MagiaSteam
坑道にイヌがいたりあったりする。




「よい耳はアオイヌへ。それなりの耳はイヌアタマへ」
『発明家』佐クラ・クラン・ヒラガ(nCL3000008)が、たはは~。と、ピンクのおさげを弾ませる。
「採るのが危険かつ面倒で手つかずの鉱山があります」
 こんころりんと転がされるのは原石だ。これを探して来ればいいらしい。白いぬめぬめした質感の地にぴかぴか光る青色。まあ、見誤ることはあるまい。
「この鉱石、アオイヌと言います。割ると断面が横向きの犬の形になりますの。そこから削りだして使います」
 さすがにこの場で割って見せてはくれないらしい。
「この鉱石、別の岩に包まれるような恰好で埋まってるんです」
 卵の黄身と白身みたいになってるんだね。
「見た目じゃまず区別がつかない似た岩と斑に埋まってて、外れの方を掘ってくと、大抵イヌアタマの巣? につくんです」
 佐クラは、紙に何やら書き始めた。
「イヌアタマ、分かります? 分類としては岩の化け物。こう、岩肌から犬の頭が生えててぎゃわんぎゃわんうるそうて気持ち悪ぅなるのと、近づくと噛みついてきます。今回はそれの駆除も兼ねてということであんじょうよろしくおねがいします。それがいっぱいありますと、普通の鉱夫さん難儀しますよって」
 紛らわしいことによく似た別の卵も埋まってて、そっちは魔物が詰まってるんだね。
 巣? と、半疑問文だったのは実際生活しているわけじゃないからか。
「鉱石の周りにある檻石はキンキンときれいな音がします。イヌアタマに行く犬小屋石はゴンゴン言います。イヌアタマの鉱脈は割とあります。アオイヌはやっぱり少ないんです。鉱石五袋は欲しいんです。イヌアタマ二つで鉱石一袋と同じとしますので、イヌアタマ駆除も熱烈歓迎です。駆除した坑道に本職の鉱夫さんに入ってもらえますし」
 でも、オラクルが掘ってきた方が早いんだね。
「どっちが出ても万々歳です。よろしゅうおねがいします」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
資源発掘α
担当ST
田奈アガサ
■成功条件
1.鉱石「アオイヌ」を五つ。
2.もしくは、1に相当するイヌアタマ討伐。
3.イヌアタマ二つをアオイヌ一つに換算する。混ざっても問題なし。
 田奈です。
 鉱石狙いでも、魔物退治でもどっちでも依頼主が喜びます。
 面子の構成と得意分野で調整してください。

*鉱石『アオイヌ』×0~1×発掘回数
 色が他に類を見ない上、鉱脈のそばに魔物がでるのもあって希少。
*鉱石『檻石』 
 アオイヌを抱えるようにして埋まっている黒色の石。叩くとキンキンといい音がする。固いので掘るのに時間がかかる。掘りきった者には腕ががくがく。ウィーク1が付く。なんらかのスキルを持っていると負担が軽減できる可能性がある。
 物理攻撃が何も考えないでいい分一番手っ取り早いです。
 魔道攻撃は効くのもあればほどほどもあれば全く効かないのもあります。

*幻想種『イヌアタマ』×1~2×発掘回数
 外見は岩でできた犬の頭のみ。檻岩に寄生している形なので、死ぬとごろりと岩から落ちる。これはこれで需要がある。
 喚く:遠魔範 コンフュ1 激しく吠えます。うるさくて頭ガンガンします。
 噛む:近物単 フリーズ1 がっつりかまれて動けません。
*鉱石『犬小屋石』
 イヌアタマを抱えるようにして埋まっている黒色の石。見た目は檻石と区別がつかない(判別には何らかのスキルが必要)叩くとゴンゴンと鈍い音がする。もろいので掘るのに手間がかからないが、幻想種が寄生しやすい。

環境
 坑道です。
 暗いです。天候に左右はされませんが、空気は悪いです。物理で。
 さわやかになると士気が上がるかもしれません。
 標準的なランタンや掘削道具は佐クラが手配してくれますが、手がふさがらないよう自前の道具を準備するのはありです。
 何とか二人並んで戦闘できる程度の広さです。
 天井は1.8メートルです。長身の方は腰をかがめて移動することになります。
 さらに縦幅・横幅がほしいときはその場で掘ってください。
 犬小屋石は比較的もろいので、1人が戦闘できる幅は2ターンで確保できます。
 しつこいようですが犬小屋石は比較的もろいので、全員生き埋めになりたくないならば、爆破など物理系範囲・貫通攻撃は細心の注意を払ってください。

