷つけて、苦しめるんですか! どうして、人を幸せにしようって思わないんですか……!?」
私怨交じりの言葉が、フーリィンの口から思わず漏れていく。
「意味が解らねぇ……健康だから、好き放題するんだろうが!?」
だが、その必死の思いも、彼らには今は、届かない。
「貴方たちは……!」
フーリィンが苦し気に、言った。
「一回痛い目見なくちゃ、分からないのよ」
アリアが言った。ならず者たちは次々とその数を減らし、残るはわずか。その残るならず者も、また一人、アリアの刃にて気絶する。
「大丈夫。懺悔の時間なら、これから存分に取れますよ」
一人、殴り飛ばし、エルシーが言った。
「畜生!」
残るリーダーが、やけっぱちの攻撃を仕掛けてくるのを、モカは踊る様に、その刃で受け流して見せた。
「誰かの笑顔を奪うなら、いつかその報いを受けるものです」
モカの言葉に、リーダーは悔しげにうめく。その腹へ、ウェルスのスタン弾が突き刺さった。
「そう言う事だ。ま、今はしばらく寝ておきな」
げふ、と息を吐いて、リーダーが意識を手放す。
自由騎士たちによる悪党退治は、危なげない勝利により、幕を閉じたのであった。
●今は静かに花が咲いて
「やっぱり。完全に偽造品だな」
テオドールがそう言うのへ、仲間たちは安堵の息を漏らした。
ならず者たちを無力化し、全員を縛り上げた自由騎士たちは、リーダーの男が持っていた証文を、念のため確認していた。
結果は、真っ赤な偽物。よって、これにて事件は解決、という事だ。
「やれやれ、大ごとにならずによかったよ」
苦笑するウェルス。どうやら、ちんけな詐欺師による事件だったらしい。
「まったく、こういう輩はどこにでも湧くものですねー」
事件解決の心地よい疲労を感じながら、フーリィンは言う。はきだした想いの答えは出ないけれど、けれども、今は、事件の解決を想って。
「キリは昔、パンを盗んで生きてきました」
キリは、縛り上げられたならず者たちを見やりながら、静かに呟く。
「でも、今は自由騎士の一員です。……キリも変われたのですから、この人たちも、頑張れば……変われる、でしょうか」
「……そうですね」
キリの言葉に、エルシーは静かに微笑んで、答えた。
「心から変わりたいと願えれば。彼らにどのような事情があったのかは変わりませんが、きっと」
その言葉に、キリもまた、少し微笑んで見せた。
戦闘の余波に、少しばかり巻き込まれた小屋を修復した、自由騎士たちは続いて、念のため、薬草畑のエリアを確認することにした。
ならず者たちも、まだ収穫は行っていなかったのだろう。幸いにも、無傷のままの薬草畑が、自由騎士たちを出迎えてくれた。
この時期に咲く、薬草の白い花が、のんびりと風に揺れている。
「綺麗……」
アリアが静かに、呟いた。それは、自由騎士たちが守った光景であった。
「守れて、よかったですね。薬草も、皆の笑顔も」
モカが言うのへ、
「はい! 本当に、よかった……!」
リリアナは笑顔で、頷いたのであった。
自由騎士たちが取り返したもの。守り切ったもの。
その価値の重さを感じながら。
今はしばし、風に吹かれる薬草を眺める、自由騎士たちであった。
穏やかな日の差す森の中。
「素敵な場所ですね……森の香りが心地よいです。こんな場合でなければ、お散歩をするのによい所なのですが……」
森の空気を胸いっぱいに吸い込んで『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)が言った。ならず者による悪意など知らぬように、森は静けさと穏やかさを保っている。
ならず者たちが占拠しているという森の小屋へと向かって、自由騎士たちは歩みを進めていた。手にした地図は、村人たちから提供されたものである。日ごろから村人たちが行き交っていたこともあり、小屋まで迷う事はなさそうだった。
「ならず者たちの言い分に関してだが――」
