MagiaSteam
キッシェ・アカデミー博覧会「古代幻想種展」



●キッシェ博覧会へ向けて

 とあるせわしい冬の朝の授業。
 キッシェ・アカデミーの大講堂では、『魔導科学者』レオ・キャベンディシュ(nCL3000043)による講義が始まっていた。

「自由騎士団の皆さん、おはようございます。さて、皆さん。ここの教室の窓から外が見えますよね? 外ではキッシェの人々が大変お忙しそうに何かをしていますね? これから何が行われるのか、わかる人、いらっしゃいますか?」

 とある自由騎士のゼミ生が挙手して答える。

「そう、その通りです! 今月、キッシェ・アカデミー敷地内にある博覧会会場で展示会が行われるのです! 今回の博覧会のテーマは『古代幻想種展』です! 今から700万年前から500万年前ぐらいの時代で既に絶滅した幻想種の展示会開催が予定されているんです!」

 レオは講壇に置いてあるポスターを展開して、黒板に磁石を使って貼り付ける。

「では、本日の授業では、キッシェ博覧会の予習をしましょう。なお、教養ゼミの内容としては、考古学に当たります。それでは……最初にこの大きな獣たち、何かわかりますか?」

 レオが教鞭を駆使して、大きなポスターの一コマを指す。

「はい、挙手したあなた! ……そう、……そうです……。こちらの赤くて背中に剣がいくつも生えている竜は、バーニング・ステゴ。焔竜の先祖です。そして、隣にいる青くて凍っていて牙が鋭い狂暴そうな竜は、フローズン・ティラノ。氷竜の先祖です。ちなみに現在ではどちらも既に絶滅した古代幻想種ですね。当日の展覧会では、等身大レプリカが出るそうです。では、どんどん行きましょうか?」

 さらに教鞭で別の一コマを指す。今度は、化石が描かれている一コマだ。

「わかる人? ……はい、そこの方!……そうですね……。緑色で甲羅があるフナムシみたいな海洋生物、これはストーム三葉虫です。それで、隣にいる土色の甲羅と触手を持った海洋生物の方は、ゴールデン・アンモナイトですね。どちらも現在では化石のみ残っています。当日の展覧会では、化石の展示室もあるようですよ。さて、次、行きましょうか? これは?」

 教鞭が指した一コマには、英雄と竜が一騎打ちしている絵画がどどんと大きく出ている。

「はい、そこのあなた! ……はい、その通り……! この絵画は、300年前の英雄時代の遺物ですね。英雄の方は、イ・ラプセルが誇るドラゴンキラーの有名人、ドミニク・ソクラレスです。対するは、狂暴な古代幻想種のインフィニ・ドラゴンです。このポスターに載っている絵画、そして英雄の聖剣やドラゴンの牙なんかの遺品も、遺物展示室の方で鑑賞することができます!」

 さあて、とレオはメガネをかけ直して微笑する。

「とても楽しみですね、キッシェ博覧会! 実は、我々、キッシェ・アカデミーと致しましても、ゼミに参加されている自由騎士団の皆さんを無料で博覧会へ招待したいと考えています。ここにあるのは……。そう、博覧会のフリーパス・チケットです! ここにいる皆さん、全員分のチケットがあります! 授業後には、各自、配布させて頂きますね!」

 ああ、それから、とレオは慌てて伝える。

「当日、一般参加以外にも、私のゼミ、つまりレオゼミ参加で博覧会へ参加することもできます。要は、キッシェのたすきを腕に巻いて学芸員の真似事みたいなことをやって頂く予定です。先ほど軽くレクチャーしました古代幻想種の展示を案内したり解説したりするお仕事などですね。当日は私も学芸員として同行致しますので、希望者は今のうちに教えてください。私の方からもマニュアルをお渡ししますので。後で打ち合わせをしましょう」

 それと……。ついでに言えば、とレオは付け加える。

「キッシェ警備隊の方で、当日の警備員参加も募っています。興味がある方は、授業後、警備室の方へ顔を出してみてください。当日の警備について詳しく教えてくれるでしょうし、制服を貸与してくれるはずです。一般参加以外での参加が良い方は、レオゼミ参加か警備隊参加をおススメ致します」

