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魔導師村と念糸の繭

●
「この間はありがとな」
『演算士』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)の言う『この間』とは、イブリース化した魔物によって壊滅の危機を免れたとある集落の事だ。
そこにはアマノホカリからの移民が暮らし、職人達によって伝統の武具などが作成されていた。その極めて精巧で美麗な技術は、国内外問わず高い評価を得るに至っている。
そんな集落で作られた数々の業物は、先の自由騎士達の働きと交渉によって、後々自由騎士団にも卸される予定になっているのだった。
「……で、だ。その話を聞いたとある集落がな、それほどの活躍と功績を挙げている組織なのであればぜひ話を聞きたいと言ってきた。なんでも話次第ではその集落で作っている特殊な防具やアクセサリーを取引したいとも言ってきているようなんだ」
その村は首都からほど近い。だが特殊な結界が張られ、存在は知られどもたどり着く事が出来ない場所。幻の魔導師村と呼ばれている集落だった。
●
「ここがそうか」
自由騎士達がたどり着くと、すぐにローブを着た住人達が出迎える。
「よくぞおいでくださった」
自由騎士に歩み寄ったのは長と思しき人物。
「着いてすぐで誠に申し訳ないのじゃが、実は……頼み事がございましてな──」
自由騎士は集落から程近い洞窟を訪れていた。
『集落から少し歩いた場所に洞窟がある。その奥にあるものをとって来て頂きたいのじゃ』
「……って、取引じゃなかったのかよ」
「まぁまぁ。何か意図があるんでしょう」
「それでは……行きますか」
こうして自由騎士達は状況を整理する暇も無いまま、洞窟の奥に眠るとあるものを探す事になったのであった。
●
一方の魔導師村。
「いったようじゃな……。彼らには少し時間のかかる道のりを伝えてある。皆のもの、急ぎ準備を進めるのじゃ」
自由騎士たちを呼び寄せた魔導師村の真意は、如何に。
「この間はありがとな」
『演算士』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)の言う『この間』とは、イブリース化した魔物によって壊滅の危機を免れたとある集落の事だ。
そこにはアマノホカリからの移民が暮らし、職人達によって伝統の武具などが作成されていた。その極めて精巧で美麗な技術は、国内外問わず高い評価を得るに至っている。
そんな集落で作られた数々の業物は、先の自由騎士達の働きと交渉によって、後々自由騎士団にも卸される予定になっているのだった。
「……で、だ。その話を聞いたとある集落がな、それほどの活躍と功績を挙げている組織なのであればぜひ話を聞きたいと言ってきた。なんでも話次第ではその集落で作っている特殊な防具やアクセサリーを取引したいとも言ってきているようなんだ」
その村は首都からほど近い。だが特殊な結界が張られ、存在は知られどもたどり着く事が出来ない場所。幻の魔導師村と呼ばれている集落だった。
●
「ここがそうか」
自由騎士達がたどり着くと、すぐにローブを着た住人達が出迎える。
「よくぞおいでくださった」
自由騎士に歩み寄ったのは長と思しき人物。
「着いてすぐで誠に申し訳ないのじゃが、実は……頼み事がございましてな──」
自由騎士は集落から程近い洞窟を訪れていた。
『集落から少し歩いた場所に洞窟がある。その奥にあるものをとって来て頂きたいのじゃ』
「……って、取引じゃなかったのかよ」
「まぁまぁ。何か意図があるんでしょう」
「それでは……行きますか」
こうして自由騎士達は状況を整理する暇も無いまま、洞窟の奥に眠るとあるものを探す事になったのであった。
●
一方の魔導師村。
「いったようじゃな……。彼らには少し時間のかかる道のりを伝えてある。皆のもの、急ぎ準備を進めるのじゃ」
自由騎士たちを呼び寄せた魔導師村の真意は、如何に。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.魔導師村へ行き、取引を行う
2.繭を手に入れる
2.繭を手に入れる
麺です。なんとなくMPが足りてないのかもしれないと思いました。
魔道師村からの依頼。どうやら魔道師たちは自由騎士たちの実力をこの目で確かめようとしているようです。彼らの眼鏡にかなう実力はすでに持っているはずです。それをしっかりとみせつけ、魔道師村の人たちに自由騎士の実力を認めさせてください。
●ロケーション
魔導師村から呼び出された自由騎士達。だがそこで伝えられたのは取引の話でなく、洞窟でのとあるものの採集であった。そのとあるものとは繭。洞窟の奥に住む小型幻想種が紡ぐ繭を集めてきて欲しいというものだった。
聞いていた状況と違うと戸惑う自由騎士であったが、その採集を行うことに。
だがこの洞窟には村の住人によって巧妙な罠が仕掛けられていた。
その罠を掻い潜り、魔物たちを打ち倒し、自由騎士達は繭を探しだし、村へと戻る事になる。
・不通の洞窟
明かりは一切無い。深い層は陽の光を嫌うイブリース化した魔物達の巣窟となっている。大きく3つの特徴に分かれている。
1~3層。村人によって落石、落とし穴、矢などトラップが仕掛けられたゾーン。プレイングや各種スキルで対応可能です。
4~7層。複雑に入り組んだ層。リュンケウスなど探索に役立つスキルがあるとスムーズに攻略できます。また数は多いものの比較的弱い魔物が出ます。物理攻撃に耐性を持つ魔物が多い。が、逆に魔導に強い耐性を持つものも少数存在する。4層では先回りし、自由騎士に向けてのトラップを仕掛けようとしていた者達が数名、魔導耐性を持つ魔物に襲われています。助けてあげてください。
