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「子ども騎士団」の先生になろう!

『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は、とても楽しそうだ。
「いよいよ来週だな? 『子ども騎士団』がやって来るのは?」
部下の王国騎士が背中をびしっとして答え返す。
「はい、ミハイロフ軍事顧問! オラクルの素養がある子どもがいる家庭には既に通達済みであります! 来週の本日の本時間帯頃、『子ども騎士団』の子どもたちが自由騎士団の道場へやって参ります! 我々、準備に抜かりはありません!」
うむ、とフレデリックは良い気分で頷く。
「『一日先生』の方の手配準備も万端だな? オラクルの精鋭たちには既に伝えてあるな? 当日は、将来と素養のある子どもたちに向かって自由騎士団の姿を教えてもらうことになるが、皆の都合は?」
びしっと再び部下が答え返す。
「もちろんであります! オラクル自由騎士団の精鋭の方々からも既にご都合は伺っております! 出席できる者は既に確認済みであります!」
ふはは、とフレデリックは豪快に笑う。
「いやあ、俺としても大変楽しみで仕方がない! 将来と素養のある子どもたちに対して、今を輝いているオラクルの精鋭たちが指導し、その交流がこの国の未来の基礎となる! 『子ども騎士団』イベントは実に良い! 何しろ、軍事顧問をしていてこんなに清々しい気持ちになれるもんだからな!」
フレデリックは愛娘もいることであるし、子ども好きなようだ。
びしっと立っている部下も、ふはは、とフレデリックと一緒に豪快に笑った。
さあ、あなたも「子ども騎士団」の先生になって、イ・ラプセルの将来に貢献しないか?
「いよいよ来週だな? 『子ども騎士団』がやって来るのは?」
部下の王国騎士が背中をびしっとして答え返す。
「はい、ミハイロフ軍事顧問! オラクルの素養がある子どもがいる家庭には既に通達済みであります! 来週の本日の本時間帯頃、『子ども騎士団』の子どもたちが自由騎士団の道場へやって参ります! 我々、準備に抜かりはありません!」
うむ、とフレデリックは良い気分で頷く。
「『一日先生』の方の手配準備も万端だな? オラクルの精鋭たちには既に伝えてあるな? 当日は、将来と素養のある子どもたちに向かって自由騎士団の姿を教えてもらうことになるが、皆の都合は?」
びしっと再び部下が答え返す。
「もちろんであります! オラクル自由騎士団の精鋭の方々からも既にご都合は伺っております! 出席できる者は既に確認済みであります!」
ふはは、とフレデリックは豪快に笑う。
「いやあ、俺としても大変楽しみで仕方がない! 将来と素養のある子どもたちに対して、今を輝いているオラクルの精鋭たちが指導し、その交流がこの国の未来の基礎となる! 『子ども騎士団』イベントは実に良い! 何しろ、軍事顧問をしていてこんなに清々しい気持ちになれるもんだからな!」
フレデリックは愛娘もいることであるし、子ども好きなようだ。
びしっと立っている部下も、ふはは、とフレデリックと一緒に豪快に笑った。
さあ、あなたも「子ども騎士団」の先生になって、イ・ラプセルの将来に貢献しないか?
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.「子ども騎士団」イベントで「一日先生」の役割を成し遂げる。
はじめましての方、こんにちは。
2回目のシナリオなのでお久しぶりの方もこんにちは。
どちらの方もどうぞよろしくお願いいたします。
インパクトを大事にしているSTこと、ヤトノカミ・ケイジロウです。
さて、今回はオラクルの素養がある子どもたちの「一日先生」(厳密には24時間のお仕事ではありませんが)になって頂きます。
なお今回のシナリオですが、将来ある子どもたちを教育することは「自国防衛強化」に繋がるのでこのタグで出しています。
<概略>
今回、皆さんにやって頂きたいことをご説明します。
ご存知の通り、自由騎士団には素養のある者は10才から入れます。
つまり、10才未満の子たちで素養がある子たちはいわゆる予備軍として待機中です。
そんな素養ある子どもたちに自由騎士団をイベントで体験してもらうのが「子ども騎士団」です。
皆さんのもとには4人の子どもたちが訪れます。
それぞれの子どもは、下記の<子どもデータ>で詳細を記しておきました。
皆さんは、2人1組のペアを組んで、いずれかの子ども1人に「自由騎士団」を教えます。
「自由騎士団」に関することならば基本的に何についても教えることができます。
戦闘訓練がしたそうな子には、武器の扱いを教えることやスキルを披露してもいいです。
心構えが必要そうな子には、騎士団の仕事や一日についてお話してあげてもいいです。
その辺の裁量は皆さんにお任せします。
(フレデリックはこの日、基本的に皆さんに現場を一任しています。フレデリックも自由騎士団の道場にいてモブの子どもたちと交流していますので絡んでもOKです)
<場所や時間帯など>
場所は、自由騎士団の道場が基本ですが、あまり遠くない安全なところへ外出されてもかまいません。時間帯は、午後1時から午後3時程度までの2時間以内です。当日の気候は、秋空で気持ちの良い晴れです。
<開催人数や調整など>
皆さんの方で人数が集まりましたら、相談卓で担当する子どもや教えることを決めて頂くようにお願いします。
今回は8人枠での募集ですが、8人そろわない場合もあります。
例えば、7人だけの場合ですと、誰かは1人で子ども1人を担当することになります。
(つまり、ペアを組まない場合もあります)
あるいは、6人だけの場合ですと、子どもが1人余ります。その場合は、モブのNPC自由騎士団がその子どもの一日先生を引き受けます。(そのモブのNPCと子どもは「リプレイ」で描写されません)
などと、集まった人数次第で担当を調整して頂くようにお願いします。
ついでに言うと、子どもたちは種族や希望バトルスタイルがばらけています。ですが、「一日先生」担当者は同じ種族やバトルスタイルではなくても問題ありません。
<サポート参加の場合>
サポート要員で参加される方は、当日の誘導、一日先生のヘルプ、モブの一日先生などがおススメです。
<EXについて>
アドリブが特に欲しい方はEXで「アドリブ歓迎」など一言ください。
<激励>
皆さんが「子ども騎士団」の一日先生をがんばってくださいましたら、またこちらの方でも「子ども騎士団」関係の称号でも出そうかと予定しています。
当日は、ぜひ「子ども騎士団」の先生をがんばってください!
