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消えた山脈とヴィスの動向




「君達に向かってもらいたいところがある」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)が地図を広げる。
「そこは……」
 フレデリックが指差した場所──そこはかつてはシェオール山脈と呼ばれた場所。ヴィスマルクからみれば喜望峰だっただろうか。
 今は荒れ果てた平地となったというその場所を指差す。
「神造兵器のその威力を素の目で見てこい、と?」
 フレデリックは静かに頷く。
「ああ、そうだ。今我々が対峙しているものの究極の力を見ておいてもらいたい」
 フレデリックは自由騎士たちを改めて見回す。自由騎士が発足してからこれまで。様々な経験を積み、一段と逞しくなった者たち。
「それと……もう一つ確認しておきたい事がある」
「……ヴィスマルク……か?」
「察しが良いな。そう、ヴィスマルクだ。国境があのような事態になった事でどこよりも影響が出ているのはあの国だろう。国境付近でも何かしらの動きがあるに違いない」
「なるほど。じゃぁ俺達は兵器の威力確認と国境でのヴィスマルクの動き。この2つを偵察してくればいい訳だな」
「その通り。シャンバラと交戦中の今、出来ればヴィスマルクとのいざこざは避けたいところではあるが……有事の際はうまく対応して欲しい」
 自由騎士に与えられた任務は2つ。どちらも今後を考えれば非常に重要な任務だ。
「そして……今回は同行する案内人がいるのだが……」
 フレデリックが口ごもる。
「まぁ知っている者もいるだろう。街の入り口で待っているから合流してくれ。すぐわかるはずだ」
「じゃぁ行って来ます」
 そういって部屋を出る自由騎士たちの後姿を見送る。改めてフレデリックは頼もしく成長したものだと感じたのだった。

「案内人って誰なんだ?」
 そんな事をいいながら街の入り口までやってきた自由騎士たち。そこで待ち構えていたのは意外な人物だった。

 そして──自由騎士はこの偵察を経て神造兵器使用による惨状と、ヴィスマルクの狡猾かつ迅速な行動を知る事となる。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
他国調査
担当ST
麺二郎
■成功条件
1.神造兵器の威力をその目で確かめる
2.ヴィスマルクの国境付近での動きを探る
気づけばシャンバラとジョアンナががっちゃんこしました。麺です。

情報量の差。それは時として大きなアドバンテージを生む事があります。
シャンバラの神造兵器の威力を改めてその目で見て感じる事は経験という意味ではとても意味のあるものになるのでは無いでしょうか。
そしてヴィスマルク。国境でのシャンバラの狼藉に対して彼らは一体どのような行動を行っているのか。これもまた今後を考えればぜひとも得たい情報です。
今回はシャンバラとヴィスマルクの国境の元々は山脈があった付近の偵察が任務です。
そしてなぜかジョアンナが同行する事になりました。さぁどうなるやら。

●ロケーション

 元はシェオール山脈(喜望峰)の一部であった今は人の近寄らぬ荒野となっている場所。
 神造兵器により山は吹き飛び、起伏の激しい荒れた土地と化しています。
 時間は夕暮れ時。月夜のため視界はそれほど悪くありません。
 神造兵器の威力を偵察に来た自由騎士たち。焼け焦げた大地、枯れ果てた木々。溶けた石や岩。改めてその威力のすさまじさを全身で感じる一行。
 荒地と化した広範囲を見て回っていると……そこで見知らぬ兵士達と遭遇します。
 彼らは何かを調べながらメモを取っていたようで、その装備品を見る限りシャンバラの兵士ではなさそうです。
(ヴィスマルクに関わりの深い者がいれば判別できます)
 そして此方に気づいた兵士達は、突然此方へ襲いかかってくるのです


●登場人物
 
・ヴィスマルク砲火竜兵団 班長 1人
 集団のリーダー的存在。統率しています。
 蒸気式のリボルバーを2丁所持。その弾には【シール2】の効果が付与されています。

・ヴィスマルク砲火竜兵団 団員 9人
 全員が蒸気式の銃を所持。その弾には【シール1】の効果が付与されています。
 スタイルは全員重戦士ですが、複数人回復スキルを所持しています。

