MagiaSteam
うわっ!イチゴが襲ってきた!




 風が心地よい初夏の日。
 イ・ラプセル内のある農園では、今が旬のイチゴの収穫が最盛期を迎えていた。
 王都に近いこの農園では、その地の利を生かして王都の菓子店などにイチゴを卸しているという。

 しかし、のどかな農村地帯に農夫たちの悲鳴が突如としてこだまする!

「い、イチゴのバケモンだぁぁぁぁぁ!!」

 鍬や鎌を構えながら後ずさりする農夫。
 彼の目の前にいたモノは。

 2メートルはあろうかという、直立したイチゴの苗。それが、根を足にして、ノシノシと歩き出している姿だった。 



「イブリース化したイチゴが出たんだって!」
 任務の概要について切り出した『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)が、オラクル達に説明する。

 王都近郊の農園で、イチゴが魔物と化した。
 それが農夫を追っかけまわしたり、普通のイチゴや他作物を踏みつぶしてしまうので討伐して欲しいという任務だ。

「このまま放っておいたら農夫さん達が怪我しちゃう。それに、畑がメチャクチャになったら当然、生活も立ち行かなくなっちゃうよね。」
 今急げば、丁度イチゴが歩き出した辺りで畑に到着できる。

「農夫さんの安全と、美味しいイチゴのために!皆、頑張ってね!」
 美味しいイチゴ、のところでクラウディアの声が力強くなったのは気のせいだろうか……?

 ともかく、自由騎士たちは急いで現場に向かうのだった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
安曇めいら
■成功条件
1.イブリース化したイチゴの討伐
皆様、初めましてorお久しぶりです。STの安曇めいらです。
イチゴの美味しい季節にイチゴの魔物を討伐してください。


【場所】イ・ラプセルの王都近郊の農村地帯、畑なので足元はふかふかの土です。
イチゴは既に歩行を開始しています。


【時間・天候】晴れた午前中。極めて視界は良好。


【敵】でかいイチゴ×1  まあまあでかいイチゴ×3

でかいイチゴは2m、まあまあでかいイチゴは1.2m位。
直立したイチゴの苗のような姿で、どのイチゴも根っこが足となっているため歩行可能。
葉は硬度を得ており、近接戦の場合は刃物のように扱ってきます。


【攻撃方法】
・イチゴぶん回し:攻遠単
 巨大なイチゴをモーニングスターのようにぶん回し攻撃します。
 ちなみにイチゴはイブリース化しているので美味しくありません。

・葉っぱブレイド:攻近単【スクラッチ1】
 固くなった葉っぱで斬りつけてきます。


では、皆様のご参加をお待ちしております!
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
10モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
6/6
公開日
2019年06月11日

†メイン参加者 6人†



●イチゴに懸ける情熱的な女子力(物理)  ※男子やよくわかんない子も居るよ!

 よく陽が照り付ける、爽やかな6月。あくる日。
 少し暑さはあるものの、涼しい午前の風がそれをかき消してゆく。

「いちご~いちご~♪甘くて美味しいイチゴ~♪」
『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)が、童謡のような節回しで歌いながら先頭を進む。
 そのまま食べても、ジャムにしたって凍らせてたっておいしいイチゴは、坊ちゃん方にも引っ張りだこ。
 歩き回るイチゴ、という未知の食べ物(?)に好奇心がそそられるジーニアス。普通、魚等ならよく動き回るもの=活きが良い=美味しい!……となるのだが、はてさて。

「イチゴまでイブリース化するなんて世も末だねー!」
 でも素早く退治したらイチゴ食べさせてくれるかな?、と明るく考えるのは『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)で。
 愛馬ワッカの上で気合いを入れる『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)も負けてない。
 イチゴ狩り!とどことなく士気が上がっている『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)、が後に続く。
 パカリパカリという蹄の音と共に元気よく農道を進む女子力(物理)高めのオラクル達。

「えと・・・、が、がんばりましょうっ」
 猫の耳や尻尾が、ぴょこっと揺れた。
 ちょっと顔を赤らめながら、小声でえいえいおーと呟くのは、リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)
 可憐、という言葉が似合う仕草と印象の彼女だが、考えている作戦は【皆で一気に突撃】……彼女も女子力が高い一人だった。

 ここで、助っ人にやってきていたフィオレット・クーラ・スクード(CL3000559)が、任務の面々を見回して、ぽつりと漏らす。
「敵前逃亡など考えてもおらぬ!といえる布陣じゃのぅ。」
 そう、今回のメンバー、非常に前のめりな編成なのである。故に、守りに秀でたフィオレットも助太刀に来た次第。

 そうこうしている間に、件の畑が見えてきた。
 そして、オラクル達の足元から伝わるのは、地響きのような振動。
「マジででかい……」
 そう溢したのは誰だったか。
 オラクル達の目の前にそびえたつのは、文字通りの巨大なイチゴの苗だった……! 

