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穀倉地帯を闊歩する悪魔犬

●イブリース化は突然に
イ・ラプセル某所、とある集落の近く。
島国であるこの国は、基本的に王都サンクディゼールなどだと物資の運搬は船や鉄道で行われてはいるものの、農村地帯まで行けばその限りではない。
この国の主産業でもある、穀物を育てる穀倉地帯。
そろそろ、時期的には麦の収穫時期ということで、農夫達は忙しなくその準備に当たっていたのだが……。
「おわっ!!」
野良仕事に出ようと、麦畑へと向かう農夫が発見したものは……。
グルルルルル……。
それは、3匹の野犬。
だが、よく見るとそいつらは単なる野犬ではない。
幽霊列車(ゲシュペンスト)の影響を受け凶暴化しまった、イブリースだ。
今にも襲い掛かりそうな野犬から、農夫達は距離をとっていく。
この道を通らずとも、王都との往来に直接の影響はないが、これらを放置していると、麦の収穫準備を進めることができない。
「困ったなあ」
農夫達はなすすべなく、うろつく野犬をただ見つめる他ないのだった。
●放置すれば、食糧問題も
「ねえ、ちょっといいかな?」
水鏡の情報を受け、『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)が依頼斡旋所に詰めていたオラクル達へと依頼を行う。
「皆にイブリース化した野犬の討伐を頼みたいんだ」
野犬の数は3体。
現状はエサとなる動物などを求め、穀倉地帯をうろついているだけではある。
ただ、農夫達は今から麦の収穫を行う時期だ。
このイブリースとなった野犬を避けてばかりでは、この後の農作業に多大なる影響が出てしまう。
「イ・ラプセルにおいて、穀物は主産業の一つ。これが止まってしまうと、後々食料問題も発生しかねないよ」
たかが野犬退治ではあるが、しっかりと対処していきたい。
野犬は3体固まって穀倉地帯を歩き回っており、時折やってくる小動物や、降り立ってくる野鳥を食らっているようである。
そのまま交戦してもよいが、今から麦の収穫を行うというからには、できるだけ麦畑に被害なく立ち回りたい。
「麦畑は街道沿いにあるから、比較的造りのしっかりした街道へと誘い込みたいね!」
うまく街道に誘い込めれば、こちらのもの。
後はオラクルとしての力を、存分に野犬どもに見せつけてやるとよいだろう。
説明を終え、クラウディアはオラクル達へと問いかける。
「そういえば、皆、依頼の後は何をするのかなっ」
次の依頼を受けるのか、しばらく野良仕事の手伝いをするのか……。
それはオラクル達の自由ではあるが、報告書の隅に書いているとクラウディアが喜ぶかもしれない。
もちろん、強制ではない為、農作業を行う農夫達をぼんやり眺めて時を過ごすも自由だ。
「以上だね。それでは、行ってらっしゃい」
クラウディアは笑顔を浮かべ、オラクル達を送り出すのだった。
イ・ラプセル某所、とある集落の近く。
島国であるこの国は、基本的に王都サンクディゼールなどだと物資の運搬は船や鉄道で行われてはいるものの、農村地帯まで行けばその限りではない。
この国の主産業でもある、穀物を育てる穀倉地帯。
そろそろ、時期的には麦の収穫時期ということで、農夫達は忙しなくその準備に当たっていたのだが……。
「おわっ!!」
野良仕事に出ようと、麦畑へと向かう農夫が発見したものは……。
グルルルルル……。
それは、3匹の野犬。
だが、よく見るとそいつらは単なる野犬ではない。
幽霊列車(ゲシュペンスト)の影響を受け凶暴化しまった、イブリースだ。
今にも襲い掛かりそうな野犬から、農夫達は距離をとっていく。
この道を通らずとも、王都との往来に直接の影響はないが、これらを放置していると、麦の収穫準備を進めることができない。
「困ったなあ」
農夫達はなすすべなく、うろつく野犬をただ見つめる他ないのだった。
●放置すれば、食糧問題も
「ねえ、ちょっといいかな?」
水鏡の情報を受け、『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)が依頼斡旋所に詰めていたオラクル達へと依頼を行う。
「皆にイブリース化した野犬の討伐を頼みたいんだ」
野犬の数は3体。
現状はエサとなる動物などを求め、穀倉地帯をうろついているだけではある。
ただ、農夫達は今から麦の収穫を行う時期だ。
このイブリースとなった野犬を避けてばかりでは、この後の農作業に多大なる影響が出てしまう。
「イ・ラプセルにおいて、穀物は主産業の一つ。これが止まってしまうと、後々食料問題も発生しかねないよ」
たかが野犬退治ではあるが、しっかりと対処していきたい。
野犬は3体固まって穀倉地帯を歩き回っており、時折やってくる小動物や、降り立ってくる野鳥を食らっているようである。
そのまま交戦してもよいが、今から麦の収穫を行うというからには、できるだけ麦畑に被害なく立ち回りたい。
「麦畑は街道沿いにあるから、比較的造りのしっかりした街道へと誘い込みたいね!」
うまく街道に誘い込めれば、こちらのもの。
後はオラクルとしての力を、存分に野犬どもに見せつけてやるとよいだろう。
説明を終え、クラウディアはオラクル達へと問いかける。
「そういえば、皆、依頼の後は何をするのかなっ」
次の依頼を受けるのか、しばらく野良仕事の手伝いをするのか……。
それはオラクル達の自由ではあるが、報告書の隅に書いているとクラウディアが喜ぶかもしれない。
もちろん、強制ではない為、農作業を行う農夫達をぼんやり眺めて時を過ごすも自由だ。
「以上だね。それでは、行ってらっしゃい」
クラウディアは笑顔を浮かべ、オラクル達を送り出すのだった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.全ての敵の討伐
初めましての方も、どこかでお会いして事のある方もこんにちは。
STのなちゅいと申します。以後、よろしくお願いします。
まずは、魔物依頼で皆様の技量を確認させていただきたく思います。
●敵
◎野犬×3
イブリース化した野犬です。
〇ボス犬……全長2m程度。イブリース化の影響を強く受けた野良犬です。
噛みつき(ポイズン2)、爪(パラライズ1)、のしかかりを使用します。
〇子分犬×2……全長1m程度。通常サイズの犬です。
噛みつき(ポイズン1)、爪を使用します。
●状況
場所は、街の近くの穀倉地帯です
イブリース化した野犬がうろつくという情報があり、人々はこの近辺に近寄らぬようにしていますが、麦の収穫作業に影響があり、困っているようです。
多少の起伏があれど、ほとんど平坦な穀倉地帯なので、視界に関しては問題なく対処できますが、できる限り麦畑からは離れ、街道寄りに立ち回るほうがよいでしょう。
事後はこの後何をする予定か、話していただけると嬉しいです。
のんびりと過ごす予定でも構いませんので、皆様の日常がどんなものなのか教えてください!