 本日の授業をレオが締め括る。

「せっかくの機会です! ぜひ皆さん、当日は博覧会をめいっぱい楽しんでください! 絶滅した古代幻想種がいた時代に思いを馳せることで、もしかしたらあなた自身のことを振り返るきっかけになるかもしれません。考古学はロマンそのものですからね!」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常β
■成功条件
1.博覧会を満喫すること。
キッシェ博覧会へようこそ!
今回、選択肢【1】から【5】まであります。

【1】から【3】では展示物を「鑑賞」します。
ぜひ「感想」や「考察」を述べる、述べあうなど知的な鑑賞を楽しんでください。
【4】と【5】では学芸員か警備隊の役で「運営の手伝い」をします。

【1】から【5】まで『プレイング』で1つ、ご選択お願いします。

【1】<古代幻想種 長老種レプリカ展示室>

焔竜、氷竜の先祖。2点の等身大レプリカが展示されています。

●バーニング・ステゴ

解説:背中から尾にかけて剣のような骨板が2列並ぶ四足歩行の竜で有名な古代幻想種。いわゆる焔竜の先祖。背中の骨板から火炎を放出し、燃えてタックルする攻撃手段を持っていたようだ。体の色は赤が基調。体は大きいが脳がクルミ程度の大きさ。

時代と分布:地層から推測して700万年前~500万年前頃、今でいうイ・ラプセルの南あたりで繁栄していた。現在では絶滅しているが理由は定かではない。病死や他種との争いが原因とも言われている。

サイズ:体長約7m。推定体重3t。

研究:バーニング・ステゴの命名者は、考古学者ロベルト・キッシェ博士による。「ステゴ」とは「屋根に覆われた」の意味。そのステゴが「バーニング」(燃えている)。

●フローズン・ティラノ

解説:古代史最大級の陸生肉食動物の古代幻想種の一種。いわゆる氷竜の先祖。二足歩行で行動し脚力があり、下あごが発達し噛む力がかなり強力だった竜。歯には特徴的なセレーション(鋸歯)があり、獲物の肉を引き裂くのに最適だったと言われている。歯に氷系の魔導を用いて強化することもあれば、獲物を凍らせた上で食すなどをしていたようだ。体の色は青が基調。大変狂暴な性格だったらしい。

時代と分布:地層から推測して700万年前~500万年前頃、今でいうイ・ラプセルの北あたりで繁栄していた。現在では絶滅しているが理由は定かではない。変異による突然死や同族種との争いが原因とも言われている。

サイズ:体長約14m。推定体重7t。

研究:フローズン・ティラノの命名者は、考古学者エドワード・キッシェ博士による。「ティラノ」とは「暴君」の意味。そのティラノが「フローズン」(凍っている)。

【2】<古代幻想種 化石展示室>

三葉虫、アンモナイトの化石。2点の実物が展示されています。

●ストーム三葉虫の化石

解説:節足動物の古代幻想種。外見は甲羅を持つフナムシのような姿。古代の代表的な海生動物。現代では化石としても有名。風系統の魔導を操っていたらしいが、性格は温厚だったらしく、攻撃ではなく主に移動のために使用していたとのこと。体の色は緑が基調。

時代と分布:地層から推測して700万年前~500万年前頃、今でいうイ・ラプセルのアデレード港町の海辺で繁栄していた。現在では絶滅しているが理由は定かではない。サメ系統の魚類に食い荒らされて絶滅したという説が有力。

サイズ:体長約5cm。推定体重は3g。

研究:ストーム三葉虫の命名者は、考古学者のシルベスター・キッシェ博士による。「三葉虫」とは、「3つ」の「葉」(体の縦割り区分)を持つ「虫」の意味。その三葉虫がストーム(嵐)の力を持っている。

