MagiaSteam




アマゾナイトと癒さずの聖者

●
イ・ラプセル西南。スペリール湖南部の湖畔にある神官専用に用意された墓地。
今ここで異変が起こっていた。
「まただ……また神官様が動き出されたっ!!」
「これでもう14人目だ……歴代の神官様がこうも次々と……」
それは突然起こった。天寿を全うされ、この墓地へ埋葬された歴代の神官が次々に蘇っているのだ。
今のところは何故か墓地の囲いから出る事は無いため、まだ人的被害などは出ていない。
蘇る神官は最初は毎日増えていたが、少しずつ間隔が広がり、今日の蘇りは6日ぶり。それでも着実に増えている事に違いはない。
「このままでは……」
「ではどうするというのだ、我々が武器を持ったところで倒せやしなかった。何より魔導攻撃は一切効かなかったではないか」
墓地管理人は蒸気通信機器に手を伸ばす。
「……そちら自由騎士団ですか。依頼をお願いしたいのだが──」
●
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)に呼び出され、自由騎士たちが集る。
「よく集ってくれた。とある墓地管理人より還りビト討伐要請が来た。すぐに向かって欲しいのだが──」
フレデリックが言葉を続け、自由騎士に告げた内容。それは物理攻撃は効果が薄く、魔導攻撃に関しては一切効かないようだという還りビトの詳細。
「おいおい、それじゃあどうやって討伐すればいいんだ」
自由騎士の問いかけはもっともだ。
「効果が薄いといっても効かないわけではない。地道に物理攻撃を続ける事で撃破も可能、だが……」
フレデリックの言葉に切れが無い。
「何か他にも方法があるのか?」
「これは不確かな情報なのだが……どうもこの還りビトには回復スキルが有効かもしれないのだ」
墓地管理人が誤って還りビトに投げつけた回復薬。これがどうも効いたらしいのだ。
しかし管理人はもう回復薬は持っておらず、現状その真偽を確かめる手段は無い。
「申し訳ないのだが、君たちの手で確かめてみて欲しい。頼んだぞ」
イ・ラプセル西南。スペリール湖南部の湖畔にある神官専用に用意された墓地。
今ここで異変が起こっていた。
「まただ……また神官様が動き出されたっ!!」
「これでもう14人目だ……歴代の神官様がこうも次々と……」
それは突然起こった。天寿を全うされ、この墓地へ埋葬された歴代の神官が次々に蘇っているのだ。
今のところは何故か墓地の囲いから出る事は無いため、まだ人的被害などは出ていない。
蘇る神官は最初は毎日増えていたが、少しずつ間隔が広がり、今日の蘇りは6日ぶり。それでも着実に増えている事に違いはない。
「このままでは……」
「ではどうするというのだ、我々が武器を持ったところで倒せやしなかった。何より魔導攻撃は一切効かなかったではないか」
墓地管理人は蒸気通信機器に手を伸ばす。
「……そちら自由騎士団ですか。依頼をお願いしたいのだが──」
●
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)に呼び出され、自由騎士たちが集る。
「よく集ってくれた。とある墓地管理人より還りビト討伐要請が来た。すぐに向かって欲しいのだが──」
フレデリックが言葉を続け、自由騎士に告げた内容。それは物理攻撃は効果が薄く、魔導攻撃に関しては一切効かないようだという還りビトの詳細。
「おいおい、それじゃあどうやって討伐すればいいんだ」
自由騎士の問いかけはもっともだ。
「効果が薄いといっても効かないわけではない。地道に物理攻撃を続ける事で撃破も可能、だが……」
フレデリックの言葉に切れが無い。
「何か他にも方法があるのか?」
「これは不確かな情報なのだが……どうもこの還りビトには回復スキルが有効かもしれないのだ」
墓地管理人が誤って還りビトに投げつけた回復薬。これがどうも効いたらしいのだ。
しかし管理人はもう回復薬は持っておらず、現状その真偽を確かめる手段は無い。
「申し訳ないのだが、君たちの手で確かめてみて欲しい。頼んだぞ」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.還りビトの討伐
鍋の〆に入れるのはご飯? それともうどん? いえいえ中華麺も侮れません。週一で鍋をつつく麺二郎です。
日ごろ後方より自由騎士の活躍を支える縁の下の力持ち的存在の回復役の皆さん。
その活躍をもっと見てみたい。麺はそう思った次第でございます。
もちろんそこには回復役の皆さんを身を挺して守る騎士の存在も不可欠です。
魔導が効かない相手に魔導メインのスタイルの方がどう対処するのかもまた興味深いところ。
いつもとは少々違った役割分担をお楽しみいただければと思います。
●ロケーション
スペリール湖南部の湖畔にある神官専用墓地。歴代の神官たち数百名が眠っています。
その墓地にて還りビトが大量発生しています。その数14体。
始めは毎日増えましたが次第に期間があくようになり、最後の1体は6日ぶり。
今は墓地の柵を越える事はなく墓地内をさまよっているだけですがこのまま増え続ければどうなるかわかりません。
●登場人物
・墓地管理人 2名
当初は討伐を試みましたが、物理攻撃はそう効かず、魔導が一切通じないことに攻撃を諦め、還りビトの恐怖に怯えながらも墓地脇の管理棟にて観察を続けています。
●敵
・還り神官(還りビト) 14体。
歴代の神官たち。新しいものから蘇り、殆どのものは骨と服飾だけとなっていましたが、土などが体のように付着し、体を形成しています。