それでは、よろしくお願いいたします。
STのなちゅいと申します。以後、よろしくお願いします。
まずは、魔物依頼で皆様の技量を確認させていただきたく思います。
●敵
◎野犬×3
イブリース化した野犬です。
〇ボス犬……全長2m程度。イブリース化の影響を強く受けた野良犬です。
噛みつき(ポイズン2)、爪(パラライズ1)、のしかかりを使用します。
〇子分犬×2……全長1m程度。通常サイズの犬です。
噛みつき(ポイズン1)、爪を使用します。
●状況
場所は、街の近くの穀倉地帯です
イブリース化した野犬がうろつくという情報があり、人々はこの近辺に近寄らぬようにしていますが、麦の収穫作業に影響があり、困っているようです。
多少の起伏があれど、ほとんど平坦な穀倉地帯なので、視界に関しては問題なく対処できますが、できる限り麦畑からは離れ、街道寄りに立ち回るほうがよいでしょう。
事後はこの後何をする予定か、話していただけると嬉しいです。
のんびりと過ごす予定でも構いませんので、皆様の日常がどんなものなのか教えてください!
それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年05月29日
2019年05月29日
†メイン参加者 8人†
●野犬に困る農民達
イ・ラプセル某所。
依頼を受けてやってきたオラクル達。
「自由騎士になってから初めての戦闘依頼ですが、私にできることを精いっぱい頑張ります!」
ゆるふわなソラビトの少女、『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)が笑顔を浮かべながらも、依頼解決に意欲を見せる。
「今回はただの気まぐれだ」
対して、元はシャンバラ所属だった虎のケモノビト、『血濡れの咎人』ロンベル・バルバロイト(CL3000550)は今回の依頼参加の理由をそっけなく語る。
それでも、彼もなんとなく訪れたわけではないらしい。
「イ・ラプセルの畑がどれだけ実ってるか見に来たのと、浄化の権能とやらの確認だ」
数え切れぬほどの稲穂が垂れる麦畑を、ロンベルは見回す。イ・ラプセルの麦に彼は少なからず、関心があるらしい。
他にも、シャンバラと勝手が違う状況を、実際に戦いの中、目と体で体感しておきたかったそうだ。
「……まぁ、仕事の方はしっかりこなしますよっと」
そこで、彼はイ・ラプセルの民を遠目で捉えると、好青年といった容姿の『平和の盾』ナバル・ジーロン(CL3000441)が叫ぶ。
「こんにちは! みんなの隣人、いつでもどこでも頼りになる自由騎士団の到着ですよ!」
やや遠巻きに、自由騎士団が到着したことに気づいた農家の人々が対処すべき相手が収穫間近の麦畑にいることを示す。
イブリース化した犬が麦畑の中にいる為、収穫作業ができない。だからどうにかしてほしいという状況である。
「麦の収穫に影響があったら、エール酒の値段にも影響が出るかもしれないからね。これは重大な問題よ」
長い緋色の髪に、弾けそうなほどのナイスバディをさらす『遺志を継ぐもの』エルシー・スカーレット(CL3000368)がこの状況の深刻さについて語る。
「キッチリ解決して、エール酒の……ちがった、農村の平和を守らないとね」
彼女の本音が垣間見えたのはさておき。
農民達は改めて頭を下げ、その場のオラクル達に問題の対処を願っていた。
「任せといてください。オレらがすぐに退治して、安心して農作業できるようにしますから!」
――明るく元気よく、そして仕事は確実に。
自由騎士がいるという安心感を、人々に与えようとしていたナバルだ。
「ふーん、野犬で困ってるのか」
一本角のオニヒトの少年、李 飛龍(CL3000545)は腕試しには丁度よさそうだと、このイブリース化した野犬退治に参加する。
感情表現が希薄なカバのケモノビト『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)も黙ったまま、依頼への参加意志を示していた。
「普通の害獣なら猟師さんの仕事だろうけど、イブリース化してるならオレらの出番だよな」
「まだ人を襲ってはいないようだけど、被害が出る前に浄化する必要があるわね」
ナバル、エルシーの主張するように、イ・ラプセルにおいては、基本的にイブリース化した対象は救うべきとされている。
できるなら命を奪わず、穏便に事態を解決したいところだ。
やや幼さを残しながらも、女性らしさを主張する豊満な胸が目を引く『慈愛の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)。