 主坑道から脇にそれるように掘っていきます。幅は主坑道と同じ、二人並んで戦闘できる幅を掘ることになります。
 試行回数は最大10回です。6回過ぎると疲労と坑道における呼吸困難ですべての行動にウィーク1がつきます。
 掘ってすぐに「犬小屋」か「檻」に当たりますが、見た目ではわかりません。見極め判定が発生します。大抵は叩いて音や手ごたえで判断します。自分が得意と思われるやり方をそれぞれ模索してください。
 何らかのスキルを持っていると、難易度が下がります。
 何をどのくらい掘る方針は、皆さんで相談してください。
(アオイヌ採取に主体を置く。イヌアタマ討伐に主体を置く。出た方に臨機応変に対処するなど)

 サポートさんは灯り確保や掘った石片付けや戦闘時の坑道拡張や取得物預かりなどのお手伝いをするとメイン参加者の行動ペナルティ要素が軽減します。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
21モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
6/8
公開日
2018年07月06日

†メイン参加者 6人†




 息詰まる狭さ。ぶら下がるカンテラ。活気がないのはこの鉱山がながらく封鎖されていたせいだ。
「魔物がいるとはいえ、採掘までやるんだな。自由騎士団って」
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)の素朴な感想。
 新興組織は、既存組織の隙間を埋めるように勢力を拡大するものである。ついでに各方面の顔つなぎも大事な地盤固めの一つだ。売った恩はプライスレスだ。
「……まぁ、話のネタになるだろうし別にいいんだけどな」
 佐クラ嬢とお近づきになりたいウェルスとしては悪くない依頼だ。
『イヌアタマに耳栓は気休め程度です。でも、あれば便利ですな。今後の参考にさせてもらいます』
 出掛けに交わした会話が今後のムフフ展開につながればいい。
『エルローの七色騎士』柊・オルステッド(CL3000152)は、常とは違う目の使い方をして壁を見る。
「ああ、うん。黒い石があるな。どっちかはわからないけど」
 土煙を吸わないよう口をタオルで覆っているので、若干声がくぐもっているが、意思疎通に影響はない。
「檻石」と「犬小屋石」の違いを見た眼で判断するのは難しい。
 中がアオイヌかイヌアタマかはもう少し掘って柊のリュンケウスの瞳に映るまで区別がつかない。
 しかし、坑道内の酸素濃度には限界がある。オラクルが元気いっぱいに採掘できるのはせいぜい5回。そこから遭難しない限界まで粘ってもう五回だ。それ以上は山から下りてこられなくなる。
「できるだけ戦いを避けてアオイヌを採取したいところですね」
 サーモグラフィで柊と同じ箇所を凝視する『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)の視界で石の塊は沈黙を続けている。熱源は見受けられない。
(生き物であれば熱を持っているはずですからね)
 岩製の幻想種の「体温」に関しての報告は現時点ではない。今回の採掘結果は一資料としての価値はあるだろう。
「出来る限り犬小屋は避けたいですが、どこを掘り進めても犬小屋に当たる場合は覚悟を決めましょう」
『イ・ラプセル自由騎士団』ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)は、索敵に励んでいる。
「イヌアタマはこっちの壁の奥の気がする」
 来たら噛んだんねん的な剣呑さがひしひしと伝わってくる。
「――ということは、こっちが檻石か。よし、うんとみんなのスキルを信じて掘るのみだ」
 一同、貸してもらったつるはしを構える。ここからは手作業だ。 
「女子チームと男子チームになるんだって? まぁいまどきの女は強いからね。結構いい線行くんじゃないかい?」
 トミコ・マール(CL3000192)はふっかり微笑んだ。
「宝さがしみたいで楽しみなんだぞ!」
 サシャ・プニコフ(CL3000122)が歓声を上げる。口元をスカートで覆っているので桃色の瞳が強調されている。
 今回の女性陣はみな小柄で狭い坑道の天井を全く苦にしないどころかだいぶ余裕がある。
「この辺から掘ったらいい気がするんだぞ」
 経験則から導き出される目星をつけて、サシャは行動を掘り始めた。ほどなく土ではなく黒い鉱脈にぶつかる。 
「さぁてイヌが出るかイヌがでるか。ありゃどっちもイヌだねぇ。ふふふ」 
 トミコが鉄塊をぶつけるとキィンと硬質の音がした。手首にかなりの手ごたえを感じる。硬い。
「こりゃ檻石だ」
 戦闘しないで済む。ただし、硬い。
「サシャにはあまり違いがよくわからないんだぞ」
 へにょんとオオカミの耳が寝る。
「いいかぼちゃも叩くといい音がするって司祭様が言ってたけど、よくわかんないからいつも適当に選んで買ってきてるぞ!」
 神の子よ、顔を上げなさい。おうちに帰る前にトミコが市場でかぼちゃの選び方を教えてくれることでしょう。
 女子チームはゴンカラキンコラ掘り始めた。火花が散る。
「アオイヌ~」
 柊が絞り出すような声を出す。大分鬼気迫る。
「それじゃこっちも――」
 ルシアスが振り向いた。天井に耳がこすれないように背を丸め気味の大男とミルクティー色のフワフワ髪が天井に着きそうな優男と同じく天井を髪の毛で掃除してる気がする銀髪。総じて、かさばる。ぶら下がってるカンテラで顔面強打しないように気を付けなくてはならない。
(むさくるしくてイヤだが、仕方あるまい)
 ルシアスは自分に素直だった。そこで投げ出さないのは美徳である。イヤでもやるのだ。失礼します。仕事です。
 手ごたえが固い。肉体の八割は機械化されているが、筋肉痛相当の不具合は起こる。
 この先にあるのも多分アオイヌだろう。
 男三人が並んで掘ると天井が不安定になりかねないので、交互に掘らざるを得ない。
「お二人とも、まずはお下がりください」
 エミリオがふたりの背後でニコニコしている。
「スコップやピッケルで掘るには骨が折れますからね」
 怪訝な顔をしたウェルスとルシアスがよけると、エミリオはむき出しの鉱脈に向かってライフルを構えた。
「採掘人ですからどこを撃ったらいいかは大体わかりますよ。跳弾しないようにしますね」
 ほえほえしてる割りにやり方が過激だ。そんな方法ありなのか。
(カナリアがいなくてよかった)
 と、唐突にルシアスは思った。走馬燈的何かの可能性は脇に置いた。
(良かった危険探知に使われて犠牲になるカナリアは居なかったんだ……)
 ズドン。がきん! 銃弾は跳ね返っては来なかった。食い込んだ。
「じゃあ、そこを起点にして掘りましょう」
 時々「撃ちますね」とライフルを構える採掘人のいうがままに商人と軍人はツルハシをふるった。
 