●ゴールデン・アンモナイトの化石

解説:軟体動物の古代幻想種。外見はオウムガイのような殻と触手を持つ。古代の代表的な海生動物や化石としてストーム三葉虫と双璧をなす。土系統の魔導を操り、主に鉱物系が強く、自身の殻を金属で硬く防御していたとのこと。性格も守りが固かったようだ。体の色は土色が基調。

時代と分布:地層から推測して700万年前~500万年前頃、今でいうイ・ラプセルのアデレード港町の海辺で繁栄していた。現在では絶滅しているが理由は定かではない。海面で発生した病気で絶滅したという説が有力。

サイズ:体長約15cm。推定体重は15g。(殻が魔導発動時は5kg)

研究:ゴールデン・アンモナイト命名者は、考古学者のアンナ・キッシェ博士による。「アンモナイト」とは、失われた創造神の一柱で頭がぐるぐる巻きだった「アンモン」と「アイト」(石の意味)を合わせた造語。そのアンモナイトがゴールデン(金属)の力を持っている。

【3】<古代幻想種VS英雄時代 遺物展示室>

300年前の英雄時代の展示です。
英雄と竜の対決について遺物が展示されています。

●インフィニティ・ドラゴンVS英雄ドミニクの画

解説:300年前には、古代幻想種VS英雄の対決が盛んに起きていた。その一時代を象徴する戦いが、インフィニティ・ドラゴンVS英雄ドミニク。インフィニティ・ドラゴンとは、HPが無限再生する当時の強敵古代幻想種。英雄ドミニクとは、イ・ラプセルが誇るドラゴンキラーの騎士。この油絵は、当時の対決の記録。絵の中のシーンでは、インフィニティ・ドラゴンの巣にて、ドミニクが聖剣でインフィニティ・ドラゴンの首を切って勝利した場面。画家は、アルバート・キッシェ画伯。

●インフィニティ・ドラゴンの牙

解説:倒されたインフィニティ・ドラゴンは、牙を抜き取られた上、身体は手厚く埋葬された。イ・ラプセル南には墓場もある。狂暴なドラゴンで当時は恐れられていた。ドラゴンは、体長約10m、推定体重5t。色は全身黒で邪竜のような外見。牙の大きさは1m、重さ5kg。牙の外観は、既に風化しているが、くすんだ白色で鋭い三角柱。

●折れた聖剣ヴィクトール

解説:英雄ドミニクが決戦の際に使用した聖剣。聖剣は「勝利」を意味する名前を冠し、当時の最大級の刀鍛冶が錬金術の製法で造り上げた逸品。最後にドラゴンの首を切り落として間もなく、聖剣も刃の部分が真っ二つに割れてしまった。聖剣の大きさは2mの大剣。魔術加工が施されている豪華な剣。重さは1kgほど。特殊効果はHP再生の除去。現在は折れているので、大きさは半分で、魔術加工は既にはがれている。

注:NPCドミニクはCW(=猫天ST)の許可のもとお借りしました。

【4】レオゼミ参加

列の誘導、来場者の案内、展示物の解説など。(学芸員の役割)当日は、腕にキッシェのたすきを巻く。NPCレオが同行。【1】から【3】の各データは「既知設定」OK。

【5】警備隊参加

博覧会の警備、ケンカの仲裁、迷子の対応など。当日は、キッシェ警備隊の警備服貸与。

<プレイング例>

例1【3】
英雄ドミニクじゃないか! いかにも悪そうなドラゴンまでいるぞ? 画伯の絵、牙、聖剣、どれもかつての英雄時代を感じさせるな。しみじみと鑑賞しよう。学芸員に迷惑がない程度に英雄ドミニクの構えでもしてみるか! 俺もあの時代に生まれたかったぜ。どう思う、相棒?

