MagiaSteam




竜が眠る場所

●
今日は、古の飛竜に纏わる童話を一つご紹介しよう。
昔々あるところに、一匹の年老いた飛竜がいました。
彼はかつては勇敢に戦場を駆けた竜戦士でしたが、今はもう引退して、人里−−竜里離れた田舎の山奥で静かに暮らしていました。
彼が隠居している間に、戦争は変わりました。飛竜の進化は日進月歩。今や彼の五分の一にも満たない年齢の若い飛竜が、彼の何倍も早く飛び、彼の何倍も硬い鱗で身を守っていました。もうわしの時代は終わった、と彼は穏やかな気持ちで、でも少しだけ寂しく、そう思っていました。
そんなある日、彼の元に一人の−−一匹の軍使がやって来ました。曰く−−戦況は思わしくない。このままでは我が国は負けるかもしれない。戦力が足りない。ついては、貴方にもう一度飛んでほしい。もう頼れるのは貴方しかいない。
彼はこの頼みを引き受けました。故郷の雌子供が不安がっているのを、後輩の竜戦士達が苦しんでいるのを放っておけなかったのです。しかし、今や彼は年老いたジジイ。彼より遥かに進化を遂げた若く勇敢な現代の竜戦士に敵うわけがありません。彼は敗北し、きっと死んでしまうでしょう。彼は自分の生涯を戦場で終えることを決めました。
そして、終の住処になるはずだった巣を片付け、戦地へと飛び立っていったのです−−
結論から言うと、彼は大戦果を上げて戻って来ました。いくらか負傷していましたが、それも「戦場に出たらこのぐらいは当たり前だ」とどこ吹く風です。
何故なのでしょうか? 普通に考えたら、とても敵う相手ではありません。技術と経験? それもありますが、それだけで埋まるようなディスアドバンテージではありません。そこにはもっと根本的で、意外な理由があったのです。
彼と戦った敵国の若い竜戦士達は、後にこう語りました。
「遅すぎて当たらねえ。つか狙えねえ。あっという間にこっちが追い抜いちまって、気がついたら後ろから撃たれてる」
「減速しろ? あのジジイに速度合わせたらこっちは鱗が重くて失速しちまうんだよ。実際それで二匹落ちた。しかも一匹は首やって死んだ」
「開き直って地上から狙っても無理だった。あんまり遅すぎて撃った火球が失速するか途中で炸裂する。向こうはそれを翼に受けてさらに高度を稼ぐ始末だ」
「それでも一回は落としたんだよ。うちのエースが自殺覚悟の急降下攻撃で、ジジイの翼に風穴開けてな。でも、なんか−−すぐ戻って来たんだよ。翼に布かなんか縫いつけて、普通に飛んでやがった」
「俺達は翼をやられたら飛べない。布なんか縫いつけても自重が重すぎて吹き飛ぶだけだ。でもあのジジイは布でいいんだよ。遅いくせに鱗は軽い、ガリガリジジイだから」
彼の活躍で戦局は盛り返し、やがて戦争は終わりました。彼はたっぷりと恩給をもらって古巣へと帰っていきましたが、彼には家族がいなかったので、その遺産を受け取る者はいなかったそうです。
今は語る者もいない、遠い遠い昔のお話−−
●
「西の山中、テモゾーア谷の洞窟に、最近凶暴な幻想種、地竜が住み着いたそうだ。行って退治してきてくれ」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は、自由騎士達に今回の依頼内容を説明した。「地竜−−ドラゴンですか?」
「いや、お前達が想像してるのとは少し違う。羽の退化した陸生型の竜。ローグラプトルだ。動きが素早く性格は凶暴、とどめに肉食。近隣のテモゾーア村から討伐依頼が届いた。行ってやってくれ」
「洞窟に住み着いてる?」
「ああ。場合によっては内部の探索も必要かもしれん。視界が悪いだろうからその準備もしておいてくれ。洞窟には人の手は入っていない。何が起きても冷静にな」
「人の手が入っていないって?」
「険しい山の中だからな。そもそもわざわざ行く必要も無い。それに、ちょっとした昔話があって、誰も近寄ろうとはしないのさ。祟りがあるって言ってな」
「昔話−−?」
「聞いていくか? まあ実話かどうかは限りなく微妙だが、俺も聞いたことがあるぞ。軍人としても興味深い話だ。ええと、昔々−−」
ふりだしに戻る。
今日は、古の飛竜に纏わる童話を一つご紹介しよう。
昔々あるところに、一匹の年老いた飛竜がいました。
彼はかつては勇敢に戦場を駆けた竜戦士でしたが、今はもう引退して、人里−−竜里離れた田舎の山奥で静かに暮らしていました。
彼が隠居している間に、戦争は変わりました。飛竜の進化は日進月歩。今や彼の五分の一にも満たない年齢の若い飛竜が、彼の何倍も早く飛び、彼の何倍も硬い鱗で身を守っていました。もうわしの時代は終わった、と彼は穏やかな気持ちで、でも少しだけ寂しく、そう思っていました。
そんなある日、彼の元に一人の−−一匹の軍使がやって来ました。曰く−−戦況は思わしくない。このままでは我が国は負けるかもしれない。戦力が足りない。ついては、貴方にもう一度飛んでほしい。もう頼れるのは貴方しかいない。
彼はこの頼みを引き受けました。故郷の雌子供が不安がっているのを、後輩の竜戦士達が苦しんでいるのを放っておけなかったのです。しかし、今や彼は年老いたジジイ。彼より遥かに進化を遂げた若く勇敢な現代の竜戦士に敵うわけがありません。彼は敗北し、きっと死んでしまうでしょう。彼は自分の生涯を戦場で終えることを決めました。
そして、終の住処になるはずだった巣を片付け、戦地へと飛び立っていったのです−−
