MagiaSteam
暴れ牛



 とある昼の訓練場。そこで、多くの隊士が訓練を積んでいる所を見ていると、突然声をかけられた。
「ああ、少し話しを聞いてくれないか?」
 そう声をかけてきたのは『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)笑顔が素敵なナイスガイだ。
「少し相談があるのだが、良いかね?」
 そう言った彼の顔は真剣だった。何かあったようだとすぐに勘付くことが出来たからこそ、どうかしたのかと尋ね、彼の話しを促す。
「いや、実はなとある人物の訓練相手をお願いしたいのだ。奴の名は『ジャック・フランケン』大柄だが気が優しく戦いより花や菓子と言ったものを好むような奴なのだが、最近どこか様子がおかしいのだ。はっきり言おう、奴はそこまで強くない。血も見たくないと本人も言っている。だが、最近のジャックは異常だ。訓練時には訓練相手を無駄に嬲り、暴力的になっている」
 フレデリックはチラリと後ろを見るとそこには確かにやりすぎと言わんばかりに訓練相手を痛めつける大柄な男がいた。身長は平均男性の身長を優に超え頭二つ三つほど飛び抜けている。筋骨隆々でフレデリックと比べても遜色がない。
「頼みたい事がもう一つ。奴に『騎士とは何か』教えてやってくれ。奴はどこか騎士と言うものを勘違いしている。頼んだぞ」

「フッ!」
 ジャックは、相手の木剣を躱し、自身の手にある武器を訓練相手に向けて振り抜いた。
「(俺は一人前だ。一人で立つんだ。前までの俺じゃダメだ。だから、俺は……)」
 ジャックは一人前の騎士になるために一人空回りをする。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
イブ
■成功条件
1.ジャックフランケンを打ち負かす
2.騎士とは何かを説く
3.彼の中で張り詰めている緊張の糸を解す
地形
 訓練所

地形
 平地

時間帯
 昼前

ジャック・フランケン
 力の強い大柄の男、昔から周りに疎まれていた自身を愛してくれた姉を守るために騎士に志願した。しかし姉が病に倒れ亡き人に。これからは一人であると言う重圧と、姉との約束のために人が変わったかのように訓練に力を入れ始めた。しかし、元々持っていた高いポテンシャルを全力で振るうものだから訓練相手を無駄に傷つけ、無駄な暴力を振るうことになっている。

怪力
 普通の二倍三倍も力が強く掴まれでもしたら振り解くのはまず無理だろう。
瞬発力
 相手の動きを見てから動く事が出来る。
動体視力
 普通の兵士が振るった剣が止まって見える。
状態
完了
報酬マテリア
1個  5個  1個  1個
12モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
5/10
公開日
2020年04月04日

