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病の王、マードック。或いは、街道を往く…。

●病の王
10年。
彼がとある実験に費やした歳月だ。
色素の抜けた白い髪に、やつれた頬。瞳は白濁し、歯はボロボロだ。
着ている白衣には血が滲み、袖口から覗く腕には赤や紫の斑点が浮かぶ。
地下に作った実験施設。
籠った空気には、血と臓物の腐った匂いが混じる。
壁際に並べられたゲージの中には、血を吐き死んだ無数のラット。
反対側の壁には、試験管やビーカーが並ぶ。
男……マードックは、白衣の内側に無数の注射器を仕込み、ふらりと実験室から外に出た。
実に10年ぶりの外出だ。
「は、あぁ……」
口から零れる、掠れた吐息。
拍子に、マードックの口元からどす黒い血が零れた。
マードックは虚ろな視線を上下左右へ彷徨わせながら、地上へ向かう階段を昇る。
果たして、マードックは朽ちた村の真ん中で、ただ茫然と立っていた。
マードックが地下に籠っていた10年の間に、彼の生まれ育った村は廃村と化していたのである。
けれど、しかし。
幸いなことに……あるいは、不幸なことにマードックは既に自我を失っていた。
彼の行っていた実験は、かつて村を襲った流行り病の特効薬を作ること。
そのために彼は、自身の体にありとあらゆる毒素を注射し、抗体を作ることを試みた。
そのうち、彼は毒に侵され自我を失う。
自分が何のために地下に籠ったのか。
自分がなすべきことは何なのか。
すべて忘れて、ただ妄執のままに「あらゆる毒に耐えられる体」の獲得を目指し続けた。
「は、あぁ……」
掠れた声を零し、マードックは歩き始める。
自我を失った彼の脳の片隅に残る、わずかな記憶。
村からほど近い距離にある街へ向け、マードックは荒れ果てた街道をゆらりゆらりと歩んでいった。
●依頼発注
「とまぁ、そんなわけであなたたちには、マードックを食い止めてほしいわけよ」
ままならないわね、と。
囁くようにそう言って、『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は自身の足元へと視線を落とす。
それから、自由騎士たちへと視線を戻し、バーバラは告げた。
「マードックは広範囲に【ポイズン】と【パラライズ】を拡散する能力を備えているわ。それから、白衣の内側に仕込んだ毒の注射器にも要注意ね」
幸いなことにマードックの動きは鈍い。
けれど、彼は痛みに鈍感であり、そして10年間、毒に耐え続けた経験から非常に高いタフネスを誇る。
その体力は、一般的な成人男性を遥かに凌駕するものだ。もしかすると、その規格外のタフネスは、毒の副作用なのかもしれない。
「ってことで、目的はマードックが街に辿り着く前に彼を討伐することね」
自由騎士ならともかく、一般人ではマードックの毒に1分たりとも耐えることは叶わないだろう。
「街道は荒れ果てていて、街の近く……マードックの遭遇する辺りはまるで林のようになっているわ」
視界が悪く、射線を確保できない点には留意する必要があるだろう。
「あぁ、それと、マードックには【ポイズン】【パラライズ】【ヒュプノス】が効かないから」
実験の成果なのでしょうね、と。
どこか悲し気に、バーバラは言う。
「マードックの宿す毒をすべて開放させれば、彼がそれ以上病をばらまくことはなくなるでしょう。それと、もしも可能であれば……自我を取り戻させてあげたいけどね」
なんて、言って。
バーバラは仲間たちを送り出す。
10年。
彼がとある実験に費やした歳月だ。
色素の抜けた白い髪に、やつれた頬。瞳は白濁し、歯はボロボロだ。
着ている白衣には血が滲み、袖口から覗く腕には赤や紫の斑点が浮かぶ。
地下に作った実験施設。
籠った空気には、血と臓物の腐った匂いが混じる。
壁際に並べられたゲージの中には、血を吐き死んだ無数のラット。
反対側の壁には、試験管やビーカーが並ぶ。
男……マードックは、白衣の内側に無数の注射器を仕込み、ふらりと実験室から外に出た。
実に10年ぶりの外出だ。
「は、あぁ……」
口から零れる、掠れた吐息。
拍子に、マードックの口元からどす黒い血が零れた。
マードックは虚ろな視線を上下左右へ彷徨わせながら、地上へ向かう階段を昇る。
果たして、マードックは朽ちた村の真ん中で、ただ茫然と立っていた。
マードックが地下に籠っていた10年の間に、彼の生まれ育った村は廃村と化していたのである。
けれど、しかし。
幸いなことに……あるいは、不幸なことにマードックは既に自我を失っていた。