●ちなみにイチゴはバラ科です

 ズモモモッという足音を立てて、畑に直立するでかいイチゴ。その後ろに脇侍のように構える、まあまあでかいイチゴ。
 彼らが足元のイチゴを踏みつぶす度、遠巻きに見ている農家の人々が悲鳴を上げる。
「あれはイブリースだよ!逃げてー!」
 内心では、動くイチゴを面白いと思いながらも、ジーニアスは精一杯の声で周囲の農民に注意を叫ぶ。

 絵面こそコミカルだが、緊張感ある空間。得物を構えたオラクル達が、今か今かと間合いを計る。
 と、そこに明るい声が響く!
「おいしいイチゴが食べられると聞いて飛び入り参加!スピンキー・フリスキー……イチゴ狩りエディション!!」
 スピンキー・フリスキー(CL3000555)は、先陣を切って颯爽と立ちはだかる!
 ……しかし「でかいイチゴ」は答えない。イブリース化しているとはいえ、流石に植物には言葉は通じなかった。
 まあいいか、と素早く思考を切り替え、スピンキーもガンドレットをはめた拳を握る。

「皆ー!守りと回復は任せるのじゃ!」
 フィオレットが、皆を元気づけるように叫ぶ。
 特に女子力……もとい、前のめりな今回の面々。下手を打てば戦線が瓦解しかねないのを押しとどめるのが、助っ人たる彼女の役割。

「早くイチゴを食べたいから!!」
「叩いてイチゴミルクにしてくれるわ!!」
 カノンとシノピリカが、各々の一撃をイチゴに叩きつける!
 シノピリカは親玉イチゴに殴りかかる。重厚なその一撃が茎に叩き込まれた瞬間、左腕と脚から、猛烈な蒸気が霧のように流れ出す。
 カノンの回し蹴りがその靄を裂いて、煌く軌道を描いて親玉の葉を千切り飛ばした!
 ワッカも主と連携するように、負けじと葉っぱに噛みついてくっきりと歯型を残す。

 しかし、この中で一番の難敵、親玉イチゴもやられてばかりではない。
 ごわんっ、と音を立てて、最も近くにいるカノン目掛けて、鋭いギザギザの葉を振り下ろす!
「ったぁー!」
 決して深くない傷を負ったカノン。フィオレットが居なければ本当に危なかったかもしれないと、一瞬冷や汗が走る。

 モカは、午前の穏やかな陽光を浴びてワンステップ。
 彼女とリリアナ、俊敏さに長ける少女二人が、子分イチゴの片方を相手取る。
 蝶のように地に足を付けずに戦うモカは、しかしスズメバチを思わせる素早さでレイピアを振るう。
 先手を取ってモカが攻撃した場所を、リリアナも狙ってデュアルストライクを撃ち込み、茎や葉を落としてゆく。
 いくらイブリースとはいえ植物は植物。斬撃には弱いのだ。
「あいたっ!」
 リリアナはかわし切れず、ギザギザの葉で腕を抉られる。だが、フィオレットの援護ですぐさま痛みは遠のく。
「大丈夫ですか?」
 リリアナは葉攻撃を紙一重でかわし、その動きのままにレイピアを突き出してイチゴを刻む。
「……行けますっ!」
 空気を踏むように、足の動きで軽快なリズムを空に放ったモカ。
 彼女のタイムスキップが、まあまあでかいイチゴの根元と茎を三分割する!

 もう片方の相手は、ジーニアスとスピンキーの食べ盛りわんぱくコンビ!
 己の速度を最大限に高めたジーニアスの、音速の一撃が茎の一部を切り飛ばす。
 守りに転じれば、すぐに削られ負けてしまう。今の自分に出来ることは、攻撃を続けることで勝ちを掴むことだ。
 ジーニアスは今回の面々では年下の区分けに入る歳だが、野性の勘とでも言うべきか。この戦いで重要な点を言われずとも気付いていた。
「あっ!イチゴ踏むなっぺ!」
 スピンキーは、まあまあでかいイチゴがその根で畑のイチゴを踏みつぶすところを見逃さなかった。
「このっ!」
 美味しいイチゴになんてことを!という気持ちを乗せたバッシュの一撃が、子分イチゴの脊椎にあたる太い茎をたわませる。
「今だ……攻めろー!!」
 好機を掴んだ。黒と白の銃剣が二つの閃光になって空を走る!
 その軌道が消えた直後、化けイチゴの身体はザックリとバラバラになって地面に四散した。

