MagiaSteam
アクチノライトとラスカルズ




「この採掘場ってこんな立派な入り口だったかしら?」
 いつもなら2,3日に一度は山を降りて、家に帰る夫が一向に採掘場から戻らないことを不思議に思った2人の女性、ロリーとベネッサ。
 新婚間もない二人は夫が帰らないことを心配し、採掘場へたずねてきたのだった。
 到着。しかし採掘場の入り口には以前来たときには存在しなかった巨大な砦が築かれていた。
「ごめんください。こちらで私達の夫が働いてるのですが……」
 2人は何かいつもと違う不穏な空気を感じつつも砦の扉を叩く。
 ズズズ。
 扉が開くとそこからは現れたのは……どう見てもならず者といった風貌の男達だった。
「ヒャッハーーーっ!!」
「──っ!?!?」

 彼女達は無理やり引きずり込まれ、扉が閉じる。
 悲鳴のような声は小さくなってゆく。
 そして何事も無かったかのように、その場には静寂が訪れた。


「採掘場がラスカルズによって占拠された。至急対処に当たって欲しい」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)はそう言った。
 詳しく説明が行われる。
 ある採掘場が占拠され、入り口には強固な砦が作られてしまった。中の作業員はラスカルズによって軟禁。強制労働を強いられている。また作業員の家族と思われる女性も捕まっている。
 皆に行って欲しいのは囮での潜入と逃走経路を塞ぐ事だと言う。
 
「非常出口側から一気に突入して制圧することはできないの?」
「それを行ってしまうとラスカルズは自ずと砦側から逃走を図る事になる。その際に砦の破壊や、放火などの行為があれば砦に閉じ込められている作業員は助からないだろう。万が一地下に逃がすことがあれば、地下で働かされている作業員達の命も危ない」
「進入経路を分けることで、素早く広場を制圧し、ラスカルズの逃走経路を塞ぐって事ね」
 フレデリックが頷く。
「それと……非常用の出口は採掘場からかなり遠い山の中腹にあるのだ。表から囮で潜入したメンバーにはある程度時間を稼いでもらう必要もあるだろう」

「なるほど。囮メンバーはある程度時間稼ぎつつ、入り口の砦方面へのラスカルズの逃走を防がないといけない訳か」
「色々方法はあるだろうが……」
 フレデリックはゴホン、と咳払いをする。
「ラスカルズは所謂……輩《やから》だ。財、権力、そして異性。様々なものを貪欲に欲する。そこをうまく利用できれば……。特にジョルジュという男。ヤツは閉所や暗所での戦闘はめっぽう強いと聞いている。これをいかに抑えるかが重要なポイントになるだろう」

 自由騎士たちは作戦を練る。誰も犠牲とならない最善の一手を導き出すために。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
資源発掘σ
担当ST
麺二郎
■成功条件
1.ラスカルズの採掘場からの排斥
2.作業員および捕らえられた女性の生存
 麺です。二郎です。二人合わせて麺二郎です。
 自宅で再現しようとすると労力と食べられる量が釣り合いません。
 豚骨ラーメンは家で作るより素直に食べに行きたいと思います。

 ラスカルズがまた動き出しました。
 今度は貴重な天然石「アクチノライト」が取れる採掘場を占拠して
 すべてを奪取、通商連経由で他国を売りさばこうとしています。
 彼らは占拠した採掘場の入り口に強固な砦を作り、何人たりとも通しません。
 中では多くの作業員が労働を強いられています。

 以下詳細です。

●登場人物

 マザリモノ集団『ラスカルズ』 15人

 ジョルジュ・R・ロベルトドーン 23歳
 「オブシディアンとラスカルズ」にて登場したジークの実兄です。
 ラスカルズ幹部ではありませんが今回のメンバーのまとめ役です。
 マッチョで酒と女が大好き。男(ただしイケメンに限る)も好き。無頼漢。
 ギャンブルを好み、生死をかけるような博打に身を置く事もしばしば。一通りの悪事はこなしてきました。
 主に採掘現場からの強奪行為を行っており、特に暗闇や閉所での戦闘に非常に長けています。
 採掘場奥の部屋のような場所で側近2人とオープニングで捕まった女性2人と共にいます。