 彼らはこちらを見つけ、すぐに攻撃してきます。相手にせず逃走する事も可能ですが、その場合ジョアンナは1人残り、兵士を相手に戦います。
 ヴィスマルク陸軍の支援攻撃部隊。その彼らが国境付近で何をしていたのでしょうか。


●サポートについて

 サポート参加者がいれば、神造兵器の被害状況をより正確に把握、報告する事が出来ます。


●同行NPC
『竜の落とし子』ジョアンナ・R・ロベルトドーン(nCL3000052)

 拙作『マディラシトリンとロベルトドーンの絆』に登場したマザリモノの少女。
 ラスカルズ内の女性だけで構成されたチーム『コルレオン』のリーダーだが、自由騎士に興味を持っている。
 少なくとも自らが認める力を持つ者に対しては非常に好意的。以前関わった者がいれば少し影響します。
 今回シャンバラ、ヴィスマルクの国境付近の道案内人として同行する事になりました。
 なぜその辺りの地理に詳しいのかは不明。
 お目付け役であるアンも、実は隠れてずっと付いて来ていますが、ジョアンナがよほどの危機的状況にならない限り出てきません。(ジョアンナに怒られるので)
 スキルなどはステータスシートをご参照ください。

皆様のご参加お待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  2個  6個
10モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
6/6
公開日
2019年04月03日

†メイン参加者 6人†




 有事の際はうまく対応して欲しい……か。
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はフレデリックの言葉を思い出していた。
「現時点ではどこが相手だろうとあまり大事にするなってことかな。特に……ヴィスマルク」
 言葉の奥にある意図を察するエルシー。だが此方がどのように考えようと相手次第となるのは否めない。
「まぁ善処はするべきだろう」
『実直剛拳』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)はエルシーの言葉に続ける。
「それにしてもジョアンナが同行かー。道案内だから戦っちゃだめだよねぇ。ちぇー、次に会ったらタイマンだーとか思ってんだけどなー」
 口を尖らせてつまらなさそうにするのは『薔薇の谷の騎士』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。
 一行がいるのはシャンバラとヴィスマルクの国境付近。かつては山脈……であった場所。その荒廃ぶりの詳細と国境付近でのヴィスマルクの動向を探るのが今回の任務だった。

 少し時間は遡る。
「……何故貴方がいるのです?」
 そう言って『慈葬のトリックスター』アリア・セレスティ(CL3000222)が剣先を向けた相手は──道案内人のジョアンナだった。明らかに敵意を向けるアリア。
「んー? 刃を向ける相手間違えてない? ジョーは道案内を頼まれてここにいるんだけど」
 ジョアンナは平気な顔でその剣の先に触れる。鋭い視線が交差する一触即発のムード。
「ちょっと、待ってくれ。それに付いては俺たちも聞いておきたい。ジョアンナ、君は何故案内人を引き受けたんだ?」
 そんな緊張感漂う空気の中に飛び込んだのはアリスタルフ。
「あ、あの時の! 元気してたー?」
 ジョアンアはアリスタルフに笑顔で話しかける。
「あの時と連れてる子が違うのね。もしかして飽きちゃった?」
 そう言うところころと笑うジョアンナ。
「!? だから違っ──」
 動揺したアリスタルフにジョアンナが拳を打ち込む……が、寸前で交わす。
「いきなり何をっ!?」
「ふふ、やっぱり君はいいね。……ええっと。案内人になった理由だっけ。んーまぁしいて言えば人探しのついでかな」
 聞けば誰かを探しているのだという。誰かが誰なのかは、まぁいいじゃない、と答える事はないようだ。
 一連のやり取りを見ていたアリアは何かを察したのか、その剣を納めていた。
「前にも一度会っているわよね? 私はエルシー。今日はよろしくね」
 そういうと手を差し出す。
「おねーさんは見た顔だね。よっろしく~♪」
 何気ない握手。だがそれだけでもエルシーは感じ取っていた。ジョアンナの持つポテンシャルを。あわよくばラスカルズの悪い評判を言おうとも思ったのだが、それは今では無いと感じとる。だがいつかは聞かなければならないのだろう。何故そんな組織にいるの、と。
「ラスカルズには良い思い出がないのだけど……まぁ味方なのなら仲良くするわ! よろしく!」
 何度かラスカルズと戦っている『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)。その印象は至極当然のものであり、むしろそれがラスカルズの本質であると言っていい。ジョアンナ率いるコルレオンが異質なだけなのだ。
「いまてきじゃないならおっけい」
 ラスカルズの本質を知らない『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)のジョアンナへの対応はあっさりとしたものだ。むしろ味方が多い事は助かるとすら思っている。
「でも……つよいの?」
 何も知らないリムリィから出た素朴な疑問。瞬時にジョアンナの目が獲物を狙う猛獣のソレになる。
「おいおいおい、今じゃないだろっ」
 アリスタルフが慌てて場を取り持つ。
 そんな顔合わせでのひと悶着がありながらも、一行は出発したのだった。

