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アタック・オブ・ザ・デカいトマト



●トマトの襲撃
 イ・ラプセルは、とある農村である。
「今年は豊作だなぁ!」
 村民の男が畑を眺めながら、嬉し気に声をあげる。緑豊かな村の畑では、今が旬のトマトが太陽の光を反射して赤く熟れ、収穫の時を待っていた。
 長年の品種改良により、この村のトマトはフルーツのように甘い。村の名産品として、トマト畑は村の生命線でもある。
「さて、収穫、収穫!」
 と、男が畑に足を踏み入れた時である。その背後にて、どしん、と言う音。続いてごろん、と言う音が響いた。
 はて、なんだろうか。男が不思議そうに振り返り――硬直した。
 トマトである。
 全長にして、1mほどもあろうかと言う肥大化したトマトが、三つ、転がっていた。
 その表面には、まるでハロウィンのカボチャランタンのようなデフォルメされた目と口があり、カチカチと口を鳴らすあたり、なかなかの硬度もありそうである。
 数秒。男とトマトの目が合った。ひっ、と、ひきつった笑いが、思わずこぼれた。シュールな光景に、恐怖を通り越して笑いがこみあげたのである。
「我々はトマトであるトマト!」
 トマトが、言った。
 見ればわかる。
「これより我が同胞を解放するトマト!」
「トマト!」
「トマト!」
 トマトが叫んだ。
「トマトだぁっ!」
 男も、叫んだ。

●トマトは転がる
「イブリースだね。イブリース化したトマト」
 『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は、自由騎士たちへと、そう告げた。
 なんでも、巨大化・狂暴化したトマトにより、とある農村の畑が全滅の憂き目にあう……と言う予測がなされたのだという。
 たかがトマト畑と言うなかれ。村にとっては文字通りの生命線であるし、その後に人が襲われてはシャレにならない。
「と、言うわけだから、みんなにはこのトマトを倒してきてもらいたいんだ」
 今から向かえば、男がトマトと遭遇したタイミングで到着できるだろう。
 戦場は農村のトマト畑。ある程度は戦闘の余波で破壊されても問題はないが、できればトマトを追い立て、離れた場所で戦ってもらいたい。
「こんな所かな。じゃあ、気を付けて行ってきてね!」
 そう言って、クラウディアは皆を送り出したのであった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
洗井 落雲
■成功条件
1.イブリース化トマトをすべて撃退
 はじめまして、洗井落雲と申します。皆様、よろしくお願いいたしますね。
 さて、今回は、イブリース化したトマトの撃退依頼となっています。

●敵データ
 トマト ×3
  特徴
   イブリースとなったトマトです。1mほどのサイズに巨大化しています。
   スキルとして、魔遠単【アンガー1】の能力を持つ『トマト汁ぶしゃあ』や、
   攻近範【ノックバック】の能力を持つ『トマト式体当り』を使うようです。
   人語のようなものを話していますが、会話にはなりません。
   鳴き声みたいなものだと思ってください。

 首尾よく撃退できれば、村人たちが美味しいトマトを振る舞ってくれるでしょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
15モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年06月16日

