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平穏を壊す足音

●
闇が世界を支配し、誰もが寝静まった夜遅く。シャンバラ、ニルヴァン小管区より少し離れた森の奥深く、暗い闇の中をランタンの光が森の中を照らしていた。光の数は七つ。その数は光源を持つ彼らの人数を表していた。その光がそれを持つ者の姿を照らしす。
夜の森を黙々と歩いていく集団……オニヒトだ。
オニヒトの集団は森の奥深くの滝の前で足を止めた。
「おい、案内人を出せ」
オニヒトの中でもとりわけガタイのいい男が言う。この男がこの集団のリーダーなのだろう。男の後ろのオニヒトが「はい」と言って背負っていた袋の中身を取り出す。
袋から出てきたのはヨウセイの少女だった。手足に拘束具をはめられ、口と目も布で覆われている。
男は袋から少女を出すと、少女の口と目の布を外した。
布の下の目はまるで遠い場所を見ているかのように虚ろで、よく見ると少女の体には無数の痣や傷が刻まれていた。
「ここで間違いないんだな?」
リーダー格の男が言う。捕らえられたヨウセイの少女は何も言わずコクリと力なく頷いた。
この滝が彼女たちの住処への入り口なのだ。リーダー格の男がにやりと笑う。
「この奥に魔女どもの住処がある。奴らを全員見つけ出し、裁きを与える!」
リーダーか格の男が声を上げると他のオニヒト達も口々に声を上げる。
「捕らえろ!」
「捕らえろ!」
「捕まえろ!」
「魔女は一人残らず捕まえろ!」
狂気に取りつかれた声が森の中に木霊した。
●
「――と言うわけである」
クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士達に事の経緯を告げる。
事態が事態だ。全員神妙な面持ちで演算結果を聞いていた。
「幸い、このオニヒト達の戦闘力はそれほど高くない。君たちならば人質にされているヨウセイの少女を救出し、彼女たちの住処を守ってくれると信じている」
クラウスが言うと自由騎士たちは無言で頷くと、役目を果たすべく部屋を後にした。
闇が世界を支配し、誰もが寝静まった夜遅く。シャンバラ、ニルヴァン小管区より少し離れた森の奥深く、暗い闇の中をランタンの光が森の中を照らしていた。光の数は七つ。その数は光源を持つ彼らの人数を表していた。その光がそれを持つ者の姿を照らしす。
夜の森を黙々と歩いていく集団……オニヒトだ。
オニヒトの集団は森の奥深くの滝の前で足を止めた。
「おい、案内人を出せ」
オニヒトの中でもとりわけガタイのいい男が言う。この男がこの集団のリーダーなのだろう。男の後ろのオニヒトが「はい」と言って背負っていた袋の中身を取り出す。
袋から出てきたのはヨウセイの少女だった。手足に拘束具をはめられ、口と目も布で覆われている。
男は袋から少女を出すと、少女の口と目の布を外した。
布の下の目はまるで遠い場所を見ているかのように虚ろで、よく見ると少女の体には無数の痣や傷が刻まれていた。
「ここで間違いないんだな?」
リーダー格の男が言う。捕らえられたヨウセイの少女は何も言わずコクリと力なく頷いた。
この滝が彼女たちの住処への入り口なのだ。リーダー格の男がにやりと笑う。
「この奥に魔女どもの住処がある。奴らを全員見つけ出し、裁きを与える!」
リーダーか格の男が声を上げると他のオニヒト達も口々に声を上げる。
「捕らえろ!」
「捕らえろ!」
「捕まえろ!」
「魔女は一人残らず捕まえろ!」
狂気に取りつかれた声が森の中に木霊した。
●
「――と言うわけである」
クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士達に事の経緯を告げる。
事態が事態だ。全員神妙な面持ちで演算結果を聞いていた。
「幸い、このオニヒト達の戦闘力はそれほど高くない。君たちならば人質にされているヨウセイの少女を救出し、彼女たちの住処を守ってくれると信じている」
クラウスが言うと自由騎士たちは無言で頷くと、役目を果たすべく部屋を後にした。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.ヨウセイ達の住処を守る
2.人質となっているヨウセイの少女を救出する
3.オニヒトの討伐