彼の行っていた実験は、かつて村を襲った流行り病の特効薬を作ること。
そのために彼は、自身の体にありとあらゆる毒素を注射し、抗体を作ることを試みた。
そのうち、彼は毒に侵され自我を失う。
自分が何のために地下に籠ったのか。
自分がなすべきことは何なのか。
すべて忘れて、ただ妄執のままに「あらゆる毒に耐えられる体」の獲得を目指し続けた。
「は、あぁ……」
掠れた声を零し、マードックは歩き始める。
自我を失った彼の脳の片隅に残る、わずかな記憶。
村からほど近い距離にある街へ向け、マードックは荒れ果てた街道をゆらりゆらりと歩んでいった。
●依頼発注
「とまぁ、そんなわけであなたたちには、マードックを食い止めてほしいわけよ」
ままならないわね、と。
囁くようにそう言って、『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は自身の足元へと視線を落とす。
それから、自由騎士たちへと視線を戻し、バーバラは告げた。
「マードックは広範囲に【ポイズン】と【パラライズ】を拡散する能力を備えているわ。それから、白衣の内側に仕込んだ毒の注射器にも要注意ね」
幸いなことにマードックの動きは鈍い。
けれど、彼は痛みに鈍感であり、そして10年間、毒に耐え続けた経験から非常に高いタフネスを誇る。
その体力は、一般的な成人男性を遥かに凌駕するものだ。もしかすると、その規格外のタフネスは、毒の副作用なのかもしれない。
「ってことで、目的はマードックが街に辿り着く前に彼を討伐することね」
自由騎士ならともかく、一般人ではマードックの毒に1分たりとも耐えることは叶わないだろう。
「街道は荒れ果てていて、街の近く……マードックの遭遇する辺りはまるで林のようになっているわ」
視界が悪く、射線を確保できない点には留意する必要があるだろう。
「あぁ、それと、マードックには【ポイズン】【パラライズ】【ヒュプノス】が効かないから」
実験の成果なのでしょうね、と。
どこか悲し気に、バーバラは言う。
「マードックの宿す毒をすべて開放させれば、彼がそれ以上病をばらまくことはなくなるでしょう。それと、もしも可能であれば……自我を取り戻させてあげたいけどね」
なんて、言って。
バーバラは仲間たちを送り出す。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.マードックの捕縛
●ターゲット
マードック(ノウブル)×1
【毒無】【痺無】【眠無】
自我を失った医師。
10年前、流行り病に対する特効薬を作るために地下室へ籠った。
流行り病に対する抗体を身につけるため自身の体にあらゆる毒物を投与するうちに自我を失う。
毒への耐性を身につけ、この度10年ぶりに地上へ出て来た。
彼の住んでいた村は廃村と化していたが、彼は街道に沿って隣街へと進行を開始する。
身体に宿す毒をすべて開放することで、毒をばらまく能力は消失する。
・感染[攻撃] A:魔遠範【ポイズン2】【パラライズ2】
・注射[攻撃] A:物近単【ポイズン2】
●場所
街外れの街道跡地。
使われなくなった街道の名残。
木々が生い茂り、まるで林のようになっている。
道幅は狭く、視界は悪い。
木々が邪魔をするせいで、遠距離攻撃はマードックへ届きにくい。
林を抜けると街の裏通りへと至る。
マードック(ノウブル)×1
【毒無】【痺無】【眠無】
自我を失った医師。
10年前、流行り病に対する特効薬を作るために地下室へ籠った。
流行り病に対する抗体を身につけるため自身の体にあらゆる毒物を投与するうちに自我を失う。
毒への耐性を身につけ、この度10年ぶりに地上へ出て来た。
彼の住んでいた村は廃村と化していたが、彼は街道に沿って隣街へと進行を開始する。
身体に宿す毒をすべて開放することで、毒をばらまく能力は消失する。
・感染[攻撃] A:魔遠範【ポイズン2】【パラライズ2】
・注射[攻撃] A:物近単【ポイズン2】
●場所
街外れの街道跡地。
使われなくなった街道の名残。
木々が生い茂り、まるで林のようになっている。
道幅は狭く、視界は悪い。
木々が邪魔をするせいで、遠距離攻撃はマードックへ届きにくい。
林を抜けると街の裏通りへと至る。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
4/8
4/8
公開日
2020年04月30日
2020年04月30日
†メイン参加者 4人†
●
とある街のほど近く。
かつての街道……今は使うものもいない荒れ果て、林のようになっている。
