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【デザイア!】悲しき奴隷達に救いを




 8月にヘルメルアで行われる一大奴隷マーケット『スレイブマーケット』。
 奴隷協会が主催するギルバークと呼ばれる区域全土を使っての奴隷売買祭りである。
 1か月の間開催されるこの祭りでは観賞用から戦闘用まで様々な奴隷が売買され、ヘルメリアの経済を大きく動かす巨大な祭りとなる。
 当然、警備も厳しく、フリーエンジンは今まで手を出せずにいた。
 しかし、自由騎士の協力を得た今、スレイブマーケットで売買できる奴隷達を助ける事が出来る。
 真正面から攻めるのではなく、攻めては引く電撃作戦。これを繰り返すのだ。
 今ここに、自由騎士のヘルメリア攻略の楔が撃ち込まれる――!

 間近に迫った『スレイブマーケット』。
 その奴隷商人達は腕によりをかけて育てた奴隷達を引き連れて参加する。
「ガハハハ! またこの時がやってきたな!」
「ヒヒヒ、実にこの一時は活気がある……」
 手綱を操って御者台に座るのは、2人の太った中年の男ども。
 彼らは荷台に乗せた戦闘用奴隷4体の販売の為にこのイベントへとやってきた。
「連日、この日の為に調整に調整を重ねて薬物投与を続けたのだ。いい具合に仕上がっておるはずだ、ヒヒ……」
 フー……、フー……。
 アアァ、アアアアァァ……。
 馬車の荷台の中。そこには、薬によって思考を奪われた4人の戦闘用奴隷達が激しく呼吸していたのだった……。


 階差演算室へと集まる自由騎士団所属のオラクル達。
 そこで待っていた『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)の表情は重い。
「みんな、ヘルメリアの『スレイブマーケット』については知っているかな?」
 それは、蒸気発祥の国ヘルメリア王国の特定区にて、この時期に行われる一大マーケット。
 ノウブル以外の人種を奴隷とし、人身売買しているのがこの地の風土であり、当然といった考え方となっている。
 しかしながら、この地の奴隷社会に疑問を抱く自由騎士達は、奴隷達を解放しつつヘルメリアの攻略の糸口にしようとしているのだ。

 今回、水鏡による予測を視たクラウディアが救出を依頼するのは、とある奴隷商人が輸送している戦闘用奴隷達の解放だ。
「白昼堂々彼らを襲い、戦闘用奴隷と交戦して、倒してほしいんだ」
 その上で、奴隷達を連れ去り、解放する。これだけでいい。
 白昼堂々、襲撃を行いたいのには理由もある。
 奴隷の解放を行う者達として、存在のアピール。
 奴隷協会へと壊滅的なダメージを与え、さらに、警備の歯車騎士団の信頼を失墜されることにも繋がる。
 自由騎士としては、一石三鳥とも四鳥とも言える作戦だ。
 なお、ヘルメリアの潜入に当たっては、とりわけ素性がバレることは気にしなくてもよい。ヘルメリア上層部は、自由騎士がすでに死んだものと思い込んでいるからだ。
 また、ノウブル、キジン以外の者達が堂々と行動する際は、ヘルメリアの奴隷の証である黒の首輪を装着することになるので、あらかじめ理解を願いたい。

「こういった作戦が重なることで、きっと大きな騒動を起こすことができるようになるはずだよ」
 奴隷達の救出はもちろんだが、今作戦はこのヘルメリアの奴隷社会を破壊することにも繋がるかもしれない。
 自由騎士達はそれぞれ依頼に意気込みをみせつつ、ヘルメリアへと向かっていくのである。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
なちゅい
■成功条件
1.全ての戦闘用奴隷の戦闘不能。
 初めましての方も、どこかでお会いした事のある方もこんにちは。
 STのなちゅいと申します。

●このシナリオについて
「この共通タグ【デザイア!】依頼は、連動イベントのものになります。この依頼の成功数により八月末に行われる【デザイア!】決戦の状況が変化します。成功数が多いほど、状況が有利になっていきます」

●敵
 以下、6体との交戦です。
 よほど手を抜いた戦いをして、戦闘を長引かせなければ、歯車騎士団が駆け付けるまでには片が付くと思われます。

◎奴隷商人×2
 たるんだ腹のノウブル40代男性達。
 鞭をもって攻撃してきますが、大した敵ではありません。

◎戦闘用奴隷×4
 戦闘用に調教された奴隷です。
 薬物で強化されていて自我を失っており、非常に危険な相手です。
 戦闘不能にすることで、彼らは自我を取り戻します。