物理攻撃は効果が薄く、また魔導攻撃は一切効きません。その指にはアマゾナイトの指輪がはめられています。
管理人によるとアマゾナイトの指輪がはめられているご遺体は全部で16体。そのうち14体がすでに還りビトとなっているそうです。
元職業の影響なのか、理由は一切不明ですが、回復に対してのダメージが確認されています。
噛み付き 攻近単 噛み付きます。【ポイズン1】
撲殺 攻近単 メイスを使った力任せの攻撃です。【コンフュ1】
神官の祈り 魔遠単 魔力の塊を飛ばして攻撃します。【シール1】
※この依頼では通常味方のみに使用できる回復スキルを還りビトに使用することが出来ます。
※※回復スキルによるダメージ効果はこの依頼のみで有効です。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなく、回復スキルを持つものが居なければ回復スキルを使用します。
回復スキルを持つものが居る場合は管理人の保護を行います。
所持アイテムは着火剤と保存食(パスタ)です。
皆様のご参加心よりお待ちしております。
日ごろ後方より自由騎士の活躍を支える縁の下の力持ち的存在の回復役の皆さん。
その活躍をもっと見てみたい。麺はそう思った次第でございます。
もちろんそこには回復役の皆さんを身を挺して守る騎士の存在も不可欠です。
魔導が効かない相手に魔導メインのスタイルの方がどう対処するのかもまた興味深いところ。
いつもとは少々違った役割分担をお楽しみいただければと思います。
●ロケーション
スペリール湖南部の湖畔にある神官専用墓地。歴代の神官たち数百名が眠っています。
その墓地にて還りビトが大量発生しています。その数14体。
始めは毎日増えましたが次第に期間があくようになり、最後の1体は6日ぶり。
今は墓地の柵を越える事はなく墓地内をさまよっているだけですがこのまま増え続ければどうなるかわかりません。
●登場人物
・墓地管理人 2名
当初は討伐を試みましたが、物理攻撃はそう効かず、魔導が一切通じないことに攻撃を諦め、還りビトの恐怖に怯えながらも墓地脇の管理棟にて観察を続けています。
●敵
・還り神官(還りビト) 14体。
歴代の神官たち。新しいものから蘇り、殆どのものは骨と服飾だけとなっていましたが、土などが体のように付着し、体を形成しています。
物理攻撃は効果が薄く、また魔導攻撃は一切効きません。その指にはアマゾナイトの指輪がはめられています。
管理人によるとアマゾナイトの指輪がはめられているご遺体は全部で16体。そのうち14体がすでに還りビトとなっているそうです。
元職業の影響なのか、理由は一切不明ですが、回復に対してのダメージが確認されています。
噛み付き 攻近単 噛み付きます。【ポイズン1】
撲殺 攻近単 メイスを使った力任せの攻撃です。【コンフュ1】
神官の祈り 魔遠単 魔力の塊を飛ばして攻撃します。【シール1】
※この依頼では通常味方のみに使用できる回復スキルを還りビトに使用することが出来ます。
※※回復スキルによるダメージ効果はこの依頼のみで有効です。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなく、回復スキルを持つものが居なければ回復スキルを使用します。
回復スキルを持つものが居る場合は管理人の保護を行います。
所持アイテムは着火剤と保存食(パスタ)です。
皆様のご参加心よりお待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2018年12月26日
2018年12月26日
†メイン参加者 6人†
●
「アマゾナイトの指輪……今回の騒動に関係があるのでしょうか」
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は以前にも宝石が絡んだ事件があった事を思い出していた。まだ記憶に新しいアマノホカリから来た古道具がイブリース化した事件。
「あの時は確か、気付いたら影も形もなくなっていたんですよね……」
イブリース化した鎧に縫い付けられてた宝石はイブリース化を解除した後、跡形も無くなくなっていた。これは偶然? それとも──。
「っと、いけませんね。考え事より、まずはやるべき事を」
そう言うとフーリィンは蘇った神官を再び眠りに就かさんと決意する。
「こうも連続で出現すると、共通点か何かがあるのかと思ってしまうな」
『暗金の騎士』ダリアン オブゼタード(CL3000458)の鋭い直感もまた、還りビトの共通性について何かを感じとっていた。今は還りビトと化した彼らだが、人々のために立派に尽くした敬意を表すべき方たちである事は間違いない。ダリアンはふとそんな彼らを見守る墓地管理人や、生前の彼らを慕いお参りに来る人々の事を考える。最悪致し方ないとはいえ、できる限りは配慮したい。それには先ずはきちんと原因を突き止めなければ。ダリアンの心は決まっていた。
「かつて人々を癒やしていた者達が蘇った結果、その癒やしの術で傷を負う、か」
可哀想に。『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は静かに目を瞑り、蘇った者たちへ哀悼の意を表していた。
心穏やかに静かに眠っていた者たちが、その意に反して再び呼び戻され今こうしてこの場所で徘徊している。それはなんとも痛ましく、そして悲しい。
一刻も早く浄化し土へ帰す事が、私たちが出来るせめてもの彼らへの手向けとなるだろう。複雑な思いを抱えつつもリュリュは武器を取り、還りビトと対峙する。