例2【4】
私は【1】の部屋で学芸員をしてお客様に解説しましょう。【1】にあるバーニング・ステゴの特徴や研究について解説します。レプリカの前にはお客様がたくさんいますね。皆さん、列を乱さないでください、白線の中に入らないでください、と指示します。わからないことが出たらレオ先生に確認です。
状態
完了
報酬マテリア
0個  1個  0個  0個
14モル 
参加費
50LP
相談日数
7日
参加人数
14/30
公開日
2018年12月01日

†メイン参加者 14人†

『おもてなすもふもふ』
雪・鈴(CL3000447)
『慈悲の刃、葬送の剣』
アリア・セレスティ(CL3000222)
『蒼光の癒し手(病弱)』
フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『お菓子とお菓子と甘い物』
ヴィンセント・ローズ(CL3000399)


●レプリカ展示室

 やって来ました、冬のキッシェ博覧会!
 長老種の等身大レプリカが展示されている部屋は大勢の客でにぎわっていた。

 展示物は2体ある。
 狂暴そうな氷竜の先祖。フローズン・ティラノ。
 背中に剣山を持つ焔竜の先祖。バーニング・ステゴ。

「俺はフローズン・ティラノが見たいんだ!!」

『溶けぬ氷塊』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は良い年の「お兄さん」ではあるが、眼光がきらきらと輝いている。子どもの頃から知っている憧れの古代幻想種のレプリカを前にして興奮を抑えることができなかった。

「それにしてもでけえな! はぁ~、カッコいい! これが嫌いな男子はなかなかいねえよな!?」

『お菓子とお菓子と甘い物』ヴィンセント・ローズ(CL3000399)も古代最強の一種と言われた長老種の前でわくわくだ。

「お? 君もわかるか、このロマンが!? アカデミーの研究者達も、憎い催し物をしてくれたもんだな?」

 隣にいたボルカスに話しかけられヴィンセントも嬉しそうだ。

「ああ、わかるとも、同志よ! バーニング・ステゴの背中から尻尾にかけての剣みたいな奴とか、フローズン・ティラノのあの歯とかも、強い奴の証って感じでイカしてるぜ!」

 熱く意気投合している二人の傍で、『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)もレプリカを前に高揚していた。

「でっかーい! 強そう! カッコいい!」

「ははは、だろう? 君も仲間だな!」
「だな!」

 カーミラも同志として歓迎された。

 展示室の片隅で、蚕蛾の特徴を持つ雪・鈴(CL3000447)はうろうろしていた。

(焔竜さんと氷竜さんの、ご先祖さま、見るです。おっきくて、つよいの、あこがれです。ぼくにも、ご先祖さま、いるですかね……?)

 学芸員の『隠し槍の学徒』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)がやって来た。

「ん? どうかしたか?」

 鈴はスケッチブックにさらさらと書き込む。

『お絵描き、するの、許可を頂けたら、すけっちしたいです』

 ゼミ教員のレオに判断を任せた。

「スケッチされる分にはかまいません。ただ、現在、展示室がにぎわっている頃ですから、場所には気を付けてください。スケッチできる場所に案内します……」

 鈴はレオに連れられて、真上2階の室内ベランダへ通された。
 上からは俯瞰になるが、ここなら余裕をもってスケッチができる。

 一方で、列を乱したとかで、喧嘩を始める客もいた。

「古代のロマンの前では些細な争いなんてちっぽけだよ! せっかくの博覧会なんだから楽しまないとだよ!」

 にこやかに仲裁するのは、『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)だ。カノンは本日、キッシェ警備隊に配属されている。警備服を着込んだ上に、胸元にはキッシェ警備隊のバッジが輝いていた。

***

「本日は、ご来場頂き誠にありがとうございます。担当者のウィリアムと申します。では、長老種の解説を始めさせて頂きます。……遥か古の時代、このイ・ラプセルには今よりも力強く、たくさんの命が暮らしていました。彼らの多くは時の流れの中に消えていき、忘れ去られてしまいました。しかし彼らは確かにこの地で生きていたのです……」