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)が、ふむ、と唸りつつ、言った。ならず者たちは、この土地を買い上げた……と主張しているのだ。
「商人たちとのコネも利用して調べてみたが、近辺の土地の所有権が動いた形跡がない……というか、この辺りは、個人が所有するような土地ではないはずだぜ」
「こちらは諸侯の面々にも確認してみたけれど、答えは同じだったよ。個人が――ましてや、アウトローが所有できるはずがない」
ウェルスの言葉に続いたのは、『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)だ。二人の調べによれば、ならず者たちの主張は、根本的に成立していないという事になる。
「という事は、完全に、ならず者たちのでっち上げ……という事ですねー?」
些かの怒りの色を乗せながら、『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は言った。
「それか、あの連中も、いい加減な詐欺師に騙されたか――」
(「他国の工作員に焚きつけられたか。まぁ、そこは証拠がない」)
テオドールの言葉に、ウェルスは胸中で続ける。証拠も確証もない以上、ここで口に出す必要はないだろう。思い過ごし、という事も充分にありうる。
「だとしても、同情はしないけれど」
肩をすくめるテオドール。自由騎士たちにとっての憂いは、ここが正規な取引によってならず者たちに譲渡されていた場合、というケースであったが、どうやらその可能性は0となったようだ。こうなれば、状況は純粋な悪党退治へと切り替わる。
「ならば、遠慮はいらないわね。依頼通り、ギッタンギッタンにしてやらないと」
うん、と頷いて、『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)はそう言った。自由騎士たちの決意も固まった。遠慮なく捕まえて、しかるべきところへ叩きだすだけだ。
「みなさん、よろしくおねがいしますっ。リリー……あ、いえ、私も、がんばりますっ」
緊張の色を乗せながら、『新米自由騎士』リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)が言った。まだ、こういった場には慣れていないのかもしれない。
「こちらこそ、よろしくです。頑張りましょう!」
頷いて返すのは、『まだ炎は消えないけど』キリ・カーレント(CL3000547)だ。
「頼りにしていますよ、二人とも」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は、微笑で二人へと、告げる。初対面の者もいたかもしれないが、今は、運命を共にする仲間だ。信頼し合って戦う事が重要だろう。
●下準備は入念に
さて、しばし森の中を進めば、やがて左手に開けた草原のような場所と、正面に二階建ての小屋が見えた。正面には、見るからに粗野な男が二人、あたりを威嚇するような視線を送っている。ならず者の集団、その見張りだろう。
自由騎士たちは、まず見張りに見つからぬように、付近に潜んだ。それから、パーティを二手に分ける。
エルシー、ウェルス、テオドール、フーリィン……この4人は、正面から攻撃を仕掛けるために、ひとまずここで待機する。
残るアリア、モカ、リリアナ、キリの4人は、正面から迂回し、静かに、建物の裏手へと回っていった。
「……」
しずかに、というジェスチャーを仲間に向けたアリアは、スキルを利用し、自身、そして仲間たちが発する音を可能な限り抑えた。
「準備は良い? いち、にの、さん、で跳ぶよ?」
アリアが続ける。スキルの範囲から出てしまえば、仲間たちの発する音はあたりに響くことになる。可能な限り、近い範囲で動いた方が良い。
「いち」
「にの……」
