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偽海賊団(低クオリティー)現る!

●
通商連の輸送船に迫る海賊船。
「ヒャッハー!!!! アタシ達は泣く子も黙る海賊団!! その名も……漢女鴇の子(おとめときのこ)海賊団!! アタシが船長の『大笑い』のジョリエットンじゃぁ!! グワッハッハッハァァァーーー!!!!」
名乗りと共に横付けされた海賊船から次々と海賊が通商連の船に乗り込んでくる。
「こいつら……知ってるぞ! シャンバラで手配書を見た!!」
「いきなり懸賞金が1000万越えの……あのルーキー海賊団か!!!」
通商連は巨大組織。更にいえば件の海賊がイ・ラプセルによる偽装という事は通商連のトップ、カシミロをはじめ限られたものしか知らない。
「グワーーーッハッハッハ!!! 命が惜しければ荷物をよこしな!!」
こうして通商連の船から根こそぎ貨物は略奪された──。
●
『演算士』テンカイ・P・ホーンテンは頭を抱えていた。
なんてものを導き出してしまったのだと。
偽者が出るなんてのはよくある話だ。しかし……あまりにも再現度が低すぎる!!
そのくせ言葉の響きだけは絶妙に似せてきている。極めて悪質だ。
テンカイは少し考え込み、どこかに連絡すると自由騎士を呼び出した。
「──というわけだ。放ってもおけねえよな……」
居合わせた自由騎士のなんともいえぬ顔。
「カシミロ議長にはすでに連絡をついておいた。もちろん単純に討伐する事も出来るが、以前使った海賊船を貸す事も可能だそうだ」
こうして自由騎士は偽者討伐に向かう事になった。
通商連の輸送船に迫る海賊船。
「ヒャッハー!!!! アタシ達は泣く子も黙る海賊団!! その名も……漢女鴇の子(おとめときのこ)海賊団!! アタシが船長の『大笑い』のジョリエットンじゃぁ!! グワッハッハッハァァァーーー!!!!」
名乗りと共に横付けされた海賊船から次々と海賊が通商連の船に乗り込んでくる。
「こいつら……知ってるぞ! シャンバラで手配書を見た!!」
「いきなり懸賞金が1000万越えの……あのルーキー海賊団か!!!」
通商連は巨大組織。更にいえば件の海賊がイ・ラプセルによる偽装という事は通商連のトップ、カシミロをはじめ限られたものしか知らない。
「グワーーーッハッハッハ!!! 命が惜しければ荷物をよこしな!!」
こうして通商連の船から根こそぎ貨物は略奪された──。
●
『演算士』テンカイ・P・ホーンテンは頭を抱えていた。
なんてものを導き出してしまったのだと。
偽者が出るなんてのはよくある話だ。しかし……あまりにも再現度が低すぎる!!
そのくせ言葉の響きだけは絶妙に似せてきている。極めて悪質だ。
テンカイは少し考え込み、どこかに連絡すると自由騎士を呼び出した。
「──というわけだ。放ってもおけねえよな……」
居合わせた自由騎士のなんともいえぬ顔。
「カシミロ議長にはすでに連絡をついておいた。もちろん単純に討伐する事も出来るが、以前使った海賊船を貸す事も可能だそうだ」
こうして自由騎士は偽者討伐に向かう事になった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.偽海賊の討伐
(頭を抱える) ……麺です。
討伐をお願いします。なんとかどうにかお願いします。
●ロケーション
イ・ラプセル西部の穏やかな海。
シャンバラからの大量の輸入食料を積み込んだ通商連の貨物船が海賊船に襲われます。
通商連の船にも戦闘員は居ますが、数で圧倒されてしまった状態です。
イ・ラプセル軍用船で向かう場合は襲撃前に、海賊船を使う場合は襲われた直後に辿りつきます。
・海賊船フンギ・エ・ファンチューレ号
シャンバラ潜入の陽動作戦に使われた海賊船。希望すれば使用可能。
●敵
『漢女鴇の子(オトメトキノコ)海賊団』
・『大笑い』ジョリエットン 38歳。
船長。ウェーブのかかった美しく長いブロンドの髪の巨漢でマッチョな女性。マウンテンゴリラのケモノビト。重戦士スタイル。
武器は鉄柱。体力は有り余っています。
・『叫人』グラン 18歳。
副船長。金髪の痩せ男。体型に合わない鎧を着込んだキジン。何故副船長なのかわからない程度には臆病者。にげ惑う際に叫びまくるので叫人。軽戦士スタイル。
武器はスリングショット。自分からは絶対に近づいてこない。
実はジョリエットンの義理の息子。
・乗組員 50人。
乙女ときのこ海賊団の他のメンバーを真似た名前のものもいる。
種族は様々。戦闘スタイルはほとんどが軽戦士スタイル。ヒーラーと魔道士が少々。
全員を討ち取る必要はありません。船長を倒す事が出来れば船員は投降します。
乙女ときのこ海賊団についての詳細は拙作『【陽動作戦】出航せよ! イ・ラプセル海賊団!!』でご確認いただけますが、特に詳細をご存知でなくても全く問題はありません。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなければ船の操作に集中します。
所持スキルはステータスシートをご参照ください。
皆様のご参加心よりお待ちしております。
討伐をお願いします。なんとかどうにかお願いします。
●ロケーション
イ・ラプセル西部の穏やかな海。
シャンバラからの大量の輸入食料を積み込んだ通商連の貨物船が海賊船に襲われます。
通商連の船にも戦闘員は居ますが、数で圧倒されてしまった状態です。
イ・ラプセル軍用船で向かう場合は襲撃前に、海賊船を使う場合は襲われた直後に辿りつきます。
・海賊船フンギ・エ・ファンチューレ号
シャンバラ潜入の陽動作戦に使われた海賊船。希望すれば使用可能。
●敵
『漢女鴇の子(オトメトキノコ)海賊団』
・『大笑い』ジョリエットン 38歳。
船長。ウェーブのかかった美しく長いブロンドの髪の巨漢でマッチョな女性。マウンテンゴリラのケモノビト。重戦士スタイル。
武器は鉄柱。体力は有り余っています。
・『叫人』グラン 18歳。
副船長。金髪の痩せ男。体型に合わない鎧を着込んだキジン。何故副船長なのかわからない程度には臆病者。にげ惑う際に叫びまくるので叫人。軽戦士スタイル。