<子どもデータ>
●名前:アーク・スカイライト
性別:男性
年齢:5才
種族:ソラビト
出身:イ・ラプセル
特徴:ピストル大好き坊主。短い金髪で碧眼。背中に大きな羽がある。
希望バトルスタイル:ガンナー
ロールクラス:一般市民
レベル:1
本人コメント:ぴすとるをいっぱいうちたい、せいぎのため。
親のコメント:毎日、おもちゃのピストルで遊んでいます。自由騎士団になるためだと言って一日中ガンナーごっこをしています。ガンナーとはどういうものかの初歩を教えてあげてくださらないでしょうか。
●名前:レイラ・クロサト
性別:女性
年齢:5才
種族:オニヒト
出身:イ・ラプセル(両親がアマノホカリ出身。2世)
特徴:おてんば娘。頭に小さな角が2本ある。黒髪のおかっぱ。
希望バトルスタイル:軽戦士
ロールクラス:一般市民
レベル:1
本人コメント:きしさまとおにごっこ。
親のコメント:将来のために剣道を習わせています。簡単にでもかまいませんので、本場の騎士様の剣の手ほどきを受けさせてあげたいです。
●名前:エミリー・ブラウン(ブラウンは親代わりの孤児院の先生の名字)
性別:女性
年齢:6才
種族:ケモノビト
出身:シャンバラからの亡命。両親は既に死亡。
特徴:牛のケモノビトでのんびりしている。牛耳と角で人顔。全体的に茶色い。ツインテール。一人が好き。
希望バトルスタイル:錬金術
ロールクラス:一般市民
レベル:1
本人コメント:ばくはつじっけんするです。
親のコメント:私は親ではなく孤児院の先生です。いつも部屋にひきこもって実験ごっこをしています。今回の子ども騎士団参加でもう少し人に対して心が開ければと思います。
●名前:ザック・グリュンベルク
性別:男性
年齢:6才
種族:ノウブル
出身:イ・ラプセル
特徴:生真面目な性格、メガネでちょいと太っている。緑髪のふさふさ。
希望バトルスタイル:ヒーラー
ロールクラス:貴族
レベル:1
本人コメント:りっぱなドクターになりたいです。
親のコメント:うちの家系は代々貴族のヒーラー(ドクター)ですの。ぜひうちの息子が立派に自由騎士団へ入団できるようにご指導のほどよろしくお願いしますの。
2回目のシナリオなのでお久しぶりの方もこんにちは。
どちらの方もどうぞよろしくお願いいたします。
インパクトを大事にしているSTこと、ヤトノカミ・ケイジロウです。
さて、今回はオラクルの素養がある子どもたちの「一日先生」(厳密には24時間のお仕事ではありませんが)になって頂きます。
なお今回のシナリオですが、将来ある子どもたちを教育することは「自国防衛強化」に繋がるのでこのタグで出しています。
<概略>
今回、皆さんにやって頂きたいことをご説明します。
ご存知の通り、自由騎士団には素養のある者は10才から入れます。
つまり、10才未満の子たちで素養がある子たちはいわゆる予備軍として待機中です。
そんな素養ある子どもたちに自由騎士団をイベントで体験してもらうのが「子ども騎士団」です。
皆さんのもとには4人の子どもたちが訪れます。
それぞれの子どもは、下記の<子どもデータ>で詳細を記しておきました。
皆さんは、2人1組のペアを組んで、いずれかの子ども1人に「自由騎士団」を教えます。
「自由騎士団」に関することならば基本的に何についても教えることができます。
戦闘訓練がしたそうな子には、武器の扱いを教えることやスキルを披露してもいいです。
心構えが必要そうな子には、騎士団の仕事や一日についてお話してあげてもいいです。
その辺の裁量は皆さんにお任せします。
(フレデリックはこの日、基本的に皆さんに現場を一任しています。フレデリックも自由騎士団の道場にいてモブの子どもたちと交流していますので絡んでもOKです)
<場所や時間帯など>
場所は、自由騎士団の道場が基本ですが、あまり遠くない安全なところへ外出されてもかまいません。時間帯は、午後1時から午後3時程度までの2時間以内です。当日の気候は、秋空で気持ちの良い晴れです。
<開催人数や調整など>
皆さんの方で人数が集まりましたら、相談卓で担当する子どもや教えることを決めて頂くようにお願いします。
今回は8人枠での募集ですが、8人そろわない場合もあります。
例えば、7人だけの場合ですと、誰かは1人で子ども1人を担当することになります。
(つまり、ペアを組まない場合もあります)
あるいは、6人だけの場合ですと、子どもが1人余ります。その場合は、モブのNPC自由騎士団がその子どもの一日先生を引き受けます。(そのモブのNPCと子どもは「リプレイ」で描写されません)
などと、集まった人数次第で担当を調整して頂くようにお願いします。
ついでに言うと、子どもたちは種族や希望バトルスタイルがばらけています。ですが、「一日先生」担当者は同じ種族やバトルスタイルではなくても問題ありません。
<サポート参加の場合>
サポート要員で参加される方は、当日の誘導、一日先生のヘルプ、モブの一日先生などがおススメです。
<EXについて>
アドリブが特に欲しい方はEXで「アドリブ歓迎」など一言ください。
<激励>
皆さんが「子ども騎士団」の一日先生をがんばってくださいましたら、またこちらの方でも「子ども騎士団」関係の称号でも出そうかと予定しています。
当日は、ぜひ「子ども騎士団」の先生をがんばってください!