 そして現在。一行はシャンバラの神造兵器の脅威をまざまざと見せ付けられていた。
「それにしても……たったの一撃でこれほどとは……」
「これが神造兵器ぶっぱの跡かー」
「やま、ない。ほんとに、あった?」
「山が吹き飛ぶって……」
「これではここにいた人たちは……」
「確か金属の像を高空から落とす一撃だったわよね……想像はしていたけど、実際見るのはやっぱり大事だわ!」
 パシャ、パシャと手に持った蒸気カメラであたりを撮っているのはリムリィときゐ子、エルシー。
 皆少しでも情報を持ち帰らんと周囲を隈なく写真に収める。
 調査は得意じゃない、そんな事を言いながらもカメラを構え、どんな小さな被写体も丁寧にとり続けているリムリィ。自分にはわからなくても詳しい人が見ればきっと何か情報や新しい発見があるはず。そんな思考をめぐらせながら写真をとた状況を合わせてメモしていく。
「しんぞうへいきのさようはなにか。こうねつ? れいき? ばくはつ? どく? ぶつりてきなもの? それともまどう?」
 リムリィの頭はフル回転している。
「ひがいのはんい、どこからどうひろがるのか。ひがいのひどいもの、ひかくてきぶじなもの、そのさはなにか。ぶじなものはなぜぶじか、ふせぐのにむいたざいしつなのか」
 実際に来て、見て、感じた疑問の全てをメモしていく。きっと何かの役に立つ。リムリィはそう考える。
「ふぅー。次はこっちね」
 きゐ子もまた写真撮影に余念が無い。情報は多ければ多いほど精度が増す。さらに魔導の力となればきゐ子の熱が上がるのも無理は無い。
 これだけの威力の魔導の力。趣味を超え、もはや生きがいと言っても過言ではないであろうきゐ子の知識収集欲が滾る。もし個人で扱えるほどに小型化、最適化が出来れば──そんな未来を想像するきゐ子の胸は躍っていた。
「やっぱりココが以前は山脈だった……って、信じられないわね」
 エルシーが改めて周りを見渡す。不自然に隆起した起伏さえあれど、そこが山であったと思しき痕跡は見当たらない。
 山脈を吹き飛ばす程の破壊兵器。そんなものを持つ敵と私達は戦っているのね──だが先へ進まなければならない。敵がどれだけ強大であろうと進まない理由にはならないのだ。
 出来る事をひとつずつ。エルシーは双眼鏡を片手に蒸気カメラで辺りの状況を写真に収め続けていた。
「ほえーっ。ほんっっっとに吹き飛んでるんだなー」
 眼下に広がる景色を見てカーミラも声を上げる。以前近くに来た事はある。だがその時はこの場に来る事は無かった。
「うーん、首都に直撃したら一撃で戦争終わらせそうだなー」
 確かにこの威力の兵器が首都を襲えば、どの国も甚大な被害を受けることだろう。
「……あれ? そういや、なんで首都じゃなくて前線なんて狙ったんだろ?」
 確かに不自然ではある。だがカーミラの疑問に答えられるものはその場にはいない。