 ウィリアムが2体の古代幻想種について一通りの解説を終えると、拍手が起こった。
 その後、質問会へと続く。

『学びの結晶』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は、ふむふむと頷きながらも、挙手した。

「バーニング・捨て子くんは孤児的な古代幻想種ではないということですか?」

 質問にウィリアムが笑顔で答える。

「そうだな。残念ながら『捨て子』という意味ではないんだ。『ステゴ』とは専門用語で『屋根に覆われた』という意味なんだ」

 フーリィンはちょっと残念そうだったが、質問は続く。

「フローズン・ティラノさんも大きいですね? いったい、何を食べたらこんな大きくなれるのでしょう?」

「フローズン・ティラノは典型的な肉食だ。陸生の暴君だったから、陸にいる生き物の肉なら何でも食べていたみたいだな」

 フーリィンは学芸員の回答を受け、ちょっと考察してみた。

「サイズ差も考えると、ステゴさんはティラノさんに食べられる側だったかもですね? ステゴさんがティラノさんに食べられて、さらに病気等も手伝って大きく数を減らし……。食べるものがなくなったティラノさん達が、こうがぶーっと共食いをしてしまったとか?」

 うん、と一言置き、ウィリアムが答える。

「時代区分的にステゴとティラノは同じ時代にいたから、ステゴがティラノに食べられてしまったことはあっただろう。絶滅に関しても、あなたが言うような考察もありえたかもしれない。だが残念ながら、なぜ彼らが滅びたかの原因は完全に解明されていないんだ」

 質問が終わると、今度はボルカスが挙手した。

「しかし、フローズン・ティラノって、本当に大きいな? 体長約14mに推定体重7tだったか? 私も軍人として日々鍛えてはいるが、あんな顎に噛みつかれたらひとたまりもなさそうだ。その上、氷系の魔導も使う? なんだそれ、強すぎないか!?」

 ウィリアムが楽しそうに答える。

「そうだな。物理的な攻撃力や機動力が高い上に氷系の魔導の専門でもある。こんなの相手にした日は大惨事だな。それでも、現在では既に絶滅している。永遠の強さは存在しないのかもな?」

 ボルカスも答えを受けて楽しそうだ。

「ふむ。強いだけでは生き残れなかった。こんな時代だからこそ、それを忘れてはならないかもしれん」

 最後にカーミラが挙手する。

「今回の展示って、学問的に価値もあるんだろうけれど、実戦的な知識としても使えないかな? 尻尾で薙ぎ払うのも強そうだし、なにより噛み付き! リーチでは圧倒的に負けてるし、ならば足元とかに上手く潜り込んで……。むむー、爪も強力そうだから気を付けないと……。みたいに考えるのも、将来、ドラゴンスレイヤーを目指す私にはためになったかな?」

 ウィリアムが、ふうむと興味深そうに頷く。

「ぜひ過去の魔物データは将来の戦闘に活かしてくれてかまわない。むしろ今回みたいな学術の価値は実戦に活かせてなんぼというのもあるからな。それと、今回の博覧会が将来に役立ったならば誠に幸いだ」

 ヴィンセントは特に質問はなかったが、最後に「ありがとう、良かったぜ!」と感想を述べて、拍手した。今一度の拍手が起こり、レプリカ展示室の学芸員解説は無事に終了した。

●遺物展示室

 博覧会が始まる数日前のこと……。

『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)と『安らぎへの導き手』アリア・セレスティ(CL3000222)は、ヒルダの屋敷で当日の打ち合わせをしていた。

 二人の手元には、『古い怪物図鑑』が広げられている。

「この図鑑、結構な年代物みたいだけれど情報の精度はかなり高いみたい。博覧会の資料とほとんど一致してるわ。細かな所は違うけど、そこは昔からの研究で新たに判明した箇所ってことね?」

 ヒルダの問いかけにアリアが答える。

「うん、予習としては最適な教材だね。今更だけど、この本も展示物にできたかもね? でも、ヒルダちゃん、勉強しているのね?」

「……え? 何よ、アリア? そんな意外そうな顔しないでよー。あたしだって勉学に勤しむことだってあるんだからね! まあ、現役のアリアにはさすがに敵わないと思うけどね?」

 当日の予習はばっちりなようだ。

***

 博覧会当日の遺物展示室は、他の展示室同様、大勢の客でにぎわっていた。
 今回は、英雄ドミニクVSインフィニティ・ドラゴンがテーマだ。
 対決の絵画、風化した牙、折れた聖剣といった遺物は当時の英雄時代を彷彿とさせる。