2.人質となっているヨウセイの少女を救出する
3.オニヒトの討伐
初めまして雨傘と申します。
シャンバラ、ニルヴァンの小管区付近の森林奥地で暮らす、ヨウセイ達の住処を狙ったオニヒト達の魔女狩りを阻止することが今回の依頼です。
成功条件は、ヨウセイの住処の死守、人質のヨウセイの少女の救出、オニヒトの討伐とします。
深夜の森、人質の存在という悪条件での任務となりますので、そこには注意が必要かと思いますので光源などの持ち込みは可能とします。
またオニヒトは武装もしており、各々剣、斧などの近接武器で武装しています。
戦闘スタイルとしては全員近接戦闘を得意とし飛び道具の類はありません。
リーダー格の男の後ろにいる男がヨウセイの少女の入った袋を持っています。まずは少女の安全の確保を第一目標とすることで、その後の戦闘がしやすいと推測されるかと思います。
シャンバラ、ニルヴァンの小管区付近の森林奥地で暮らす、ヨウセイ達の住処を狙ったオニヒト達の魔女狩りを阻止することが今回の依頼です。
成功条件は、ヨウセイの住処の死守、人質のヨウセイの少女の救出、オニヒトの討伐とします。
深夜の森、人質の存在という悪条件での任務となりますので、そこには注意が必要かと思いますので光源などの持ち込みは可能とします。
またオニヒトは武装もしており、各々剣、斧などの近接武器で武装しています。
戦闘スタイルとしては全員近接戦闘を得意とし飛び道具の類はありません。
リーダー格の男の後ろにいる男がヨウセイの少女の入った袋を持っています。まずは少女の安全の確保を第一目標とすることで、その後の戦闘がしやすいと推測されるかと思います。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年02月13日
2019年02月13日
†メイン参加者 8人†
夜も深くなり、闇が世界を覆ったような暗い森の中をランタンの光が移動している。光の数は七つ。それはこれから戦うことになるオニヒト達の数でもある。
『果たせし十騎士』柊・オルステッド(CL3000152)、『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)、アデル・ハビッツ(CL3000496)、『RE:LIGARE』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)、『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)の五人は静かにその光を見つけると足音静かに近づいていく。
作戦上、五人は陽動。偶然を装いながら彼らに接触し、彼らの注意を引き付ける役割だ。 故に最終的には見つかる必要があるのだが、それでもまだオニヒト達との距離が遠い間に相手に気づかれてしまっては陽動の意味がない。だから三人は出来るだけ静かに彼らとの距離を詰めていく。
その距離が三十メートルまで達したところで、柊が派手に足元の小枝を踏み抜く。パチンという音を鳴らして小枝が折れる。当然オニヒト達はその音に気付かないわけがない。リーダー格らしき人物が「誰だ!」と叫んだ。
わかりやすくて助かる。五人はそれに戸惑うことなくオニヒト達の正面に立つ。
アデルがカンテラで光を灯す。闇夜の中に五人の姿が照らし出される。
「貴様ら、何者だ?」
リーダー格らしき人物が言う。
「何ていうか、あなた達みたいな末端はいろいろと雑よね」
そう言ってミルトスがそんなこと聞くまでもないだろうとため息をつく。五人は姿こそ隠していたが、武装を隠しているわけだはない。カンテラの明かりでお互いが見えている中で五人が彼らの見方であることは間違いなくゼロに等しい。それがわかっているのに「貴様ら、何者だ?」とはテンプレにも程がある。
報告にあった捕らえろ、捕らえろの大合唱と言い、彼らはまるで寸劇かのような動きをする。
「まぁ、少なくとも君たちの味方じゃないだろ?」
柊が嘘偽ることなく言う。これで相手も疑いから確信に変わったのだろう明らかに敵意むき出しの瞳が五人に向けられる。
「目的は?」
「そうですねー、とりあえずその袋の中身。というのはどうでしょう?」
リーダー格の男の質問にフーリィンが答える。これでオニヒト達もフーリィン達をほおっておくことは出来ない。