 他構成員14人
 皆ナイフを所持しています。砦には警備が5人、採掘場の広場で宝石の作業にあたっているのが7人。
 残り2人はジョルジュと共に広場にある扉の先の部屋にいます。
 広場にいるうちの1人は火薬を所持。使用されれば採掘場自体が崩壊する可能性があります。
 回復が行えるメンバーは砦、広場、ジョルジュのいる部屋に各1人です。

 ロリーとベネッサ
 作業員の妻。18歳と23歳。ロリーは年齢より少々幼く見えます。ベネッサはぼんきゅぼんです。

●ロケーション

 アクチノライトが採れるとある採掘場。地上階に当たる部分が占拠されています。
 場内は明かりが5mおきに置かれているためある程度の明るさがあります。
 入り口からは5人ほどが横になって進める程度の通路が続き、50mほど進むと半円状の広場のような空間にでます。広場には中央に大きな篝火はあるものの薄暗く、何らかの対処が必要です。
 またプラロークの演算により以下の情報が導き出されています。
 占拠時採掘場には30人ほどの作業員がおり、現在は皆ラスカルズの支配下にあります。
 25人は地下採掘現場で作業を、2人は広場でラスカルズ7人と共に石の選定や袋詰めを。
 最後まで抵抗した3人は暴行を受けた上で縛り上げられ、砦の下部のわずかなスペースに閉じ込められています。
 もし砦が不用意な攻撃などで崩壊する事があれば3人の死は免れられません。

 採掘場入り口からは砦の扉を中から開けさせない限り、入る事は出来ません。
 広場には4つ全く同じ扉があり、一つは休憩所として使われていた部屋。ここには粗末なベッドや食料などがあり、ジョルジュ達は何故かここにいます。一つは道具置き場として使われている部屋。もう一つは下へ向かう採掘現場へ続く扉。最後の一つは上へ向かう非常用の出口へと続く扉ですが、出口には鉄格子の扉があり鍵がかけられています。

●同行NPC
 ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
 特に指示がなければ非常出口からの進入に同行し、広場で扉の一つを確保しようとします。
 所持アイテムは着火剤と保存食(パスタ)です。


 ジョルジュの性格やこれまでのラスカルズの行動性質を利用し、この状況を突破してください。

 皆様のご参加お待ちしております。
 EXには書くことが無ければ関東風と関西風。出汁はどちらがお好みかを。
状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  2個  6個
18モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
5/8
公開日
2018年09月26日