結論から言うと、彼は大戦果を上げて戻って来ました。いくらか負傷していましたが、それも「戦場に出たらこのぐらいは当たり前だ」とどこ吹く風です。
何故なのでしょうか? 普通に考えたら、とても敵う相手ではありません。技術と経験? それもありますが、それだけで埋まるようなディスアドバンテージではありません。そこにはもっと根本的で、意外な理由があったのです。
彼と戦った敵国の若い竜戦士達は、後にこう語りました。
「遅すぎて当たらねえ。つか狙えねえ。あっという間にこっちが追い抜いちまって、気がついたら後ろから撃たれてる」
「減速しろ? あのジジイに速度合わせたらこっちは鱗が重くて失速しちまうんだよ。実際それで二匹落ちた。しかも一匹は首やって死んだ」
「開き直って地上から狙っても無理だった。あんまり遅すぎて撃った火球が失速するか途中で炸裂する。向こうはそれを翼に受けてさらに高度を稼ぐ始末だ」
「それでも一回は落としたんだよ。うちのエースが自殺覚悟の急降下攻撃で、ジジイの翼に風穴開けてな。でも、なんか−−すぐ戻って来たんだよ。翼に布かなんか縫いつけて、普通に飛んでやがった」
「俺達は翼をやられたら飛べない。布なんか縫いつけても自重が重すぎて吹き飛ぶだけだ。でもあのジジイは布でいいんだよ。遅いくせに鱗は軽い、ガリガリジジイだから」
彼の活躍で戦局は盛り返し、やがて戦争は終わりました。彼はたっぷりと恩給をもらって古巣へと帰っていきましたが、彼には家族がいなかったので、その遺産を受け取る者はいなかったそうです。
今は語る者もいない、遠い遠い昔のお話−−
●
「西の山中、テモゾーア谷の洞窟に、最近凶暴な幻想種、地竜が住み着いたそうだ。行って退治してきてくれ」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は、自由騎士達に今回の依頼内容を説明した。「地竜−−ドラゴンですか?」
「いや、お前達が想像してるのとは少し違う。羽の退化した陸生型の竜。ローグラプトルだ。動きが素早く性格は凶暴、とどめに肉食。近隣のテモゾーア村から討伐依頼が届いた。行ってやってくれ」
「洞窟に住み着いてる?」
「ああ。場合によっては内部の探索も必要かもしれん。視界が悪いだろうからその準備もしておいてくれ。洞窟には人の手は入っていない。何が起きても冷静にな」
「人の手が入っていないって?」
「険しい山の中だからな。そもそもわざわざ行く必要も無い。それに、ちょっとした昔話があって、誰も近寄ろうとはしないのさ。祟りがあるって言ってな」
「昔話−−?」
「聞いていくか? まあ実話かどうかは限りなく微妙だが、俺も聞いたことがあるぞ。軍人としても興味深い話だ。ええと、昔々−−」
ふりだしに戻る。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.敵の全滅
皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
テモゾーア洞窟に現れた地竜の討伐シナリオです。敵の全滅が成功条件となります。
敵キャラクターのご紹介です。
・タイラントラプトル ×1
ローグラプトルの親玉。全高10m。体力、攻撃力、スピードの全てが高レベルな強敵。
・ローグラプトル ×15
テモゾーア洞窟に住み着いた地竜。動きが素早く鋭い爪と牙を武器とする。夜目が利き、暗闇でも難なく活動可能。
内外いずれも障害物は無く、洞窟の天井も十分な高さがあります。視界さえ確保すれば行動には不自由しないでしょう。−−ただし、条件は敵も同じです。
ラプトルを全滅させれば依頼は成功ですが、余裕があれば宝を探してみるのもいいかもしれません。「どこを探すか」よりは「それが誰の宝かを考え、そこにどうやって辿り着くか」を考えたほうがいいかもしれません。本筋が疎かにならないように、程々に楽しんでみてください。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
テモゾーア洞窟に現れた地竜の討伐シナリオです。敵の全滅が成功条件となります。
敵キャラクターのご紹介です。
・タイラントラプトル ×1
ローグラプトルの親玉。全高10m。体力、攻撃力、スピードの全てが高レベルな強敵。
・ローグラプトル ×15
テモゾーア洞窟に住み着いた地竜。動きが素早く鋭い爪と牙を武器とする。夜目が利き、暗闇でも難なく活動可能。
内外いずれも障害物は無く、洞窟の天井も十分な高さがあります。視界さえ確保すれば行動には不自由しないでしょう。−−ただし、条件は敵も同じです。
ラプトルを全滅させれば依頼は成功ですが、余裕があれば宝を探してみるのもいいかもしれません。「どこを探すか」よりは「それが誰の宝かを考え、そこにどうやって辿り着くか」を考えたほうがいいかもしれません。本筋が疎かにならないように、程々に楽しんでみてください。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
完了
報酬マテリア
7個
3個
3個
3個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
10/10
10/10
公開日
2018年12月04日
2018年12月04日
†メイン参加者 10人†
●
依頼を受けた自由騎士達は、テモゾーア山中を件の洞窟に向かって歩いていた。
「この手の昔話は真偽以前に、語り継がれる目的は得てして教訓を授ける為でもあります。今回の場合『経験豊富な年寄りを尊敬せよ』という意図が暗にあるわけですね」
