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興奮とは如何なる状態をや?

●
「あ、いたいた。おーいおーい!」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)が街を散策していた自由騎士に声を掛ける。
「ねぇねぇ、キミ興奮おさえられる?」
「……はぁ!?」
意味がわからない。
「興奮って言っても色々あるよね。……ちょっと厄介な幻想種が現れちゃってサ。協力してくれない?」
興奮を抑えるとは……一体どういうことなのか。
こうしてはてな顔のままの自由騎士たちはヨアヒムに引きずられるように現場へと向かったのだった。
●
「くふふふふ……きたきた。こんどのにんげんはどんなすがたをみせてくれるのかなー?」
「あ、いたいた。おーいおーい!」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)が街を散策していた自由騎士に声を掛ける。
「ねぇねぇ、キミ興奮おさえられる?」
「……はぁ!?」
意味がわからない。
「興奮って言っても色々あるよね。……ちょっと厄介な幻想種が現れちゃってサ。協力してくれない?」
興奮を抑えるとは……一体どういうことなのか。
こうしてはてな顔のままの自由騎士たちはヨアヒムに引きずられるように現場へと向かったのだった。
●
「くふふふふ……きたきた。こんどのにんげんはどんなすがたをみせてくれるのかなー?」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.1人でも状況に興奮しない
2.幻想種ブーシューにお仕置きをする
2.幻想種ブーシューにお仕置きをする
麺です。麺の一番の興奮は呪文を唱えたあとの着丼の瞬間です。
自由騎士達がどんな事、シチュ、言葉で興奮するのか見てみたい。
ええ、ただそれだけの事。でもこれはきっと、重要なこと。
●ロケーション
とある森の中。ヨアヒムの説明どおりに道を進むとそれは現れ、自由騎士たちをそれぞれ特異な空間へと引きずり込みます。(お互いの同意があればキャラクター同士で同じ空間に入る事も可能です)
興奮にも様々な理由があります。怒り、高まり、欲情等々人によって様々違う状況が考えられるでしょう。
その自分にとって一番の興奮が引き起こされる、シチュや相手、言動などが目の前に繰り広げられます。
その状況に対して、どのような対処で打ち勝ったのか、もしくは興奮の渦に取り込まれてしまったのかを情熱のままに書きなぐって麺に伝えてください。
1人でも興奮せずに空間を抜け、ブーシューにお仕置きをすれば依頼は成功です。
★この依頼のプレイングの書き方
先ずは自身のキャラクターが取り込まれる空間の状況をご記載ください。
場所、人、シチュエーション、言動など。(同意の無い他の自由騎士や、麺担当のNPC以外などの場合はぼかされる場合があります)
そしてその状況に対してどう抗ったのか、もしくは打ち負けたのかを記載してください。
葛藤する心理描写などが沢山ありますと麺はそのキャラクターをより理解でき、小躍りいたします。
1人でも興奮しなければ依頼は成功します。興奮したい方が多そうであれば興奮しない役を一人だけ決めてしまうのも良いかもしれません。
シチュエーションを楽しんでいただければと思います。
●敵
・幻想種ブーシュー
悪戯大好きな小型のリスのような幻想種。不思議な空間を作り出し、対象者にとって尤も興奮するであろう状況を作り出す。その状況に興奮してしまった場合、その空間からの脱出は自力では困難となる。ただし空間を抜けてしまえば、軽く怒るだけでもしゅんとしてしまうほど弱い存在です。
ご参加お待ちしております。
自由騎士達がどんな事、シチュ、言葉で興奮するのか見てみたい。
ええ、ただそれだけの事。でもこれはきっと、重要なこと。
●ロケーション
とある森の中。ヨアヒムの説明どおりに道を進むとそれは現れ、自由騎士たちをそれぞれ特異な空間へと引きずり込みます。(お互いの同意があればキャラクター同士で同じ空間に入る事も可能です)
興奮にも様々な理由があります。怒り、高まり、欲情等々人によって様々違う状況が考えられるでしょう。
その自分にとって一番の興奮が引き起こされる、シチュや相手、言動などが目の前に繰り広げられます。
その状況に対して、どのような対処で打ち勝ったのか、もしくは興奮の渦に取り込まれてしまったのかを情熱のままに書きなぐって麺に伝えてください。
1人でも興奮せずに空間を抜け、ブーシューにお仕置きをすれば依頼は成功です。
★この依頼のプレイングの書き方
先ずは自身のキャラクターが取り込まれる空間の状況をご記載ください。
場所、人、シチュエーション、言動など。(同意の無い他の自由騎士や、麺担当のNPC以外などの場合はぼかされる場合があります)
そしてその状況に対してどう抗ったのか、もしくは打ち負けたのかを記載してください。
葛藤する心理描写などが沢山ありますと麺はそのキャラクターをより理解でき、小躍りいたします。
1人でも興奮しなければ依頼は成功します。興奮したい方が多そうであれば興奮しない役を一人だけ決めてしまうのも良いかもしれません。
シチュエーションを楽しんでいただければと思います。
●敵
・幻想種ブーシュー
悪戯大好きな小型のリスのような幻想種。不思議な空間を作り出し、対象者にとって尤も興奮するであろう状況を作り出す。その状況に興奮してしまった場合、その空間からの脱出は自力では困難となる。ただし空間を抜けてしまえば、軽く怒るだけでもしゅんとしてしまうほど弱い存在です。
ご参加お待ちしております。
状態
完了
完了
報酬マテリア
5個
1個
1個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2019年05月19日
2019年05月19日
†メイン参加者 6人†
●ケース1 『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)
(うふふ。ローラはブーシューの空間で興奮しちゃうよ~♪ あっ、いやいや別に油断したとかローラがちょろいとかそーゆーのじゃないからね? えーっと、ほら。アレだし。……陽動?)