 皆が蒸気カメラを使う中、アリアはその高い機動性をフル活用し、様々な地形を実際にその足で感じていた。
(この状況じゃ道を作るにしても……かなり時間がかかるよね)
 隆起し、複雑な地形へと変貌した国境付近。何をするにしても先ずは大規模な地ならしが必要になるだろう。
 この地の復興にはかなりの時間を要するであろう事はひしひしと感じ取れる。
(あとは……)
 アリアは隆起した地面を隈なく調べる。この場所がこうなった事でこれまで把握されていなかった鉱物などの資源があるのではないか──アリアの予想は的中し、いくらかの鉱物の欠片を採取することに成功する。これを持ち帰れば何か新しい発見があるかもしれない。
 その一方でアリスタルフはジョアンナと行動を共にしていた。
 地図屋(マッパー)──付近の地形を正確にトレースできる能力。この依頼のためとも言うような能力を駆使し、アリスタルフは地図をしあげていく。
「以前の状態は覚えているだろうか」
 ある程度書き終える毎に、ジョアンナに以前のこの場所との差異を聞きだし追記する。
「んー。このあたりは鬱葱と茂った森林だったと思うなー。確か美味しい果物がなってたんだ」
 ジョアンナの記憶がドコまで確かかはわからないものの、比較する情報としての価値は無いとはいえない。
 それにジョアンナも頼りにされる事は悪い気はしないらしく、うんうん唸りながらも過去の記憶を搾り出しアリスタルフに伝えていた。
 自由騎士たちがそれぞれの方法で調査し、一通りの情報を得た頃。
 その者たちは自由騎士の前に現れたのだった。 


「もう1つの目的が向こうから来てくれたみたいね」
 エルシーが向かってくる兵士を見て呟く。
 相手がシャンバラなのかヴィスマルクなのかは……ぶっ倒してから聞けばいい。
「お前達! 何者だっ!!」
 そう言うと兵士と思われる男たちは皆、銃を構えた。引き金に指がかかっている。どうやら話し合い……という空気ではないようだ。
「んー。私が前に見た装備と似てる。ヴィスマルクっぽいなー」
 カーミラが小声で皆に伝える。
 男達と鉢合わせたこの場所は元の地形状ではシャンバラの領土のはず。なのに何故──。
「まずはこの状況、何とかしないのだわ」
 きゐ子が皆に目配せする。と、同時に自由騎士たちはばらばらに動き出す。
 銃をものともせず、兵士達へと真正面から挑むもの。距離を取り、状況を見極めんとするもの。
 複雑に隆起した地形を利用し、巧みに銃の標的からその身を守りながらそれぞれの戦闘体制を整えていく自由騎士たち。
 幾多のこれまでの経験が膨大な量の知識となり、自由騎士の動きをより的確に、より効率的に動かしていた。