†メイン参加者 8人†



●襲撃のデカいトマト
「トマトー!」
「トマトー!」
 高らかに響き渡る、イブリース・トマトたちの鳴き声。
 ごろん、ごろんと転がる様子は、多少の『可笑しさ』を感じさせる。とはいえ、危険な存在であることに違いはないのではある。
「到着ー! 到着ー!」
 先頭のトマトが、鳴き声をあげた。眼前に広がるのは、広大なトマト畑。イブリース・トマトたちの目的は、曰く、ここのトマトたちを解放する事……らしいのだが、その意味や手段はいまいち不明瞭である。
 いずれにしても、放っておいてはトマトが台無しにされる、という事は事実だ。果たしてイブリース・トマトたちは、その牙をカチカチとならし、トマト畑へと突入――。
「むむ、とまれ!」
 することはせず。
 立ちはだかる影に、その足を……ころがりを止めた。
「ふふーん♪ デカいトメーイトウー♪ ……なんての。いやぁ、確かにでかい!」
 影の中の一人……『揺れる豊穣の大地』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は鼻歌交じりで笑みを浮かべた。
 イブリース・トマトたちの前に立ちはだかった八つの影……そう、自由騎士たちだ。
「さて、一応聞いておくがの。ワシらの背後に成っているのは同胞じゃぞ!? ここで暴れるなら、同胞を傷つける事にしかならぬと分からぬか!! 戦うなら、もっと畑の外に来るのじゃ!!」
 畑を守るべく、シノピリカは誘導を試みる。が、イブリース・トマトたちは首を傾げるように身体を傾けた。
「トマト! トマトを守るべく、お前たちはここで倒すトマト!」
 カチカチと、威嚇するように歯を鳴らすイブリース・トマトたち。むぅ、とシノピリカは唸った。
「やはり、こっちの言葉は聞かんようじゃなぁ。通じれば楽じゃったが……」
 とはいえ、それは分っていたことであり、シノピリカも確認してみただけの事だ。そして、次善策も、自由騎士たちはきちんと用意していた。
「ふふ……トマトたちよ、これをごらんなさい」
 と、『戦姫』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)が声をあげた。とん、と取り出したるは、
「トマトー!」
 そう、イブリース・トマトの鳴き声どおり、小さいながら立派な一株のトマトである。いくつかの、真っ赤に熟れたトマトの成るその株は、『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)が先ほど、村の市場にて購入した、新鮮なものだ! 「貴族たる者、代金を支払わずに畑から拝借するというのは避けねばなりません」とは、レオンティーナの言である。
 デボラはその株から、一つをもぎ取り……かぷり、と噛みついた! 口中に広がる、果物のような甘さと、さわやかな酸味! 事件を解決し、トマトを味わうためにと朝食を抜いてきたデボラは思わず、美味しさをに目を細める。一方で、そのあまりにも凄惨な光景に、イブリース・トマトたちは悲鳴のような鳴き声をあげる!
「ふふ……貴方たちにくれてやるトマトなどありません! 全て私達が美味しくいただきます!」
 デボラの笑みに、
「ひどいトマト!」
「踊り食いとは残虐非道トマト!!」