(還りビト……ね)
『水の国の騎士』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)には憐れみの表情が浮かぶ。
仮にも人々に心の平穏を齎す存在であるはずの神官が、人々を襲い恐怖に陥れる存在になる。何を思ってそうなったかは知らないけど、早く元通り眠って欲しいわ。ライカは誰に聞かせるわけでもなく呟く。
「さっさと片付けましょう」
ライカは両手に装備した赤銅と青銅の籠手を合わせ、気合を入れる。彼らに安らかなる死後の安寧を──。敵に対していつもは冷徹だと感じさせるほど鋭い眼光のライカが見せる慈愛をも感じさせる眼差しは、墓地内を蠢く還りビトをまっすぐに捉えていた。
オォォオオオォォォオォォ──
墓地に還りビト達の呻き声が響いている。
「さて、と。先ずは本当に回復スキルが有効なのか、確認しておきたいな」
リュリュがそう言うとメンバーは頷く。確かに回復が有効という情報はあるが、それは回復薬によるたった一度の偶然の検証でしかない。まず確証を得る事は重要だ。
「回復魔法しか効かねーとか。面倒だからぶった切っちまいたいが……まあ、それはそれで後が美しくない。聖なる力とやらで浄化してやるから大人しくしろよ元聖者ども」
『わるいまほうつかい』ディルク・フォーゲル(CL3000381)が敵に向けて発する言葉は商人としての彼が見せる柔和な態度とはまるで違うものだ。
\ぱんぱかぱーん!!/
「回復手段が有効! となれば!!! わたくしの出番ですわー!!!」
ここで颯爽と登場したのは『思いの先に』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)。つい先日の海賊との戦いで自らの命の炎を燃やしながらも、その煌びやかで派手な登場は健在だ。自らの信念を決して曲げない事。それはジュリエットが持つ大きな力。そして回復手としてトップレベルの実力を持つ彼女の存在は大きい。
ジュリエットの登場に反応したのはメンバーだけではなかった。近くに居た還りビトもまた音に反応し、ジュリエットを標的とせんと動き出す。
「囮作戦成功ですわっ!! わたくしがこのまま何体か引きつけますわっ!!」
そういうとジュリエットは、音に反応した還りビトを誘導するように自由騎士たちと距離をとっていく。
彼のように皆を庇って守る事は出来なくとも、敵を惹きつけ戦力を分散することならわたくしにもできるはず。ジュリエットの心には常に誰よりも他人の事を大切に考え、他人の事で心を痛め、他人の為に全力を尽くす彼がいる。
「ジュリエットさん! 単独行動は危険です!」
ダリアンは同じ騎士であるジュリエットに敬意を表しつつも、思わず追いかけようとしたのだが。
「ジュリエットなら大丈夫」
ライカがダリアンの肩に手をやり引き止める。ライカはジュリエットが誰よりも高い魔導力と強い信念を持っている事を知っていた。
「さぁ、いくわよ! こちらは私たち2人で前線を維持するのよ」
「はいっ!」
ライカが己が身体を加速させ、ダリアンが癒しの息吹で仲間の回復をサポートする。戦闘の準備は整った。
「まずは試しだ」
リュリュの投げた薬瓶が還りビトに当たって砕ける。その中身は万能なる癒しの雫。
グォォォオオオオォォォォォ──ッ!!!
唸り、苦しみ、悶える還りビト。やはり回復は有効なようだ。
「これで心置きなくぶっぱなせるな」
「ロジェさん、ばっちりでーす♪」
待機していたディルクとフーリィンが一斉に術式を展開し始める。自然に存在する無形の魔力。その力が今ディルクとフーリィンを媒体に還りビトへと降り注ぐ。
逃げ場の無いその攻撃に一気に攻撃色を強める還りビト達。
ジュリエットが惹き付けた数体を除く全てが、一斉に憎き回復手の元へと歩を進め始める。
「止めるわよっ」
ライカとダリアンが前に出る。物理攻撃の効果が薄い事は2人も理解している。が、全く効かない訳ではない。何より攻撃を行う事で還りビトを足止めできる事。これが大きい。
ラピッドジーンで速度を上げたライカが一気に前に出る。
物理ダメージがほぼ効かないとしても、ダメージソースとなる仲間に攻撃対象が移らないよう、こっちに引き付けるこ事はできるでしょう? ライアの読みは的中する。還りビトの群れは近くに攻撃対象が居れば最優先にそれを狙う。言うまでも無く後衛への遠距離攻撃、如いてはシール付与によるスキル使用不可の可能性を下げる事が出来るのだ。
「ハァァァァァーーーーーッ!!」
「タァァァーーーッ!!」
ライカの最速の一撃が、ダリアンの気合を込めて叩きつける旗槍が、還りビトを撃つ。僅かながらも確実にダメージを蓄積してゆく。
無論還りビトもただ攻撃を受けるばかりではない。数で圧倒する還りビトは攻撃を受けつつも、じわじわと前衛の2人を取り囲むように近づいてきていた。
その後方では最大の攻撃手である回復を担っているディルク、リュリュ、フーリィンが癒しの雨を降らせていた。
特に3人の中で最大の魔導力を持つフーリィンの回復は絶大で、大きな効果を発揮している。だがそれは反面、ターゲットになりやすいという事でもある。
還りビトが唱える祈りが、フーリィンをはじめとする回復勢に襲い掛かる。
「く……っ」
「なにっ!?」
比較的回避能力に長けたディルクは何とか逃れたもののフーリィン、リュリュはその祈りの効果によりスキル使用の自由を奪われる。
「すぐに解除するっ」
ディルクが状態異常の解除を試みるもその効果は確実なものではない。
「俺も解除できますっ!!」