<子どもデータ>
●名前:アーク・スカイライト
性別:男性
年齢:5才
種族:ソラビト
出身:イ・ラプセル
特徴:ピストル大好き坊主。短い金髪で碧眼。背中に大きな羽がある。
希望バトルスタイル:ガンナー
ロールクラス:一般市民
レベル:1
本人コメント:ぴすとるをいっぱいうちたい、せいぎのため。
親のコメント:毎日、おもちゃのピストルで遊んでいます。自由騎士団になるためだと言って一日中ガンナーごっこをしています。ガンナーとはどういうものかの初歩を教えてあげてくださらないでしょうか。
●名前:レイラ・クロサト
性別:女性
年齢:5才
種族:オニヒト
出身:イ・ラプセル(両親がアマノホカリ出身。2世)
特徴:おてんば娘。頭に小さな角が2本ある。黒髪のおかっぱ。
希望バトルスタイル:軽戦士
ロールクラス:一般市民
レベル:1
本人コメント:きしさまとおにごっこ。
親のコメント:将来のために剣道を習わせています。簡単にでもかまいませんので、本場の騎士様の剣の手ほどきを受けさせてあげたいです。
●名前:エミリー・ブラウン(ブラウンは親代わりの孤児院の先生の名字)
性別:女性
年齢:6才
種族:ケモノビト
出身:シャンバラからの亡命。両親は既に死亡。
特徴:牛のケモノビトでのんびりしている。牛耳と角で人顔。全体的に茶色い。ツインテール。一人が好き。
希望バトルスタイル:錬金術
ロールクラス:一般市民
レベル:1
本人コメント:ばくはつじっけんするです。
親のコメント:私は親ではなく孤児院の先生です。いつも部屋にひきこもって実験ごっこをしています。今回の子ども騎士団参加でもう少し人に対して心が開ければと思います。
●名前:ザック・グリュンベルク
性別:男性
年齢:6才
種族:ノウブル
出身:イ・ラプセル
特徴:生真面目な性格、メガネでちょいと太っている。緑髪のふさふさ。
希望バトルスタイル:ヒーラー
ロールクラス:貴族
レベル:1
本人コメント:りっぱなドクターになりたいです。
親のコメント:うちの家系は代々貴族のヒーラー(ドクター)ですの。ぜひうちの息子が立派に自由騎士団へ入団できるようにご指導のほどよろしくお願いしますの。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
1個
5個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年09月26日
2018年09月26日
†メイン参加者 8人†
●アーク組
「アークくん、今日はよろしくね! 僕はグリッツだよ」
ガンナー志望のアーク・スカイライト少年にまず声をかけたのは、『見習い銃士』グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)である。
「がんばろう、アーク! おれは、イーイー」
グリッツの相棒の『異国のオルフェン』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)も続いて挨拶をする。
「うん、よろしく!」
アーク少年もにこっと返した。
(今日の仕事は、孤児院のチビ達を相手にする感じが近いかな? ま、子ども相手の方が気楽でいいかもね!)
(おれは、この子の一日先生か……。なんか新鮮! やってやる!)
出だしの感触は良く、グリッツとイーイーは本日の決意を改めた。
「じゃあ、銃の訓練なので、裏にある射撃訓練場に行こうか?」
「うん!」
グリッツに促されて、三人は場所を変えることにした。
***
射撃場では、20m先に大きな的がある。
道場から借りたコルク弾丸の蒸気銃を手にして、グリッツが指導に入る。
「いいかい、アークくん? あの目玉みたいな的あるよね? あの真ん中を狙うんだ!」
「わーい! うつぞ!」
と、指導中の傍らで……。
「ふわぁ。ん~」
イーイーはベンチに背を預けてだらだらしていた。
(イーちゃん! 寝てないよね?)
グリッツが注意するよりも早く、アークが……。
「あー! イーにいさん、さぼってる!」
心外なことを言われて、イーイーが、はっとする。
「違う、さぼりじゃない! 自由騎士団の戦闘はいつ起こるかわからない! 今みたいに待機中で、休めるときに休まないと体力もたないから! 面倒くさくなって休んでるわけじゃない!」
アークは、感心しているようだ。
グリッツも、まあ、一応、筋の通った話なので許した。
では、訓練再開。
「どう? 20mの距離から撃つと意外と真ん中に当たらないよね? そう、自由騎士団になって実際の戦闘をするようになると、20m以内の距離で戦うことが多くなるんだ。で、僕らはガンナーなんで、遠いところから正確に撃って敵を倒し、仲間を助けないといけないんだよ!」
「へえ……。とおくからうつといいのか? ん? なかまたすける?」
どうも実戦経験がないアークには、特に仲間云々の箇所が理解できないようだ。
そこで、イーイーが、模擬戦をやるか、と言い出した。
***
「んじゃ、おれらはチームになろう。おれとアークで組んで、グリと2対1で戦ってみる。グリもそれでいい?」
グリッツは、うん、と返事をするや否や、20m離れた距離へ向かって全力で走った。間合いを取るためだ。
「グリにいさんやっつけるぞ!」
アークもイーイーと同時に走り出した。
イーイーは考えがあるので、アークのやや前を走る。
ぱぁあああん!
グリッツの蒸気銃からコルク弾丸が飛んで来た!
「そらあ!!」
イーイーが借り物の竹刀を振り回して、弾丸を一撃で弾く。
「向こうの弾はおれが受け止めるから、アークはしっかり狙いを定めて!」
「うん、やってみる!」
要するに、イーイーは味方の盾の役をやっているわけだ。
アークはもちろん後方支援の狙撃手の役だ。
その後も、走り回るグリッツから何発か撃ち込まれ、イーイーが弾いた。
アークも撃つが、なかなか当たらない。
「合図するから、タイミングを合わせて攻撃しよう……。それ、今だ!」
イーイーが声をかけたとき、ちょうどグリッツが10m前方に来ていた。
互いに正面から狙撃に入る。
ぱぁあああん!
撃ち合いは相打ちだった。
グリッツの撃った弾丸がイーイーの顔面にストライク。
アークの撃った弾丸の方は、グリッツの右肩に軽く当たった。
***
訓練が終わり、まとめに入る。
「おつかれ。ほら、飲みな?」
「ね? 2対1の方が強いでしょう? 仲間との連携の大切さは伝わったかな?」
イーイーが水を配り、グリッツが横に並んでいるアークに助言する。
「きしってたいへんだね? でもかっこいいー!」
アークは満足した一日だったようだ。
一日先生の二人も、爽やかな汗をかいて本日の役目を無事終えた。
●レイラ組
『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は、お転婆そうなレイラ・クロサトが視界に入ると、思わずこう思ってしまった。
(可愛い♪)
そして、にっこりと挨拶をする。
「よろしくね、レイラちゃん!」
「はーい!」
(ここは同じオニヒトのおねーさんとして威厳を見せないとね! 教えるのも修行のうちだからね!)
一方、カノンとペアである『異邦のサムライ』サブロウ・カイトー(CL3000363)は、やや後方から出方を見計らっていた。
(ふうむ。今日は子ども相手の先生仕事ですか。迷子の対応なら手慣れたものなんですが……。さて、緊張せずに挨拶を!)
