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テルメ温泉郷物語

●
「まずはこれを見てくれ」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)はそう言うと一枚の紙を自由騎士たちに配布する。
『テルメ温泉郷へようこそ』
テルメ温泉。イ・ラプセルから少し離れたテルメ島にある温泉郷だ。
この島はどの国にも属しておらず、ここでは人々が温泉という資源を皆で共有して利用している。古くから湯治場として発展しており、その歴史は長い。
「温泉郷テルメ。皆も聞いたことくらいはあるかもしれない。まぁわが国には温泉というものは無いからな。今回、通商連の計らいでテルメ島へ出航する船を特別に出してもらえるようになった。皆には日頃の疲れをゆっくり癒してもらいたい」
「おおっ」
自由騎士から歓喜の声が上がる。
「ちなみに混浴となっている」
「おおおーーっ!!!」
一部自由騎士から喜びをかみ締める声が上がる。
「ただしスイムウェア着用だ」
「オゥ……」
一部自由騎士から落胆の声がする。
「自由騎士団もまだ発足して間もない。団員同士の戦いの場以外での交流も必要であるだろう」
何はともあれ日頃の労を労う温泉での一日が始まるのだった。
「まずはこれを見てくれ」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)はそう言うと一枚の紙を自由騎士たちに配布する。
『テルメ温泉郷へようこそ』
テルメ温泉。イ・ラプセルから少し離れたテルメ島にある温泉郷だ。
この島はどの国にも属しておらず、ここでは人々が温泉という資源を皆で共有して利用している。古くから湯治場として発展しており、その歴史は長い。
「温泉郷テルメ。皆も聞いたことくらいはあるかもしれない。まぁわが国には温泉というものは無いからな。今回、通商連の計らいでテルメ島へ出航する船を特別に出してもらえるようになった。皆には日頃の疲れをゆっくり癒してもらいたい」
「おおっ」
自由騎士から歓喜の声が上がる。
「ちなみに混浴となっている」
「おおおーーっ!!!」
一部自由騎士から喜びをかみ締める声が上がる。
「ただしスイムウェア着用だ」
「オゥ……」
一部自由騎士から落胆の声がする。
「自由騎士団もまだ発足して間もない。団員同士の戦いの場以外での交流も必要であるだろう」
何はともあれ日頃の労を労う温泉での一日が始まるのだった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.温泉で日々の疲れを癒す
麺です。二です。郎です。三人あわせて麺二郎です。
秋めいてまいりました。夏はラーメンを食べない友人もそろそろ一緒に食べに行ってくれます。
日頃より国のために尽力する自由騎士たちにフレデリックからのプレゼント。
温泉郷での日帰り温泉旅行を用意してくれました。
新人騎士の方もこの機会に他の団員との交流を深めてみてはいかがでしょうか?
●ロケーション
テルメ温泉郷
混浴。ただしスイムウェア着用。自由騎士たちの滞在期間はお昼過ぎから日没まで。
大小さまざまな温泉があり、効能も様々。
特に美肌の湯と長寿の湯は人気があります。
温泉内での飲食も可能で、温泉につかりながらお酒が飲めるバーや屋台、火照った体を冷やす椅子も完備。サウナや水風呂もあります。
お土産は温泉饅頭。美味しいです。
●同行NPC
ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなければ屋台の一つで麺料理を提供しています。
行動を共にしたい方がいる場合はお相手のキャラクター名とIDをご記載ください。
文字数を圧迫する場合は同一タグなどでもOKです。
EXに「覚悟完了」と記載頂ければちょっとしたハプニングが起こるかもしれません。
ぜひアクアフェスタのスイムウェアやサマーウェアを着てお出かけください。
秋の夜長は温泉でまったりと。
ご参加お待ちしております。
秋めいてまいりました。夏はラーメンを食べない友人もそろそろ一緒に食べに行ってくれます。
日頃より国のために尽力する自由騎士たちにフレデリックからのプレゼント。
温泉郷での日帰り温泉旅行を用意してくれました。
新人騎士の方もこの機会に他の団員との交流を深めてみてはいかがでしょうか?
●ロケーション
テルメ温泉郷
混浴。ただしスイムウェア着用。自由騎士たちの滞在期間はお昼過ぎから日没まで。
大小さまざまな温泉があり、効能も様々。
特に美肌の湯と長寿の湯は人気があります。
温泉内での飲食も可能で、温泉につかりながらお酒が飲めるバーや屋台、火照った体を冷やす椅子も完備。サウナや水風呂もあります。
お土産は温泉饅頭。美味しいです。
●同行NPC
ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなければ屋台の一つで麺料理を提供しています。
行動を共にしたい方がいる場合はお相手のキャラクター名とIDをご記載ください。
文字数を圧迫する場合は同一タグなどでもOKです。
EXに「覚悟完了」と記載頂ければちょっとしたハプニングが起こるかもしれません。
ぜひアクアフェスタのスイムウェアやサマーウェアを着てお出かけください。
秋の夜長は温泉でまったりと。
ご参加お待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
0個
0個
1個
0個




参加費
50LP
50LP
相談日数
10日
10日
参加人数
30/30
30/30
公開日
2018年10月17日
2018年10月17日
†メイン参加者 30人†
●長寿の湯
『魔女狩りを狩る魔女』エル・エル(CL3000370)はのんびりと一人、湯船に浸り、夜空を眺めていた。
「いいわねぇ、温泉。老体に染みるわ……」
彼女はこう見えてもかなりの老齢だ。自由騎士団の中でも群の抜いた年長者なのだ。
まるで湯の成分が浸透していく様な湯の感触を楽しみながらエルはこれまでの人生をふと振り返る。魔女狩りを狩る。もう何十年続けてきただろう。そしてこれからも続けていくのね。
ふぅ、と一息。周りからは自由騎士の皆のはしゃぐ声が聞こえる。
「ふふ……だからね」
ときどき若い子たちがうらやましくなっちゃうわ、きらきらしてるもの。エルはくすりと笑いながら言葉を零した。
どうかあの子達がこちら側に来ないように。エルは一人そう願うのだった。
●攻守逆転?
「はぁ……癒されるわ……」
こんな気持ちのいいものがイ・ラプセルには無いなんて。そういえばアマノホカリとかは、温泉たくさんありそうな気がするけど、実際どうなのかしら。
先ほどまで、湯に浸かりながら、伸びをしたり、空や景色を見上げたり。その傍らにフルーツ牛乳を用意しつつ、温泉をかなーり堪能している『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)は、ぐでーと温泉でふやけている。
その傍らには『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)。
そしてこのヒルダさん、なにか言いたい事がある様子。
「折角の温泉……なのに水着着用!?」
ヒルダさん心の声が洩れてますよ。
「あたしもアリアと同じ女の子なんだから普通に分けてくれて問題なかったのに!堂々とアリアの《自主規制》を存分に眺められるチャンスをよくも潰してくれたわね! コラ! 聞いてんの麺二郎!? あんたの事よ!!」
/ 聞こえてるし、いつも見てるよ。 \
「ちょ、アンタ、あたしのアリアを勝手に見てるんじゃないわよ!! このドスケベ! ヘンタイ!!」
ヒルダさん、そっちと会話しちゃダメ。
「ちょっと! ヒルダは一体誰と会話してるの? ……それにあたしのってどういう事?」
少し怖い笑顔のアリア。ヒルダさんさすがに少し反省。
……いけないいけない、あたしとした事がコーフンしすぎて自分でも一瞬何言ってるのか分からなくなってたわ。
「今回の目的は当然温泉に入るアリアをこう色々と『観察』する事。ハァハァ……幸いあたしには【リュンケウスの瞳】がある……ククク、望遠視に透視……! ハァハァ……この力さえあればアリアの《自主規制》も丸見えっ……!」
ヒルダさん超息荒い。興奮しすぎ。
「透視使ったら何処でも一緒じゃない?」
え!? という顔のヒルダさん。まさかあたしの心が読めるの? 焦るヒルダさん。
「全部、口に出して言ってたわよ」
アリアがまったくもうという顔でヒルダを見ている。
「だいたい透視なんて使ったら温泉じゃなくても何処でも一緒じゃない? それに……そもそもこんな立派なものを持ってて何故、私のなんて見たがるのかなぁ~!?」
額に怒りマークをつけたアリアの両手がむんずとヒルダの双丘を掴む。
「え? え? 嘘っ!? アリアからこんな……これはご褒、アーーーーーッ!!」
恍惚の表情を浮かべるヒルダに、アリアからとどめの一言。
「今度はプライベートで泊りで来ようね」
色々想像してしまったのかヒルダさん鼻血を拭いて倒れたそうな。きっとのぼせちゃったんだね。
●チーム【湯船酒】
『梟の帽子屋』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は呑んでいた。
【湯船酒】。その旗印の下に集った精鋭は7名。いづれ劣らぬ兵(つわもの)である。
さてその面々を紹介していこう。
まずは発起人であるアンネリーザその人だ。
温泉といえば、桶にお酒を乗せて湯船に浮かべて楽しむもの。そんな温泉の定石をさらりとこなす彼女はこの集まりの幹事だ。まずはぬる燗。人肌程度に温められたお酒をくいっと飲み干す。
彼女、細身だけど良いスタイルだよ。温泉だもん。やっぱりチェックしちゃうよね。
「ふー! 最高っ!」
まずは自身の参加した依頼の思い出を語りながら場を温め、集った皆から次々言葉を引き出していく。
「じゃぁ次はボルカスね」
『アーマーブレイク剛槍』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)。言わずと知れたミスター傲慢である。でも傲慢できてない。頑張れ! ファイトだボルカス! そんな悩める彼も今日ばかりはしんみりとこれまでを振り返る。ある少年の頼みで向かった洞窟に関わる話だ。その時ボルカスはオラクルとして出来る事、出来ない事を実感した。だが全てはその時に限った話。これから先はわからない。次こそは全員助ける。ボルカスは静かにそう心の中で誓う。
カラン、と溶けない氷の音が響く。これも依頼での成果の賜物。
「温泉で飲むキンキンに冷えた酒は格別だな」
ボルカスは良い笑顔で笑った。
「全くその通りだ」
『蒼影の銃士』ザルク・ミステル(CL3000067)は自身の機械化部位を気にしながらも温泉に浸っていた。
「他の国では考えられないな」
ザルクは思う。キジンにも亜人にもこんなにも自由が約束された国。そんな国の未来を担う役目が自らにある事が少し誇らしい。
「それにしても温泉で酒盛りなんて、贅沢だよな。アクアフェスタの時も屋台の食べ物買い集めて呑んだっけ」
その時参加していた者たちがうんうんと頷く。
おっと、温泉で飲食できるっつても汚さない様にしないとな。ザルクは極力汚さない、零れにくい物を少量持ち込んでいる。うーん、この気配りさん! あんたモテるよ!