 今敵の最大の脅威は遠距離からの射撃によって自身の技を封じられてしまう事。後衛からの魔導の攻撃をその主とするきゐ子にとってはそれは可能限り避けたい状況だった。
 そんな中、きゐ子はあえて一旦距離をとり、敵の情報収集に集中する。
「ふむふむ……回復スキルを持っているのは……あの3人ね」
 心理をも見通すといわれるその瞳──きゐ子の観察眼は敵の情報を白日の下に晒す。この時点で、情報戦という意味では圧勝であった。
「まずは回復役を落とすのだわっ!!」
 アニマ・ムンディで自らの魔導を引き上げたきゐ子が放つのは上空から降り注ぐ幾多の雷の矢。
「むっ!?」
 その流星群の如き光の攻撃は回復役と思しき1人を中心に周囲の兵士達を貫き、未曾有の重力場を発生させる。
「ぐぁぁぁあああああぁぁぁぁ!!!」
 敵の詳細な情報収集と冷静な判断力。きゐ子の武器は魔導のみにあらず。
「んー。シールやばいから長期戦覚悟だねっ!」
「スキル封じはやっかいね……。だけどまぁ、どっちにしろ私は殴るだけよ!」
 直後に柳凪で防御力を引き上げたエルシーとカーミラ。飛び交う弾丸の雨の中、一直線に兵士の元へ。
「唸れ、私の拳!! 緋色の衝撃ぉぉおおおおーーーーっ!!!!」
「最初から全力!! いっくぞー!!! 神獣双連撃ぃぃぃーーー!!!!」
 実は戦闘開始直後にカーミラは、薔薇騎士団の名前を出し兵士達の反応を見た。しかし、残念ながら反応は無かった。
 なら全力で迎え撃つ──カーミラがそう考えたのは必然だった。
 エルシーとカーミラは開始早々、惜しむ事無く必殺ブローを叩き込む。
 敵の銃弾を受けて状態異常になってしまえば、自らが持つスキルは使えなくなる──ならば、先手必勝と二人は考えたのだ。
「ぐぁぁぁあああっぁぁぁぁ!!!」
 その圧倒的な攻撃に直撃を受けた兵士達は大きなダメージを負う。その破壊力は一撃で兵士の殆どの体力を持っていく程には強烈だ。
 しかしその攻撃の範囲から逃れた兵士の銃口は、容赦なく彼女達を狙う。
 バキュゥゥーーーーン。響く銃声。さすがの2人も自らの攻撃後に至近距離で放たれた弾丸は避けきれない。
「くっ……」
「うっ……」
 直撃こそ防いだものの、2人の肩からは鮮血が流れる。
「これでスキルは使えま……ごふぉあ!?」
「お前達に勝ち目はない。投降するなら……ごふぁっ!?」
 勝ったとばかりに言葉を発した兵士はその言葉を言い終わる事もなく意識を飛ばした。
 男にはエルシーの鞭のようにしなる回し蹴りが。もう1人の男の鳩尾にはカーミラの渾身の一撃が。
「スキル(こぶし)がダメでも……私には蹴りもあったわ。ごめんなさいね?」
「スキルが使えないならふつーにぶん殴る! 私は素の殴り合いも得意なんだぞー!」
 格闘家はその全身こそが武器。スキルを封じた程度でその攻撃が止まることは無い。
 兵士たちは改めて格闘家という者の恐ろしさをその身に刻む事になる。
「んー。あんたたちやっぱりやるねーっ」
 にこにこと楽しそうに話すのはジョアンナ。自らも兵士を相手にしながら、しっかり自由騎士たちの戦いっぷりを見ているようだった。
(んー。この相手じゃ本気出せないし……つまんないな~)
 兵士を適当に相手しながらジョアンナは自由騎士たちを目で追う。
「……やっぱりあの銃がやっかいね」
 岩陰に隠れながらアリアはリズムを刻む。それは輝ける命のリズム。陽の光を目一杯浴びたような内なる躍動。
(よしっ)
 自身の強化を鼓動で感じたアリアは岩陰を飛び出し、敵の放つ銃弾を踊るように掻い潜りながら、一気に兵士の元へ。
「なっ!?」
 ふいに兵士の目の前に立つアリア。僅かに見せた穏やかな表情の次の瞬間──アリアが舞うは優雅なる円舞。その剣の切っ先が描く二連の軌跡は、技を受けた者ですら虜にする魔性のワルツ。アリアの舞をその身に受けし者たちは歓喜の涙(ち)を流し、ゆっくりと意識を失っていく。
(そろそろね……)
 数名の兵士とワルツを踊ったアリア。突然すぅーと距離をとり、深い深呼吸をひとつ。
 ──ダンッ!! 地面を力いっぱい蹴るとコレまでとはまた違うリズムを刻み始める。それは見る者の心をも乱す混惑のリズム。
「う……うわぁぁぁ!?」
「なんだ!? 何をするっ!!」
 突然味方の兵士に切りかかる兵士。アリアの刻むいくつものリズムは着実に場を掌握しつつあった。
「アンタの戦い方、なんだかカッコいいね~」
 アリアに唐突にジョアンナが話しかける。
「(いつのまにっ!?)まぁ、いいわ。ジョアンナさん、止めは刺さないでくださいね」
「ほいほーい。ジョーはあくまで案内人だしー?」