武器はスリングショット。自分からは絶対に近づいてこない。
実はジョリエットンの義理の息子。
・乗組員 50人。
乙女ときのこ海賊団の他のメンバーを真似た名前のものもいる。
種族は様々。戦闘スタイルはほとんどが軽戦士スタイル。ヒーラーと魔道士が少々。
全員を討ち取る必要はありません。船長を倒す事が出来れば船員は投降します。
乙女ときのこ海賊団についての詳細は拙作『【陽動作戦】出航せよ! イ・ラプセル海賊団!!』でご確認いただけますが、特に詳細をご存知でなくても全く問題はありません。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなければ船の操作に集中します。
所持スキルはステータスシートをご参照ください。
皆様のご参加心よりお待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2019年01月12日
2019年01月12日
†メイン参加者 6人†
●
今まさに偽海賊に襲撃を受けている通商連の輸送船。そこに近づく船影が一つ。
言わずと知れた『乙女ときのこ海賊団』の海賊船、その船の名も『フンギ・エ・ファンチューレ号』だ。
全会一致で海賊として討伐することを選んだ自由騎士達は通商連カシミロ議長の協力により、またもやその身を海賊へと変貌させたのだった。
「それにしても……船長と副船長の偽者がいるのはとーぜんとしてさぁ……賞金額3位タイの私の偽者どころか、格闘スタイルすらいないってどーゆーことなのさー!」
いたくご立腹しているのは『『豪脚』ローゼ』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)だ。
ぎったんぎったんにして『豪脚』ローゼの強さを思い知らせてやる──! ローゼはまさに怒り心頭だ。
「偽物やるならもっとカッコ良く……じゃなくって偽物は許せないね!」
思わず本音がちらりと出たのは『『お菓子大好き』ウィルナ』シア・ウィルナーグ(CL3000028)だ。
ボクの偽物もいるかも知れないと思うと見てみたいような……怖いような……。その複雑な気持ちは何ともいえない表情が表している。
「メンバー役は全員いるのかな? もしかしてジローさんも!?」
ええ、います。
「それにしても迷惑な話だ」
『『荒ぶるエリンギ』ランス』ランスロット・カースン(CL3000391)は剣を片手に仁王立つ。我々を騙る者が現れた以上、放って置く訳にはいかないだろう……責任を取らねばなるまい。
「そう……乙女ときのこ海賊団としてだ!(キリッ)」
ランスのカメラ目線とポーズが決まった。
一方少々落ち込んでいるのは『『狂人』クラン』アダム・クランプトン(CL3000185)だ。
「偽物が現れるだなんて乙女とキノコ海賊団はちょっとやり過ぎだったのかな……」
いくら偽装とはいえ、その後このような騒動を起こす偽者が出てしまった事をクランは憂いていた。
「い、いや!気落ちしている場合じゃない!」
通商連の船を守る為……そして一時とはいえ海賊だった誇りを守る為。
「偽物には退場してもらうよ!」
クランの先ほどまでの憂いは消えていた。
『わたくし達は泣く子も黙る高潔な海賊団。そう、乙女ときのこ海賊団ですわ! もちろん海賊船に乗って現場へ向かいますわよ──』
出発前、いの一番に海賊船使用を申し出たのは『『高笑い』キャプテンジュリエット』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)その人だ。
船長としての矜持か、はたまた生来の気質なのか。その顔には誇りと自信が見て取れる。
「おーーっほっほっほ!!! そこの海賊達! 今すぐ略奪をやめなさい!」
声域拡張されたジュリエットの声は輸送船、海賊船、その全てに響き渡る。
「な、なんだ!?」
ざわつく偽海賊。そして偽海賊の一人が高らかと掲げられた旗印に気づく。
「あの船旗……ま、まさかっ!?」
「や、やばいですぜ……ジョリエットンの姐御!! 本物が来ちまった!!」
うろたえる海賊達に、船長のジョリエットンが檄を飛ばす。
「お前ら、ビビってんのかい!? 構うこたぁねぇ、やっちまいな!! 数じゃうちが勝ってるんだ!!」
略奪を行っていた偽海賊達は号令と共に臨戦態勢をとる。
「わたくし達は乙女ときのこ海賊団。貴方方が名を騙る……そうっ!! 本物のっ!! 乙女ときのこ海賊団ですわ!!」
ジュリエットは船首に立ち、高らかと宣言する。
「わたくし達の名を騙るとは笑止千万。片腹痛いですわ! お覚悟はよろしくって?」
「オトメトキノコ海賊団がもう一つ!? 一体どういうことだ!?」
動揺しているのは偽海賊だけではない。輸送船に乗る船員もまた混乱していた。通商連といえど、その全てに情報は伝わってはいないのだ。
「わたくしの名は『高笑い』のキャプテンジュリエット!」
ジュリエットのド派手な名乗りと共に、偽海賊船にフンギ・エ・ファンチューレ号が接舷される。
「お前達、アタシを守りな!! 絶対近づけるんじゃないよ」
「イエッサ-! マム!!」
こうして乙女ときのこ海賊団と漢女鴇の子海賊団による戦いは幕を開ける。
●
「じゃぁお先っ!! いっくよーーーーっ!!」
特攻隊長ローゼ。その格好は以前と同じくアルヴィダ風だ。龍氣螺合で強化したローゼは一気に敵海賊船へ飛ぶ。その移動方法はやはり豪快なとび蹴りだ。
着地地点に居た数名の海賊を豪快に吹き飛ばし、敵陣真っ只中へ。
「『豪脚』ローゼとは私のことだー! 命の惜しいヤツはすっこんでろー!」
二重のアイドルオーラを放ち、キラキラ輝くローゼが勢いよく名乗りを上げると、一歩前に出てくる男が一人。
「俺の名は……『O脚』のノーゼ。この漢女鴇の子海賊団のナンバー3と噂される男だ。いやむしろナンバー3といっても過言ではないはずだ」
絶句するローゼ。顔に嘘でしょ、とはっきり浮かんでいる。ほらだって、色々違うじゃん! 何より性別違うじゃん!! めっちゃO脚じゃん!!!!