「ほんと、最高だな……」
ザルクは夜空一杯の星を眺めながら至福のひと時を楽しんだ。
「ワシが入っても大丈夫かのう……?」
幾分体躯の良い『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は温泉のお湯が溢れてしまう事を気にしている。それに機械化した部位を見せる事には幾分の抵抗がある。
だがよくよく考えてみれば自由騎士には同じような仲間が沢山居る。気にする事は無かろう、と。
というよりシノピリカさん、機械化部位なんて大丈夫。何故って? それはその豊満なばでーと面積の少ない水着のせいだよ! ※アクアフェス水着参照の事
そんな事は知る由も無いシノピリカに、皆は笑顔で大丈夫と太鼓判。では、とざぶんと勢いよく湯船につかる。全身で感じる温かい湯の心地よさ。思わず頬が緩む。
「ふぃー。これは極楽じゃぁ」
シノピリカの顔には満面の笑みがこぼれた。WINWINだよね、これ。
トット・ワーフ(CL3000396)は初めての温泉。そして初めての自由騎士たちとの戦いの場でない集まり。まだ自由騎士になりたてのトットはこの機会を楽しみしていた。初めての温泉にのんびり浸かりながら熱燗や冷酒を頂く。おつまみは大好きなチーズ。自ずと気分は高揚していく。先輩達の経験談一つ一つに真剣に耳を傾ける。こんな風にゆっくりと話を聞く事が出来る事自体が嬉しかった。
そして順番はめぐりトットの出番。
「えっとね、僕にも意気込みがあって……。まだまだひよっこだけど、僕も自分の信念を貫ける自由騎士になれるよう頑張りたいんだぁ!」
そんな所信表明に皆がやんややんやと喝采する。皆でこれからも頑張ろう、と。
トット君、少し酔っちゃったかな。いつもより声を張ってたよ。かわゆ。
ティーナ・カミュ(CL3000359)もまた、温泉は初体験だ。
「温泉に来るのは初めてなのですが、書物で知っていた印象よりもずっと心地良いのですね。こんなにも気持ちの良いお湯に浸かりながら、美味しいお酒を頂けるなんて…なんだか贅沢で素敵です」
ティーナはほろ酔い気分でお酒と揚げ物を頬張りながら先輩達の経験談に耳を傾けている。
「私も、先輩方に並び立てるように頑張りますね!」
ざばっ、と水しぶきを上げてティーナが立ち上がり宣言する。
その身長148cm。水着を着ていてもわかる小柄ながらもぼんきゅっぼん。年齢も20で問題なし。OK! その決意確かに受け取った!
そして一人、湯船には浸からず足湯で楽しんでいるのは『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)だ。一応着替えてはいるものの、温泉で用意された湯船には浸からず、それにはマグノリアが抱える秘密が関係している。だがそれはまた別の機会で語られる事だろう。……今じゃないよね? え、覚悟完了? いいの? じゃぁ。
「せっかくだし、貴方も入りましょうよっ」
ほろ酔い気分のアンネリーザが唐突にマグノリアの手を引く。
「えっ!?」
体勢を崩したマグノリアが湯船にダイブ。そして全身ずぶぬれ濡れのマグノリアの体のラインが露になる。それは……男性とも女性ともどちらにも取れると思しきラインだった。
状況が飲み込めない一同にマグノリアは意を決したように告白する。
「実は僕は……」
「「「「「「えーーーーーーっ!?」」」」」」
6人の驚きの声がこだました。
●イーちゃんとグリ。時々エミリオ
『見習い銃士』グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)と『異国のオルフェン』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)は同じ孤児院の出身だ。幼いながらも自らの運命に従い、自由騎士の一員となった。
とはいっても年端も行かぬ二人。今回の温泉では普段と違う年齢なりの素顔が垣間見える。
二人とも温泉は初体験。お湯に浸かるという感覚も初体験だった。スイムウェアも初めて。……初めて!? 孤児院ではどうしてたのっ!?
─確認中……確認中─。確認完了。
世のショタっ子好きのお姉さま方! イーイーとグリッツのいた孤児院、要チェックですよ!!
そのうち児■法とか出来たら、失われた原風景とか言われちゃうんだな、きっと。
……そろそろ話を戻そう。
「お湯がこんなにも沢山あるのってすごく不思議だね。イーちゃん」
「そうだねっ。ちょっぴり熱かったけど、浸かってみたらぽかぽか温かくてすごく気持ちいい」
二人とも広い温泉に感動しながら足を伸ばしてリラックス。
「こんなに広かったら泳いでも大丈夫かなぁ?」
グリは周りを見渡す。思った以上に温泉は広く、周りの人に迷惑をかける事もなさそうだ。
ばしゃばしゃばしゃ。グリは我慢しきれずに泳ぎだす。
そんな様子をにこにこしながら見ているイーイー。
「グリは今日も元気だなぁ」
少し浅くなっている場所を見つけたイーイーは、グリの様子を見ながらのんびりごろごろ。
その間もグリはばしゃばしゃと泳いで遊んでいる。
イーイーはその心地よさにうとうとし始める。
……あれれ、なんだか頭がぼーっとしてきたような……?
ただでさえ初めての温泉で興奮気味の中、泳いで更に体力を使ったグリッツ。
一気にのぼせてしまったようだ。意識が遠のくグリッツはそのまま湯船に沈んでいく。
このままじゃ貴重な美少年枠を一つ失ってしまう!
「……うぐっ」
グリッツが沈んだ先には偶然ある人物がいた。
のぼせて沈んだグリッツが覆いかぶさってきた事で、温泉の底でのんきに眠っていたその人物が起きたのだ。
グリッツとイーイーが来る少し前に話はさかのぼる。
『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)はこの場所でのんびりと一人、温泉を満喫していた。
「あ、あかん眠たくなってきた……。でも、私、ミズヒトだから……溺れる事はない……ぐぅ」
エミリオはそのまま湯船に沈み、そのまま寝続けたのだった。
ミズヒトの特性をこんな形で活用するとは……只者ではないな、この御仁。
ざばっ。のぼせたグリッツを抱えてエミリオが温泉の底から現れる。
「わわっ!?」
うとうと夢気分だったイーイーもグリッツの異変に気づきすぐに駆けつける。
「あ、イーちゃん……僕ちょっとはしゃぎすぎちゃった……みたい」
グリッツは涼しい場所で休ませる事になった。しばらくすればすぐ元気になるだろう。
●大露天風呂傍の足湯バー
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)は堪能していた。満喫ではなく、堪能。
「ひひひひ、温泉で極楽かつ良い風景で眼福。堪らんなあ……」
ツボミは思う。仮にも騎士団だけあって良い身体してる奴が多い。我慢しているつもりでもにやにやが止まらない。
「それに……見物するには女衆の身体も悪かないな。ケケケ」
足湯のように温泉に足をつけてお酒を飲めるという、好きな人にとっては堪らないロケーションの中、ツボミが先ほどから嗜んでいるのは梅酒。それほど強いものではない。が、既にツボミは出来上がっていた。そして完了していた。覚悟も。
「酔っれにゃいぞ」
誰も聞いてませんよ、ツボミさん。
「わらしをよわしゅちゃら大したもんれしゅよ?」
だから聞いてませんって。
「マシュターお代わり。にゃに?止めて置けらと?」
マスターは静かに首を振る。
……仕方にゃい。
すっとツボミが立ち上がり、ふらふらと歩き出した。
その行動はこのあと、とある団員を巻き込む愛と感動とお色気のドタバタ劇に見事に華を添えるのであった。
●見回り+ロマン+見回りの見回り+見回りの観察=混沌
後にA級戦犯として語り継がれる事となる『異邦のサムライ』サブロウ・カイトー(CL3000363)は語る。すべての行動は国防、お国の為であったと。
「ええ、自由騎士であると同時に国防騎士でもありますから。以前のような弾除け要員ではなく、邏卒・巡査の真似事のような毎日です」
サブロウは、自らの正義をとつとつと語っていた。
「なるほど。サブロウさんは本当に立派だ。一緒に見回りが出来る事、光栄に思うよ」
『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)は自らを律していた。
軍事顧問に慰労と言われ素直に受け取ってしまった自分が恥ずかしい。サブロウさんは皆が温泉を楽しむ間も見廻りをすると言うじゃないか。ならば若輩として付き従う以外ないさ。
「よし、この見回り、しかりとやり遂げましょう」
見回りに向けて気合を入れたアダムに一切の邪心は無い。
でもね、その邪心の無さに麺は一種の不安を覚える訳ですよ。完了しちゃってるんです。覚悟。し、心配なんかしてないんだからねっ。
ほら、一切の曇りないアダムの笑顔にサブロウ君も心苦しくなっちゃってるじゃないですか。
「そういえば自由騎士の多いこの場で一体何を見廻ればいいのだろう?」
考えてはみたがアダムには明確な答えが出ない。そこで一緒に見回りするメンバーに素直に聞いてみる。
『光の紳士』タマキ・アケチ(CL3000011)は……。ああんもう、この人なんでもう赤ふん一丁なのさ。それになんだかうっとりしてるし。え、そうなの? 温泉が初めてだから? 本当にそれだけ?