『逢瀬切』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)は歩きながらそう語る。「そんな教訓はさ抜きにして見ても、実に興味深い話です。私の目指す領域に踏み込んでいるような話なので」
「飛竜の宝か。まぁアタシ達ヒトが宝と思える物とは限らないだろうけど。……というか、奥に行ったら飛竜の骨が残っていたりしてね」
『聖母殺し』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)はそう言った。宝については半信半疑のようである。「どのみちまずはラプトルを全撃破するのが先決。宝探しは余裕があればでいいと思うわ。どうしてもしたいなら止めないけど、余力のあるヒーラーからある程度回復してもらってからにしなさいな」
「凶暴な地竜がたくさん……うぅ、正直、結構怖いのですが」
『学びの結晶』フーリィン・アルカナム(CL3000403)はやや萎縮しつつも、側を歩く二人を見た。
「お宝も気になるけど私は地竜退治が楽しみ! 10mとか超でっかいよね! ドラゴンスレイヤーになるための第一歩だ!」
「成功したらドラゴンスレイヤーってわけね! ……今回はラプトルスレイヤーかな?」
『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)と『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はむしろ愉しげにそう言いながら歩いている。「……勝つ気満々なんですねー……」フーリィンは呟き、微かに笑った。
「竜の宝か。小さいころは噂に心を躍らせ、大冒険の末にお宝を見つける夢を見たもんだな。それが叶うって言うなら嬉しいもんだが……世の中、そう甘くは無いってのも身に染みてるんだよなぁ」
『1000億GP欲しい』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)はしみじみとそう語った。台詞はシニカルだが、隠し切れない夢が称号に滲み出ている。
「軽い飛竜……慈悲の祈りを修復する素材に出来たりしないかな?」
『安らぎへの導き手』アリア・セレスティ(CL3000222)は歩きながら呟いた。折れた短剣の代わりに、今回は逆の手に鞭を装備しての参戦である。−−これはこれで、絵面としては悪くない。ややマニアックだが。
「女神の国に巣食う害獣めはこの竜殺しの剣の名の下に排除してくれよう。当然そこに眠る宝とやらも女神の物」
『執行者』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)はそう宣言した。(しかし……逸話を聞く限りではその飛竜はまるで飛空艇のよう。もしや此処は格納庫で、遺物もその関連なのでは?)
「宝ですか……年老いた飛竜の宝なんですかね? そちらも気になりますが、地竜が住み着いた理由も気になりますね……好む餌でもあったか、はたまた何かを守っているか……」
『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)は思案しながらそう呟いた。「まあ、考えていてもしょうがないですね。内部の探索を進めていけばはっきりするでしょう。凶暴な竜のようですし、慎重に行きたいですね」
「竜が相手ともなれば一筋縄ではいかないだろう。それでも僕は拳を振るうよ。テモゾーア村の方々を、国民を生活を守るのが僕達騎士の務めだからね」
『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)はそう言った。ブレない。たとえ凶悪な地竜が相手であろうと中に莫大な宝が眠っていようと、彼のやることは常に変わらない。
やがて、岩場の奥に件の洞窟が見えてきた。大きい。直径ゆうに20mは下らない。彼等はカンテラに火を灯し、慎重に奥へと進んだ。
●
洞窟に入ってからほどなくして、暗闇の向こうから獰猛な唸りが聞こえてきた。それに加えて奥の方からもずしん、と大きな足音のようなものが聞こえてくる。自由騎士達は身構えた。
「見える……仕掛けるわ」
ライカが手近のローグラプトルに踏み込んだ。ラピッドジーン。超直感。リュンケウスの瞳。ヒートアクセル。スピードに乗ったライカの拳がローグを捉えた。ブレードアタッチメント展開。命中。ローグが鮮血と悲鳴をあげる。反撃。ライカは紙一重で躱した。「速い……けど、怖くはないわね」
「私は後衛の護衛につきます。フーリィンさん、よろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそ!」
アリアは攻撃には参加せず、フーリィンの傍に占位した。
(動く疾さと躱す疾さは似て非なるモノ……古の飛竜の伝説の一節ははまさに後者の体現)
続いてカスカが動いた。暗視。ラピッドジーン。ローグの群れに向かって前進する。
(初手は先制。集中攻撃は覚悟の上。一匹でも多く敵を捕捉し−−!)
鞍馬念流・円空閃。斬波の台風が敵陣を斬り裂く。反撃。近くにいた三体がカスカに襲いかかる。
(柳凪で揺らいで受け流す……これでは所詮似非止まり。飛竜の伝説こそが絶対回避の絶技への光明。相手に速度で勝ることより、速度の落差こそが肝要。物理も、魔導も、異常すらも……受けずに流せ!動かず躱せ!)