街道に沿って、よろよろと進む小汚い男が1人。
血や何かの薬液でまだらに染まった白衣は、ところどころに大きな穴が開いていた。瞳は虚ろ……時折木々に肩をぶつけながら、けれどまっすぐ街へ向けて進んでいる。
男の名はマードック。
村を襲う疫病を根絶すべく、10年もの歳月を抗体完成のために費やし、そして自我を崩壊させた哀れな医師だ。
「ものすごい執念ね。10年……自らの身体を使って抗体を作り出そうとするなんて」
マッドだけど、と木々の影に隠れマードックの様子を窺いながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はそう呟いた。
「うむ。己を犠牲にしてまでも、流行り病に襲われた故郷を救うおうとしたわけじゃな。こんなところで死なせてしまうには惜しい男よ」
エルシーの呟きに賛同するは氷面鏡 天輝(CL3000665)だ。二人は顔を見合わせ、にやりと笑う。方法こそ少々異質ではあるが、マードックの行いはまさしく自己犠牲の精神にあふれた高潔なものだ。
彼が守ろうとした村は、生憎と既に滅んでしまったようだが……もしかすると、この世界のどこかに生存者がいるかもしれない。
マードックを正気に戻し、彼にはまっとうな人生を送らせる。
そのためにも、まずは彼を止めなければならない。彼の身を蝕む毒素をすべて取り除かなければならない。
二人は深く頷きあって、木々の影から飛び出した。
「悪いな。これからちょっと騒がしくするが、勘弁してくれよ」
傍らの木々に語り掛け、『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は戦場へと向かう。マードックと相対するエルシーや天輝を援護するためだ。
かつて、故郷を守るために戦いを続けたオルパには、我が身を犠牲に村を守ろうとしたマードックの気持ちはよく分かった。
そんなマードックが、この先どんな人生を歩むにしろ、まずは正気を取り戻させる必要があるというエルシーたちの考えにも賛同できる。
ゆえに、オルパは両の手にダガーを構え、その身に戦意を滾らせた。
マードックを救うために、マードックを傷つける覚悟を決める。
マードックの自我を取り戻させる。
そう決めた3人と違い、セアラ・ラングフォード(CL3000634)は迷いを抱えていた。
「……自我を取り戻すことが本当に良いのかどうか、自信はありませんけれど」
自我を取り戻したマードックが知るのは、守ろうとした村はとっくの昔に滅んでいたこと。そして、マードック自らが病毒をばらまく異質な存在と化していたという事実。
果たして、マードックがそのことを知ってどう思うのか。
もしかすると、嘆き悲しみ……その先を考えるのが恐ろしい。
けれど、しかし……。
「彼が街へ向かうのには何か理由があるのかもしれません。その理由だけでも、知っておくべきでしょう」
もしも、街にマードックの知り合いがいるのだとしたら。
10年ぶりに、再会させてやりたいから。
病毒をばらまくマードックとの戦いは、おそらく長期戦となるだろう。それに備えて、セアラは後衛で、回復スキルを行使するタイミングを見計らう。
●
オルパは自身の瞳に【ホークアイ】のスキルを付与する。視野は広く、そして狙いは正確に。全体を俯瞰しつつ、一か所に意識を集中させるという極技。
生い茂る木々の間を縫って、ターゲットに遠距離攻撃を命中させるなど、オルパには造作もないことだった。
「俺はヨウセイのレンジャーだ。こんな場所こそ俺がもっとも得意とする戦場さ!」
振り抜かれた2本のダガー。
射出されるのは、魔力の矢。
木々の間を潜り抜け、オルパの魔矢はエルシー&天輝が接敵するよりも早く、マードックの両肩を射貫いた。
「ぅ……あぁ」
呻き声を零し、マードックは大きくのけ反る。
零れた血が地面を濡らす。
と、同時にその血が蒸発するように黒い煙へと状態を変えた。
「っ……毒!?」
「っとと、危ないのぉ」
マードックに接敵する寸前、エルシーと天輝は急ブレーキをかける。
「なるほど、ああやって毒素を吐き出させるのか」
魔矢で貫かれたという割に、マードックは大したダメージを受けているようには見えない。オルパは意識を集中させ、マードックの様子を観察していた。
もしかすると、身に宿す毒の影響で痛覚なども麻痺しているのかもしれない。
「身体に宿す毒をすべて開放することで、毒をばらまく能力は消失する、ということですけれど……持久戦ですね」
「あぁ、回復は任せたよ」
「えぇ、お任せください」
言葉を交わすオルパとセアラ。
