MagiaSteam
麺、食おうぜ。




「それにしても……たくさん集りましたなぁ」
 気付けばジローの家に人が集っていた。
 今日は皆を家に招いて、様々な麺でもてなす催しが開かれていた。
 自由騎士達はもちろん、これまで自由騎士達が関わった者達の姿もある。
 
 さぁ、何はともあれ食べて飲んで歌って騒ごう。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常γ
担当ST
麺二郎
■成功条件
1.ジローが振舞う麺を楽しみ、飲んで騒ぐ
麺です。

とにかく食べて飲んで、騒いでしまいましょう。
実はジローの誕生日なのですが、数日前から麺の準備で忙しく走り回っていたため当人すっかり忘れています。


●ロケーション
 首都、住宅区域にあるジローの家。以外にも一軒家。2階建て。
 朝から皆々が集り始め、お昼には大勢に。ジローはせっせと麺を打ち、皆をもてなしています。
 1階には本格的なキッチンと広いリビングと世界中の麺について書かれた本が集められた書斎があります。
 2階にはジローの寝室とトレーニングルーム、広めのベランダがあります。
 時間はお昼から翌朝まで。十分な量の麺料理やドリンクは用意されていますが、更に食べ物や飲み物を持ち込んでもOKです。自由にお楽しみください。食べたい麺があればご記入ください。世界観上難しいもので無ければ出来る範囲でジローが奮闘します。

●参加NPC
『ヌードルサバイバー』 ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
 なんだか人が集ったので、キッチンでせっせと麺を打っています。

『演算士』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)
 すでに酔っ払っています。リビングのソファーを占拠中。

『薬師』エミル・T・デルモンテ(nCL3000062)
 書斎で様々な面の本を興味深そうに眺めています。

『竜の落とし子』ジョアンナ・R・ロベルトドーン(nCL3000052)
 どこで聞きつけたかちゃっかり参加。リスのように頬を膨らませながらリビングで食べ物を食べまくっています。

・アン・デュナーク
 ジョアンナのお目付け役。ゴシックメイド服。毒舌。ジョアンナのそばを離れません。

・レーナ・ルー・ルーとその仲間たち
 少女人形のような姿をした幻想種。2階のベランダで花の蜜を吸っています。

・ヨハネ
 アンジェを失ったあとも懸命に毎日を過ごしています。リビングにいます。

・オールシーズンズ、セプテンバー、オーガスト、エイプリル、メイ
 サーカス「オンリーワン」のメンバー。リビング横の庭で楽しげに皆に特技を見せています。

・デニー
 花嫁を失ったあともその永遠の愛を感じながら過ごしています。書斎で麺の本を読んでいます。

・老人
 オリオネスト村村長。自由騎士に村を救われ、現在は■■様との関係も良好。村にも人が戻りつつある。村近くで取れた山菜を振舞っている。

・デミオリ・オタック
 元アクアティックのリーダー。現在は改心し、狂信要素はなくなった。だが料理そっちのけで相変わらず愛してやまないアクアディーネの話で盛り上がっている。

・ハクメイとミコト
 かつて戦った幻想種。とある理由により自由騎士達より生命エネルギーを分け与えられていたが鉱石を手に入れることで解決。今は自立した生活を一緒に住むユキと共に行っている。ユキは来ていない。リビングにいます。ハクメイが他の女性に目を向けないようミコトがガードしている。

・アージン・サチモフと子供達
 自由騎士がその存続の危機を救ったオリオン孤児院の施設長。数名の子供達をつれて訪れている。リビングで子供達と共に飾り付けをしている。

・トビー・トビー、リサ・リサ、ロン・ロン、イーゴ・イーゴ、ドルク・ドルク、ラッシュ・ラッシュ
 ケモノ連合メンバー。すっかり自由騎士に懐いた。自由騎士達に興味があるのか輝く目で自由騎士達と話している。

・ジソウ
 元達人。自由騎士に命を救われる。弟子であるユダは来ていない。ジローのために人のいないトレーニングルームで1人ソバ打ちに集中している。

・チュウベエ・モリノミヤ
 集落ウラノベに住む鍛冶職人。その腕はまさに一流。自由騎士にはいずれ武器を卸す約束をしている。酒を飲みながら自由騎士達の武器を見ている。