キリ、そしてモカが声をあげる。さん! その合図に合わせて、仲間たちは一斉に跳躍した。モカは、その能力で飛行し、高く飛ぶ。目指すは、屋根の上へ。建物の大きさ自体は、10mには届いていないため、跳躍可能な距離の範囲内だったと言えるだろう。
たん、と、仲間たちは屋根の上へと着地する。わずかな音がしたが、それもスキルによりかき消されているはずだ。とはいえ、些か緊張もする。
「……ふぅ」
キリがほっと、胸をなでおろした。皆、無事に屋根の上へと到着しつつ、しかし内部のならず者たちには、自分たちの存在は発覚していないようだった。
休む間もなく、キリは耳を澄ませた。階下に響く、人の生活音。ならず者たちが発する音を、ひとつ残らず確認していく。
「ひとり……ふたり……情報通り、12人。ほかに人はいない……と、思います」
キリが言うのへ、リリアナが頷いた。
「それじゃあ、皆に合図しますね」
と、屋根の上からひょこりと顔と手を出して、ぱたぱたと振って見せる。
「正面側が動き出したら、行動開始ですね。悪い人たちは、ちゃんと懲らしめてあげましょう」
モカの言葉に、仲間達は頷くのであった。
一方、こちらは正面待機チーム。
「あれは……リリアナさんですね。どうやら、上手くいったようです」
そう言うのは、エルシーだ。エルシー達からは、リリアナが手を振っているのが良く見える。位置についた、という事だ。
「さて、じゃあ、悪党退治を始めるか」
ウェルスが声をあげるのへ、仲間達は頷く。正面待機チームの自由騎士たちは、一気に駆けだすと、小屋の正面へと陣取った。見張りの男たちが、一瞬、驚きの様子を見せるが、すぐのこちらを威嚇するような表情を見せ、
「なんだテメェら!!」
と、語気を強めて吐き捨てる。
「……わかりやすく悪党、という感じですねー」
呆れた様子で苦笑するフーリィン。あるいは、他の自由騎士たちも、同感だったかもしれない。
「我等は自由騎士である! その小屋と薬草地の件で参った! 何を根拠に労働者に法外な金銭を要求するか伺おう!」
テオドールが朗々と声を張り上げる。自由騎士。その言葉に、二人のならず者に動揺の色が見える。その様子から、なるほど、これは詐欺の類だな、と、テオドールは確信した。
「あー、失礼失礼。自由騎士様が、何の御用で?」
と、声をあげながら小屋からやってきたのは、おそらくリーダー格と思わしき男であった。リーダーはこちらを値踏みするような視線を送り付ける。
「先ほど申しあげたとおりだ。貴殿らが村の労働者に対し、法外な金銭を要求する、その根拠を提示願いたい!」
「根拠ってそりゃあ……この辺の土地は俺らが買ったんですよ。ほら、証文もここに」
ひらひらと、証文とされる紙を手にするリーダー。臆することなく、ウェルスは続けた。
「はぁ、よく見えねぇな? その証文、ちっと渡しちゃくれねぇか?」
その言葉に、リーダーが顔をしかめた。
「何を根拠に、見せなきゃならないんで?」
「それを見せてもらえれば、素直に帰りますよ」
エルシーが、言った。
「それとも……見せられない理由でもあるんですかねー? 偽造だとかー?」
フーリィンの言葉に、リーダーはぎくり、とした表情を見せた。確定した。真っ黒だ。
「ちっ……自由騎士サマ方よぉ、森に散歩に来て遭難ってなぁ、なんともなさけねぇ末路だとは思わねぇか?」
リーダーが合図をする。と、小屋からぞろぞろと、ならず者たちがやって来る。それは、キリが確認したとおりの、総勢12名だ。
「まったく……わかりやすいにもほどがありますね。こうなっては、仕方がありません。おとなしく捕まるか、痛い目をみてから捕まるか、好きな方を選びなさい」
エルシーが肩をすくめる。
「うるせぇ! たった4人で何ができる! 野郎ども、やっちまえ! 死体を埋める場所は山ほどある!」
わかりやすく醜悪な本性をさらけ出すならず者たち。