銀の潮騒亭の一室。深夜。ローラは宿のお客と2人きりの時間を過ごしていた。
これから始まるであろう甘う濃密な時間。それを予感させる空気感がそこにはあった。
(そうそう。ローラが興奮するのってゆったらコレしかないよね~、ウフフ♡)
「ロ、ローラちゃん……」
隣に座る男はそっとローラの肩に手を添えた。
「そんなに焦らないで、Mタロー(仮名)さん。ローラだって……ほら?」
そう言うとローラは男の手を、すっかり硬くなった××へ優しく導く。
「す、すごい……こんなに……」
「経験がちがうもん♡」
(相手を××させても自分は内心冷静にってコもいるケド、ローラ的にはちょっと違うんだよねぇー。だって××しきったカラダでなくっちゃ、お客さんを本気で××させられないと思うの。なによりぃ……お互いメチャクチャに××しちゃう方が、××いもんね♡)
「お客さんはどちらから?」
「あ、ああ? ワタシは──」
世間話をしながらソフトタッチを繰り返し、お客の心と身体の緊張を解していくローラ。その巧みな話術と触るか触らないかという絶妙な指使いは瞬く間に男を虜にしていく。男の身体を丹念に弄る事で、徐々に熱を帯びていくローラの胸元を汗が伝う。
「どう……? 気持ちいい?」
「ああ……最っ高……」
ローラの動作に合わせて軋むベッド。この上ない悦楽の表情を浮かべる男。
(あ、でもでもぉ。ローラだってこれでもいちおープロだからね? ××の×に××××と××に××××まんまー、ってゆーのはコケンに関わるんだよ~?)
「あーそこ! すごく気持ちいいよ……」
「ここがいいの?」
ローラは男の身体を指先でなぞりながら悪戯っぽく笑う。
「じゃぁそろそろ……」
ローラは最後の仕上げといわんばかりに全身を使って男に奉仕をする。
「アーーーーーーーーーーッ!!!」
楽しい時間は有限である。いつかは終わりが来るものだ。
全てを解された男が極上の心地よさを感じながら深い眠りにつくと、ローラは涼しい顔で部屋を出る。
(え? これがローラの興奮するシチュエーションなのって? ……だってローラ、こうしてオトコを××しきった時が一番興奮しちゃうの♡)
ローラの夜は終わらない。
以上出張マッサージの現場よりお送りしました。
ええ、マッサージですよ。マッサージ。マッサージですって。
●ケース2 李 飛龍(CL3000545)
(興奮を抑えられるか? よくわかんねぇけど精神修行ってやつにはなりそうだな!)
飛龍は常々師匠に言われていた事があった。身体だけでなく心も鍛えよ、と。
興奮とは感情の中でもとかくコントロールの効き難いもの。突発的な衝動に近い。それに抗う経験が出来るなら──飛龍は自ら志願しこの場に来たのだった。
そして今飛龍の前に広がるのは見晴らしの良い草原。目線を先に向けると底には男が立っていた。その佇まいからもわかる、強敵と思しき男。見渡す限りの草原には飛龍と男以外に誰もいない。ドクン。と飛龍の胸が大きく鼓動した。
その男は飛龍が行こうとする道を塞ぐように待ち構えている。
二人の目線がぶつかる。ひりつく空気。わずかばかりの時間の後、双方の拳が交わるのは確実と思えるシチュエーション。
(うおーーーっ! これはアガる!! なるほど確かにおれっち好みのシチュエーションだ。……事前に聞かれてなきゃテンションアゲアゲでバトル楽しんじゃうとこだったぜ)
強敵との一騎打ち。これに心躍るのは男子の本懐でもあろう。
「さーて、どうすっかねぇ?」
相手さんも律儀に挑発してきてるが乗るわけにもいかねぇし……。飛龍は躍る心を必死に抑えながら師匠の言葉を思い出す。
『お前はどんな相手に対しても攻めっ気が強すぎる。先ずは相手をしっかりと観察するのだ。相手の力量を見極め、それにあった戦略を立てる。落ち着いて自分を見失わない事が大事なのだ──』
(わかってるよ、師匠!)
変わらずに鼓動は高鳴っている。躍る心も変わらない。だが不思議と師匠の言葉を思い出した飛龍の心は、みるみる冷静さを取り戻していく。
(ここは落ち着いて相手を観察して……よし、此処は相手が攻撃してくるところをカウンター一閃で……って全然攻めてこねぇな)
目前に立つ男は大胆不敵ににやりと嗤うと構えを崩すことも無く、臨戦態勢のまま動かない。
双方動けず時間だけが過ぎていく。
(こっちから手を出すまでは動かないつもりか?)
「それなら……」
飛龍が低く構え、男もまた飛龍からの攻撃に備える体勢をとる。場に緊張が走ったまさにその時。
「とりゃぁーーーー!!!」
飛龍は叫ぶと男から遠ざかるように一気にダッシュした。
(こんだけ広い草原なら迂回して先にいくのもできそうだ、不本意だが……逃げる!)