とくに長期戦が予想される今回のような任務の場合、回復術を得意とするエルシーこそが勝利の鍵だ。
エルシーが無駄にMPを浪費しないように、そして適当なタイミングで支援を飛ばせるようにとの配慮から、オルパはエルシーを数歩後ろへ下げさせる。
「攻撃は俺たちが担うからさ」
と、そう呟いて。
オルパは再度、魔矢を放った。
エルシーの拳が、マードックの頬を捉えた。
唇から血を流しながら、マードックは数歩後退する。
その手に握られていた注射器が、エルシーめがけて突き出された。朱色の籠手でそれを弾いて、反撃とばかりに拳を再度マードックの胸へ打ち付ける。
マードックの胸部から、視認できるほどに濃い瘴気が溢れ出す。
「くっ……イブリースでもないのに、なんてタフなのよ!」
瘴気を浴びないよう、エルシーはバックステップでそれを回避。だが、完全には避けきれなかったようで、むき出しの二の腕には斑の痣が浮き上がる。
毒に侵されたエルシーを包む淡い燐光。
後衛からセアラがかけてくれた回復術によるものだ。
噴き出す瘴気が収まると同時に、今度は天輝が飛び出した。
「効いておるのかおらんのか、表情からはさっぱりわからんのう。毒の副作用で、痛みを感じておらん……のか?」
注射器を避けるように身を沈ませて、流れるような動作で足払いをかける。マードックが体勢を崩し、倒れ込むのと入れ替わるようにして天輝は素早く立ち上がる。
よろり、と天輝の身体が傾いだ。
先ほどまで天輝の頭部があった位置を、マードックの放った瘴気が吹き抜けていく。
「注射器はいくら使わせても無駄じゃの。その身に宿した毒を発散させねばならんか」
手間がかかるの、と頭を掻いて天輝はマードックの頭上を跳び越え背後へ回る。
立ち上がろうとしたマードックの胸部を、オルパの魔矢が貫いた。
「わっ……危ないわね」
噴き出した瘴気を避けながら、エルシーは後衛のオルパに毒づく。
だが、オルパの援護もあってマードックが隠し持っていた注射器が数本、破壊されて地面に落ちる。
「いいだろう、どんどん毒気を吐き出せ。すべて吐き出して、さっさと正気を取り戻すがよい」
「私たちが、貴方の自我を取り戻させてあげるわ!」
練り上げられた気を光球として放つ【回天號砲】が、マードックの背と腹部を撃ち抜いた。背後からは天輝が、前面からはエルシーが。
光球の直撃を受け、マードックの動作が鈍る。
それでも……。
ゆっくりと、エルシーたちには目もくれずマードックは街へと向かう。
一歩一歩、重たい身体を引き摺るように。
気が付けば、周囲には毒の瘴気が満ちていた。
街へ向かうマードックの様子を観察しながら、セアラはしばし思案する。
思い出すのは、ここへ来る前に街で聞いたとある噂話であった。
10年前、隣の村を襲った疫病によって村の住人たちは死に絶えた。けれど、若干名、旅行や出稼ぎで村を出ていた者たちだけは、今も隣町に住んでいる。
そんな彼らは、マードックのことを覚えていた。
村でも変わり者として有名な、けれど優秀で優しい医者だったという。
それを聞いて、セアラは思った。
村の住人の生き残りたちにマードックを再開させてやりたいと。
そのためには、マードックを正気に戻す必要がある。今の、自我を失ったマードックを、彼らに会わせるわけにはいかない。
それから……。
「……流行り病はまた起こるかもしれません。もしかしたらマードック様の獲得した耐性が役に立つかもしれません」
滅んでしまった村のことは、もう今更どうしようもない。
けれど、これからのことはどうだろう。
今もどこかで、疫病に苦しむ村や町があるかもしれない。
そんな村や町を、マードックなら救えるかもしれない。自分の身を犠牲にしてまで、故郷を救おうとしたような男だ。
彼ならきっと、彼の蓄積した知識があればきっと、これから先、救える命もあるはずだ。
「そのためには……」
自分の、自分たちの力が必要だ。
セアラの周囲に淡い燐光が舞い散った。
燐光は風に運ばれて、傷ついた仲間たちの身を降り注ぐ。
「っしゃぁ!」
「これならいつまでも戦っておれるのぉ」
回復したエルシーと天輝が、毒の中を突き進む。
エルシーの剛拳と、天輝の酔拳による連続攻撃がマードックの身体を打った。
血と瘴気を吐き出しながら、マードックはその場に膝を突く。
一瞬……。
「俺は……あぁ、そうだ。俺は、皆を、救わないと……あ、ぁぁあ」
マードックの瞳に正気の色が戻る。
けれどすぐに、彼の自我は毒に蝕まれて虚ろと化した。
けれど、しかし……。
「いけるぞ!」
その光景を見たオルパは、確かな手応えを感じたのだった。
●