 イブリース・トマトたちの悲鳴!
「こちらをごらんなさい、トマト×3!」
 レオンティーナがびしり、とトマトの株を差し、声をあげた。そしてそこには、トマトの株にサーベルを突きつける、キリ・カーレント(CL3000547)の姿があったのだ。
「おまえ達の同胞を、サラダのように切り刻んで食べずに捨てちゃうぞ……」
 すっ、とサーベルを、トマトの玉のような肌に滑らせると、赤い果汁がすぅ、とその肌を濡らした。美味しそうである。
 自由騎士たちの作戦、それは人質ならぬ野菜質である。トマトを解放する、と喚いているのだから、言葉が通じないにしても、トマトを利用すれば、何らかの注意は引けるだろう。そして実際、それはうまくいったようである。
「トマトー! 何たることをするトマトー!」
「それが嫌なら……」
「こちらについていらっしゃい!」
 キリとレオンティーナが言って、走り出す。完全に注意をひかれたイブリース・トマトたちは、二人を、そして自由騎士たちを追って、ごろごろと畑を後にした。
「野菜質……珍妙な作戦ではあるが、こうもうまくいくとはねぇ」
 ガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533)が走りつつ、独り言ちた。
「ふふ、なんだか悪い人になった気分ですけれどね」
 柔和な笑みを浮かべつつ、『柔和と重厚』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が言う。後ろを見て見れば、必死の形相でこちらを追いかける、イブリース・トマトたちの姿が見えた。ちらり、と畑から失敬したトマトをちらつかせて見せれば、怒りに蒸気したかのように真っ赤に――もともと赤いのだが、さらに真っ赤に――顔を染めながら、イブリース・トマトたちがぶーぶーと吠える。
 その様子が思いのほかに可愛らしく、アンジェリカはくすりと笑った。
「これも知見が広がる、といった所だね。面白い経験だ」
 ふ、と微笑を浮かべるガブリエラ。実際、トマトを人質にトマトを挑発し、トマトに追いかけられる経験と言うのも、なかなか体験できないだろう。
「確かに、そうですね。では、この体験をめでたしめでたしで記憶するためにも……」
「あいつらをやっつけないとね!」
 『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)が笑って、ゴーグルを装着して見せた。
「この辺りなら、周りに被害は出なさそうだよ!」
 ジーニアスの言葉どおり、ここは畑や民家から充分離れた草原である。ここでなら戦えると判断した自由騎士たちは、イブリース・トマトたちへと向けて反転する。
「デカいトマトに負けない小さな巨人! そぉれがスピンキー・フリスキー!!」
 スピンキー・フリスキー(CL3000555)は名乗り口上をあげて、鮮やかにファイティングポーズをとった。合わせ、仲間たちもイブリース・トマトたちを迎撃すべく、武器を構える。
「お前らの言い分も判らんでもねぇけど、迷惑な反抗期は止めさせてもらうべ!」
「トマトー!」
「トマトー!」
 スピンキーの口上に、勢いよくがちがちと歯を鳴らすことで、イブリース・トマトたちは返答とする。そしてそれを合図に、両者の激突は始まったのであった。