†メイン参加者 5人†




 トントン。
「あの~すみませーん。道に迷ってしまったのですがー」
『星達の記録者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)が砦の門を叩く。
「何者だ」
 中から声がする。
「私達は旅をしながら宝石を売って歩いている商人です。近くを通った際、魔物に襲われて地図を無くしてしまいまして……」
 同じく正面班の『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)が続ける。
「それに水も食料も無くなってしまって……どうか少しの間でも休ませてはいただけませんでしょうか」
 門が少しだけ開き、門番が顔を覗かせる。どうやら二人の身なりを確認しているようだ。
 二人とも武器はそれぞれのマキナ=ギアに格納している。マキナ=ギアの配布や仕様を知っているものはある程度限られる。それに服装も旅人が着る服をベースにしたものだ。更にウェルスはあらかじめ目に入るように身に着けておいた紫水晶の首輪や白銀の指輪をさりげなくチラつかせる。
「……入れ」
 ウェルスを羽振りの良い商人と認識し、危険は無いと判断したのか、門が半分ほど開いた。
「いやはやすみません、こんな見ず知らずの商人を迎え入れていただけると──わゎっ!?」
 二人が門を抜け、中へ入ると3人の男。どれもひどく歪んだ顔をしている。ラスカルズの連中で間違いなさそうだ。そして同時にウェルスとリュリュの喉元にナイフが押し当てられる。
「……死にたくなければ大人しくするんだな」
 作戦通り──。二人はまずは抵抗の素振りは見せず両手を挙げる。
「だから言ったじゃないですかっ。俺は門を叩くは反対だって!」
 リュリュがウェルスにしか聞き取れない程度の小声でぶつぶつと文句を言い始める。
「アンタはいつもそうですよね。全然意見を聞いてくれない。いくら俺が見習いだからってひどいじゃないですか」
「おいおい何だよ、こんな時に。今言うことかそれ」
「今みたいなときに言わなきゃいつ言うんですか」
 堰を切ったかのように痴話喧嘩を始める二人。
「おい、何をもめてやがる。いい加減にしやがれっ」
 騒ぎが気になったのか、位置を確認できていなかった砦にいた他の二人も顔を出し、こちらへやってきた。
 1,2,3,4,5──これで全員だな。ウェルスは全員を確認すると即座に次の行動へ移る。
「ひぃぃ。どうか命だけはお助けを!! 金も品も全部差し出します!!! ほらお前もぐずぐずせず全部出すんだ。極上の酒と煙草、あれも出して差し上げろっ」
 気づかれないようにウェルスはリュリュにアイコンタクトを送るとネックレスや腕輪、他にも身に着けていたそれっぽいものをすべて外していく。
「これなんて結構値打ちモノでして……売れば結構な値段になるはずです。ですからその~……命だけは…あっ」
 ウェルスが躓き、差し出そうとしたアクセサリーが地面に散らばり男達の目線が一斉に下へ落ちる。
 その瞬間を二人は見逃さなかった。
「「ぐはっ!」」
 男が二人同時にひざから崩れ落ちる。一瞬の不意を付いたウェルスとリュリュの攻撃。
「何だお前た──ぐふっ」
 5人のラスカルズを気絶させるのに二人が要した時間は僅か数十秒。完璧に居を付いた事で相手に一度も反撃させることも無くその場を制圧した。
「ふぅ。こっちはこれでOKだな。思ったより歯ごたえが無くて助かったぜ」
「そうですね。俺……いえ、私もやっと普段どおりに話せるよ。まずは奥へ。砦に幽閉された方たちは、あとで必ず」
「そうだなっ。まだまだここからが本番だぜっ」
 緊張の糸は切らさず、二人は奥の様子を探りながら慎重に採掘場の奥へと歩を進めた。
 
「開いたよ~♪」
 正面突破組が門を叩く少し前、『子リスの大冒険』クイニィー・アルジェント(CL3000178)が得意のピッキングを披露し、『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)、『慈愛の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)と共に採掘場中央広場へ向かっていた。
「こちらにはほんとに誰もいないのね。少し拍子抜けです」
 広場へ急ぎながらアリアが二人に声をかける。
「そうね。出口がしっかり施錠されていたのと作業員の殆どを地下の作業場に追いやっているから、気を抜いてるんじゃない?」
 ヒルダも少し呆れ顔だ。
「えっと、じゃぁ確認するわね。広場への扉の前で一旦待機。少しだけ扉を開けて中の様子を伺う。まずはあたしがこの瞳で中の様子を確認するわ。あとクイニィー、あなたのホムンクルスの力が必要ね。いつでも練成できるように準備しておいてね」
 ヒルダが改めて今回の作戦を纏める。
「りょーかいっ! あたしのホムちゃんは地下採掘場に向かわせればいいんだよね」
 クイニィーはすでにホムンクルスの錬成を始めているようだ。黄緑の不定形の何かが錬成されていく。
「そうね。お願いするわ。あとはアリアの感情探査でジョルジュのいる部屋は探せそうね」 
「うん。私のチカラで彼女達の感情をキャッチしてみせるわ」
 まずはつかまっている女性二人の無事を最優先にしなくては。アリアは知っている。ラスカルズの性質を。あの品定めし、嘗め回すような視線を。思わず身震いする。
「急ぎましょうっ」
 3人は広場前の扉まで急いだ。