『老若男女がくんずほぐれつ、キャッキャウフフと肌を重ね合う場所…違いますねそうですね、
肌を露わにしながら湯を浴び、憩い、談笑し、その他諸々を曝け出す桃源郷と伺いました。
皆様の大胸筋や太もも、うなじの無事を守る事に精一杯尽力いたします、ふふふ……!』
……え、これどうなってるの。何か聞こえてきたよ。これ麺にしか聞こえてないの? 嘘でしょ怖い。
寒気を感じる麺とは裏腹に話は進んでいく。
「ふふふ、それは私にもよくわかりません。サブロウさんがご存知なのでは?」
アダムとタマキ、いえあえてアケチさんと呼びましょう、が同時にサブロウを見る。
「こほん。確かにこれだけの自由騎士がいます。だがしかしそれこそが問題なのです! たくさんの同志がいるからこその油断、隙。これこそが命取り。ゆえに我々が見回る必要があるのです」
なるほど、とアダムは頷く。素直すぎるよアダムさん。ここ、疑うところですよっ。
そんな様子を見守る影が一つ。
『高潔たれ騎士乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)その人である。
\わたくしですわ!!/
んまぁ! 誰に向かってしゃべってるの、この娘。すごいカメラ目線じゃないの。
「今日はなんと! 一人で! 温泉にやってまいりましたのよ! そう! 一人で!!!!! ……さ、寂しくなんてありませんわ。本当に、寂しくないったらないのですわー!!」
ジュリエットが誰かに言い聞かせている。大丈夫、皆わかってる。
「あら、あそこにいらっしゃるのは……アダムではありませんこと!? アダムもこちらに来ていましたのね」
説明ありがとうジュリエット。……でも君知ってたよ、ね?
「何をしていらっしゃるのかしら……わたくし、とっても気になりますわ。というわけで、陰からこっそり動向を窺いますわよ。……でも勘違いしないでくださいませ。これはストーキングではなく、れっきとした人間観察なのですわ! 愛する殿方の動向が気になってしまうのは自然の摂理なのですわ! おーっほほほ!!」
向こうに聞こえてないといいんだけど。お母ちゃん心配だよ。この娘、どこでも「おーっほほほ!!」しちゃうから。
かくしてジュリエットの人間観察(ストーキング)も無事開始された。
……話を戻そう。
そして時を同じくして立ち上がったのが対見回り組だ。
『砕けぬ盾』オスカー・バンベリー(CL3000332)は長寿の湯あがりのフーリィン・アルカナム(CL3000403)と合流し、行動を開始する。
「病弱な友人から湯治の同行を頼まれたのだが……随分と開放的な場所だな。風紀の乱れなどと野暮は言うまい。だが、あの見廻りの面々は何やら企んでいる様子である上に、どうにもアダムは意図を理解していない様だ。俺の邪推と言う事もあるが、念のため見廻りでもしておくか。……フーリィン嬢は無理をせぬように。水着で歩き回るなら何か羽織るべきだ。風邪を引く」
フーリィンの青いワンピースの水着からお湯が滴る。その様子を見てすぐにオスカーは持ってきていた大き目のタオルをフーリィンに渡す。
「ありがとうございます。オスカーさん」
フーリィンのおなかがくぅ、と鳴った。
「……ふふ、見回りに付き合ってもらうからな。先に腹ごしらえしておくとするか。屋台の料理でも奢ろう」
こうしてオスカーとフーリィンは見回り前に屋台へ向かう事になった。
更に場面は見回り組に戻る。
「で、では肩車、お願いします。やはり高ければ高いほど様々なものが発見しやすいですからね」
コホン、と咳払いを一つ。サブロウはアダムに担がれる。
サブロウは確信する。この高さ……イケるっ!!
「ではまずは脱衣場のほうから警備していきましょうか。人は着替えの瞬間、どうしても無防備になるものです」
至極尤もらしい事を言うとサブロウたちは脱衣場へ向かった。もちろんアケチさんはその後ろからなんだかくねくねしながらついてきます。
脱衣場は高い垣根で男女が仕切られている。といってもその高さは2,5メーターほど。肩車されたサブロウには……見えるっ! 桃源郷が……っ!!
しかしそこには誰も居ない。
無念……既に皆着替え終わった後だったというのか……。
サブロウが血涙を流す。
「わわっ遅れちゃったよっ」
その時、脱衣所の入り口から声がした。サブロウ、顔! その顔やめろっ! さっきの悲壮感漂う顔から変わりすぎだろ。
そこに現れたのは『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)だ。
はい。キタこれ。おい、年齢確認しとけよ。ミスキャストだろ完全に。サブロウ、人にはやっていい事といけない事(主に社会的に)があるんだぞ。
もちろんサブロウが自由騎士全員の年齢など認識しているわけも無く、サブロウの視線はカーミラの一挙手一動に注がれる。
スポポーン、と音がするほどの速度でカーミラが服を脱いでいく。
まずい。このままではリプレイ公開中止か!? だが麺の心配は杞憂となる。カーミラは下に既に水着を着ていたのだ。助かった。ほんといろんな意味で心臓に悪いんだからね。
一方のサブロウはこれはこれで満足だったらしい。満足げな表情。
だが、これ以上待ってももうこれから着替えるものは居なさそうだ。
「脱衣場の安全は確保されたようです。では次は美肌の湯へ向かいましょう」
サブロウは機械を操るかのようにアダムへ指令を出す。次の戦場は美肌の湯だ!
美肌の湯では『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)がその効果に胸を躍らせていた。
「本当に効果があるのかしら?でも、試してみない訳にはいかないわよね」
効能を疑いながらも湯をそれはそれは丹念に、その小麦色の肌へ浸透させていく。
「そういえば、アダムやオスカーが見廻りするとか言ってたわね……。せっかく温泉にきたのに、もったいない」
いくら水着を着ていてもそのダイナマイトボディは隠しきれるものではない。
弾けんばかりの肢体を揺らしながら、エルシーが温泉を堪能していると、背後に視線を感じた。
「誰っ!」
とっさに胸を隠すような仕草としながら、手元にあった桶を視線を感じた方向へ投げつける。
カコーン! いい音がした。
「……アダム!?」
「痛ててて、とんだ厄災です……我々はこんなにもまじめに見回りをしているというのに」
見事に桶が命中したサブロウと担ぐアダムも一緒になって、エルシーに事情を説明する。
あまり納得した様子ではなかったが、アダムのまっすぐな目を見たエルシーはそれ以上何も言わず「麺料理でも食べてくるわ」と美肌の湯を後にした。
麺は知ってる。アケチさんはその時もずっとくねくねしてた。
そして舞台は最終決戦の地、大露天風呂へ。
そこには更なる刺客が牙を隠して待ち構えているのだ。
大露天風呂。テルメ温泉郷の中でも1,2を争う広々とした露天風呂。広さも十分なため利用するものは多い。
アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)はヴィンセント・ローズ(CL3000399)と共にいた。ヴィンセントたっての願いをアリスタルフが聞き入れたためだ。その願いとは蒸気鎧装を見せてもらう事。
ヴィンセントは前々からこれに興味があった。だが、キジンにとって機械化した部分というのは様々な思いと意味を持つ。そのため、これだけキジンが沢山居る自由騎士団でもなかなか言い出す事は出来なかった。そんな中今回の温泉の話が飛び込んできた。ヴィンセントは勇気をだしてアリスタルフに声をかけた。「改めて蒸気鎧装を見せてほしい」と。
「まじまじ見られるとやっぱ気恥ずかしいな」
少年のようなきらきらした目で機械化部位を眺めるヴィンセントにアリスタルフが照れながら言う。
「快諾してくれてマジでありがとう!銀色の蒸気鎧装とかクールでカッコいい!このシャープなフォルム最高!」
ヴィンセントの心からの感謝に、アリスタルフは笑顔を返すのだった。
「君は……確か、アリスタルフといったか」
ランスロット・カースン(CL3000391)はアリスタルフにとって何度か依頼を一緒した事がある先輩だ。
「最近続けて仕事を一緒に受けたな。互いに騎士だが自由騎士として交流を得るとは不思議なものだ」
ランスロットもまた、自由騎士としてはまだ日が浅い。それでも先輩と慕ってくれるアリスタルフに悪い気はしなかった。
「思えば、俺もずいぶんと肩に力が入っていた気もするな」
これまでの依頼の数々を思い出し、ランスロットは改めてそれを実感する。
折角の機会、有効に利用させて貰おう。
そしてランスロットはより効果的な温泉の入り方を常連客に尋ね、じっくりと温泉を楽しむ方法を見出す。温泉マイスター誕生の瞬間であった。
『翠氷の魔女』猪市 きゐこ(CL3000048)も大露天風呂に居た。
温泉……温泉ねぇ……いや、別に嫌いじゃないわ。寧ろ好きなぐらいだけど……。
ゆっくりのんびり入る為にもまずは…『掃除』が必要じゃないかないかしらね?
……混浴だからやる居ないだろうって? 甘いわね!