後衛の異変に気づいたダリアンがフーリィンへ向けてクリアカースを展開。精度をあげたダリアンの解除術式はフーリィンから神官の祈りの効果を消し去る事に成功する。
「感謝ですっ」
回復したフーリィンは冷静さを失わないよう細心の注意を払いながら、仲間の状態を見極め、攻撃と回復を再開する。
「やった! ……ぐあぁぁぁっ!!」
解除に気をとられたダリアンに、還りビトが次々と襲い掛かる。柳凪で自己を強化していたダリアンではあったが、神官のメイスを容赦なく振り下ろされ、正常な判断を失ってしまう。
「う……お……」
「ハァァーー!!!」
すぐにライカがダリアンの周りの還りビトをその籠手の一撃でなぎ払うも、混乱したダリアンの一撃はライカへ向かう。
ガキィィン。ダリアンの旗槍の突きをライカが籠手で防御する。
厄介ね──ライカは混乱するダリアンの攻撃を避けつつ、還りビトをダリアンに近づかせないという難しい立ち位置を迫られる。如何に回避能力に優れたライカであれど、その全てを避けきることは困難を極めた。ライカの柔肌から鮮血が滲む。
「すまない、もう大丈夫だ!」
そこへディルクによってシール効果が解除されたリュリュが術式を展開。ダリアンの混乱を解く。
「……ハッ!?」
ダリアンが正気に戻り戦線は復帰したものの、その間に後衛メンバーへ近づく還りビトが1体。前線を突破されていたのだ。
「くっ……行かせないっ」
ダメージを残しながらもライカは反応する。影狼──攻撃と同時に移動を可能とするその技で一気に還りビトの元へ。唸る拳を叩き込み、還りビトの行進を身体を張って阻止する。
正気に戻ったダリアンは、自身の役割を今一度強く認識する。まだ経験こそ浅いダリアンだが任務遂行への意気込みは誰にも増して強い。
志した夢を一度は諦めた後、新たに見つけた騎士としての生きる道。その道が決して楽な道で無い事はダリアンもわかっている。それゆえにどれだけ苦しくとも前を向き己が足で一歩ずつ進むのだ。
「俺が誰にも超えられない高き壁となり……この依頼必ず成功させるっ!!」
その間にも回復メンバーによる回復転化は還りビトにダメージを与え続けて居たのだが。消費の無い回復手段を持たないディルクの魔力が底をつく。
「アルカナムさん、ロジェさん! 後は任せます。私は前へ」
そういうとディルクは片手鎌を握りなおすと前線で戦うライカとダリアンの元へ。
一方、自ら囮となり一人行動していたジュリエット。
「おーっほほほ!! わたくしの放つオーラの前では死んでいる事など些細な問題ですわっ」
還りビトの移動速度が然程速くない事を確認すると、充填をしながら還りビトを誘導。
敵の分散に成功したジュリエットは溜めた力を一気に解放する。
「いきますわよ……慈愛の蒼い海っ(ヒーリングサファイア)!」
自由騎士には大いなる慈悲、還りビトにとっては容赦の無い無慈悲ともいえるジュリエットの祈りは、暖かな蒼い光となり周囲を満たしていく。
ウゴォォアアァァォォアアア!!!!
のたうち喘ぐ還りビトの群れ。その姿にはかつて人々に慕われ、教えを問うた人格者の面影は無い。
「見ましたか!! 敵への攻撃と、味方への回復を同時に行う。隙の無い一手ですわー! おーっほほほ!!」
デュルクが前に出たことを遠目に確認したジュリエットは、大きく回りこみ還りビトとの距離をとりながら皆の元へ。
ここからは総力戦となる。自由騎士全員がその全力を持って還りビトと対峙する。
前線で身体を張って還りビトの進行を阻止するライカとダリアン。そしてそこに合流するディルク。
「トォーーーッ!!」
ダリアンが渾身の力で叩きつけるその旗槍が。
「くたばりやがれっ」
虎視眈々と獲物を狙うディルクの漆黒の鎌が。
それぞれの攻撃は僅かながらも着実に、還りビトへダメージを蓄積してゆく。
血心一閃【絶神】──ライカが全身全霊最速で放つ渾身の一撃。ライカの攻撃にかける執念がついに還りビトの1体を浄化に導く。
「たとえ効果が薄かろうと、貫き通せば道はなるっ!!」
そこにあるのは常に最前線で戦うライカのアタッカーとしての誇り。
一方味方への体力と状態異常の回復を率先して行っていたリュリュに魔力の限界が訪れる。
魔力の枯渇を感じ取ったリュリュが最後に繰り出したのは無数の霊薬。不完全なるエリクシア──そのありったけを一気に放出する。
その威力に還りビトは悶え苦しみ、その行動に大きな乱れを見せた。
「残念ながら私も魔力切れだ。単体回復は出来るが……それなら前で還りビトを惹きつけながらでもよかろう」
そういうとリュリュもまたその大きな翼を羽ばたかせ前へ。空を舞いながら手に持った試験管で還りビトを攻撃していく。
「ジュリエットさんは出来る限り、還りビトの視界から逃れてくださいねっ」
ジュリエットの持つヒュギエイアの杯は味方全員の状態異常を一気に回復できる稀有な力。万が一にも神官の祈り受ければ大きく戦況は変わりかねない。
「わかりましたわっ」
フーリィンとジュリエット。自由騎士の中でも屈指の魔導力を有するヒーラーが2人。その癒しの力を全て攻撃に転化する。その威力たるや歴然である。苦しみ悶える還りビトの群れ。
敵味方構わず降り注ぐその癒しは全てを包み込み、味方を癒し、そして着実に還りビトの数を減らしていく。
「出し惜しみは出来ませんね……これで終わらせます。蒼き清浄な光よ――セフィロトの海へと導く標となれ!」
フーリィンが全身全霊をかけた祈りを天に捧げると、それに答えるかのように天から蒼き光が降り注ぐ。
今、この時だけは、慈愛の祈りを鎮魂に変えて――。
グォォアァァァァァァァァァッ!!!!