8~9。洞窟の作りは非常に単調になり、迷う事は無い。だが数は少ないが強い個体が多くなり、すべての個体が強い物理耐性を持っています。魔導耐性持ちはいません。
10層。沢山の繭がある層。この層には強い魔物はいない。繭を紡ぐか弱い小型幻想種がいるのみ。
●敵&登場人物
・村の長老
ローブに杖。わかりやすい魔導師の風貌をした老人。取引をするはずだった自由騎士に繭を探してくるように頼みました。自由騎士の実力を試そうとしています。
・村人達
皆長老と同じような格好をしています。
・洞窟で襲われている若者 3人
村の魔道師。魔導に耐性を持つ魔物に襲われ、身を護るので精一杯の状況です。
・4~7層の魔物
比較的弱いものが大半。攻撃方法も単体近距離がメインだが、その多くが物理耐性を持ち、物理攻撃での撃破には時間がかかる。ただし、少数ではあるが全く逆の魔導耐性を持つ個体が存在する。上記の若者達は運悪くその少数の個体に遭遇してしまいました。
・8~9層の魔物
一体一体がそれなりに強い。物理攻撃はさらに効き辛い。攻撃も強力な近距離攻撃やBSを含む遠距離攻撃を所持しており、魔導系だけのパーティでは危険。盾となる存在が必須と思われる。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示が無い場合は、回復サポートに従事します。
所持スキルはステータスシートをご確認ください。
皆様のご参加お待ちしております。
魔道師村からの依頼。どうやら魔道師たちは自由騎士たちの実力をこの目で確かめようとしているようです。彼らの眼鏡にかなう実力はすでに持っているはずです。それをしっかりとみせつけ、魔道師村の人たちに自由騎士の実力を認めさせてください。
●ロケーション
魔導師村から呼び出された自由騎士達。だがそこで伝えられたのは取引の話でなく、洞窟でのとあるものの採集であった。そのとあるものとは繭。洞窟の奥に住む小型幻想種が紡ぐ繭を集めてきて欲しいというものだった。
聞いていた状況と違うと戸惑う自由騎士であったが、その採集を行うことに。
だがこの洞窟には村の住人によって巧妙な罠が仕掛けられていた。
その罠を掻い潜り、魔物たちを打ち倒し、自由騎士達は繭を探しだし、村へと戻る事になる。
・不通の洞窟
明かりは一切無い。深い層は陽の光を嫌うイブリース化した魔物達の巣窟となっている。大きく3つの特徴に分かれている。
1~3層。村人によって落石、落とし穴、矢などトラップが仕掛けられたゾーン。プレイングや各種スキルで対応可能です。
4~7層。複雑に入り組んだ層。リュンケウスなど探索に役立つスキルがあるとスムーズに攻略できます。また数は多いものの比較的弱い魔物が出ます。物理攻撃に耐性を持つ魔物が多い。が、逆に魔導に強い耐性を持つものも少数存在する。4層では先回りし、自由騎士に向けてのトラップを仕掛けようとしていた者達が数名、魔導耐性を持つ魔物に襲われています。助けてあげてください。
8~9。洞窟の作りは非常に単調になり、迷う事は無い。だが数は少ないが強い個体が多くなり、すべての個体が強い物理耐性を持っています。魔導耐性持ちはいません。
10層。沢山の繭がある層。この層には強い魔物はいない。繭を紡ぐか弱い小型幻想種がいるのみ。
●敵&登場人物
・村の長老
ローブに杖。わかりやすい魔導師の風貌をした老人。取引をするはずだった自由騎士に繭を探してくるように頼みました。自由騎士の実力を試そうとしています。
・村人達
皆長老と同じような格好をしています。
・洞窟で襲われている若者 3人
村の魔道師。魔導に耐性を持つ魔物に襲われ、身を護るので精一杯の状況です。
・4~7層の魔物
比較的弱いものが大半。攻撃方法も単体近距離がメインだが、その多くが物理耐性を持ち、物理攻撃での撃破には時間がかかる。ただし、少数ではあるが全く逆の魔導耐性を持つ個体が存在する。上記の若者達は運悪くその少数の個体に遭遇してしまいました。
・8~9層の魔物
一体一体がそれなりに強い。物理攻撃はさらに効き辛い。攻撃も強力な近距離攻撃やBSを含む遠距離攻撃を所持しており、魔導系だけのパーティでは危険。盾となる存在が必須と思われる。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示が無い場合は、回復サポートに従事します。
所持スキルはステータスシートをご確認ください。
皆様のご参加お待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
2個
2個
6個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2019年06月09日
2019年06月09日
†メイン参加者 6人†
●
「それじゃ洞窟での動きはそんな感じで頼むぜ」
「了解しましたぞ」
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は手短にジローに指示をすると黙々と歩き続ける。
いつもなら仲間達と面白おかしい会話をする事も多いウェルスだがこの日は少し違う。
(……クソッ。どうしても思い出したくねぇ事が過ぎっちまう)
険しい表情のままウェルスは歩き続けていた。
「うーん……」
同じく難しい表情をしているのは『遺志を継ぐもの』アリア・セレスティ(CL3000222)だ。こんな面倒な事をしなくても直接伝えてくれればいいのに──。
村には何かしらのしきたりや風習があるのかもしれない。理解は出来ても納得は出来ないといった風だ。