犬が大好きな彼女は野犬のイブリース化を聞き、黙っていられなかったらしい。
「ワンちゃんも、人を傷付けたくはないはず。早く浄化してあげないとね」
両手に蛇腹剣と長剣を構える彼女は依頼の解決と合わせ、野犬を救うべく全力を尽くすのである。
●麦畑から野犬を引きつけよう
さて、改めて、オラクル達はイブリース化した野犬対応を開始することになる。
数は3匹。2体は全長1m程度の子分で、それらを引きつける2m程度あるボス犬がいる。イブリース化の影響で大型化したのだろう。
そのまま戦えば、収穫間近の麦畑に被害が及んでしまう。
遠くから農民達が見守っている状況だ。それだけは避けたい。
「新手のオラクルか!」
首から下が獣化している猫のケモノビト、スピンキー・フリスキー(CL3000555)は颯爽と現れ、畑に向かって大声を上げる。
「この混沌とした世界に舞い降りし真の救世主! それが……」
子供っぽさ全開で愛くるしいスピンキーは、少しだけ言葉を溜めて。
「……スピンキー・フリスキー!」
どや顔で名乗りを上げてみせた。
話が通じるかなど、スピンキーは全く考えてはいない。
だが、野犬達はオラクル達に興味を示しており、彼……性別不詳だが敢えてそう呼称する……としては上々の成果だ。
モカ、アリアは仲間達に誘導を任せて状況を見守る。
あとは、こちらに近づいてくれればいいのだが。
そこで、数人のメンバーが食べ物で釣り出す作戦を決行する。
「犬は嗅覚が発達しているっていいますからね」
エルシーが懐から取り出したのは……。
「じゃ~ん☆ チーズ(の欠片)です」
彼女曰く、エール酒のオツマミに最高なのだとか。
匂いの強い食べ物であれば、十分に注意が引けるはずとエルシーは野犬にチーズをチラつかせる。
「チッチッチッチッ」
そうして、彼女は少しずつ興味を示す野犬達を街道側へと誘導していく。
ナバルなどはもっと、野犬の食欲を直にそそりそうなものを用意していた。
風上側から彼が用意した袋を開けると、少しばかりキツイ臭いが漂う。
その中身は、肉屋でもらった廃棄処分用のモツらしい。
臭いや血が外に漏れないよう、ナバルは細心の注意を払って収納し、ここまで持ってきていた。
「来たか?」
野犬の引きつけができたと判断した彼は、袋の口をきつく締める。
中身を溢すと後々、後始末が大変そうだ。
「ふむふむ、畑に被害がでないように街道におびき寄せるか、そいつはいいアイデアだぜ!」
改めて、作戦を確認した飛龍。
すでに、野犬達はこちらを警戒している為、彼は拾っていた石ころを捨てる。
「っしゃあ! いくぜいくぜぇ!」
野犬を麦畑から街道へと引っ張るまでは手出しをせず、飛龍は挑発しながら逃げに徹することにする。
同じく、スピンキーは野犬達と『動物交流』のスキルで対話を試みる……が。
「やーい! おまえのかーちゃんでべそー!」
――あっかんべーしながら、おしり向けてぺんぺん。
それはもはや、対話とはなんだと言わんばかりの罵詈雑言。
あとは、にゃあにゃあと彼は鳴きながら挑発を重ねて。
ガルルルルル……。
「逃げるが勝ち。逃げるのも勇気。神速を尊べ」
相手が怒り心頭になったなら、スピンキーは一目散に逃げ始める。
一応と、ロンベルも生肉を用意しつつ様子見。
「イブリースだから言葉が通じる……だなんて思わないけど、まぁ言いたいことは伝わるだろ多分」
彼もまた野犬に呼びかけ、誘き寄せを行っていた。
嗅覚と胃袋を刺激されたのか、それとも、煽りがあまりにひどかったのか、野犬達も走ってこちらへと向かってくる。
煽っていた飛龍やスピンキーが逃げるのを追いかけつつ、さらにその先にあるチーズや肉目掛け、野犬達は疾走していく。
ガウアウワウッ!!
上手く犬達を街道に飛び出させれば、こちらのもの。
備えていたアリアが蒼と白のマナを纏い、刃を両手に華麗な舞いを踊る。
「麦畑への被害は抑えないとね」
そうして、アリアは街道へと出てきた野犬達の動きを封じようというのだ。
サポーターとして駆け付けてきたフィオレットも、麦畑の傍で防御に専念する。
「備えあれば嬉しいな、と言う事じゃしのぅ♪」
メインで依頼を受けるメンバーに対し、退治に専念してほしいと願うフィオレット。
その手前側にモカも布陣し、再度野犬達が麦畑に踏み入らぬよう気にかけ、レイピアとバックラーを手に取って身構える。
「万が一、畑側に逃亡されても大丈夫な様にな」
一言告げたロンベルは片刃の戦斧を手にして奮起し、目の前の野犬へと立ち向かっていくのである。
●麦畑を守りながら浄化を!