光の中で1体、また1体と浄化され崩れていく還りビトたち。闇に落ちた神官の成れの果て。
かつては自身が与えていたであろう癒しの力によって、その身を朽ちさせていく。
最後の1体が倒れたとき、そこには浄化され元の姿に戻った多くの神官達の亡骸と、今にも倒れんばかりに疲弊した自由騎士達の姿があった。
また共に浄化されてしまったのか、亡骸の指に嵌った指輪からアマゾナイトは忽然と消えていた。
「任務完了ーーーーっ」
ダリアンはその場にばたりと倒れこんだ。その顔は任務をやり遂げた達成感に溢れていた。
●
全ての還りビトを浄化した自由騎士達は並んだ2つのお墓の前にいた。
すでに浄化し、元へ戻った神官たちの亡骸はダリアンたちの手で元の場所へ埋葬されていた。
「今回蘇った神官はみなアマゾナイトの指輪をつけている。そしてこのお墓の下にはアマゾナイトの指輪をつけた残り2人の亡骸がある訳か──」
リュリュは今回の『回復効果の反転作用』について深く調査する必要性を感じていた。その為には一つの原因とも推測される指輪を何とか回収したいものなのだが──。
ここは過去の偉人が眠る神聖な場所。本来であれば静かに眠る故人を冒涜するような行為が許される訳は無い。確認のためとあるがままを伝えるだけでは墓を掘り起こすことに管理人が首を縦に振るかどうかはわからない。
だがディルクの商人としての交渉術がここで冴え渡る。
「由緒ある神官達のご遺体が甦り人を襲ったとなれば、相当外聞に響きますよね」
ディルクは敢えて痛いところを口にする。
「うぅむ……それは確かに。もしもまた起こる事があれば、それこそこの墓地の存続にも関わってしまう」
墓地管理人は悲痛な顔でそう答える。
「ましてや原因もわからないとなれば、尚のことです。ですが、指輪が原因で死体が操られていたという事なら話は変わります。それは紛れも無く不幸な事故。神官たちの名誉が傷つく事も無いでしょう」
ディルクの二枚舌が矢継ぎ早に放つ尤もらしい発言は、管理人の心をがっちりと掴んでいく。
「神官様達を慕う者のお参りも少なくない。原因がわかる事で神官様の名誉や訪れる人々を護れるのであればそれに越した事は無いのではないか?」
墓地管理人は今後もこの地を管理していかなければならない。確かに不安材料は一つでも減らしたいところだろう。
「ですので詳しく調査するためにも、ご協力をお願いしたいのですが」
ディルクはまっすぐに管理人達を見る。その表情には原因究明への自信を覗かせる。
「過去に同じように宝石が引き起こしたと思われる事件を私達は知っています。専門家に見てもらえたらなって」
「還りビト達の共通点はアマゾナイトの指輪をはめていること。この指輪が還りビト化に影響しているのかもしれませんわね」
フーリィンとジュリエットも過去の事象や今回の状況を改めて説明し、管理人へ許可を促す。
するとしばし考えていた管理人は自由騎士に回答を伝えた。
「……君達の言う事はわかった。遺体を掘り起こすことを許可しよう。ただ……その代わり極めて丁重に扱ってもらう事を約束してもらいたい」
それはもちろん、と自由騎士皆が頷いた。
許可を得た自由騎士はダリアンを筆頭に墓を掘り起こし、ご遺体が還りビト化していない事を確認。
墓暴きには気が乗らないリュリュであったが、これも研究のためとその指に嵌ったアマゾナイトの指輪2つを回収。
回収された指輪にはイブリース化などの異変は見られなかったが、アカデミーの研究機関へと引き渡す事となった。
「あとは今後の経過を見守るしかないわね」
ライカの手のひらには鈍い光を放つアマゾナイトの指輪。この指輪が原因なのか。それはまだわからない。
「……そもそもこの指輪、何か由来とかある物なんですかね?」
フーリィンが管理人に素朴な疑問をぶつける。
「指輪かい? 我々もよくは知らないのだが……とある時期の神官様は皆つけていたんだよ」
「ああ、グレゴリィ・ミストール神官様の頃か。まぁあの方は……」
何か言いかけた管理人の言葉を遮るようにもう一人の管理人が話を続ける。
「いや、なんでもない。由来などはやはり我々にはわからないな」
自由騎士は管理人の言葉に歯切れを悪さを感じたものの、その場ではそれ以上の情報は引き出すことは出来なかった。
「アマゾナイトの指輪……今回の騒動に関係があるのでしょうか」
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は以前にも宝石が絡んだ事件があった事を思い出していた。まだ記憶に新しいアマノホカリから来た古道具がイブリース化した事件。
「あの時は確か、気付いたら影も形もなくなっていたんですよね……」
イブリース化した鎧に縫い付けられてた宝石はイブリース化を解除した後、跡形も無くなくなっていた。これは偶然? それとも──。
「っと、いけませんね。考え事より、まずはやるべき事を」
そう言うとフーリィンは蘇った神官を再び眠りに就かさんと決意する。
「こうも連続で出現すると、共通点か何かがあるのかと思ってしまうな」
『暗金の騎士』ダリアン オブゼタード(CL3000458)の鋭い直感もまた、還りビトの共通性について何かを感じとっていた。今は還りビトと化した彼らだが、人々のために立派に尽くした敬意を表すべき方たちである事は間違いない。ダリアンはふとそんな彼らを見守る墓地管理人や、生前の彼らを慕いお参りに来る人々の事を考える。最悪致し方ないとはいえ、できる限りは配慮したい。それには先ずはきちんと原因を突き止めなければ。ダリアンの心は決まっていた。
「かつて人々を癒やしていた者達が蘇った結果、その癒やしの術で傷を負う、か」
可哀想に。『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は静かに目を瞑り、蘇った者たちへ哀悼の意を表していた。