(魔導師村からのお誘いとなれば私としては気になるに決まってるわ♪)
一方の『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)はほくほく顔だ。魔導を極めんとするきゐこにとって魔導具ともいえるこの村のアイテムには興味が尽きない。
(それにしても洞窟奥にある物をとって来て欲しいって? ……まぁ別にいいけど……う~ん? おかしいわね……この道なんだか少し遠回りさせられてる気がするわ……)
そんな皆の様子を見ながらもにこにこ笑顔でついていくのは『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。
「あらあら、洞窟までお使いですかぁ~~。仕方がありませんねぇ、その分良い品を期待しましょう〜」
のんびりした口調のシェリルが話すと場の空気が穏やかになる。
「あれだな」
『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)が指差す先に洞窟が見えた。
さぁ、洞窟探検だ。
●
「よし。じゃあ今話した感じで問題ないな」
ウェルスが仲間とすり合わせたのは隊列について。これから潜るのは未知の洞窟。仲間の特性を活かし、万全に備える。
「さぁ行こう」
明かりを持ち、洞窟に詳しいものを先頭に自由騎士は進む。
「では私は上へ」
「上?」
アリアは二段飛びで高く飛ぶと天井に接地する。そのまま天井をカンテラで照らしながら歩いていく。集中力をかなり要するが上からの危険に関してはこれでかなり防げる事になる。
「やはり洞窟は暗いですねぇ〜カンテラで後方から照らしていきますね〜」
シェリルの照らすカンテラが洞窟の闇を照らす。カンテラの光が届かぬ場所は吸い込まれそうなほどの闇が広がる。
「では俺達が先行しよう」
アデルが10フィートの棒を片手に歩き出す。戦闘服──というよりは装甲兵のようないでたちのアデル。赤く光るスコープで見据える先には漆黒が広がる。だがリュンケウスの瞳を駆使し、ケイブマスターでもあるアデルにとってトラップの打破など容易いものだった。
自然洞窟の中の人為的な痕跡や崩落しやすそうな壁などに注意を払いながら、さらに10フィートの棒で細心の注意を払う。
「明らかに気付かせるための設置……この罠自体陽動の可能性が高い」
アデルの経験が気付かせる。これは罠を避けたり解除しようとすると、別の罠が作動する、二重トラップだ。アデルの思惑通り10フィートの棒を使い、トラップを解除すると、それが起因となり更なるトラップが発動したのだった。
そんなアデルのすぐ後ろを進むのはきゐこ。その瞳もまた闇の先を見据えていた。
「この形状からすると──」
きゐこはアデルが発見した人為的痕跡から鋭く目星をつけ、トラップの種類を見破っていく。
「この罠……」
アリアの感じた違和感。それはトラップの仕掛けられ方。長老の話で洞窟に魔物がいることはわかっていた。だからこそ魔物が外へ出ぬためのトラップかと思っていたのだが。
(魔物を外に出さないためなら向きが逆よね? 何か別の意図があるの……?)
エルシーもまた隊列の真ん中で側面の壁をメインに10フィートの棒でトラップを探す。イェソドのセフィラを宿すエルシ-にとってトラップによる不意打ちなど問題ではない。だからこそ味方がトラップに掛からないよう、対応できる自らがトラップを発動させ、罠を無効化していく。
万全の体制で進む自由騎士達。先頭にはリュンケウスですべてを見通すアデルときゐこ、上にはアリア。そして後ろでは暗視で目を光らせるウェルスとジロー。万全の体制で進む自由騎士達の前に用意されていた様々なトラップは意味を成さず、そのほとんどが一切の被害を被る事も無く対処されたのであった。
シェリルがまるでコントのようなタイミングで掛かってしまう落とし穴を除いては。
「きゃぁ~またですかぁ~~! わたし~こうゆうの苦手ですぅ~!!」
幾度となく仲間に引っ張り上げられるシェリル。深刻なダメージを受けるようなものでなかったのはせめてもの幸いだった。
そんな中少々難しい顔をして最後尾を歩くのはウェルス。魔力温存を考え、常にマナウェーブを使用し、注意をしながら進んではいるものの、どこか気もそぞろだ。
「それにしても……この洞窟には魔物はいないのね」
3層から4層へ降りる途中、『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)が素朴な疑問を漏らす。様々なトラップがあり、10フィートの棒は大活躍したものの、1~3層では魔物との遭遇は一切無かった。逆に魔物が出ないからこそ人為的トラップがあったのかも──そんな事を考えていると。
「しっ!! 何か聞こえた」
4層へ降りてすぐ。先頭を行くアデルが異変に気付く。声を殺し、耳を澄ます自由騎士達。
「……ひぃーーー助けてくれっ!!」
「あっちから聞こえたわ!!」
きゐこの目星が、助けを請う声の方向を示す。
「誰かが襲われてる!? 急ぎましょう!!」
気配は感じども、その形跡のみだった人影。その正体とは──。
●
「くそっ!! 攻撃が効かないっ!!」
魔物に囲まれる3人の若者。攻撃はしているものの、効いている風は無い。風貌からするに集落の住人のようだが、魔導の効かない魔物に対し軽いパニック状態に陥っていた。
「駄目だ……俺達もうおしまいだ!!」
若者達が迫り来る魔物に自らの最後を感じたその時だった。
「あらあら、あの村の方ですかね?」
「ハァァァァァーーーーーー!!!」
「助けに来たぞ!!」
勇ましい声と共に若者達のもとへと駆けつけ、魔物達と対峙する自由騎士。
「危ないっ!!」