「そうか……ならば死ね!」
リーダー格の男の言葉で、後ろに控えていたオニヒト三人が、五人に向かって襲い掛かってくる。
「まったく、これだから狂信者は嫌いだわ!」
きゐこが言う。もう少し会話で注意を引き付けようと思ったが、彼らは何も考えずに突っ込んできた。もう少し考えることもあっただろう……
そんな風に思う。けれど経緯はどおあれ彼らの注意は完全に五人に向いていた。
他の者への注意がそれ、七人で固まっていたうちの三人が人質である少女の入った袋の近くから離れた。このチャンスを逃すわけにはいかない。
オニヒト三人が駆けだしたのと同時に木の陰に隠れたいた『孤高の技巧屋』虎鉄・雲母(CL3000448)が動く。人質の救出役の彼はオニヒト達との距離を一気に詰める。
狙いは一つ。人質のヨウセイの入った袋。それを奪おうとそれを持つ男めがけて走る。
しかしそれに気が付いたオニヒトがそれを阻む。
「何者だ貴様!」
そう言いながらも手にいていたナイフを振るう。何者だなどと叫んではいるが、この状況。敵なのはわかっている。だから彼らの攻撃にも迷いはない。
「ん、やっぱり厳しいか」
敵は七人。内三人が陽動に引き付けられた状況とは言え、人数は相手の方が上だ。そうそう袋まで到達できるわけではない。虎鉄は振り下ろされたナイフを躱す。
虎鉄に気でいて襲い掛かってきたオニヒトが二人。繰り出されるナイフの攻撃もそう簡単には避け続けることはできない。ナイフが虎鉄の顔をかすめた。
劣勢。しかし、次の瞬間には襲い掛かていた二人が崩れ落ちた。
「ぐぁぁッ!」
オニヒト達が悲鳴を上げる。
『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)のピンポイントシュートがオニヒト達の膝を打ち抜いたのだ。
「くッ、クソ」
二人が膝をついたのを見てヨウセイの袋を持つ男がその場を離れようとする。それを虎鉄が追う。
「させるかよォ!」
虎鉄と男の間にリーダ格の男が割って入る。またしても少女に近づけない。虎鉄が小さく舌打ちをする。だが次の瞬間にはその顔が緩んだ。
虎鉄の笑み。その理由はリーダー格の男たちの後ろにあった。
「残念、その袋の中身。返して頂きます」
その声と同時に袋を持つ男が地面に倒れ、それと入れ替わる形で『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)が立っていた。
カスカは男の持っていた袋を取り上げるとっすぐさま後退する。
「馬鹿な!? 近づく物音はなかったはずだ!」
オニヒトの一人が声を上げる。
「音を立てたくなければ、地を走らず空を走ればいいんですよ」
カスカニコリと笑て言う。
枯れ木や落ち葉の多い森の中で音を立てず近づけた理由は簡単。地面を歩けば音を立ててしまうのならば地面を歩かなければいい。
カスカは影狼でオニヒトに近づくと、オニヒト達のすぐ近くの気に着地そのまま木を蹴り人質の入った袋を持つ男の元へ降り立った。
音がしたのは気を蹴り上げた時の一瞬だけ。しかしそれに気づいた時には男はカスカの刀に倒れていた。
「作戦成功ね」
アンネリーザがカスカの元へ近寄りながら言う。
「えぇ、成功です」
カスカもそれに笑顔で答える。五人が注意をそらし、その隙を生かして三人が人質を解放するその作戦は見事に成功したと言えるだろう。
二人の間に笑顔がこぼれる。
だがまだ戦闘は終わっていない。二人は真剣な表情でオニヒト達に向かい合う。するとさらに声がした。
「形勢逆転……で間違いないでしょうか?」
フーリィンだ。地面には五人に襲い掛かったオニヒト三人が倒れている。
襲い掛かってきたオニヒトはカスカ達三人の奇襲に気を取られ、一瞬注意がそがれた。その隙を五人は見逃さない。
きゐこのコキュートス、柊の疾風刃、アデルのバッシュがそれぞれを襲い。その結果彼らはこうして地面に崩れ落ちる結果となった。
「間違いないと思うね」
きゐこが満足げに答える。人質の奪取。敵戦力の分散と分散した戦力の打倒。それらすべてが達成された。人質を取られ不利だった状況から一気に逆転だ。
「貴様ら……」
リーダー格の男は怒りの形相でこちらを八人を見ている。当然だ。住処に通じる場所をの案内役たるヨウセイの少女を奪取され、人数も相手の方が上。人質を取り返されたこの状況で戦うのは圧倒的に不利。