疫病によって母が死んだ。妹が死んだ。良き隣人が死んだ。不調を訴えに来た老爺が死んだ。そしてついに、マードック自身も流行り病に侵された。
マードックは考える。このまま、何もしなければ、一月ほどで自分の命も尽き果てるだろう。すでにこの身は死に体である。ならばこそ、マードックに恐れるものは何もなかった。
彼はこれまで収集していた数多の毒やウィルスを抱え、地下の実験室へと潜る。
流行り病を、そしてこの世に蔓延するあらゆる病毒から人々を救うために、命を賭けた実験を開始した。
自分の身体に次々とウィルスを、毒を打ち込んでいく。
内臓が腐り、血を吐き、意識は次第に朦朧になっていく。
それはすべて、抗体を得るための行動だった。
あらゆる病に打ち勝つ特効薬。マードックは、自分自身を万能薬へと変えようとした。
果たして、彼は賭けに勝ったのだろうか……。
マードックは自我を失った。
マードックの故郷は流行り病で滅んで消えた。
マードックの体は、あらゆる毒の病巣となった。
けれど、しかし……彼の身体には確かに“抗体”が出来ていた。
「流石にセアラ殿1人に任せるのは酷だよな……」
そう呟いて、オルパはチラリと背後を見やる。
額にびっしりと脂汗を浮かべながらも、真剣な目で戦場を俯瞰するセアラの姿。
仲間たちが倒れないよう、今もタイミングを見計らって回復術を行使し続けているのだ。
けれど、いかにセアラと言えど長期戦を1人で支え続けるのは堪えるらしい。
少しずつだが、スキルの発動タイミングが“最適”からずれ始めていた。
「前衛は2人に任せるか……」
と、そう呟いてオルパはその場で膝を突く。
手に構えたのは魔力で形成された非実態の矢と弓だ。大地から魔力を借り受け作った治癒の矢を、前衛に向けて撃ち出した。
エルシーと天輝の頭上で矢は燐光となって弾け散る。
降り注ぐ淡い光が、2人の身を蝕む毒を打ち消した。
「ともかく、いまはたっぷり休んで、後の事はそれから考えるでいいんじゃないか? マードックさん」
頼んだぞ、と。
囁くように、そう告げる。
「私の拳をこれだけ喰らって……自信なくなっちゃわね」
「じゃが、先ほど少し正気を取り戻しておったようじゃしのぉ……まったく効いていないということもないようじゃぞ」
「ってことは、このまま続けていいってこと? でも、これ以上殴って大丈夫なの?」
「まぁ……うむ。彼奴はこれぐらいでくたばるタマではないであろう」
毒を吐き出させるには、それ以外に術はなかろう、と。
そう呟いて、天輝は手にしたひょうたんの中身を煽る。ひょうたんの中身は酒だ。ふぅ、と吐いた呼気からは強い酒精が漂っていた。
「さて……やるかの。場所を選ばず戦えるのが拳法の長所じゃの」
ふらり、とマードックの背後に回り込んだ天輝が、その首筋に掌打を当てる。
よろけるマードックの前方に身を潜らせ、立ち上がる勢いで顔面に頭突き。
仰け反ったマードックの頭に足をかけ、引き倒すように地面に叩きつけた。
呻くマードックの顎を、爪先で蹴り上げ立ち上がらせる。
流れるような連続攻撃。吐き出される大量の毒。毒に侵され、天輝の体力が削られていく。
限界を迎えたのか、天輝の口の端から血が零れた。
それを乱暴に手で拭い、天輝は後方へ下がる。
入れ替わるようにして、エルシーが前へ。
「貴方のやってきた事は決して無駄ではありません。その成果を世界のために役立たせてもらえませんか?」
腰を低く沈ませて、エルシーは拳を振りかぶる。
タイミングを合わせ放たれたのは、ありったけの想いを乗せたエルシー最強の一撃。
その名も【緋色の衝撃】。
マードックの全身を衝撃が突き抜け、遂には意識を失った。
地面に倒れたマードックの身体から、残った僅かな毒素が噴き出す。
「あ……や、やりすぎたかしら?」
「マードック様の手当てを! エルシー様、そこを退いてください!」
駆けよってくるセアラの声に反応し、飛びのくようにエルシーは彼女に道を譲った。
意識を取り戻したマードックからは、既に毒をばらまく能力は失われていた。
朦朧とはしているし、身体は衰弱し切っているものの、けれどしかしマードックは正気を取り戻していた。
震えた声で「村を……生き残りは、誰か」とそう問うたマードックの手を握りしめ、セアラは優しく語り掛ける。
「マードック様。村は、滅んでしまいました。ですが、生き残りの方はいます。すぐに会えますから、まずは身体を治してください」
さぁ、休んで、と。
セアラがそう語りかけると、マードックは微かに笑う。
「あり、がとう」
最後にそう呟いて。
マードックは深い眠りに落ちる。
とある街のほど近く。