心穏やかに静かに眠っていた者たちが、その意に反して再び呼び戻され今こうしてこの場所で徘徊している。それはなんとも痛ましく、そして悲しい。
一刻も早く浄化し土へ帰す事が、私たちが出来るせめてもの彼らへの手向けとなるだろう。複雑な思いを抱えつつもリュリュは武器を取り、還りビトと対峙する。
(還りビト……ね)
『水の国の騎士』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)には憐れみの表情が浮かぶ。
仮にも人々に心の平穏を齎す存在であるはずの神官が、人々を襲い恐怖に陥れる存在になる。何を思ってそうなったかは知らないけど、早く元通り眠って欲しいわ。ライカは誰に聞かせるわけでもなく呟く。
「さっさと片付けましょう」
ライカは両手に装備した赤銅と青銅の籠手を合わせ、気合を入れる。彼らに安らかなる死後の安寧を──。敵に対していつもは冷徹だと感じさせるほど鋭い眼光のライカが見せる慈愛をも感じさせる眼差しは、墓地内を蠢く還りビトをまっすぐに捉えていた。
オォォオオオォォォオォォ──
墓地に還りビト達の呻き声が響いている。
「さて、と。先ずは本当に回復スキルが有効なのか、確認しておきたいな」
リュリュがそう言うとメンバーは頷く。確かに回復が有効という情報はあるが、それは回復薬によるたった一度の偶然の検証でしかない。まず確証を得る事は重要だ。
「回復魔法しか効かねーとか。面倒だからぶった切っちまいたいが……まあ、それはそれで後が美しくない。聖なる力とやらで浄化してやるから大人しくしろよ元聖者ども」
『わるいまほうつかい』ディルク・フォーゲル(CL3000381)が敵に向けて発する言葉は商人としての彼が見せる柔和な態度とはまるで違うものだ。
\ぱんぱかぱーん!!/
「回復手段が有効! となれば!!! わたくしの出番ですわー!!!」
ここで颯爽と登場したのは『思いの先に』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)。つい先日の海賊との戦いで自らの命の炎を燃やしながらも、その煌びやかで派手な登場は健在だ。自らの信念を決して曲げない事。それはジュリエットが持つ大きな力。そして回復手としてトップレベルの実力を持つ彼女の存在は大きい。
ジュリエットの登場に反応したのはメンバーだけではなかった。近くに居た還りビトもまた音に反応し、ジュリエットを標的とせんと動き出す。
「囮作戦成功ですわっ!! わたくしがこのまま何体か引きつけますわっ!!」
そういうとジュリエットは、音に反応した還りビトを誘導するように自由騎士たちと距離をとっていく。
彼のように皆を庇って守る事は出来なくとも、敵を惹きつけ戦力を分散することならわたくしにもできるはず。ジュリエットの心には常に誰よりも他人の事を大切に考え、他人の事で心を痛め、他人の為に全力を尽くす彼がいる。
「ジュリエットさん! 単独行動は危険です!」
ダリアンは同じ騎士であるジュリエットに敬意を表しつつも、思わず追いかけようとしたのだが。
「ジュリエットなら大丈夫」
ライカがダリアンの肩に手をやり引き止める。ライカはジュリエットが誰よりも高い魔導力と強い信念を持っている事を知っていた。
「さぁ、いくわよ! こちらは私たち2人で前線を維持するのよ」
「はいっ!」
ライカが己が身体を加速させ、ダリアンが癒しの息吹で仲間の回復をサポートする。戦闘の準備は整った。
「まずは試しだ」
リュリュの投げた薬瓶が還りビトに当たって砕ける。その中身は万能なる癒しの雫。
グォォォオオオオォォォォォ──ッ!!!
唸り、苦しみ、悶える還りビト。やはり回復は有効なようだ。
「これで心置きなくぶっぱなせるな」
「ロジェさん、ばっちりでーす♪」
待機していたディルクとフーリィンが一斉に術式を展開し始める。自然に存在する無形の魔力。その力が今ディルクとフーリィンを媒体に還りビトへと降り注ぐ。
逃げ場の無いその攻撃に一気に攻撃色を強める還りビト達。
ジュリエットが惹き付けた数体を除く全てが、一斉に憎き回復手の元へと歩を進め始める。
「止めるわよっ」
ライカとダリアンが前に出る。物理攻撃の効果が薄い事は2人も理解している。が、全く効かない訳ではない。何より攻撃を行う事で還りビトを足止めできる事。これが大きい。
ラピッドジーンで速度を上げたライカが一気に前に出る。
物理ダメージがほぼ効かないとしても、ダメージソースとなる仲間に攻撃対象が移らないよう、こっちに引き付けるこ事はできるでしょう? ライアの読みは的中する。還りビトの群れは近くに攻撃対象が居れば最優先にそれを狙う。言うまでも無く後衛への遠距離攻撃、如いてはシール付与によるスキル使用不可の可能性を下げる事が出来るのだ。
「ハァァァァァーーーーーッ!!」
「タァァァーーーッ!!」
ライカの最速の一撃が、ダリアンの気合を込めて叩きつける旗槍が、還りビトを撃つ。僅かながらも確実にダメージを蓄積してゆく。
無論還りビトもただ攻撃を受けるばかりではない。数で圧倒する還りビトは攻撃を受けつつも、じわじわと前衛の2人を取り囲むように近づいてきていた。
その後方では最大の攻撃手である回復を担っているディルク、リュリュ、フーリィンが癒しの雨を降らせていた。
特に3人の中で最大の魔導力を持つフーリィンの回復は絶大で、大きな効果を発揮している。だがそれは反面、ターゲットになりやすいという事でもある。
還りビトが唱える祈りが、フーリィンをはじめとする回復勢に襲い掛かる。
「く……っ」
「なにっ!?」
比較的回避能力に長けたディルクは何とか逃れたもののフーリィン、リュリュはその祈りの効果によりスキル使用の自由を奪われる。