「なんかへん。わざがだせない?」
 リムリィが感じた違和感。それは受けた銃弾によるシール効果によるものだ。
 とするならリムリィは確実に銃弾を受けている。なのになぜ感じるのが違和感だけなのか。その理由は彼女がもつ特殊能力にある。生死に関わるものでなければ極限まで痛覚を遮断する。便利ではあるが、危険でもあるその能力。
「……まぁ、いいけど」
 変わらない。リムリィにとって、それは何も変わらない。目の前の敵を巨大ハンマーで打ち倒す。そもそも技を使おうが、通常の攻撃であろうが、思いっきりぶったたくリムリィには関係が無いのだ。
「ちょ、リムリィちょっと待てっ」
 慌てるように駆け寄ったのはアリスタルフ。すぐにクリアカースで解除を試みる。
「ん……。お、わざがでる」
 リムリィは技が出るのを確認するとすぐに攻撃を再開する。アリスタルフの取り付くしまもない。
「さすがにもう少し自分を大事にした戦い方をしたほうがいいんじゃないか?」
 放って置けないのはアリスタルフの性分だろう。
「ん。だいじょうぶ。いたくない」
「そういう事じゃなく……わかった! 俺も一緒に戦うぞ!」
 アリタルフの標的は遠距離から銃を放ち、リムリィを執拗に狙い続ける兵士。影狼でその懐に瞬時に飛び込み、強烈な一撃を浴びせる。
(くっ……!! さすがに倒しきれないか)
「どいてどいてー!」
 そこにリムリィが巨大なハンマーを振り下ろしながら飛び込んでくる。
「ぐふぉぁーーーっ!?」
 リムリィの鉄槌を脳天に食らった兵士はそのまま気を失う。
「これでひとりたおした」
 むふー、という表情のリムリィ。アリスタルフは改めて実感する。この小柄な少女は単純な攻撃力だけで言えばすでに自由騎士の中でもトップクラスの実力なのだと。

 当初数でこそ劣っていた自由騎士。
 だがそれぞれの特性を生かした立ち振る舞いや、現地で合流した仲間の回復補助もあり、その数の差など一蹴するように次々と兵士達は倒れていく。
「……まだやるのか?」
 アリスタルフがリーダーと思しき男にそう告げた頃には、立っていた兵士は僅か2人であった。


「で、お前達は何をしてたんだ」
 アリスタルフが問うが、当然答えは無い。
「ちょっと失礼するわよ」
 未だ気絶している兵士の懐からごそごそと何かを探すきゐ子。
「あったわよ」
 きゐ子が取り出したのは1冊のメモ。
「それは……っ!!!」
 リーダーと思われる男の表情が変わる。
「何々……え……これって……」
 メモを見るきゐ子が皆を見渡す。
「何が書いてあるの?」
 アリアが後ろからメモを覗く。
「ヴィスマルクはすでに……ここまでの準備をしていたのね」
 愕然とする自由騎士たち。そこに書かれていたのは線路図。すでにシャンバラとの国境を越えたあたりまで線路は延びている。ヴィスマルクは次の一手をすでに国境を越えて打っていたのだ。
「これは……大きな収穫だな。すぐに報告しに戻らねば」

 その帰り道。
「ねぇ、ずっとジョーの事みてたでしょ」
「ふふー。ばれたかー」
 そういうのはカーミラ。
「次会ったら戦うって言葉、忘れてないよね?」
「んー? そうだったっけ? じゃあやる? ちょっと物足りないとおもってたんだー」
 もちろん、と頷くとカーミラが構える。
「え、ちょっとちょっと!」
 こうしてカーミラとジョアンナの第2ラウンドは始まったのであった。
 その結果は──。



†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

国境付近の探索は無事に終了。
この調査内容はすぐに報告されました。

MVPはしっかり見極めた貴方へ。

ご参加ありがとうございました。
FL送付済