よもや戦わないという選択を取られるとは考えてもいなかったのだろう。男は構えを解くと追う様子も無く立ち尽くす。飛龍はまんまと興奮最高潮の場から逃走する事に成功したのだ。
「やっぱり……いざというときは師匠の教えだぜっ」
飛龍思い出したのはやはり師の言葉。
『時には戦わない勇気も大事だ』
こうして飛龍は空間を脱出することに成功したのだった。
●ケース3 『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
(なるほど、興奮を見せる…体験させる?まぁその辺りは実際に見てからの楽しみか)
「しかしお金の匂いがするなぁ?(笑顔)」
ウェルスの目がきらりと光る。それは……自由騎士の目では無い。商人の目だ!
マネーの匂いを嗅ぎつけたもっふもふのクマは意気揚々と空間へと吸い込まれていった。
(さぁて実験だ)
気付くとウェルスがいたのは白くて光と清潔感あふれる空間。そこには天高く積まれた金貨や札束、金銀財宝の数々。
そして──沢山の扇情的な格好の美獣達。ウェルスの好みと思われるケモノビトの美女がずらりと並んでウェルスに熱い視線を送っている。美少女から美魔女まで。年齢層も幅広い。だがしっかり年齢下限が設定されている辺りわかっている。そう、ウェルスは違いがわかるクマなのだ。麺も気兼ねなく描写できると胸をなでおろした。
(ヒェッ。おっといかんいかん)
ウェルスはぱちんと頬を叩くと、自らのスキル冷静沈着で、冷静を沈着させる。え? 何を沈着させたのかって? そりゃぁ冷静だ。冷静に決まっている。他に沈着させるものがあるものか。
(ま、何しろ上手くいけばこの空間なんて、後でいくらでも再現できるんだからな)
何せウェルスの予定では、この酒池肉林の状況は今後いつでも味わう事が出来るのだ。
そうして極めて冷静を保ちながら、ウェルスは美女達を被写体に念写のイメージを積み重ねていく。
(まぁ『念のため』、だ)
良い判断だよウェルス君。だって世の中は世知辛い。そう都合のいい方向ばかりには向かわないのが人生なのだ。
実際この『念のため』はあとでウェルスを悶えさせる。もっと堪能しておけばよかった──と。
(そして次は──)
そこにはボイン(死語)なエミル嬢の姿。細身ではあるがしっかりと主張した双丘。
確かにウェルスが希望した姿ではある。だが「本物がどうなのか」は今のウェルスには判断しようがない。なぜなら顔こそ見せたものの実物のエミルは全身をすっぽりローブで隠しており、その体型は見せていないからだ。
それに……いいのかい? ウェルス君。君が腰にぶら下げているそのお守り袋。うさぎのあの娘からもらったものじゃぁ無いのかい?
ふふふ、冗談さ。良いのだよ……男ってのはそういうものさ。いつまでもロマンを求め、追い続けるものなのさ。麺はウェルス2019(にいまるいちきゅう)を応援しています。オフィシャルパートナーでは無いけれども。
そしてウェルスは空間を抜ける。目の前にはブーシュー。空間を破られその瞳は怯えきっている。
「おっと落ち着け、お前に話があるんだが──(グェヘヘヘ、コイツぁ金の成る木だぜぇ)」
ウェルスの持ちかけた商談はブーシューにどう響いたのだろうか。
それについてはまた別の機会で語られる……かもしれない。
●ケース4 『傲慢じゃない(言質とりました)』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
ボルカスは喜びに打ち震えていた。それはもう心の底から。
ずっと欲してきた皆の反応。ボルカスが望んだ世界がそこにはあった。
ボルカスは軍馬メアリに乗って街を闊歩する。
「な、なんと傲慢な馬使い!!」
ボルカスが立ち止まる。
「うわぁ、なんて傲慢な止まり方だ!!」
食堂に入り飯を食らうボルカス。
「すごい……こんなにも傲慢な食べっぷりは見た事が無い!!」
何をしても傲慢。どこへ行こうと傲慢。
「傲慢!! 傲慢!! 傲慢!! 傲慢!!」
もはや息をするだけでも、傲慢ともてはやされる(?)ボルカス。そこはもう傲慢の坩堝。
「なあ、メアリ(軍馬)……。俺ちょっと思ったんだが……」
ボルカスが愛馬に語りかける。
「さっきまでの世界が夢で、こっちが現実という可能性はないか!? ……ないかぁっ!!」
あれ? ボルカスさんが興奮しすぎておかしな事を言い始めましたよ。
「いや、常日頃おかしいと思っていたのだよ。とくに最近、私が傲慢として扱われる機会があまりにも少なくないか? いや、むしろ殆ど無いではないか」
(それがこの場ではどうだ! 私がプチフールを食べるだろ? 任務中、真面目に戦っている仲間もいるのにだ!!)
「なんと言う傲慢っぷり……」
「あの方の傲慢がこれほどとは……」
「まさに傲慢の中の傲慢!」
「傲慢!! 傲慢!!」
(ほら、聞こえるだろう、私の傲慢さに恐れおののく声が!! すばらしい、やはりコレが世界の本来の姿じゃあないか……!)
思えばボルカスの傲慢への道は苦労の連続であった。なんか、アイツ意外と良い人なんですよ的な目で見られて、自分は傲慢に向いてないんじゃないかと苦悩する夜もあった。だが、その葛藤は、傲慢を追い求めてきた私の道のりは、決して無駄ではなかったんだ……!!