「ノーゼさん、やっちゃってください!!」
周りの海賊達がノーゼを囃し立て、それをよせよせと諌めるノーゼ。その実力は偽海賊の中では本当に高いようだ。
「戦う前に一つ、聞くよ」
「なんだ。答えてやろう」
「お前、戦闘スタイルは?」
聞かざるを得ない。
「無論軽戦士だ」
「……うがーーー!!」
ローゼがキレた。殴る。蹴る。殴る。蹴る。蹴る。蹴る。引き起こす。蹴る。蹴る。殴る。もう許してのポーズ。ひっぱたく。蹴る。蹴る。殴る。蹴る。蹴る。蹴る。デコピン。蹴る。殴る。蹴る。蹴る。蹴る。
「しゅ……しゅまへん……もう降参れふ……」
そこにはローゼにボコボコにされ、見るも無残な姿のノーゼ。
「まったく! 冗談もほどほどにしろー!!」
ローゼの怒りは収まらず周りの海賊達を蹴散らしていく。
次に敵海賊船に現れたのはウィルナ。さすがの瞬発力で敵をなぎ倒していく。
「乙女ときのこ海賊団はこんなカッコ悪くないよっ!」
この戦い、元々かなりの人数差がある。出来れば船長を一気に倒して制圧したい。そう考えたウィルナだったが船長ジュリエットンの周囲には幾重にも海賊が待ち構えている。突破は容易ではなさそうだ。
「貴方のお相手はワタシがするわぁん」
その時、色っぽい声がした。嫌な予感。
「だれっ!?」
「ワタシは……『お菓子「も」大好き』ウェルナッよぉ~」
一言で表そう。ぼんきゅっぼん。そう、ぼんきゅっぼんがウィルナの前に現れたのだ。
(ちょ!! 性別だけはあってるけど、ボクと見た目が全然違うよ!! しかもお菓子「も」って!!)
「お菓子「も」って!!! 他には何が好きなのさっ!!」
「教えて欲しいのかい? でもお子ちゃまにはまだ早いかもしれないわよぉ」
うふふと妖艶に笑うウェルナ。確実に男をたぶらかす悪女である。あまりの違いにふるふると身体を震わすウィルナ。
「ボクは……ボクはそんなのじゃなーーーいっ!!!!!」
ウィルナ怒りのピアッシングファンデヴ。ウェルナも少しは腕に自信があった様だが、ノーモーションから繰り出されたウィルナの神速の突きには反応できなかった。
「……あふぅ……」
そのまま倒れこむウェルナ。倒れる声まで色っぽいのがまたウィルナに追い討ちをかける。
(違うもん。こんなの違うもん……)
ウィルナは顔を紅潮させながらぷぅと頬を膨らませ少し涙目。よほどお気に召さなかったようだ。……特に偽者の胸の辺りであろうか。大丈夫、あと数年もすればきっと。たぶん。
「そこまでだ、偽物ども!! なっ……!?」
ランスは見たくないものを見てしまった。思わず柄にも無く素っ頓狂な声を上げてしまう。
(絶対にあれが俺の偽者に違いない……嫌な予感はしていたのだ……)
頭を抱えるランスの目線の先にはほぼ裸の男。装備品などほぼ無い。だが男はそれはそれは立派な■■ン■を持っていた。その男の■リ■■は昂ぶり、ぐんと天を仰ぐ。ランスがソレに目をやると男はエ■■■を左右に大きく揺らす、幾分膨張している様にも見える。まさに荒ぶりの中の荒ぶり。究極の荒ぶリストといっても過言では無い。……そう、ただの変態である。
「なんという……貴様、どういうつもりだ!」
あまりの状況にさすがのランスも困惑する。まさか……まさか、こっち方面に伸び(?)てくるとは……。
一瞬気が遠くなるランスだが、そうも言っていられない。とにかく何にも優先してこの偽者をどうにかせねばなるまい。この偽者を放置しておく事は、今後自身の名誉に関わる大問題となりかねない。
「ふふふ……魅入っているな。私の名前は『荒ぶる■■■ギ』ラアンス。貴様の視線の先にあるもの……それは私のエ■ン■さんだ」
ラアンスがランスにそのいきり立つ■リ■ギを見せつけるかの如く、じわりじわりとにじり寄ってくる。
それに対し俯き微動だにしないランス。
「いくぞっ!! 変! 態! 秘奥義!! エ■■ギ乱舞!!!」
あーあ変態って言っちゃったよこの人。言っとくけどね。ランスはとっても真面目なんだぞ。そういうのは効かないからな!! ……効かない……よね?