「すぐに解除するっ」
ディルクが状態異常の解除を試みるもその効果は確実なものではない。
「俺も解除できますっ!!」
後衛の異変に気づいたダリアンがフーリィンへ向けてクリアカースを展開。精度をあげたダリアンの解除術式はフーリィンから神官の祈りの効果を消し去る事に成功する。
「感謝ですっ」
回復したフーリィンは冷静さを失わないよう細心の注意を払いながら、仲間の状態を見極め、攻撃と回復を再開する。
「やった! ……ぐあぁぁぁっ!!」
解除に気をとられたダリアンに、還りビトが次々と襲い掛かる。柳凪で自己を強化していたダリアンではあったが、神官のメイスを容赦なく振り下ろされ、正常な判断を失ってしまう。
「う……お……」
「ハァァーー!!!」
すぐにライカがダリアンの周りの還りビトをその籠手の一撃でなぎ払うも、混乱したダリアンの一撃はライカへ向かう。
ガキィィン。ダリアンの旗槍の突きをライカが籠手で防御する。
厄介ね──ライカは混乱するダリアンの攻撃を避けつつ、還りビトをダリアンに近づかせないという難しい立ち位置を迫られる。如何に回避能力に優れたライカであれど、その全てを避けきることは困難を極めた。ライカの柔肌から鮮血が滲む。
「すまない、もう大丈夫だ!」
そこへディルクによってシール効果が解除されたリュリュが術式を展開。ダリアンの混乱を解く。
「……ハッ!?」
ダリアンが正気に戻り戦線は復帰したものの、その間に後衛メンバーへ近づく還りビトが1体。前線を突破されていたのだ。
「くっ……行かせないっ」
ダメージを残しながらもライカは反応する。影狼──攻撃と同時に移動を可能とするその技で一気に還りビトの元へ。唸る拳を叩き込み、還りビトの行進を身体を張って阻止する。
正気に戻ったダリアンは、自身の役割を今一度強く認識する。まだ経験こそ浅いダリアンだが任務遂行への意気込みは誰にも増して強い。
志した夢を一度は諦めた後、新たに見つけた騎士としての生きる道。その道が決して楽な道で無い事はダリアンもわかっている。それゆえにどれだけ苦しくとも前を向き己が足で一歩ずつ進むのだ。
「俺が誰にも超えられない高き壁となり……この依頼必ず成功させるっ!!」
その間にも回復メンバーによる回復転化は還りビトにダメージを与え続けて居たのだが。消費の無い回復手段を持たないディルクの魔力が底をつく。
「アルカナムさん、ロジェさん! 後は任せます。私は前へ」
そういうとディルクは片手鎌を握りなおすと前線で戦うライカとダリアンの元へ。
一方、自ら囮となり一人行動していたジュリエット。
「おーっほほほ!! わたくしの放つオーラの前では死んでいる事など些細な問題ですわっ」
還りビトの移動速度が然程速くない事を確認すると、充填をしながら還りビトを誘導。
敵の分散に成功したジュリエットは溜めた力を一気に解放する。
「いきますわよ……慈愛の蒼い海っ(ヒーリングサファイア)!」
自由騎士には大いなる慈悲、還りビトにとっては容赦の無い無慈悲ともいえるジュリエットの祈りは、暖かな蒼い光となり周囲を満たしていく。
ウゴォォアアァァォォアアア!!!!
のたうち喘ぐ還りビトの群れ。その姿にはかつて人々に慕われ、教えを問うた人格者の面影は無い。
「見ましたか!! 敵への攻撃と、味方への回復を同時に行う。隙の無い一手ですわー! おーっほほほ!!」
デュルクが前に出たことを遠目に確認したジュリエットは、大きく回りこみ還りビトとの距離をとりながら皆の元へ。
ここからは総力戦となる。自由騎士全員がその全力を持って還りビトと対峙する。
前線で身体を張って還りビトの進行を阻止するライカとダリアン。そしてそこに合流するディルク。
「トォーーーッ!!」
ダリアンが渾身の力で叩きつけるその旗槍が。
「くたばりやがれっ」
虎視眈々と獲物を狙うディルクの漆黒の鎌が。
それぞれの攻撃は僅かながらも着実に、還りビトへダメージを蓄積してゆく。
血心一閃【絶神】──ライカが全身全霊最速で放つ渾身の一撃。ライカの攻撃にかける執念がついに還りビトの1体を浄化に導く。
「たとえ効果が薄かろうと、貫き通せば道はなるっ!!」
そこにあるのは常に最前線で戦うライカのアタッカーとしての誇り。
一方味方への体力と状態異常の回復を率先して行っていたリュリュに魔力の限界が訪れる。
魔力の枯渇を感じ取ったリュリュが最後に繰り出したのは無数の霊薬。不完全なるエリクシア──そのありったけを一気に放出する。
その威力に還りビトは悶え苦しみ、その行動に大きな乱れを見せた。
「残念ながら私も魔力切れだ。単体回復は出来るが……それなら前で還りビトを惹きつけながらでもよかろう」
そういうとリュリュもまたその大きな翼を羽ばたかせ前へ。空を舞いながら手に持った試験管で還りビトを攻撃していく。
「ジュリエットさんは出来る限り、還りビトの視界から逃れてくださいねっ」
ジュリエットの持つヒュギエイアの杯は味方全員の状態異常を一気に回復できる稀有な力。万が一にも神官の祈り受ければ大きく戦況は変わりかねない。
「わかりましたわっ」
フーリィンとジュリエット。自由騎士の中でも屈指の魔導力を有するヒーラーが2人。その癒しの力を全て攻撃に転化する。その威力たるや歴然である。苦しみ悶える還りビトの群れ。
敵味方構わず降り注ぐその癒しは全てを包み込み、味方を癒し、そして着実に還りビトの数を減らしていく。
「出し惜しみは出来ませんね……これで終わらせます。蒼き清浄な光よ――セフィロトの海へと導く標となれ!」
フーリィンが全身全霊をかけた祈りを天に捧げると、それに答えるかのように天から蒼き光が降り注ぐ。
今、この時だけは、慈愛の祈りを鎮魂に変えて――。
グォォアァァァァァァァァァッ!!!!