サブロウは、レイラの前で膝をついて、視線の高さも彼女に合わせた。
「はじめまして、レイラちゃん。いえ、クロサト卿とお呼びしましょうか。今日だけは貴女も自由騎士見習いですからね!」
「うん! おじさんもよろしくねー!」
あはは、とサブロウは右手を後頭部に当てて笑った。
***
「ところでイスルギ卿。親御さんのご希望では剣の手ほどきでしたね? どの程度のことを教えればいいのでしょう? あと、卿はルクタートルでは? 二人で剣さばきを教えることは難しいですね?」
「とりあえず、レイラちゃんの本人コメントが『おにごっこ』ということなので……。鬼ごっこをしながら実践指導する形でやるのは? カノンたちのどちらかから、竹刀で一本取れればレイラちゃんの勝ちということでどう?」
「わーい! レイラ、おにごっこだいすき!」
話はまとまったようだ。
鬼ごっこの形を取りながら実践訓練の流れになった。
「じゃあ、レイラおにね?」
レイラはそう言うや否や、竹刀を構え、カノンめがけて突進して来た!
「おっと、危ない! あのね? 対戦相手に打ち込む時は、遠くのお山を見るよーに相手の体全体を見るんだよ! その方が相手の動きの変化を捉えやすいからね。動きを捉えたら、すかさず打ち込むんだよ!」
「えー!? おやま? うみがいいー!」
レイラは竹刀をぶんぶんと回して今度はサブロウに突撃!
「おおっと!? ……なるほど、良い太刀筋です。ですが、今一歩足りませんね。では、先ほどの全力にもう一歩……いえ、あと『半歩』で良いので踏みこんでください!」
「うへえ? さんぽ?」
レイラは、はしゃぎながら、踏みこんでサブロウを追い回す。
「そう、その調子です! 『もう半歩』の勇気が、貴女の道を拓きますとも!」
レイラの一撃はなかなかサブロウに当たらない。だが、追いかけっこをしている者同士はとても楽しそうだ。
「そーれ! レイラちゃん、こっちにもいるよー!」
カノンが、ぱちん、と手を叩いて挑発した。
「ぬぬぬ! まてー!」
前半戦では、カノンもサブロウもそれなりの速度で走っていた。一応、訓練だからだ。でも、レイラはまだ自由騎士団に入ってすらいない。そこでカノンは、レイラががんばれば追いつけるスピードに抑えて逃げ回ることにした。
「ほら、おねーちゃんの言ったこと思い出して! 手元や足元だけ見るんじゃなくて、体全体を見てどう動くか予想するんだよ!」
「ええと? おやま?」
カノンの動きが単調になり、レイラの周りをぐるぐる回るだけになった。
「ううん? まわってる……。えい、それ!!」
ぱぁん!
レイラの竹刀の一撃がカノンの右わき腹に当たった。
「よくやったねー。この調子で練習するんだよ!」
「わーい! やった、やった!」
鬼ごっこの実践訓練はレイラの勝利。
カノンは、レイラの頭をくしゃくしゃとなでてあげた。
サブロウも弟子のがんばる姿を見届けて嬉しそうに笑っていた。
道場では、別の一日先生たちも鬼ごっこ訓練をしていたようだ。
ケモノビトでルクタートルの先生が子どもたちにボコられている!
「うわーん! やられたー!」
***
訓練が終わった後、カノンがチョコのお菓子を出して、レイラが頬張る。
サブロウがまとめに入る。
「剣は飽くまでも『手段』でしかありません。敵を斬ること自体を目的としてはいけません。ま、『戦わずして勝つ』ことと『舐められない』ことが戦いで大事です」
レイラは、はーい、と元気よく返事した。
カノンはレイラに綺麗な星の欠片を見せてあげた。
「自由騎士は、イ・ラプセルの国と国民のために尽くす仕事だよ! がんばってると、こんないいもんもらえることもあるんだ!」
もしかすると、五年後、三人は仕事で再会するかもしれない。
そんな思いを胸に、本日の一日先生は終了した。
●エミリー組
他の組が子どもたちと無事に打ち解けている時、エミリー組は緊張していた。
いつまでも固まっているわけにもいかないので、『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)が動く。
(私も小さい頃はひとりで趣味に没頭することが多かったです。こういう子は、無理に迎合させるのは逆効果だと思うんですよね……。ならば、ここは私が!)
ぱあっと、穏やかなマイナスイオンがエミリオから発せられた。
うつむいていたエミリー・ブラウンが、エミリオに振り向く。
「実験がお好きなんですってね? その実験、私、見ていてもいいでしょうか?」
エミリーが重い口を開く。
「うん、いいですよ?」
緊張感が氷解したところで、『隠し槍の学徒』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)も笑顔で会話に加わる。
「今日はよろしく頼む! エミリーが楽しく学べるようにがんばるとしよう!」
「はい、よろしくです!」
挨拶が終わったところで……。
「では、私たちの指導は実験ですので……。自由騎士団のアルケミーが使う実験室へ場所を移動しましょうか?」
エミリオがそう促し、ウィリアムが軍事顧問から許可を取り、三人は実験室へ移った。
***
実験室へたどり着くと、エミリーはポケットからゴム風船を取り出した。
「おや? これは何に使うんですか?」
エミリオが興味津々に問いかける。
「これは、じっけんなのです!」
エミリーが即答する。
「ふうむ。ゴム風船を使った実験?」
ウィリアムもエミリオと一緒に見守ることにした。
ふぅぅぅ!
風船が膨らむ……。
やがて、ゴム風船が巨大なボールとなり、エミリーの顔以上の大きさで膨れ上がる!
「えい!」
エミリーが針を取り出して、風船に刺す!
ばぁぁぁん!!
(な、なんやねん!?)
エミリオが持ち直す。
「うん、すごいすごい!!」
拍手してあげた。
(はぁ、はぁ……。心臓止まるかと思った!)
ウィリアムも持ち直す。
「ははは、やるなエミリー!?」
一緒に拍手した。
そこで、作成会議の時間になった。
(エミリオ先生? まさか、この子が言う実験って!?)
(でしょうね、ウィリアムさん。今のが実験なのでしょう。6才児ですからね)
(しかし、私たちは一日先生! ここは私たちが正しい実験を教えるしか!)
(ですね。でも、あまり規模の大きい実験はさすがにやめておきましょう)
(そうだな……。簡単にできる爆発実験と言えば……。野菜を爆発させる実験は?)