カスカは最小限の動きで敵の攻撃を捌いた。しかし、完全にとはいかない。二発は躱し、一発は食らった。「っ……是非もなし、流せ、己の心までも……」
「まずは雑魚を各個撃破にしましょうか」
エルシーがライカと同じローグを狙って踏み込んだ。デュアルストライク。エルシーの連拳を受けて傷ついたローグは堪らず倒れた。一体撃破。
「……!」
ナイトオウルの沓から黒翼が生え、飛翔する。ローグの群れを飛び越えて真っ直ぐに飛び−−やがてそれは現れた。全高15mはあろうかという巨大な−−恐竜。「Nn……!」攻撃。ナイトオウルの大剣がタイラントラプトルの頭部に振り下ろされる。タイラントは軽く首を捻り、直撃を避ける。大剣はタイラントの目元を斬り裂くに終わった。反撃。タイラントのヘッドバットがナイトオウルを打ち据える。柳凪。防御。空中減算。ナイトオウルは衝撃で吹き飛ばされ、洞窟の壁面に叩きつけられる。「Nm……!?」
「まずはローグラプトルの数を減らさなきゃね!」
カーミラがローグの群れへと前進する。鉄山靠。二体のローグがカーミラの攻撃で吹き飛んだ。反撃。ローグの一体が飛びかかる。柳凪。被弾するが、カーミラはガントレットで直撃を防いだ。「このくらいなら、まだいけるよ!」
「全弾発射といくか! サテライトエイム・アクティベート! くらえぇぇぇぇーっ!」
バレッジファイヤ。ウェルスの放った無数の銃弾がローグの群れに襲いかかる。カーミラの攻撃を受けていた一体が倒れた。二体目。
「ええと、それなら−−ハーベストレインですー」
フーリィンのハーベストレインが被弾した味方の傷を癒した。「どうも」「感謝致します」「ありがとー!」
「今のところは良さそうですね……炎よ」
マリアは戦況を見て攻撃を選択した。緋文字。炎弾がローグの一体を狙う。命中。ローグは炎に巻かれ、しかし地面を転がって火を消した。敵意を込めた眼でマリアを睨む。
「−−僕はアダム・クランプトン! 地竜達よ、民の平安の為、その命貰い受ける!」
アダムが名乗りを上げ、地竜達がそちらを見る。敵が動く。五体のローグがアダムに向かった。攻撃はいずれも命中。柳凪。全力防御。「ぐっ……この程度ならば……!」アダムは辛うじて耐えるが、ダメージは小さくない。
次に四体がライカを取り囲んだ。ライカは立て続けの攻撃を三発は避け、しかし一発は食らう。「っ……あと一発耐えられる……? あるいは……!」傷を庇いながらも反撃する。ライカの拳はいずれも命中し、ローグに十分なダメージを与えた。−−先の戦闘での傷が癒えきっていない。それでもライカの速度ならば切り抜けられる可能性はある。しかし−−ここから先は運試しだ。
次に四体がカーミラを取り囲んだ。カーミラは敵の攻撃を一発は避け、三発は食らう。「っ……久しぶりに、ヒリヒリするかも……!」傷を負いながらも反撃する。震撃。いずれも命中。グラビティ。ローグは小さくない傷を負い、その動きが鈍る。
タイラントラプトルはナイトオウルを狙った。顎を開き、壁に叩きつけられたナイトオウルに食らいつく。「Gnn……!」反撃。大剣をタイラントの口腔に突き立てて隙を作り、離脱する。タイラントは口から血を流しながら、怒りと狂喜が混じった眼でナイトオウルを見据えた。
「どこまで行けるかな−−さあ、行くわよ! 私に敵うか試してみよう!」
ヒートアクセル。命中。ライカを囲んだローグの一体が倒れた。三体目を撃破。
(兵は時に詭道。馬を射んと欲すれば−−将を討つ!)
カスカは前進し、タイラントを狙った。トリロジーストライク。命中。足を斬られたタイラントはバランスを崩すが、なおも反撃する。命中。巨大な爪を備えた蹴りがカスカを打ち据えた。「っ……風を読め、痛みを嗅ぎ、敵意を味わえ……!」
「カーミラ! 道を開けるわ!」
エルシーがカーミラを囲んだローグの一体を狙った。デュアルストライク。命中。四体目のローグが倒れた。
「Guu……!」
ナイトオウルが再びタイラントに斬りかかる。命中。鼻先を斬りつけられ、タイラントは咆哮をあげる。反撃。ヘッドバットが再びナイトオウルを打ち据えた。「Uuu……!」
「アダムも大変そーだね! というわけで鉄山靠ぉー!」
カーミラの鉄山靠が自身とアダムを囲むローグ二体を吹き飛ばし、一体が動かなくなった。ここまでで五体撃破。
「回復は任せたぜ、お嬢達! −−ここ押し切らねえと、誰かやられる!」
バレッジファイヤ。ウェルスの放った銃弾が再びローグの群れを襲う。満身創痍だったローグが次々と倒れ始めた。合計十一体を撃破。残るローグは四体。
「け、結構危ないかも……マリアさん、手伝ってくださいー」
「いいですとも。皆さんに降りかかる不幸は」
「私達がブッ飛ばします!」
蒼光の祈り。ハーベストレイン。溢れる蒼い光が全員の傷を癒した。「ああっ……血が足りないかもー……」フーリィンがふらりと倒れかかる。
「……はれ?」
「私が運びますから、ゆっくりしててください。乗り心地には定評がありますよ」
「すみません……お手間おかけしますー……」
倒れかかったフーリィンをアリアが受け止め、抱えた。誰かの金切り声が聞こえる気がするのだが、気のせいだろうか。
「後顧の憂いは払っておこう……! 太陽の熱波! オーバーブラストォォォォッ!」
アダムの放った山吹色の拳気が、彼を囲むローグを打ち倒した。十五体撃破。残るはタイラントのみ。
敵が動く。タイラントが獰猛な唸りを上げ、頭を大きく逸らした。
「来る……!」「!?」
地竜タイラントラプトルの竜法≪ブレス≫、地走獄焱波≪グランド・ヴォルカニック・ブラスター≫。地を這う炎の波が自由騎士達を飲み込み、焼き尽くす。
「っ……ここまで、か……」
呟き、ライカがうつ伏せに倒れた。戦闘不能。−−悔やまれる。本調子だったならば。