それでも、相手は戦うことをやめるそぶりはない。むしろさらに目は血走り、相手を殺すという感情に囚われているようだった。いつ彼らがまた襲い掛かてくるかわからない。
静寂がしばらく訪れる。だが、その静寂もすぐに終わりを告げる。
やはり先に動きだしたのはオニヒト達だった。残るオニヒト三人が少女の入った袋を持つカスカに向かって同時に動く。
人質を取り返され、劣勢の彼らがこの状況を逆転するためためには人質を取り返す他にない。三人がカスカの元へと走る。
それに対してアンネリーザもウェッジショットで応戦するが相手は三人なかなか命中にとはいかない。敵は三人。動き回る相手に遮蔽物の多いこの場所では遠距離攻撃を当てることは難しい。
「死ね!」
オニヒトが武器を抜く。武器はそれぞれ斧とナイフ。リーダー格の男は剣をそれぞれ抜いた。そしてそのままカスカ達に襲い掛かる。
しかし、それを阻む影。アデルとミルトスだ。劣勢にたたされたオニヒトがとる行動は一つ。人質の奪取。それは誰もが容易に想像できた。だからこそ二人はすでに回り込んでいた。されに後方にはフーリィンも控えている。やはり皆考えることは一緒だったようだ。
人質の安全の確保それが最優先んだ。
アデルは槍を構え狙いを定める。この攻撃は必中でなければならない。自分たちが突破されてしまえばカスカ達は人質を守りながらの戦闘になってしまう。
それは確実にリスクが生じる。だからこそ今ここで食い止める必要がある。それはミルトスも同じだ二人ともミスは許されない。
オニヒトが駆けるそれを待ち構え必中の一撃を放つ。
「はっ!」
「くらえ!」
震撃。
バッシュ。
二人の攻撃がオニヒトの体を捉える。部下のオニヒトはすでにピンポイントショットのダメージで動きが鈍かったぶん正確に攻撃が命中する。
攻撃の反動で数メートル後ろに吹き飛ばされるとそのまま動くことは無かった。
「役立たず共がッ!」
リーダー格の男はまだ倒れない二人の攻撃を喰らってなおその動きを止めない。流石にこの集団をまとめているだけある。これだけ攻撃を受けてもいまだ倒れない。
二人の横を過ぎ、人質へと向かう。そのスピードは衰えない。
「しまった!」
アデルが声を上げる。突破されれるわけにはいかないそう思って投じた技だったが男を止めることは出来なかった。
「アンネリーザさん、フーリィンさん。袋をお願いします」
男が二人を突破してきたのを見てカスカが動く遠距離と回復役の二人よりも同じ近接武器である自分が戦ったほうがいいと判断したからだ。
そう判断し、カスカは人質を二人に預け、向かってくる男に対して刀を抜く。
剣と刀がぶつかり鈍い音が響く。力はほぼ互角。しかしすでにダメージを負っているせいか剣を合わせた衝撃に体がグラついた。
カスカはそれを逃さない。重なり合った状態から相手の剣を弾くと追撃を与える。
これで確実に決める。その意思を持って放たれたトリロジーストライクが男の体に命中する。
「がぁあッ!」という悲鳴を上げて男が倒れた。
戦闘終了後、袋から人質にされていたヨウセイの少女を解放した。少女は最初こそ怯えていたが。八人が敵ではないことがわかると少しずつだが笑顔を見せるようになった。
しかし事前の報告通り体のいたるところに痛めつけられたような傷が無数にあり、その姿は痛々しいものだった。
「もう大丈夫、貴方を脅かす敵はもういませんからね♪」
フーリィンがせめてもと傷を治癒していく。もっとも、外見の傷は治っても、こころの傷が簡単に言えることは無い。
彼女の中には確実に恐怖が刻まれている。
「こんなことをしやがるなんて。同族として情けない……本当にすまない」
少女の体に刻まれた傷を見て虎鉄が少女に頭を下げる。同族として彼自身考えるところがあるのだろう。
「虎鉄さんのせいじゃありませんよ」
フーリィンが少女を治癒しながら言う。
「そうですよ」
ミルトスも頷いた。同族の失態とは言え無関係の人物だ彼が責任や罪悪感を感じる必要はない。ヨウセイの少女もうんっと頷いた。
「そうか……ありがとう」
虎鉄が少女に微笑みながら感謝を口にした。
「とりあえず。彼女を住処まで送っていきましょう」
少女の傷の手当てが終わった後、きゐこが言う。
「そうだね。私たちも同行したほうがいいでしょう。また襲われてはいけませんし……」
