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アデレード襲撃阻止

●それは悪意ある笑み
「なぁ、知ってるか」
「あ? なんだ?」
アデレード港町から離れた山間。
日の落ちたそんな中で、数十人のならず者たちが話をしていた。
「港町、随分復興が進んでるんだってよ」
「ああ、そりゃ知ってるけども」
話に上がっていたのは先日復興作業が進んでいたアデレード港町の事。
「だからこそ、色々あるってもんじゃねぇか?」
「だからってだな……」
「おいおい、最後まで話を聞けよ。まだ防衛が薄いらしいぜ?」
ならず者のうちの一人がそういえば、ならず者たちはほう、とそれぞれが笑いを浮かべた。
「だったら早いうちに行っちまおうぜ。さっさと奪って俺達のもんにしちまうんだ」
善は急げともいうが、悪も急ぐ。
その日、アデレード港町はならず者たちに襲われ、多くの被害を受けることになる。
●ならば、やることは一つ
「と、いう未来が水鏡から予測されたんです」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は階差演算室で集まった自由騎士の面々に向けて、水鏡に予測された事態を説明した。
アデレードがならず者たちに防衛設備の甘い個所から襲撃を受け、被害を受けるという未来が映されたというのだ。
せっかく直したこの街を再び狙われては困るが、襲ってくるならず者たちの位置までは予測されず、対処する時間だけが出来上がっていた。
「折角直したのに、また壊されちゃうのは困るもんね。だからみんなに頑張ってもらいたいんだ」
襲撃地点は予測されており、そちらに防衛戦を敷き、攻めてくるならず者たちを撃退する。
と、言うのが依頼の内容の主な目的となる事だった。
「必要な物は言ってくれればちゃんと用意できるけど、あまり凄いものはちょっと難しいかも」
素材は物資については心配する事はなく、こちら側からも物資の供給と補給は行えるとの事だった。
「どういう設備にするのがいいのかは私はわからないけど。皆ならきっとできるから、頑張ってね!」
どんなものを作るかは皆次第という事だったがどちらにしてもこの港町は護らねばならない。
だからこそ、綿密な準備が必要となるだろう。
さっそく行動を開始しよう、まずは会議……そして、実働だ。
「なぁ、知ってるか」
「あ? なんだ?」
アデレード港町から離れた山間。
日の落ちたそんな中で、数十人のならず者たちが話をしていた。
「港町、随分復興が進んでるんだってよ」
「ああ、そりゃ知ってるけども」
話に上がっていたのは先日復興作業が進んでいたアデレード港町の事。
「だからこそ、色々あるってもんじゃねぇか?」
「だからってだな……」
「おいおい、最後まで話を聞けよ。まだ防衛が薄いらしいぜ?」
ならず者のうちの一人がそういえば、ならず者たちはほう、とそれぞれが笑いを浮かべた。
「だったら早いうちに行っちまおうぜ。さっさと奪って俺達のもんにしちまうんだ」
善は急げともいうが、悪も急ぐ。
その日、アデレード港町はならず者たちに襲われ、多くの被害を受けることになる。
●ならば、やることは一つ
「と、いう未来が水鏡から予測されたんです」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は階差演算室で集まった自由騎士の面々に向けて、水鏡に予測された事態を説明した。
アデレードがならず者たちに防衛設備の甘い個所から襲撃を受け、被害を受けるという未来が映されたというのだ。
せっかく直したこの街を再び狙われては困るが、襲ってくるならず者たちの位置までは予測されず、対処する時間だけが出来上がっていた。
「折角直したのに、また壊されちゃうのは困るもんね。だからみんなに頑張ってもらいたいんだ」
襲撃地点は予測されており、そちらに防衛戦を敷き、攻めてくるならず者たちを撃退する。
と、言うのが依頼の内容の主な目的となる事だった。
「必要な物は言ってくれればちゃんと用意できるけど、あまり凄いものはちょっと難しいかも」
素材は物資については心配する事はなく、こちら側からも物資の供給と補給は行えるとの事だった。
「どういう設備にするのがいいのかは私はわからないけど。皆ならきっとできるから、頑張ってね!」
どんなものを作るかは皆次第という事だったがどちらにしてもこの港町は護らねばならない。
だからこそ、綿密な準備が必要となるだろう。
さっそく行動を開始しよう、まずは会議……そして、実働だ。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.アデレードの街を護り切る
2.防衛設備を作り上げる
2.防衛設備を作り上げる
2本目のシナリオを担当させていただきますSTのトビネコです。
前回のアデレード港町復興作業から続く流れとなりますが、明確な続編というわけではありませんので、皆様気にせずご参加いただけると幸いです。