若者へ向けられた魔物の鋭い牙をその身に受けたのはアリア。庇ったアリアの肩口からは僅かに血が滲む。
「もう大丈夫です~」
シェリルが若者達へ駆け寄る。傷は負っているものみな命に別状がある程のものでは無さそうだ。シェリルはほっと一息つくと仲間に声を掛ける。
「襲われて皆さんは無事ですぅ~」
「よかったわ!」
「ならあとは……目の前の敵を倒すのみっ」
戦闘体勢に入る自由騎士達。
「くらいなさいっ!」
「くらうのですぅ~」
きゐことシェリルが緋い炎を魔物に向けて打ち放つ。炎は一直線に魔物へ向かい命中したのだが。
「!?」
明らかにダメージが少ない魔物達。
「はわ~~~全然効いてないですぅ~~」
「…って!? 魔導に耐性があるの!? 私ではどうも分が悪そう……物理が得意な皆に任せるわ!」
きゐこの目星が魔物の特性を察知させる。
「了解した」
槍を構え前に出るアデル、エルシー、アリア。
「あ、でも危なくなったら私も杖で殴るわ! 体は鍛えてるからね」
そう言いながら杖をぶんぶんと振るきゐこ。きゐこの場合本当にそれが有効である点が恐ろしくもあり、また頼もしくもある。
アリアが加速し、エルシーが拳を打ち込み、アデルが槍を構え突撃する。いかに魔導耐性がある魔物であろうと自由騎士達の圧倒的物理攻撃の前に次々と倒れていく。
「とおっ!!」
きゐこが魔導の使い手にあるまじき腕力(賛辞)で最後の魔物を倒すと、場には静寂が訪れたのであった。
「助かりました……」
「本当にありがとう……」
感謝の言葉を口々に自由騎士に伝える若者達。
「そういえば貴方達も洞窟の奥を目指していたのですか?」
アリアが尋ねる。それは自分達と同じく繭取得を依頼された者の可能性。
「いえ……」
「なんというか……」
たどたどしくはっきりしない態度をみせる若者達。
「もう大丈夫? 怪我はない? ……で、貴方達はココで何をしていたの?」
エルシーが優しく若者達に尋ねる。命を救われた恩も感じていたのか、若者達は何故ここにいたのか、何をしていたのか、すべてを自由騎士達に話した。
浅い層のトラップは集落の皆で設置したものであった事、そのトラップを発動させる為に来た事。そして……4層の魔物を3層に誘導しようとして魔導耐性を持つ魔物に出会ってしまった事。──全ては自由騎士を試すために行った事を。
「何で態々そんな事を……」
感じていた違和感の正体が判明し、怪訝な表情を見せるアリア。
「それは……」
「まぁそれは戻ったら長老の口から改めて聞く事にしよう。で、どうする?」
どうする、とは若者たちをどうするか。先に返すのか、それとも同行させるのか。
「連れて行けばいいんじゃねぇか」
腕を組み少し離れた場所にいたウェルスが言う。
「私もそう思うわ」
個人的には問い詰めたい……という気持ちを抑えながら、ここは皆に合わせ様子を見るきゐこ。だがその瞳はしっかりと若者の一挙手一動を観察している。
「確かに……護衛も出来ますし、引き返すより安全でしょう」
アリアが若者達への同行をさらに促す。
「村長に依頼されてきたんです、もちろん協力してくれますよね?」
「危ないのでわたしたちと一緒に行動しませんかぁ? その方がそちらも都合──いいですよねぇ?」
シェリルの商人として培った勘であろうか──笑顔を見せながらのんびり話す中にも、若者達の意図を見透かすような言葉が内包されている。
口ごもる若者達。どうやら自分達がどうしていいのか判断できないといった様子だ。
「私もついてきて欲しいわ。聞きたい事もあるし……」
ここでエルシーの必殺技がでる。先ほどまでの戦闘で上気した身体をしだれかけながら若者に詰め寄っていく。エルシーの吐息が若者の耳元を撫でる。
「ねぇ……この洞窟ってどんな場所なの? 知っている事を教えてくれない?」
「そ、それは──」
若者達がエルシーの色香に見事に惑わされ、更なる情報を話すのにさほど時間はかからなかった。
その後、自由騎士達は速度域で魔物達に大きくアドバンテージを取るアリアの物理魔導のスイッチ攻撃により魔物の耐性を特定。アデルの鉄壁の防御で魔物からの攻撃を受け流しつつ、ウェルスが回復を担う。そして潤沢な魔導力を持ってシェリルが高火力スキルで敵を一掃。7層までを無事に突破したのだった。
●
そして8層。これまでと違う洞窟の空気が重くなるような感覚に襲われる自由騎士達。聞けば若者達はこれほど奥までは来た事が無いという。ただここから先は魔物のレベルが違うと言われていたという。洞窟自体もそれまでの入り組んだものから比較的広い一本道になる。
「かなり雰囲気が変わったわね」
「この側面の傷跡。かなり大型の魔物がいるようだな」
洞窟の壁には何かが這いずったような跡。かなり大きなものだ。
(気を引き締めなければ──)
自由騎士の誰もがそう感じながら先へ進む。
「俺が前で抑える! 攻撃は頼んだぞ!」
8層で遭遇した敵は物理体制が非常に高いという特長を持っていた。これまで同様アリアのスイッチ攻撃でその耐性を確認した一行は、極端な魔導シフトで挑んでいた。
アデルはチーム随一の防御力を活かし、前に出てブロック。魔導出攻撃する味方へ攻撃を及ばぬよう体を張る。
「回復は任せろっ!」
そんなアデルを随時サポートしているのはウェルス。マナウェーブで自身の魔導力を随時回復させつつ、ジローと共に仲間の回復と戦線維持に集中していた。
「ジローの旦那は状態異常回復、頼むぜ!」
スナイパーとして一級の腕を持つウェルス。だが今この瞬間ばかりは回復の要としてメンバー全員の大きな大きな支えとなっていた。
「大丈夫ですか。私の後ろへ」
アリアは若者達の安全を最優先に常にガードの姿勢で挑む。彼らを同行させるという選択を行ったからには必ず無事につれて帰らねばならない。アリアの決意はパリィングという自己を犠牲にしてでも対象を守るという行動自体に色濃く現れていた。