・エミリオ
 幻想種ハンターである父親の探しを依頼した。父親の遺志を継ぎ幻想種ハンターになるべく修行中。2階のベランダで幻想種たちと話をしています。

・ブランニューデイとチェコッタ
 レオナルトの妻と娘。その心の傷は完全には癒えていないものの、普段の生活が出来るくらいには回復。キッチンでジローの手伝いをしています。

 その他、自由騎士達がこれまで助けたルーキー達や近所の人たちも来て賑やかな雰囲気です。

皆様のご参加お待ちしております。

(2019.07.12追記)
ケモノ連合メンバーに抜けがあり、追加いたしました。

状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  1個  0個
10モル 
参加費
50LP
相談日数
6日
参加人数
24/∞
公開日
2019年07月27日

†メイン参加者 24人†

『ゴーアヘッド』
李 飛龍(CL3000545)
『望郷のミンネザング』
キリ・カーレント(CL3000547)
『幽世を望むもの』
猪市 きゐこ(CL3000048)
『我戦う、故に我あり』
リンネ・スズカ(CL3000361)
『慈悲の刃、葬送の剣』
アリア・セレスティ(CL3000222)
『キセキの果て』
ニコラス・モラル(CL3000453)
『戦場に咲く向日葵』
カノン・イスルギ(CL3000025)
『天を癒す者』
たまき 聖流(CL3000283)
『異邦のサムライ』
サブロウ・カイトー(CL3000363)
『アイドル』
秋篠 モカ(CL3000531)


●厨房
 7月11日ジロー宅。そこはいつの間にやら人が人を呼び、さながらパーティのような賑やかさを見せていた。

「ねぇ、ジローさん。私にもお手伝いさせてくれない?」
 そう言って厨房で忙しく調理をしているジローに話しかけたのは『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。
 少し前。
「ジローさん。誕生日おめ──」 
 誕生日のお祝いを伝えようと厨房を覗いたエルシーだったのだが。
 声をかけられた事にも気付かずに一心不乱に麺を打つジローの手さばきに感動したエルシーはそのまま話しかけるタイミングを逃してしまっていた。
(でも……今日はジローさんが主役よね? その主役自ら麺を打つとは……)
 素人がいたら効率が落ちるかもしれないけど──そんな心配をしながらも、エルシーはジローにお手伝いを進言したのだった。
「私達も何かお手伝い出来る事はありますか」
 ブランニューデイとチェコッタの2人も厨房へ。エルシーに気付いたのか二人は軽く会釈する。その表情は穏やかなもの。そんな2人を見てエルシーは少し安堵する。
「ジローさん! 私達に手伝えることないですかっ!」
 そこへ現れたのは『新米自由騎士』リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)と『夜空の星の瞬きのように』秋篠 モカ(CL3000531)。2人ともジローの誕生日を祝おうとやってきたものの、それに気付いているのかいないのか、皆をもてなす為に忙しくしているジロー。
(このままではせっかくのお誕生日がもったいないです!)
 そう思ったモカはジローが少しでも早く料理を終え、ゆっくり出来るようにと配膳などの手伝いを始める。麺に詳しくなくとも出来る事はたくさんあるもの。
 リリアナも悩んだ末に出した結論はジローのお手伝い。料理自体はあまり得意ではないけれど、それ以外の事なら出来るはず。
「他にも出来る事があれば、遠慮なく言ってくださいね!」
 テキパキと動き回るリリアナとモカの2人。
「おお、皆さんすみませんな。では──」
 皆の手伝いにより、大幅に作業効率の上がった厨房。こうして出来たての麺料理が次々と運ばれていくのであった。