さて、今回の状況ですが、アデレードが襲撃されるという未来が予測され、その為防衛戦を作りならず者たちを迎撃する、という形になります。
とはいえ、主な部分は防衛設備の建設でもあり、設備次第によっては直接戦闘が行われずに撃退も可能と思われます。
復興作業に協力してくれた皆様の為に、住民達も手を貸してくれると思いますので短い時間ではありますが、防衛線を作り上げ、危機を乗り越えられるようにしてあげてください。
●設備作成範囲
襲撃が予測される地点はおおよそ予測がついております。
その為、一日で防衛線を作り上げるのは不可能ではなく、一点に防衛線を作り上げる、という形になります。
用意できる資材は、一般的に用意されるものであれば用意できますが、特殊なものを用いる場合は皆さまで持ち込んでもらう事になるでしょう。
設備の建設には住民達からでた有志や騎士団の特に名前のない方々、新人たちも手を貸してくれます。
●現在の状況
作業に使える日数は一日だけ。襲撃は夜間となっており、朝から作業して夜には迎撃開始という流れになります。
襲撃時間は日が落ちており、見通しはやや悪い状態です。
●ならず者たち
個々の力はそこまでではないですが、数だけは非常に多い存在です。
その数なんと20人。いったいどこに潜んでいたのでしょうか……何はともあれ、これらが皆様の今回の敵となります。
特にバトルスタイルを持たぬ一般人並みのため、皆様であれば1対1で戦えばまず負けませんが、数ばかりが非常に多いです。
また、とりあえず囲んで叩けという心情を持っているのか、突っ込むと包囲される可能性が非常に高いです。
統制自体は取れていないため、防衛設備を用いて撃退、混乱させてしまえば後は散り散りになることも予測できるでしょう。
基本的に数で勝っているから強気のようです。
現状の説明は以上となります。
どうか皆様の手で無事に街を護ってください。
前回のアデレード港町復興作業から続く流れとなりますが、明確な続編というわけではありませんので、皆様気にせずご参加いただけると幸いです。
さて、今回の状況ですが、アデレードが襲撃されるという未来が予測され、その為防衛戦を作りならず者たちを迎撃する、という形になります。
とはいえ、主な部分は防衛設備の建設でもあり、設備次第によっては直接戦闘が行われずに撃退も可能と思われます。
復興作業に協力してくれた皆様の為に、住民達も手を貸してくれると思いますので短い時間ではありますが、防衛線を作り上げ、危機を乗り越えられるようにしてあげてください。
●設備作成範囲
襲撃が予測される地点はおおよそ予測がついております。
その為、一日で防衛線を作り上げるのは不可能ではなく、一点に防衛線を作り上げる、という形になります。
用意できる資材は、一般的に用意されるものであれば用意できますが、特殊なものを用いる場合は皆さまで持ち込んでもらう事になるでしょう。
設備の建設には住民達からでた有志や騎士団の特に名前のない方々、新人たちも手を貸してくれます。
●現在の状況
作業に使える日数は一日だけ。襲撃は夜間となっており、朝から作業して夜には迎撃開始という流れになります。
襲撃時間は日が落ちており、見通しはやや悪い状態です。
●ならず者たち
個々の力はそこまでではないですが、数だけは非常に多い存在です。
その数なんと20人。いったいどこに潜んでいたのでしょうか……何はともあれ、これらが皆様の今回の敵となります。
特にバトルスタイルを持たぬ一般人並みのため、皆様であれば1対1で戦えばまず負けませんが、数ばかりが非常に多いです。
また、とりあえず囲んで叩けという心情を持っているのか、突っ込むと包囲される可能性が非常に高いです。
統制自体は取れていないため、防衛設備を用いて撃退、混乱させてしまえば後は散り散りになることも予測できるでしょう。
基本的に数で勝っているから強気のようです。
現状の説明は以上となります。
どうか皆様の手で無事に街を護ってください。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
2個
6個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年06月29日
2018年06月29日
†メイン参加者 8人†
●
「よーし! 次はこっちー!」
アデレード港町よりやや離れた場所。
丁度襲撃が予測される方角には、多くの住民達と『灰の探索者』アラド・サイレント(CL3000051)の姿があった。
アラドは現地の住民達に指示を出しながら、簡易的ではあるが二階建て程度の高さとなる防壁を作っている真っ最中だった。
図面にはしっかりと幅を計算して作っており、二人ぐらいの人が問題なく通っていくこともできる事は計算済みだ。
「こちらに投石用の石を置いておくぞ。次はどこに回ればいい?」
「あ、そうだね。ここばっかりだと足りなくなったら困るから……ここと、ここと……あと、ここにも運んでおいて」
先日から筋肉痛になりそうな身を抑えながら、リュリュ・ロジェ(CL3000117) はアラドに指示を仰ぐ。