かつての街道……今は使うものもいない荒れ果て、林のようになっている。
街道に沿って、よろよろと進む小汚い男が1人。
血や何かの薬液でまだらに染まった白衣は、ところどころに大きな穴が開いていた。瞳は虚ろ……時折木々に肩をぶつけながら、けれどまっすぐ街へ向けて進んでいる。
男の名はマードック。
村を襲う疫病を根絶すべく、10年もの歳月を抗体完成のために費やし、そして自我を崩壊させた哀れな医師だ。
「ものすごい執念ね。10年……自らの身体を使って抗体を作り出そうとするなんて」
マッドだけど、と木々の影に隠れマードックの様子を窺いながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はそう呟いた。
「うむ。己を犠牲にしてまでも、流行り病に襲われた故郷を救うおうとしたわけじゃな。こんなところで死なせてしまうには惜しい男よ」
エルシーの呟きに賛同するは氷面鏡 天輝(CL3000665)だ。二人は顔を見合わせ、にやりと笑う。方法こそ少々異質ではあるが、マードックの行いはまさしく自己犠牲の精神にあふれた高潔なものだ。
彼が守ろうとした村は、生憎と既に滅んでしまったようだが……もしかすると、この世界のどこかに生存者がいるかもしれない。
マードックを正気に戻し、彼にはまっとうな人生を送らせる。
そのためにも、まずは彼を止めなければならない。彼の身を蝕む毒素をすべて取り除かなければならない。
二人は深く頷きあって、木々の影から飛び出した。
「悪いな。これからちょっと騒がしくするが、勘弁してくれよ」
傍らの木々に語り掛け、『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は戦場へと向かう。マードックと相対するエルシーや天輝を援護するためだ。
かつて、故郷を守るために戦いを続けたオルパには、我が身を犠牲に村を守ろうとしたマードックの気持ちはよく分かった。
そんなマードックが、この先どんな人生を歩むにしろ、まずは正気を取り戻させる必要があるというエルシーたちの考えにも賛同できる。
ゆえに、オルパは両の手にダガーを構え、その身に戦意を滾らせた。
マードックを救うために、マードックを傷つける覚悟を決める。
マードックの自我を取り戻させる。
そう決めた3人と違い、セアラ・ラングフォード(CL3000634)は迷いを抱えていた。
「……自我を取り戻すことが本当に良いのかどうか、自信はありませんけれど」
自我を取り戻したマードックが知るのは、守ろうとした村はとっくの昔に滅んでいたこと。そして、マードック自らが病毒をばらまく異質な存在と化していたという事実。
果たして、マードックがそのことを知ってどう思うのか。
もしかすると、嘆き悲しみ……その先を考えるのが恐ろしい。
けれど、しかし……。
「彼が街へ向かうのには何か理由があるのかもしれません。その理由だけでも、知っておくべきでしょう」
もしも、街にマードックの知り合いがいるのだとしたら。
10年ぶりに、再会させてやりたいから。
病毒をばらまくマードックとの戦いは、おそらく長期戦となるだろう。それに備えて、セアラは後衛で、回復スキルを行使するタイミングを見計らう。
●
オルパは自身の瞳に【ホークアイ】のスキルを付与する。視野は広く、そして狙いは正確に。全体を俯瞰しつつ、一か所に意識を集中させるという極技。
生い茂る木々の間を縫って、ターゲットに遠距離攻撃を命中させるなど、オルパには造作もないことだった。
「俺はヨウセイのレンジャーだ。こんな場所こそ俺がもっとも得意とする戦場さ!」
振り抜かれた2本のダガー。
射出されるのは、魔力の矢。
木々の間を潜り抜け、オルパの魔矢はエルシー&天輝が接敵するよりも早く、マードックの両肩を射貫いた。
「ぅ……あぁ」
呻き声を零し、マードックは大きくのけ反る。
零れた血が地面を濡らす。
と、同時にその血が蒸発するように黒い煙へと状態を変えた。
「っ……毒!?」
「っとと、危ないのぉ」
マードックに接敵する寸前、エルシーと天輝は急ブレーキをかける。
「なるほど、ああやって毒素を吐き出させるのか」
魔矢で貫かれたという割に、マードックは大したダメージを受けているようには見えない。オルパは意識を集中させ、マードックの様子を観察していた。
もしかすると、身に宿す毒の影響で痛覚なども麻痺しているのかもしれない。
「身体に宿す毒をすべて開放することで、毒をばらまく能力は消失する、ということですけれど……持久戦ですね」
「あぁ、回復は任せたよ」
「えぇ、お任せください」