 二組が広場に突入する少し前。
 ベッドが軋む音がする。
「もう……無理ぃ……」
「私ももう……無理です……」
 ロリーとベネッサは息も荒くそう言うと動きを止めた。
「オラッ! もっとしっかりやりやがれ。そんなんじゃ満足しねぇぞ」
「そんな……私達もうずっとで……これ以上は……」
「硬すぎて……私には……」
「グダグダ言うな……殺すぞ」
 その言葉にうら若き女性二人の顔は恐怖に染まる。
「わかりました……」
 あきらめたようにベネッサが答える。
 暫しの静寂のあと、ベッドが軋む音だけが聞こえ続けていた。
 

 広場前へ先にたどり着いたのは非常出口側の3人。
 少しだけ扉を開けて中を確認してみると予想通り、中央にしか明かりが無い広場は薄暗い。それに中央かがり火付近で作業をするラスカルズの男達は上機嫌なのか大声で何かを話しながら作業をしている。
「これなら、大きな音さえ立てなければ入っても問題なさそうね」
 ヒルダはリュンケウスの瞳をフル活用して広場の様子を把握する。
 自分のいる位置から見て右側に扉が二つ。左側に一つ。まずはジョルジュのいる部屋と地下へ続く扉をみつけなければ。
「……(どこにいるの?)」
 アリアは意識を集中する。聞こえぬ声を聞くために。

 ──……っ

「……見つけた!」
 アリアは目線でヒルダとクイニィーに合図する。ジョルジュのいる部屋の扉は右の一番端だ。
「残りは二つ。左か右かどちらかが地下へ続く扉ね」
「できたよっ」
 そこには50cmほどの黄緑色のリス? のような物体。クイニィーのホムンクルスだ。
 扉を人がぎりぎり通れる程度に開け、3人は広場内へ潜入する。
 相変わらず中央では男共が騒ぎながら作業しており、気づく様子は無い。
 ヒルダはそのまま非常出口への扉前で待機し、アリアとクイニィーが残り二つの扉を調べる。
「ビンゴっ♪ こっちが正解みたい」
 クイニィーが開けた左の扉からは風を感じる。地下採掘場へ通じる道はこの扉で間違いなさそうだ。クイニィーはすぐにホムンクルスに命令する。黄緑のリスは扉の奥へ消えていった。
「あちらもうまくいったみたいね」
 ヒルダは入り口からの通路の端にウェルス、リュリュの存在を確認した。

 ウェルスとリュリュもまた広場前で中の様子を伺っていた。暗視。暗闇をものともしないその能力で二人も広場の状況を把握した。非常出口組もうまく潜入に成功したようだ。
「準備はすべて整ったみたいだな」
「そうですね。次の合図で制するは中央かがり火付近。ラスカルズ7名」

 暫しの間。

「いくぜっ!」
「いくわよっ!」

 5人が一斉に中央へ詰める。

「な、何だテメェら!?」
 不意を疲れた男達は戦闘態勢もままならない。
「ふせてっ!!」
 クイニィーが作業員へ声をかける。
「ぐぁっ」
 描くたびに加速度を増す青と緑の2本の閃光が敵を切り裂く。アリアの一撃が決まる。
「なん……だよ、お前ら……」
 リュリュがダーツを放つ。ダーツボードと化した男はそのまま崩れ落ちる。意識を失った男の袂から袋が零れ落ちた。
「ひ、ひぃっ!?」
 ヒルダが距離を一気に詰める。敵との距離、わずか。ゼロレンジバースト──
 その名の通りの至近距離からの一撃。体に響く鈍く低い銃声。男の意識もまた吹き飛んだ。
「ええい、誰が回復かわかんねっ。とりあえずこいつだっ!」
 氷塊と化した空気中の水分が標的を狙い打つ。
「ひぃぃぃ、なんだこいつら」
 初撃を免れた3人の男がそれぞれ逃走を図る。一人は地下採掘場へ。一人は出口へ。そしてもう一人は非常出口へ。
「くそっ開かねぇ。どうなってんだ!?」
 地下採掘場へ逃げようとした男は開かない扉を前にして叫んだ。
 扉の向こう側には……大勢の作業員達。たまたま中央広場へ採れた鉱石を運ぼうとしていた作業員がクイニィーのホムンクルスからの伝言を皆に伝え、扉を開けじと集っていたのだ。
「逃がしはしませんよ。まだダーツは残っている。私のラウンドは終わってないのですから」
 リュリュのダーツが男を狙う。どうやらこのレグはリュリュの完全勝利のようだった。
「あっ!非常口のほうっ」
 男の一人が非常口方面へ逃げる。それにいち早く気づいたクイニィーはすぐに追跡を開始する。
「わたしは砦に幽閉された人たちを助けに行くわ」
 ヒルダは単身入り口の砦へ向かう。私なら探し出せる。ヒルダは確信と共に走り出した。
「おうっ、そっちは任せたぜっ」
「そっちに行ってもらっちゃぁ困るんだなぁ」
 ウェルスはそう言うと出口方面へ逃げようした男と対峙した。
 