そこにロマンがある限り、絶対居るわ! 断言できる。
きゐこの予感は的中する。
そこに奴らが現れたのだ。高い位置から女子を見下ろすサブロウの顔はもはやすけべい以外の何者でもない。
「やっぱり来たわねっ! 成敗っ!!」
「えっ!?」
「えっ!?」
「うふっ♪」
ちゅどーん。きゐこの放つ『籠目の中の燐火(おしおき)』が見回り組に炸裂する。
※『籠目の中の燐火』の自由騎士への使用は、スタッフが入念な安全確認を行った上で実施されております。良い子の皆さんは絶対に真似をしないでね。
吹っ飛ぶ3人+2人。何故か近くに合った仕掛けも発動して爆発に巻き込まれるアリスタルフとランスロット。何故だ! 何故君たちまで覚悟完了してしまったのだ! これもまた運命なのか……。
ここからは吹っ飛んだ5人の末路を語ろうと思う。
Case1 アダムの場合
「痛てて……。一体何が起きたんだ」
爆炎の煙の中、アダムは何か柔らかいものに顔をうずめていた。
「もうっ! いきなり何ですのっ!?」
そこはジュリエットの胸の中。吹き飛ばされたアダムは、なんと偶然にも影からアダムを見守り(?)続けていたジュリエットの元へ飛んできたのだ。
薄い水着越しに感じる鼓動。
「その声……君は……ジュリエット!? す、すまないっすぐに離れるからっ」
アダムはすぐに離れると正座の体勢でジュリエットに深く謝罪する。
「えっ!? アダム……えっ!? じゃぁ今……アダム……が私……の……に……」
ぼん! とジュリエットから大きな音がした。
「ジュリエット! 大丈夫かい! ジュリエット!!」
顔を真っ赤に高潮させたジュリエットはそのまま気絶。あとにはジュリエットを呼ぶアダムの声が響いていた。
Case2 サブロウの場合
吹き飛んだ先に居たのは、もちろんきゐこ。
はい。皆さんもうオチは読めましたね。
ぷに。サブロウの手には小ぶりだが柔らかい確かな感触。
「……どうやらまだ爆発(おしおき)が足りないみたいねぇ……?」
地の底から響くような低い声。きゐこの目がギラリと光る。
「え、その、そんな。僕は皆さんのためにですね……」
しどろもどろになるサブロウ。だが手の位置は変えない。男だぜサブロウ。
「問答無用っ!!!!」
「あーーーーーーーれーーーーーーーーっ!!!」
こうしてサブロウはその夜、一際輝く一番星になった。
Case3 アケチさんの場合
なんでかスローなの。アケチさんだけ吹き飛ぶ様子がすっごいスローなの。
空を舞う、アケチさんと赤ふん。もうこれアートだよね。
吹き飛ばされてる間もくねくねしてるのがよくわかるんだ。
でもね、見えないの。カメラワークが絶妙というか。
どんなに描写しようとしてもね、隠れちゃうの。湯煙で。とにかくすごいの。これが覚悟の力なのかな。
だってほら、アケチさん見せたがってるの。ホラァ、また自分から見せに来てるジャーン。ほらー!
でも何故か隠れちゃう。
「ふふふ、ポロリもツルリも■■■も大歓迎ですよ!」
それはダメェーーーーッ!!!
Case4 アリスタルフの場合
「「きゃあっ」」
アリスタルフが吹っ飛んだ先には3人のうら若き女性。
『飢えた白狼』リンネ・スズカ(CL3000361)はのんびりと温泉の効果について周りの自由騎士たちに語っていた。
「温熱効果、水圧効果、浮力効果、発汗効果、転地効果……温泉は本当に良いものです」
毛が濡れるのはあまり好きではないが、数々の効能の前にはビビたる問題だった。
そこに飛んできたのがアリスタルフ。
「うぐぐ……一体何が……!?」
この感触……!? アリスタルフは自分が女性の下腹部に顔を埋めている事に気づく。
「わわっ!? すみませんっ! わざとじゃないんですっ」
だが気が動転してうまく体が動かない。
「私は別に気にしてない。それよりもどこか痛いところはないか?」
リンネは怒るどころかそのままの体勢でアリスタルフが落ち着くのを待つ。
同時にアリスタルフの右手は……なにやら柔らかいものを掴んでいた。
そこに居たのはいい具合に泥酔したツボミ。バーでお酒を拒まれたツボミは女衆にセクハラする気満々で大露天風呂へやってきていたのだ。セクハラするつもりが思いっきりされているこの状況。だがこれも覚悟の上。致し方ない。
「ん~~~? あらしのおむれに触ってるろはられらぁ~??」
あわてて手を離そうとするアリスタルフ。だがその手をへべれけになったツボミがむんずと掴む。そして元の位置へ。
「きょうはれんぶゆるすっ。 もんれおおきくしろ~ぉい」
「えぇーーーーーーっ!??!?!」
アリスタルフの思考回路がショートする。ツボミの意識もここで飛んだ。
「まさか……」
しばらくして意識を取り戻したアリスタルフは驚愕する。左手にも何かの感触。恐る恐る自身の左手を見る。そこには誰かのビキニが握られていたのだ。
一体誰の……。いやな予感がする。
「あれれーー?? 水着取れちゃったー」
この声はまずい。色々アウトだ。アリスタルフだけでなく麺も青ざめる。
声の主はカーミラ。
ぷるんと揺れる双丘。何よりも問題なのは年齢に似合わぬその体型と、彼女の羞恥心の薄さ。更に彼女が放つアイドルオーラは人を惹き付ける。さぁピンチだ!
「あ、そこにあった! 私の水着ーっ」
美味しそうに揺れる2つのお饅頭を隠そうともせず、カーミラが駆け寄ってくる。何故だ! 何故謎の光を覚えてくれてないんだ!! 絶対に見せられない戦い。麺の孤独な戦いが始まった。
湯気。……動けば散る。観葉植物。……限界がある。野生動物。……もうこれしかないっ。さぁ今でっち上げるぞ。テルメ温泉郷のマスコットにもなっている温泉リス。これはもうそれは沢山おりましてのう。至るところにおりますのじゃ。そしてこの子達は悪戯が大好きでのう。見えそうで見えないもどかしさでもだえる男性陣を見るのが何より好きときておる。
こうして温泉リスという強引な公式設定を生み出しながら、アリスタルフの覚悟は実を結んだ。麺は思う。気苦労の多そうな君にはラッキースケベ、あっても良いんじゃないかと。
Case5 ランスロットの場合
ランスロットが飛ばされたところには先客がひとり居た。
その先客は長い髪を先まで濡らし、驚いたのか背中を向けてこちらを見ない。
「す、すまない。俺も一体何が起きたのか……」
ようやく意識がはっきりしてきたランスロットは先客のほうを見る。
もしやこの者は裸……なのか?
長い髪に隠れているが胸元を隠すような布は巻かれていないように見えた。
「一体どういう事だ……この温泉はスイムウェア着用ではなかったのか」
ふいに先客がこちらを向く。
思わず顔を背けるランスロット。しかし彼もまた男。興味が無いわけではない。
薄く目を開けてみると……
そこに立っていたのはディルク・フォーゲル(CL3000381)。男だ。
「もしかして勘違いしてしまいましたか。長い髪ですから、後ろ姿だけだと女性に見間違えられる事、割とあるんですよ?」
始まるディルクのお説教。言われるがままに正座するランスロット。
その後、ランスロットが状況を説明し、疑いが晴れるまでの間、長い長いディルクの説教は続いたらしい。
●ジローの麺
テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は温泉脇のバーでお酒の嗜みながら皆の様子を眺めていた。
種族も、性別も、性格も、全てが異なるものたちが驚くほど自然に結束している。これほどまでに観察対象として面白い集団はなかなかに無いだろう。テオドールにはそれがとても心地よかった。
「そういえば、ミタホーンテン卿も店を出しているのだったな」
「へいっ! らっしゃい!」
ジローの威勢のいい声が出迎える。先客のエルシーはおいしそうに麺料理を食べている。その横にはエルシーとは真逆に、鬼ような量の麺に鬼気迫る表情で挑むオスカーとフーリィンの姿。数分前、なんとも独特な匂いにつられてジローの屋台へやってきた二人。教えられるがまま「ヤサイマシマシカラメアブラニンニクチョモランマ」の呪文を唱えしまったがばかりに起こった悲劇。もはやそこは戦場だった。
「何にしますかい?」
メニューには様々な麺料理が並ぶ。地域を越えて、国を超えて。ジローの麺料理の探究心は世界をまたに駆けているようだった。
「ではこれをもらおうか」
テオドールはその中に幼少期に良く食べていた麺料理を見つけたようだ。程なく料理が完成する。
「ありがとう。美味しそうだ」
懐かしい味に舌鼓を打ちながら、テオドールの表情は終始穏やかだった。
「しまった。見廻りと言いながらうっかり麺を堪能していた。トラブルが起きてなければよいのだが……」
麺を食べ終えたオスカーが本来の目的を思いだす。
「もう……お腹一杯で動けないです(うぷ)」
フーリィンはもう一歩も動けなさそうだ。
「立てるか? フーリィン」
甲斐甲斐しく世話を焼くオスカー。
「ありがとうございます……オス母ぁさんっ」
ん? オスカーは少し違和感を覚えたが、そっと聞き流す事にした。
●これもまたロマン
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は、温泉にてしっかりと目の保養もしたあと、日ごろの激戦で疲れた体を癒す、という大義名分を持って、温泉郷の外れにあるとある按摩施設へ来ていた。
「うちは美人揃いだよっ」
人生の酸いも甘いもかみ分けたような婆がにへらと笑いながら手招きしている。
「……本当に美人なんだろうな?」
ウェルスは婆に耳打ちする。
「へっへっへ。あたり前じゃないか。ミステルメ温泉郷にも選ばれた事がある子だよ」
ウェルス入店。うきうきが止まらない。
按摩嬢、登場。
確かに美人……であったのかもしれない。でも何十年前の話だ! 詐欺だ!!