言葉を交わすオルパとセアラ。
とくに長期戦が予想される今回のような任務の場合、回復術を得意とするエルシーこそが勝利の鍵だ。
エルシーが無駄にMPを浪費しないように、そして適当なタイミングで支援を飛ばせるようにとの配慮から、オルパはエルシーを数歩後ろへ下げさせる。
「攻撃は俺たちが担うからさ」
と、そう呟いて。
オルパは再度、魔矢を放った。
エルシーの拳が、マードックの頬を捉えた。
唇から血を流しながら、マードックは数歩後退する。
その手に握られていた注射器が、エルシーめがけて突き出された。朱色の籠手でそれを弾いて、反撃とばかりに拳を再度マードックの胸へ打ち付ける。
マードックの胸部から、視認できるほどに濃い瘴気が溢れ出す。
「くっ……イブリースでもないのに、なんてタフなのよ!」
瘴気を浴びないよう、エルシーはバックステップでそれを回避。だが、完全には避けきれなかったようで、むき出しの二の腕には斑の痣が浮き上がる。
毒に侵されたエルシーを包む淡い燐光。
後衛からセアラがかけてくれた回復術によるものだ。
噴き出す瘴気が収まると同時に、今度は天輝が飛び出した。
「効いておるのかおらんのか、表情からはさっぱりわからんのう。毒の副作用で、痛みを感じておらん……のか?」
注射器を避けるように身を沈ませて、流れるような動作で足払いをかける。マードックが体勢を崩し、倒れ込むのと入れ替わるようにして天輝は素早く立ち上がる。
よろり、と天輝の身体が傾いだ。
先ほどまで天輝の頭部があった位置を、マードックの放った瘴気が吹き抜けていく。
「注射器はいくら使わせても無駄じゃの。その身に宿した毒を発散させねばならんか」
手間がかかるの、と頭を掻いて天輝はマードックの頭上を跳び越え背後へ回る。
立ち上がろうとしたマードックの胸部を、オルパの魔矢が貫いた。
「わっ……危ないわね」
噴き出した瘴気を避けながら、エルシーは後衛のオルパに毒づく。
だが、オルパの援護もあってマードックが隠し持っていた注射器が数本、破壊されて地面に落ちる。
「いいだろう、どんどん毒気を吐き出せ。すべて吐き出して、さっさと正気を取り戻すがよい」
「私たちが、貴方の自我を取り戻させてあげるわ!」
練り上げられた気を光球として放つ【回天號砲】が、マードックの背と腹部を撃ち抜いた。背後からは天輝が、前面からはエルシーが。
光球の直撃を受け、マードックの動作が鈍る。
それでも……。
ゆっくりと、エルシーたちには目もくれずマードックは街へと向かう。
一歩一歩、重たい身体を引き摺るように。
気が付けば、周囲には毒の瘴気が満ちていた。
街へ向かうマードックの様子を観察しながら、セアラはしばし思案する。
思い出すのは、ここへ来る前に街で聞いたとある噂話であった。
10年前、隣の村を襲った疫病によって村の住人たちは死に絶えた。けれど、若干名、旅行や出稼ぎで村を出ていた者たちだけは、今も隣町に住んでいる。
そんな彼らは、マードックのことを覚えていた。
村でも変わり者として有名な、けれど優秀で優しい医者だったという。
それを聞いて、セアラは思った。
村の住人の生き残りたちにマードックを再開させてやりたいと。
そのためには、マードックを正気に戻す必要がある。今の、自我を失ったマードックを、彼らに会わせるわけにはいかない。
それから……。
「……流行り病はまた起こるかもしれません。もしかしたらマードック様の獲得した耐性が役に立つかもしれません」
滅んでしまった村のことは、もう今更どうしようもない。
けれど、これからのことはどうだろう。
今もどこかで、疫病に苦しむ村や町があるかもしれない。
そんな村や町を、マードックなら救えるかもしれない。自分の身を犠牲にしてまで、故郷を救おうとしたような男だ。
彼ならきっと、彼の蓄積した知識があればきっと、これから先、救える命もあるはずだ。
「そのためには……」
自分の、自分たちの力が必要だ。
セアラの周囲に淡い燐光が舞い散った。
燐光は風に運ばれて、傷ついた仲間たちの身を降り注ぐ。
「っしゃぁ!」
「これならいつまでも戦っておれるのぉ」
回復したエルシーと天輝が、毒の中を突き進む。
エルシーの剛拳と、天輝の酔拳による連続攻撃がマードックの身体を打った。
血と瘴気を吐き出しながら、マードックはその場に膝を突く。
一瞬……。
「俺は……あぁ、そうだ。俺は、皆を、救わないと……あ、ぁぁあ」
マードックの瞳に正気の色が戻る。
けれどすぐに、彼の自我は毒に蝕まれて虚ろと化した。
けれど、しかし……。
「いけるぞ!」
その光景を見たオルパは、確かな手応えを感じたのだった。