「ハァッーーーーー回天號砲!!!」
エルシーが気を練り上げて放つ光の球は、ダメージ与えながら魔物の速度を奪っていく。
「そろそろ幕引きなのだわ。食らいなさい……黄泉国火車の足引き!!」
地面より無数の手が創造され、瞬く間に魔物の自由を奪いとる必殺。きゐこ本人も呪術らしくたいそうお気に入りのこの技によって魔物は行動を阻害され、無防備を晒すことになる。
「今なのだわっ!」
きゐこが合図すると一歩前に出たのはシェリル。
「出会ってしまったのはしょうがないのですぅ~~。大火力で殲滅ですぅ!」
ジウスドラの函──極限まで溜めた魔力の波動を一気に魔物に向かい放出する。
洪水の如き魔力の2連の波動が魔物を襲う。
「ギュオオオオォォォォーーーン」
波動が過ぎた後、そこには動く魔物など存在しなかった。
こうして自由騎士は抜群の連携と役割分担によって8、9層の魔物を次々と撃破。とうとう10層へとたどり着いたのであった。
「すごいな……」
10層にたどり着いた自由騎士達の前に広がっていたのは一面の繭畑だった。暗闇の中それは僅かな光を放つように輝き、それはそれは幻想的な風景を作り上げていた。
そして良く見ると小さな小さな幻想種が繭を紡いでいるのがわかる。
「繭がいっぱいですぅ…これが糸になるんですねぇ。すみません少し分けていただけませんかぁ?」
シェリルが話しかけると幻想種が近づいてくる。
「君達を傷つけるつもりは無い。ただ繭を少し分けて欲しいのだ」
「そうなのよ。私達は繭を分けて欲しいだけなのだわ」
幻想種が自由騎士達の周りを何かを確かめるように浮遊する。
『めう』
幻想種は一言発すると、自由騎士達から離れまた繭を紡ぐ作業に戻った。
「これって……許してもらえたのか……な?」
こうして自由騎士達は、繭を紡ぐ幻想種と争う事無く繭の取得に成功したのであった。
「では戻りましょう」
●
洞窟から戻ると集落の皆が総出で自由騎士達の帰りを待っていた。
「ご所望の物はコレでいいかしら?」
エルシーは回収した繭を村人に渡す。洞窟でのトラップも若者達の証言で全ては仕組まれたことである事はわかっていたがあえて何も言わなかった。
「何の意図があったかは知らんが、俺は当初の約束通り取引ができれば良いし、それが継続することを希望する。『自由騎士の業務執行妨害』による後々の訴追は、お互い面倒な事になるからな」
アデルがあえて『妨害』という言葉を口にする。これは今回の妨害行為自体を一つの交渉材料とし、今後の抑止力として利用しようというアデルなりの作戦であった。妨害行為自体を今問えば、大きな問題になるだろう。なにせ自由騎士は国王直属の部隊なのだ。
「おい……」
「まずいんじゃないか……」
ざわつく集落の人々。するとそのざわめきを掻き分けるように、奥から長老が現れる。長老の言動を固唾を呑んで見守る民衆達。
「先ずは……試すような真似をして申し訳ない」
自由騎士が持ち帰った繭を渡され、若者達から話を聞いた長老が取った行動は、心からの自由騎士達への謝罪であった。
「誰かが深刻な傷を負ったら、どうするつもりだったのです?」
アリアが長老へ怒りを顕にし詰問する。ただの度胸試しで済む話ではない。もし経験の浅い自由騎士が本件に対応していたらどうなっていたか。そのせいで、助けられるはずだった人々を助けられなくなっていたかもしれないのだ。
「本当に申し訳ないと思っている……。このようなやり方が良くない事は我々も重々承知している。……だが我らの作る魔導具は万が一にも望まぬ人の手に渡る事はあってはならないのですじゃ。正しき力を持つ者以外の手に渡る事がないよう先祖代々行ってきたことなのじゃ。どうか許していただきたい」
長老が改めて頭を下げると集っていた集落の皆も頭をたれる。やり方こそ行き過ぎてはいるものの、それは傲慢や欺瞞が発端にあるわけでなく、純粋な魔導具が悪用されることへの危惧──それがこのような状況を招いているであろう事は自由騎士達も理解できなくは無い。しばしの沈黙の時間。その沈黙を破ったのはシェリルだった。
「さぁてようやく交渉ですね。わたしたちはぁ交渉のためにこちらへ赴き、素材を集め、村人も助けましたぁ~。魔導具、お譲りいただけますよねぇ~」
「そうそう、お願いも聞いた事だし、良い品譲って貰うわよ!」
「あ、あぁ。もちろんですとも。自由騎士の皆様にはこの集落で作っている魔導具を卸させて頂きます。先ずはアクセサリーを用意しましょう」
シェリルはにっこりと笑う。
こうして自由騎士達は後日集落で作った纏まった数の魔導具を自由騎士団へ卸すことを約束させ集落を後にしたのだった。
●
「……くそっ」
交渉をする仲間達を残し、無言で集落を後にしたウェルス。様々な経験をしてきたウェルスは今、自由騎士の仲間達という真に信頼できる者達を得るに至った。
だが……過去への後悔がもたらす闇は未だウェルスを呪縛し続けているようだった。
「それじゃ洞窟での動きはそんな感じで頼むぜ」
「了解しましたぞ」
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は手短にジローに指示をすると黙々と歩き続ける。
いつもなら仲間達と面白おかしい会話をする事も多いウェルスだがこの日は少し違う。
(……クソッ。どうしても思い出したくねぇ事が過ぎっちまう)
険しい表情のままウェルスは歩き続けていた。
「うーん……」
同じく難しい表情をしているのは『遺志を継ぐもの』アリア・セレスティ(CL3000222)だ。こんな面倒な事をしなくても直接伝えてくれればいいのに──。