アンネリーザが言う。敵はは除したとはいえ油断できないのは事実だ。きゐこの言う通り、彼女を送り届けたほうがいいだろう。それに異論のあるものはいない。
「それと今現状を住処の人たちに教えてあげたり情報収集もしたいのだわ」
きゐこの意見には皆の同意だった。もう一度このような事態に陥らないためにも一度住処のヨウセイたちに会う必要がある。
それにシャンバラについての有益な情報を得ることにも繋がるかもしれない。当然ヨウセイ達の安全のためだが、自由騎士としても住処を訪れないわけにはいかない。
しかし彼女たちの住処勝手に入っていいものなのかも自由騎士たちにはわからない。
そこでフーリィンが「そうね。もしよかったらお姉さん達に住処まで連れて行って他の仲間たちとお話させてほしいのだけれど、いいかな?」と少女に質問する。
すると少女はうんと頷いて「ありがとうございます」と笑った。大丈夫そうだ。
「それじゃあ行こうか!」
ミルトスがそう言うと。九人は夜の森の中をゆっくりと進んでいった。
『果たせし十騎士』柊・オルステッド(CL3000152)、『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)、アデル・ハビッツ(CL3000496)、『RE:LIGARE』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)、『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)の五人は静かにその光を見つけると足音静かに近づいていく。
作戦上、五人は陽動。偶然を装いながら彼らに接触し、彼らの注意を引き付ける役割だ。 故に最終的には見つかる必要があるのだが、それでもまだオニヒト達との距離が遠い間に相手に気づかれてしまっては陽動の意味がない。だから三人は出来るだけ静かに彼らとの距離を詰めていく。
その距離が三十メートルまで達したところで、柊が派手に足元の小枝を踏み抜く。パチンという音を鳴らして小枝が折れる。当然オニヒト達はその音に気付かないわけがない。リーダー格らしき人物が「誰だ!」と叫んだ。
わかりやすくて助かる。五人はそれに戸惑うことなくオニヒト達の正面に立つ。
アデルがカンテラで光を灯す。闇夜の中に五人の姿が照らし出される。
「貴様ら、何者だ?」
リーダー格らしき人物が言う。
「何ていうか、あなた達みたいな末端はいろいろと雑よね」
そう言ってミルトスがそんなこと聞くまでもないだろうとため息をつく。五人は姿こそ隠していたが、武装を隠しているわけだはない。カンテラの明かりでお互いが見えている中で五人が彼らの見方であることは間違いなくゼロに等しい。それがわかっているのに「貴様ら、何者だ?」とはテンプレにも程がある。
報告にあった捕らえろ、捕らえろの大合唱と言い、彼らはまるで寸劇かのような動きをする。
「まぁ、少なくとも君たちの味方じゃないだろ?」
柊が嘘偽ることなく言う。これで相手も疑いから確信に変わったのだろう明らかに敵意むき出しの瞳が五人に向けられる。
「目的は?」
「そうですねー、とりあえずその袋の中身。というのはどうでしょう?」
リーダー格の男の質問にフーリィンが答える。これでオニヒト達もフーリィン達をほおっておくことは出来ない。
「そうか……ならば死ね!」
リーダー格の男の言葉で、後ろに控えていたオニヒト三人が、五人に向かって襲い掛かってくる。
「まったく、これだから狂信者は嫌いだわ!」
きゐこが言う。もう少し会話で注意を引き付けようと思ったが、彼らは何も考えずに突っ込んできた。もう少し考えることもあっただろう……
そんな風に思う。けれど経緯はどおあれ彼らの注意は完全に五人に向いていた。
他の者への注意がそれ、七人で固まっていたうちの三人が人質である少女の入った袋の近くから離れた。このチャンスを逃すわけにはいかない。
オニヒト三人が駆けだしたのと同時に木の陰に隠れたいた『孤高の技巧屋』虎鉄・雲母(CL3000448)が動く。人質の救出役の彼はオニヒト達との距離を一気に詰める。
狙いは一つ。人質のヨウセイの入った袋。それを奪おうとそれを持つ男めがけて走る。
しかしそれに気が付いたオニヒトがそれを阻む。
「何者だ貴様!」