荒ぶる■■ンギを振り乱しながらランスへ突撃するラアンス。その姿にはもはや狂気すら感じざるを得ない。
すると……ランスはため息を一つ、ふぅと吐くと、大きく腕を振りかぶった。
「げふぅっ!!!」
吹き飛ぶラアンス。すさまじい殺気と共にランス渾身のぐーぱんち。コイツには磨き上げたスキルや武器すらもったいない──きっとそう思ったのだろう。
その一撃はラアンスの心を折るのには十分だった。あれほど荒ぶっていたラアンスのエリ■ンギがしょんぼりとうなだれる。
「俺を騙ろうなどと大それた事を考えたものだ。貴様には矜持が足りん。き……」
騎士の、と言いかけたランス。なんとか踏みとどまって出た言葉は──
「キノコの矜持がっ! この俺こそが泣く子も黙る乙女ときのこ海賊団、『荒ぶるエリンギ』ランスだ!」
その決め台詞と共にとったポーズは、とても奇妙奇天烈なものであったと後々偽海賊の語り草になったという。
目には目を歯には歯を。海賊には海賊にを、というわけだが──
「まったく……クオリティが低いにも程があるぞ」
よく通る声が響く。
「誰だ!? 新手の海賊かっ!?」
そこには乱戦の最中、颯爽と現れた『『白天狗』ヴィーノ』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)の姿。
ヴィーノは見ていた。ローゼの偽者を、ウィルナの偽者を、そしてランスを頭を抱えたくなるような偽者も。
これまで登場した偽者たちのあまりの再現度の低さに辟易していたのだ。
そしてヴィーノの目の前にはヤツが居た。またほぼ全裸だ。そして股間に天狗のめ──
「ゴフッ……まさか名乗らせてすらもらえぬとは……私の名は『下(しも)天狗』ヴィィィィィィィィィィ……(バタッ)」
まさに瞬殺。ヴィーノの顔面パンチによってあえなく偽者は倒れたのであった。
「俺を真似るなら、もう少しどうにかしろ。さすがに見てられん」
──えっまだ状況説明も途中だったのに……ヴィーノ、何故もう少し待てなかった──(M二郎、心の声)
「下品なものは二度も見たくない。きっとみんな(どくしゃ)だってそう思っている!!」
早々に偽者を倒したヴィーノは力強くそう言った。正解か? 正解だ!
「それにしても数が多い……やはりここは──」
ヴィーノの心配の種はすでに消えた。白目を剝いて倒れる偽者を横目にヴィーノは次の戦場へ急ぐのであった。
僕は再び『狂人』クランとして海へ戻る──
本物の乙女ときのこ海賊団として偽物を退治すれば、今後同じ様な偽物は現れないだろうしね。
交戦前にアダムはこう言った。そしてその時からアダムはクランになったのだ。
「漢女鴇の子海賊団だぁ? ハッ、俺らの猿真似たぁ良い度胸してんじゃねぇか。上等だ、徹底的にブチのめしてやらァ!」
クランはわざと海賊達を煽るように捲くし立てた。もちろんこれは海賊達を惹きつけるためのクランの作戦である。
「ほんとはよぅ……偽物全員ブチのめしてぇ所だがさすがに数が多すぎる。けどよ、大将首あげりゃちったぁ大人しくなんだろ」
誰に聞かすでもなくそう言うと、次々と襲い掛かってくる海賊達をなぎ払いながら少し離れた場所にいるジョリエットンに目線を移す。
「……ウチのキャプテンとは似ても似つかねぇじゃねぇか! バカ!」
容姿端麗、才色兼備、ちょっと残念なところもチャームポイント。乙女ときのこ海賊団のキャプテンはそんな存在なのだ。だのにあれはどうだ。月とすっぽん、いや美少女とゴリラだ。
「で、肝心要の俺の偽物はどこで遊んでんだ?」
そういってあたりを見渡すがその姿は無い。だが叫び声は聞こえる。いるのは間違いないようだ。
「叫ぶしか能がねぇのか? アァ!? その体は何の為にある? その心臓は何の為に動く? 俺の偽物名乗んなら守るべきを守れ! ソレが漢ってモンだろうが!」
クランは叫んだ。姿の見えないグランに対して。この叫びははたして彼に届くのだろうか。それはわからない。
その後も最前線で仲間達の盾となり、戦うクラン。柳凪でその身を固めようとも徐々にその体力は失われていく。しかしクランは一歩も引かない。防御体勢をとりながら全力で突進しては海賊達をなぎ倒し、突進力が落ち敵に囲まれれば、体内に凝縮した気を瞬時に爆発させ、周りの海賊達を吹き飛ばす。文字通りクランの通った場所に道が出来ていく。
「三下じゃ話になんねぇんだよ大将出せ、大将!」
煽り立ててはいるものの、クランの消耗もまた激しい。ジュリエットが絶えず皆の回復を行ってはいるものの回復が追いついていない。
「手伝いますっクランさん!」
そこへヴィーノが合流する。ジュリエットンはもう目の前だ。
「グワッハッハッハー!! さすがにこれだけの人数相手にしちゃ疲れただろう。アタシがオネンネさせてやろうかい」
ジュリエットンが動く。海賊達は数さえ多いものの個々のその実力はたかが知れていた。だがジョリエットン、こいつだけはどうやら違う。己が武器である鉄柱を軽がると振り回す様はその実力を垣間見させる。
ヴィーノが鉄山靠でジョリエットンの周りの海賊達ごとダメージを与えんとするが、そのダメージは軽微だ。
かといって容易に懐に飛び込もうとすればあの鉄柱の餌食。容易に踏み込めない。
「グワッハッハッハーーーー!!! どうしたんだい? このジョリエットン様の攻撃に恐れをなしたのかい?」
自由騎士達の猛攻を裁き続けるジョリエットンの鉄柱のスピードは一向に衰えない。有り余る体力がジョリエットンの攻撃を支えているのだ。
こう着状態は続く。攻撃は最大の防御──まさにその言葉通りの激しい攻撃で自由騎士達の攻撃を受け付けないジョリエットン。満身創痍のクラン、ヴィーノは決定打を与えられないまま、時間だけが過ぎていく。
「一か八か飛び込むしかない……か」