(鼓動が煩いぐらいに高鳴っている……私は今、モーレツに傲慢(こうふん)している!!)
ボルカスはなんともいえぬ達成感を感じていた。その表情は成し遂げた男の顔。
だがその達成感に待ったがかかる。現実に戻るときがきたのだ。
「ハハ、メアリよ、私はこれからも傲慢道を……おいメアリ、顔をそんなにも近づけて何を……」
不意に愛馬メアリがボルカスの頭に噛み付いた。
「痛たたたたたた!!? か、噛むなメアリ、なんで私の頭に噛みつい──」
そしてボルカスは現実(夢?)の世界へ舞い戻る。どうやら他の者が無事空間を抜けたようだ。
やはりこちらが現実なのか……と肩を落とすボルカス。
頑張れボルカス! 負けるなボルカス! いつか傲慢といわれるその日まで──。
●ケース5 『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)
この世界には本人の意思とは全く別の存在の意思というものがある。その意思は時としてその人物に思いも寄らぬ行動や出来事が起こる事を望む。そう、テオドールの場合まさにその存在の意思が大きく関与したのだ。
その存在はかく語りき。
──ほら彼も男性ですやん? 相手は可愛い婚約者ですやん? 幼な妻ですやん? それしか無いやん?
それしか無い。かどうかは純粋で初心で奥手な麺にはわからない。わかるはずも無い。わからないかもしれない。わからない事にしておこう。
では彼の葛藤の一部始終を余すところ無く見ていただこう。
|>再生
(ここは自室だな……一体どうして此処に)
テオドールがゆっくりと目を開けるとそこは屋敷の自室であった。時刻はすでに深夜近くであろうか。風に揺れる木々の音以外何も聞こえない。
暗闇に目が慣れてきたテオドールは人の気配に気付く。
「……カタリーナ?」
カタリーナ。妻に先立たれ寡夫となったテオドールがさる縁により、婚約することとなったメイマール伯爵の娘。
窓からさす月明かりに照らされたカタリーナは穏やかに笑っていた。
長く美しい白銀の髪は風に揺れ、吸い込まれるような今紫の潤んだ瞳はテオドールを見つめる。幾分幼さが残る肢体に身に着けているのは薄いシルクのネグリジェのみ。動く度にカタリーナの柔らかな部分が揺れる。彼女が何を求めているかは、明白だった。
「いや、駄目だ。まだ婚前だろう? 今までそんな風に振る舞うように育てられた訳ではあるまい」
そんなテオドールの言葉を遮るように、請うような表情を見せながらカタリーナはベッドで休むテオドールへ近づいていく。ベッドが軋む音が響く。
「嫌いな訳ではないぞ、嫌な訳ではないぞ。ただ物事には順番というものがあろう。だから駄目だと言っている」
テオドールの身体にカタリーナがそっと触れる。火照りを感じさせるその手の温かみはテオドールの理性に揺さぶりを掛ける。だが……彼の心はすぅと落ち着きを取り戻していく。彼が空間に入る前に自己に施した冷静沈着の決意。それが今、テオドールの最後の砦となりカタリーナの誘惑に抗い続けさせていた。
(まだ汚す訳にはいかない。欲に流られれば示しがつかない。とはいえ、それだけではすむまい。どうにか彼女の気を治めなければ……)
テオドールに添えられた手。その手を握り締めるとテオドールはカタリーナをふいに抱き寄せる。
「カタリーナ。焦る必要はあるまい。いずれは夫婦となるのだから。私は約束を違わない。必ず君を妻として迎える。安心して欲しい」
真剣な表情でカタリーナを見つめるテオドールはそう言うとカタリーナを抱きしめる。
そんなテオドールに対しカタリーナは、どこか驚いた様な、それでいて嬉しそうな表情を見せたのだった。
「それにしても何故急にこんな事を──」
気付けば小さな寝息が聞こえていた。
「ここは……?」
テオドールは空間を抜ける。目の前には小さなリスのような幻想種。
「これは君の仕業だな。悪戯というのは潔さと引き際も肝心だ。我々が勝ったのだ、他の者も開放してくれないか」
テオドールは優しくブーシューに語りかけるのだった。
●ケース6 『艶師』蔡 狼華(CL3000451)
「興奮さしてくれはるんやろ? うちをどんな風に興奮さしてくれはるんか楽しみやわぁ。ちょっとやそっとじゃ靡かへんよ?」
空間に入る前。狼華には余裕があった。興奮って……どうせいつものアレの事やろ──。狼華は小さくため息をつく。
だが狼華はその空間で再会してしまう。身も心もすべてを捧げ、陶酔し、そして……心底憎んだ存在に。
忘れていた記憶。忘れようとしていた記憶。甦るその記憶の中から鮮烈に甦るある男の面影。
気付けば狼華の前には1人の男が立っていた。
その姿を見たとたん……狼華の余裕は吹き飛んだ。心はかき乱され、胸が張り裂けんばかりに苦しくなる。思わず胸を押さえ、蹲る狼華。
その男は笑っている。
だが笑っているのにまるで靄がかかったかのように顔がはっきりしない。
その男は笑っている。
不精の一言では済まされないような、一見汚らしく乱れた容姿。
だが狼華は知っている。その男が整えればそれはそれは映える美丈夫である事を。
その男は笑っている。
切れ長の目、貼り付けたような笑みの下に全く別の表情を持っている事を。
狐の様に……否、蛇の様に化かして絡めて心を捉える。そんな男。
そして──僕が唯一本気で愛した男。
だけどその男が与えてくれたものは全てが、偽りだった。
だけど……真実の欠片も無いその男の本質を知っても尚、僕は……。狼華は血が滲むほど唇を噛みしめる。
「殺してやる!!!!!!!」
(そう、全てが嘘なんだ。この男の全ては嘘だ。甘い言葉も熱を帯びた指先も)
「許さない、許さない、許さないっ!!!!」
その男は笑っている。
狼華がどれだけ憎しみの刃で傷つけようとも。
自身でもわかっている。その繰り出した剣技。その一連の動きも男から得たものである事を。
全部嘘。何もかも。この男の世界に本当の事など何も無い。
──でも……その嘘さえも、まだ僕は愛している……の?
