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【北方迎撃戦】前哨戦! 偵察部隊 対 哨戒部隊

●水鏡の予知 偵察部隊の皆様へ
水鏡の前にて、『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)はモノクルをかけ直していた。そして、オラクルたちに向かって指令を下す。
「諸君、お集まりいただき恐悦至極。水鏡の予知によれば、北の森の『聖霊門』を得るために攻め込んでくる。魔女狩りらは、北の森を拠点に活動するらしく、ご丁寧に発見できなかった簡易砦を利用して悪事を目論んでいるようだ。放置はできない。近日中に魔女狩りがイ・ラプセルへ本格的に攻めて来ることだろう」
さて、そこで、だが、とクラウスは前置きをする。
「現在この場に集まっている諸君に頼みがある。諸君ら6人には、北方迎撃作戦を開始する上で先発隊を務めて頂きたい。いわゆる、偵察部隊のことだ。北の森に建てられた魔女狩りの簡易砦周辺の状況を把握して来て欲しい。では、頼んだぞ。武運を祈っている」
●シャンバラの哨戒部隊
とある朝、北の森の簡易砦周辺からやや離れた場所で……。
哨戒部隊のケモノビト(ジャガー)三人が会話をしながらだらだらと歩いていた。
「ふわぁ。朝早くから哨戒部隊の役目とは、ついてないぜ!」
「上も人使い荒いよね。下っ端も楽じゃないっす」
「ま、哨戒なんてぱっぱとやっちまおうよ。どうせ何もないさ」
やる気があまり感じられない哨戒部隊のやや後方では、司祭クラスのケモノビト(ジャガー)ものそのそと歩いていた。
「おい、てめえら! ちんたらしてんじゃねえよ! イ・ラプセルのオラクル共にでも遭遇してみろ! 一発でぶっ殺されるぞ! 気合入れてけ、気合!!」
熱い説教をするのは、哨戒部隊の指揮官を任されているジャガー司祭である。
本当はジャガー司祭も哨戒部隊なんてやりたくはなかった。
どうせなら聖霊門奪還とか砦のボスとか大役を務めたかったのだが、彼も司祭の中では下っ端なので仕方がない。
「へえ、へえ、がんばりますよーだ!」
「うっす、きいつけるっす」
「はっ!」(バーカ! バーカ!)
しかも即席の部隊な上に、魔女狩り側と地方聖職者側は実のところあまり仲が良くない。
その意味でもジャガー司祭はやる気がしないのだが、断ることもできなかった。
いや、でも、もしかすると、哨戒部隊の任務中にイ・ラプセル側のオラクルを数人でも潰すことができたなら……。昇進もあるかもしれない?
「あ、あいつらは!?」
「ん? ま、まさか!」
「リュンケウスの瞳で確認するぞ……うん、間違いなく!」
前衛の三人は声を合わせて指揮官に報告する。
『イ・ラプセルの自由騎士団が北前方50mの木陰にいます!』
ジャガー司祭もリュンケウスの瞳を通して、改めて確信する。
ついに来た、この時が……。
「よっしゃあ! 奇襲を仕掛けろ、てめえら! 偵察にでも来たらしいイ・ラプセルの少数部隊を潰せば俺らの手柄だ!」
だが、ジャガー司祭の哨戒部隊の存在に気が付いていたのは、イ・ラプセル側も同じであり……。
「あ、あいつら!! 気づきやがったか! しまった、向かって来るぞ! 迎え撃て!」
イ・ラプセルの偵察部隊VSシャンバラの哨戒部隊。
北方迎撃戦の最初の戦闘が開始される!
初戦の勝敗の天秤は、いずれに傾くのだろうか?