●書斎
『望郷のミンネザング』キリ・カーレント(CL3000547)はジローの書斎に向かう。
「貴女は……あの時の」
 そこにいたのは薬師のエミル。ぺこりと会釈するとエミルはまた手に持った本に目線を落とす。
「あっ、あのっ、この間は、性格反転のお薬、ありがとうございました」
 元来人見知りのキリだが、勇気を出してエミルに話しかける。なにせ聞きたい事は沢山ある。この間の薬は次はいつ作るのか、他にはどんな薬を作っているのか、そしてこれから作る新しい薬のこと──。
「あらあら……薬に興味を持ってもらえたのですね」
 エミルも行商人であるにも関わらずどちらかといえば人見知りであるのだが。なんとなく波長があったのだろう、二人は本を手に取りながら和やかに言葉を交わす。
「えっと、その、よければ、一緒にその、めっ、麺を一緒に食べませんか……?(わわ、とうとう誘っちゃったわ)」
 一瞬驚いたような顔をしたエミルだったが「ええ、もちろん」と笑顔で答える。
 その返答に、ぱぁとキリの表情が明るくなる。
 そしてキリは麺を堪能しながら、いろいろなお話をする事で気付けばだいぶ打ち解けたエミルにこう伝えるのだ。薬の味はにんじん味に出来ますか、と。

●トレーニングルーム
「これはジソウ様、蕎麦打ちは順調ですか?」
 そういってジソウの元を訪れたのは『我戦う、故に我あり』リンネ・スズカ(CL3000361)。
「おや、ヌシはあの時の。その際は世話になった」
 そう言うとジソウは手を止めて改めて一礼する。
「いえいえ。自由騎士として当然の事をしたまでです。……時に元気になった暁には手合わせして頂ける約束でしたよねぇ。……今は元気ですか?」
 鋭い眼光を向けるリンネだったのだが。
「無論、元気だ。じゃがすまんが今はそれどころじゃない。少し作業を手伝ってはもらえんか」
 リンネの思惑を知ってかしらずかニカッと笑いながらそういうジソウ。
(今はその時ではない……という事ですね)
「……わかりました。私もアマノホカリの出、多少は知識がありますので」
 そういうとリンネは雑談を交わしながらジソウの手伝い始める。
「あの後、お弟子さんは突然出て行かれたのですか……それは心配ですね」
「今頃どこで何をしているのやら……」
 ジソウのソバ打ちの手が止まる。やはり唯一の弟子の行方は心配のようだ。
「……そういえば蕎麦打てたんですね」」
 リンネは唐突に話題を変える。
「先々代がアマノホカリ出身でな。代々ソバ打ちは受け継がれとる。それにワシの名前もどうやらアマノホカリに所以があるらしい。そういや爺さんがよくこんな話を──」
 リンネの気持ちを察したのだろうか。ジソウの少しだけ長い昔話が始まった。

●リビング

 わたしがかたきをとる──

「む……。これがゼンマシマシ」
 山のように野菜が盛り付けられたラーメンに対峙するのは『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)。それは以前大好きな姉がテルメ温泉で敗れ去った逸品であった。はふはふと熱を冷ましながら食べ進めるリムリィであったが食べても食べても減るのは野菜ばかりで一向に麺にありつけない。
(やさいばっかり。このままじゃ麺がのびる……そうだ)
 リムリィが考えた秘策。それは所謂『天地返し』と呼ばれる凄技。おもむろに麺を野菜タワーの下から救い上げると野菜の上にオン。
(これならめんもたべられる。やさいもスープにつかって……おいしくなる、はず)
「かんぺき」
 いつも通りの無表情ながらその表情は満足げ。
 ずるずる。
「……やっぱりおおい」
 すこしあきてきた?
「こしょう……ん、わるくない」
 もぐもぐ。
「……でも、いけそう」
 リムリィの戦いは続いていた。

「おー! 麺っていろんな種類があるんだな!」
 並ぶ沢山の麺料理に目を輝かせているのは李 飛龍(CL3000545)。
「こいつぁ全種類制覇狙ってみるっきゃないっしょ! えっと、こっちがラーメンでこっちは…なんだこりゃ?」
 とりあえず食べ比べるか、と目の前にある麺料理にはしを伸ばす飛龍。
「……どっちもうめー! けどどう違うのかよくわからん!」
 そこに並ぶ麺料理はこれまで飛龍が味わった事の無いモノ。その違いは上手く言葉では言い表せないが一つだけわかっている事がある。それはどれも美味いという事。細かい事などどうでもいい。この美味い食べ物をもっと味わいたい──それは元々勝負事を好む飛龍に火をつける。
「よーし、違いがわかるようになるまでひたすら食べ比べだぜ! 俺が違いを理解できるか、それとも腹がいっぱいになって倒れるか……勝負だ!」
 飛龍VS麺料理の戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