〇軽戦士×1 20代ソラビト男性、長剣を所持。
 ヒートアクセル(ピヨ)、トリロジーストライク(三連)

〇重戦士×1 30代マザリモノ男性。大斧を所持。
 オーバーブラスト(ノックB)、ライジングスマッシュ(ウィーク2、スクラッチ1)

〇格闘家×1 20代ケモノビト女性。ナックルを装着。
 震撃(グラビティ1)、旋風腿(二連)

〇魔導士×1 10代ミズヒト女性。ロッドを所持。
 緋文字(バーン1)、コキュートス(カース1、フリーズ2)

●状況
 ヘルメリアに隠密潜入し、公道を馬車で移動している奴隷商人達を強襲してください。
 白昼堂々の襲撃となりますが、荒事とあってヘルメリアの民は巻き込まれるのを嫌って誰も近づいては来ません。
 奴隷商人としては自衛も兼ねた奴隷達ですが、奴隷が目的だとは思っていない様子です。
 手早く奴隷達を無力化、歯車騎士団が駆けつける前にその場から彼らを連れ去り、奴隷達を商人から解放していただければと思います。

 それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
8モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
5日
参加人数
6/8
公開日
2019年09月02日

†メイン参加者 6人†




 8月、ヘルメリアのギルバークで行われる『スレイブマーケット』。
 そこで行われる祭りには多数の人々が参加しており、歯車騎士団があちらこちらで目を光らせている。
 しかし、彼らも全ての場所を網羅できるほど万能ではない。
 水鏡による予測もあって、とある奴隷商人達が強化奴隷達を運搬しているところを襲撃すべく、自由騎士団所属のオラクル達はフリーエンジンに扮して待機する。
「事前にその馬車が通る公道のルートと時間も聞いておいたし、待ち伏せの準備も万全だね」
 長い赤髪と非常にスタイルの良い体つきのノウブル女性、『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は民衆に紛れて、その時を待つ。
 予見された時間はもう間もなく。
 茶色の短髪、純情可憐なノウブル少女、『死人の声に寄り添う者』アリア・セレスティ(CL3000222) もまた群衆に紛れて待機している。
 そのアリアの近くには、軍馬アルビレオが控えていた。離脱の際に呼ぶことができるようにと、彼女は配慮していたのだ。
「こう、今までは潜入したり奇襲したりが主だった行動だったのに、白昼堂々襲え、と来るとはな」
 今回のチームで唯一の男性、青い短髪で左半身のほぼ全てを蒸気鎧装としたキジンの青年、『殲滅弾頭』ザルク・ミステル(CL3000067)は今回の状況について考える。
 人々の目につく往来での活動となるわけだが、襲われるのはマーケットや奴隷を売買している現場だけじゃないと、示威することになる。
「まあ、奴隷商人どもへの牽制にもなるし、場所関係なく襲われるって事への前例にもなるか」
 商人達の警戒態勢や歯車騎士団の警戒も強まるかもしれないが、少なくとも今回は相手の虚を突くことはできそうだとザルクも判断していた。
「奴隷。昔はイ・ラプセルにもいたんですよね……」
 ピンクの髪のケモノビト少女、『新米自由騎士』リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560) は僅かに顔を伏せる。
 その首には、黒い首輪が装着されている。ヘルメリアの奴隷の証だ。
 いくら作戦だからとはいえ、そんなものをつけている状態で気分がいいはずもない。
「なぜ、人が人に差をつけてるんだろう。ほんとはみんな同じはずなのに……」
 気を取り直し、早く奴隷となった人々を解放してあげなければと、リリアナは拳に力を籠める。
「奴隷制度がある事には何も言いません……大事なのは、その奴隷をどう扱うかなのです……」
 同じく、黒い首輪をつけたケモノビト。
 金色の毛と体毛の『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は、表面上はそれを受け入れているようにも見えるが……。
「故に、故に私はその奴隷商人達が玩具の様に扱い、酷い仕打ちをし、要らなくなれば使い捨てる事が許せません」
 人であるはずの相手に、人ならざる扱いを行う者達に対する憤りを見せていた。
 さて、その奴隷達をすぐに解放したくとも、抵抗する彼らを正気にさせる方が大変な状況にある。
「薬物の投与、戦うためだけに生かされる奴隷なんて……そんなこと、見過ごせないわ!」
 だからこそ、エルシーもこの依頼を引き受けることにしたのだろう。
「必ず救出して、かの者達のヒトとしての自由と尊厳を取り戻す!」
 そのエルシーの気概に、長い茶髪を大きな2組の編み込みにしたキジンの女性、『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227) も同意する。
 彼女もやはり、ヘルメリアの奴隷制度には色々と言いたいことがあったようだが。
「とりあえず、今は目の前の仕事をばっちりこなして、1人でも多く奴隷になっている人らを解放してやらんとな」
 その時、アリアが反応を示す。
(来ましたね……)
 通りの向こうからやってくる馬車。
 御者台に座っているのは、水鏡に映っていた小太りの奴隷商人達だ。
「参りましょう。私達の正義を示す為に」
 アンジェリカの言葉に頷いた自由騎士達は、奴隷達を解放すべく作戦を実行に移すのである。