(せやな! あの過酸化水素水を使った実験ですね? それにしましょう!)
***
気を取り直して、三人は再び実験に取り掛かる。
「爆発と言えば、野菜も爆発するのは知っているかな?」
ウィリアムの問いかけに、エミリーは首を横に振った。
「ええと、野菜……。実験室の貯蔵庫にないですかね? ……あ、ありましたよ、にんじん!」
エミリオは、にんじんを三本持って来た。
にんじんが手渡されると、ウィリアムはさっそく器材ですりおろした。
「さ、エミリーもやってみて! まずは、にんじんをすろう!」
「いえっす!」
三人は、しゃこしゃこ、とにんじんをすった。
すりおろされたにんじんは、小さな瓶に移された。
「さあ、ここからがお待ちかね、いよいよ爆発間近です! この過酸化水素水の瓶ありますね? この水をにんじんの瓶の中に数滴たらして、ふたをして振ってください!」
「ほい!」
エミリオに指示され、エミリーは言われた通りに素早くやってみた。
ウィリアムの方は、大きい箱を持ってきて、開けて、横にする。
「エミリー、その瓶を早くこの箱の中に入れて! そしてすぐに離れて! 爆発するから!」
「え? ばくはつ!?」
目をきらきらさせて、エミリーは急いで瓶を箱の中に入れて逃げた。
三人分の瓶が箱に入り、待つこと数秒……。
ぽぉぉぉん!!
瓶のふたと中身のにんじんが酸素で爆発し、はじけ飛んだ!
「やったで!! 成功や!!」
「おめでとう、エミリー!」
先生たちは生徒に賛辞の言葉を送った。
「うわい!」
生徒の方もきゃきゃっと嬉しそうだ。
***
本日の訓練も終わり、まとめに入る。
まず、エミリオから。
「実験は、ひとりでも楽しいことは楽しいです。ですが、その楽しいことを共有する相手がいることは、もっと楽しいことなんだって、気付いてもらえましたか?」
「はいです!」
ウィリアムはフラスコをゆらしながら、エミリーの目の前に持って行く。
『エミリー、がんば、がんば!!』
フラスコの中の小人がしゃべった!
エミリーもびっくりして笑う!
いや、これは微笑しているウィリアムの「ホムンクルス」である。
爆発実験組も無事に本日の一日先生を終えた。
二人の先生は、弟子の進む道が将来有望であることを祈るのであった。
●ザック組
ザック組のスタートは勢いがあった。
『ライバルは女海賊』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)がドクター志望のザック・グリュンベルクに元気よく挨拶する。
「おーっほほほ!! ごきげんよう、ザック! わたくしは自由騎士団に所属するヒーラー、ジュリエット・ゴールドスミスと申しますの。このわたくし直々の訓練を受けられることを光栄に思いなさいな! 本日はよろしくお願い致しますわね!」
がり勉ザックは、ふわっとした緑髪の頭を直角で下げる。
「はい! おねがいします!」
一方、『ソルレソル』ヴァイオラ・エマ・バンベリー(CL3000331)は、ザックの母親と会話していた。
「はじめまして。わたくしは、アルケミーのヴァイオラ・エマ・バンベリーでございます。わたくしも医薬品の研究を志す身。将来、貴家とも関わりが生じることもございましょう。本日の訓練では、『ご立派なドクター』を目指すザック様への助言を見極めた上、適度に自信をつけさせて頂きます!」
ヴァイオラは、いかにも貴族な感じの母親に深々と頭を下げて挨拶をする。
母親の方も一日先生に深々と頭を下げる。
(うふふ、良質な研究には有益なコネが必要でございますわ!)
***
ザック組は、そのまま道場に残ることになった。
ザック親子と先生方が考えていた指導方法が一致したからだ。
「それでせんせい! はあべすとれいん、ですか?」
ザックは、一丁前にスキルの名前を座学で知っているようだ。
「いえいえ、ヒーラーだからと言って、ヒーラーのスキルのみに固執する必要はありませんのよ? 例えば……いや、直接お見せした方が早いですわね」
ジュリエットは両手を広げて、周辺から魔力を集め始める。
やがて魔力の息吹が彼女の全身を満たし、眩くなった。
「まずは魔導士のスキル、アニマ・ムンディですわ。自身の魔導攻撃力(術式威力)の強化ですわね。そして、次は……」
ジュリエットは、聖剣「ロミオ」をかざし、力を集中させる。「ロミオ」には、ぐんぐんと力が蓄えられて行く。
「レンジャーのスキル、充填ですわ。自身の魔導攻撃力(ついでに言えば物理攻撃力もですが)を2倍にする貯め技ですわね。その上、最後の仕上げとして……」
ジュリエットが両手で「ロミオ」を高く掲げ、祈りを込める。
癒しの魔力の雨がそこにいる三人を優しく包み込んだ。
「うわ、すごい! つかれがとれますー!」
ザックがメガネをぎょっとさせ、感動している。
「うふふ。なんとまあ、心地の良いこと! スキルの重複で回復力を爆発的に増加させたハーベストレインでございましょうか?」
ヴァイオラも思わず、うっとりだ。だが、同僚の騎士が使ったスキルの分析も忘れない。
そう、アニマ・ムンディはアクティブ強化スキル、充填はアクティブ補助スキル。系統が違うスキルだからこそ重ね技の連携ができたのだ。
***
訓練が終わると、ジュリエットはまとめに入った。
「本日、わたくしが伝えたかったことは3つ。1、騎士たる者、まずは元気な挨拶からですわ。2、スキルを併用して見せたように、他職を知ることも大切ですわ。3、『立派なドクターになりたい』というその大志も忘れずに。特にヒーラーは、戦場で味方全体を回復させる最後の砦ですので、最後まで決して折れないこと!」
ヴァイオラも補足する。
「ザック様は資質にも環境にも恵まれていらっしゃいますから、自由騎士団に所属すること自体は難しくもございませんでしょう。ただ人生は、ご立派なドクターとなって終わりではございません。医道にも、人生においても、真に求めるものは何かを問い続け、行動の指針をしっかり持ってくださいませ!」
先生方の激励を受け、ザック少年は元気よく答える。
「はいっす! がんばります!」
ザック組の方も上手くまとまって本日が終わった。
三人はそれぞれ立場が違うが、精進して行こうと共に誓うのであった。
了
「アークくん、今日はよろしくね! 僕はグリッツだよ」
ガンナー志望のアーク・スカイライト少年にまず声をかけたのは、『見習い銃士』グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)である。
「がんばろう、アーク! おれは、イーイー」
グリッツの相棒の『異国のオルフェン』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)も続いて挨拶をする。
「うん、よろしく!」
アーク少年もにこっと返した。
(今日の仕事は、孤児院のチビ達を相手にする感じが近いかな? ま、子ども相手の方が気楽でいいかもね!)