光の中で1体、また1体と浄化され崩れていく還りビトたち。闇に落ちた神官の成れの果て。
かつては自身が与えていたであろう癒しの力によって、その身を朽ちさせていく。
最後の1体が倒れたとき、そこには浄化され元の姿に戻った多くの神官達の亡骸と、今にも倒れんばかりに疲弊した自由騎士達の姿があった。
また共に浄化されてしまったのか、亡骸の指に嵌った指輪からアマゾナイトは忽然と消えていた。
「任務完了ーーーーっ」
ダリアンはその場にばたりと倒れこんだ。その顔は任務をやり遂げた達成感に溢れていた。
●
全ての還りビトを浄化した自由騎士達は並んだ2つのお墓の前にいた。
すでに浄化し、元へ戻った神官たちの亡骸はダリアンたちの手で元の場所へ埋葬されていた。
「今回蘇った神官はみなアマゾナイトの指輪をつけている。そしてこのお墓の下にはアマゾナイトの指輪をつけた残り2人の亡骸がある訳か──」
リュリュは今回の『回復効果の反転作用』について深く調査する必要性を感じていた。その為には一つの原因とも推測される指輪を何とか回収したいものなのだが──。
ここは過去の偉人が眠る神聖な場所。本来であれば静かに眠る故人を冒涜するような行為が許される訳は無い。確認のためとあるがままを伝えるだけでは墓を掘り起こすことに管理人が首を縦に振るかどうかはわからない。
だがディルクの商人としての交渉術がここで冴え渡る。
「由緒ある神官達のご遺体が甦り人を襲ったとなれば、相当外聞に響きますよね」
ディルクは敢えて痛いところを口にする。
「うぅむ……それは確かに。もしもまた起こる事があれば、それこそこの墓地の存続にも関わってしまう」
墓地管理人は悲痛な顔でそう答える。
「ましてや原因もわからないとなれば、尚のことです。ですが、指輪が原因で死体が操られていたという事なら話は変わります。それは紛れも無く不幸な事故。神官たちの名誉が傷つく事も無いでしょう」
ディルクの二枚舌が矢継ぎ早に放つ尤もらしい発言は、管理人の心をがっちりと掴んでいく。
「神官様達を慕う者のお参りも少なくない。原因がわかる事で神官様の名誉や訪れる人々を護れるのであればそれに越した事は無いのではないか?」
墓地管理人は今後もこの地を管理していかなければならない。確かに不安材料は一つでも減らしたいところだろう。
「ですので詳しく調査するためにも、ご協力をお願いしたいのですが」
ディルクはまっすぐに管理人達を見る。その表情には原因究明への自信を覗かせる。
「過去に同じように宝石が引き起こしたと思われる事件を私達は知っています。専門家に見てもらえたらなって」
「還りビト達の共通点はアマゾナイトの指輪をはめていること。この指輪が還りビト化に影響しているのかもしれませんわね」
フーリィンとジュリエットも過去の事象や今回の状況を改めて説明し、管理人へ許可を促す。
するとしばし考えていた管理人は自由騎士に回答を伝えた。
「……君達の言う事はわかった。遺体を掘り起こすことを許可しよう。ただ……その代わり極めて丁重に扱ってもらう事を約束してもらいたい」
それはもちろん、と自由騎士皆が頷いた。
許可を得た自由騎士はダリアンを筆頭に墓を掘り起こし、ご遺体が還りビト化していない事を確認。
墓暴きには気が乗らないリュリュであったが、これも研究のためとその指に嵌ったアマゾナイトの指輪2つを回収。
回収された指輪にはイブリース化などの異変は見られなかったが、アカデミーの研究機関へと引き渡す事となった。
「あとは今後の経過を見守るしかないわね」
ライカの手のひらには鈍い光を放つアマゾナイトの指輪。この指輪が原因なのか。それはまだわからない。
「……そもそもこの指輪、何か由来とかある物なんですかね?」
フーリィンが管理人に素朴な疑問をぶつける。
「指輪かい? 我々もよくは知らないのだが……とある時期の神官様は皆つけていたんだよ」
「ああ、グレゴリィ・ミストール神官様の頃か。まぁあの方は……」
何か言いかけた管理人の言葉を遮るようにもう一人の管理人が話を続ける。
「いや、なんでもない。由来などはやはり我々にはわからないな」
自由騎士は管理人の言葉に歯切れを悪さを感じたものの、その場ではそれ以上の情報は引き出すことは出来なかった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
いつもとは少し違う戦闘いかがだったでしょうか。
MVPは管理人を見事諭した貴方へ。指輪を取得した事により、何らかの研究結果に繋がることでしょう。
ご参加誠にありがとうございました。
ご感想など頂ければ幸いです。
MVPは管理人を見事諭した貴方へ。指輪を取得した事により、何らかの研究結果に繋がることでしょう。
ご参加誠にありがとうございました。
ご感想など頂ければ幸いです。
FL送付済