「久しいな、会ったのは一度だけだが覚えているだろうか」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が声を掛けたのはハクメイ。
「貴方は……あの時はお世話になりました」
 そう言うとハクメイは深々と頭を下げる。
「頭を上げてくれたまえ。我々は当然の事をしたまでだ。……そういえばユキ嬢が来られていないのは何か訳ありだろうか。君らが来るなら彼女も来ているものと思っていたが」
「ユキは忙しいのよっ」
 そう言ってハクメイの後ろからぴょこりと顔を出したのはミコト。
「ユキも来たがっていたのですが……どうしても都合がつかず」
 なぜかアンパンを手に本当に残念そうなハクメイとそんなハクメイの様子が少し面白くないミコト。
「今日は私とハクメイの2人っきりのデート……だと思ってたのに! 何でこんなに人が多いのよっ」
「ハクメイさん、ミコトさん、調子はどう?」
 そこに合流したのは『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)。可愛いのだからプリプリしてちゃ勿体ないよ、とミコトを宥めながら最近の様子を聞くアリア。
「そうえいば……あの羽って、アナザーフィア―としての力なの?」
 せっかく時間もあるのだし、とアリアは気になっていた事を質問する。羽根の事、変幻自在に動く髪の毛のこと。こと戦いのことになるとアリアの熱は上がる。
「あの、あれのやり方教えてくれませんか!?」
 気付けばアリアはハクメイの手を取り、天使みたいで綺麗でかっこよかったと無邪気な笑顔を見せる。
「ちょ、ちょ! 近すぎ!! ハクメイは私のなんだからっ!!」
 慌ててハクメイとアリアの間に体を捻じ込ませ、自身の存在を主張するミコト。その頬はぷくーと膨らんでいる。
「ミコトちゃんもあの翼使えるの?」
「あったり前じゃない! 訳無いわ」
 ふふーんと自慢げに応えたミコト。こうしてアリアの質問責めの矛先はミコトに。
「幻想種固有の力なら難しいとは思うけど……頑張って研究していつか再現してみせるから!!」
 アリアの質問責めはまだまだ続くのであった。

「マァジよかったスね…!あってかこれメァ~チャウマすよ!お酒もススムちゃんっつぅか」
 差し入れの山菜つまみを頂きつつ、流れで村長の身の上話を聞いて涙目になっていたのは『落とした財布は闇の中』ルガトルシュ・フォルガ(CL3000577)。
「麺はシメにキメっとしてェ……ずびっ、しっかしあの麺へのバイブスただ者じゃねぇ、ずびっ、当然トッピングも激ヤバ説よ」
 ちょっと何言ってるかよくわからないものの、言葉そのものにリスペクトが感じられるルガトルシュ。なんとなくヨアヒムとは気が合いそうな予感がする。
 気づけば何故かルガトルシュの持参したものであろうパリピ風のド派手なメガネがいつの間にかジローの頭に飾られていた。
「チャーシューやメンマなど、つまみをキッチンからトレジャー。ウマッ!」
 その後も独特の言い回しで表現しながら麺料理を楽しむルガトルシュ。本来みなに祝われ、甲斐甲斐しく世話をされる立場のはずのジローが一番忙しない姿に疑問を抱きながらも、本人充実してそうだし、いんじゃね?と静観の構え。
「ウェーイ!! ハピぽよおめっとさァース! 本日はゴチになりァッス☆」
 やっぱり何を言ってるか良くわからないルガトルシュであったがこの場を最大限に楽しんでいる様子は見てわかるものだった。