「ちょ、ちょっと用事を」
ウェルスが帰ろうとしたその時、嬢の手がウェルスを掴む。
すごい力だ。抵抗できない。
「按摩一筋■■■年。テルメのゴッドハンドとはアタシの事だよ」
その(元)美人按摩嬢はぐふふ、と笑いながらウェルスに迫るのであった。
「アーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
熊、星になる。合掌。
その後、放心状態で温泉郷を彷徨う熊が発見される。
仲間に助けられ、その熊が最後に発した言葉はこうだ。
「美人美獣のケモノビトにもみもみされたかった、です……」
もう置いて帰ろう。この熊。
●宴もたけなわ
「ふぅ~」
お掃除が済んだきゐこはゆっくりと温泉に浸っていた。
もちろん水着は着ているが、帽子を深く被っており、相変わらず顔が見えない。
隠さなくていいのに。可愛いのに。
そんな声を気にもせず、きゐこはゆっくりのんびり温泉を満喫するのであった。
リンネはサウナにいた。
「先ほどの青年、やけに照れていたな」
件の出来事を思い出し、くすくすと笑う。
直後にサウナではガマン大会開始。最後は絶対に負けたくないリンネが少しでも暑さを凌ごうと水着を脱ごうとし、それを見た相手(男性)がノックダウンするという結果で終わったという。
一方温泉地での商売方法に興味のあったディルクは温泉郷のみやげ物売り場にいた。
彼はここでも何かを得て、更に商人としてのスキルをあげるのであろう。
時を同じくしてみやげ物売り場にはランスロットの姿。頼まれていた家族へのお土産を購入したようだ。
「これを1ロット。あとこれも。すべてロット単位でよろしく頼む」
「また皆で集りましょ!」
「いぇーーーーーい!!!」
湯船酒のメンバーも大満足だったようだ。
既に次の集まりをいつにするか、話は延々と続いていた。
ここはテルメ温泉郷。もしまた訪れたくなる事があれば、まずは軍事顧問に相談を。
『魔女狩りを狩る魔女』エル・エル(CL3000370)はのんびりと一人、湯船に浸り、夜空を眺めていた。
「いいわねぇ、温泉。老体に染みるわ……」
彼女はこう見えてもかなりの老齢だ。自由騎士団の中でも群の抜いた年長者なのだ。
まるで湯の成分が浸透していく様な湯の感触を楽しみながらエルはこれまでの人生をふと振り返る。魔女狩りを狩る。もう何十年続けてきただろう。そしてこれからも続けていくのね。
ふぅ、と一息。周りからは自由騎士の皆のはしゃぐ声が聞こえる。
「ふふ……だからね」
ときどき若い子たちがうらやましくなっちゃうわ、きらきらしてるもの。エルはくすりと笑いながら言葉を零した。
どうかあの子達がこちら側に来ないように。エルは一人そう願うのだった。
●攻守逆転?
「はぁ……癒されるわ……」
こんな気持ちのいいものがイ・ラプセルには無いなんて。そういえばアマノホカリとかは、温泉たくさんありそうな気がするけど、実際どうなのかしら。
先ほどまで、湯に浸かりながら、伸びをしたり、空や景色を見上げたり。その傍らにフルーツ牛乳を用意しつつ、温泉をかなーり堪能している『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)は、ぐでーと温泉でふやけている。
その傍らには『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)。
そしてこのヒルダさん、なにか言いたい事がある様子。
「折角の温泉……なのに水着着用!?」
ヒルダさん心の声が洩れてますよ。
「あたしもアリアと同じ女の子なんだから普通に分けてくれて問題なかったのに!堂々とアリアの《自主規制》を存分に眺められるチャンスをよくも潰してくれたわね! コラ! 聞いてんの麺二郎!? あんたの事よ!!」
/ 聞こえてるし、いつも見てるよ。 \
「ちょ、アンタ、あたしのアリアを勝手に見てるんじゃないわよ!! このドスケベ! ヘンタイ!!」
ヒルダさん、そっちと会話しちゃダメ。
「ちょっと! ヒルダは一体誰と会話してるの? ……それにあたしのってどういう事?」
少し怖い笑顔のアリア。ヒルダさんさすがに少し反省。
……いけないいけない、あたしとした事がコーフンしすぎて自分でも一瞬何言ってるのか分からなくなってたわ。
「今回の目的は当然温泉に入るアリアをこう色々と『観察』する事。ハァハァ……幸いあたしには【リュンケウスの瞳】がある……ククク、望遠視に透視……! ハァハァ……この力さえあればアリアの《自主規制》も丸見えっ……!」
ヒルダさん超息荒い。興奮しすぎ。
「透視使ったら何処でも一緒じゃない?」
え!? という顔のヒルダさん。まさかあたしの心が読めるの? 焦るヒルダさん。
「全部、口に出して言ってたわよ」
アリアがまったくもうという顔でヒルダを見ている。
「だいたい透視なんて使ったら温泉じゃなくても何処でも一緒じゃない? それに……そもそもこんな立派なものを持ってて何故、私のなんて見たがるのかなぁ~!?」
額に怒りマークをつけたアリアの両手がむんずとヒルダの双丘を掴む。
「え? え? 嘘っ!? アリアからこんな……これはご褒、アーーーーーッ!!」
恍惚の表情を浮かべるヒルダに、アリアからとどめの一言。
「今度はプライベートで泊りで来ようね」
色々想像してしまったのかヒルダさん鼻血を拭いて倒れたそうな。きっとのぼせちゃったんだね。
●チーム【湯船酒】
『梟の帽子屋』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は呑んでいた。
【湯船酒】。その旗印の下に集った精鋭は7名。いづれ劣らぬ兵(つわもの)である。
さてその面々を紹介していこう。
まずは発起人であるアンネリーザその人だ。
温泉といえば、桶にお酒を乗せて湯船に浮かべて楽しむもの。そんな温泉の定石をさらりとこなす彼女はこの集まりの幹事だ。まずはぬる燗。人肌程度に温められたお酒をくいっと飲み干す。
彼女、細身だけど良いスタイルだよ。温泉だもん。やっぱりチェックしちゃうよね。
「ふー! 最高っ!」
まずは自身の参加した依頼の思い出を語りながら場を温め、集った皆から次々言葉を引き出していく。
「じゃぁ次はボルカスね」
『アーマーブレイク剛槍』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)。言わずと知れたミスター傲慢である。でも傲慢できてない。頑張れ! ファイトだボルカス! そんな悩める彼も今日ばかりはしんみりとこれまでを振り返る。ある少年の頼みで向かった洞窟に関わる話だ。その時ボルカスはオラクルとして出来る事、出来ない事を実感した。だが全てはその時に限った話。これから先はわからない。次こそは全員助ける。ボルカスは静かにそう心の中で誓う。
カラン、と溶けない氷の音が響く。これも依頼での成果の賜物。
「温泉で飲むキンキンに冷えた酒は格別だな」
ボルカスは良い笑顔で笑った。
「全くその通りだ」
『蒼影の銃士』ザルク・ミステル(CL3000067)は自身の機械化部位を気にしながらも温泉に浸っていた。
「他の国では考えられないな」
ザルクは思う。キジンにも亜人にもこんなにも自由が約束された国。そんな国の未来を担う役目が自らにある事が少し誇らしい。
「それにしても温泉で酒盛りなんて、贅沢だよな。アクアフェスタの時も屋台の食べ物買い集めて呑んだっけ」
その時参加していた者たちがうんうんと頷く。
おっと、温泉で飲食できるっつても汚さない様にしないとな。ザルクは極力汚さない、零れにくい物を少量持ち込んでいる。うーん、この気配りさん! あんたモテるよ!
「ほんと、最高だな……」
ザルクは夜空一杯の星を眺めながら至福のひと時を楽しんだ。
「ワシが入っても大丈夫かのう……?」
幾分体躯の良い『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は温泉のお湯が溢れてしまう事を気にしている。それに機械化した部位を見せる事には幾分の抵抗がある。
だがよくよく考えてみれば自由騎士には同じような仲間が沢山居る。気にする事は無かろう、と。
というよりシノピリカさん、機械化部位なんて大丈夫。何故って? それはその豊満なばでーと面積の少ない水着のせいだよ! ※アクアフェス水着参照の事
そんな事は知る由も無いシノピリカに、皆は笑顔で大丈夫と太鼓判。では、とざぶんと勢いよく湯船につかる。全身で感じる温かい湯の心地よさ。思わず頬が緩む。
「ふぃー。これは極楽じゃぁ」
シノピリカの顔には満面の笑みがこぼれた。WINWINだよね、これ。
トット・ワーフ(CL3000396)は初めての温泉。そして初めての自由騎士たちとの戦いの場でない集まり。まだ自由騎士になりたてのトットはこの機会を楽しみしていた。初めての温泉にのんびり浸かりながら熱燗や冷酒を頂く。おつまみは大好きなチーズ。自ずと気分は高揚していく。先輩達の経験談一つ一つに真剣に耳を傾ける。こんな風にゆっくりと話を聞く事が出来る事自体が嬉しかった。
そして順番はめぐりトットの出番。
「えっとね、僕にも意気込みがあって……。まだまだひよっこだけど、僕も自分の信念を貫ける自由騎士になれるよう頑張りたいんだぁ!」
そんな所信表明に皆がやんややんやと喝采する。皆でこれからも頑張ろう、と。
トット君、少し酔っちゃったかな。いつもより声を張ってたよ。かわゆ。
ティーナ・カミュ(CL3000359)もまた、温泉は初体験だ。
「温泉に来るのは初めてなのですが、書物で知っていた印象よりもずっと心地良いのですね。こんなにも気持ちの良いお湯に浸かりながら、美味しいお酒を頂けるなんて…なんだか贅沢で素敵です」
ティーナはほろ酔い気分でお酒と揚げ物を頬張りながら先輩達の経験談に耳を傾けている。
「私も、先輩方に並び立てるように頑張りますね!」
ざばっ、と水しぶきを上げてティーナが立ち上がり宣言する。
その身長148cm。水着を着ていてもわかる小柄ながらもぼんきゅっぼん。年齢も20で問題なし。OK! その決意確かに受け取った!
そして一人、湯船には浸からず足湯で楽しんでいるのは『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)だ。一応着替えてはいるものの、温泉で用意された湯船には浸からず、それにはマグノリアが抱える秘密が関係している。だがそれはまた別の機会で語られる事だろう。……今じゃないよね? え、覚悟完了? いいの? じゃぁ。
「せっかくだし、貴方も入りましょうよっ」
ほろ酔い気分のアンネリーザが唐突にマグノリアの手を引く。
「えっ!?」
体勢を崩したマグノリアが湯船にダイブ。そして全身ずぶぬれ濡れのマグノリアの体のラインが露になる。それは……男性とも女性ともどちらにも取れると思しきラインだった。
状況が飲み込めない一同にマグノリアは意を決したように告白する。
「実は僕は……」
「「「「「「えーーーーーーっ!?」」」」」」
6人の驚きの声がこだました。
●イーちゃんとグリ。時々エミリオ
『見習い銃士』グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)と『異国のオルフェン』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)は同じ孤児院の出身だ。幼いながらも自らの運命に従い、自由騎士の一員となった。
とはいっても年端も行かぬ二人。今回の温泉では普段と違う年齢なりの素顔が垣間見える。
二人とも温泉は初体験。お湯に浸かるという感覚も初体験だった。スイムウェアも初めて。……初めて!? 孤児院ではどうしてたのっ!?