 やってくる馬車が近づくのを待つメンバー達だが、先んじてアリアが仕掛ける。
 細かい打ち合わせを行っていなかったのか、自由騎士のメンバー達ですら驚く。
 その視線を浴びながらも、アリアは敵の進行方向に合わせるようにして空中を2段ジャンプしつつ、通りの両サイドにある家々の壁や屋根を足場として全力疾走していく。
 ある程度、馬車との距離を詰めたところで、アリアは両手に青と翠の双剣を握り、御者台の奴隷商人達目がけて星の瞬きの如き剣閃を繰り出す。
「おわあああっ!!」
 それに腹を裂かれた商人が血を撒き散らして叫び、御者台から転げ落ちる。
「きゃあああああああっ!!」
 周囲からは住人の叫び声も聞こえてくるが、アリアは構わず馬車へと飛び乗って。
「ごきげんよう、奴隷商人さん」
 そうして、挨拶した彼女はすぐに2頭いる馬の方へと飛び乗り、荷車と馬の接続を刃で断ち切っていく。
「ヒヒーン!!」
「皆、一旦、頼んだよ」
 アリアはそのまま驚いて走る馬に乗って離れ、この場を駆けつける仲間達へと任せる形だ。
「強襲する間もなかったわね」
 流れるような動きで馬車の動きを止めたアリアに、エルシーは舌を巻く。
 軍馬「黒弾」で駆け付けたエルシーは自らのリーチも考え、馬から降りて馬車へと近づいていった。
 周囲の住民達は巻き込まれるのを恐れ、近づいてはこない。
 それを見ながら、ザルクはオーディオエフェクトの効果で周囲に響く音量を抑え、剣戟など戦闘音が周囲へと響かないようにする。
「これで歯車騎士団が来るのをより遅れさせられるだろ、多分な」
 ザルクが騒ぎを大きくしないよう配慮したとはいえ、手早く片を付けて奴隷達を無力化したい状況には変わらない。
 アンジェリカも巨大な「断罪と救済の十字架」を傷つく商人へと叩きつけて卒倒させ、もう1人の商人へと告げる。
「貴方に恨みはありませんが! とりあえず、奴隷は解放させて頂きますよ!」
 アンジェリカが声高らかに奴隷商人達へと叫ぶ。
 ケモノビトの彼女がノウブル達に告げるその状況に、ヘルメリアの人々は驚き、唖然としてしまっている。
「我ら自由……ではなく、フリーエンジンの名に賭けて!」
「ど、奴隷ども、こいつらを1人残らず倒してしまえ!」
 商人が叫ぶと、荷車の中にいた戦闘用奴隷達が降りてきた。
 フー……、フー……。
 アアァ、アアアアァァ……。
 正気を失い、激しく息つく奴隷達は商人の命令のまま、自由騎士達を狙ってくる。
「しかし、酷いもんだ。本当に自我とかそういうものが感じられねえ」
 この国出身のザルクはよく目にする戦闘奴隷について、昔は疑問にも思わなかったとのこと。
 しかし、一度国を離れたことで、如何にそうした扱いが醜悪なものかと彼も思い知っていたようである。
「自我なくなっとるほど強化されてるんやな。気を抜かんと、はよう戦闘不能にして離脱せんとな!」
 アリシアはリズミカルに跳ね踊って、自らの力を高めて。
「うちは準備OKやで。いつでもええで」
 すでに、リリアナは彼らに対してエネミースキャンを試み、その能力の把握に努めている。
「さぁ! 懺悔の時間です!!」
 アンジェリカもまた大剣に持ち替え、応戦してくる戦闘用奴隷達へと立ち向かっていくのである。