男は笑っている。
──慰めてよ。あんたが僕に教えたんだ。
男は笑っている。
──受け入れる術も、それを悦びに変える事も。
男は笑っ──
斬──ッ!! 狼華の剣撃が男のシルエットを二つに分かつ。そして──
狼華は落ちたモノを優しく両手で抱えると……そっと口づけた。
──僕にこんな酷い事をしておいて、こんなにあっさり死なないでよ大哥……。
「……っ!?」
気付けば狼華は元の世界にいた。誰かが解除に成功したのだろう。
呆けたように立ち尽くす狼華。未だ興奮冷めやらぬその身は小刻みに震えていた。
自身を抱きしめるように両腕で肩を抱く狼華。
確かに興奮はした。姿を見ただけで身体が疼いた。
愛して、愛して、愛して、そして憎んだ男。もう二度と思い出す事も無いと思っていた最愛で……最憎の男。
「……何が興奮や……胸くそ悪いもん見せよってからに!」
死する事で永遠の存在となった男。狼華の心は未だ囚われ続けている。
●そして
ブーシューはこってり絞られ、しゅんとして森の奥へ帰っていった。
これでしばらくは空間が作られることも無いだろう。
興奮とは。心躍るもの。心乱されるもの。そして──
(うふふ。ローラはブーシューの空間で興奮しちゃうよ~♪ あっ、いやいや別に油断したとかローラがちょろいとかそーゆーのじゃないからね? えーっと、ほら。アレだし。……陽動?)
銀の潮騒亭の一室。深夜。ローラは宿のお客と2人きりの時間を過ごしていた。
これから始まるであろう甘う濃密な時間。それを予感させる空気感がそこにはあった。
(そうそう。ローラが興奮するのってゆったらコレしかないよね~、ウフフ♡)
「ロ、ローラちゃん……」
隣に座る男はそっとローラの肩に手を添えた。
「そんなに焦らないで、Mタロー(仮名)さん。ローラだって……ほら?」
そう言うとローラは男の手を、すっかり硬くなった××へ優しく導く。
「す、すごい……こんなに……」
「経験がちがうもん♡」
(相手を××させても自分は内心冷静にってコもいるケド、ローラ的にはちょっと違うんだよねぇー。だって××しきったカラダでなくっちゃ、お客さんを本気で××させられないと思うの。なによりぃ……お互いメチャクチャに××しちゃう方が、××いもんね♡)
「お客さんはどちらから?」
「あ、ああ? ワタシは──」
世間話をしながらソフトタッチを繰り返し、お客の心と身体の緊張を解していくローラ。その巧みな話術と触るか触らないかという絶妙な指使いは瞬く間に男を虜にしていく。男の身体を丹念に弄る事で、徐々に熱を帯びていくローラの胸元を汗が伝う。
「どう……? 気持ちいい?」
「ああ……最っ高……」
ローラの動作に合わせて軋むベッド。この上ない悦楽の表情を浮かべる男。
(あ、でもでもぉ。ローラだってこれでもいちおープロだからね? ××の×に××××と××に××××まんまー、ってゆーのはコケンに関わるんだよ~?)
「あーそこ! すごく気持ちいいよ……」
「ここがいいの?」
ローラは男の身体を指先でなぞりながら悪戯っぽく笑う。
「じゃぁそろそろ……」
ローラは最後の仕上げといわんばかりに全身を使って男に奉仕をする。
「アーーーーーーーーーーッ!!!」
楽しい時間は有限である。いつかは終わりが来るものだ。
全てを解された男が極上の心地よさを感じながら深い眠りにつくと、ローラは涼しい顔で部屋を出る。
(え? これがローラの興奮するシチュエーションなのって? ……だってローラ、こうしてオトコを××しきった時が一番興奮しちゃうの♡)
ローラの夜は終わらない。
以上出張マッサージの現場よりお送りしました。
ええ、マッサージですよ。マッサージ。マッサージですって。
●ケース2 李 飛龍(CL3000545)
(興奮を抑えられるか? よくわかんねぇけど精神修行ってやつにはなりそうだな!)