「なに、ジローのやつ誕生日なのか。だのにああも動き回るとは……まあ、それが性に合ってるなら止めることもあるまい」
 ジローの誕生である事を今知った『やさしいひと』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は、リビングにいたとある青年に声をかけていた。
「……おお、ヨハネじゃないか、元気でやっていたか? 顔色はいいな、なによりだ!」
 男性の名前はヨハネ。イ・ラプセルのごく普通の一般市民だ。
「あなたは確か……ボルカスさん。あの時はお世話になりました」
 そう言うと深々と頭を下げる。あの時──それはヨハネが最愛の人と永遠の別れを遂げた時の事。
「懐かしいな、あの洞窟にお前と行ったのも、もう一年近い昔か。」
 ヨハネの恋人であったアンジェはその命が尽きる前にヨハネにとあるものを欲しいとねだった。そのときにそれを手に入れるための協力をしたのがボルカスをはじめとする自由騎士だった。
「そうですね。もうそんなに経つのですね」
 ボルカスは思う。また強くなったのだな──と。その時こうしていれば、ああだったなら。最愛の人を亡くしたヨハネの苦悩は想像に難しくは無い。だが今のヨハネにそのような後悔は微塵も感じられない。ボルカスが敬意を払い、強く、自分より他人を思いやれる心を持った強い女性アンジェ。その彼女がまるでヨハネと一緒にいるような不思議な感覚。
「こっちはあれからもゴタゴタしてたが……お前はどうだ? 色々聞かせてくれよ」
「ええ、もちろん。あれから実は──」
 ヨハネとボルカスはその後も世間話に花を咲かせていた。

「よー、元気にしてるか? 例のバザー以来か?」
 部屋の飾り付けをしてい孤児院の子達に声を掛けたのは『もてもてにこにー』ニコラス・モラル(CL3000453)。
「おや、貴方は。皆の命を救っていただいた事、改めて感謝いたします」
「「「「おじさん、ありがとー!」」」」
 孤児院の代表でもあるアージン。子供たちも一旦飾り付けの作業をやめ、ニコラスにぺこりと頭を下げた。
「おっとっと堅っ苦しいのは無しにしようぜ。……それよりあの後はどうよ?」
 ニコラスはアージンにその後の孤児院の様子を聞く。アージン曰く様々な場所で状況を訴えながら寄付を募ったところ、数名の申し出があり孤児院の運営は何とか回っているとの事。それを聞いたニコラスは表情には出さないもののほっと胸をなでおろしていた。
「あ、みんなー元気だった?」
 そんなニコラスと孤児院の皆の下に駆け寄ってきたのは『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。
「あ! カノンちゃん!」
 カノンに真っ先に気付いたのはアイラ。それはカノンがラスカルズから守ったかけがえの無い命のひとり。思わず飛びついてきたアイラをぎゅっと抱き締める。
「飾りつけ、一緒にやる?」
「うんっ!!」
 アイラの温かな体温を感じながら、カノンは飾り付けの手伝いを始める。
「そういやコレ、大事にしてるぜ」
 ニコラスが懐から取り出したのは孤児院の子達の気持ちの篭ったにがおえと感謝状。
「持っていてくださったのですね。本当に貴方は心優しい方なのですね」
 アージンの言葉に少し照れた様子を見せたニコラス。話題をそらすように近くにいたニールにひそひそと耳打ちする。
「(……で、ニール。少しは耐性ついたかよ?)」
 ぼん!と音が聞こえるほどに一瞬で真っ赤になるニール。残念ながら耐性は未だついていないようだ。
「いやーいいんだぜいいんだぜ」
 ニカッと笑いながらニコラスはニールの背中をぽんぽんと叩く。
 こんな日があってもいい──ニコラスはひと時の穏やかな日々を満喫するのであった。

「麺料理か。そういえばいつも食べるのはパスタくらいだね」
 そういいながら普段食べ慣れない麺を興味深そうに食べているのは『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)。せっかくの機会とジローの用意する様々な麺料理を堪能していた。
「ふむ・・・しかし見たことの無いものばかり。一体どんな味がするのか……興味はつきないな」
 そうしてごちそうさまと笑顔でジローに伝えるまでアルビノは麺料理を食べ続けるのであった。