帰ってきた内容は投石用の石をまんべんなく防壁の近くに運び終えておくという事で、筋肉痛が凄まじいことになりそうだとぞっとするが、しないわけにもいくまいと、身体に鞭を打って動き出す。
「まぁ、こっちも手伝うぞ旦那。力仕事は任せておけ!」
どん、と胸を叩き『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033) が自信満々にそういった。
この際一人で運ぶことに絶望を覚えていたリュリュだったが、この手助け非常にありがたい。
「ああ、それじゃあ手分けして……体力も使いすぎないようにやろう」
夜の自分達の役割も考え、二人は手分けして作業を進めていく。
「ふふ、あの二人も頑張ってくれてるね。アラドくん、そっちはどう?」
「大変ー……かな。素材もちょっと足りてなくって」
「おや、そうだね。だったら聞いてくるよ」
ペルナ・クラール(CL3000104) が現場を見やれば、防壁を建てる為に集めた資材が思った以上に足りなくなっているのが見えた。
二階建て、という高層を作る以上、やはり資材の消費が多いのだろう。
「さて、余ってそうな所といえば」
ペルナはこの区域の近くの復興作業を行ったことを思い出す。
確か、あの時の作業で加工済みの木材が多く余っていたはずだ。
ぺルナが頼めば、きっと彼らは快く資材を分けてくれるだろう。
「おや?」
住民達が集まる簡易キャンプへとぺルナが向かえばすでに復興資材に余ったものを運ぼうとする『護神の剣』カスカ・セイリュウジ(CL3000019) の姿があった。
「おっと、先を越されちゃったかな。いっしょに運ぼうか」
そういえば彼女も、前回の復興作業を手伝ってくれていたなと、ぺルナは記憶を手繰りながら微笑みかけた。
「おや、それは助かります。量も結構あったので」
復興資材のあまり以上に資材は集っていた。
もしかしたら住民達が気を聞かせてくれたのかもしれないと思いながら二人は資材を運び始める。
●
日も高く上がり、昼を過ぎたころ。
アデレードの外回りには多くの防衛設備の骨組みが出来始めていた。
「うーん」
「どうしたの?」
出来上がってきた防衛設備を見て、唸り声をあげる『翠の魔焔師』猪市 きゐこ(CL3000048) を見て、監督をしていたアラドが首を傾げた。
「だいぶしっかりしてきたけど、まだ足りないかなって。レンガや土って余ってないかな」
「それだったらえっと」
アラドはパラパラと資料を捲り、在庫を確認する。
そういえば作りすぎて余っていたな、と資料を確認して思い出す。
「あるー……ね」
「よし、じゃあそれを貰っていいかな。この設備をもっと強くしちゃうから」
どうするのだろう、と思えばきゐこは住民達に指示を出し、脆いと思われる部分にレンガを当てこんで補強していく。
なるほど、と思った。木材だけではなく、これらを合わせて使う事でより効果的な防壁を築けるだろう。
「ああ、土壁を作るならちょっと待ってくれるだろうか?」
併せて土壁を作ろうとした二人の活動を見て『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086) はストップをかける。
「ただ土を建てるだけじゃなく、これを使うといいはずだ」
彼女は抱えて持ってきた水濡れ土、粘土を置いた。
「粘土?」
「ああ、完全じゃないがね。これを水と合わせて土壁に塗って炙る。そうすればかなり硬い壁が作れるはずさ」
陶器類を作る際の応用だろうか、と思いつつも実際に試せば案外硬い壁が作れていく。
ツボミを加えて、作業はどんどんと進んでいき、守りに関してはほとんど完璧に近いレベルで完成していく。
「よし、仕上げは……」
「あ、水はダメ……やるなら最後」
きゐこが水を使って木造建築物の対価性を高めることは確かに良い事だが、最後にしないと作業中転落事故も起きかねないとアラドは止めた。
「わ、わかってるわ! とりあえず次、次やりましょう!」
頑張ってくれてるなぁ、と思いながらアラドは彼女と一緒に別の場所の補強に回る。
「……さて」
そんな二人を見送りながら、ツボミは考えた。
今回の襲撃犯共、都合よく献体にでもなってくれればいいのだが。
期待を胸に、彼女はやるべきことを進めていく。怪我人の治療や水分補給の手伝いなど、やることはたくさんあるのだ。
もちろん、自身の飢えを癒すことも。
防壁が組み上がっている場所を巡りながら、『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)は思案を巡らせた。
壁は強固になっているが、ただ硬いだけではまだ無駄がある。
「すみません、在庫に余ってる木材はあります?」
作業員たちがなんの事かと木材を持ってくれば、彼は作業用の鉈を使って木材を尖るように削っていく。
「……うん、こんな感じで」
それを彼は防壁の壁から突き出るように設置していく。
一種のファランクスのようなものになっていくのを見れば、相手も迂闊に突撃端切れない。
「お願いしてもいいでしょうか」
容赦のないものを作っていくなぁと、笑いながら作業員達は同じように作業を進めていく。