─確認中……確認中─。確認完了。
世のショタっ子好きのお姉さま方! イーイーとグリッツのいた孤児院、要チェックですよ!!
そのうち児■法とか出来たら、失われた原風景とか言われちゃうんだな、きっと。
……そろそろ話を戻そう。
「お湯がこんなにも沢山あるのってすごく不思議だね。イーちゃん」
「そうだねっ。ちょっぴり熱かったけど、浸かってみたらぽかぽか温かくてすごく気持ちいい」
二人とも広い温泉に感動しながら足を伸ばしてリラックス。
「こんなに広かったら泳いでも大丈夫かなぁ?」
グリは周りを見渡す。思った以上に温泉は広く、周りの人に迷惑をかける事もなさそうだ。
ばしゃばしゃばしゃ。グリは我慢しきれずに泳ぎだす。
そんな様子をにこにこしながら見ているイーイー。
「グリは今日も元気だなぁ」
少し浅くなっている場所を見つけたイーイーは、グリの様子を見ながらのんびりごろごろ。
その間もグリはばしゃばしゃと泳いで遊んでいる。
イーイーはその心地よさにうとうとし始める。
……あれれ、なんだか頭がぼーっとしてきたような……?
ただでさえ初めての温泉で興奮気味の中、泳いで更に体力を使ったグリッツ。
一気にのぼせてしまったようだ。意識が遠のくグリッツはそのまま湯船に沈んでいく。
このままじゃ貴重な美少年枠を一つ失ってしまう!
「……うぐっ」
グリッツが沈んだ先には偶然ある人物がいた。
のぼせて沈んだグリッツが覆いかぶさってきた事で、温泉の底でのんきに眠っていたその人物が起きたのだ。
グリッツとイーイーが来る少し前に話はさかのぼる。
『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)はこの場所でのんびりと一人、温泉を満喫していた。
「あ、あかん眠たくなってきた……。でも、私、ミズヒトだから……溺れる事はない……ぐぅ」
エミリオはそのまま湯船に沈み、そのまま寝続けたのだった。
ミズヒトの特性をこんな形で活用するとは……只者ではないな、この御仁。
ざばっ。のぼせたグリッツを抱えてエミリオが温泉の底から現れる。
「わわっ!?」
うとうと夢気分だったイーイーもグリッツの異変に気づきすぐに駆けつける。
「あ、イーちゃん……僕ちょっとはしゃぎすぎちゃった……みたい」
グリッツは涼しい場所で休ませる事になった。しばらくすればすぐ元気になるだろう。
●大露天風呂傍の足湯バー
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)は堪能していた。満喫ではなく、堪能。
「ひひひひ、温泉で極楽かつ良い風景で眼福。堪らんなあ……」
ツボミは思う。仮にも騎士団だけあって良い身体してる奴が多い。我慢しているつもりでもにやにやが止まらない。
「それに……見物するには女衆の身体も悪かないな。ケケケ」
足湯のように温泉に足をつけてお酒を飲めるという、好きな人にとっては堪らないロケーションの中、ツボミが先ほどから嗜んでいるのは梅酒。それほど強いものではない。が、既にツボミは出来上がっていた。そして完了していた。覚悟も。
「酔っれにゃいぞ」
誰も聞いてませんよ、ツボミさん。
「わらしをよわしゅちゃら大したもんれしゅよ?」
だから聞いてませんって。
「マシュターお代わり。にゃに?止めて置けらと?」
マスターは静かに首を振る。
……仕方にゃい。
すっとツボミが立ち上がり、ふらふらと歩き出した。
その行動はこのあと、とある団員を巻き込む愛と感動とお色気のドタバタ劇に見事に華を添えるのであった。
●見回り+ロマン+見回りの見回り+見回りの観察=混沌
後にA級戦犯として語り継がれる事となる『異邦のサムライ』サブロウ・カイトー(CL3000363)は語る。すべての行動は国防、お国の為であったと。
「ええ、自由騎士であると同時に国防騎士でもありますから。以前のような弾除け要員ではなく、邏卒・巡査の真似事のような毎日です」
サブロウは、自らの正義をとつとつと語っていた。
「なるほど。サブロウさんは本当に立派だ。一緒に見回りが出来る事、光栄に思うよ」
『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)は自らを律していた。
軍事顧問に慰労と言われ素直に受け取ってしまった自分が恥ずかしい。サブロウさんは皆が温泉を楽しむ間も見廻りをすると言うじゃないか。ならば若輩として付き従う以外ないさ。
「よし、この見回り、しかりとやり遂げましょう」
見回りに向けて気合を入れたアダムに一切の邪心は無い。
でもね、その邪心の無さに麺は一種の不安を覚える訳ですよ。完了しちゃってるんです。覚悟。し、心配なんかしてないんだからねっ。
ほら、一切の曇りないアダムの笑顔にサブロウ君も心苦しくなっちゃってるじゃないですか。
「そういえば自由騎士の多いこの場で一体何を見廻ればいいのだろう?」
考えてはみたがアダムには明確な答えが出ない。そこで一緒に見回りするメンバーに素直に聞いてみる。
『光の紳士』タマキ・アケチ(CL3000011)は……。ああんもう、この人なんでもう赤ふん一丁なのさ。それになんだかうっとりしてるし。え、そうなの? 温泉が初めてだから? 本当にそれだけ?
『老若男女がくんずほぐれつ、キャッキャウフフと肌を重ね合う場所…違いますねそうですね、
肌を露わにしながら湯を浴び、憩い、談笑し、その他諸々を曝け出す桃源郷と伺いました。
皆様の大胸筋や太もも、うなじの無事を守る事に精一杯尽力いたします、ふふふ……!』
……え、これどうなってるの。何か聞こえてきたよ。これ麺にしか聞こえてないの? 嘘でしょ怖い。
寒気を感じる麺とは裏腹に話は進んでいく。
「ふふふ、それは私にもよくわかりません。サブロウさんがご存知なのでは?」
アダムとタマキ、いえあえてアケチさんと呼びましょう、が同時にサブロウを見る。
「こほん。確かにこれだけの自由騎士がいます。だがしかしそれこそが問題なのです! たくさんの同志がいるからこその油断、隙。これこそが命取り。ゆえに我々が見回る必要があるのです」
なるほど、とアダムは頷く。素直すぎるよアダムさん。ここ、疑うところですよっ。
そんな様子を見守る影が一つ。
『高潔たれ騎士乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)その人である。
\わたくしですわ!!/
んまぁ! 誰に向かってしゃべってるの、この娘。すごいカメラ目線じゃないの。
「今日はなんと! 一人で! 温泉にやってまいりましたのよ! そう! 一人で!!!!! ……さ、寂しくなんてありませんわ。本当に、寂しくないったらないのですわー!!」
ジュリエットが誰かに言い聞かせている。大丈夫、皆わかってる。
「あら、あそこにいらっしゃるのは……アダムではありませんこと!? アダムもこちらに来ていましたのね」
説明ありがとうジュリエット。……でも君知ってたよ、ね?
「何をしていらっしゃるのかしら……わたくし、とっても気になりますわ。というわけで、陰からこっそり動向を窺いますわよ。……でも勘違いしないでくださいませ。これはストーキングではなく、れっきとした人間観察なのですわ! 愛する殿方の動向が気になってしまうのは自然の摂理なのですわ! おーっほほほ!!」
向こうに聞こえてないといいんだけど。お母ちゃん心配だよ。この娘、どこでも「おーっほほほ!!」しちゃうから。
かくしてジュリエットの人間観察(ストーキング)も無事開始された。
……話を戻そう。
そして時を同じくして立ち上がったのが対見回り組だ。
『砕けぬ盾』オスカー・バンベリー(CL3000332)は長寿の湯あがりのフーリィン・アルカナム(CL3000403)と合流し、行動を開始する。
「病弱な友人から湯治の同行を頼まれたのだが……随分と開放的な場所だな。風紀の乱れなどと野暮は言うまい。だが、あの見廻りの面々は何やら企んでいる様子である上に、どうにもアダムは意図を理解していない様だ。俺の邪推と言う事もあるが、念のため見廻りでもしておくか。……フーリィン嬢は無理をせぬように。水着で歩き回るなら何か羽織るべきだ。風邪を引く」
フーリィンの青いワンピースの水着からお湯が滴る。その様子を見てすぐにオスカーは持ってきていた大き目のタオルをフーリィンに渡す。
「ありがとうございます。オスカーさん」
フーリィンのおなかがくぅ、と鳴った。
「……ふふ、見回りに付き合ってもらうからな。先に腹ごしらえしておくとするか。屋台の料理でも奢ろう」
こうしてオスカーとフーリィンは見回り前に屋台へ向かう事になった。
更に場面は見回り組に戻る。
「で、では肩車、お願いします。やはり高ければ高いほど様々なものが発見しやすいですからね」
コホン、と咳払いを一つ。サブロウはアダムに担がれる。
サブロウは確信する。この高さ……イケるっ!!
「ではまずは脱衣場のほうから警備していきましょうか。人は着替えの瞬間、どうしても無防備になるものです」
至極尤もらしい事を言うとサブロウたちは脱衣場へ向かった。もちろんアケチさんはその後ろからなんだかくねくねしながらついてきます。
脱衣場は高い垣根で男女が仕切られている。といってもその高さは2,5メーターほど。肩車されたサブロウには……見えるっ! 桃源郷が……っ!!
しかしそこには誰も居ない。
無念……既に皆着替え終わった後だったというのか……。
サブロウが血涙を流す。
「わわっ遅れちゃったよっ」
その時、脱衣所の入り口から声がした。サブロウ、顔! その顔やめろっ! さっきの悲壮感漂う顔から変わりすぎだろ。
そこに現れたのは『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)だ。
はい。キタこれ。おい、年齢確認しとけよ。ミスキャストだろ完全に。サブロウ、人にはやっていい事といけない事(主に社会的に)があるんだぞ。
もちろんサブロウが自由騎士全員の年齢など認識しているわけも無く、サブロウの視線はカーミラの一挙手一動に注がれる。
スポポーン、と音がするほどの速度でカーミラが服を脱いでいく。
まずい。このままではリプレイ公開中止か!? だが麺の心配は杞憂となる。カーミラは下に既に水着を着ていたのだ。助かった。ほんといろんな意味で心臓に悪いんだからね。
一方のサブロウはこれはこれで満足だったらしい。満足げな表情。
だが、これ以上待ってももうこれから着替えるものは居なさそうだ。
「脱衣場の安全は確保されたようです。では次は美肌の湯へ向かいましょう」
サブロウは機械を操るかのようにアダムへ指令を出す。次の戦場は美肌の湯だ!