村には何かしらのしきたりや風習があるのかもしれない。理解は出来ても納得は出来ないといった風だ。
(魔導師村からのお誘いとなれば私としては気になるに決まってるわ♪)
一方の『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)はほくほく顔だ。魔導を極めんとするきゐこにとって魔導具ともいえるこの村のアイテムには興味が尽きない。
(それにしても洞窟奥にある物をとって来て欲しいって? ……まぁ別にいいけど……う~ん? おかしいわね……この道なんだか少し遠回りさせられてる気がするわ……)
そんな皆の様子を見ながらもにこにこ笑顔でついていくのは『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。
「あらあら、洞窟までお使いですかぁ~~。仕方がありませんねぇ、その分良い品を期待しましょう〜」
のんびりした口調のシェリルが話すと場の空気が穏やかになる。
「あれだな」
『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)が指差す先に洞窟が見えた。
さぁ、洞窟探検だ。
●
「よし。じゃあ今話した感じで問題ないな」
ウェルスが仲間とすり合わせたのは隊列について。これから潜るのは未知の洞窟。仲間の特性を活かし、万全に備える。
「さぁ行こう」
明かりを持ち、洞窟に詳しいものを先頭に自由騎士は進む。
「では私は上へ」
「上?」
アリアは二段飛びで高く飛ぶと天井に接地する。そのまま天井をカンテラで照らしながら歩いていく。集中力をかなり要するが上からの危険に関してはこれでかなり防げる事になる。
「やはり洞窟は暗いですねぇ〜カンテラで後方から照らしていきますね〜」
シェリルの照らすカンテラが洞窟の闇を照らす。カンテラの光が届かぬ場所は吸い込まれそうなほどの闇が広がる。
「では俺達が先行しよう」
アデルが10フィートの棒を片手に歩き出す。戦闘服──というよりは装甲兵のようないでたちのアデル。赤く光るスコープで見据える先には漆黒が広がる。だがリュンケウスの瞳を駆使し、ケイブマスターでもあるアデルにとってトラップの打破など容易いものだった。
自然洞窟の中の人為的な痕跡や崩落しやすそうな壁などに注意を払いながら、さらに10フィートの棒で細心の注意を払う。
「明らかに気付かせるための設置……この罠自体陽動の可能性が高い」
アデルの経験が気付かせる。これは罠を避けたり解除しようとすると、別の罠が作動する、二重トラップだ。アデルの思惑通り10フィートの棒を使い、トラップを解除すると、それが起因となり更なるトラップが発動したのだった。
そんなアデルのすぐ後ろを進むのはきゐこ。その瞳もまた闇の先を見据えていた。
「この形状からすると──」
きゐこはアデルが発見した人為的痕跡から鋭く目星をつけ、トラップの種類を見破っていく。
「この罠……」
アリアの感じた違和感。それはトラップの仕掛けられ方。長老の話で洞窟に魔物がいることはわかっていた。だからこそ魔物が外へ出ぬためのトラップかと思っていたのだが。
(魔物を外に出さないためなら向きが逆よね? 何か別の意図があるの……?)
エルシーもまた隊列の真ん中で側面の壁をメインに10フィートの棒でトラップを探す。イェソドのセフィラを宿すエルシ-にとってトラップによる不意打ちなど問題ではない。だからこそ味方がトラップに掛からないよう、対応できる自らがトラップを発動させ、罠を無効化していく。
万全の体制で進む自由騎士達。先頭にはリュンケウスですべてを見通すアデルときゐこ、上にはアリア。そして後ろでは暗視で目を光らせるウェルスとジロー。万全の体制で進む自由騎士達の前に用意されていた様々なトラップは意味を成さず、そのほとんどが一切の被害を被る事も無く対処されたのであった。
シェリルがまるでコントのようなタイミングで掛かってしまう落とし穴を除いては。
「きゃぁ~またですかぁ~~! わたし~こうゆうの苦手ですぅ~!!」
幾度となく仲間に引っ張り上げられるシェリル。深刻なダメージを受けるようなものでなかったのはせめてもの幸いだった。
そんな中少々難しい顔をして最後尾を歩くのはウェルス。魔力温存を考え、常にマナウェーブを使用し、注意をしながら進んではいるものの、どこか気もそぞろだ。
「それにしても……この洞窟には魔物はいないのね」
3層から4層へ降りる途中、『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)が素朴な疑問を漏らす。様々なトラップがあり、10フィートの棒は大活躍したものの、1~3層では魔物との遭遇は一切無かった。逆に魔物が出ないからこそ人為的トラップがあったのかも──そんな事を考えていると。
「しっ!! 何か聞こえた」
4層へ降りてすぐ。先頭を行くアデルが異変に気付く。声を殺し、耳を澄ます自由騎士達。
「……ひぃーーー助けてくれっ!!」
「あっちから聞こえたわ!!」
きゐこの目星が、助けを請う声の方向を示す。
「誰かが襲われてる!? 急ぎましょう!!」
気配は感じども、その形跡のみだった人影。その正体とは──。
●
「くそっ!! 攻撃が効かないっ!!」
魔物に囲まれる3人の若者。攻撃はしているものの、効いている風は無い。風貌からするに集落の住人のようだが、魔導の効かない魔物に対し軽いパニック状態に陥っていた。
「駄目だ……俺達もうおしまいだ!!」
若者達が迫り来る魔物に自らの最後を感じたその時だった。
「あらあら、あの村の方ですかね?」
「ハァァァァァーーーーーー!!!」
「助けに来たぞ!!」
勇ましい声と共に若者達のもとへと駆けつけ、魔物達と対峙する自由騎士。