「なんだか外が騒がしいですぜ」
「ほっとけほっとけ。どうせいつもの喧嘩だろ。あいつらいつまで経っても変わらねぇ。血の気が多いからなぁ。それよりも続き──」

 バンッ! 大きな音と共に扉が開く。そこにいたのはアリアだ。
 入るなりすぐ捉えられた二人を目視すると、アリアは二人にテレパスを送る。

『部屋の明かりが消えたら扉の方向へ走って逃げてください!』

「貴方の弟さんのように罪を認めて、お縄について下さい!」
「あ? 何言ってんだお嬢ちゃん。おい、捕まえろ」
 ジョルジュが重い声を放つ。部屋にいた側近の二人がじりじりと距離を詰める。
 女性から注意が逸れたその瞬間。
「逃げてっ!」
 アリアの放つ山彦の矢は部屋の明かりを的確に打ち抜き。あたりは闇に覆われる。
 騒然とする部屋。ロリーとベネッサが慄きながらもアリアのいる扉のほうへ逃げてくる。
「なんだっ!! 何も見えないっ!? お頭っ!!」
 二人が広場へ出たのを確認するとアリアは扉を閉じ、中から鍵をかける。
(暗所は100%不利だけど……出来る限り足止めしないと)
「私が相手だ!」
「おもしれぇ。お前も俺のものにしてやる。お前ら一斉に行くぞ」
「おうさぁ、お頭。お楽しみを邪魔したんだ。それなりの代償は払ってもらわないとなぁ」
 剣を持つアリアの手に力がこもる。暗闇でもわかる。あの時と同じ目が私を見ている。
「たぁぁぁぁーーーっ!!」
 アリアは過去の記憶を打ち消すように男達へ突進した。


「おいっ!! 中はどうなってるんだ!?」
 広場を無事制圧したウェルスは部屋の扉を叩く。幾ばくかの金属音がした後、静かになった部屋。
 いやな予感がした。合流したリュリュも同様だった。

 ズズズ。扉が開く。何かを感じウェルスが扉から距離をとる。
 中から現れたのは巨漢の男。そしてぐったりとしたアリア。
「ふはは。なかなか楽しかったぜ。二人はやられちまったけどな」
 ジョルジュは笑う。その脇にはアリアが抱えられている。
「うぅ……」
 アリアの意識ははっきりとしない。覚えているのは暗闇の中で光る目。この目からは逃れられないと言う恐怖心。
「どんな暗闇でも俺にはよぉく見えてるぜぇ。こいつもい~い女だ」
 そういうとジョルジュはアリアを品定めするように弄る。
「あ……ぅ……」
 アリアの顔が赤く染まる。
「やめろ! もう残りはお前一人だ!」
「そうだ。状況を良く見てみるといい」
 リュリュとウェルスは戦闘態勢を崩さない。
「ははは、確かにな。だがこの状態でお前達は俺に何かできるのか? 仲間に当たっちまうかもしれないぞぅ」
 ジョルジュはにたりと笑う。
「くっ……」
 二人は確かに動けない。3対1とはいえ、アリアの実力は自由騎士団でもトップクラスだ。その彼女が暗闇の中とはいえ後れを取ったのだ。
「砦の皆さんは無事救出したわ! って、え……!?」
 そこへ入り口とりでから戻ったヒルダが合流する。
「おおっと、まだ仲間がいたのか。……そっちもいーい女じゃねぇか」
 ジョルジュの視線がヒルダへ向く。
「な、なにをっ!?」
「どうだお前もこいつと一緒に俺の女にならねぇか?」
 周囲を警戒をしながらも、ジョルジュはヒルダへ下卑た視線をぶつける。
 その視線はまるで自分の全てが曝け出されているような感覚をヒルダに与えた。
 純粋な強さとは違う。絶対的な悪の存在(カタマリ)。ヒルダの中に生じた小さな不調律。
「逆らえばこの女がどうなるか……わかるよな」
 くっ……。ヒルダが唇を噛む。その表情を見たジョルジュがにたりと笑い、緊張を緩めたほんの僅かな時間──