美肌の湯では『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)がその効果に胸を躍らせていた。
「本当に効果があるのかしら?でも、試してみない訳にはいかないわよね」
効能を疑いながらも湯をそれはそれは丹念に、その小麦色の肌へ浸透させていく。
「そういえば、アダムやオスカーが見廻りするとか言ってたわね……。せっかく温泉にきたのに、もったいない」
いくら水着を着ていてもそのダイナマイトボディは隠しきれるものではない。
弾けんばかりの肢体を揺らしながら、エルシーが温泉を堪能していると、背後に視線を感じた。
「誰っ!」
とっさに胸を隠すような仕草としながら、手元にあった桶を視線を感じた方向へ投げつける。
カコーン! いい音がした。
「……アダム!?」
「痛ててて、とんだ厄災です……我々はこんなにもまじめに見回りをしているというのに」
見事に桶が命中したサブロウと担ぐアダムも一緒になって、エルシーに事情を説明する。
あまり納得した様子ではなかったが、アダムのまっすぐな目を見たエルシーはそれ以上何も言わず「麺料理でも食べてくるわ」と美肌の湯を後にした。
麺は知ってる。アケチさんはその時もずっとくねくねしてた。
そして舞台は最終決戦の地、大露天風呂へ。
そこには更なる刺客が牙を隠して待ち構えているのだ。
大露天風呂。テルメ温泉郷の中でも1,2を争う広々とした露天風呂。広さも十分なため利用するものは多い。
アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)はヴィンセント・ローズ(CL3000399)と共にいた。ヴィンセントたっての願いをアリスタルフが聞き入れたためだ。その願いとは蒸気鎧装を見せてもらう事。
ヴィンセントは前々からこれに興味があった。だが、キジンにとって機械化した部分というのは様々な思いと意味を持つ。そのため、これだけキジンが沢山居る自由騎士団でもなかなか言い出す事は出来なかった。そんな中今回の温泉の話が飛び込んできた。ヴィンセントは勇気をだしてアリスタルフに声をかけた。「改めて蒸気鎧装を見せてほしい」と。
「まじまじ見られるとやっぱ気恥ずかしいな」
少年のようなきらきらした目で機械化部位を眺めるヴィンセントにアリスタルフが照れながら言う。
「快諾してくれてマジでありがとう!銀色の蒸気鎧装とかクールでカッコいい!このシャープなフォルム最高!」
ヴィンセントの心からの感謝に、アリスタルフは笑顔を返すのだった。
「君は……確か、アリスタルフといったか」
ランスロット・カースン(CL3000391)はアリスタルフにとって何度か依頼を一緒した事がある先輩だ。
「最近続けて仕事を一緒に受けたな。互いに騎士だが自由騎士として交流を得るとは不思議なものだ」
ランスロットもまた、自由騎士としてはまだ日が浅い。それでも先輩と慕ってくれるアリスタルフに悪い気はしなかった。
「思えば、俺もずいぶんと肩に力が入っていた気もするな」
これまでの依頼の数々を思い出し、ランスロットは改めてそれを実感する。
折角の機会、有効に利用させて貰おう。
そしてランスロットはより効果的な温泉の入り方を常連客に尋ね、じっくりと温泉を楽しむ方法を見出す。温泉マイスター誕生の瞬間であった。
『翠氷の魔女』猪市 きゐこ(CL3000048)も大露天風呂に居た。
温泉……温泉ねぇ……いや、別に嫌いじゃないわ。寧ろ好きなぐらいだけど……。
ゆっくりのんびり入る為にもまずは…『掃除』が必要じゃないかないかしらね?
……混浴だからやる居ないだろうって? 甘いわね!
そこにロマンがある限り、絶対居るわ! 断言できる。
きゐこの予感は的中する。
そこに奴らが現れたのだ。高い位置から女子を見下ろすサブロウの顔はもはやすけべい以外の何者でもない。
「やっぱり来たわねっ! 成敗っ!!」
「えっ!?」
「えっ!?」
「うふっ♪」
ちゅどーん。きゐこの放つ『籠目の中の燐火(おしおき)』が見回り組に炸裂する。
※『籠目の中の燐火』の自由騎士への使用は、スタッフが入念な安全確認を行った上で実施されております。良い子の皆さんは絶対に真似をしないでね。
吹っ飛ぶ3人+2人。何故か近くに合った仕掛けも発動して爆発に巻き込まれるアリスタルフとランスロット。何故だ! 何故君たちまで覚悟完了してしまったのだ! これもまた運命なのか……。
ここからは吹っ飛んだ5人の末路を語ろうと思う。
Case1 アダムの場合
「痛てて……。一体何が起きたんだ」
爆炎の煙の中、アダムは何か柔らかいものに顔をうずめていた。
「もうっ! いきなり何ですのっ!?」
そこはジュリエットの胸の中。吹き飛ばされたアダムは、なんと偶然にも影からアダムを見守り(?)続けていたジュリエットの元へ飛んできたのだ。
薄い水着越しに感じる鼓動。
「その声……君は……ジュリエット!? す、すまないっすぐに離れるからっ」
アダムはすぐに離れると正座の体勢でジュリエットに深く謝罪する。
「えっ!? アダム……えっ!? じゃぁ今……アダム……が私……の……に……」
ぼん! とジュリエットから大きな音がした。
「ジュリエット! 大丈夫かい! ジュリエット!!」
顔を真っ赤に高潮させたジュリエットはそのまま気絶。あとにはジュリエットを呼ぶアダムの声が響いていた。
Case2 サブロウの場合
吹き飛んだ先に居たのは、もちろんきゐこ。
はい。皆さんもうオチは読めましたね。
ぷに。サブロウの手には小ぶりだが柔らかい確かな感触。
「……どうやらまだ爆発(おしおき)が足りないみたいねぇ……?」
地の底から響くような低い声。きゐこの目がギラリと光る。
「え、その、そんな。僕は皆さんのためにですね……」
しどろもどろになるサブロウ。だが手の位置は変えない。男だぜサブロウ。
「問答無用っ!!!!」
「あーーーーーーーれーーーーーーーーっ!!!」
こうしてサブロウはその夜、一際輝く一番星になった。
Case3 アケチさんの場合
なんでかスローなの。アケチさんだけ吹き飛ぶ様子がすっごいスローなの。
空を舞う、アケチさんと赤ふん。もうこれアートだよね。
吹き飛ばされてる間もくねくねしてるのがよくわかるんだ。
でもね、見えないの。カメラワークが絶妙というか。
どんなに描写しようとしてもね、隠れちゃうの。湯煙で。とにかくすごいの。これが覚悟の力なのかな。
だってほら、アケチさん見せたがってるの。ホラァ、また自分から見せに来てるジャーン。ほらー!
でも何故か隠れちゃう。
「ふふふ、ポロリもツルリも■■■も大歓迎ですよ!」
それはダメェーーーーッ!!!
Case4 アリスタルフの場合
「「きゃあっ」」
アリスタルフが吹っ飛んだ先には3人のうら若き女性。
『飢えた白狼』リンネ・スズカ(CL3000361)はのんびりと温泉の効果について周りの自由騎士たちに語っていた。
「温熱効果、水圧効果、浮力効果、発汗効果、転地効果……温泉は本当に良いものです」
毛が濡れるのはあまり好きではないが、数々の効能の前にはビビたる問題だった。
そこに飛んできたのがアリスタルフ。
「うぐぐ……一体何が……!?」
この感触……!? アリスタルフは自分が女性の下腹部に顔を埋めている事に気づく。
「わわっ!? すみませんっ! わざとじゃないんですっ」
だが気が動転してうまく体が動かない。
「私は別に気にしてない。それよりもどこか痛いところはないか?」
リンネは怒るどころかそのままの体勢でアリスタルフが落ち着くのを待つ。
同時にアリスタルフの右手は……なにやら柔らかいものを掴んでいた。
そこに居たのはいい具合に泥酔したツボミ。バーでお酒を拒まれたツボミは女衆にセクハラする気満々で大露天風呂へやってきていたのだ。セクハラするつもりが思いっきりされているこの状況。だがこれも覚悟の上。致し方ない。
「ん~~~? あらしのおむれに触ってるろはられらぁ~??」
あわてて手を離そうとするアリスタルフ。だがその手をへべれけになったツボミがむんずと掴む。そして元の位置へ。
「きょうはれんぶゆるすっ。 もんれおおきくしろ~ぉい」
「えぇーーーーーーっ!??!?!」
アリスタルフの思考回路がショートする。ツボミの意識もここで飛んだ。
「まさか……」
しばらくして意識を取り戻したアリスタルフは驚愕する。左手にも何かの感触。恐る恐る自身の左手を見る。そこには誰かのビキニが握られていたのだ。
一体誰の……。いやな予感がする。
「あれれーー?? 水着取れちゃったー」
この声はまずい。色々アウトだ。アリスタルフだけでなく麺も青ざめる。
声の主はカーミラ。
ぷるんと揺れる双丘。何よりも問題なのは年齢に似合わぬその体型と、彼女の羞恥心の薄さ。更に彼女が放つアイドルオーラは人を惹き付ける。さぁピンチだ!