「……出来た!」
回避。カスカはタイラントのブレスを跳んで回避していた。そのまま熱風に乗ってタイラントに斬りかかる。命中。三連撃を受け、タイラントが悲鳴をあげる。
「でかいわね−−これは殴り甲斐がありそう!」
エルシーもダメージを負ったが、まだ倒れてはいなかった。前進し、タイラントに踏み込む。「くらえ、スカーレット・インパクト!」エルシーの寸勁がタイラントに叩き込まれる。スカーレット・インパクトとは、友情・努力・勝利・美容・強壮・彼氏がいるの羨ましい等あらゆる想いを込められた、果てしなく重い拳なのである。破砕。タイラントの足の骨が破壊される。反撃。タイラントの尻尾が回転してエルシーを狙い、エルシーは身を低くして回避した。
「Nnn……UuuuuRyyyyyyyyy!」
洗礼の対価。ナイトオウルがタイラントに剣を突き立て、内部から全方位へ爆発のように無数の刃が呼び起こされる。タイラントの片目が潰された。怒り狂うタイラントの反撃をナイトオウルはバックエアスライドで回避する。
「援護するわ! 炎よ!」
援護に来ていた自由騎士が緋文字を放つ。命中。タイラントは炎弾を受けて大きくよろめく。
「いっけぇぇぇぇー! 穆王八駿!」
カーミラの神速の飛び蹴りがタイラントを顔面を横殴りに打ち抜く。穆王八駿。その威力は、かつての紅覇猛蹴脚の三倍にも達する。「せいばーい!」着地。残心。タイラントラプトルの巨体が倒れ、そのまま動かなくなった。
●
「さあて、ラプトルも無事に全滅できたところで……いよいよお楽しみのお宝探しだな」
戦闘後、ウェルスが楽しげに言ってまず周囲を見回す。「家族の居ない老いた飛竜のお宝ねぇ。俺がガリガリの竜って言うなら、その体を活かして他のやつらが入ってこれないところに宝を隠す…ってところか?」
「私とナイトさんはライカさんを送っていきますね。行きましょう、ナイトさん」
「皆様、お気をつけて。願わくば吉報を」
カスカとナイトオウルは負傷したライカの後送と依頼完了報告の為に先に帰投した。
「洞窟内の高いところに上った先で、外に出られる穴とかありませんか?」
アリアに抱えられたまま、フーリィンが言う。「ありそうだね。お爺ちゃんにとっては、死を覚悟して護った故郷こそが宝だったんじゃないかな?」
「とりあえず、この広間には無さそうね。確かに飛竜のお宝だから、高い場所にあるのかなぁ」
カンテラで周辺を探索していたエルシーも戻って来てそう言った。
「しかし、正直これ以上の危険は侵したくないですね。あまり奥まで行くのもどうかと」
マリアは慎重にそう言った。
「まあそうだね。でも、こういうのは浪漫だからね。ここが昔話の飛竜の巣だとしたらお宝は……そうだな、目線を上にしたら見付けられないかな」
「……ねー、皆ー」
カーミラの声に、全員が振り返る。ケイブマスター。カーミラは周辺を調べた結果、『それ』を発見していた。「これこれ」カーミラは壁の一角を指差している。
「…壁、か? カーミラ嬢」
「んー。もっと引いて見て」
「引いて?」
少し下がって見てみると−−その壁は丸い、巨大な岩であることが分かった。よく見ると、周囲の壁面との間には隙間がある。「……大きな穴を、岩で塞いである……?」
「ドラゴンだったら運んでこれそうだよね。人間じゃずらすのも無理だけど」
「ドラゴンが作った……蓋。あるいは、ドア?」
「しかし、それが分かったところで、私達にはどうすることも出来ません」
「いや−−やってみよう。ダメでもともとだ」
言ってアダムが進み出る。「−−開け、巨岩よ! 山吹色の掌撃!」アダムの渾身の掌底が大岩を突き崩す。轟音が響き、大岩が崩れ、その先の大穴への道が開いた。
自由騎士達は慎重に、その奥へと進んだ。
続いて自由騎士達の前に広がったのは、地下へと続く巨大な縦穴だった。深淵に繋がろうかという暗い穴の底は見えない。「−−この下、か−−?」
「……ロープがある。降りてみるわ」
「私も行きます」
エルシーとアリアが進み出るが、エルシーは首を振る。「空中二段飛びでは無理よ」
「無理かなあ」
「着地点のタイミングがわからないから、完全な運試しになる。それに、着地点がない可能性だってある。下がマグマだったら?」
「……わかった。気をつけてね」
エルシーは頷き、ロープを地面に固定して大穴を降りていった。
「−−これは−−!?」
底まで降りたエルシーがカンテラで見たのは、驚くべき光景だった。−−街。経年劣化し、崩壊しているが、それは確かに街だった。遥か昔に地下へと沈んだ都。この古代遺跡の向こうに、竜の遺産はあるのかも知れない。あるいはこの都自体がそうなのか。謎を解く為には、この都を最奥まで踏破するしかないだろう。「……皆の予想も、あながち間違っちゃいなかったわね……」
「そして、マリアの言う通り−−これ以上の深入りは危険ね。ここの踏破には、入念な準備が必要だわ」
カンテラの明かりの向こうに、いくつかの紅い瞳と重々しい足音が蠢いていた。エルシーは危険と判断し、踵を返す。「−−ん」カンテラの明かりに、何かが光った。拾い上げる。
「……証拠品は必要よね。これは持って帰りましょ」
エルシーは『それ』を仕舞い、ロープを伝って穴を登り始めた。
●
古き飛竜は小人との同盟の証に自分の鱗を一枚贈り、小人はその鱗を使ってある拳士の為に籠手を作った。
「もしわしがお前達の敵になったら、その鱗で武器を作れ。わしは逃げも隠れもせん」
しかし、その拳は国防の為のみに振るわれ、友に向けられることは終ぞ無かったという。
飛竜が戦地から戻ってきた時、小人の都は大地震によって地の底へと沈んだ後だった。
それ以後、飛竜は誰に頼まれても決して巣から動かず、そこで静かに息を引き取ったという−−