「危ないっ!!」
若者へ向けられた魔物の鋭い牙をその身に受けたのはアリア。庇ったアリアの肩口からは僅かに血が滲む。
「もう大丈夫です~」
シェリルが若者達へ駆け寄る。傷は負っているものみな命に別状がある程のものでは無さそうだ。シェリルはほっと一息つくと仲間に声を掛ける。
「襲われて皆さんは無事ですぅ~」
「よかったわ!」
「ならあとは……目の前の敵を倒すのみっ」
戦闘体勢に入る自由騎士達。
「くらいなさいっ!」
「くらうのですぅ~」
きゐことシェリルが緋い炎を魔物に向けて打ち放つ。炎は一直線に魔物へ向かい命中したのだが。
「!?」
明らかにダメージが少ない魔物達。
「はわ~~~全然効いてないですぅ~~」
「…って!? 魔導に耐性があるの!? 私ではどうも分が悪そう……物理が得意な皆に任せるわ!」
きゐこの目星が魔物の特性を察知させる。
「了解した」
槍を構え前に出るアデル、エルシー、アリア。
「あ、でも危なくなったら私も杖で殴るわ! 体は鍛えてるからね」
そう言いながら杖をぶんぶんと振るきゐこ。きゐこの場合本当にそれが有効である点が恐ろしくもあり、また頼もしくもある。
アリアが加速し、エルシーが拳を打ち込み、アデルが槍を構え突撃する。いかに魔導耐性がある魔物であろうと自由騎士達の圧倒的物理攻撃の前に次々と倒れていく。
「とおっ!!」
きゐこが魔導の使い手にあるまじき腕力(賛辞)で最後の魔物を倒すと、場には静寂が訪れたのであった。
「助かりました……」
「本当にありがとう……」
感謝の言葉を口々に自由騎士に伝える若者達。
「そういえば貴方達も洞窟の奥を目指していたのですか?」
アリアが尋ねる。それは自分達と同じく繭取得を依頼された者の可能性。
「いえ……」
「なんというか……」
たどたどしくはっきりしない態度をみせる若者達。
「もう大丈夫? 怪我はない? ……で、貴方達はココで何をしていたの?」
エルシーが優しく若者達に尋ねる。命を救われた恩も感じていたのか、若者達は何故ここにいたのか、何をしていたのか、すべてを自由騎士達に話した。
浅い層のトラップは集落の皆で設置したものであった事、そのトラップを発動させる為に来た事。そして……4層の魔物を3層に誘導しようとして魔導耐性を持つ魔物に出会ってしまった事。──全ては自由騎士を試すために行った事を。
「何で態々そんな事を……」
感じていた違和感の正体が判明し、怪訝な表情を見せるアリア。
「それは……」
「まぁそれは戻ったら長老の口から改めて聞く事にしよう。で、どうする?」
どうする、とは若者たちをどうするか。先に返すのか、それとも同行させるのか。
「連れて行けばいいんじゃねぇか」
腕を組み少し離れた場所にいたウェルスが言う。
「私もそう思うわ」
個人的には問い詰めたい……という気持ちを抑えながら、ここは皆に合わせ様子を見るきゐこ。だがその瞳はしっかりと若者の一挙手一動を観察している。
「確かに……護衛も出来ますし、引き返すより安全でしょう」
アリアが若者達への同行をさらに促す。
「村長に依頼されてきたんです、もちろん協力してくれますよね?」
「危ないのでわたしたちと一緒に行動しませんかぁ? その方がそちらも都合──いいですよねぇ?」
シェリルの商人として培った勘であろうか──笑顔を見せながらのんびり話す中にも、若者達の意図を見透かすような言葉が内包されている。
口ごもる若者達。どうやら自分達がどうしていいのか判断できないといった様子だ。
「私もついてきて欲しいわ。聞きたい事もあるし……」
ここでエルシーの必殺技がでる。先ほどまでの戦闘で上気した身体をしだれかけながら若者に詰め寄っていく。エルシーの吐息が若者の耳元を撫でる。
「ねぇ……この洞窟ってどんな場所なの? 知っている事を教えてくれない?」
「そ、それは──」
若者達がエルシーの色香に見事に惑わされ、更なる情報を話すのにさほど時間はかからなかった。
その後、自由騎士達は速度域で魔物達に大きくアドバンテージを取るアリアの物理魔導のスイッチ攻撃により魔物の耐性を特定。アデルの鉄壁の防御で魔物からの攻撃を受け流しつつ、ウェルスが回復を担う。そして潤沢な魔導力を持ってシェリルが高火力スキルで敵を一掃。7層までを無事に突破したのだった。
●
そして8層。これまでと違う洞窟の空気が重くなるような感覚に襲われる自由騎士達。聞けば若者達はこれほど奥までは来た事が無いという。ただここから先は魔物のレベルが違うと言われていたという。洞窟自体もそれまでの入り組んだものから比較的広い一本道になる。
「かなり雰囲気が変わったわね」
「この側面の傷跡。かなり大型の魔物がいるようだな」
洞窟の壁には何かが這いずったような跡。かなり大きなものだ。
(気を引き締めなければ──)
自由騎士の誰もがそう感じながら先へ進む。
「俺が前で抑える! 攻撃は頼んだぞ!」
8層で遭遇した敵は物理体制が非常に高いという特長を持っていた。これまで同様アリアのスイッチ攻撃でその耐性を確認した一行は、極端な魔導シフトで挑んでいた。
アデルはチーム随一の防御力を活かし、前に出てブロック。魔導出攻撃する味方へ攻撃を及ばぬよう体を張る。
「回復は任せろっ!」
そんなアデルを随時サポートしているのはウェルス。マナウェーブで自身の魔導力を随時回復させつつ、ジローと共に仲間の回復と戦線維持に集中していた。
「ジローの旦那は状態異常回復、頼むぜ!」
スナイパーとして一級の腕を持つウェルス。だが今この瞬間ばかりは回復の要としてメンバー全員の大きな大きな支えとなっていた。
「大丈夫ですか。私の後ろへ」