「おや……まぁ、大丈夫かな」
そんな様子を見ながら、子供達と一緒に投げれるサイズの石を中心に拾い集めていたぺルナは少し不安を覚えた。
「……どうしました?」
「ううん、結構凄くなってきたなぁって」
カスカもエミリオの作業場所を見れば、確かに防壁がどんどん仰々しくなっていく。
あれだけ凄まじければ襲撃者たちの突撃力は一気に削げるだろう。
「あ、あっちはダメだよ。こっちで石拾いしようね」
子供たちが何かをしているのか気になって、走っていこうとするのをぺルナは制する。
作業自体もなかなか危ない事をしているので、子供達を近づけるのは危ない事もあった。
「次は穴掘りでしょうかね」
「あっ」
透析用の石が集め終わったところで、次は近辺を穴だらけにして更に機動力を削ごうとカスカの提案があり、子供達も一緒にスコップを手に持って作業を開始していた。
だが、それを見てぺルナは間の抜けた声をあげる。
「アクアプレイスを使おうかと思ってたんだけど。準備忘れてきちゃった」
ああ、とカスカは納得した。
これだけ忙しいのだ、ついうっかりという事があっても仕方ない。
それに何より、これだけ準備が進んでいれば困ることなど何もないだろうから。
少しばかり予定通りにいかなかったが、防壁の準備は確実に進んでいき、日が沈むころには完璧といっていいレベルに防衛線は完成していた。
●
「さーてと」
日が沈んだ頃、山とアデレードを一望できる地点で双眼鏡を覗きながらウェルスは敵を探していた。
完全に敵を発見できるわけではないものの、ある程度存在が動いているのが把握できれば問題ない。
暗視能力に優れる彼だからこそできる事だった。
「お」
そんな彼の視界に、侵攻するならず者の集団が目に入った。
「どうだ、状態は」
「そうだね……」
位置を確認したウェルスの話を聞きながらきゐこも確認してみる。
暗くなっているので完全に敵を把握できないが、隊列は雑。一番後方でのんびりと歩く男の姿が捕らえられた。
「……なるほど、索敵も甘いし、隊列も適当。一番後ろのやつが当目で間違いないな」
付け加えて、大した相手でもなさそうだとリュリュは冷静に分析を終える。
「それじゃ、どうする?」
「このまま戻ろう。見つかってもいないしな」
各自戻り、防衛部隊に合流。
と、リュリュが仕切り、斥候部隊の3人は情報を得て味方の場所へと戻っていった。
「へへ、もうすぐ俺達の……うん?」
ならず者の一団は、ふと足を止める。
話になかった防壁がしっかりと敷かれているではないか。
「おいおい、こりゃどういうことだ」
これは不味いのではないか。
そんな考えが浮かぶ彼らだったが、次の瞬間その思考は無くなった。
「めぇっ!? まだ柵も完成してないのに!」
「おいおい、穴だらけじゃねぇか。やっちまうぜ、いくぞおらぁっ!」
頭目がそう叫べばならず者は一斉に声をあげ、防壁目がけて走り抜ける。
目の前にある防壁は、所々穴が見える、やはりこれは未完成、間に合っていないならこんなもの意味を成さない。
「うわあああ!?」
と、彼らが思った矢先、突っ込んだ連中が突然情けない声をあげて転びだす。
「何だ、何が起きた!?」
「な、何だここ、凍ってうああああ!?」
飛び出した連中は、リュリュの用意した凍結地帯に足を踏み入れ、思い切り足を滑らせて転倒している。
更にそこに合わせて、大量の石が飛んできた。
体勢の崩れた彼らはそれを避ける術もなく、一人二人、気が付けば四人程その場で石が脳天を直撃し、意識を失っていく。
「くそっ、違う場所だ! 滑らないところから突っ込め!」
遠くを見渡し、そんな怒号が響くと彼らは左右に散る様に走っていく。
「うわっ、なんでこんなところに穴が!?」
だが、彼らが分かれた先には多数掘られたスネアトラップ地帯。
カスカや子供達の悪戯に近いものだが、この暗い地帯では大いに効果があった。
「随分効果があるな、何人ぐらい倒せた」
「いやぁ、8人ぐらいですかね」
海や空から来る相手がいるのかもと思っていたエミリオだったが、現状そんなことはなく撃退は問題なく進んでいた。
事前に用意した覗き穴からライフルを構えて覗いてみれば、突破してきたならず者たちも、棘だらけの防壁を見て足が止まる。
そこを狙って容赦なくエミリオが引き金を引けば、銃弾は綺麗にならず者の肩を撃ち抜く。
「よし、次」
「……ふぅ」
防衛をしている以上、相手を殺すことはあるかもしれない。
それは仕方ない事ではあれど、なるべくは避けたい。
容赦なく撃退を進めていくエミリオと対照的な意見を持ちながらも、無事生き残った彼らは治療しなければと思いながら、リュリュはならず者たちを迎撃する手を強めていく。
「えーいっ!」
別のならず者たちの突撃場所で、アラドは増幅させた魔力をもってならず者たちが足を取られている穴目がけて炎を放つ。
「うわああ!? 燃えてる! 燃えてる!!」
「あ、やりすぎた。冷やすね」
不幸にも巻き込まれた相手に、アラドが追加で沈下も狙って冷気を放ち、凝固させれば炎は収まる代わりに強烈な冷気でならず者は意識を失う。
「ふぅー、敵さんはいっぱいだなぁ」