そう言いながらも手にいていたナイフを振るう。何者だなどと叫んではいるが、この状況。敵なのはわかっている。だから彼らの攻撃にも迷いはない。
「ん、やっぱり厳しいか」
敵は七人。内三人が陽動に引き付けられた状況とは言え、人数は相手の方が上だ。そうそう袋まで到達できるわけではない。虎鉄は振り下ろされたナイフを躱す。
虎鉄に気でいて襲い掛かってきたオニヒトが二人。繰り出されるナイフの攻撃もそう簡単には避け続けることはできない。ナイフが虎鉄の顔をかすめた。
劣勢。しかし、次の瞬間には襲い掛かていた二人が崩れ落ちた。
「ぐぁぁッ!」
オニヒト達が悲鳴を上げる。
『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)のピンポイントシュートがオニヒト達の膝を打ち抜いたのだ。
「くッ、クソ」
二人が膝をついたのを見てヨウセイの袋を持つ男がその場を離れようとする。それを虎鉄が追う。
「させるかよォ!」
虎鉄と男の間にリーダ格の男が割って入る。またしても少女に近づけない。虎鉄が小さく舌打ちをする。だが次の瞬間にはその顔が緩んだ。
虎鉄の笑み。その理由はリーダー格の男たちの後ろにあった。
「残念、その袋の中身。返して頂きます」
その声と同時に袋を持つ男が地面に倒れ、それと入れ替わる形で『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)が立っていた。
カスカは男の持っていた袋を取り上げるとっすぐさま後退する。
「馬鹿な!? 近づく物音はなかったはずだ!」
オニヒトの一人が声を上げる。
「音を立てたくなければ、地を走らず空を走ればいいんですよ」
カスカニコリと笑て言う。
枯れ木や落ち葉の多い森の中で音を立てず近づけた理由は簡単。地面を歩けば音を立ててしまうのならば地面を歩かなければいい。
カスカは影狼でオニヒトに近づくと、オニヒト達のすぐ近くの気に着地そのまま木を蹴り人質の入った袋を持つ男の元へ降り立った。
音がしたのは気を蹴り上げた時の一瞬だけ。しかしそれに気づいた時には男はカスカの刀に倒れていた。
「作戦成功ね」
アンネリーザがカスカの元へ近寄りながら言う。
「えぇ、成功です」
カスカもそれに笑顔で答える。五人が注意をそらし、その隙を生かして三人が人質を解放するその作戦は見事に成功したと言えるだろう。
二人の間に笑顔がこぼれる。
だがまだ戦闘は終わっていない。二人は真剣な表情でオニヒト達に向かい合う。するとさらに声がした。
「形勢逆転……で間違いないでしょうか?」
フーリィンだ。地面には五人に襲い掛かったオニヒト三人が倒れている。
襲い掛かってきたオニヒトはカスカ達三人の奇襲に気を取られ、一瞬注意がそがれた。その隙を五人は見逃さない。
きゐこのコキュートス、柊の疾風刃、アデルのバッシュがそれぞれを襲い。その結果彼らはこうして地面に崩れ落ちる結果となった。
「間違いないと思うね」
きゐこが満足げに答える。人質の奪取。敵戦力の分散と分散した戦力の打倒。それらすべてが達成された。人質を取られ不利だった状況から一気に逆転だ。
「貴様ら……」
リーダー格の男は怒りの形相でこちらを八人を見ている。当然だ。住処に通じる場所をの案内役たるヨウセイの少女を奪取され、人数も相手の方が上。人質を取り返されたこの状況で戦うのは圧倒的に不利。
それでも、相手は戦うことをやめるそぶりはない。むしろさらに目は血走り、相手を殺すという感情に囚われているようだった。いつ彼らがまた襲い掛かてくるかわからない。
静寂がしばらく訪れる。だが、その静寂もすぐに終わりを告げる。
やはり先に動きだしたのはオニヒト達だった。残るオニヒト三人が少女の入った袋を持つカスカに向かって同時に動く。
人質を取り返され、劣勢の彼らがこの状況を逆転するためためには人質を取り返す他にない。三人がカスカの元へと走る。
それに対してアンネリーザもウェッジショットで応戦するが相手は三人なかなか命中にとはいかない。敵は三人。動き回る相手に遮蔽物の多いこの場所では遠距離攻撃を当てることは難しい。
「死ね!」
オニヒトが武器を抜く。武器はそれぞれ斧とナイフ。リーダー格の男は剣をそれぞれ抜いた。そしてそのままカスカ達に襲い掛かる。