バウワウアウ!!
狂ったように襲い掛かってくる3匹の野犬。
「みたとこでっけぇのがボス犬だろ? やるなら、そいつからだな!」
街道に出た飛龍は、仲間へと攻撃対象を確認する。
「了解よ」
後方にいるアリアがそれに応じ、穏やかな心でステップを踏みつつ跳躍し、双剣と同じデザインの魔力の剣を放つ。
それは山彦を伴い、直線で飛ぶ剣を追うようにして追撃していく。
連続して剣に射抜かれつつも、ボス犬は大きく口を開いて噛みついてくる。
(やはり、直線的な攻撃だね)
攻撃は単調なものだ。だからこそ、予備動作を確認したエルシーは左へと避けようとした。
そこへ、前線へとナバルが身構え、ライオットシールドを構えて仲間のカバーへと当たる。
「ボス犬の麻痺爪は厄介だからな。耐性のあるオレに任せてくれ!」
防御タンクスタイルの彼は、パリィングスキルを持つ。
これを使えば、仲間達の攻撃を遮ることなく、壁となることができる。
「すまないわね」
感謝の言葉を口にするエルシーは、古き紅竜の籠手を装着した拳で殴り掛かる。
エルシーは素早く相手の顔面へと右フックを叩きつけてから、左のアッパーを食らわせていた。
皆、最優先で狙うはやはり、麻痺爪が厄介なボス犬だ。
太陽の下、リズミカルに躍るモカは、直接野犬達の攻撃を受けぬようにと浮遊する。
宙を舞い踊る彼女は文字通り蝶のように舞い、蜂のような踊りに合わせてレイピアを突きつけ、ボス犬を攻め立てていた。
「存分に暴れさせてもらうぜ!」
拳を鳴らす飛龍は、我が身に龍が駆け巡るような呼吸法を行いながら、ガントレットで殴りかかる。
続き、超巨大ハンマー・ヒポポタマスでリムリィが殴り掛かると、間髪入れずにスピンキーが叫ぶ。
「うなー!」
咆哮を上げる自身へと僅かに驚きを見せたボス犬目掛け、スピンキーは拳で殴り掛かっていく。
「ふっふっふ、どうだ恐れ入ったか!」
ただの獣には負けないと、どや顔をして見せるスピンキー。
「……っと、にゃあっ!」
しかしながら、子分犬2体がこぞって食らいついてくるのに、彼は少しだけ慌てていた様子。
そいつらをやり過ごしつつ、ロンベルは奮起して己に眠る獣性を高め、片刃の戦斧『デアボリックバスター』をボス犬へと叩きつけていく。
大きく仰け反ったボス犬目掛け、ヒットアンドアウェイで攻めるモカが素早く迫る。
それは、この場にいるアリアの技。
モカは速度を乗せ、頭上からレイピアの刃でボス犬の胴体を貫いてしまう。
アオオオォォ……ン。
一声大きく吠えたそのボス犬はみるみるうちに体を縮め、他の子分犬とさほど変わらぬ大きさとなり、倒れてしまったのだった。
ボス犬の浄化を完了し、オラクル達は残る子分犬達の浄化を続ける。
大型犬並みの体躯を持つ相手ながらも素早く戦場を駆け回る相手だが、この場には戦闘経験を重ねたメンバーも多い。
ナバルは防御寄りの立ち回りを続け、戦線をもたせようと動く。
毒牙を煌めかせ、鋭い爪を振るってくる子分犬達。
防御しつつも、さすがに体力が減ったナバルも危機を察すれば、ショートスピアを振るう手を止め、全力で盾を構えて防御に当たる。
敵の力もあってか、あまりメンバー達も回復は考えずに攻撃を繰り返す。
マウントをとるように、子分犬へと殴り掛かる飛龍。
それでも、素早く飛びのいてしまう敵の動きに辟易としたロンベルが、相手の足元に底なし沼を生み出す。
「大人しくしてろ」
沼に四肢を捕われた子分犬目掛け、跳躍したアリアが先ほど同様に両手の剣と同じデザインをした魔力剣を連続して飛ばす。
その連撃を受けた子分犬は沼の中でぐったりと倒れ、そのまま元の小型犬の姿に戻っていった。
残り1体にも、オラクル達の攻撃の手は強まる。
唸りを上げ、空中を薙ぐ子分犬の爪。それをエルシーはバックステップで避け、すぐに接近して強く殴りつける。
少し飛ばされた犬は空中で回転して着地して、さらに大きく口を開いて食らいかかろうとするが、一直線に飛ぶモカが子分犬の体をレイピアで貫いた。
そこへ、スピンキーがただひたすら殴りかかる。
「打つべし打つべし! べしべし!」
とにかく、スピンキーは片っ端から殴ることを考えて立ち回っていた。
「向かってきたやつはみんな倒すだけだべや!」
気合を入れ、相手を殴り倒すスピンキー。
ついに、最後の子分犬も力尽きてその場に倒れ、元の中型犬の姿へと戻っていったのだった。
●ワンちゃんの処遇と農作業のお手伝い
全ての野犬を浄化したオラクル達は武器を収める。
元の姿に戻った野犬達。ボス犬は大型犬、子分犬2匹は小型と中型犬となっていた。
「人は襲わなかったんだね、良い子良い子」
アリアは弱った野犬達へと優しく手当てし、メンバー達が用意した釣り出しようの餌を分け与える。
「よしよし。痛かった? ごめんなさいね」
エルシーもまた、元の大きさに戻った野犬を優しく撫でる。
「よしよし。痛かった? ごめんなさいね。もうイブリース化なんてしたらダメよ?」
仲間達が優しく野犬と触れ合う姿に、ナバルはやや困惑して。
「野山に帰した方がいいんじゃないかな」