報告と合わせて半分ぐらいは倒したはずだが、まだいるあたり凄まじさを感じる。
だが、しっかりと作り上げられた防壁と、協力してくれる人たちのお陰で全くといって被害は出ていない。
「ふふ、細工は流々、仕掛けは上場。あとは仕上げを御覧じろだわ!」
アラドの傍で、楽しそうにきゐこが炎を放てば、穴に敷かれた草木に炎が着火し、周囲が一斉に燃え上がる。
「うわあああ!?」
突然の炎に慌てふためくならず者たちは、散り散りになって逃げていく。
「わぁ……大丈夫かな?」
「大丈夫よ、あの辺水も敷き詰めてあるから」
「あ、ほんとだ」
近場に敷き詰めた水場を見つけて、炎が引火したならず者たちが飛び込んでいく。
体力を奪われ、気力を奪われ、飛び込んだ先の泥水で一気にやる気を失ってしまった者達が力尽きてるのは憐れみを感じるが、自業自得だし仕方ない。
中には元気に必死で逃げていく者達もいるが、側面から響く銃撃音と同時に次々と倒れていく。
「こちらウェルス。3人ぐらい仕留めたぞ」
「うんうん、いいじゃない。これなら宣伝もばっちりだわ!」
「わぁ……宣伝までするんだ」
通信の向こうでウェルスと意気投合しながらきゐこ達は防壁の有用性の宣伝をどうやるか、という話で盛り上がりだす。
そんな様子を見ながら、アラドは最後まで迎撃に全力を尽くしていく。
「もう少し、ですかね」
投石部隊が防壁から効率的な投擲を行い、ほとんどのならず者たちを無力化している様子を見てカスカはもう少しで戦いが終わりそうだと思いだした。
相手のほとんどは倒れ、残ったものも気力を失いだしている。
「……だとよかったんですが」
案外、運のいいものはいるものだ。
刀を構え直し、カスカは防壁から飛び降りた。
「へへ、ようやくこれた。ここまで来れば」
「めぇっ!?」
「よくもやってくれたなぁ!?」
防壁の隙間から内側へ走り抜けた一人のならず者が武器を構え、振りかぶる。
「なーんて、お休みなさいだよ」
りーん、というベルの音が響くと同時に、ごぉんと言う打撃音が響き、武器を振りかぶったならず者は仰向けに倒れる。
「て、てめぇ!?」
もう一人入り込んだならず者がその様子に驚き、足を止める。
「まぁまぁ、今は休んでおこう?」
が、その僅かな隙を見て再びベルの音が響く。
また一人、ならず者が眠りに落ちるのにそう時間はかからなかった。
「く、くそっ。もう俺だけじゃねぇか」
辺りを見回しても、仲間の姿はない。
「まぁ、いい気分じゃないですからね」
何とかここまでたどり着いた頭目の前にカスカが降り立った。
「私も一応、モノを作る側の人間なので……遠慮はしませんよ」
一瞬で加速したカスカが頭目との間合いを詰める。
「は、はやっ……」
抜刀の構えを取ったカスカの視線が頭目を睨みつける。
「……まぁ、壊すのは気分が良くならないからね」
だが、刀は抜かれず、勢いのままに繰り出された柄が頭目のみぞおちに突き刺さる。
げふっ、と情けない声を出し、頭目がはぐったりと倒れた。
「あっ、大丈夫だった?」
ならず者を引きずってやってきたペルナが倒れた頭目を見て、無事を確認して微笑む。
程なくして全てのならず者が捕縛されたという連絡が入り、防壁付近は歓声に満ち溢れた。
●
縛り上げられたならず者達は、その全員が治療を受けていた。
状態に差はあれど無事でありその後はペルナの説教を受けて然るべき場所に叩き込まれるだろう。
だが、ツボミはそんな彼らの前にゆっくり腰を下ろし、目を見つめる。
「死んでてくれれば献体に貰えたのだがなあ。貴様等、物は相談だが。医学の発展の為、罠で事故死してた事にしてくれんか?」
は? と惚けた声がならず者たちから上がる。
何を言っているんだ、ふざけるな。という反論が上がる。
「……残念だ。では、次の機会に期待するとしよう」
ふぅ、と息を吐きツボミはゆっくり立ち上がり、背を向ける。
「だって貴様等、どうせまた同じ様な事するだろう?」
冷たく、感情の籠らぬ声。まるで人と見ていない様な言葉がならず者たちを震え上がらせた。
彼らが同じような事をすることはないだろう。
今回の出来事と、したところで到底勝ち目がない事も理解できた。
だからこそ、彼らは同じようなことをしないだろう。
誰一人殺さず、アデレードを守り抜いた彼らを見たから。
皆で力を合わせた後、真摯に説教してくれた人や、こんな自分達に手を差し伸べてくれた人もいた。
これから、然るべき所で反省した彼らは、きっと同じことはしないだろう。
アデレードを照らす朝日が眩しく、これからの事を祝福しているようにも見えた。
だから今は、この街を護ってくれた彼らに感謝しよう。彼ら無くして、この結果はあり得なかったのだから。
「よーし! 次はこっちー!」
アデレード港町よりやや離れた場所。
丁度襲撃が予測される方角には、多くの住民達と『灰の探索者』アラド・サイレント(CL3000051)の姿があった。
アラドは現地の住民達に指示を出しながら、簡易的ではあるが二階建て程度の高さとなる防壁を作っている真っ最中だった。
図面にはしっかりと幅を計算して作っており、二人ぐらいの人が問題なく通っていくこともできる事は計算済みだ。