『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は、高ぶる気持ちを抑えきれず、遺物展示室を巡る。

 絵画『英雄と無限竜の一大決戦』の前に来ては……。

「おお、これがかの有名な絵か。題材としては多用される英雄譚ではあるが、これは特に躍動感が素晴らしいな。今にも動き出しそうだ。しかし、英雄と竜のどちらを見せようとしているのだろうか?」

 そこに学芸員ヒルダがやって来る。

「どちらかというと英雄の方ね。絵画では、竜の首が聖剣の一撃で派手に切り落とされているでしょ? アルバート・キッシェ画伯は、英雄が放つ最後の一撃を最も描写したかったのでは、と言われているわ」

 テオドールは解説を聞きながら、ああ、そうだ、と思い出した。

「ふむ。アルバート・キッシェ画伯と言えば、英雄の描写に定評のある画家だったな。そこから考察しても、この絵画も英雄がメインだろうね」

 やり取りを隣で聞いていた『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)も質問に加わる。

「絵の良し悪しはわからないけど、コレはなかなか迫力ある絵ね。竜と英雄の戦いは300年前だっていうけど、この絵はいつぐらいに描かれたものなのかな?」

 ヒルダがええと、と思い出す。

「研究によると、絵画の具合から推定して、英雄ドミニク本人が生きていた頃の全盛期に描かれたとも言われているわね。ほら、この絵のドミニク、颯爽としているでしょ?」

『逢瀬切』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)もうんうん、と頷く。

「ドミニクとは先の還リビト騒動で直に遇っているんですが、遺物越しに見るのはなんだか妙な感じですね。画伯の肖像画のできが良いのは保証しますよ。なんたって私は英雄本人の姿を見ていますからね! 絵が全盛期だったことも納得です。私が遇ったドミニクは落ちぶれた頃でしたし」

『書架のウテナ』サブロウタ リキュウイン(CL3000312)も会話している一同のやや後方から、じっと絵画を鑑賞していた。

(これがあの有名な……。体力が無限の竜と竜殺しと呼ばれた英雄。きっと壮絶な戦いだったのでしょうね。ふふ、やはり英雄には惹かれるものがありますね!)

***

『1000億GP欲しい』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は、風化した牙と折れた聖剣の展示場の辺りでうろうろしていた。

(骨董品は見極めが難しいからあんまり扱ったことないし、それほど興味があるわけでもなかったんだがな。けれど英雄ドミニクって言えば、以前に還リビトとして蘇ったあのドミニクだろ? ちょっと気になるな……)

 そこに学芸員アリアがやって来る。

「よろしければ、解説しましょうか?」

 熱中していた熊さんだったが、知っている顔に出くわし、はっとする。

「おう? アリア嬢か? 今日は学芸員ね? んじゃ、聞くが、インフィニティ・ドラゴンの牙についてな。竜って薬とか武具とかいろんな材料になったりしそうだがコイツはどうなんだ? 幾らぐらいの価値になるかねぇ?」

 アリアは、ふうむと考えてから、答える。

「インフィニティ・ドラゴンは体力無限再生のスキルを持つため、この種は薬や防具として特に優れた材料になったことがあったそうよ。そうねえ……。この牙1本だけでも、既に絶滅していて貴重なので、今ならちょっとした飛空艇ぐらいは買えるんじゃないかしら?」

 これにはウェルスも驚いた!

「な、なんと!? で、さ、聖剣ヴィクトールについても聞きたい。対インフィニティ用の武器とはいえ流石にデカイな、振り回すだけで疲れそうだ。材料と加工、幾らぐらいしたんだろうか?」