(い、色んな麺料理、美味しそうだから来ちゃいましたけど。知らない人がいっぱいです……!)
 麺への興味が勝って参加はしたものの、まだ知り合いも少ない事もあり、少々焦っていたのは『叶わぬ願いと一つの希望』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)。
(わ、わたし場違いではないでしょうか大丈夫でしょうか)
 きょろきょろと周りを見渡すティルダ。当然だがティルダの事を奇異な目で見るものなどいるはずも無い。
(せ、せっかくですし……色々な麺料理食べてみたいです)
 麺と一口で言ってもその味や太さ、形や提供のされ方など様々。チルダは改めて麺という食材の奥深さを知る。
(どれも美味しいですっ。……あ、でも、辛すぎるのや酸っぱいのはちょっと苦手、です)
 少しずついろいろな麺料理を楽しむティルダの横には同じく美味しい料理が食べられると聞きつけやってきた『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)。
(さっそくいただきましょう)
 目の前に並ぶ料理をぱくりと口に運ぶレオンティーナ。すると麺に絡んだスープの芳醇な香りとプチプチとはじけるような麺のコシが口の中一杯に広がる。
「むう、この私を試すおつもりですか?」
 ずずずと食べ進めるレオンティーナだったのだが。
「この麺料理を作ったのはどなたー!?」
 くわっと目を見開く。
「おやおや、いかがされましたかな」
 そこへ現れたのはちょうど出来上がったばかりの料理を持ってきたジローだった。
「貴方があの麺を打ったジローさんですか。私はレオンティーナ・ロマーノ。以後お見知りおきを」
「おお、新人の方ですな。こちらこそよろしくですぞ」
「それにしても……程よい歯ごたえとのどごしの良い麺。どっしりと……それでいてしつこくないスープ。つい飲み干してしまいます。素晴らしい麺料理でしたわ。ブラボー!」
 そう言うとレオンティーナは周りの皆も促しながらジローに拍手喝采を送る。
「いやいや、照れますなぁ」
 麺を褒められジローもまんざらでもないといった表情。
「でも本当においしいのだわ!」
 ジローなら自身の知らない麺を知っているはずと未知の麺を味わいにきていたのは『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)。依頼でかかわった人々が元気そうにしているのをにこにこと見ながらジローが次々作る麺料理を堪能してた。
(あっと。忘れないうちに)
「はい! アマノホカリ産の海苔とか鰹節とか七味とか、麺の薬味になりそうな物セット!」
 きゐこが手渡したのは自身の故郷アマノホカリ原産の薬味の数々。イ・ラプセルでそろえようとすると中々に苦労するものばかりだ。
「この香り……触感……これはまた上物ですな」
 ジローの表情が一瞬きりっとした。でもすぐ戻った。
「麺本体はジローさんが作るだろうから、こう言う物の方が良いかなと思ったわ!」
「せっかくのこれだけの品。この薬味を最大限に味わえるシンプルな麺料理を用意したくなりましたぞ!」
 どうやらジローの創作意欲に火がついたようだ。

(一軒家とはいえこれだけの人数が押し掛けて大丈夫かな……ぼ、僕もお邪魔してご迷惑にならなければ良いのだけど)
 そんな事を考えながらもジローに予てよりの質問を投げかける者がいた。『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)だ。
「ジローさん、ひとつ聞きたい。あんパンに合う麺料理はあるのだろうか」
「アンパンにあう麺ですか」
 突然の質問にジローの表情が変わる。
「……いや中々難しい事を聞いているのは百も承知なのだが世の中は広いしそういうのも万が一あるかもしれないと思ってね……!」
「なるほど……」
 しばし考え込むジロー。なぜか緊張感が漂うリビング。
「ワタシの知る限りでは……申し訳ない」
「そうですか……」
 がっくりと肩を落とすアダムだったのだが。ジローは言葉を続ける。
「けれども……無ければ作れば良いのですぞ。幸いここには様々な麺料理の資料や材料がそろっておりますぞ」
 火がついたジローの創作意欲はさらに燃え上がる。その言葉にアダムの表情はぱぁと明るくなる。
「ぼ、僕に手伝えることがあれば何でもっ」
 
「いえ……いえ? Yeah系らーめんってのはどれなんだ?」
 お目当てのラーメンを探すニコラス。
「ラーメンとも焼きそばとも言えない、この味と食感が堪らないねー」
 ローメンを堪能したカノンは次なる料理を探す。
「それからー、猫耳朶かな。昔とある書物で見て一度食べてみたかったんだよね。……あった!」
 どうやらお目当てが見つかったようだ。
「ほんとに猫の耳みたいな形してるんだね。ふふふ、食戦士の力で幾らでも入るよー」
 まるで飲み物でも飲むかのようにどんどんカノンの胃袋に吸い込まれていく麺料理たち。
「目指すは麺料理完全制覇だよ!」
 カノンの挑戦はまだまだ続いていた。

 皆が麺を堪能し、良い空気感に包まれていたリビング。これをチャンスと思ったのは『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)。