 腕が何もしなくても高速振動する。一休みの水筒からこぼれた雫が肌の上でふるふるする。
「ういぃ~、くぅ~腕が痺れるー」
 柊のうめき。
「皆治すんだぞ。プルプルしてたら狙いが外れちゃうからな!」
 えいえいとサシャが自分も仲間も癒していく。
 ルシアスの心はステータス外で癒された。
 ここまで各々4回のエントリー。そして、手にしているアオイヌは4つ。
 檻石を割ったらスカだった時の女子チームの悲しみはトミコがいなかったら癒されなかった。豊満って素晴らしい。
 男士チームの徒労感は自分でどうにかしてもらうしかない。
 ここまで採取重視で全力でアオイヌに向かってきたが、ここらのアオイヌはあらかた掘り尽くしたらしい。希少という言葉の意味を腕の震えで知ることになった。2連続スカだ。
「アタシが掘るよ。こう見えて体は頑丈だからねっ」
 トミコの笑顔がまぶしい。
「――最初に言ったが、背中側の壁の方から敵意を感じる」
 ルシアスが言う。それ、すごく吠えて頭ガンガンするって話のあれですよね。
「じんわりあったかい塊があるね。人肌以下ではあるけれど」
 岩製の犬(部分)ですね。わかります。
「6回も掘ると疲れがとれねえ。みんな6回掘っちまったら残りと相談しながら 交代で掘るしかねーな」
 イヌアタマを狩るならこのタイミングしかない。イヌアタマが一頭だけだったらもう一回掘らなくてはならない。全員腕プルプル状態で。
 手つかずの壁面。いやな予感がするが、戦闘はあってもスカだけはない。
 オラクル達はツルハシを握った。
「覚悟を決めましょう」
 エミリオの採掘人としての見地から行っても、もう今の状態で掘って届くアオイヌの鉱脈はない。
「イヌアタマ2つはとるぞ~」
 柊がゆらりと立ち上がった。限界が近い。
 出来ればイヌアタマも掘りたいと思っていたウェルスに異存はなかった。
 