「なるわけないでしょーーーっ!!」

 それは突然だった。クイニィーの特性(スキル)は目立たない事。非常出口へ逃げた一人を追いかけていったと思われていた彼女は……実はそこに居た。最初から。ジョルジュが扉から出てきたときからずっと彼女はそこにいて、チャンスを伺っていたのだ。
 彼女が至近距離で放った兵士(スパルトイ)はジョルジュに鈍い痛みを与え、アリアを手放させる。
 すかさず、リュリュも人形兵士を錬成し、追撃を仕掛ける。たまらずジョルジュは距離をとる。
「大丈夫か!!」
 ウェルスがアリアの元へ駆け寄る。かなりのダメージを受けているものの命に別状はなさそうだ。
 クイニィーもすぐにパナケアでアリアを回復する。
「おっとっと。せっかく手に入れた上玉だったのによぉ。つぅー痛てて……。すげぇ能力だぜ。そっちのお嬢ちゃんもよぉ。ま、切るカードが無くなった以上この博打に命をかけてもしゃーねぇな。俺はここら辺で引かせてもらうぜ」
「ふっ、ふざけるなっ! 逃がしはしないっ!」
 ヒルダが叫ぶ。

 ひゅっ。風を切る音がした。次の瞬間広場の篝火が消える。完全な暗闇。

「またな」

 自由騎士全員が確かに耳元でその声を聞いた。


「これで全員ですね」
 作業員のすべてを採掘場から脱出させた自由騎士たちは安堵の表情を浮かべる。
 砦に幽閉された3人もその後の処置により順調に回復の様子を見せている。
「わわ、なんだこれ」
 ウェルスがふと、自分の服に不自然についていた羽に気づく。
「わたしにも」
「私にも」
「なんですかね。この羽」
 気づけば全員についていたようだ。

「そういえば、アクチノライト、結局ちゃんと見れなかったな~。売ったら高いのかな?」
「質にもよるが結構いい値段が付くと思うぞ。だけど勝手に持っていっちゃぁいけないな」
 クイニィーの興味を商人のウェルスが軽くいなす。
「さて、帰って報告しましょう」
 リュリュの言葉に皆が賛同する。

(あの目……)
 ヒルダが感じたあの感覚が何だったのか。それはヒルダ自身にもわからない。

(次ぎ会うことがあれば……私が絶対に)
 そう心に誓うアリアだった。



 その後ラスカルズが作り上げた砦はそのまま有効活用されることなったという。





†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『俺の。』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『俺の。』
取得者: リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『俺の。』
取得者: ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『俺の?』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『俺の。』
取得者: クイニィー・アルジェント(CL3000178)
特殊成果
『羽』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アリア・セレスティ(CL3000222)
『羽』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『羽』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『羽羽羽』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『羽』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:クイニィー・アルジェント(CL3000178)

†あとがき†

採掘場の作業員は全員無事開放されました。
状況が混沌としている中、必要な対処をしっかり行っていただけました。

MVPはクイニィーさんへ。
各所でのピンポイントな活躍が光りました。

ジョルジュとはいずれまた決着をつける場所を用意させていただきます。

あと女性二人はずっとジョルジュの全身マッサージをさせられていました。
よっぽど凝っていたのでしょう。どこもガチガチに堅かったそうです。

ご参加ありがとうございました。
FL送付済