アリアは若者達の安全を最優先に常にガードの姿勢で挑む。彼らを同行させるという選択を行ったからには必ず無事につれて帰らねばならない。アリアの決意はパリィングという自己を犠牲にしてでも対象を守るという行動自体に色濃く現れていた。
「ハァッーーーーー回天號砲!!!」
エルシーが気を練り上げて放つ光の球は、ダメージ与えながら魔物の速度を奪っていく。
「そろそろ幕引きなのだわ。食らいなさい……黄泉国火車の足引き!!」
地面より無数の手が創造され、瞬く間に魔物の自由を奪いとる必殺。きゐこ本人も呪術らしくたいそうお気に入りのこの技によって魔物は行動を阻害され、無防備を晒すことになる。
「今なのだわっ!」
きゐこが合図すると一歩前に出たのはシェリル。
「出会ってしまったのはしょうがないのですぅ~~。大火力で殲滅ですぅ!」
ジウスドラの函──極限まで溜めた魔力の波動を一気に魔物に向かい放出する。
洪水の如き魔力の2連の波動が魔物を襲う。
「ギュオオオオォォォォーーーン」
波動が過ぎた後、そこには動く魔物など存在しなかった。
こうして自由騎士は抜群の連携と役割分担によって8、9層の魔物を次々と撃破。とうとう10層へとたどり着いたのであった。
「すごいな……」
10層にたどり着いた自由騎士達の前に広がっていたのは一面の繭畑だった。暗闇の中それは僅かな光を放つように輝き、それはそれは幻想的な風景を作り上げていた。
そして良く見ると小さな小さな幻想種が繭を紡いでいるのがわかる。
「繭がいっぱいですぅ…これが糸になるんですねぇ。すみません少し分けていただけませんかぁ?」
シェリルが話しかけると幻想種が近づいてくる。
「君達を傷つけるつもりは無い。ただ繭を少し分けて欲しいのだ」
「そうなのよ。私達は繭を分けて欲しいだけなのだわ」
幻想種が自由騎士達の周りを何かを確かめるように浮遊する。
『めう』
幻想種は一言発すると、自由騎士達から離れまた繭を紡ぐ作業に戻った。
「これって……許してもらえたのか……な?」
こうして自由騎士達は、繭を紡ぐ幻想種と争う事無く繭の取得に成功したのであった。
「では戻りましょう」
●
洞窟から戻ると集落の皆が総出で自由騎士達の帰りを待っていた。
「ご所望の物はコレでいいかしら?」
エルシーは回収した繭を村人に渡す。洞窟でのトラップも若者達の証言で全ては仕組まれたことである事はわかっていたがあえて何も言わなかった。
「何の意図があったかは知らんが、俺は当初の約束通り取引ができれば良いし、それが継続することを希望する。『自由騎士の業務執行妨害』による後々の訴追は、お互い面倒な事になるからな」
アデルがあえて『妨害』という言葉を口にする。これは今回の妨害行為自体を一つの交渉材料とし、今後の抑止力として利用しようというアデルなりの作戦であった。妨害行為自体を今問えば、大きな問題になるだろう。なにせ自由騎士は国王直属の部隊なのだ。
「おい……」
「まずいんじゃないか……」
ざわつく集落の人々。するとそのざわめきを掻き分けるように、奥から長老が現れる。長老の言動を固唾を呑んで見守る民衆達。
「先ずは……試すような真似をして申し訳ない」
自由騎士が持ち帰った繭を渡され、若者達から話を聞いた長老が取った行動は、心からの自由騎士達への謝罪であった。
「誰かが深刻な傷を負ったら、どうするつもりだったのです?」
アリアが長老へ怒りを顕にし詰問する。ただの度胸試しで済む話ではない。もし経験の浅い自由騎士が本件に対応していたらどうなっていたか。そのせいで、助けられるはずだった人々を助けられなくなっていたかもしれないのだ。
「本当に申し訳ないと思っている……。このようなやり方が良くない事は我々も重々承知している。……だが我らの作る魔導具は万が一にも望まぬ人の手に渡る事はあってはならないのですじゃ。正しき力を持つ者以外の手に渡る事がないよう先祖代々行ってきたことなのじゃ。どうか許していただきたい」
長老が改めて頭を下げると集っていた集落の皆も頭をたれる。やり方こそ行き過ぎてはいるものの、それは傲慢や欺瞞が発端にあるわけでなく、純粋な魔導具が悪用されることへの危惧──それがこのような状況を招いているであろう事は自由騎士達も理解できなくは無い。しばしの沈黙の時間。その沈黙を破ったのはシェリルだった。
「さぁてようやく交渉ですね。わたしたちはぁ交渉のためにこちらへ赴き、素材を集め、村人も助けましたぁ~。魔導具、お譲りいただけますよねぇ~」
「そうそう、お願いも聞いた事だし、良い品譲って貰うわよ!」
「あ、あぁ。もちろんですとも。自由騎士の皆様にはこの集落で作っている魔導具を卸させて頂きます。先ずはアクセサリーを用意しましょう」
シェリルはにっこりと笑う。
こうして自由騎士達は後日集落で作った纏まった数の魔導具を自由騎士団へ卸すことを約束させ集落を後にしたのだった。
●
「……くそっ」
交渉をする仲間達を残し、無言で集落を後にしたウェルス。様々な経験をしてきたウェルスは今、自由騎士の仲間達という真に信頼できる者達を得るに至った。
だが……過去への後悔がもたらす闇は未だウェルスを呪縛し続けているようだった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
交渉は無事成功しました。近いうちにショップに村から卸された魔導具が並ぶことでしょう。
MVPは洞窟、戦闘での大きな役割。さらに交渉での切り札保持にまで言及した貴方へ。
ご参加ありがとうございました。
MVPは洞窟、戦闘での大きな役割。さらに交渉での切り札保持にまで言及した貴方へ。
ご参加ありがとうございました。
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