水鏡の前にて、『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)はモノクルをかけ直していた。そして、オラクルたちに向かって指令を下す。
「諸君、お集まりいただき恐悦至極。水鏡の予知によれば、北の森の『聖霊門』を得るために攻め込んでくる。魔女狩りらは、北の森を拠点に活動するらしく、ご丁寧に発見できなかった簡易砦を利用して悪事を目論んでいるようだ。放置はできない。近日中に魔女狩りがイ・ラプセルへ本格的に攻めて来ることだろう」
さて、そこで、だが、とクラウスは前置きをする。
「現在この場に集まっている諸君に頼みがある。諸君ら6人には、北方迎撃作戦を開始する上で先発隊を務めて頂きたい。いわゆる、偵察部隊のことだ。北の森に建てられた魔女狩りの簡易砦周辺の状況を把握して来て欲しい。では、頼んだぞ。武運を祈っている」
●シャンバラの哨戒部隊
とある朝、北の森の簡易砦周辺からやや離れた場所で……。
哨戒部隊のケモノビト(ジャガー)三人が会話をしながらだらだらと歩いていた。
「ふわぁ。朝早くから哨戒部隊の役目とは、ついてないぜ!」
「上も人使い荒いよね。下っ端も楽じゃないっす」
「ま、哨戒なんてぱっぱとやっちまおうよ。どうせ何もないさ」
やる気があまり感じられない哨戒部隊のやや後方では、司祭クラスのケモノビト(ジャガー)ものそのそと歩いていた。
「おい、てめえら! ちんたらしてんじゃねえよ! イ・ラプセルのオラクル共にでも遭遇してみろ! 一発でぶっ殺されるぞ! 気合入れてけ、気合!!」
熱い説教をするのは、哨戒部隊の指揮官を任されているジャガー司祭である。
本当はジャガー司祭も哨戒部隊なんてやりたくはなかった。
どうせなら聖霊門奪還とか砦のボスとか大役を務めたかったのだが、彼も司祭の中では下っ端なので仕方がない。
「へえ、へえ、がんばりますよーだ!」
「うっす、きいつけるっす」
「はっ!」(バーカ! バーカ!)
しかも即席の部隊な上に、魔女狩り側と地方聖職者側は実のところあまり仲が良くない。
その意味でもジャガー司祭はやる気がしないのだが、断ることもできなかった。
いや、でも、もしかすると、哨戒部隊の任務中にイ・ラプセル側のオラクルを数人でも潰すことができたなら……。昇進もあるかもしれない?
「あ、あいつらは!?」
「ん? ま、まさか!」
「リュンケウスの瞳で確認するぞ……うん、間違いなく!」
前衛の三人は声を合わせて指揮官に報告する。
『イ・ラプセルの自由騎士団が北前方50mの木陰にいます!』
ジャガー司祭もリュンケウスの瞳を通して、改めて確信する。
ついに来た、この時が……。
「よっしゃあ! 奇襲を仕掛けろ、てめえら! 偵察にでも来たらしいイ・ラプセルの少数部隊を潰せば俺らの手柄だ!」
だが、ジャガー司祭の哨戒部隊の存在に気が付いていたのは、イ・ラプセル側も同じであり……。
「あ、あいつら!! 気づきやがったか! しまった、向かって来るぞ! 迎え撃て!」
イ・ラプセルの偵察部隊VSシャンバラの哨戒部隊。
北方迎撃戦の最初の戦闘が開始される!
初戦の勝敗の天秤は、いずれに傾くのだろうか?
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.シャンバラの哨戒部隊を全員倒す。
「この共通タグ【北方迎撃戦】依頼は、連動イベントになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することに問題はありません」
いよいよシャンバラ戦も本格化してきましたね!
シャンバラで熱く戦う皆さんを応援しているST、ヤトノカミです。
<概略>
偵察部隊の皆さんは、北の森を哨戒していた魔女狩りの部隊とばったり遭遇してしまいました。
もちろん、イ・ラプセル側もシャンバラ側もお互いを見逃す訳にはいかず、戦闘です。
6人(PC側)VS 4人(敵対NPC側)の少数対少数の戦いになります。
ルールは単純。敵を全員倒したらPC側の勝利です。
<場所、時間帯、天候など>
・北の森に魔女狩りが設置した簡易砦付近の森林。(敵の増援なし)
・周囲は原生林。木々が生い茂っているので歩きにくいところや狭いところもある。
・時間帯は朝頃。
・天候は晴れ。気温は20℃程度。
<敵対NPC>
●魔女狩り 3人
・ジャガーのケモノビト
・バトルスタイルは軽戦士
・魔女狩りの哨戒兵
・オラクル(ミトラース)
〇スキル(3人合わせて)
通常攻撃(剣) 攻近範
ヒートアクセルLv2 A:攻近単【ピヨ】
デュアルストライクLv2 A:攻近単【二連】
ラピッドジーンLv2 A:自
リュンケウスの瞳 序 P:自
フォレストマスター P:自
ハイバランサー 序 P:自
獣化変身(ジャガー)P:自(攻撃力とAGI上昇、防御力低下)
●ジャガー司祭(ステージボス)
・ジャガーのケモノビト
・バトルスタイルはネクロマンサー
・地方聖職者(準神民)
・オラクル(ミトラース)
〇スキル
通常攻撃(魔弾)魔遠範
ネクロフィリア(戦闘不能後マリオネット化)他付与
ケイオスゲイト(グラビティ2)魔遠範
ハーベストレインLv2[回復]A:魔遠味全
クリアカースLv2[特殊]A:遠味単
リュンケウスの瞳 序 P:自
フォレストマスター P:自
<敵対NPCの陣形>
・魔女狩り3人が横に並んで前衛。
・ジャガー司祭が真ん中で後衛。
解説は以上となります。
よろしくお願いいたします。
いよいよシャンバラ戦も本格化してきましたね!