 残すイチゴは後一体。
 しかし、子分がやられたことに気が付いた親玉イチゴ、表情が無いので分からないのだが……動きが明らかに荒々しくなっている。
 腕のように動かす、果実を実らせた茎を振りかぶるように動かし……次の瞬間、巨大なイチゴがモーニングスターのように勢いよく降り下ろされる!
「危ない!!」
 シノピリカがすかさずそこに割り込み、賦活の力を纏った彼女は一か八かで攻撃を受ける!
 彼女自身の守りの堅さと回復力、フィオレットの援護がなければフラグメンツを代償にすることもあり得た。手強い一撃である。
 鋼鉄乙女の左腕に直撃したイチゴは、果汁を散らして脆く砕け散り。その破片は四散し、周囲のオラクル達にも降りかかる訳だが……。
「……あ、美味しくない」
 食べ盛りの食欲からか、好奇心からか。ジーニアスとスピンキー、それとリリアナが破片を口にする。
 が、広がる味は苦い上に酸っぱい。やはり、イブリース化したことで味まで変化しているようだ。

 ジャムにもイチゴミルクにもならない、マズいイチゴには用はない!
「これで終わりだよ!」
 カノンの琥珀色の瞳がギラリと燃えた。
 大ぶりなイチゴモーニングスター攻撃で、隙だらけのでかいイチゴへ、荘厳なる拳の一撃……神音が強かに撃ち込まれる!

 それを合図にするかのように、オラクル達の攻撃がラッシュのように親玉イチゴへ降り注ぐ。
 スピンキーとシノピリカのバッシュが根元にざっくり入り、バランスを崩したところにジーニアスのデュアルストライクが葉を砕く。
 まだ満足に動かせる葉を高く動かすも、振り下ろす前にリリアナのデュアルストライクとフィオレットのシールドバッシュが潰しにかかる。

「これで、終わりです!」
 モカの鋭い一撃……疾風刃・改が、イチゴの茎を真横に両断する!
 グラリと上部の葉や茎が揺れて、ドサリと畑に横たわる。根の方も、ヨロヨロと二歩三歩動いたが、すぐ動かなくなった。

「やった、倒せた……」
 誰かがぽつりと呟く。
 その言葉を聞いた農夫たちは、快哉を上げてオラクル達に駆け寄ってくるのだった。

●王都でも噂の素敵なイチゴ

 イブリース化したイチゴを見事討伐し、一件落着。見事な戦闘に、やんややんやの大騒ぎ。
 明らかに疲れた様子のオラクル達に、農家のおばさんが声をかける。
 この戦いの舞台となった畑の持ち主の奥さんだ。

「オラクルさん達、本当にありがとうね。これ、ささやかだけど、ウチのイチゴ。」
 おばさんが手に持つのは、イチゴ満載のボウル。
 王都にも出荷され、一流パティスリーでも使われているというイチゴである。
 全員の顔から疲れが吹き飛び、ぱぁっと表情が明るくなった。

「ウチの畑は大分踏んづけられちゃったけど、貴方達のおかげでこれくらいで済んだわ。」
 また来年頑張るからね、と少し寂しげな顔のおばさん。
 そんな貴重なイチゴ、貰ってしまってもいいのだろうか?と少し申し訳なく思うオラクル達だが、おばさんはお皿をぐっと彼女らの方へ寄せてくる。
「貴方達が来なければ、この村の畑は全部メチャクチャになってたの。これだけで留められたのはオラクルさんのおかげなの。貰って。」
 そこまで言うならと、受け取るオラクル。きっと来年は、この畑も一面のイチゴが実ると信じて。

 ……ちなみに、貰ったイチゴはオラクルだけで計算しても、ワッカを頭数に含めても絶妙に割り切れない数だった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『イチゴバスター』
取得者: シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
特殊成果
『とれたてイチゴ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:カノン・イスルギ(CL3000025)
『とれたてイチゴ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『とれたてイチゴ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:秋篠 モカ(CL3000531)
『とれたてイチゴ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ジーニアス・レガーロ(CL3000319)

†あとがき†

お久しぶりのリプレイ、いかがだったでしょうか。
ちなみにこの農園では、イチゴだけではなく他の果物も栽培しているそうです。
他の季節には、他の果物もイブリース化するなんてことも……?

MVPは素敵な活躍をなさったお姉様へ!
皆様、ご参加ありがとうございました!
FL送付済