 犬小屋石は檻石を掘った後だと、焼き菓子のようにもろく感じる。
 サーチエネミー持ちには、吹きあがってくる敵意と害意がガンガンぶつかってくる。
 一同は、手を止めた。本坑道に戻る。ここからは畳みかける。可能な限り状態を整える。
 柊が枝坑道の入り口でレイピアを構えた。
 賦活される生まれ持った性質を改変し、速度に変換する。
「最後の一堀り行くよ―」
 刃に風が絡み、一点に吸い込まれていく。まさしく開門の一撃。バラバラと崩れる黒い石をはねのけながらルシアスが坑道の中に突っ込む。
 ギャンギャンと吠える手近なイヌアタマの口めがけてバックラーをねじ込んだ。
 そのまま壁に押し付けて石の犬の鼻面をつぶす。その隙間に滑り込ませるようにハンドアックスをふるってイヌアタマの付け根に一撃を叩き込む。鈍い音。ぱらぱらと犬小屋石が下に落ちる。
 その地道な討伐に抗議するように奥にいる個体が喚いた。枝坑道に響く声にめまいや吐き気がオラクルを襲う。
 顔をしかめながら、柊がもう一体のイヌアタマに対峙する。
 ルシアスの視線が一瞬ぶれたのを見て取ったウェルスはクリアカースを唱えた。
 緩みかけていたバックラーごとイヌアタマが歯を食いしばる。辛くも動けなくなることはなかったがルシアスの腕から鈍い音がする。
 サシャが癒しの呪文を唱えるとルシアスを苛む傷は癒された。
 加速がすべて威力に変換されて生まれた刺突がイヌアタマの眉間を穿つ。
 背後から打ち込まれるライフル弾がイヌアタマを少しづつ欠けさせる。
 坑道は狭い。「成人男性なら」二人並ぶのが精いっぱいだ。
「このうるさいのは堪えるぜ。噛みつかれるのもごめんだけど」
「そうらいくよ、どっせぇーいいっ!!」
 すいっと入ってきたトミコが武骨な鉄の塊を振り上げ、的確な場所にたたきつけた。
 寄生している犬小屋石が衝撃でひび割れる。 
 柊とトミコが非常に小柄であったため、三人で前衛に立てたのはオラクルにとって僥倖だった。多少、柊が飛んだり跳ねたりする分量が大きくなったが。
「一緒にそっちも片づけるよ。オーバーブラストじゃダメかい」
  ずっともう一方のイヌアタマの攻撃をよけもせず、黙々とかち割り続けるルシアスにトミコは尋ねた。
 オーバーブラストは、地面に武器を叩きつけてその振動を利用する攻撃だ。少なくとも穴ぼこだらけにしたこの行動では危ない。
「手間だが、生き埋めになるよりはいいさ」
 トミコはうなづいた。
「それじゃあ、こっちを片付けてすぐ手伝うからね! がんばるんだよ!」
 回復の合間を縫って、サシャはアイスコフィンでイヌアタマを凍らせた。急激な温度変化が組織をもろくする。
 二人掛かりでまず一体。その後総力戦で息の根を止め、オラクル達は戦闘を終えたのだ。


 傷をいやし、ガンガンンいう頭痛を治しつつも、掘り出したものを確認する。
 ウェルスは宝石職人として、石の質は十分と判断した。
「アオイヌ4つにイヌアタマ2つ――」
 必要量に到達。
 柊は、細く長い息をついた。
「――くたびれすぎてものもいえんし」
 一服するーと言った後、天井を仰いで充電中だ。
「帰る?」
 サシャとしては体力ギリギリまで頑張って掘りたい。
「帰るよ」
 ルシアスがうなずいた。エミリオをニコニコしながらうなずいた。即時撤退の構えだ。
 戦闘したし、あちこち穴だらけにしたから崩落したら危ない。
 それに、鉱山を出たら真夜中で、ご飯は携帯食でした。とか、大分切ない。プロの料理人であるトミコがいるのに、よけい切ない。
「そっか――サシャは大人の言う事を聞けるいい子なんだぞ!」
 残念―というのが顔に出ていたサシャが帰る! というので、一同は青い犬模様の鉱石と黒い石の犬の頭をぶら下げて立ち上がる。
 今回のオラクル達の工夫を参考に、鉱山では掘削メソッドが作られるだろう。
 閉鎖された鉱山が稼働し始める。ささやかながら国力の増大である。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

FL送付済