「こちらに投石用の石を置いておくぞ。次はどこに回ればいい?」
「あ、そうだね。ここばっかりだと足りなくなったら困るから……ここと、ここと……あと、ここにも運んでおいて」
先日から筋肉痛になりそうな身を抑えながら、リュリュ・ロジェ(CL3000117) はアラドに指示を仰ぐ。
帰ってきた内容は投石用の石をまんべんなく防壁の近くに運び終えておくという事で、筋肉痛が凄まじいことになりそうだとぞっとするが、しないわけにもいくまいと、身体に鞭を打って動き出す。
「まぁ、こっちも手伝うぞ旦那。力仕事は任せておけ!」
どん、と胸を叩き『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033) が自信満々にそういった。
この際一人で運ぶことに絶望を覚えていたリュリュだったが、この手助け非常にありがたい。
「ああ、それじゃあ手分けして……体力も使いすぎないようにやろう」
夜の自分達の役割も考え、二人は手分けして作業を進めていく。
「ふふ、あの二人も頑張ってくれてるね。アラドくん、そっちはどう?」
「大変ー……かな。素材もちょっと足りてなくって」
「おや、そうだね。だったら聞いてくるよ」
ペルナ・クラール(CL3000104) が現場を見やれば、防壁を建てる為に集めた資材が思った以上に足りなくなっているのが見えた。
二階建て、という高層を作る以上、やはり資材の消費が多いのだろう。
「さて、余ってそうな所といえば」
ペルナはこの区域の近くの復興作業を行ったことを思い出す。
確か、あの時の作業で加工済みの木材が多く余っていたはずだ。
ぺルナが頼めば、きっと彼らは快く資材を分けてくれるだろう。
「おや?」
住民達が集まる簡易キャンプへとぺルナが向かえばすでに復興資材に余ったものを運ぼうとする『護神の剣』カスカ・セイリュウジ(CL3000019) の姿があった。
「おっと、先を越されちゃったかな。いっしょに運ぼうか」
そういえば彼女も、前回の復興作業を手伝ってくれていたなと、ぺルナは記憶を手繰りながら微笑みかけた。
「おや、それは助かります。量も結構あったので」
復興資材のあまり以上に資材は集っていた。
もしかしたら住民達が気を聞かせてくれたのかもしれないと思いながら二人は資材を運び始める。
●
日も高く上がり、昼を過ぎたころ。
アデレードの外回りには多くの防衛設備の骨組みが出来始めていた。
「うーん」
「どうしたの?」
出来上がってきた防衛設備を見て、唸り声をあげる『翠の魔焔師』猪市 きゐこ(CL3000048) を見て、監督をしていたアラドが首を傾げた。
「だいぶしっかりしてきたけど、まだ足りないかなって。レンガや土って余ってないかな」
「それだったらえっと」
アラドはパラパラと資料を捲り、在庫を確認する。
そういえば作りすぎて余っていたな、と資料を確認して思い出す。
「あるー……ね」
「よし、じゃあそれを貰っていいかな。この設備をもっと強くしちゃうから」
どうするのだろう、と思えばきゐこは住民達に指示を出し、脆いと思われる部分にレンガを当てこんで補強していく。
なるほど、と思った。木材だけではなく、これらを合わせて使う事でより効果的な防壁を築けるだろう。
「ああ、土壁を作るならちょっと待ってくれるだろうか?」
併せて土壁を作ろうとした二人の活動を見て『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086) はストップをかける。
「ただ土を建てるだけじゃなく、これを使うといいはずだ」
彼女は抱えて持ってきた水濡れ土、粘土を置いた。
「粘土?」
「ああ、完全じゃないがね。これを水と合わせて土壁に塗って炙る。そうすればかなり硬い壁が作れるはずさ」
陶器類を作る際の応用だろうか、と思いつつも実際に試せば案外硬い壁が作れていく。
ツボミを加えて、作業はどんどんと進んでいき、守りに関してはほとんど完璧に近いレベルで完成していく。
「よし、仕上げは……」
「あ、水はダメ……やるなら最後」
きゐこが水を使って木造建築物の対価性を高めることは確かに良い事だが、最後にしないと作業中転落事故も起きかねないとアラドは止めた。
「わ、わかってるわ! とりあえず次、次やりましょう!」
頑張ってくれてるなぁ、と思いながらアラドは彼女と一緒に別の場所の補強に回る。
「……さて」
そんな二人を見送りながら、ツボミは考えた。
今回の襲撃犯共、都合よく献体にでもなってくれればいいのだが。
期待を胸に、彼女はやるべきことを進めていく。怪我人の治療や水分補給の手伝いなど、やることはたくさんあるのだ。
もちろん、自身の飢えを癒すことも。
防壁が組み上がっている場所を巡りながら、『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)は思案を巡らせた。
壁は強固になっているが、ただ硬いだけではまだ無駄がある。
「すみません、在庫に余ってる木材はあります?」