依頼を受けた自由騎士達は、テモゾーア山中を件の洞窟に向かって歩いていた。
「この手の昔話は真偽以前に、語り継がれる目的は得てして教訓を授ける為でもあります。今回の場合『経験豊富な年寄りを尊敬せよ』という意図が暗にあるわけですね」
『逢瀬切』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)は歩きながらそう語る。「そんな教訓はさ抜きにして見ても、実に興味深い話です。私の目指す領域に踏み込んでいるような話なので」
「飛竜の宝か。まぁアタシ達ヒトが宝と思える物とは限らないだろうけど。……というか、奥に行ったら飛竜の骨が残っていたりしてね」
『聖母殺し』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)はそう言った。宝については半信半疑のようである。「どのみちまずはラプトルを全撃破するのが先決。宝探しは余裕があればでいいと思うわ。どうしてもしたいなら止めないけど、余力のあるヒーラーからある程度回復してもらってからにしなさいな」
「凶暴な地竜がたくさん……うぅ、正直、結構怖いのですが」
『学びの結晶』フーリィン・アルカナム(CL3000403)はやや萎縮しつつも、側を歩く二人を見た。
「お宝も気になるけど私は地竜退治が楽しみ! 10mとか超でっかいよね! ドラゴンスレイヤーになるための第一歩だ!」
「成功したらドラゴンスレイヤーってわけね! ……今回はラプトルスレイヤーかな?」
『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)と『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はむしろ愉しげにそう言いながら歩いている。「……勝つ気満々なんですねー……」フーリィンは呟き、微かに笑った。
「竜の宝か。小さいころは噂に心を躍らせ、大冒険の末にお宝を見つける夢を見たもんだな。それが叶うって言うなら嬉しいもんだが……世の中、そう甘くは無いってのも身に染みてるんだよなぁ」
『1000億GP欲しい』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)はしみじみとそう語った。台詞はシニカルだが、隠し切れない夢が称号に滲み出ている。
「軽い飛竜……慈悲の祈りを修復する素材に出来たりしないかな?」
『安らぎへの導き手』アリア・セレスティ(CL3000222)は歩きながら呟いた。折れた短剣の代わりに、今回は逆の手に鞭を装備しての参戦である。−−これはこれで、絵面としては悪くない。ややマニアックだが。
「女神の国に巣食う害獣めはこの竜殺しの剣の名の下に排除してくれよう。当然そこに眠る宝とやらも女神の物」
『執行者』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)はそう宣言した。(しかし……逸話を聞く限りではその飛竜はまるで飛空艇のよう。もしや此処は格納庫で、遺物もその関連なのでは?)
「宝ですか……年老いた飛竜の宝なんですかね? そちらも気になりますが、地竜が住み着いた理由も気になりますね……好む餌でもあったか、はたまた何かを守っているか……」
『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)は思案しながらそう呟いた。「まあ、考えていてもしょうがないですね。内部の探索を進めていけばはっきりするでしょう。凶暴な竜のようですし、慎重に行きたいですね」
「竜が相手ともなれば一筋縄ではいかないだろう。それでも僕は拳を振るうよ。テモゾーア村の方々を、国民を生活を守るのが僕達騎士の務めだからね」
『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)はそう言った。ブレない。たとえ凶悪な地竜が相手であろうと中に莫大な宝が眠っていようと、彼のやることは常に変わらない。
やがて、岩場の奥に件の洞窟が見えてきた。大きい。直径ゆうに20mは下らない。彼等はカンテラに火を灯し、慎重に奥へと進んだ。
●
洞窟に入ってからほどなくして、暗闇の向こうから獰猛な唸りが聞こえてきた。それに加えて奥の方からもずしん、と大きな足音のようなものが聞こえてくる。自由騎士達は身構えた。
「見える……仕掛けるわ」
ライカが手近のローグラプトルに踏み込んだ。ラピッドジーン。超直感。リュンケウスの瞳。ヒートアクセル。スピードに乗ったライカの拳がローグを捉えた。ブレードアタッチメント展開。命中。ローグが鮮血と悲鳴をあげる。反撃。ライカは紙一重で躱した。「速い……けど、怖くはないわね」
「私は後衛の護衛につきます。フーリィンさん、よろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそ!」
アリアは攻撃には参加せず、フーリィンの傍に占位した。
(動く疾さと躱す疾さは似て非なるモノ……古の飛竜の伝説の一節ははまさに後者の体現)
続いてカスカが動いた。暗視。ラピッドジーン。ローグの群れに向かって前進する。
(初手は先制。集中攻撃は覚悟の上。一匹でも多く敵を捕捉し−−!)
鞍馬念流・円空閃。斬波の台風が敵陣を斬り裂く。反撃。近くにいた三体がカスカに襲いかかる。
(柳凪で揺らいで受け流す……これでは所詮似非止まり。飛竜の伝説こそが絶対回避の絶技への光明。相手に速度で勝ることより、速度の落差こそが肝要。物理も、魔導も、異常すらも……受けずに流せ!動かず躱せ!)