†メイン参加者 5人†



 『折れぬ傲槍』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は古巣である訓練場を訪れていた。
「ふむ」
 彼が見ている中で訓練は進んでいく。一人一人の様子を見ながら、彼は一人の騎士に目を向けた。大柄の男だ。
 ボルカスは彼のことを知っていた。依頼対象なのだから知っていて当然で、同時に彼の目を引く騎士だ。
 男の名は『ジャック・フランケン』たびたび訓練中に暴力を振るう騎士である。
 ボルクスは彼の話しを聞きここに足を運び件の男がどんなものかと見に来たのだが訓練に真面目に取り組んでいる姿はとても暴力を振るう様には見えない。それどころか、真面目に訓練を受けている姿は好感が持てる。
「中々素質はあるようだな……」
 思わずふっと笑ってしまう程度には傍目から見た彼に悪い印象は受けない。
「おお、ボルカス。こんなところで何をしているのだ?」
「むっ?」
 そんな彼に話しかける女性がいた。
「余が話しかけているのだ。早々に答えよ」
「ああ、君か丁度良いところに来た」
 そんな尊大な態度を見せる氷面鏡 天輝(CL3000665)を見て、彼は笑みを浮かべながら歓迎した。
「むっ、何か用があるのか? 余もここに用があってきたのだ。手短にせよ」
「ん? 君がか? どうしたんだ?」
「いや、何少し頼まれごとをされてな」
 そう言って天輝は視線を訓練場で訓練を行っている騎士達を見た。
「あれか……」
「ん?」
 天輝の視線に釣られ再び訓練所に視線を向けるボルカス。彼女の視線の先にいたのはジャックだった。
「あれが、ジャック・フランケン」
「ほう、と言うと君も依頼を受けてきたのか?」
「まあ、そうなるな。で、貴様の話しとは何だ?」
 視線をボルカスに戻しながら天輝はそう尋ねた。
「私の話しも彼についてだよ」
「むっ、何が聞きたい? 余もここに来たばかりで何も知らぬぞ」
「いや、君から見た彼の印象を聞きたくてな」
「なんだ、そんなことか。余から見たら真面目すぎる。つまらん」
「ははっ、そうか。私から見たら中々素質がある様に見えてな。他から見たらどう見えるのか聞きたくなっただけだ」
「む? そう言う質問か。なら、強いて言うとすれば、無理をしている様に見える」
「無理?」
「左様」
 天輝はもう一度ジャックに視線を向けた。
「奴の常がどうかは知らんが、話しを聞いた限り奴は争い事が苦手なのだろう? それなのに騎士をしている時点で酷い矛盾じゃ。それに、余には奴が今にもはちきれんばかりの糸に見える」
「糸……」
「余の見解としてはこんなものじゃ。さて、そろそろ休憩の様じゃし。余はそろそろ行くとしよう」
 天輝は視線を戻すとそんことを言い始めた。
「行く? どこに?」
「決まっておろう。奴についての情報が欲しい。周りに聞いて回ろうと思ってな」
「そうか、なら私も同行しよう」
「む? 付き合わんでも良いのじゃぞ」
「なに、私も話しを皆から聞きたいと思っていたところだ」
「ふむ、そうか。では、共に行こうぞ」