作業員たちがなんの事かと木材を持ってくれば、彼は作業用の鉈を使って木材を尖るように削っていく。
「……うん、こんな感じで」
それを彼は防壁の壁から突き出るように設置していく。
一種のファランクスのようなものになっていくのを見れば、相手も迂闊に突撃端切れない。
「お願いしてもいいでしょうか」
容赦のないものを作っていくなぁと、笑いながら作業員達は同じように作業を進めていく。
「おや……まぁ、大丈夫かな」
そんな様子を見ながら、子供達と一緒に投げれるサイズの石を中心に拾い集めていたぺルナは少し不安を覚えた。
「……どうしました?」
「ううん、結構凄くなってきたなぁって」
カスカもエミリオの作業場所を見れば、確かに防壁がどんどん仰々しくなっていく。
あれだけ凄まじければ襲撃者たちの突撃力は一気に削げるだろう。
「あ、あっちはダメだよ。こっちで石拾いしようね」
子供たちが何かをしているのか気になって、走っていこうとするのをぺルナは制する。
作業自体もなかなか危ない事をしているので、子供達を近づけるのは危ない事もあった。
「次は穴掘りでしょうかね」
「あっ」
透析用の石が集め終わったところで、次は近辺を穴だらけにして更に機動力を削ごうとカスカの提案があり、子供達も一緒にスコップを手に持って作業を開始していた。
だが、それを見てぺルナは間の抜けた声をあげる。
「アクアプレイスを使おうかと思ってたんだけど。準備忘れてきちゃった」
ああ、とカスカは納得した。
これだけ忙しいのだ、ついうっかりという事があっても仕方ない。
それに何より、これだけ準備が進んでいれば困ることなど何もないだろうから。
少しばかり予定通りにいかなかったが、防壁の準備は確実に進んでいき、日が沈むころには完璧といっていいレベルに防衛線は完成していた。
●
「さーてと」
日が沈んだ頃、山とアデレードを一望できる地点で双眼鏡を覗きながらウェルスは敵を探していた。
完全に敵を発見できるわけではないものの、ある程度存在が動いているのが把握できれば問題ない。
暗視能力に優れる彼だからこそできる事だった。
「お」
そんな彼の視界に、侵攻するならず者の集団が目に入った。
「どうだ、状態は」
「そうだね……」
位置を確認したウェルスの話を聞きながらきゐこも確認してみる。
暗くなっているので完全に敵を把握できないが、隊列は雑。一番後方でのんびりと歩く男の姿が捕らえられた。
「……なるほど、索敵も甘いし、隊列も適当。一番後ろのやつが当目で間違いないな」
付け加えて、大した相手でもなさそうだとリュリュは冷静に分析を終える。
「それじゃ、どうする?」
「このまま戻ろう。見つかってもいないしな」
各自戻り、防衛部隊に合流。
と、リュリュが仕切り、斥候部隊の3人は情報を得て味方の場所へと戻っていった。
「へへ、もうすぐ俺達の……うん?」
ならず者の一団は、ふと足を止める。
話になかった防壁がしっかりと敷かれているではないか。
「おいおい、こりゃどういうことだ」
これは不味いのではないか。
そんな考えが浮かぶ彼らだったが、次の瞬間その思考は無くなった。
「めぇっ!? まだ柵も完成してないのに!」
「おいおい、穴だらけじゃねぇか。やっちまうぜ、いくぞおらぁっ!」
頭目がそう叫べばならず者は一斉に声をあげ、防壁目がけて走り抜ける。
目の前にある防壁は、所々穴が見える、やはりこれは未完成、間に合っていないならこんなもの意味を成さない。
「うわあああ!?」
と、彼らが思った矢先、突っ込んだ連中が突然情けない声をあげて転びだす。
「何だ、何が起きた!?」
「な、何だここ、凍ってうああああ!?」
飛び出した連中は、リュリュの用意した凍結地帯に足を踏み入れ、思い切り足を滑らせて転倒している。
更にそこに合わせて、大量の石が飛んできた。
体勢の崩れた彼らはそれを避ける術もなく、一人二人、気が付けば四人程その場で石が脳天を直撃し、意識を失っていく。
「くそっ、違う場所だ! 滑らないところから突っ込め!」
遠くを見渡し、そんな怒号が響くと彼らは左右に散る様に走っていく。
「うわっ、なんでこんなところに穴が!?」
だが、彼らが分かれた先には多数掘られたスネアトラップ地帯。
カスカや子供達の悪戯に近いものだが、この暗い地帯では大いに効果があった。
「随分効果があるな、何人ぐらい倒せた」
「いやぁ、8人ぐらいですかね」
海や空から来る相手がいるのかもと思っていたエミリオだったが、現状そんなことはなく撃退は問題なく進んでいた。
事前に用意した覗き穴からライフルを構えて覗いてみれば、突破してきたならず者たちも、棘だらけの防壁を見て足が止まる。
そこを狙って容赦なくエミリオが引き金を引けば、銃弾は綺麗にならず者の肩を撃ち抜く。
「よし、次」
「……ふぅ」
防衛をしている以上、相手を殺すことはあるかもしれない。
それは仕方ない事ではあれど、なるべくは避けたい。
容赦なく撃退を進めていくエミリオと対照的な意見を持ちながらも、無事生き残った彼らは治療しなければと思いながら、リュリュはならず者たちを迎撃する手を強めていく。