 自由騎士と戦闘用奴隷がぶつかり始める中、街中で馬を走らせていたアリアは手綱を引いてようやく反転する。
(馬さんは……あとで力を貸して貰おうかな)
 戦場が近づいたことで減速させ、下馬した彼女は戦線に加わるべく街中を駆けていく。

 他メンバー達は4人の戦闘用奴隷達の無力化に当たる。
 呼吸を整えるアンジェリカは布陣を組む戦闘用奴隷達の前線に立つ。
「出し惜しみはしませんよ!」
 彼女が狙うは、重戦士のマザリモノ男性。
 ウオオオオオッ!!
 大斧で地面を叩きつけてきた相手の衝撃波を浴びながらも、アンジェリカは「贖罪と解放の大剣」による3連撃を繰り出す。
 そのスキルを使える回数は決して多くはないが、それでも、一気に相手を倒す為にと、彼女は最初から全力で攻撃を仕掛けていく。
 こちらも前に出るエルシーは独特の構えで、同じく重戦士の打倒を目指す。
 ウウッ、アアアアアッ!!
 近づいてくるケモノビトの女格闘家の攻撃をいなしながらも、エルシーは「古き紅竜の籠手」を装着した両腕で攻撃を仕掛けていく。
 熱くも優雅なる殺戮円舞曲のリズムに乗る彼女は、3体いる相手前衛陣を強く殴りつけていく。
 アリシアもまた同じリズムに乗って向かい来る戦闘用奴隷達を相手取り、「ブレイドセイヴァー」で切りかかる。
 アアッ、アアッ、アアアアアアッ!!
 ソラビトである軽戦士男性もアリシアへと3連続で切りかかってくるが、アリシアは軽やかなステップで避けていき、次なる自らの攻撃の為に体勢を整え直す。
 ザルクはというと、仲間達が前線を抑えてくれている間に、後方のミズヒト、女魔導士の持つ杖を狙って「CWTスペシャル」の引き金を引く。
 ピンポイントで狙ったザルクの一撃。
 杖に弾丸を埋め込まれた魔導士だったが、薬の影響で呻きながらも水のマナによって前線のメンバーを狙う。
 そのリリアナは体だけでなく、魂までも凍り付かせられそうになりながらも、戦闘用奴隷達を続けていて。
「エネミースキャン完了……ですっ」
 彼女はスキルによって遺伝子レベルで体を加速させ、後衛の魔導士まで踏み込んでいき、「グラディウス」を手に切りかかっていく。
 そこに、戻ってきたアリア。
 手練れの仲間達はさすがうまくやってくれていると頷いた彼女は、奴隷達の後ろ側へと回り込む。
「おのれ、フリーエンジンめ……!」
 こちらの素性を言葉通りに受け取っていた奴隷商人は鞭を手にして、応戦の構えをとる。
 しかし、アリアが自らの速度を攻撃に転化して2度ほど切りかかると、商人はあっさり泡を吹いて崩れ落ちていったのだった。


 薬によって強化された戦闘用奴隷達の力はかなりのもの。
 エルシー、アンジェリカ、アリシアが重戦士、軽戦士、格闘家を直接抑えに当たりつつ、全力で倒しにかかる。
 そんな中、リリアナは敵陣へと踏み込んで魔導士へと攻撃していた。
 ウ、ウア、アアッ……。
 相手が発する火のマナによって、空中に描かれた「別れ」の文字。
 そこから飛んでくる炎で身を焦がしながらも、彼女は切りかかっていく。
 魔導士が自らを強化する様子はない。
 奴隷とさせられたその女性はかなり威力の高い魔法を使うが、それでも単体しか攻撃を行わないことを考えれば、まだ楽な相手だと言えた。
 そんな相手の膝、肘といった関節部を、ザルクは狙い撃って援護する。
 合わせ、リリアナも刃を振るって少しずつ相手を追い込む。
 彼女が繰り出す一閃に続き、ザルクが弾丸を2連射し、楔とした1発目に重ねるようにして、2発目を撃ち抜く。
 ア、アアッ……。
 よろけ、崩れ落ちる魔導士はようやく、表情を和らげていたようだ。
 倒れた魔導士は、アリシアがすかさず仲間達の方へと寄せ、この後連れ去りやすい状況を作っていく。
 1体倒し、アリシアが一息ついたのも束の間のこと。
 ウオオオオオオオオッ!!
 突如として、重戦士がリリアナ目がけて大斧を振り下ろしてくる。
 幾度か、魔法をその身に受けていたリリアナ。
 自らを巨大な弾丸として特攻してきた相手の攻撃。
 それを彼女はまともに受けてしまい、昏倒してしまう。
 フラグメンツに頼ることもなかったリリアナが起き上がる様子はない。
 そんな火力もあって危険な重戦士の牽制に、アリアが速度を生かして斬撃を浴びせかけると、エルシーが重戦士の挙動を見極めつつ、相手前線へと再度リズミカルに殴り掛かっていく。
 エルシーの拳を腹へと受け、重戦士が白目を向いて倒れてしまう。
 相手の数が減ってくれば、自由騎士達も攻勢を強めて。
 灼熱の弾幕を奴隷達全てに浴びせかけ、その体力を削っていくザルク。
 相手が減ったことで、その狙いを軽戦士へと移していたアンジェリカだったが、全力を出していたことで気力も尽きかけていて。
「まだ、これからです……!」
 攻撃手段を変え、アンジェリカは最高速の斬撃を繰り出す軽戦士目がけ、気合を込めて大剣を振り下ろす。
 手ごたえは十分。
 アンジェリカの刃をまともに食らい、軽戦士もまた前のめりに崩れ落ちていった。