ヴィーノがそう腹をくくった瞬間だった。
「とりゃーーーーーっ!!!」
そこに現れたのはローゼ。ジョリエットンの鉄柱めがけ放った穆王八駿は凄まじい衝撃とともに、鉄柱を弾き飛ばす。
「グワッ!?」
鉄柱を弾き飛ばされたジョリエットンが体勢を崩す。
「好機!! 観念していただきますわ」
ジュリエットは両手を重ね想いを乗せた詠唱を始める。
「赤く……どこまでも紅い流星よ、我が想いと重なりて敵を撃ち給え──くらいなさいっ!! 柘榴石の流れ星(ガーネットミーティア)ーーーーッッ!!!」
中天から降り注いだ二条の流れ星が一直線にジョリエットンに振り注ぎ、凄まじい衝撃と爆煙があたりを包み込む。
爆煙が晴れるとそこには……ジョリエットンを庇い、その身に全ての攻撃を受けたグランの姿。
「僕にだって……守りたいものくらい……あるん……だ」
そういって気を失ったグラン。戦場で泣き叫び、逃げ惑うだけであった彼のこれまでの人生。戦いの最中放ったクランの心からの叫びは確かにグランに届いていたのだ。
「……アタシの負けだ」
そう言うとジョリエットンは意識の無いグランを抱きしめたまま静かにその場に座り込み、降伏したのだった。
●
「偽海賊全員捕まえたよっ!!」
ウィルナが倉庫の奥で隠れていた最後に一人を連れてくる。ちゃっかり海賊船に積まれていたお菓子もゲットしたようだ。口がもぐもぐしている。小動物系海賊ウィルナ。かわゆ。
皆がジョリエットンの相手をしている間、ランスとウィルナは海賊達を確実に倒して回っていた。故にジョリエットンが降伏したときには実質海賊達は全滅していたのだ。
「偽者は倒した。さて帰るか」
ランスの一言で海賊に扮した自由騎士達が帰ろうとしたその時だった。
「さぁ貨物は持っていくがいい……我々にはもう抵抗する力は無い」
通商連の船員は力なくそう言った。
「乙女ときのこ海賊団はそこらの下賤な海賊とは格が違う。今日は我らが名を汚す偽者を討伐しに来た。それだけだ」
「……今日は簒奪する気分ではありませんの。ですから、積み荷はすべてお返ししてさしあげますわ! わたくしの気まぐれに感謝なさい! おーーーーっほっほっほっほ!!!!」
ジュリエットの高笑いが夕暮れ時の海原に響き渡る。
「キャプテンの寛大な心に感謝するんだな」
ヴィーノはそれだけ言うと自らの海賊船へ踵を返した。
「乙女ときのこ海賊団……彼らは一体……」
後日この日の出来事は方々に伝えられ、乙女ときのこ海賊団の名は更に世界に知らしめる事となった。
今まさに偽海賊に襲撃を受けている通商連の輸送船。そこに近づく船影が一つ。
言わずと知れた『乙女ときのこ海賊団』の海賊船、その船の名も『フンギ・エ・ファンチューレ号』だ。
全会一致で海賊として討伐することを選んだ自由騎士達は通商連カシミロ議長の協力により、またもやその身を海賊へと変貌させたのだった。
「それにしても……船長と副船長の偽者がいるのはとーぜんとしてさぁ……賞金額3位タイの私の偽者どころか、格闘スタイルすらいないってどーゆーことなのさー!」
いたくご立腹しているのは『『豪脚』ローゼ』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)だ。
ぎったんぎったんにして『豪脚』ローゼの強さを思い知らせてやる──! ローゼはまさに怒り心頭だ。
「偽物やるならもっとカッコ良く……じゃなくって偽物は許せないね!」
思わず本音がちらりと出たのは『『お菓子大好き』ウィルナ』シア・ウィルナーグ(CL3000028)だ。
ボクの偽物もいるかも知れないと思うと見てみたいような……怖いような……。その複雑な気持ちは何ともいえない表情が表している。
「メンバー役は全員いるのかな? もしかしてジローさんも!?」
ええ、います。
「それにしても迷惑な話だ」
『『荒ぶるエリンギ』ランス』ランスロット・カースン(CL3000391)は剣を片手に仁王立つ。我々を騙る者が現れた以上、放って置く訳にはいかないだろう……責任を取らねばなるまい。
「そう……乙女ときのこ海賊団としてだ!(キリッ)」
ランスのカメラ目線とポーズが決まった。
一方少々落ち込んでいるのは『『狂人』クラン』アダム・クランプトン(CL3000185)だ。
「偽物が現れるだなんて乙女とキノコ海賊団はちょっとやり過ぎだったのかな……」
いくら偽装とはいえ、その後このような騒動を起こす偽者が出てしまった事をクランは憂いていた。
「い、いや!気落ちしている場合じゃない!」
通商連の船を守る為……そして一時とはいえ海賊だった誇りを守る為。
「偽物には退場してもらうよ!」
クランの先ほどまでの憂いは消えていた。
『わたくし達は泣く子も黙る高潔な海賊団。そう、乙女ときのこ海賊団ですわ! もちろん海賊船に乗って現場へ向かいますわよ──』
出発前、いの一番に海賊船使用を申し出たのは『『高笑い』キャプテンジュリエット』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)その人だ。
船長としての矜持か、はたまた生来の気質なのか。その顔には誇りと自信が見て取れる。
「おーーっほっほっほ!!! そこの海賊達! 今すぐ略奪をやめなさい!」
声域拡張されたジュリエットの声は輸送船、海賊船、その全てに響き渡る。
「な、なんだ!?」
ざわつく偽海賊。そして偽海賊の一人が高らかと掲げられた旗印に気づく。
「あの船旗……ま、まさかっ!?」
「や、やばいですぜ……ジョリエットンの姐御!! 本物が来ちまった!!」
うろたえる海賊達に、船長のジョリエットンが檄を飛ばす。
「お前ら、ビビってんのかい!? 構うこたぁねぇ、やっちまいな!! 数じゃうちが勝ってるんだ!!」