「えーいっ!」
別のならず者たちの突撃場所で、アラドは増幅させた魔力をもってならず者たちが足を取られている穴目がけて炎を放つ。
「うわああ!? 燃えてる! 燃えてる!!」
「あ、やりすぎた。冷やすね」
不幸にも巻き込まれた相手に、アラドが追加で沈下も狙って冷気を放ち、凝固させれば炎は収まる代わりに強烈な冷気でならず者は意識を失う。
「ふぅー、敵さんはいっぱいだなぁ」
報告と合わせて半分ぐらいは倒したはずだが、まだいるあたり凄まじさを感じる。
だが、しっかりと作り上げられた防壁と、協力してくれる人たちのお陰で全くといって被害は出ていない。
「ふふ、細工は流々、仕掛けは上場。あとは仕上げを御覧じろだわ!」
アラドの傍で、楽しそうにきゐこが炎を放てば、穴に敷かれた草木に炎が着火し、周囲が一斉に燃え上がる。
「うわあああ!?」
突然の炎に慌てふためくならず者たちは、散り散りになって逃げていく。
「わぁ……大丈夫かな?」
「大丈夫よ、あの辺水も敷き詰めてあるから」
「あ、ほんとだ」
近場に敷き詰めた水場を見つけて、炎が引火したならず者たちが飛び込んでいく。
体力を奪われ、気力を奪われ、飛び込んだ先の泥水で一気にやる気を失ってしまった者達が力尽きてるのは憐れみを感じるが、自業自得だし仕方ない。
中には元気に必死で逃げていく者達もいるが、側面から響く銃撃音と同時に次々と倒れていく。
「こちらウェルス。3人ぐらい仕留めたぞ」
「うんうん、いいじゃない。これなら宣伝もばっちりだわ!」
「わぁ……宣伝までするんだ」
通信の向こうでウェルスと意気投合しながらきゐこ達は防壁の有用性の宣伝をどうやるか、という話で盛り上がりだす。
そんな様子を見ながら、アラドは最後まで迎撃に全力を尽くしていく。
「もう少し、ですかね」
投石部隊が防壁から効率的な投擲を行い、ほとんどのならず者たちを無力化している様子を見てカスカはもう少しで戦いが終わりそうだと思いだした。
相手のほとんどは倒れ、残ったものも気力を失いだしている。
「……だとよかったんですが」
案外、運のいいものはいるものだ。
刀を構え直し、カスカは防壁から飛び降りた。
「へへ、ようやくこれた。ここまで来れば」
「めぇっ!?」
「よくもやってくれたなぁ!?」
防壁の隙間から内側へ走り抜けた一人のならず者が武器を構え、振りかぶる。
「なーんて、お休みなさいだよ」
りーん、というベルの音が響くと同時に、ごぉんと言う打撃音が響き、武器を振りかぶったならず者は仰向けに倒れる。
「て、てめぇ!?」
もう一人入り込んだならず者がその様子に驚き、足を止める。
「まぁまぁ、今は休んでおこう?」
が、その僅かな隙を見て再びベルの音が響く。
また一人、ならず者が眠りに落ちるのにそう時間はかからなかった。
「く、くそっ。もう俺だけじゃねぇか」
辺りを見回しても、仲間の姿はない。
「まぁ、いい気分じゃないですからね」
何とかここまでたどり着いた頭目の前にカスカが降り立った。
「私も一応、モノを作る側の人間なので……遠慮はしませんよ」
一瞬で加速したカスカが頭目との間合いを詰める。
「は、はやっ……」
抜刀の構えを取ったカスカの視線が頭目を睨みつける。
「……まぁ、壊すのは気分が良くならないからね」
だが、刀は抜かれず、勢いのままに繰り出された柄が頭目のみぞおちに突き刺さる。
げふっ、と情けない声を出し、頭目がはぐったりと倒れた。
「あっ、大丈夫だった?」
ならず者を引きずってやってきたペルナが倒れた頭目を見て、無事を確認して微笑む。
程なくして全てのならず者が捕縛されたという連絡が入り、防壁付近は歓声に満ち溢れた。
●
縛り上げられたならず者達は、その全員が治療を受けていた。
状態に差はあれど無事でありその後はペルナの説教を受けて然るべき場所に叩き込まれるだろう。
だが、ツボミはそんな彼らの前にゆっくり腰を下ろし、目を見つめる。
「死んでてくれれば献体に貰えたのだがなあ。貴様等、物は相談だが。医学の発展の為、罠で事故死してた事にしてくれんか?」
は? と惚けた声がならず者たちから上がる。
何を言っているんだ、ふざけるな。という反論が上がる。
「……残念だ。では、次の機会に期待するとしよう」
ふぅ、と息を吐きツボミはゆっくり立ち上がり、背を向ける。
「だって貴様等、どうせまた同じ様な事するだろう?」
冷たく、感情の籠らぬ声。まるで人と見ていない様な言葉がならず者たちを震え上がらせた。
彼らが同じような事をすることはないだろう。
今回の出来事と、したところで到底勝ち目がない事も理解できた。
だからこそ、彼らは同じようなことをしないだろう。
誰一人殺さず、アデレードを守り抜いた彼らを見たから。
皆で力を合わせた後、真摯に説教してくれた人や、こんな自分達に手を差し伸べてくれた人もいた。
これから、然るべき所で反省した彼らは、きっと同じことはしないだろう。
アデレードを照らす朝日が眩しく、これからの事を祝福しているようにも見えた。
だから今は、この街を護ってくれた彼らに感謝しよう。彼ら無くして、この結果はあり得なかったのだから。