しかし、それを阻む影。アデルとミルトスだ。劣勢にたたされたオニヒトがとる行動は一つ。人質の奪取。それは誰もが容易に想像できた。だからこそ二人はすでに回り込んでいた。されに後方にはフーリィンも控えている。やはり皆考えることは一緒だったようだ。
人質の安全の確保それが最優先んだ。
アデルは槍を構え狙いを定める。この攻撃は必中でなければならない。自分たちが突破されてしまえばカスカ達は人質を守りながらの戦闘になってしまう。
それは確実にリスクが生じる。だからこそ今ここで食い止める必要がある。それはミルトスも同じだ二人ともミスは許されない。
オニヒトが駆けるそれを待ち構え必中の一撃を放つ。
「はっ!」
「くらえ!」
震撃。
バッシュ。
二人の攻撃がオニヒトの体を捉える。部下のオニヒトはすでにピンポイントショットのダメージで動きが鈍かったぶん正確に攻撃が命中する。
攻撃の反動で数メートル後ろに吹き飛ばされるとそのまま動くことは無かった。
「役立たず共がッ!」
リーダー格の男はまだ倒れない二人の攻撃を喰らってなおその動きを止めない。流石にこの集団をまとめているだけある。これだけ攻撃を受けてもいまだ倒れない。
二人の横を過ぎ、人質へと向かう。そのスピードは衰えない。
「しまった!」
アデルが声を上げる。突破されれるわけにはいかないそう思って投じた技だったが男を止めることは出来なかった。
「アンネリーザさん、フーリィンさん。袋をお願いします」
男が二人を突破してきたのを見てカスカが動く遠距離と回復役の二人よりも同じ近接武器である自分が戦ったほうがいいと判断したからだ。
そう判断し、カスカは人質を二人に預け、向かってくる男に対して刀を抜く。
剣と刀がぶつかり鈍い音が響く。力はほぼ互角。しかしすでにダメージを負っているせいか剣を合わせた衝撃に体がグラついた。
カスカはそれを逃さない。重なり合った状態から相手の剣を弾くと追撃を与える。
これで確実に決める。その意思を持って放たれたトリロジーストライクが男の体に命中する。
「がぁあッ!」という悲鳴を上げて男が倒れた。
戦闘終了後、袋から人質にされていたヨウセイの少女を解放した。少女は最初こそ怯えていたが。八人が敵ではないことがわかると少しずつだが笑顔を見せるようになった。
しかし事前の報告通り体のいたるところに痛めつけられたような傷が無数にあり、その姿は痛々しいものだった。
「もう大丈夫、貴方を脅かす敵はもういませんからね♪」
フーリィンがせめてもと傷を治癒していく。もっとも、外見の傷は治っても、こころの傷が簡単に言えることは無い。
彼女の中には確実に恐怖が刻まれている。
「こんなことをしやがるなんて。同族として情けない……本当にすまない」
少女の体に刻まれた傷を見て虎鉄が少女に頭を下げる。同族として彼自身考えるところがあるのだろう。
「虎鉄さんのせいじゃありませんよ」
フーリィンが少女を治癒しながら言う。
「そうですよ」
ミルトスも頷いた。同族の失態とは言え無関係の人物だ彼が責任や罪悪感を感じる必要はない。ヨウセイの少女もうんっと頷いた。
「そうか……ありがとう」
虎鉄が少女に微笑みながら感謝を口にした。
「とりあえず。彼女を住処まで送っていきましょう」
少女の傷の手当てが終わった後、きゐこが言う。
「そうだね。私たちも同行したほうがいいでしょう。また襲われてはいけませんし……」
アンネリーザが言う。敵はは除したとはいえ油断できないのは事実だ。きゐこの言う通り、彼女を送り届けたほうがいいだろう。それに異論のあるものはいない。
「それと今現状を住処の人たちに教えてあげたり情報収集もしたいのだわ」
きゐこの意見には皆の同意だった。もう一度このような事態に陥らないためにも一度住処のヨウセイたちに会う必要がある。
それにシャンバラについての有益な情報を得ることにも繋がるかもしれない。当然ヨウセイ達の安全のためだが、自由騎士としても住処を訪れないわけにはいかない。
しかし彼女たちの住処勝手に入っていいものなのかも自由騎士たちにはわからない。
そこでフーリィンが「そうね。もしよかったらお姉さん達に住処まで連れて行って他の仲間たちとお話させてほしいのだけれど、いいかな?」と少女に質問する。
すると少女はうんと頷いて「ありがとうございます」と笑った。大丈夫そうだ。
「それじゃあ行こうか!」
ミルトスがそう言うと。九人は夜の森の中をゆっくりと進んでいった。