シャンバラで熱く戦う皆さんを応援しているST、ヤトノカミです。
<概略>
偵察部隊の皆さんは、北の森を哨戒していた魔女狩りの部隊とばったり遭遇してしまいました。
もちろん、イ・ラプセル側もシャンバラ側もお互いを見逃す訳にはいかず、戦闘です。
6人(PC側)VS 4人(敵対NPC側)の少数対少数の戦いになります。
ルールは単純。敵を全員倒したらPC側の勝利です。
<場所、時間帯、天候など>
・北の森に魔女狩りが設置した簡易砦付近の森林。(敵の増援なし)
・周囲は原生林。木々が生い茂っているので歩きにくいところや狭いところもある。
・時間帯は朝頃。
・天候は晴れ。気温は20℃程度。
<敵対NPC>
●魔女狩り 3人
・ジャガーのケモノビト
・バトルスタイルは軽戦士
・魔女狩りの哨戒兵
・オラクル(ミトラース)
〇スキル(3人合わせて)
通常攻撃(剣) 攻近範
ヒートアクセルLv2 A:攻近単【ピヨ】
デュアルストライクLv2 A:攻近単【二連】
ラピッドジーンLv2 A:自
リュンケウスの瞳 序 P:自
フォレストマスター P:自
ハイバランサー 序 P:自
獣化変身(ジャガー)P:自(攻撃力とAGI上昇、防御力低下)
●ジャガー司祭(ステージボス)
・ジャガーのケモノビト
・バトルスタイルはネクロマンサー
・地方聖職者(準神民)
・オラクル(ミトラース)
〇スキル
通常攻撃(魔弾)魔遠範
ネクロフィリア(戦闘不能後マリオネット化)他付与
ケイオスゲイト(グラビティ2)魔遠範
ハーベストレインLv2[回復]A:魔遠味全
クリアカースLv2[特殊]A:遠味単
リュンケウスの瞳 序 P:自
フォレストマスター P:自
<敵対NPCの陣形>
・魔女狩り3人が横に並んで前衛。
・ジャガー司祭が真ん中で後衛。
解説は以上となります。
よろしくお願いいたします。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2018年10月25日
2018年10月25日
†メイン参加者 6人†
●偵察部隊登場
プラロークの長から指令を受け、6人の自由騎士たちが北の森に偵察に来ていた。
6人の中でも比較的森歩きに慣れている『学ぶ道』レベッカ・エルナンデス(CL3000341)が先頭を歩いていた。
「それにしても……。ヴィスマルクに続いてシャンバラもですか? アクアディーネ様、大人気ですわね。何が何でも敵を撃退して、アクアディーネ様をお守りしないと……」
彼女の隣を歩く『飢えた白狼』リンネ・スズカ(CL3000361)も呟く。
「ふぅ、女神様も苦労が絶えませんねぇ? しかし宗教闘争……。縁ですねぇ。うちの神社も数代前は宗教弾圧への抵抗をしていたと聞いています。ま、それはそれとして、相手の侵攻を迎撃するのが私たちの務め!」
レベッカとリンネのすぐ後ろでは、『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)が遠方をじっと見ていた。
森林の奥で怪しい動きをしている奴らがいるようだ……。
「あれ? あの人たちって、もしかして?」
アリアの隣にいる『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)も頷いた。
「だな? ……シャンバラの奴らに違いないな?」
ちなみに今日の熊さんはちょっと怪しい姿をしている。両手にはタクティカルグローブを装着、体にはアサシンローブをまとい、顔は包帯でぐるぐる巻きだ。万が一、敵に遭遇して取り逃した時、自分の姿を報告されないためである。
ウェルスの後ろにいる『子リスの大冒険』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は、ちょこまか動く小動物の如く慌てる。
「うわーい、なんか木陰から近づいて来るね!? 向こうも少人数なのかな? 見つけちゃったからには倒さないわけにはいかないよね~! ちゃっちゃと終わらせよう!」
最後尾をとぼとぼ歩くのは『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)だ。(ちょっと眠そう)
「ふわぁ~!? そうですか……? ま、軽く爆撃して蹴散らしてやりますよ!」
まもなく戦闘に入るのでここで位置を入れ替える。
アリアが前に出て、レベッカが後退した。
「こちらの偵察任務がバレないように、逃がすわけにはいかないわね!」
リンネも走る姿勢に移る。
「まぁ、見つかったのなら倒せば良いだけのことです。威力偵察というのもある故にねぇ?」
各自、迎撃の準備を整えて、進行!