略奪を行っていた偽海賊達は号令と共に臨戦態勢をとる。
「わたくし達は乙女ときのこ海賊団。貴方方が名を騙る……そうっ!! 本物のっ!! 乙女ときのこ海賊団ですわ!!」
ジュリエットは船首に立ち、高らかと宣言する。
「わたくし達の名を騙るとは笑止千万。片腹痛いですわ! お覚悟はよろしくって?」
「オトメトキノコ海賊団がもう一つ!? 一体どういうことだ!?」
動揺しているのは偽海賊だけではない。輸送船に乗る船員もまた混乱していた。通商連といえど、その全てに情報は伝わってはいないのだ。
「わたくしの名は『高笑い』のキャプテンジュリエット!」
ジュリエットのド派手な名乗りと共に、偽海賊船にフンギ・エ・ファンチューレ号が接舷される。
「お前達、アタシを守りな!! 絶対近づけるんじゃないよ」
「イエッサ-! マム!!」
こうして乙女ときのこ海賊団と漢女鴇の子海賊団による戦いは幕を開ける。
●
「じゃぁお先っ!! いっくよーーーーっ!!」
特攻隊長ローゼ。その格好は以前と同じくアルヴィダ風だ。龍氣螺合で強化したローゼは一気に敵海賊船へ飛ぶ。その移動方法はやはり豪快なとび蹴りだ。
着地地点に居た数名の海賊を豪快に吹き飛ばし、敵陣真っ只中へ。
「『豪脚』ローゼとは私のことだー! 命の惜しいヤツはすっこんでろー!」
二重のアイドルオーラを放ち、キラキラ輝くローゼが勢いよく名乗りを上げると、一歩前に出てくる男が一人。
「俺の名は……『O脚』のノーゼ。この漢女鴇の子海賊団のナンバー3と噂される男だ。いやむしろナンバー3といっても過言ではないはずだ」
絶句するローゼ。顔に嘘でしょ、とはっきり浮かんでいる。ほらだって、色々違うじゃん! 何より性別違うじゃん!! めっちゃO脚じゃん!!!!
「ノーゼさん、やっちゃってください!!」
周りの海賊達がノーゼを囃し立て、それをよせよせと諌めるノーゼ。その実力は偽海賊の中では本当に高いようだ。
「戦う前に一つ、聞くよ」
「なんだ。答えてやろう」
「お前、戦闘スタイルは?」
聞かざるを得ない。
「無論軽戦士だ」
「……うがーーー!!」
ローゼがキレた。殴る。蹴る。殴る。蹴る。蹴る。蹴る。引き起こす。蹴る。蹴る。殴る。もう許してのポーズ。ひっぱたく。蹴る。蹴る。殴る。蹴る。蹴る。蹴る。デコピン。蹴る。殴る。蹴る。蹴る。蹴る。
「しゅ……しゅまへん……もう降参れふ……」
そこにはローゼにボコボコにされ、見るも無残な姿のノーゼ。
「まったく! 冗談もほどほどにしろー!!」
ローゼの怒りは収まらず周りの海賊達を蹴散らしていく。
次に敵海賊船に現れたのはウィルナ。さすがの瞬発力で敵をなぎ倒していく。
「乙女ときのこ海賊団はこんなカッコ悪くないよっ!」
この戦い、元々かなりの人数差がある。出来れば船長を一気に倒して制圧したい。そう考えたウィルナだったが船長ジュリエットンの周囲には幾重にも海賊が待ち構えている。突破は容易ではなさそうだ。
「貴方のお相手はワタシがするわぁん」
その時、色っぽい声がした。嫌な予感。
「だれっ!?」
「ワタシは……『お菓子「も」大好き』ウェルナッよぉ~」
一言で表そう。ぼんきゅっぼん。そう、ぼんきゅっぼんがウィルナの前に現れたのだ。
(ちょ!! 性別だけはあってるけど、ボクと見た目が全然違うよ!! しかもお菓子「も」って!!)
「お菓子「も」って!!! 他には何が好きなのさっ!!」
「教えて欲しいのかい? でもお子ちゃまにはまだ早いかもしれないわよぉ」
うふふと妖艶に笑うウェルナ。確実に男をたぶらかす悪女である。あまりの違いにふるふると身体を震わすウィルナ。
「ボクは……ボクはそんなのじゃなーーーいっ!!!!!」
ウィルナ怒りのピアッシングファンデヴ。ウェルナも少しは腕に自信があった様だが、ノーモーションから繰り出されたウィルナの神速の突きには反応できなかった。
「……あふぅ……」
そのまま倒れこむウェルナ。倒れる声まで色っぽいのがまたウィルナに追い討ちをかける。
(違うもん。こんなの違うもん……)
ウィルナは顔を紅潮させながらぷぅと頬を膨らませ少し涙目。よほどお気に召さなかったようだ。……特に偽者の胸の辺りであろうか。大丈夫、あと数年もすればきっと。たぶん。
「そこまでだ、偽物ども!! なっ……!?」
ランスは見たくないものを見てしまった。思わず柄にも無く素っ頓狂な声を上げてしまう。
(絶対にあれが俺の偽者に違いない……嫌な予感はしていたのだ……)
頭を抱えるランスの目線の先にはほぼ裸の男。装備品などほぼ無い。だが男はそれはそれは立派な■■ン■を持っていた。その男の■リ■■は昂ぶり、ぐんと天を仰ぐ。ランスがソレに目をやると男はエ■■■を左右に大きく揺らす、幾分膨張している様にも見える。まさに荒ぶりの中の荒ぶり。究極の荒ぶリストといっても過言では無い。……そう、ただの変態である。
「なんという……貴様、どういうつもりだ!」
あまりの状況にさすがのランスも困惑する。まさか……まさか、こっち方面に伸び(?)てくるとは……。
一瞬気が遠くなるランスだが、そうも言っていられない。とにかく何にも優先してこの偽者をどうにかせねばなるまい。この偽者を放置しておく事は、今後自身の名誉に関わる大問題となりかねない。
「ふふふ……魅入っているな。私の名前は『荒ぶる■■■ギ』ラアンス。貴様の視線の先にあるもの……それは私のエ■ン■さんだ」
ラアンスがランスにそのいきり立つ■リ■ギを見せつけるかの如く、じわりじわりとにじり寄ってくる。
それに対し俯き微動だにしないランス。
「いくぞっ!! 変! 態! 秘奥義!! エ■■ギ乱舞!!!」
あーあ変態って言っちゃったよこの人。言っとくけどね。ランスはとっても真面目なんだぞ。そういうのは効かないからな!! ……効かない……よね?