 ハアッ、アアアアアッ!!
 女格闘家は薬によって強化された力を抑えられず、連続の回し蹴りを繰り出してくるが、エルシーとしては同じ格闘タイプの相手。
 確かに強力な連撃ではあるが、その威力をできるだけ受け流し、2撃目の直後の大きな隙を見定めて。
「ここよ!」
 一点集束させた正拳での一撃。
 それによって体制を崩す格闘家へと、アリシアが攻め入って。
「仕舞いや、堪忍な!」
 アリアと同じく、アリシアもまた自らの速度を攻撃力に転化し、ブレイドセイヴァーを一閃させる。
 峰打ちではあったが、相手を仕留めるには十分。
 ア、アゥゥ……。
 女格闘家も意識を失い、重い音を立てて地面に伏せてしまったのだった。


 全ての戦闘用奴隷達を倒した自由騎士達は素早く、離脱へと転じて。
「歯車騎士団来る前に撤退だ、急ごう」
 軽戦士を担ぐザルク。
 アリアが先程乗っていた馬の片方のみドライブテクニカのスキルを持つアンジェリカが担当し、魔導士と共に騎乗する。
 また、アリアは自らの軍馬アルビレオに倒れたリリアナを乗せ、自身は下馬して移動するようだ。
 離脱のタイミングになって、メンバー達が倒した奴隷達が徐々に目覚め始めて。
「こ、ここは……?」
「私達はフリーエンジンよ、きいたことない?」
 自我を取り戻した重戦士の男性を自らの軍馬に乗せ、エルシーが言葉を返す。
「悪いようにはしないから、一緒についてきて」
「あ、ああ……」
 奴隷達が拒否しないのを見て、エルシーは離脱の準備を進める。
 アリシアも抱えていた格闘家の女性が目覚めたのに気付く。
「あれ、あたし……?」
「うんうん、よかった。うちらは奴隷になってる人らを自由にするために動いてるんや」
 正気を取り戻したその女性は、キジンのアリシアに少し恐れを抱いていたようだったが。
「今はまた捕まらんように上手いこと隠れて、どっかで過ごしてくれると嬉しいわ」
「…………」
 アリシアは怖がらないよう告げ、この場から離れるよう告げると、彼女も小さく頷いていた。
「まずは俺達、キジンやノウブルが敵じゃないことを教えなきゃならないな」
 ザルクは先に駆け出しつつ、まだ目覚めぬ軽戦士を見つめて。
 奴隷達が自由になれると認識させるのにも、時間を要することだろう。
 そうした行いはザルクにとって、この国に対する意趣返しでもあるようだ。
「準備はいい? 一気に離脱するよ!」
「奴隷の皆さんの解放。完了……ですっ」
 仲間達へと呼び掛けたアリアが走り出すと、馬に乗せられたリリアナが気付き、状況を確認して返答した。
 エルシーは地面で伸びたままの奴隷商人を見下ろし、さすがに情報を引き出す時間はなさそうだと考えながらも、自らの軍馬を走らせる。
「商人さん……これに懲りたら、悔い改めて下さいね」
 アンジェリカもウインクしてそう告げてから、その商人の馬を走らせてこの区画を離れていったのだった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『街のスカイダンサー』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)

†あとがき†

『あとがき』
リプレイ、公開です。
MVPは商人から馬を奪って
この場から速やかに立ち去る戦法をとったあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!
FL送付済