カスカは最小限の動きで敵の攻撃を捌いた。しかし、完全にとはいかない。二発は躱し、一発は食らった。「っ……是非もなし、流せ、己の心までも……」
「まずは雑魚を各個撃破にしましょうか」
エルシーがライカと同じローグを狙って踏み込んだ。デュアルストライク。エルシーの連拳を受けて傷ついたローグは堪らず倒れた。一体撃破。
「……!」
ナイトオウルの沓から黒翼が生え、飛翔する。ローグの群れを飛び越えて真っ直ぐに飛び−−やがてそれは現れた。全高15mはあろうかという巨大な−−恐竜。「Nn……!」攻撃。ナイトオウルの大剣がタイラントラプトルの頭部に振り下ろされる。タイラントは軽く首を捻り、直撃を避ける。大剣はタイラントの目元を斬り裂くに終わった。反撃。タイラントのヘッドバットがナイトオウルを打ち据える。柳凪。防御。空中減算。ナイトオウルは衝撃で吹き飛ばされ、洞窟の壁面に叩きつけられる。「Nm……!?」
「まずはローグラプトルの数を減らさなきゃね!」
カーミラがローグの群れへと前進する。鉄山靠。二体のローグがカーミラの攻撃で吹き飛んだ。反撃。ローグの一体が飛びかかる。柳凪。被弾するが、カーミラはガントレットで直撃を防いだ。「このくらいなら、まだいけるよ!」
「全弾発射といくか! サテライトエイム・アクティベート! くらえぇぇぇぇーっ!」
バレッジファイヤ。ウェルスの放った無数の銃弾がローグの群れに襲いかかる。カーミラの攻撃を受けていた一体が倒れた。二体目。
「ええと、それなら−−ハーベストレインですー」
フーリィンのハーベストレインが被弾した味方の傷を癒した。「どうも」「感謝致します」「ありがとー!」
「今のところは良さそうですね……炎よ」
マリアは戦況を見て攻撃を選択した。緋文字。炎弾がローグの一体を狙う。命中。ローグは炎に巻かれ、しかし地面を転がって火を消した。敵意を込めた眼でマリアを睨む。
「−−僕はアダム・クランプトン! 地竜達よ、民の平安の為、その命貰い受ける!」
アダムが名乗りを上げ、地竜達がそちらを見る。敵が動く。五体のローグがアダムに向かった。攻撃はいずれも命中。柳凪。全力防御。「ぐっ……この程度ならば……!」アダムは辛うじて耐えるが、ダメージは小さくない。
次に四体がライカを取り囲んだ。ライカは立て続けの攻撃を三発は避け、しかし一発は食らう。「っ……あと一発耐えられる……? あるいは……!」傷を庇いながらも反撃する。ライカの拳はいずれも命中し、ローグに十分なダメージを与えた。−−先の戦闘での傷が癒えきっていない。それでもライカの速度ならば切り抜けられる可能性はある。しかし−−ここから先は運試しだ。
次に四体がカーミラを取り囲んだ。カーミラは敵の攻撃を一発は避け、三発は食らう。「っ……久しぶりに、ヒリヒリするかも……!」傷を負いながらも反撃する。震撃。いずれも命中。グラビティ。ローグは小さくない傷を負い、その動きが鈍る。
タイラントラプトルはナイトオウルを狙った。顎を開き、壁に叩きつけられたナイトオウルに食らいつく。「Gnn……!」反撃。大剣をタイラントの口腔に突き立てて隙を作り、離脱する。タイラントは口から血を流しながら、怒りと狂喜が混じった眼でナイトオウルを見据えた。
「どこまで行けるかな−−さあ、行くわよ! 私に敵うか試してみよう!」
ヒートアクセル。命中。ライカを囲んだローグの一体が倒れた。三体目を撃破。
(兵は時に詭道。馬を射んと欲すれば−−将を討つ!)
カスカは前進し、タイラントを狙った。トリロジーストライク。命中。足を斬られたタイラントはバランスを崩すが、なおも反撃する。命中。巨大な爪を備えた蹴りがカスカを打ち据えた。「っ……風を読め、痛みを嗅ぎ、敵意を味わえ……!」
「カーミラ! 道を開けるわ!」
エルシーがカーミラを囲んだローグの一体を狙った。デュアルストライク。命中。四体目のローグが倒れた。
「Guu……!」
ナイトオウルが再びタイラントに斬りかかる。命中。鼻先を斬りつけられ、タイラントは咆哮をあげる。反撃。ヘッドバットが再びナイトオウルを打ち据えた。「Uuu……!」
「アダムも大変そーだね! というわけで鉄山靠ぉー!」
カーミラの鉄山靠が自身とアダムを囲むローグ二体を吹き飛ばし、一体が動かなくなった。ここまでで五体撃破。
「回復は任せたぜ、お嬢達! −−ここ押し切らねえと、誰かやられる!」
バレッジファイヤ。ウェルスの放った銃弾が再びローグの群れを襲う。満身創痍だったローグが次々と倒れ始めた。合計十一体を撃破。残るローグは四体。
「け、結構危ないかも……マリアさん、手伝ってくださいー」
「いいですとも。皆さんに降りかかる不幸は」
「私達がブッ飛ばします!」
蒼光の祈り。ハーベストレイン。溢れる蒼い光が全員の傷を癒した。「ああっ……血が足りないかもー……」フーリィンがふらりと倒れかかる。
「……はれ?」
「私が運びますから、ゆっくりしててください。乗り心地には定評がありますよ」
「すみません……お手間おかけしますー……」
倒れかかったフーリィンをアリアが受け止め、抱えた。誰かの金切り声が聞こえる気がするのだが、気のせいだろうか。
「後顧の憂いは払っておこう……! 太陽の熱波! オーバーブラストォォォォッ!」
アダムの放った山吹色の拳気が、彼を囲むローグを打ち倒した。十五体撃破。残るはタイラントのみ。
敵が動く。タイラントが獰猛な唸りを上げ、頭を大きく逸らした。
「来る……!」「!?」
地竜タイラントラプトルの竜法≪ブレス≫、地走獄焱波≪グランド・ヴォルカニック・ブラスター≫。地を這う炎の波が自由騎士達を飲み込み、焼き尽くす。
「っ……ここまで、か……」
呟き、ライカがうつ伏せに倒れた。戦闘不能。−−悔やまれる。本調子だったならば。
「……出来た!」
回避。カスカはタイラントのブレスを跳んで回避していた。そのまま熱風に乗ってタイラントに斬りかかる。命中。三連撃を受け、タイラントが悲鳴をあげる。
「でかいわね−−これは殴り甲斐がありそう!」

エルシーもダメージを負ったが、まだ倒れてはいなかった。前進し、タイラントに踏み込む。「くらえ、スカーレット・インパクト!」エルシーの寸勁がタイラントに叩き込まれる。スカーレット・インパクトとは、友情・努力・勝利・美容・強壮・彼氏がいるの羨ましい等あらゆる想いを込められた、果てしなく重い拳なのである。破砕。タイラントの足の骨が破壊される。反撃。タイラントの尻尾が回転してエルシーを狙い、エルシーは身を低くして回避した。