 せぇーの――

「「「ハッピーバースディ! 誕生日おめでとう、ジローさん♪」」」
 
 リビングにいた皆が声を合わせてジローの誕生日を祝う言葉をかけた。
「なんとこれは……そういえば今日はそうでしたな」
 驚きを隠せないジローであったが、その表情は柔らかく穏やかだった。

「ハッピーバースデーなのじゃあああ!!!」
 ひと際おきな声で祝いの言葉を伝えたのは『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。
「任務を共にしたことは幾度もあれど、このように個人的に親しく話す機会はあまり無かったかのう?」
 確かにジローは依頼で同行することも多かったが、ことプライベートや依頼以外でゆっくりと話ができるような時間はこれまで無かった。
「麺と言えばジロー、ジローと言えば麺! 自由麺類騎士、ジロー! グッとガッツポーズしただけで麺が茹で上がった……という伝説もお聞きしましたぞ!」
「なんと! そんなことまで知れわたっていようとは思いませんでしたぞ」
 もちろんこれはシノピリカ流の冗談……だったのだが。ジローの答えもまた冗談なのか、それとも……真相はわからない。
「しかしご勇名はかねがね聞き及んでおりましたのじゃ」
「いえいえ、シノピリカ殿こそ普段よりのご活躍、このジロー感服いたしますぞ。いまや自由騎士でも名の知れた存在になられておられる」
 ジローが目指すのは自由騎士一人ひとりにあわせた完璧なサポート。その為にとジローは自由騎士たちの日々の報告書を毎日のように目を通していた。目と目で何かを感じた二人。すると次の瞬間。
「「人類、みな麺類!!」」
 示し合わせたかのように言葉がシンクロするシノピリカとジロー。
「……と言ったのは誰か知らぬが、けだし名言でありますのう」
「全くですな」
「そうそう。最近流行のアマノホカリ風とか央華風とか冷やし麺はありますかのう? ワシは中でもセサミソースのものがすきでのう」
「おお、そういえばもうそんな時期ですな。もちろんありますぞ」
 おお、やはり、と目を輝かせるシノピリカ。

「あ、ジローさん、厨房にも戻る前にこれを。私からのプレゼントです。じゃじゃーん!」
 そういってフーリィンが取り出したのはラーメン──としか思えないケーキ。ラーメンどんぶりに盛り付けられたそのケーキは麺に見立てたモンブランクリーム。しょうゆと砂糖を煮詰めて作られたみたらしでスープを表現。さらにすごかったのは具材。なるとや叉焼、ねぎやメンマ、海苔に至るまで様々な材料を駆使してラーメンそっくりに作られていた。
「これは……まさにラーメンケーキですな!!」
 目を丸くして驚くジロー。
「味の保障は……えぇと、個別だとしっかり美味しいですよ? まとめて食べた時は……どうでしょうね?」
 何気に目を逸らすフーリィン。そちらは未確認のようだ。

(皆で日頃お世話になっているジローさんの笑顔をいっぱいに出来ると良いなぁ……と、心から思います)
 そんな事を思い、プレゼントを用意していたのは『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)。ジローに手渡したのは手作りのラーメン。
「おお、ラーメンですな。早速いただきましょうぞ」
 ずず、と麺をすするジロー。
「……なるほど。この歯ざわりとのどごし。これは米粉を使ったものですな」
「はい。そのとおりです。私なりに研究して作ったものです。お口に合うと良いのですが……」
「これは……美味しいですぞ!」
 そういうと一気にスープまで飲み干すジロー。丼を置いたジローは満面の笑みを見せていた。