「むぅ、最初とあまり変わらんな」
「そうだな。気が優しく、花や菓子を好み、戦いはあまり好きではない。確かにあまり変わらない。が、彼の『姉』が最近亡くなったと言う情報が入ったな。彼が訓練に力を入れだしもその時期からだと言う」
「そうじゃな。ふむ、どうしたものか」
「そうだな。唯一の家族を亡くし、力を求めているのか。それとも、ただ自暴自棄になっているのか。判断に迷う」
「そうじゃな、何かもう一推し欲しい所じゃ」
 そんな相談をしている時だ。大きな打撃音が訓練所に響いた。
「待て待て待て! ジャック! やりすぎだ!」
「っ! す、すまない……」
「ぐっ、つぅ。大丈夫、とは言えないが……ジャック、お前どうした? 最近おかしいぞ?」
「……すまない」
「いや、良いんだが……」
 ジャックの訓練相手だった騎士は口ではそう言いながらも気になる様子を見せたが、その場では深く聞くつもりがないのか引き下がった。
「すまないが、俺は医務室に行く」
「あ、ああ……すまない」
「気にするな。っつう〜」
 ジャックの訓練相手は痛みを堪えながら医務室に向かった。その後ろ姿を見ながらジャックは歯を食いしばった。
 その様子を見ていたボルカスと天輝はジャックの様子を見て、一つの結論を出した。
 そのことで話しをしようと声をかけようとした時だ。
「中々強そうだね、お兄さん。次はカノンのお相手をしてもらっていいかな?」
 そんな二人よりも先に声を掛ける人物がいた。『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)、オニヒトの少女だ。
「っ!」
 ジャックはカノンが自身に声をかけてきたことに驚いた。一兵士である自身に方々で活躍する自由騎士の一人が声をかけてきたからだ。
「あ、あなたは──」
「じゃあ、行くよ」
 ジャックはいきなりの事に戸惑ったと言うのもあるが、いきなり威圧された事に驚き、彼の体は一瞬にしていうことを効かなくなった。体が硬直していることが嫌でもわかった。
 ジャックは決して強いとは言えない。それは、彼の持つポテンシャルが高すぎたのが要因の一つとして挙げられるだろう。普通の二倍も三倍も強い膂力、高い動体視力、さらにそれを生かせる瞬発力を兼ね揃えている。
 だが、それを競う相手がおらず、それだけで訓練をこなしてしまえるだけの力を持っていたことが彼の不幸とも言えるだろう。いくらやっても成長することができない。戦闘感が養えていない。それが彼の致命的な弱点にして弱いと言われる所以だろう。
 そんな彼が初めて前にする強敵の威圧。それに耐えられるかと言うとそうではないと言える。
 だからこそ、彼の体は容易に自由を失ってしまった。
「ほりゃ」
 カノンはそんな彼の好きを見逃さず、その拳をジャックの鳩尾に叩き込んだ。
「ぐっ!」
 しかし、だからと言ってそれだけで終わるジャックではない。日々の訓練は戦闘感は養ってくれはしなかったが彼の身体のポテンシャルを上げる事には成功していた。
「このっ!」
 カノンの一撃によって彼を縛っていた不自由さは消え、ジャックはその手に持つ刃引きした剣をカノンに向けて振り抜いた。
 だが、そこは歴戦の勇姿たる自由騎士の一人だ。身体能力のポテンシャル任せの単純な攻撃など屁でもなかった。カノンはあえて彼の攻撃を躱さず、一歩踏み込みジャックの懐に入り込み全身の筋肉を振動させ、そのエネルギーを拳に一点集中させる様に体の重心を移動させ、ジャックを力強く殴りつけた。
 その時、訓練場に鐘の音が響いた。結着の鐘の音だ。
「うし、勝った」
 カノンは拳を前に突き出したままそう言った。
「ぐっ、くッ」
 ジャックはあまりの痛みに悶絶しながら腹を抑え痛みに呻いた。
「大丈夫? ジャックさん」
「あ、ああ」
「ところで、ジャックさん話しは変わるけど、痛い?」
「あ、ああ、痛い」
「ジャックさんは自分のことを痛めつけてくる人の事を守りたいと思う?」
「……いや」
「そうだよね。そう言えばジャックさんはお花が好きって聞いたよ」
「え? あ、ああ」
「お花を育てる時ってお花を労わって色々心配りをする必要があるよね?」
「ああ」
 ジャックは何の話しをしているのかと内心首を傾げながら相槌を打つ。
「実の所カノンも本業は役者でね、騎士っていう物をそれ程よく理解してる訳じゃないんだ。けどお芝居に出てくる騎士は仲間や護るべき人達を労わり敬意をはらっているよ。それはお花に対する思いと何も変わらないんじゃないかな。少なくとも自分の背中を預けるかもしれない人達を無駄に痛めつけたりしないと思う」
 カノンはそう言って、踵を翻し訓練場を後にして行った。