荒ぶる■■ンギを振り乱しながらランスへ突撃するラアンス。その姿にはもはや狂気すら感じざるを得ない。
すると……ランスはため息を一つ、ふぅと吐くと、大きく腕を振りかぶった。
「げふぅっ!!!」
吹き飛ぶラアンス。すさまじい殺気と共にランス渾身のぐーぱんち。コイツには磨き上げたスキルや武器すらもったいない──きっとそう思ったのだろう。
その一撃はラアンスの心を折るのには十分だった。あれほど荒ぶっていたラアンスのエリ■ンギがしょんぼりとうなだれる。
「俺を騙ろうなどと大それた事を考えたものだ。貴様には矜持が足りん。き……」
騎士の、と言いかけたランス。なんとか踏みとどまって出た言葉は──
「キノコの矜持がっ! この俺こそが泣く子も黙る乙女ときのこ海賊団、『荒ぶるエリンギ』ランスだ!」
その決め台詞と共にとったポーズは、とても奇妙奇天烈なものであったと後々偽海賊の語り草になったという。
目には目を歯には歯を。海賊には海賊にを、というわけだが──
「まったく……クオリティが低いにも程があるぞ」
よく通る声が響く。
「誰だ!? 新手の海賊かっ!?」
そこには乱戦の最中、颯爽と現れた『『白天狗』ヴィーノ』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)の姿。
ヴィーノは見ていた。ローゼの偽者を、ウィルナの偽者を、そしてランスを頭を抱えたくなるような偽者も。
これまで登場した偽者たちのあまりの再現度の低さに辟易していたのだ。
そしてヴィーノの目の前にはヤツが居た。またほぼ全裸だ。そして股間に天狗のめ──
「ゴフッ……まさか名乗らせてすらもらえぬとは……私の名は『下(しも)天狗』ヴィィィィィィィィィィ……(バタッ)」
まさに瞬殺。ヴィーノの顔面パンチによってあえなく偽者は倒れたのであった。
「俺を真似るなら、もう少しどうにかしろ。さすがに見てられん」
──えっまだ状況説明も途中だったのに……ヴィーノ、何故もう少し待てなかった──(M二郎、心の声)
「下品なものは二度も見たくない。きっとみんな(どくしゃ)だってそう思っている!!」
早々に偽者を倒したヴィーノは力強くそう言った。正解か? 正解だ!
「それにしても数が多い……やはりここは──」
ヴィーノの心配の種はすでに消えた。白目を剝いて倒れる偽者を横目にヴィーノは次の戦場へ急ぐのであった。
僕は再び『狂人』クランとして海へ戻る──
本物の乙女ときのこ海賊団として偽物を退治すれば、今後同じ様な偽物は現れないだろうしね。
交戦前にアダムはこう言った。そしてその時からアダムはクランになったのだ。
「漢女鴇の子海賊団だぁ? ハッ、俺らの猿真似たぁ良い度胸してんじゃねぇか。上等だ、徹底的にブチのめしてやらァ!」
クランはわざと海賊達を煽るように捲くし立てた。もちろんこれは海賊達を惹きつけるためのクランの作戦である。
「ほんとはよぅ……偽物全員ブチのめしてぇ所だがさすがに数が多すぎる。けどよ、大将首あげりゃちったぁ大人しくなんだろ」
誰に聞かすでもなくそう言うと、次々と襲い掛かってくる海賊達をなぎ払いながら少し離れた場所にいるジョリエットンに目線を移す。
「……ウチのキャプテンとは似ても似つかねぇじゃねぇか! バカ!」
容姿端麗、才色兼備、ちょっと残念なところもチャームポイント。乙女ときのこ海賊団のキャプテンはそんな存在なのだ。だのにあれはどうだ。月とすっぽん、いや美少女とゴリラだ。
「で、肝心要の俺の偽物はどこで遊んでんだ?」
そういってあたりを見渡すがその姿は無い。だが叫び声は聞こえる。いるのは間違いないようだ。
「叫ぶしか能がねぇのか? アァ!? その体は何の為にある? その心臓は何の為に動く? 俺の偽物名乗んなら守るべきを守れ! ソレが漢ってモンだろうが!」
クランは叫んだ。姿の見えないグランに対して。この叫びははたして彼に届くのだろうか。それはわからない。
その後も最前線で仲間達の盾となり、戦うクラン。柳凪でその身を固めようとも徐々にその体力は失われていく。しかしクランは一歩も引かない。防御体勢をとりながら全力で突進しては海賊達をなぎ倒し、突進力が落ち敵に囲まれれば、体内に凝縮した気を瞬時に爆発させ、周りの海賊達を吹き飛ばす。文字通りクランの通った場所に道が出来ていく。
「三下じゃ話になんねぇんだよ大将出せ、大将!」
煽り立ててはいるものの、クランの消耗もまた激しい。ジュリエットが絶えず皆の回復を行ってはいるものの回復が追いついていない。
「手伝いますっクランさん!」
そこへヴィーノが合流する。ジュリエットンはもう目の前だ。
「グワッハッハッハー!! さすがにこれだけの人数相手にしちゃ疲れただろう。アタシがオネンネさせてやろうかい」
ジュリエットンが動く。海賊達は数さえ多いものの個々のその実力はたかが知れていた。だがジョリエットン、こいつだけはどうやら違う。己が武器である鉄柱を軽がると振り回す様はその実力を垣間見させる。
ヴィーノが鉄山靠でジョリエットンの周りの海賊達ごとダメージを与えんとするが、そのダメージは軽微だ。