●奇襲と前衛
自由騎士団の陣営前方50メートル地点。
シャンバラの哨戒部隊を率いるジャガー司祭は焦っていた。
「あ、あいつら!! 気づきやがったか! しまった、向かって来るぞ! 迎え撃て!」
部下の軽戦士3人は、へいへいとか、はいよーとか、やる気のない返事で応答する。
一方、アリアがとてつもない速度で奇襲に来る!
強化されたアリアの速度はまるで突っ込んで来る兵器だ。
速度の弾丸と化した彼女は、ゆらめく残像をまとう蜃気楼のようだ。
(くっ!? この速度でどう迎え撃つんすか?)
シャンバラの軽戦士はひとまず全力で防御する。
だが……。
「そこね! とぅ!!」
ジャガー軽戦士はアリアの速度が目視できないのではない。
そもそも彼女の存在がそこにあると意識することすら難しいのだ。
「ぬおおっす!?」
全力で防御したものの、軽戦士は完全に防ぎきれなかった。
アリアの最速の一撃が決まった瞬間である。
アリアがたった今、攻撃した相手は自由騎士団側の位置から見て左翼にいた軽戦士だ。
ジャガー司祭は真ん中の後衛にいながら、呪文を唱える。
「ぎゃはは! 呪われちまえ、自由騎士め!」
アリアが次の奇襲に移ろうとすると、前方にいる他の軽戦士2人が彼女を抑え込む。
それぞれ連続斬撃で迎え撃ち、アリアに挑む。
さらに司祭の詠唱も決まり、アリアの真下から暗黒の光を放つ渦が召喚された。
「きゃあああ!」
アリアの反応速度がぐっと落ちる。
だが、この程度の速度が落ちてひるむ彼女ではない。
「私と相対したからには、逃がさないわよ!!」
アリアは剣戟を抑え込むと空中へ飛翔した。
そして宙返りをしながら、重力に逆らう回転剣舞の軌道を描く。
まるで流星が閃光をまとって突撃するかのようだ。
「ぎゃあああ!」
真ん中にいた軽戦士が斬撃の嵐に見舞われ膝をつく。
まだ戦闘不能にはしていないものの、まずまずの奇襲だ。
「アリア様! ご無事ですか?」
3倍速で追いつき、アリアの付近背後で待機していたリンネが解除呪文をかけてくれた。
アリアの身体周りで蠢いていた嫌な暗黒波動が一気に消し飛んだ。
「交代ね!」
「了解です!」
アリアは後退し、後衛に就いた。
入れ替わりに前衛はリンネが出る。
その時点でウェルスとエミリオが追いついた。
ウェルスは、銃撃力強化を。
エミリオは、体力強化を。
それぞれを自分自身にかけた後に移動したこともあってこの時間差だ。
今、両陣営の前衛が自分の対戦相手と向き合う。
自由騎士団側から向かって左翼がリンネの担当。
真ん中がウェルスの担当。
右翼がエミリオの担当。
「そーれ、行きますよー!」
エミリオが生成して抱えていた危うい色のフラスコを前方の敵に向かってぶん投げる。
どっかああん、どかどかどかーん!!