●
疫病によって母が死んだ。妹が死んだ。良き隣人が死んだ。不調を訴えに来た老爺が死んだ。そしてついに、マードック自身も流行り病に侵された。
マードックは考える。このまま、何もしなければ、一月ほどで自分の命も尽き果てるだろう。すでにこの身は死に体である。ならばこそ、マードックに恐れるものは何もなかった。
彼はこれまで収集していた数多の毒やウィルスを抱え、地下の実験室へと潜る。
流行り病を、そしてこの世に蔓延するあらゆる病毒から人々を救うために、命を賭けた実験を開始した。
自分の身体に次々とウィルスを、毒を打ち込んでいく。
内臓が腐り、血を吐き、意識は次第に朦朧になっていく。
それはすべて、抗体を得るための行動だった。
あらゆる病に打ち勝つ特効薬。マードックは、自分自身を万能薬へと変えようとした。
果たして、彼は賭けに勝ったのだろうか……。
マードックは自我を失った。
マードックの故郷は流行り病で滅んで消えた。
マードックの体は、あらゆる毒の病巣となった。
けれど、しかし……彼の身体には確かに“抗体”が出来ていた。
「流石にセアラ殿1人に任せるのは酷だよな……」
そう呟いて、オルパはチラリと背後を見やる。
額にびっしりと脂汗を浮かべながらも、真剣な目で戦場を俯瞰するセアラの姿。
仲間たちが倒れないよう、今もタイミングを見計らって回復術を行使し続けているのだ。
けれど、いかにセアラと言えど長期戦を1人で支え続けるのは堪えるらしい。
少しずつだが、スキルの発動タイミングが“最適”からずれ始めていた。
「前衛は2人に任せるか……」
と、そう呟いてオルパはその場で膝を突く。
手に構えたのは魔力で形成された非実態の矢と弓だ。大地から魔力を借り受け作った治癒の矢を、前衛に向けて撃ち出した。
エルシーと天輝の頭上で矢は燐光となって弾け散る。
降り注ぐ淡い光が、2人の身を蝕む毒を打ち消した。
「ともかく、いまはたっぷり休んで、後の事はそれから考えるでいいんじゃないか? マードックさん」
頼んだぞ、と。
囁くように、そう告げる。
「私の拳をこれだけ喰らって……自信なくなっちゃわね」
「じゃが、先ほど少し正気を取り戻しておったようじゃしのぉ……まったく効いていないということもないようじゃぞ」
「ってことは、このまま続けていいってこと? でも、これ以上殴って大丈夫なの?」
「まぁ……うむ。彼奴はこれぐらいでくたばるタマではないであろう」
毒を吐き出させるには、それ以外に術はなかろう、と。
そう呟いて、天輝は手にしたひょうたんの中身を煽る。ひょうたんの中身は酒だ。ふぅ、と吐いた呼気からは強い酒精が漂っていた。
「さて……やるかの。場所を選ばず戦えるのが拳法の長所じゃの」
ふらり、とマードックの背後に回り込んだ天輝が、その首筋に掌打を当てる。
よろけるマードックの前方に身を潜らせ、立ち上がる勢いで顔面に頭突き。
仰け反ったマードックの頭に足をかけ、引き倒すように地面に叩きつけた。
呻くマードックの顎を、爪先で蹴り上げ立ち上がらせる。
流れるような連続攻撃。吐き出される大量の毒。毒に侵され、天輝の体力が削られていく。
限界を迎えたのか、天輝の口の端から血が零れた。
それを乱暴に手で拭い、天輝は後方へ下がる。
入れ替わるようにして、エルシーが前へ。
「貴方のやってきた事は決して無駄ではありません。その成果を世界のために役立たせてもらえませんか?」
腰を低く沈ませて、エルシーは拳を振りかぶる。
タイミングを合わせ放たれたのは、ありったけの想いを乗せたエルシー最強の一撃。
その名も【緋色の衝撃】。
マードックの全身を衝撃が突き抜け、遂には意識を失った。
地面に倒れたマードックの身体から、残った僅かな毒素が噴き出す。
「あ……や、やりすぎたかしら?」
「マードック様の手当てを! エルシー様、そこを退いてください!」
駆けよってくるセアラの声に反応し、飛びのくようにエルシーは彼女に道を譲った。
意識を取り戻したマードックからは、既に毒をばらまく能力は失われていた。
朦朧とはしているし、身体は衰弱し切っているものの、けれどしかしマードックは正気を取り戻していた。
震えた声で「村を……生き残りは、誰か」とそう問うたマードックの手を握りしめ、セアラは優しく語り掛ける。
「マードック様。村は、滅んでしまいました。ですが、生き残りの方はいます。すぐに会えますから、まずは身体を治してください」
さぁ、休んで、と。
セアラがそう語りかけると、マードックは微かに笑う。
「あり、がとう」
最後にそう呟いて。
マードックは深い眠りに落ちる。