「誕生日おめでとう。最近姿を見なかったが元気そうで何よりだ」
 しかしジローの家デカイな。意外と……稼いでるのか? そんなことを考えつつも『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)はジローに祝いを伝える。
「ありがとうございますぞ。ウェルス殿も堪能していってくだされ」
 ジローとそんな言葉を交わすとウェルスはあたりを見渡す。
(それにしても誰から話そうか。知った顔が多くて……逆に困るな)
「よぉ、元気してたか?」
 ウェルスが話しかけたのはラッシュ。同じケモノビトで獣化具合も同じ。まるで親子のような二人だ。
「あ! 元気だよ!」
 ウェルスにはすっかり子供らしい表情を見せるようになったラッシュ。そんな彼も少し前までは違っていた。その境遇のためか自分を守るため、年齢とはかけ離れた達観さで全てを見ていたのだ。
 だがウェルスが見せた大人という存在。それは頼れるもの。頼ってもいいもの。それはラッシュに元の子供らしさを取り戻させたのであった。
「最近変わったことは無いか?」
 最近は国外での活動も増えた自由騎士。だからこそ民間レベルでの国内の動きは知っておきたいウェルス。
「うーん。特に……無いかなぁ。……あ、そういえば最近ちょっとガラの悪い人たちが森にちょくちょく現れるんだ。僕たちはいつも隠れてるんだけど」
 柄の悪い人たち。もしやヤツらか。ウェルスの脳裏にある集団が浮かぶ。
「危ないことはするんじゃないぞ。何かあれば連絡してくれればいい」
 ラッシュはうんと答える。
「よし、じゃあみんなで出来立ての料理を食べようぜ」
 ウェルスはラッシュたちと麺料理を堪能したのだった。

(誕生日に何かをしてもらうのではなく、してあげるというのは素敵ですね。ふふ……食事に招かれていると言って家を出たのでお腹はしっかりと空かせていますよ!)
『はくばにのったおじさま(幻想)』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)はジローにお祝いを告げるとジローにお勧めの麺を作ってもらい、そのままリビングのソファーを独占しているテンカイの元へ。
「やはりもう飲まれていますか。それはいいのですが、ちゃんとジロー様にお祝いはされたんですか?」
「もちろん! したしたぁ~」
 いや、テンカイさんあなたここにきてからずっと飲んでるだけですよ。一言もジローにお祝い言えてませんから。はぁと軽いため息をつきながらデボラ。
「ほらほら。零しそうになってますよ。手酌するくらいなら私にやらせて下さい」
「あいあとぉー。アタシは~自由騎士のみんなが~らいすきらぁぁぁ」
 いい感じに酔いが回りろれつも回っていないテンカイを甲斐甲斐しく世話するデボラ。
(ほんっとにしょうがないなぁ)
 そうは言いながらも嬉しそうなデボラであった。

「おめでとうございます、ジロー兄さん。今年1年、引き続き兄さんの麺道が発展する事を心よりお祈り申し上げますとも」
 ジローを兄を慕う『おちゃがこわい』サブロウ・カイトー(CL3000363)も祝辞を述べる。
「ありがとうございますぞ」
 ジローはそんなサブロウに笑顔で答える。
「お祝いに来たのに御馳走されるのも恐縮ですが……折角の祝宴ですからね。遠慮なく、麺を手繰らせて頂きましょう」
 サブロウが手に取ったのはジソウが今もまさに打ち続けている手打ちのソバ。その茹でたてをジローが丹念にあくを取り、少し辛めに仕上げた冷たい汁で頂く。
「アマノホカリ風の蕎麦切りが頂けるのは嬉しい限りです。冷水で締めたお蕎麦をつるりと行くのは、この季節には何よりも贅沢ですなあ」
 サブロウの箸が止まらない。
「うむ、美味い! 二八で喉越し爽やか、ナイス麺類!」
 舌鼓を打つサブロウのソバにはいつしかケモノ連合のメンバーが集まっていた。
「やぁトビー君。元気だったかい?」
 サブロウの投げかけに元気よくうんと答えるトビー。その笑顔を見たサブロウは確信する。いずれこの子達と自由騎士として共に戦場を書けることになるのだろう、と。
 そしてそれとは別にサブロウはこの後ある衝撃に事実を知る事になる。ジローが実は年下であったという事実を──。

 宴もたけなわ。
 みなの歌がはじまる。歌にあわせて踊りを披露したのはモカ。華麗な踊りで場を盛り上げる。
 そして誕生日会は幕を閉じる。

 全ての誕生日を迎える人々に幸あらんことを。 




†シナリオ結果†

成功

†詳細†

特殊成果
『生麺』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員

†あとがき†

リプレイの公開までお時間を頂き申し訳ありません。
ジローの誕生日を祝っていただきありがとうございました。

MVPは盛り上げていただいた皆様へ

ご参加ありがとうございました。
FL送付済