「Nnn……UuuuuRyyyyyyyyy!」
洗礼の対価。ナイトオウルがタイラントに剣を突き立て、内部から全方位へ爆発のように無数の刃が呼び起こされる。タイラントの片目が潰された。怒り狂うタイラントの反撃をナイトオウルはバックエアスライドで回避する。
「援護するわ! 炎よ!」
援護に来ていた自由騎士が緋文字を放つ。命中。タイラントは炎弾を受けて大きくよろめく。
「いっけぇぇぇぇー! 穆王八駿!」
カーミラの神速の飛び蹴りがタイラントを顔面を横殴りに打ち抜く。穆王八駿。その威力は、かつての紅覇猛蹴脚の三倍にも達する。「せいばーい!」着地。残心。タイラントラプトルの巨体が倒れ、そのまま動かなくなった。
●
「さあて、ラプトルも無事に全滅できたところで……いよいよお楽しみのお宝探しだな」
戦闘後、ウェルスが楽しげに言ってまず周囲を見回す。「家族の居ない老いた飛竜のお宝ねぇ。俺がガリガリの竜って言うなら、その体を活かして他のやつらが入ってこれないところに宝を隠す…ってところか?」
「私とナイトさんはライカさんを送っていきますね。行きましょう、ナイトさん」
「皆様、お気をつけて。願わくば吉報を」
カスカとナイトオウルは負傷したライカの後送と依頼完了報告の為に先に帰投した。
「洞窟内の高いところに上った先で、外に出られる穴とかありませんか?」
アリアに抱えられたまま、フーリィンが言う。「ありそうだね。お爺ちゃんにとっては、死を覚悟して護った故郷こそが宝だったんじゃないかな?」
「とりあえず、この広間には無さそうね。確かに飛竜のお宝だから、高い場所にあるのかなぁ」
カンテラで周辺を探索していたエルシーも戻って来てそう言った。
「しかし、正直これ以上の危険は侵したくないですね。あまり奥まで行くのもどうかと」
マリアは慎重にそう言った。
「まあそうだね。でも、こういうのは浪漫だからね。ここが昔話の飛竜の巣だとしたらお宝は……そうだな、目線を上にしたら見付けられないかな」
「……ねー、皆ー」
カーミラの声に、全員が振り返る。ケイブマスター。カーミラは周辺を調べた結果、『それ』を発見していた。「これこれ」カーミラは壁の一角を指差している。
「…壁、か? カーミラ嬢」
「んー。もっと引いて見て」
「引いて?」
少し下がって見てみると−−その壁は丸い、巨大な岩であることが分かった。よく見ると、周囲の壁面との間には隙間がある。「……大きな穴を、岩で塞いである……?」
「ドラゴンだったら運んでこれそうだよね。人間じゃずらすのも無理だけど」
「ドラゴンが作った……蓋。あるいは、ドア?」
「しかし、それが分かったところで、私達にはどうすることも出来ません」
「いや−−やってみよう。ダメでもともとだ」
言ってアダムが進み出る。「−−開け、巨岩よ! 山吹色の掌撃!」アダムの渾身の掌底が大岩を突き崩す。轟音が響き、大岩が崩れ、その先の大穴への道が開いた。
自由騎士達は慎重に、その奥へと進んだ。
続いて自由騎士達の前に広がったのは、地下へと続く巨大な縦穴だった。深淵に繋がろうかという暗い穴の底は見えない。「−−この下、か−−?」
「……ロープがある。降りてみるわ」
「私も行きます」
エルシーとアリアが進み出るが、エルシーは首を振る。「空中二段飛びでは無理よ」
「無理かなあ」
「着地点のタイミングがわからないから、完全な運試しになる。それに、着地点がない可能性だってある。下がマグマだったら?」
「……わかった。気をつけてね」
エルシーは頷き、ロープを地面に固定して大穴を降りていった。
「−−これは−−!?」
底まで降りたエルシーがカンテラで見たのは、驚くべき光景だった。−−街。経年劣化し、崩壊しているが、それは確かに街だった。遥か昔に地下へと沈んだ都。この古代遺跡の向こうに、竜の遺産はあるのかも知れない。あるいはこの都自体がそうなのか。謎を解く為には、この都を最奥まで踏破するしかないだろう。「……皆の予想も、あながち間違っちゃいなかったわね……」
「そして、マリアの言う通り−−これ以上の深入りは危険ね。ここの踏破には、入念な準備が必要だわ」
カンテラの明かりの向こうに、いくつかの紅い瞳と重々しい足音が蠢いていた。エルシーは危険と判断し、踵を返す。「−−ん」カンテラの明かりに、何かが光った。拾い上げる。
「……証拠品は必要よね。これは持って帰りましょ」
エルシーは『それ』を仕舞い、ロープを伝って穴を登り始めた。
●
古き飛竜は小人との同盟の証に自分の鱗を一枚贈り、小人はその鱗を使ってある拳士の為に籠手を作った。
「もしわしがお前達の敵になったら、その鱗で武器を作れ。わしは逃げも隠れもせん」
しかし、その拳は国防の為のみに振るわれ、友に向けられることは終ぞ無かったという。
飛竜が戦地から戻ってきた時、小人の都は大地震によって地の底へと沈んだ後だった。
それ以後、飛竜は誰に頼まれても決して巣から動かず、そこで静かに息を引き取ったという−−
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『機刃の竜乙女』
取得者: ライカ・リンドヴルム(CL3000405)
『蒼光の癒し手(病弱)』
取得者: フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『空に舞う黒騎士』
取得者: ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)
取得者: ライカ・リンドヴルム(CL3000405)
『蒼光の癒し手(病弱)』
取得者: フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『空に舞う黒騎士』
取得者: ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)
†あとがき†
レアドロップ!
名前:古き紅竜の籠手
種類:格闘武具
取得者:エルシー・スカーレット(CL3000368)
名前:古き紅竜の籠手
種類:格闘武具
取得者:エルシー・スカーレット(CL3000368)
FL送付済