彼は野犬に脅しをかけ、人に近寄らぬようにとも考えていた。
「野生に戻すのは大変だろうからね」
アリアは彼らに首輪がついていることを指摘し、里親探しをしようと考える。
「そうですね。農夫さん達で飼っていただくことはできないかと、私も考えていまして……」
確かに、野犬であれば、そのまま野に放つのもありだとはモカも思っている。
だが、彼女は農夫達と共にある方が、この子達が幸せになれるのではと考えたようだ。
「これも何かの縁だし、私が買おうかな」
アリアは抱きかかえた小型犬がペロペロしてくるのを、くすぐったそうにしていた。
農夫達も話し合い、大型犬と中型犬を引き取ることにしていたようだ。
「さて! これで一件落着ね」
「うっし、終わり終わり!」
エルシーや飛龍は事件の完全解決を確認し、大きく背伸びをしていたのだった。
その後、メンバー達は解散するのだが、今回の1件もあって農作業は予定よりも遅れているとのこと。
「そういや、農作業の人手も必要なんだって?」
軽い鍛錬になるかと考え、飛龍も力仕事で手伝いを申し出る。
「遠慮なくこきつかってくれな!」
ナバルもまた、自分達が到着前に、野犬が壊してしまった柵や水路などの修繕の手伝いに回って。
「オレも実家は農家だからさ。こういうのはほっとけないんだよね」
麦はいいと語る彼が土地さえあれば麦畑をやりたいと語ると、農夫達もいい場所あれば探すと勧誘に当たっていたようだ。
モカも畑の手直しなど手伝いをと申し出る。
同じく、エルシーが収穫した麦の運搬の手伝いをするが、その揺れ動く大きな胸に農夫達も釘付けになっていた様子。
そこで、モカは自らにできることをと踊りながら唄を歌い始め、戦いが無事に終わったことを祝う。
モカの可愛らしい唄や踊りに、この場の皆はほっこりと微笑ましそうに彼女を見つめて元気を与えてもらっていた。
仲間達が農作業の手伝いを行う中、一通り畑を見回したスピンキーはのんびりと日向ぼっこ。
「やっぱ、平和が一番だべ。うんうん」
麦飯をいただいたスピンキーは満足げにお昼寝を始めていた。
ロンベルもまた、麦畑を眺めていて。
「収穫量が少ないな。今年は不作なのか?」
だが、今年は例年以上であり、このままなら豊作となるだろうと農夫達は語る。
「……これが聖櫃無しの農業ってやつか」
聖櫃があった時のシャンバラだったなら、この倍は収穫できたとロンベルは記憶している。
ならばこそ、シャンバラも同じくらいの収穫量と思われる。
イ・ラプセル領となった場所もあり、食料が賄いきれるのかどうかとロンベルは考える。
これから夏。冬までには……。
そこまで考えた彼は思考を止め、彼はお上に任せることにしたようだ。
程なくして、遅れていた分の農作業も終わり、農民達から感謝の言葉を受け、麦畑を離れていくオラクル達。
「そういえば、ナバルって奴が飲みに行こうとか言ってたな」
彼はナバルが妙な顔をしていたことを気にかけていたが、自身がシャンバラ出身であることを気にかけていたのだろうか。
とはいえ、特に予定もないロンベルは、そのまま誘いに乗って飲みに行くことにしたのだった。
イ・ラプセル某所。
依頼を受けてやってきたオラクル達。
「自由騎士になってから初めての戦闘依頼ですが、私にできることを精いっぱい頑張ります!」
ゆるふわなソラビトの少女、『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)が笑顔を浮かべながらも、依頼解決に意欲を見せる。
「今回はただの気まぐれだ」
対して、元はシャンバラ所属だった虎のケモノビト、『血濡れの咎人』ロンベル・バルバロイト(CL3000550)は今回の依頼参加の理由をそっけなく語る。
それでも、彼もなんとなく訪れたわけではないらしい。
「イ・ラプセルの畑がどれだけ実ってるか見に来たのと、浄化の権能とやらの確認だ」
数え切れぬほどの稲穂が垂れる麦畑を、ロンベルは見回す。イ・ラプセルの麦に彼は少なからず、関心があるらしい。
他にも、シャンバラと勝手が違う状況を、実際に戦いの中、目と体で体感しておきたかったそうだ。
「……まぁ、仕事の方はしっかりこなしますよっと」
そこで、彼はイ・ラプセルの民を遠目で捉えると、好青年といった容姿の『平和の盾』ナバル・ジーロン(CL3000441)が叫ぶ。
「こんにちは! みんなの隣人、いつでもどこでも頼りになる自由騎士団の到着ですよ!」
やや遠巻きに、自由騎士団が到着したことに気づいた農家の人々が対処すべき相手が収穫間近の麦畑にいることを示す。
イブリース化した犬が麦畑の中にいる為、収穫作業ができない。だからどうにかしてほしいという状況である。
「麦の収穫に影響があったら、エール酒の値段にも影響が出るかもしれないからね。これは重大な問題よ」
長い緋色の髪に、弾けそうなほどのナイスバディをさらす『遺志を継ぐもの』エルシー・スカーレット(CL3000368)がこの状況の深刻さについて語る。
「キッチリ解決して、エール酒の……ちがった、農村の平和を守らないとね」
彼女の本音が垣間見えたのはさておき。