 ジャックは呆然としていた。何を言われたのかあまり理解ができなかったからだ。しかしカノンの最後の言葉。それに彼は胸が締め付けられた。自身は訓練をしているそれを言い訳にしてただ力を振るっていただけだと言うことは自身の中で薄々理解していたからだ。
 だからこそ、カノンの最後の言葉はジャックの胸に突き刺さった。
「ジャックとか言うの」
 後悔と迷いを渦巻かせながら空を見つめていると突然女性の顔が視界に映った。
 天輝の顔だ。
「立てるであろう? 立て」
「っ!」
 ジャックにとって今日は驚きの連続だ。こうも自由騎士に何度も会うのだ。驚きすぎて口を開けてしまうのも仕方がなかった。
「どうした? 余は立てと言ったぞ」
「は、はい!」
 ジャックは痛む体を無視して無理やりに立ち上がった。
 そうして、何度目だろうかジャックはまた驚いた。なんせ、女性の後ろには騎士の先輩でもあるボルカスがそこにいたからだ。
「よし、よく立った。……ぐびっぐびっぷはーっ。よーし、次は余が相手をしよう」
「え? はっ、は?」
「構えよ」
「はっはい!」
「来い」
「はいっ!」
 ジャックは痛む体を無理やりに動かし、その手に握った剣を天輝めがけて振り抜いた。
 しかし、天輝は素早くジャックの手首を掴み無理やり振り抜かれた剣を止めようとした。が、人一倍力があるジャックはそれを物ともせずそのまま振り抜く。
「ちっ!」
 このままではいけない。そう思った天輝はジャックの腕を基点にその場から跳び剣を避けて見せた。
 そして天輝はその勢いそのままに地面に着した瞬間、ジャックに向かって飛びかかった。
 ジャックの頭上まで跳び上がり、脳天目掛けて蹴りを放つ天輝。
 しかし、その一部始終を目で追っていたジャックはそれを難なく避け、逆に宙で身動きができない天輝に向かってその手を伸ばす。天輝を掴み地上に叩き落とそうとしているのだ。
 だが天輝はそれを読んでいた。そのためジャックの腕を足場にし、背中に向けて蹴りを放つ。
 無防備な背中に蹴りをくらったジャックはよろめきその隙に天輝は地上に降り立った。
「なるほど、パワーがある。動体視力が素晴らしい。それを活かす瞬発力もある。あやつは『そこまで強くない』と言っていたが、なかなかどうして。才能の塊みたいな奴じゃな」
「……お褒めの言葉ありがとうございます。しかし、今更ですが、武器はいらないので?」
「武器?目の前にあるではないか。余の五体全てが武器よ」
「そうですか。それで、まだやるので?」
 そう言ったジャックの目にはやる気はあった。だが、闘争心も勝つ気もない。ただそこにあるのはやはりやる気のみだ。それを見た天輝は目を伏せた。
「なるほど、の。お主は元来戦いは好まぬと聞いておる」
「それが、何か?」
「それが何故、こうして闘争の世界に入り込んだかは知らぬ。だが、お主が騎士になると決意した何かがあったのだろう」
「……ええ、ありました」
 天輝の言葉にジャックは姉の顔を思い出した。
「ありました、か」
「騎士の本質は、背に庇う無辜の人々に代わり脅威から守り、打ち払う事にあると私は考える」
 彼等の戦いを間近で見ていたボルカスはこの時初めてジャックに話しかけた。
「君の問題の一つは、騎士として戦う目的を見失いつつあることだ」
 ボルカスは真っ直ぐにジャックの目を見た。その目に射抜かれ彼の言葉に心当たりがあるジャックはその手に握る剣を握り締めた。
「私は戦っているお前を見て思った。君は本当に騎士になりたかったのか?」
「俺は! 俺は……」
 その場に沈黙が降り立った。ジャックは二の句を述べることができず、ボルカスと天輝はそんなジャックの答えを待った。
「俺は、戦いが嫌いだ。痛みつけ、痛みつけられるのは好きじゃない。でも、それでも、俺には守りたいものがあった。だから騎士に志願した。けど、だけど、俺には守りたいものがもうない……」
「なら、騎士をやめろ」
 ボルカスは厳しい声でそう言った。
「だが、お前が騎士を続けようとしているのは何か理由があるとは思う。だが、今のお前は何かを持っている様に見えない。大事な者はいるか? 恋人でも家族でも、なんでもいいんだ。彼らは、お前が何をした時に笑っていた? 未来をどう決めるかのヒントは、そういう過去にあったりするものだぞ。そうだな、美しい花に美味い菓子で人の心を潤し守る。そういった道を考えるのも、お前に許された選択肢の筈だぞ」
「……っ!」
 ジャック歯を食いしばる。
「それでも騎士を続けたいと言うのなら、何かを見つけてこい」
 ボルカスはジャックにそう言い放ち、踵を返し訓練所を去っていった。
「この世に辛い別れは確かにある。余も何度か経験した。それを悲しむのは良い。立ち止まる事もあろう。だが、再び前を向く事が大切なのじゃ」
 天輝も一つそんな言葉を残し、その場を去っていく。
 その場に残されたのはジャックととつぜ習われた自由騎士達に驚く騎士達の姿がそこにあった。