かといって容易に懐に飛び込もうとすればあの鉄柱の餌食。容易に踏み込めない。
「グワッハッハッハーーーー!!! どうしたんだい? このジョリエットン様の攻撃に恐れをなしたのかい?」
自由騎士達の猛攻を裁き続けるジョリエットンの鉄柱のスピードは一向に衰えない。有り余る体力がジョリエットンの攻撃を支えているのだ。
こう着状態は続く。攻撃は最大の防御──まさにその言葉通りの激しい攻撃で自由騎士達の攻撃を受け付けないジョリエットン。満身創痍のクラン、ヴィーノは決定打を与えられないまま、時間だけが過ぎていく。
「一か八か飛び込むしかない……か」
ヴィーノがそう腹をくくった瞬間だった。
「とりゃーーーーーっ!!!」
そこに現れたのはローゼ。ジョリエットンの鉄柱めがけ放った穆王八駿は凄まじい衝撃とともに、鉄柱を弾き飛ばす。
「グワッ!?」
鉄柱を弾き飛ばされたジョリエットンが体勢を崩す。
「好機!! 観念していただきますわ」
ジュリエットは両手を重ね想いを乗せた詠唱を始める。
「赤く……どこまでも紅い流星よ、我が想いと重なりて敵を撃ち給え──くらいなさいっ!! 柘榴石の流れ星(ガーネットミーティア)ーーーーッッ!!!」
中天から降り注いだ二条の流れ星が一直線にジョリエットンに振り注ぎ、凄まじい衝撃と爆煙があたりを包み込む。
爆煙が晴れるとそこには……ジョリエットンを庇い、その身に全ての攻撃を受けたグランの姿。
「僕にだって……守りたいものくらい……あるん……だ」
そういって気を失ったグラン。戦場で泣き叫び、逃げ惑うだけであった彼のこれまでの人生。戦いの最中放ったクランの心からの叫びは確かにグランに届いていたのだ。
「……アタシの負けだ」
そう言うとジョリエットンは意識の無いグランを抱きしめたまま静かにその場に座り込み、降伏したのだった。
●
「偽海賊全員捕まえたよっ!!」
ウィルナが倉庫の奥で隠れていた最後に一人を連れてくる。ちゃっかり海賊船に積まれていたお菓子もゲットしたようだ。口がもぐもぐしている。小動物系海賊ウィルナ。かわゆ。
皆がジョリエットンの相手をしている間、ランスとウィルナは海賊達を確実に倒して回っていた。故にジョリエットンが降伏したときには実質海賊達は全滅していたのだ。
「偽者は倒した。さて帰るか」
ランスの一言で海賊に扮した自由騎士達が帰ろうとしたその時だった。
「さぁ貨物は持っていくがいい……我々にはもう抵抗する力は無い」
通商連の船員は力なくそう言った。
「乙女ときのこ海賊団はそこらの下賤な海賊とは格が違う。今日は我らが名を汚す偽者を討伐しに来た。それだけだ」
「……今日は簒奪する気分ではありませんの。ですから、積み荷はすべてお返ししてさしあげますわ! わたくしの気まぐれに感謝なさい! おーーーーっほっほっほっほ!!!!」
ジュリエットの高笑いが夕暮れ時の海原に響き渡る。
「キャプテンの寛大な心に感謝するんだな」
ヴィーノはそれだけ言うと自らの海賊船へ踵を返した。
「乙女ときのこ海賊団……彼らは一体……」
後日この日の出来事は方々に伝えられ、乙女ときのこ海賊団の名は更に世界に知らしめる事となった。
†シナリオ結果†
大成功
†詳細†
†あとがき†
成果としてはこれ以上は考えられない結果となりました。
これで偽者が現れる事はまず無くなると思われます。
リプレイには出てきていませんがジローの偽者はマスクも無くただの素っ裸でした。
MVPは一人の臆病な男を一人前の海賊にした貴方へ。
またこの結果により懸賞金に変動があった模様です。
【乙女ときのこ海賊団】
キャプテン
『高笑い』キャプテンジュリエット
懸賞金 3000万GP ⇒ 3300万GP
副キャプテン
『狂人』クラン
懸賞金 1500万GP ⇒ 2100万GP
『豪脚』ローゼ
懸賞金 620万GP ⇒ 1500万GP
『白天狗』ヴィノ
懸賞金 520万GP ⇒ 1020万GP
『荒ぶるエリンギ』ランス
懸賞金 520万GP ⇒ 1080万GP
『お菓子大好き』ウィルナ
懸賞金 520万GP ⇒ 880万GP
ご参加誠にありがとうございました。
ご感想など頂ければ幸いです。
これで偽者が現れる事はまず無くなると思われます。
リプレイには出てきていませんがジローの偽者はマスクも無くただの素っ裸でした。
MVPは一人の臆病な男を一人前の海賊にした貴方へ。
またこの結果により懸賞金に変動があった模様です。
【乙女ときのこ海賊団】
キャプテン
『高笑い』キャプテンジュリエット
懸賞金 3000万GP ⇒ 3300万GP
副キャプテン
『狂人』クラン
懸賞金 1500万GP ⇒ 2100万GP
『豪脚』ローゼ
懸賞金 620万GP ⇒ 1500万GP
『白天狗』ヴィノ
懸賞金 520万GP ⇒ 1020万GP
『荒ぶるエリンギ』ランス
懸賞金 520万GP ⇒ 1080万GP
『お菓子大好き』ウィルナ
懸賞金 520万GP ⇒ 880万GP
ご参加誠にありがとうございました。
ご感想など頂ければ幸いです。
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