農民達は改めて頭を下げ、その場のオラクル達に問題の対処を願っていた。
「任せといてください。オレらがすぐに退治して、安心して農作業できるようにしますから!」
――明るく元気よく、そして仕事は確実に。
自由騎士がいるという安心感を、人々に与えようとしていたナバルだ。
「ふーん、野犬で困ってるのか」
一本角のオニヒトの少年、李 飛龍(CL3000545)は腕試しには丁度よさそうだと、このイブリース化した野犬退治に参加する。
感情表現が希薄なカバのケモノビト『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)も黙ったまま、依頼への参加意志を示していた。
「普通の害獣なら猟師さんの仕事だろうけど、イブリース化してるならオレらの出番だよな」
「まだ人を襲ってはいないようだけど、被害が出る前に浄化する必要があるわね」
ナバル、エルシーの主張するように、イ・ラプセルにおいては、基本的にイブリース化した対象は救うべきとされている。
できるなら命を奪わず、穏便に事態を解決したいところだ。
やや幼さを残しながらも、女性らしさを主張する豊満な胸が目を引く『慈愛の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)。
犬が大好きな彼女は野犬のイブリース化を聞き、黙っていられなかったらしい。
「ワンちゃんも、人を傷付けたくはないはず。早く浄化してあげないとね」
両手に蛇腹剣と長剣を構える彼女は依頼の解決と合わせ、野犬を救うべく全力を尽くすのである。
●麦畑から野犬を引きつけよう
さて、改めて、オラクル達はイブリース化した野犬対応を開始することになる。
数は3匹。2体は全長1m程度の子分で、それらを引きつける2m程度あるボス犬がいる。イブリース化の影響で大型化したのだろう。
そのまま戦えば、収穫間近の麦畑に被害が及んでしまう。
遠くから農民達が見守っている状況だ。それだけは避けたい。
「新手のオラクルか!」
首から下が獣化している猫のケモノビト、スピンキー・フリスキー(CL3000555)は颯爽と現れ、畑に向かって大声を上げる。
「この混沌とした世界に舞い降りし真の救世主! それが……」
子供っぽさ全開で愛くるしいスピンキーは、少しだけ言葉を溜めて。
「……スピンキー・フリスキー!」
どや顔で名乗りを上げてみせた。
話が通じるかなど、スピンキーは全く考えてはいない。
だが、野犬達はオラクル達に興味を示しており、彼……性別不詳だが敢えてそう呼称する……としては上々の成果だ。
モカ、アリアは仲間達に誘導を任せて状況を見守る。
あとは、こちらに近づいてくれればいいのだが。
そこで、数人のメンバーが食べ物で釣り出す作戦を決行する。
「犬は嗅覚が発達しているっていいますからね」
エルシーが懐から取り出したのは……。
「じゃ~ん☆ チーズ(の欠片)です」
彼女曰く、エール酒のオツマミに最高なのだとか。
匂いの強い食べ物であれば、十分に注意が引けるはずとエルシーは野犬にチーズをチラつかせる。
「チッチッチッチッ」
そうして、彼女は少しずつ興味を示す野犬達を街道側へと誘導していく。
ナバルなどはもっと、野犬の食欲を直にそそりそうなものを用意していた。
風上側から彼が用意した袋を開けると、少しばかりキツイ臭いが漂う。
その中身は、肉屋でもらった廃棄処分用のモツらしい。
臭いや血が外に漏れないよう、ナバルは細心の注意を払って収納し、ここまで持ってきていた。
「来たか?」
野犬の引きつけができたと判断した彼は、袋の口をきつく締める。
中身を溢すと後々、後始末が大変そうだ。
「ふむふむ、畑に被害がでないように街道におびき寄せるか、そいつはいいアイデアだぜ!」
改めて、作戦を確認した飛龍。
すでに、野犬達はこちらを警戒している為、彼は拾っていた石ころを捨てる。
「っしゃあ! いくぜいくぜぇ!」
野犬を麦畑から街道へと引っ張るまでは手出しをせず、飛龍は挑発しながら逃げに徹することにする。
同じく、スピンキーは野犬達と『動物交流』のスキルで対話を試みる……が。
「やーい! おまえのかーちゃんでべそー!」
――あっかんべーしながら、おしり向けてぺんぺん。
それはもはや、対話とはなんだと言わんばかりの罵詈雑言。
あとは、にゃあにゃあと彼は鳴きながら挑発を重ねて。
ガルルルルル……。
「逃げるが勝ち。逃げるのも勇気。神速を尊べ」
相手が怒り心頭になったなら、スピンキーは一目散に逃げ始める。
一応と、ロンベルも生肉を用意しつつ様子見。
「イブリースだから言葉が通じる……だなんて思わないけど、まぁ言いたいことは伝わるだろ多分」
彼もまた野犬に呼びかけ、誘き寄せを行っていた。
嗅覚と胃袋を刺激されたのか、それとも、煽りがあまりにひどかったのか、野犬達も走ってこちらへと向かってくる。
煽っていた飛龍やスピンキーが逃げるのを追いかけつつ、さらにその先にあるチーズや肉目掛け、野犬達は疾走していく。
ガウアウワウッ!!