 アリアは、ううん、と考える。

「当時、かなりの予算をつぎ込んで聖剣が開発されたそうね。この聖剣の費用だけでちょっとした戦艦の値段には匹敵したかしら?」

 ウェルスは腰を抜かしそうだ。

「や、やべえ!! ほ、ほしぃ!!(当時の現物手に入れたら、借金も早めに返せそうだな!?)」

 二人が話し込んでいる間、サブロウタはじーっと牙を鑑賞していた。

「牙だけでこれほどの大きさとは!? 全容がどれほどの大きさかは想像もできませんね?」

 気付いたアリアが答える。

「牙や諸々の要素から推定して竜は、体長約10m、推定体重5t、と言われているわ」

「おお!?」
 サブロウタはメガネをかけ直して、まじまじと牙を眺めていた。

***

 テオドールらも牙と剣のコーナーにやって来て満足そうに見ている。

「ふむ、体格に相応しいな。後世に残すならば、やはり牙になるか。剣の方は、願掛け、か。当時は最高峰の品だったか?」

 エルシーもそうね、と頷く。

「大きな牙と剣ね。これぐらいの竜を退治したら、英雄と呼ばれるようになるのかな? こんなスゴイ武器を造ってもらえるような自由騎士になりたいものね」

 カスカも後方から鑑賞していた。

「私は刀鍛冶の知識も人並み以上には備えているつもりですが……。これは現代の鍛冶師がどう逆立ちしたって真似できる代物でないことがよくわかりますね」

 ヒルダが解説を補足する。

「その通りね。当時の最高峰よ。剣の方は現代でも再現が難しいと言われているわ。それから、300年前ならこのクラスの竜を倒せば一気に英雄視ね」

 その後、ヒルダは展示室に残り、アリアは耳や声が不自由な人達の案内に向かった。

***

 会場はそれなりに広い。
 当然、迷子も出てくる。
 遺物展示室で一人の小さな女の子が泣いていた。

 警備員のカノンが急いでやって来た。

「ほらほら、お姉ちゃんが物真似をしてあげるよ♪ きゃおおお!!」

 カノンは展示されている竜の物真似をして小さい子を励ます。

「うふふ、おもちろい!」

 泣き止んだようだ。

「パパとママを一緒に探そう!」

 カノンは名前と両親の特徴を聞くと、リュンケウスの瞳を駆使して、遠方をぱぱっと見渡す。
 すると、子どもを探している父母がいた。
 案の定、この子の両親だった。

 がんばっているカノンに警備の上司が声をかける。

「お疲れ様。すまないね、騎士団の方にわざわざ警備なんてしてもらって」

 カノンはにっこりと答える。

「いえいえ! 皆が最後まで楽しめるようがんばるのが今日のカノンの仕事だよ!」

 キッシェ警備隊が動いていてくれたお陰もあり、博覧会は特に問題もなく無事に終了できた。

 了

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『キッシェ博覧会学芸員』
取得者: ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『キッシェ博覧会学芸員』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『キッシェ博覧会学芸員』
取得者: ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)
特殊成果
『ミニ聖剣のペンダント』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)
『ミニ聖剣のペンダント』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:エルシー・スカーレット(CL3000368)
『ティラノのおもちゃ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『キッシェ学芸員たすき』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『キッシェ警備隊バッジ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:カノン・イスルギ(CL3000025)
『ティラノのおもちゃ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
『ティラノのおもちゃ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:雪・鈴(CL3000447)
『キッシェ学芸員たすき』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アリア・セレスティ(CL3000222)
『ミニ聖剣のペンダント』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:カスカ・セイリュウジ(CL3000019)
『キッシェ学芸員たすき』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)
『ステゴのおもちゃ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『ミニ聖剣のペンダント』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:サブロウタ リキュウイン(CL3000312)
『ミニ聖剣のペンダント』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『ステゴのおもちゃ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ヴィンセント・ローズ(CL3000399)

†あとがき†

博覧会のご参加ありがとうございました。

MVPは基本的に各部門1名ずつ。

【1】はカーミラさん。
将来の目標のために展覧会をご利用くださり嬉しいです。

【3】はテオドールさん。
鑑賞の芸が細かいのが良かったです。

【5】はカノンさん。
皆が楽しんでいる中で警備助かります。

【4】はMVPではなく称号にしました。
それぞれ学芸員の称号が出ています。

ドロップは皆さんです。
それぞれの参加にちなんだ博覧会みやげが配布されました。
FL送付済