(おれは、この子の一日先生か……。なんか新鮮! やってやる!)
出だしの感触は良く、グリッツとイーイーは本日の決意を改めた。
「じゃあ、銃の訓練なので、裏にある射撃訓練場に行こうか?」
「うん!」
グリッツに促されて、三人は場所を変えることにした。
***
射撃場では、20m先に大きな的がある。
道場から借りたコルク弾丸の蒸気銃を手にして、グリッツが指導に入る。
「いいかい、アークくん? あの目玉みたいな的あるよね? あの真ん中を狙うんだ!」
「わーい! うつぞ!」
と、指導中の傍らで……。
「ふわぁ。ん~」
イーイーはベンチに背を預けてだらだらしていた。
(イーちゃん! 寝てないよね?)
グリッツが注意するよりも早く、アークが……。
「あー! イーにいさん、さぼってる!」
心外なことを言われて、イーイーが、はっとする。
「違う、さぼりじゃない! 自由騎士団の戦闘はいつ起こるかわからない! 今みたいに待機中で、休めるときに休まないと体力もたないから! 面倒くさくなって休んでるわけじゃない!」
アークは、感心しているようだ。
グリッツも、まあ、一応、筋の通った話なので許した。
では、訓練再開。
「どう? 20mの距離から撃つと意外と真ん中に当たらないよね? そう、自由騎士団になって実際の戦闘をするようになると、20m以内の距離で戦うことが多くなるんだ。で、僕らはガンナーなんで、遠いところから正確に撃って敵を倒し、仲間を助けないといけないんだよ!」
「へえ……。とおくからうつといいのか? ん? なかまたすける?」
どうも実戦経験がないアークには、特に仲間云々の箇所が理解できないようだ。
そこで、イーイーが、模擬戦をやるか、と言い出した。
***
「んじゃ、おれらはチームになろう。おれとアークで組んで、グリと2対1で戦ってみる。グリもそれでいい?」
グリッツは、うん、と返事をするや否や、20m離れた距離へ向かって全力で走った。間合いを取るためだ。
「グリにいさんやっつけるぞ!」
アークもイーイーと同時に走り出した。
イーイーは考えがあるので、アークのやや前を走る。
ぱぁあああん!
グリッツの蒸気銃からコルク弾丸が飛んで来た!
「そらあ!!」
イーイーが借り物の竹刀を振り回して、弾丸を一撃で弾く。
「向こうの弾はおれが受け止めるから、アークはしっかり狙いを定めて!」
「うん、やってみる!」
要するに、イーイーは味方の盾の役をやっているわけだ。
アークはもちろん後方支援の狙撃手の役だ。
その後も、走り回るグリッツから何発か撃ち込まれ、イーイーが弾いた。
アークも撃つが、なかなか当たらない。
「合図するから、タイミングを合わせて攻撃しよう……。それ、今だ!」
イーイーが声をかけたとき、ちょうどグリッツが10m前方に来ていた。
互いに正面から狙撃に入る。
ぱぁあああん!
撃ち合いは相打ちだった。
グリッツの撃った弾丸がイーイーの顔面にストライク。
アークの撃った弾丸の方は、グリッツの右肩に軽く当たった。
***
訓練が終わり、まとめに入る。
「おつかれ。ほら、飲みな?」
「ね? 2対1の方が強いでしょう? 仲間との連携の大切さは伝わったかな?」
イーイーが水を配り、グリッツが横に並んでいるアークに助言する。
「きしってたいへんだね? でもかっこいいー!」
アークは満足した一日だったようだ。
一日先生の二人も、爽やかな汗をかいて本日の役目を無事終えた。
●レイラ組
『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は、お転婆そうなレイラ・クロサトが視界に入ると、思わずこう思ってしまった。
(可愛い♪)
そして、にっこりと挨拶をする。
「よろしくね、レイラちゃん!」
「はーい!」
(ここは同じオニヒトのおねーさんとして威厳を見せないとね! 教えるのも修行のうちだからね!)
一方、カノンとペアである『異邦のサムライ』サブロウ・カイトー(CL3000363)は、やや後方から出方を見計らっていた。
(ふうむ。今日は子ども相手の先生仕事ですか。迷子の対応なら手慣れたものなんですが……。さて、緊張せずに挨拶を!)
サブロウは、レイラの前で膝をついて、視線の高さも彼女に合わせた。
「はじめまして、レイラちゃん。いえ、クロサト卿とお呼びしましょうか。今日だけは貴女も自由騎士見習いですからね!」
「うん! おじさんもよろしくねー!」
あはは、とサブロウは右手を後頭部に当てて笑った。
***
「ところでイスルギ卿。親御さんのご希望では剣の手ほどきでしたね? どの程度のことを教えればいいのでしょう? あと、卿はルクタートルでは? 二人で剣さばきを教えることは難しいですね?」
「とりあえず、レイラちゃんの本人コメントが『おにごっこ』ということなので……。鬼ごっこをしながら実践指導する形でやるのは? カノンたちのどちらかから、竹刀で一本取れればレイラちゃんの勝ちということでどう?」
「わーい! レイラ、おにごっこだいすき!」
話はまとまったようだ。
鬼ごっこの形を取りながら実践訓練の流れになった。
「じゃあ、レイラおにね?」
レイラはそう言うや否や、竹刀を構え、カノンめがけて突進して来た!
「おっと、危ない! あのね? 対戦相手に打ち込む時は、遠くのお山を見るよーに相手の体全体を見るんだよ! その方が相手の動きの変化を捉えやすいからね。動きを捉えたら、すかさず打ち込むんだよ!」
「えー!? おやま? うみがいいー!」
レイラは竹刀をぶんぶんと回して今度はサブロウに突撃!