「いや、別に良いんで無い?」
 ジャックは医務室でであった『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)の治療を受けながら訓練場で起こった事をツボミに話していた。
「姉を亡くした。だから一人前になろうと必死に努力した。だが、それを否定された。やめろと言われた。なら、辞めちまえよ騎士なぞ」
「いや、しかし……」
「それでも構わんと思うぞ私は。私は騎士では無いがな、傍で見ている限り騎士は『守る者』だ。対象は国だったり人だったり城だったり矜持だったり色々あるが、兎も角守る為に全霊注ぎ込む変人が騎士だ。力を振るったり敵を倒したりは守る為の手段に過ぎん。血まみれでも倒れず仲間を守るアホ。国神に裏切られても最期まで国を守り続けた歯車騎士共。愛する姉を守る為に向いてもいない騎士の道を選んだ時の貴様。うん、その時は貴様、間違いなく騎士だったと思うぞ? でも今はもう違う。前提が崩れとる。だから気にすんな辞めちまえ。無理する必要ねーって」
「……」
 そんなツボミの言葉にジャックは両手を握りしめた。何かが言いたい。しかし、その何かがわからず何も言えない。辞める理由はいくつもある。だが、ジャックの中で騎士をどうしてもやめたいとはどうしても思えなかった。
「…嫌か? 何故だ? 理由があるならちゃんと言え。先ずは其処からだ」
「……すみません、わかりません」
「それなら、自分なりの答えが出るまで、悩みな。さあ、治療は終了だ。行った行った」
「はい」
 ジャックは立ち上がり、治療室を出て行こうとした時だ。
「あっ、ここにいたんですね」
 医務室の扉を開き入ってきた女性がいた。ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)だ。
「あなたは……」
「あなたがジャックさんね。話しはかねがね伺っています」
 ジャックはその言葉に疑問を感じた。何故こうも自由騎士が自分お前に現れるのかと言う疑問だ。
 よくよく考えればここにツボミという存在がいるのもおかしい。
「あなた達は何が目的ですか?」
「ん〜、強いていうならジャックさんの更生、かしら」
「更生?」
「あら、知らない? あなたのことを頼むって、フレデリックさんから頼まれたのよ」
「えっ!?」
「あら、知らなかったのね」
「ええ、そんな話しはこれっぽちも……。ああ、それで」
 チラリと後ろで椅子に座ってこちらを見て頬を掻いているツボミを見て得心を得た。つまり、今日会った自由騎士達はみんな彼の依頼で自身に会いにきたのだとジャックは知った。
「まあ、そんな話しは置いておいて、ボルカスさん達から話しは聞きました。良い弟を持ったとお姉さんも思っていると思います」
「俺が……? 何故?」
「だって、守りたいもののために騎士になろうと、嫌いな戦いの場に出ようとしたその心意気、素晴らしいと思います。きっとあなたのお姉さんも鼻が高いことでしょう。だって、それこそ騎士たる守る者の心意気ではないですか」
 ジャックはその言葉にハッとした。
 姉を亡くし、がむしゃらに走ってきたが、よくよく考えれば最初の思いなど、姉を守りたいという思いだった。たったそれだけで騎士になろうと思った。たったそれだけだ。
 その気持ちは今も変わらない。自身にとって騎士を続ける理由なぞそれだけでよかったのだ。
「だから、そんなジャックさんにはご褒美として一人前の男になって──」
「申し訳ありません、俺はもう行きます!」
 ジャックはそう言って訓練場に向かって走っていった。。
「あらあら、ふられてしまいました」
「そのようだな」

『ジャック、立派な騎士になってね。約束よ』
 姉と交わしたその約束、そのために早く一人前になろうとしていた。しかし、それではダメなのだ。しかし、だからと言って姉に甘えてばかりだった前までの自分でもダメ。
 ならどうなればいいのか。その答えは過去に確かにあった。
「姉さん。俺、この街を守るよ騎士として、だってこの街は姉さんとの思い出詰まった場所だから」
 大事なものはいた。しかし、今はいない。それでも、この町に残っているものも確かにある。だから、この街を守れるくらいに立派な騎士になって見せる。ジャックはそうこの時決心した。

†シナリオ結果†

大成功

†詳細†

FL送付済