「……こいよならずもの! こやになんかこもってないでかかってこーい!」
と、慣れぬ挑発の声をあげるフーリィン。その声に乗ってか乗らずか、ならず者たちはじりじりと、自由騎士たちを包囲すべくにじり寄る。
「馬鹿な奴らだ。この数に勝てるわけがねぇだろ」
リーダーがあざ笑うのへ、ウェルスは答えた。
「いくつか勘違いしている。まず一つ、質の問題だ。多少の数の差なんて、俺たちは覆せる。それからもう一つ。俺たちは、4人で来たわけじゃない」
と――ならず者たちの背後へと、4つの影が降り立った。
降り立った4つの影――屋根の上にて待機していた自由騎士たちは、このタイミングで、地上へと降り立ち、ならず者たちを逆に包囲する形をとったのだ。
「私たちは、8人できたのよ。これで逃げ場はないわよ、あなた達。卑怯とは、言わせませんよ」
アリアが声をあげる。
「一応、聞いておきます。もし皆さんがやったことを反省して、村の皆さんに謝ってくれるなら、手荒な真似はしません」
モカが投降を促すが、ならず者たちには効果が無い様だった。
「うるせぇ! 4人増えたからなんだ! 少し手間が増えただけだ!」
「貴方たちがやっていることの意味が解りますか? 村人の皆さんが困るだけでなく……本当に、薬草を必要としている人たちが困るっていう事が」
静かな怒りを乗せて、キリが言う。だが、その言葉も、欲に染まったならず者たちには届かないようだ。
「うるせぇ! やるぞテメェら! こいつらを返り討ちにしてやれ!」
ならず者たちの間に殺気が漲る。
「皆さん、毒を刃に塗っている人は、私が調べます! 気を付けてください!」
リリアナの言葉に、仲間達は頷く。それを合図にしたかのように、怒号と共に、ならず者たちは自由騎士たちへと襲い掛かってきたのであった。
●薬草畑を取り返せ!
ならず者が繰り出したナイフを、アリアは前に出て、『萃う慈悲の祈り』にて受け止めた。蛇腹の剣がナイフと接触し、甲高い金属音を奏でる。アリアはナイフを打ち払うと、もう片手の刃、『葬送の願い』を振るって、ならず者を斬りつけた。とはいえ、刃は立てぬ、不殺の一撃。ぎゃあ、という声と共に、ならず者は意識を手放す。
「なるほど、実力はそこまでではない……」
しかし、次のならず者が、長剣を手にアリアへと襲い掛かる。これは受けられないと判断したアリアが、身をひねって刃を回避。
「けど数の多さは脅威ね……けれど!」
反撃に、ならず者の長剣を叩くアリア。
「ハァッ!」
気合と共にきらめく紅竜の籠手が、ならず者を殴り飛ばす。拳の主、エルシーは再び構えをとると、言った。
「さて、貴方達には手加減無用みたいだから、思いっきり行くわよ?」
襲い来るならず者を攻撃を、エルシーは踊るような動きで回避。情熱的なステップと共に、繰り出された拳が、脚が、ならず者を滅多打ちにする。
「皆の笑顔を奪うような人たちは、許しません!」
モカは飛行、そして急降下による疾風の如き刃が、ならず者を吹き飛ばした。その場にとどまらずに跳躍。跳んで、飛んで、再び疾風の刃を振るう。
「言っただろう? これが質の差ってやつだ」
ウェルスは『ウルサマヨル・ルナティクス』の銃口へと、特殊弾頭を詰め込み、発射。上空で破裂したそれは、無数の鉄矢の雨を降り注がせる。次々と落下する鉄の矢に、ならず者たちはたまらず怯んだ。
「くそ、はったりだ! ビビるんじゃねぇ!」
実力差を理解できないのか、あるいは虚勢か。リーダーが吠える。
リーダーの号令に従って、ならず者は自由騎士たちへと襲い掛かった。ならず者が持つ、奇妙に濡れたナイフを見たリリアナが、
「そのナイフは……毒ですねっ!」
刃を振るい、そのナイフをはたき落す。
「ここの薬草は、自然の営み……それを独占するなんて、いけない、ですっ!」
「そう言う事だ。公共の物を自己の利益のために独占しようというのは、頂けないな」