上手く犬達を街道に飛び出させれば、こちらのもの。
備えていたアリアが蒼と白のマナを纏い、刃を両手に華麗な舞いを踊る。
「麦畑への被害は抑えないとね」
そうして、アリアは街道へと出てきた野犬達の動きを封じようというのだ。
サポーターとして駆け付けてきたフィオレットも、麦畑の傍で防御に専念する。
「備えあれば嬉しいな、と言う事じゃしのぅ♪」
メインで依頼を受けるメンバーに対し、退治に専念してほしいと願うフィオレット。
その手前側にモカも布陣し、再度野犬達が麦畑に踏み入らぬよう気にかけ、レイピアとバックラーを手に取って身構える。
「万が一、畑側に逃亡されても大丈夫な様にな」
一言告げたロンベルは片刃の戦斧を手にして奮起し、目の前の野犬へと立ち向かっていくのである。
●麦畑を守りながら浄化を!
バウワウアウ!!
狂ったように襲い掛かってくる3匹の野犬。
「みたとこでっけぇのがボス犬だろ? やるなら、そいつからだな!」
街道に出た飛龍は、仲間へと攻撃対象を確認する。
「了解よ」
後方にいるアリアがそれに応じ、穏やかな心でステップを踏みつつ跳躍し、双剣と同じデザインの魔力の剣を放つ。
それは山彦を伴い、直線で飛ぶ剣を追うようにして追撃していく。
連続して剣に射抜かれつつも、ボス犬は大きく口を開いて噛みついてくる。
(やはり、直線的な攻撃だね)
攻撃は単調なものだ。だからこそ、予備動作を確認したエルシーは左へと避けようとした。
そこへ、前線へとナバルが身構え、ライオットシールドを構えて仲間のカバーへと当たる。
「ボス犬の麻痺爪は厄介だからな。耐性のあるオレに任せてくれ!」
防御タンクスタイルの彼は、パリィングスキルを持つ。
これを使えば、仲間達の攻撃を遮ることなく、壁となることができる。
「すまないわね」
感謝の言葉を口にするエルシーは、古き紅竜の籠手を装着した拳で殴り掛かる。
エルシーは素早く相手の顔面へと右フックを叩きつけてから、左のアッパーを食らわせていた。
皆、最優先で狙うはやはり、麻痺爪が厄介なボス犬だ。
太陽の下、リズミカルに躍るモカは、直接野犬達の攻撃を受けぬようにと浮遊する。
宙を舞い踊る彼女は文字通り蝶のように舞い、蜂のような踊りに合わせてレイピアを突きつけ、ボス犬を攻め立てていた。
「存分に暴れさせてもらうぜ!」
拳を鳴らす飛龍は、我が身に龍が駆け巡るような呼吸法を行いながら、ガントレットで殴りかかる。
続き、超巨大ハンマー・ヒポポタマスでリムリィが殴り掛かると、間髪入れずにスピンキーが叫ぶ。
「うなー!」
咆哮を上げる自身へと僅かに驚きを見せたボス犬目掛け、スピンキーは拳で殴り掛かっていく。
「ふっふっふ、どうだ恐れ入ったか!」
ただの獣には負けないと、どや顔をして見せるスピンキー。
「……っと、にゃあっ!」
しかしながら、子分犬2体がこぞって食らいついてくるのに、彼は少しだけ慌てていた様子。
そいつらをやり過ごしつつ、ロンベルは奮起して己に眠る獣性を高め、片刃の戦斧『デアボリックバスター』をボス犬へと叩きつけていく。
大きく仰け反ったボス犬目掛け、ヒットアンドアウェイで攻めるモカが素早く迫る。
それは、この場にいるアリアの技。
モカは速度を乗せ、頭上からレイピアの刃でボス犬の胴体を貫いてしまう。
アオオオォォ……ン。
一声大きく吠えたそのボス犬はみるみるうちに体を縮め、他の子分犬とさほど変わらぬ大きさとなり、倒れてしまったのだった。
ボス犬の浄化を完了し、オラクル達は残る子分犬達の浄化を続ける。
大型犬並みの体躯を持つ相手ながらも素早く戦場を駆け回る相手だが、この場には戦闘経験を重ねたメンバーも多い。
ナバルは防御寄りの立ち回りを続け、戦線をもたせようと動く。
毒牙を煌めかせ、鋭い爪を振るってくる子分犬達。
防御しつつも、さすがに体力が減ったナバルも危機を察すれば、ショートスピアを振るう手を止め、全力で盾を構えて防御に当たる。
敵の力もあってか、あまりメンバー達も回復は考えずに攻撃を繰り返す。
マウントをとるように、子分犬へと殴り掛かる飛龍。
それでも、素早く飛びのいてしまう敵の動きに辟易としたロンベルが、相手の足元に底なし沼を生み出す。
「大人しくしてろ」
沼に四肢を捕われた子分犬目掛け、跳躍したアリアが先ほど同様に両手の剣と同じデザインをした魔力剣を連続して飛ばす。
その連撃を受けた子分犬は沼の中でぐったりと倒れ、そのまま元の小型犬の姿に戻っていった。
残り1体にも、オラクル達の攻撃の手は強まる。
唸りを上げ、空中を薙ぐ子分犬の爪。それをエルシーはバックステップで避け、すぐに接近して強く殴りつける。
少し飛ばされた犬は空中で回転して着地して、さらに大きく口を開いて食らいかかろうとするが、一直線に飛ぶモカが子分犬の体をレイピアで貫いた。