飛龍は常々師匠に言われていた事があった。身体だけでなく心も鍛えよ、と。
興奮とは感情の中でもとかくコントロールの効き難いもの。突発的な衝動に近い。それに抗う経験が出来るなら──飛龍は自ら志願しこの場に来たのだった。
そして今飛龍の前に広がるのは見晴らしの良い草原。目線を先に向けると底には男が立っていた。その佇まいからもわかる、強敵と思しき男。見渡す限りの草原には飛龍と男以外に誰もいない。ドクン。と飛龍の胸が大きく鼓動した。
その男は飛龍が行こうとする道を塞ぐように待ち構えている。
二人の目線がぶつかる。ひりつく空気。わずかばかりの時間の後、双方の拳が交わるのは確実と思えるシチュエーション。
(うおーーーっ! これはアガる!! なるほど確かにおれっち好みのシチュエーションだ。……事前に聞かれてなきゃテンションアゲアゲでバトル楽しんじゃうとこだったぜ)
強敵との一騎打ち。これに心躍るのは男子の本懐でもあろう。
「さーて、どうすっかねぇ?」
相手さんも律儀に挑発してきてるが乗るわけにもいかねぇし……。飛龍は躍る心を必死に抑えながら師匠の言葉を思い出す。
『お前はどんな相手に対しても攻めっ気が強すぎる。先ずは相手をしっかりと観察するのだ。相手の力量を見極め、それにあった戦略を立てる。落ち着いて自分を見失わない事が大事なのだ──』
(わかってるよ、師匠!)
変わらずに鼓動は高鳴っている。躍る心も変わらない。だが不思議と師匠の言葉を思い出した飛龍の心は、みるみる冷静さを取り戻していく。
(ここは落ち着いて相手を観察して……よし、此処は相手が攻撃してくるところをカウンター一閃で……って全然攻めてこねぇな)
目前に立つ男は大胆不敵ににやりと嗤うと構えを崩すことも無く、臨戦態勢のまま動かない。
双方動けず時間だけが過ぎていく。
(こっちから手を出すまでは動かないつもりか?)
「それなら……」
飛龍が低く構え、男もまた飛龍からの攻撃に備える体勢をとる。場に緊張が走ったまさにその時。
「とりゃぁーーーー!!!」
飛龍は叫ぶと男から遠ざかるように一気にダッシュした。
(こんだけ広い草原なら迂回して先にいくのもできそうだ、不本意だが……逃げる!)
よもや戦わないという選択を取られるとは考えてもいなかったのだろう。男は構えを解くと追う様子も無く立ち尽くす。飛龍はまんまと興奮最高潮の場から逃走する事に成功したのだ。
「やっぱり……いざというときは師匠の教えだぜっ」
飛龍思い出したのはやはり師の言葉。
『時には戦わない勇気も大事だ』
こうして飛龍は空間を脱出することに成功したのだった。
●ケース3 『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
(なるほど、興奮を見せる…体験させる?まぁその辺りは実際に見てからの楽しみか)
「しかしお金の匂いがするなぁ?(笑顔)」
ウェルスの目がきらりと光る。それは……自由騎士の目では無い。商人の目だ!
マネーの匂いを嗅ぎつけたもっふもふのクマは意気揚々と空間へと吸い込まれていった。
(さぁて実験だ)
気付くとウェルスがいたのは白くて光と清潔感あふれる空間。そこには天高く積まれた金貨や札束、金銀財宝の数々。
そして──沢山の扇情的な格好の美獣達。ウェルスの好みと思われるケモノビトの美女がずらりと並んでウェルスに熱い視線を送っている。美少女から美魔女まで。年齢層も幅広い。だがしっかり年齢下限が設定されている辺りわかっている。そう、ウェルスは違いがわかるクマなのだ。麺も気兼ねなく描写できると胸をなでおろした。
(ヒェッ。おっといかんいかん)
ウェルスはぱちんと頬を叩くと、自らのスキル冷静沈着で、冷静を沈着させる。え? 何を沈着させたのかって? そりゃぁ冷静だ。冷静に決まっている。他に沈着させるものがあるものか。
(ま、何しろ上手くいけばこの空間なんて、後でいくらでも再現できるんだからな)
何せウェルスの予定では、この酒池肉林の状況は今後いつでも味わう事が出来るのだ。
そうして極めて冷静を保ちながら、ウェルスは美女達を被写体に念写のイメージを積み重ねていく。
(まぁ『念のため』、だ)
良い判断だよウェルス君。だって世の中は世知辛い。そう都合のいい方向ばかりには向かわないのが人生なのだ。
実際この『念のため』はあとでウェルスを悶えさせる。もっと堪能しておけばよかった──と。
(そして次は──)
そこにはボイン(死語)なエミル嬢の姿。細身ではあるがしっかりと主張した双丘。
確かにウェルスが希望した姿ではある。だが「本物がどうなのか」は今のウェルスには判断しようがない。なぜなら顔こそ見せたものの実物のエミルは全身をすっぽりローブで隠しており、その体型は見せていないからだ。
それに……いいのかい? ウェルス君。君が腰にぶら下げているそのお守り袋。うさぎのあの娘からもらったものじゃぁ無いのかい?