「あ、そこにあった! 私の水着ーっ」
美味しそうに揺れる2つのお饅頭を隠そうともせず、カーミラが駆け寄ってくる。何故だ! 何故謎の光を覚えてくれてないんだ!! 絶対に見せられない戦い。麺の孤独な戦いが始まった。
湯気。……動けば散る。観葉植物。……限界がある。野生動物。……もうこれしかないっ。さぁ今でっち上げるぞ。テルメ温泉郷のマスコットにもなっている温泉リス。これはもうそれは沢山おりましてのう。至るところにおりますのじゃ。そしてこの子達は悪戯が大好きでのう。見えそうで見えないもどかしさでもだえる男性陣を見るのが何より好きときておる。
こうして温泉リスという強引な公式設定を生み出しながら、アリスタルフの覚悟は実を結んだ。麺は思う。気苦労の多そうな君にはラッキースケベ、あっても良いんじゃないかと。
Case5 ランスロットの場合
ランスロットが飛ばされたところには先客がひとり居た。
その先客は長い髪を先まで濡らし、驚いたのか背中を向けてこちらを見ない。
「す、すまない。俺も一体何が起きたのか……」
ようやく意識がはっきりしてきたランスロットは先客のほうを見る。
もしやこの者は裸……なのか?
長い髪に隠れているが胸元を隠すような布は巻かれていないように見えた。
「一体どういう事だ……この温泉はスイムウェア着用ではなかったのか」
ふいに先客がこちらを向く。
思わず顔を背けるランスロット。しかし彼もまた男。興味が無いわけではない。
薄く目を開けてみると……
そこに立っていたのはディルク・フォーゲル(CL3000381)。男だ。
「もしかして勘違いしてしまいましたか。長い髪ですから、後ろ姿だけだと女性に見間違えられる事、割とあるんですよ?」
始まるディルクのお説教。言われるがままに正座するランスロット。
その後、ランスロットが状況を説明し、疑いが晴れるまでの間、長い長いディルクの説教は続いたらしい。
●ジローの麺
テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は温泉脇のバーでお酒の嗜みながら皆の様子を眺めていた。
種族も、性別も、性格も、全てが異なるものたちが驚くほど自然に結束している。これほどまでに観察対象として面白い集団はなかなかに無いだろう。テオドールにはそれがとても心地よかった。
「そういえば、ミタホーンテン卿も店を出しているのだったな」
「へいっ! らっしゃい!」
ジローの威勢のいい声が出迎える。先客のエルシーはおいしそうに麺料理を食べている。その横にはエルシーとは真逆に、鬼ような量の麺に鬼気迫る表情で挑むオスカーとフーリィンの姿。数分前、なんとも独特な匂いにつられてジローの屋台へやってきた二人。教えられるがまま「ヤサイマシマシカラメアブラニンニクチョモランマ」の呪文を唱えしまったがばかりに起こった悲劇。もはやそこは戦場だった。
「何にしますかい?」
メニューには様々な麺料理が並ぶ。地域を越えて、国を超えて。ジローの麺料理の探究心は世界をまたに駆けているようだった。
「ではこれをもらおうか」
テオドールはその中に幼少期に良く食べていた麺料理を見つけたようだ。程なく料理が完成する。
「ありがとう。美味しそうだ」
懐かしい味に舌鼓を打ちながら、テオドールの表情は終始穏やかだった。
「しまった。見廻りと言いながらうっかり麺を堪能していた。トラブルが起きてなければよいのだが……」
麺を食べ終えたオスカーが本来の目的を思いだす。
「もう……お腹一杯で動けないです(うぷ)」
フーリィンはもう一歩も動けなさそうだ。
「立てるか? フーリィン」
甲斐甲斐しく世話を焼くオスカー。
「ありがとうございます……オス母ぁさんっ」
ん? オスカーは少し違和感を覚えたが、そっと聞き流す事にした。
●これもまたロマン
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は、温泉にてしっかりと目の保養もしたあと、日ごろの激戦で疲れた体を癒す、という大義名分を持って、温泉郷の外れにあるとある按摩施設へ来ていた。
「うちは美人揃いだよっ」
人生の酸いも甘いもかみ分けたような婆がにへらと笑いながら手招きしている。
「……本当に美人なんだろうな?」
ウェルスは婆に耳打ちする。
「へっへっへ。あたり前じゃないか。ミステルメ温泉郷にも選ばれた事がある子だよ」
ウェルス入店。うきうきが止まらない。
按摩嬢、登場。
確かに美人……であったのかもしれない。でも何十年前の話だ! 詐欺だ!!
「ちょ、ちょっと用事を」
ウェルスが帰ろうとしたその時、嬢の手がウェルスを掴む。
すごい力だ。抵抗できない。
「按摩一筋■■■年。テルメのゴッドハンドとはアタシの事だよ」
その(元)美人按摩嬢はぐふふ、と笑いながらウェルスに迫るのであった。
「アーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
熊、星になる。合掌。
その後、放心状態で温泉郷を彷徨う熊が発見される。
仲間に助けられ、その熊が最後に発した言葉はこうだ。
「美人美獣のケモノビトにもみもみされたかった、です……」
もう置いて帰ろう。この熊。
●宴もたけなわ
「ふぅ~」
お掃除が済んだきゐこはゆっくりと温泉に浸っていた。
もちろん水着は着ているが、帽子を深く被っており、相変わらず顔が見えない。
隠さなくていいのに。可愛いのに。
そんな声を気にもせず、きゐこはゆっくりのんびり温泉を満喫するのであった。
リンネはサウナにいた。
「先ほどの青年、やけに照れていたな」
件の出来事を思い出し、くすくすと笑う。
直後にサウナではガマン大会開始。最後は絶対に負けたくないリンネが少しでも暑さを凌ごうと水着を脱ごうとし、それを見た相手(男性)がノックダウンするという結果で終わったという。
一方温泉地での商売方法に興味のあったディルクは温泉郷のみやげ物売り場にいた。
彼はここでも何かを得て、更に商人としてのスキルをあげるのであろう。
時を同じくしてみやげ物売り場にはランスロットの姿。頼まれていた家族へのお土産を購入したようだ。
「これを1ロット。あとこれも。すべてロット単位でよろしく頼む」
「また皆で集りましょ!」
「いぇーーーーーい!!!」
湯船酒のメンバーも大満足だったようだ。
既に次の集まりをいつにするか、話は延々と続いていた。
ここはテルメ温泉郷。もしまた訪れたくなる事があれば、まずは軍事顧問に相談を。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『カタグルマン』
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)
『桶投げ名人』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『延長希望』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『これもまた運命』
取得者: アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)
『溶けぬ氷塊』
取得者: ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
『濡れると一回りちいさくなるのな』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『特定人物観察官』
取得者: ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)
『湯けむりの爆炎娘』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)
『サウナの女王』
取得者: リンネ・スズカ(CL3000361)
『アンタが大将』
取得者: サブロウ・カイトー(CL3000363)
『初温泉大満喫マン』
取得者: ヴィンセント・ローズ(CL3000399)
『温泉リスに愛されし者』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『の ん べ い』
取得者: アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)
『へ べ の れ け』
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『浮世の憂い』
取得者: エル・エル(CL3000370)
『達観者』
取得者: テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)
『イーちゃんといっしょ!』
取得者: グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)
『グリといっしょ!』
取得者: イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)
『温泉大満喫ガール』
取得者: ティーナ・カミュ(CL3000359)
『仄暗い温泉の底から』
取得者: エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『マシマシの誘惑』
取得者: フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『別世界の声を聞きし者』
取得者: ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『冷酒一献』
取得者: シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『お土産はいつもロット単位で』
取得者: ランスロット・カースン(CL3000391)
『湯煙マジシャン』
取得者: タマキ・アケチ(CL3000011)
『気配りさん』
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『所信表明』
取得者: トット・ワーフ(CL3000396)
『オス母ぁさん』
取得者: オスカー・バンベリー(CL3000332)
『見返り美人?』
取得者: ディルク・フォーゲル(CL3000381)
『ナイショだよ。』
取得者: マグノリア・ホワイト(CL3000242)
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)
『桶投げ名人』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『延長希望』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『これもまた運命』
取得者: アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)
『溶けぬ氷塊』
取得者: ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
『濡れると一回りちいさくなるのな』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『特定人物観察官』
取得者: ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)
『湯けむりの爆炎娘』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)
『サウナの女王』
取得者: リンネ・スズカ(CL3000361)
『アンタが大将』
取得者: サブロウ・カイトー(CL3000363)
『初温泉大満喫マン』
取得者: ヴィンセント・ローズ(CL3000399)
『温泉リスに愛されし者』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『の ん べ い』
取得者: アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)
『へ べ の れ け』
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『浮世の憂い』
取得者: エル・エル(CL3000370)
『達観者』
取得者: テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)
『イーちゃんといっしょ!』
取得者: グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)
『グリといっしょ!』
取得者: イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)
『温泉大満喫ガール』
取得者: ティーナ・カミュ(CL3000359)
『仄暗い温泉の底から』
取得者: エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『マシマシの誘惑』
取得者: フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『別世界の声を聞きし者』
取得者: ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『冷酒一献』
取得者: シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『お土産はいつもロット単位で』
取得者: ランスロット・カースン(CL3000391)
『湯煙マジシャン』
取得者: タマキ・アケチ(CL3000011)
『気配りさん』
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『所信表明』
取得者: トット・ワーフ(CL3000396)
『オス母ぁさん』
取得者: オスカー・バンベリー(CL3000332)
『見返り美人?』
取得者: ディルク・フォーゲル(CL3000381)
『ナイショだよ。』
取得者: マグノリア・ホワイト(CL3000242)
特殊成果
『温泉饅頭』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
†あとがき†
MVPは本当に悩みました。
その結果、星になった方と星にした方。
そして温泉リスの生みの親となった方へ。
お土産は温泉饅頭です。美味しいです。
温泉卵も美味しいのでそれはまた次の機会にでも。
戦いは苛烈を極めていくと思われる中、温泉でひと時の安らぎ(?)を
感じていただけていれば幸いです。
ご参加ありがとうございました。
その結果、星になった方と星にした方。
そして温泉リスの生みの親となった方へ。
お土産は温泉饅頭です。美味しいです。
温泉卵も美味しいのでそれはまた次の機会にでも。
戦いは苛烈を極めていくと思われる中、温泉でひと時の安らぎ(?)を
感じていただけていれば幸いです。
ご参加ありがとうございました。
FL送付済