そこへ、スピンキーがただひたすら殴りかかる。
「打つべし打つべし! べしべし!」
とにかく、スピンキーは片っ端から殴ることを考えて立ち回っていた。
「向かってきたやつはみんな倒すだけだべや!」
気合を入れ、相手を殴り倒すスピンキー。
ついに、最後の子分犬も力尽きてその場に倒れ、元の中型犬の姿へと戻っていったのだった。
●ワンちゃんの処遇と農作業のお手伝い
全ての野犬を浄化したオラクル達は武器を収める。
元の姿に戻った野犬達。ボス犬は大型犬、子分犬2匹は小型と中型犬となっていた。
「人は襲わなかったんだね、良い子良い子」
アリアは弱った野犬達へと優しく手当てし、メンバー達が用意した釣り出しようの餌を分け与える。
「よしよし。痛かった? ごめんなさいね」
エルシーもまた、元の大きさに戻った野犬を優しく撫でる。
「よしよし。痛かった? ごめんなさいね。もうイブリース化なんてしたらダメよ?」
仲間達が優しく野犬と触れ合う姿に、ナバルはやや困惑して。
「野山に帰した方がいいんじゃないかな」
彼は野犬に脅しをかけ、人に近寄らぬようにとも考えていた。
「野生に戻すのは大変だろうからね」

アリアは彼らに首輪がついていることを指摘し、里親探しをしようと考える。
「そうですね。農夫さん達で飼っていただくことはできないかと、私も考えていまして……」
確かに、野犬であれば、そのまま野に放つのもありだとはモカも思っている。
だが、彼女は農夫達と共にある方が、この子達が幸せになれるのではと考えたようだ。
「これも何かの縁だし、私が買おうかな」
アリアは抱きかかえた小型犬がペロペロしてくるのを、くすぐったそうにしていた。
農夫達も話し合い、大型犬と中型犬を引き取ることにしていたようだ。
「さて! これで一件落着ね」
「うっし、終わり終わり!」
エルシーや飛龍は事件の完全解決を確認し、大きく背伸びをしていたのだった。
その後、メンバー達は解散するのだが、今回の1件もあって農作業は予定よりも遅れているとのこと。
「そういや、農作業の人手も必要なんだって?」
軽い鍛錬になるかと考え、飛龍も力仕事で手伝いを申し出る。
「遠慮なくこきつかってくれな!」
ナバルもまた、自分達が到着前に、野犬が壊してしまった柵や水路などの修繕の手伝いに回って。
「オレも実家は農家だからさ。こういうのはほっとけないんだよね」
麦はいいと語る彼が土地さえあれば麦畑をやりたいと語ると、農夫達もいい場所あれば探すと勧誘に当たっていたようだ。
モカも畑の手直しなど手伝いをと申し出る。
同じく、エルシーが収穫した麦の運搬の手伝いをするが、その揺れ動く大きな胸に農夫達も釘付けになっていた様子。
そこで、モカは自らにできることをと踊りながら唄を歌い始め、戦いが無事に終わったことを祝う。
モカの可愛らしい唄や踊りに、この場の皆はほっこりと微笑ましそうに彼女を見つめて元気を与えてもらっていた。
仲間達が農作業の手伝いを行う中、一通り畑を見回したスピンキーはのんびりと日向ぼっこ。
「やっぱ、平和が一番だべ。うんうん」
麦飯をいただいたスピンキーは満足げにお昼寝を始めていた。
ロンベルもまた、麦畑を眺めていて。
「収穫量が少ないな。今年は不作なのか?」
だが、今年は例年以上であり、このままなら豊作となるだろうと農夫達は語る。
「……これが聖櫃無しの農業ってやつか」
聖櫃があった時のシャンバラだったなら、この倍は収穫できたとロンベルは記憶している。
ならばこそ、シャンバラも同じくらいの収穫量と思われる。
イ・ラプセル領となった場所もあり、食料が賄いきれるのかどうかとロンベルは考える。
これから夏。冬までには……。
そこまで考えた彼は思考を止め、彼はお上に任せることにしたようだ。
程なくして、遅れていた分の農作業も終わり、農民達から感謝の言葉を受け、麦畑を離れていくオラクル達。
「そういえば、ナバルって奴が飲みに行こうとか言ってたな」
彼はナバルが妙な顔をしていたことを気にかけていたが、自身がシャンバラ出身であることを気にかけていたのだろうか。
とはいえ、特に予定もないロンベルは、そのまま誘いに乗って飲みに行くことにしたのだった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
マギアスティーム初のリプレイでした。
MVPは浄化した野犬の引き取りを名乗り出たあなたへ。
今回は参加していただき、ありがとうございました!
MVPは浄化した野犬の引き取りを名乗り出たあなたへ。
今回は参加していただき、ありがとうございました!
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