ふふふ、冗談さ。良いのだよ……男ってのはそういうものさ。いつまでもロマンを求め、追い続けるものなのさ。麺はウェルス2019(にいまるいちきゅう)を応援しています。オフィシャルパートナーでは無いけれども。
そしてウェルスは空間を抜ける。目の前にはブーシュー。空間を破られその瞳は怯えきっている。
「おっと落ち着け、お前に話があるんだが──(グェヘヘヘ、コイツぁ金の成る木だぜぇ)」
ウェルスの持ちかけた商談はブーシューにどう響いたのだろうか。
それについてはまた別の機会で語られる……かもしれない。
●ケース4 『傲慢じゃない(言質とりました)』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
ボルカスは喜びに打ち震えていた。それはもう心の底から。
ずっと欲してきた皆の反応。ボルカスが望んだ世界がそこにはあった。
ボルカスは軍馬メアリに乗って街を闊歩する。
「な、なんと傲慢な馬使い!!」
ボルカスが立ち止まる。
「うわぁ、なんて傲慢な止まり方だ!!」
食堂に入り飯を食らうボルカス。
「すごい……こんなにも傲慢な食べっぷりは見た事が無い!!」
何をしても傲慢。どこへ行こうと傲慢。
「傲慢!! 傲慢!! 傲慢!! 傲慢!!」
もはや息をするだけでも、傲慢ともてはやされる(?)ボルカス。そこはもう傲慢の坩堝。
「なあ、メアリ(軍馬)……。俺ちょっと思ったんだが……」
ボルカスが愛馬に語りかける。
「さっきまでの世界が夢で、こっちが現実という可能性はないか!? ……ないかぁっ!!」
あれ? ボルカスさんが興奮しすぎておかしな事を言い始めましたよ。
「いや、常日頃おかしいと思っていたのだよ。とくに最近、私が傲慢として扱われる機会があまりにも少なくないか? いや、むしろ殆ど無いではないか」
(それがこの場ではどうだ! 私がプチフールを食べるだろ? 任務中、真面目に戦っている仲間もいるのにだ!!)
「なんと言う傲慢っぷり……」
「あの方の傲慢がこれほどとは……」
「まさに傲慢の中の傲慢!」
「傲慢!! 傲慢!!」
(ほら、聞こえるだろう、私の傲慢さに恐れおののく声が!! すばらしい、やはりコレが世界の本来の姿じゃあないか……!)
思えばボルカスの傲慢への道は苦労の連続であった。なんか、アイツ意外と良い人なんですよ的な目で見られて、自分は傲慢に向いてないんじゃないかと苦悩する夜もあった。だが、その葛藤は、傲慢を追い求めてきた私の道のりは、決して無駄ではなかったんだ……!!
(鼓動が煩いぐらいに高鳴っている……私は今、モーレツに傲慢(こうふん)している!!)
ボルカスはなんともいえぬ達成感を感じていた。その表情は成し遂げた男の顔。
だがその達成感に待ったがかかる。現実に戻るときがきたのだ。
「ハハ、メアリよ、私はこれからも傲慢道を……おいメアリ、顔をそんなにも近づけて何を……」
不意に愛馬メアリがボルカスの頭に噛み付いた。
「痛たたたたたた!!? か、噛むなメアリ、なんで私の頭に噛みつい──」
そしてボルカスは現実(夢?)の世界へ舞い戻る。どうやら他の者が無事空間を抜けたようだ。
やはりこちらが現実なのか……と肩を落とすボルカス。
頑張れボルカス! 負けるなボルカス! いつか傲慢といわれるその日まで──。
●ケース5 『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)
この世界には本人の意思とは全く別の存在の意思というものがある。その意思は時としてその人物に思いも寄らぬ行動や出来事が起こる事を望む。そう、テオドールの場合まさにその存在の意思が大きく関与したのだ。
その存在はかく語りき。
──ほら彼も男性ですやん? 相手は可愛い婚約者ですやん? 幼な妻ですやん? それしか無いやん?
それしか無い。かどうかは純粋で初心で奥手な麺にはわからない。わかるはずも無い。わからないかもしれない。わからない事にしておこう。
では彼の葛藤の一部始終を余すところ無く見ていただこう。
|>再生
(ここは自室だな……一体どうして此処に)
テオドールがゆっくりと目を開けるとそこは屋敷の自室であった。時刻はすでに深夜近くであろうか。風に揺れる木々の音以外何も聞こえない。
暗闇に目が慣れてきたテオドールは人の気配に気付く。
「……カタリーナ?」
カタリーナ。妻に先立たれ寡夫となったテオドールがさる縁により、婚約することとなったメイマール伯爵の娘。
窓からさす月明かりに照らされたカタリーナは穏やかに笑っていた。
長く美しい白銀の髪は風に揺れ、吸い込まれるような今紫の潤んだ瞳はテオドールを見つめる。幾分幼さが残る肢体に身に着けているのは薄いシルクのネグリジェのみ。動く度にカタリーナの柔らかな部分が揺れる。彼女が何を求めているかは、明白だった。
「いや、駄目だ。まだ婚前だろう? 今までそんな風に振る舞うように育てられた訳ではあるまい」
そんなテオドールの言葉を遮るように、請うような表情を見せながらカタリーナはベッドで休むテオドールへ近づいていく。ベッドが軋む音が響く。
「嫌いな訳ではないぞ、嫌な訳ではないぞ。ただ物事には順番というものがあろう。だから駄目だと言っている」
テオドールの身体にカタリーナがそっと触れる。火照りを感じさせるその手の温かみはテオドールの理性に揺さぶりを掛ける。だが……彼の心はすぅと落ち着きを取り戻していく。彼が空間に入る前に自己に施した冷静沈着の決意。それが今、テオドールの最後の砦となりカタリーナの誘惑に抗い続けさせていた。
(まだ汚す訳にはいかない。欲に流られれば示しがつかない。とはいえ、それだけではすむまい。どうにか彼女の気を治めなければ……)
テオドールに添えられた手。その手を握り締めるとテオドールはカタリーナをふいに抱き寄せる。