●迎撃するデカいトマト
「まずは小手調べさ!」
 ジーニアスはにいっ、と笑みを浮かべると、クラウチングスタートの態勢をとった。そのまま一気に走り出す。走りながら、その身体はより素早く走れるように変貌していった。遺伝子レベルでの改変。
「一撃でつぶれちゃわないでよっ!?」
 叫び、跳ぶ。かざした『蒸気銃剣ブラックレイブン』の黒い刃が、光を受けて鈍く輝いた。落下の勢いも乗せた、己に出せる最高速の一撃――相手は野菜、果たしてどのような手ごたえが待つのか。
 交差した野菜と銃剣。その剣戟は、きぃん、と甲高い音となってあたりに響いた。
「……意外! 結構固いじゃん」
 トマトもトマトで、高質化した『歯』の部分で受けたのであろう。がちがちと歯を鳴らし、
「そんなモノには負けないトマト!」
 と挑発して見せる。
「では……打撃などは、いかがです?」
 言いつつ、アンジェリカが接敵した。掲げるは巨大な十字架。『断罪と救済の十字架』は、その背負いし罪よりははるかに軽いと言えども、圧倒的な重量を誇る――不敬を承知で言うならば、巨大な鈍器である。
 それを軽々と振り回しながら、アンジェリカはクロスをトマトへと叩きつけた。
「トマトーっ!」
 悲鳴を上げながら、トマトAがころころと転がる。
「おのれーっ、負けるなトマトー!」
「こういう時は、丸い自分の身体が恨めしいトマトね!」
 BとCがそれぞれ奮起の声をあげた。
「うなーっ! 負けないぞ! うなーっ!」
 負けじと吠え猛るのはスピンキーである。その咆哮は、衝撃となってトマトへと突き刺さり、その実を確かにたじろがせる。
「やれやれ、まったく珍妙な戦いだが……」
 ガブリエラが呟き、解き放つは自然より抽出した魔力。それを回復の術式へと編み込み、仲間たちへと降り注がせる。
「面白いじゃぁないか。さぁ、正念場だ。攻めつつ……無理はするんじゃぁないぞ」
「……は、はい……っ!」
 答えるキリのローブ、その紋様がほの明るい魔力の光となって走った。キリは瞬時にローブを己が手に巻き付け、ローブそのものを武器として力強く殴りつける。ばちり、という、果肉が爆ぜたような感覚。やった! 一瞬、そう思ったものの、ギラリとぎらつくトマトの瞳は、まだ消えうせていない。
 どん、と言う衝撃が、キリの身体に突き抜けた。反撃された、と思った瞬間にはキリの身体は宙を舞っていたが、
「落ち着いて、体勢を立て直すんじゃ! そうすれば降りられる!」
 シノピリカは叫びつつ、追撃に移ろうとしていたトマトを力強くぶん殴って、それを阻止する。キリは胸中で頷きつつ、空中で姿勢を立て直し、衝撃を殺しつつ着地。
 ドキドキと胸が早鐘を討つ。これが戦い。なれなくては。もっと強くならなくては。今この瞬間にも、一秒一瞬の間にも。
「無事かい!?」
 ガブリエラの問いに、
「大丈夫です、まだ、やれます!」
 いつか目標に到達するまで――走り続けなくては。
「舐めるなトマトーっ!!」
 トマトたちが、真っ赤なトマト汁を吹き出す。大砲の砲撃のように重く、激しい数流が、自由騎士たちへと突き刺さった。
「わぷっ……もう、ちょっと美味しいのが悔しいですね……!」
 デボラが口元をペロリ、と舐めつつ、シールドを掲げて全力突進のお返しをお見舞いする。たまらず吹っ飛んだトマトが、
「ぐわーっ、トマトー!」
 悲鳴を上げて転がって、近くにあった木に叩きつけられた。そのままきゅう、と鳴くや、動かなくなる。
「もう、お洋服が台無しですわ! 自由騎士のお仕事って、大変なのですわね……」
 嘆きつつ、レオンティーナの『戦乙女の弓』より放たれた矢が、トマトの頭頂部に突き刺さる。
「わーっ、矢トマトになってしまうトマト!」
「これだけ大きいと、狙うのも簡単ですわね。……ところで、これ一体で何人前のパスターソースができるのかしら?」
 ふむふむ、と小首をかしげるレオンティーナ。相槌を打つように、ジーニアスは、
「うーん、おいらたちで食べるとして……一週間……一か月……?」
 答えつつ、矢の突き刺さったトマトへと黒と白、二振りの機械銃剣の刃を振るった。これにはトマトもたまらない。高速の斬撃を受けたトマトは、トマト汁を吹き出しながら転がり、くるりと空を向いて動かなくなる。
「トマトー! 仲間たちがーっ! 許さないトマトーっ!」
 残るトマトが悲鳴と、怒りの声をあげるも、その程度で自由騎士たちを怯ませることはできない。
「お気持ちはわかりますが、あなた達の行いは罪深き事」
 残るトマトの前に、アンジェリカが立ちはだかった。柔和な笑みは、トマトから見たら恐ろしいものに見えただろうか。それは、悪事を働いた子供が、これから説教を始める大人を見るのと様子であっただろう。トマトの行おうとしたことは、子供のいたずらでは済まされないことなのだが。
「どうぞ思う存分――罪を悔いて下さいましね?」
 ぶん、と言う音と共に、手にした十字架が振るわれる。トマトにクリーンヒットした十字架は、トマトを激しく吹き飛ばした。
「む、無念トマトーっ!」
 悲鳴を上げながらゴロゴロと転がり、近くにあった岩にどかん、と叩きつけられる。きゅう、とトマトが意識を手放せば、そこに在ったのは、浄化され、元の姿を取り戻した、三つのみずみずしいトマトが転がる姿であったのだ。