「おおっと!? ……なるほど、良い太刀筋です。ですが、今一歩足りませんね。では、先ほどの全力にもう一歩……いえ、あと『半歩』で良いので踏みこんでください!」
「うへえ? さんぽ?」
レイラは、はしゃぎながら、踏みこんでサブロウを追い回す。
「そう、その調子です! 『もう半歩』の勇気が、貴女の道を拓きますとも!」
レイラの一撃はなかなかサブロウに当たらない。だが、追いかけっこをしている者同士はとても楽しそうだ。
「そーれ! レイラちゃん、こっちにもいるよー!」
カノンが、ぱちん、と手を叩いて挑発した。
「ぬぬぬ! まてー!」
前半戦では、カノンもサブロウもそれなりの速度で走っていた。一応、訓練だからだ。でも、レイラはまだ自由騎士団に入ってすらいない。そこでカノンは、レイラががんばれば追いつけるスピードに抑えて逃げ回ることにした。
「ほら、おねーちゃんの言ったこと思い出して! 手元や足元だけ見るんじゃなくて、体全体を見てどう動くか予想するんだよ!」
「ええと? おやま?」
カノンの動きが単調になり、レイラの周りをぐるぐる回るだけになった。
「ううん? まわってる……。えい、それ!!」
ぱぁん!
レイラの竹刀の一撃がカノンの右わき腹に当たった。
「よくやったねー。この調子で練習するんだよ!」
「わーい! やった、やった!」
鬼ごっこの実践訓練はレイラの勝利。
カノンは、レイラの頭をくしゃくしゃとなでてあげた。
サブロウも弟子のがんばる姿を見届けて嬉しそうに笑っていた。
道場では、別の一日先生たちも鬼ごっこ訓練をしていたようだ。
ケモノビトでルクタートルの先生が子どもたちにボコられている!
「うわーん! やられたー!」
***
訓練が終わった後、カノンがチョコのお菓子を出して、レイラが頬張る。
サブロウがまとめに入る。
「剣は飽くまでも『手段』でしかありません。敵を斬ること自体を目的としてはいけません。ま、『戦わずして勝つ』ことと『舐められない』ことが戦いで大事です」
レイラは、はーい、と元気よく返事した。
カノンはレイラに綺麗な星の欠片を見せてあげた。
「自由騎士は、イ・ラプセルの国と国民のために尽くす仕事だよ! がんばってると、こんないいもんもらえることもあるんだ!」
もしかすると、五年後、三人は仕事で再会するかもしれない。
そんな思いを胸に、本日の一日先生は終了した。
●エミリー組
他の組が子どもたちと無事に打ち解けている時、エミリー組は緊張していた。
いつまでも固まっているわけにもいかないので、『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)が動く。
(私も小さい頃はひとりで趣味に没頭することが多かったです。こういう子は、無理に迎合させるのは逆効果だと思うんですよね……。ならば、ここは私が!)
ぱあっと、穏やかなマイナスイオンがエミリオから発せられた。
うつむいていたエミリー・ブラウンが、エミリオに振り向く。
「実験がお好きなんですってね? その実験、私、見ていてもいいでしょうか?」
エミリーが重い口を開く。
「うん、いいですよ?」
緊張感が氷解したところで、『隠し槍の学徒』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)も笑顔で会話に加わる。
「今日はよろしく頼む! エミリーが楽しく学べるようにがんばるとしよう!」
「はい、よろしくです!」
挨拶が終わったところで……。
「では、私たちの指導は実験ですので……。自由騎士団のアルケミーが使う実験室へ場所を移動しましょうか?」
エミリオがそう促し、ウィリアムが軍事顧問から許可を取り、三人は実験室へ移った。
***
実験室へたどり着くと、エミリーはポケットからゴム風船を取り出した。
「おや? これは何に使うんですか?」
エミリオが興味津々に問いかける。
「これは、じっけんなのです!」
エミリーが即答する。
「ふうむ。ゴム風船を使った実験?」
ウィリアムもエミリオと一緒に見守ることにした。
ふぅぅぅ!
風船が膨らむ……。
やがて、ゴム風船が巨大なボールとなり、エミリーの顔以上の大きさで膨れ上がる!
「えい!」
エミリーが針を取り出して、風船に刺す!
ばぁぁぁん!!
(な、なんやねん!?)
エミリオが持ち直す。
「うん、すごいすごい!!」
拍手してあげた。
(はぁ、はぁ……。心臓止まるかと思った!)
ウィリアムも持ち直す。
「ははは、やるなエミリー!?」
一緒に拍手した。
そこで、作成会議の時間になった。
(エミリオ先生? まさか、この子が言う実験って!?)
(でしょうね、ウィリアムさん。今のが実験なのでしょう。6才児ですからね)
(しかし、私たちは一日先生! ここは私たちが正しい実験を教えるしか!)
(ですね。でも、あまり規模の大きい実験はさすがにやめておきましょう)
(そうだな……。簡単にできる爆発実験と言えば……。野菜を爆発させる実験は?)
(せやな! あの過酸化水素水を使った実験ですね? それにしましょう!)
***
気を取り直して、三人は再び実験に取り掛かる。
「爆発と言えば、野菜も爆発するのは知っているかな?」
ウィリアムの問いかけに、エミリーは首を横に振った。
「ええと、野菜……。実験室の貯蔵庫にないですかね? ……あ、ありましたよ、にんじん!」
エミリオは、にんじんを三本持って来た。
にんじんが手渡されると、ウィリアムはさっそく器材ですりおろした。
「さ、エミリーもやってみて! まずは、にんじんをすろう!」
「いえっす!」
三人は、しゃこしゃこ、とにんじんをすった。
すりおろされたにんじんは、小さな瓶に移された。
「さあ、ここからがお待ちかね、いよいよ爆発間近です! この過酸化水素水の瓶ありますね? この水をにんじんの瓶の中に数滴たらして、ふたをして振ってください!」
「ほい!」
エミリオに指示され、エミリーは言われた通りに素早くやってみた。
ウィリアムの方は、大きい箱を持ってきて、開けて、横にする。
「エミリー、その瓶を早くこの箱の中に入れて! そしてすぐに離れて! 爆発するから!」
「え? ばくはつ!?」
目をきらきらさせて、エミリーは急いで瓶を箱の中に入れて逃げた。
三人分の瓶が箱に入り、待つこと数秒……。
ぽぉぉぉん!!
瓶のふたと中身のにんじんが酸素で爆発し、はじけ飛んだ!