テオドールが指を鳴らすと、ならず者たちの足元、その地面が巨大な泥沼へと変貌する。泥に足をとられ、動きを制限されたならず者たちへと、
「キリは、怒ってます……!」
静かに告げるキリの生成した魔力膜が、光の刃を作り上げた。それは、緑の光から橙色の光へ。暴れるように震えるその巨大な、ニンジンのような刃が、泥に足をとられたならず者たちを、次々と撃墜していく。
「クソが! 使えねぇ連中だ!」
部下が次々と倒れていくのへ、毒づくリーダー。
「……っ!」
仲間たちへ、癒しの魔術を放ちながら、フーリィンは歯噛みした。
「どうして……! 貴方たちは、そうなんですか! 健康な体が有って……それを大切にするわけでも、感謝するわけでもなく……! どうして、その健康な体で、人を傷つけて、苦しめるんですか! どうして、人を幸せにしようって思わないんですか……!?」
私怨交じりの言葉が、フーリィンの口から思わず漏れていく。
「意味が解らねぇ……健康だから、好き放題するんだろうが!?」
だが、その必死の思いも、彼らには今は、届かない。
「貴方たちは……!」
フーリィンが苦し気に、言った。
「一回痛い目見なくちゃ、分からないのよ」
アリアが言った。ならず者たちは次々とその数を減らし、残るはわずか。その残るならず者も、また一人、アリアの刃にて気絶する。
「大丈夫。懺悔の時間なら、これから存分に取れますよ」
一人、殴り飛ばし、エルシーが言った。
「畜生!」
残るリーダーが、やけっぱちの攻撃を仕掛けてくるのを、モカは踊る様に、その刃で受け流して見せた。
「誰かの笑顔を奪うなら、いつかその報いを受けるものです」
モカの言葉に、リーダーは悔しげにうめく。その腹へ、ウェルスのスタン弾が突き刺さった。
「そう言う事だ。ま、今はしばらく寝ておきな」
げふ、と息を吐いて、リーダーが意識を手放す。
自由騎士たちによる悪党退治は、危なげない勝利により、幕を閉じたのであった。
●今は静かに花が咲いて
「やっぱり。完全に偽造品だな」
テオドールがそう言うのへ、仲間たちは安堵の息を漏らした。
ならず者たちを無力化し、全員を縛り上げた自由騎士たちは、リーダーの男が持っていた証文を、念のため確認していた。
結果は、真っ赤な偽物。よって、これにて事件は解決、という事だ。
「やれやれ、大ごとにならずによかったよ」
苦笑するウェルス。どうやら、ちんけな詐欺師による事件だったらしい。
「まったく、こういう輩はどこにでも湧くものですねー」
事件解決の心地よい疲労を感じながら、フーリィンは言う。はきだした想いの答えは出ないけれど、けれども、今は、事件の解決を想って。
「キリは昔、パンを盗んで生きてきました」
キリは、縛り上げられたならず者たちを見やりながら、静かに呟く。
「でも、今は自由騎士の一員です。……キリも変われたのですから、この人たちも、頑張れば……変われる、でしょうか」
「……そうですね」
キリの言葉に、エルシーは静かに微笑んで、答えた。
「心から変わりたいと願えれば。彼らにどのような事情があったのかは変わりませんが、きっと」
その言葉に、キリもまた、少し微笑んで見せた。
戦闘の余波に、少しばかり巻き込まれた小屋を修復した、自由騎士たちは続いて、念のため、薬草畑のエリアを確認することにした。
ならず者たちも、まだ収穫は行っていなかったのだろう。幸いにも、無傷のままの薬草畑が、自由騎士たちを出迎えてくれた。
この時期に咲く、薬草の白い花が、のんびりと風に揺れている。
「綺麗……」
アリアが静かに、呟いた。それは、自由騎士たちが守った光景であった。
「守れて、よかったですね。薬草も、皆の笑顔も」
モカが言うのへ、
「はい! 本当に、よかった……!」
リリアナは笑顔で、頷いたのであった。
自由騎士たちが取り返したもの。守り切ったもの。
その価値の重さを感じながら。
今はしばし、風に吹かれる薬草を眺める、自由騎士たちであった。