●デカいトマト討伐の報酬
「申し訳ございません、湯あみまでさせてもらって……」
 恐縮そうに言うデボラに、村人は笑いかけた。
「いや、村の救世主様に、さすがに汚れたままってのはな」
「いえ、正当な対価は必要ですわ。入湯料はおいくらですの?」
 返すのは、湯上りで服も取り換えたレオンティーナである。村人は困ったような顔をしながら、
「いや、温泉じゃないんだから……仕事の内だと思ってくれよ」
 と返して、姿を消した。些か困惑した表情のレオンティーナであったが、まぁ、そう言うものか、と気を取り直した。厚意に甘える、という事もたまには必要かもしれない。
「デボラさん……どうかなさいまして?」
 ふと、困ったような顔をしていたデボラに気づいたレオンティーナが、声をかける。
「いえ……私はお風呂だけじゃなく、技師の手助けも必要だなぁ、と……」
 自身の身体を差しながら、デボラが言う。
「ううん……怒られるんだろうなぁ……」
「まぁ、名誉の負傷ですよ」
 笑って答えたのは、アンジェリカであった。頬に手をやり、穏やかな微笑を浮かべているアンジェリカもまた、湯上りである。
「それで許してもらえればいいんですけどね……」
 苦笑するデボラ。悩みの種は、尽きなさそうだ。
「さて、この後はお待ちかねのトマトパーティじゃな!」
 うきうきとした様子で言うのは、シノピリカである。依頼の報酬、その一つが、捕れたてのトマトを、様々な料理で振る舞ってくれる、と言う物だ。
「ここからでも良い匂いがしますね。どのような料理があるのでしょうか?」
 嬉しそうに言うアンジェリカ。野菜質など、戦いに利用させてもらったトマトも、美味しく頂くために料理素材として提供している。野菜とて命あるもの、粗末にはできないのである。
「ワシも故郷でよく食べたものよ。トマトスープに、トマトシチューに、トマトリゾット……なんか煮込み料理ばっかりじゃな?」
 小首をかしげるシノピリカ。談笑などを交えつつ、一行は料理の用意されていた、村の集会場へと向かった。
「うなー、おそい、お腹すいたぞー」
 むぅ、と口を膨らませて、スピンキーが声をあげた。先に湯あみを済ませたメンバーは、すでに待機しているようだ。
「まぁまぁ、オンナノヒトは用意に時間がかかるんだぜ?」
 宥めるように言うジーニアス。そんなジーニアスへ、
「おや、私とカーレント女史はオンナノヒトではない、とでも?」
 一足先に準備を終え、席についていたガブリエラは意地悪気に笑う。
「そ、そんなこと言ってないって!」
 慌てて否定するジーニアスへ、ガブリエラはくっくっと笑った。
「わ、私は……好きで準備の手伝いをしただけです、から」
 困ったような表情で、苦笑いを浮かべるキリ。キリは一足早く準備を終えて、住民たちに混ざり、トマト料理の準備を手伝っていたようだ。
「おやおや、こういう時にはしっかりと主張しないと損だぞ、カーレント君」
「もう、悪かったよ、勘弁してくれよー!」
 ジーニアスがぺこぺこと頭を下げる様子に、仲間達からも笑いが浮かぶ。
「それはそれとして……幽霊列車の目撃者はいなかったみたいだよ」
 ジーニアスが言うのへ、仲間達は頷いた。イブリース化の原因は、やはり姿を見せずに消え去ったようだった。
 それから程なくして、自由騎士たちのついたテーブルの上に、様々なトマト料理が姿を見せた。
 サラダや丸のままはもちろん、トマトジュースにリゾット、パスタ、スープ。トマトのシャーベットなどのデザート類も充実している。
「やったー! おいしそうだ! いただきます!」
 ぱん、と勢い良く手を合わせて、スピンキーが声をあげる。それを合図に、楽しい食事の時間は始まった。
「このトマトは、ナイフで切ればよろしいのかしら……え? かぶりつきますの?」
 丸ごとのトマトを前に、目を丸くするレオンティーナ。
「そうそう、こうやって……がぶっと」
 と、ジーニアスが実践して見せた。手元にこぼれた果汁をペロリと舐め取り、
「うん、やっぱりこうやって食べるのが最高だ!」
 と笑って見せる。
 むむ、と唸りつつ、レオンティーナもえいっ、とかぶりついて見せる。今度は、その瑞々しさに目を丸くするのであった。
「同じトマトと言えど、種類によって味は違うのですね」
 ゆっくりとスープを味わいながら、アンジェリカが言った。今回自由騎士たちが守った畑のトマトは、いわゆるフルーツトマトと呼ばれる甘いタイプのものだが、酸味のあるタイプのトマトも作っているようで、料理の種類によって使い分けている様子だ。
「トマトも奥が深いという事だな」
 深く頷きつつ、ガブリエラもまたゆっくりと、スープを口に運んだ。
「本当……美味しい、です」
 キリもまた、楽し気に、そう言った。キリがどこかうきうきとした気持ちでいるのは、料理のおいしさ以上に、和やかな食事風景のせいもあるのだろう。
「トマトジャム、トマトアイス……まだまだ食い足りんのう」
 バゲットにジャムを塗りつつ、シノピリカが言うのへ、給仕をしていた村人が言う。
「任せてくれ! 今日は飽きるまで食っててくれよな!」
「ふふ、では、お言葉に甘えましょうか」
 にっこりと笑って、デボラは頷くのであった。

 自由騎士たちの活躍により、農村の危機は除かれた。
 報酬であるささやかな宴は、自由騎士たちの心と体を存分に癒す事だろう。
 様々な思いを抱きつつ、今は山盛りのトマト料理に、舌鼓を打つ自由騎士たちであった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

FL送付済