「やったで!! 成功や!!」
「おめでとう、エミリー!」
先生たちは生徒に賛辞の言葉を送った。
「うわい!」
生徒の方もきゃきゃっと嬉しそうだ。
***
本日の訓練も終わり、まとめに入る。
まず、エミリオから。
「実験は、ひとりでも楽しいことは楽しいです。ですが、その楽しいことを共有する相手がいることは、もっと楽しいことなんだって、気付いてもらえましたか?」
「はいです!」
ウィリアムはフラスコをゆらしながら、エミリーの目の前に持って行く。
『エミリー、がんば、がんば!!』
フラスコの中の小人がしゃべった!
エミリーもびっくりして笑う!
いや、これは微笑しているウィリアムの「ホムンクルス」である。
爆発実験組も無事に本日の一日先生を終えた。
二人の先生は、弟子の進む道が将来有望であることを祈るのであった。
●ザック組
ザック組のスタートは勢いがあった。
『ライバルは女海賊』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)がドクター志望のザック・グリュンベルクに元気よく挨拶する。
「おーっほほほ!! ごきげんよう、ザック! わたくしは自由騎士団に所属するヒーラー、ジュリエット・ゴールドスミスと申しますの。このわたくし直々の訓練を受けられることを光栄に思いなさいな! 本日はよろしくお願い致しますわね!」
がり勉ザックは、ふわっとした緑髪の頭を直角で下げる。
「はい! おねがいします!」
一方、『ソルレソル』ヴァイオラ・エマ・バンベリー(CL3000331)は、ザックの母親と会話していた。
「はじめまして。わたくしは、アルケミーのヴァイオラ・エマ・バンベリーでございます。わたくしも医薬品の研究を志す身。将来、貴家とも関わりが生じることもございましょう。本日の訓練では、『ご立派なドクター』を目指すザック様への助言を見極めた上、適度に自信をつけさせて頂きます!」
ヴァイオラは、いかにも貴族な感じの母親に深々と頭を下げて挨拶をする。
母親の方も一日先生に深々と頭を下げる。
(うふふ、良質な研究には有益なコネが必要でございますわ!)
***
ザック組は、そのまま道場に残ることになった。
ザック親子と先生方が考えていた指導方法が一致したからだ。
「それでせんせい! はあべすとれいん、ですか?」
ザックは、一丁前にスキルの名前を座学で知っているようだ。
「いえいえ、ヒーラーだからと言って、ヒーラーのスキルのみに固執する必要はありませんのよ? 例えば……いや、直接お見せした方が早いですわね」
ジュリエットは両手を広げて、周辺から魔力を集め始める。
やがて魔力の息吹が彼女の全身を満たし、眩くなった。
「まずは魔導士のスキル、アニマ・ムンディですわ。自身の魔導攻撃力(術式威力)の強化ですわね。そして、次は……」
ジュリエットは、聖剣「ロミオ」をかざし、力を集中させる。「ロミオ」には、ぐんぐんと力が蓄えられて行く。
「レンジャーのスキル、充填ですわ。自身の魔導攻撃力(ついでに言えば物理攻撃力もですが)を2倍にする貯め技ですわね。その上、最後の仕上げとして……」
ジュリエットが両手で「ロミオ」を高く掲げ、祈りを込める。
癒しの魔力の雨がそこにいる三人を優しく包み込んだ。
「うわ、すごい! つかれがとれますー!」
ザックがメガネをぎょっとさせ、感動している。
「うふふ。なんとまあ、心地の良いこと! スキルの重複で回復力を爆発的に増加させたハーベストレインでございましょうか?」
ヴァイオラも思わず、うっとりだ。だが、同僚の騎士が使ったスキルの分析も忘れない。
そう、アニマ・ムンディはアクティブ強化スキル、充填はアクティブ補助スキル。系統が違うスキルだからこそ重ね技の連携ができたのだ。
***
訓練が終わると、ジュリエットはまとめに入った。
「本日、わたくしが伝えたかったことは3つ。1、騎士たる者、まずは元気な挨拶からですわ。2、スキルを併用して見せたように、他職を知ることも大切ですわ。3、『立派なドクターになりたい』というその大志も忘れずに。特にヒーラーは、戦場で味方全体を回復させる最後の砦ですので、最後まで決して折れないこと!」
ヴァイオラも補足する。
「ザック様は資質にも環境にも恵まれていらっしゃいますから、自由騎士団に所属すること自体は難しくもございませんでしょう。ただ人生は、ご立派なドクターとなって終わりではございません。医道にも、人生においても、真に求めるものは何かを問い続け、行動の指針をしっかり持ってくださいませ!」
先生方の激励を受け、ザック少年は元気よく答える。
「はいっす! がんばります!」
ザック組の方も上手くまとまって本日が終わった。
三人はそれぞれ立場が違うが、精進して行こうと共に誓うのであった。
了
†シナリオ結果†
大成功
†詳細†
称号付与
『子ども騎士団の先生』
取得者: ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)
『子ども騎士団の先生』
取得者: ヴァイオラ・エマ・バンベリー(CL3000331)
『子ども騎士団の先生』
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)
『子ども騎士団の先生』
取得者: エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『子ども騎士団の先生』
取得者: グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)
『子ども騎士団の先生』
取得者: イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)
『子ども騎士団の先生』
取得者: ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)
『子ども騎士団の先生』
取得者: サブロウ・カイトー(CL3000363)
『子ども騎士団の先生』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
取得者: ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)
『子ども騎士団の先生』
取得者: ヴァイオラ・エマ・バンベリー(CL3000331)
『子ども騎士団の先生』
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)
『子ども騎士団の先生』
取得者: エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『子ども騎士団の先生』
取得者: グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)
『子ども騎士団の先生』
取得者: イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)
『子ども騎士団の先生』
取得者: ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)
『子ども騎士団の先生』
取得者: サブロウ・カイトー(CL3000363)
『子ども騎士団の先生』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
†あとがき†
このたびは、シナリオにご参加くださりありがとうございました。
皆さん、とても良い一日先生でした。
気持ちとしては、全員MVPだったので大成功にします!
皆さん、「子ども騎士団の先生」認定です!
ぜひ今後のシナリオでも新称号をお使いくださいね!
皆さん、とても良い一日先生でした。
気持ちとしては、全員MVPだったので大成功にします!
皆さん、「子ども騎士団の先生」認定です!
ぜひ今後のシナリオでも新称号をお使いくださいね!
FL送付済