「カタリーナ。焦る必要はあるまい。いずれは夫婦となるのだから。私は約束を違わない。必ず君を妻として迎える。安心して欲しい」
真剣な表情でカタリーナを見つめるテオドールはそう言うとカタリーナを抱きしめる。
そんなテオドールに対しカタリーナは、どこか驚いた様な、それでいて嬉しそうな表情を見せたのだった。
「それにしても何故急にこんな事を──」
気付けば小さな寝息が聞こえていた。
「ここは……?」
テオドールは空間を抜ける。目の前には小さなリスのような幻想種。
「これは君の仕業だな。悪戯というのは潔さと引き際も肝心だ。我々が勝ったのだ、他の者も開放してくれないか」
テオドールは優しくブーシューに語りかけるのだった。
●ケース6 『艶師』蔡 狼華(CL3000451)
「興奮さしてくれはるんやろ? うちをどんな風に興奮さしてくれはるんか楽しみやわぁ。ちょっとやそっとじゃ靡かへんよ?」
空間に入る前。狼華には余裕があった。興奮って……どうせいつものアレの事やろ──。狼華は小さくため息をつく。
だが狼華はその空間で再会してしまう。身も心もすべてを捧げ、陶酔し、そして……心底憎んだ存在に。
忘れていた記憶。忘れようとしていた記憶。甦るその記憶の中から鮮烈に甦るある男の面影。
気付けば狼華の前には1人の男が立っていた。
その姿を見たとたん……狼華の余裕は吹き飛んだ。心はかき乱され、胸が張り裂けんばかりに苦しくなる。思わず胸を押さえ、蹲る狼華。
その男は笑っている。
だが笑っているのにまるで靄がかかったかのように顔がはっきりしない。
その男は笑っている。
不精の一言では済まされないような、一見汚らしく乱れた容姿。
だが狼華は知っている。その男が整えればそれはそれは映える美丈夫である事を。
その男は笑っている。
切れ長の目、貼り付けたような笑みの下に全く別の表情を持っている事を。
狐の様に……否、蛇の様に化かして絡めて心を捉える。そんな男。
そして──僕が唯一本気で愛した男。
だけどその男が与えてくれたものは全てが、偽りだった。
だけど……真実の欠片も無いその男の本質を知っても尚、僕は……。狼華は血が滲むほど唇を噛みしめる。
「殺してやる!!!!!!!」
(そう、全てが嘘なんだ。この男の全ては嘘だ。甘い言葉も熱を帯びた指先も)
「許さない、許さない、許さないっ!!!!」
その男は笑っている。
狼華がどれだけ憎しみの刃で傷つけようとも。
自身でもわかっている。その繰り出した剣技。その一連の動きも男から得たものである事を。
全部嘘。何もかも。この男の世界に本当の事など何も無い。
──でも……その嘘さえも、まだ僕は愛している……の?
男は笑っている。
──慰めてよ。あんたが僕に教えたんだ。
男は笑っている。
──受け入れる術も、それを悦びに変える事も。
男は笑っ──
斬──ッ!! 狼華の剣撃が男のシルエットを二つに分かつ。そして──
狼華は落ちたモノを優しく両手で抱えると……そっと口づけた。
──僕にこんな酷い事をしておいて、こんなにあっさり死なないでよ大哥……。
「……っ!?」
気付けば狼華は元の世界にいた。誰かが解除に成功したのだろう。
呆けたように立ち尽くす狼華。未だ興奮冷めやらぬその身は小刻みに震えていた。
自身を抱きしめるように両腕で肩を抱く狼華。
確かに興奮はした。姿を見ただけで身体が疼いた。
愛して、愛して、愛して、そして憎んだ男。もう二度と思い出す事も無いと思っていた最愛で……最憎の男。
「……何が興奮や……胸くそ悪いもん見せよってからに!」
死する事で永遠の存在となった男。狼華の心は未だ囚われ続けている。
●そして
ブーシューはこってり絞られ、しゅんとして森の奥へ帰っていった。
これでしばらくは空間が作られることも無いだろう。
興奮とは。心躍るもの。心乱されるもの。そして──
†シナリオ結果†
大成功
†詳細†
MVP
称号付与
『ゴッドハンド』
取得者: ローラ・オルグレン(CL3000210)
『強敵相手に大興奮♡』
取得者: 李 飛龍(CL3000545)
『欲にまみれて大興奮♡薬師もネ』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『傲慢の喝采に大興奮♡』
取得者: ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
『幼妻の誘惑に大興奮♡』
取得者: テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)
『虚実の世界、無垢な愛』
取得者: 蔡 狼華(CL3000451)
取得者: ローラ・オルグレン(CL3000210)
『強敵相手に大興奮♡』
取得者: 李 飛龍(CL3000545)
『欲にまみれて大興奮♡薬師もネ』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『傲慢の喝采に大興奮♡』
取得者: ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
『幼妻の誘惑に大興奮♡』
取得者: テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)
『虚実の世界、無垢な愛』
取得者: 蔡 狼華(CL3000451)
†あとがき†
悪戯な幻想種はしっかり反省したようです。
MVPは予想の遥か上の興奮を魅せて頂いた貴方へ。
ご参加ありがとうございました。
いや、もう……皆様のプレイングを見て一番興奮したのは
誰でも無く麺でした。ふんす。
MVPは予想の遥か上の興奮を魅せて頂いた貴方へ。
ご参加ありがとうございました。
いや、もう……皆様のプレイングを見て一番興奮したのは
誰でも無く麺でした。ふんす。
FL送付済