凄まじい威力で大爆発を起こす錬金術の爆薬は炸裂が止まらない。
しかも状態異常のおまけ付きだ。
「げほげほ、ぐはあ……。うぎゃああ、なんだ、これ!?」
爆撃を受けた軽戦士は、権能の力で魔抗力が高いものの、鈍くなるわ、毒々しいわ、熱いわ、で死にそうだ。
ウェルスの方は、対戦相手と距離を詰めながら銃を向ける。
「よう兄弟(同種族)! あんたらみたいな優秀なケモノビトが朝から使い走りだなんて不相応だな? ん? なんだその引きつった顔は? 言葉は不要か? ……なら、続きはあんたらを倒した後でゆっくりとするか!(やべぇ、哨戒に見つかる偵察って間抜けすぎる! 挑発と猛攻の勢いでごまかせー!)」
「けっ、挑発には乗るか!!」
ウェルスは敵の冷静さをくじこうと仕掛けるが、相手もなかなか乗って来ない。
熊の銃士は、愛銃で急所攻撃を繰り出して、状態異常を狙う。
しかし相手は森で戦い慣れている軽戦士だ。
俊足で銃撃を回避しながら、ウェルスに切り込んで来る!
「くっ、不覚! だが、まだまだ!!」
ウェルスが大型のシールドで敵の次の猛撃を防ぎ、跳ね飛ばし、距離を取る。
敵に一撃が入り、相手はやや冷静さを失った!
リンネも物理衝撃を流す構えで自己強化しつつ、速度を強化する軽戦士と相対していた。
暗殺針や飛術札で攻撃するものの、当たらなかったり弾かれたりする。
対戦相手の方も最高速度の一撃で突っ込んで来る!
「ぐっ! やりますね……!(まずい、すきがないです! 攻撃の片手間で味方を回復したいのですが、なかなかそれを許してくれませんね?)」
それでも前衛の3人は、後衛の仲間に一歩も近づかせまいと、必死でブロックする。
そう、真っ先に倒すべきは軽戦士たちなどではなく、もっとも危険なネクロマンサーだからだ。
●司祭VS後衛
敵陣にしても前衛は苦戦していた。
今のところ自由騎士団側の前衛3人に対して1人ずつの割り当てで戦っている。
ということは、3対3でブロックをしているという意味でもあるので、後衛は後衛同士で戦うことになる。
苦戦している前衛たちの傷を癒そうと、ジャガー司祭が回復魔術をかけようとしたそのとき……。
パン、パパン!!
司祭から見て前方東20mの木陰から弾丸が撃ち込まれる。
連続銃撃で、司祭の詠唱は手元が狂い、鮮血が飛び散る。
(ふぅ! 狙い通りですわね!)
レベッカは、前衛が戦ってくれている間、後衛の位置で銃撃能力を強化していた。しかも森についての知識もあるので木陰に隠れるのもお手の物。つまり、どこからかわかりづらい場所から急所攻撃の連続射撃を彼女は放っていた。
「てめえ……!! やってくれるじゃねえか!」
ジャガー司祭は味方の前衛は放っておいて、敵の後衛から始末することにした。
魔弾が炸裂する!
「きゃあ!!」
魔弾はミトラースの権能付きで範囲攻撃だ。
司祭は、銃撃が撃ち込まれた辺りを適当に爆撃したのだが、隠れていたレベッカが巻き込まれて被弾した。
「おらあ! ガンガン行くぜ!」
調子に乗った司祭は次の魔弾を放つ。
レベッカは逃げるので精一杯だ。
ぎゅぃん!!
鋭い竜の牙を剣に変えた騎士がいきなりの突撃!
「うぎゃあ!?」
突然の二連斬撃を胴体の真ん中から浴びて、司祭が膝をつく。
すると、後方では……。
「ウケケ!」
怪しく鳴く緑色の大きなリスがいた。
いや、これは森にいるリスなんかではなく……。
その場から司祭めがけてタックルで追加アタック!
さすがの司祭も正体不明の連続攻撃には面食らっていた。
そう、今のような攻撃手段は錬金術だ。
放った人物は、もちろん、クイニィー。
(まずはどう見ても怪しそうな後衛から何とかしないとね! ネクロマンサーらしき奴からやっちゃえば勝機はあるよね!)
クイニィーは後衛に就く前に、そして後衛に就いてからも準備をしていた。
レベッカの銃撃に司祭が気を取られているすきにホムンクルスを生成して放つ。
なるべく目立たないようにして、遠回り、後方から司祭へ近づかせた。
そして司祭が油断してレベッカを狙い撃ちにするタイミングでスパルトイの一撃。
ちょうどホムンクルスの追撃も続いた。
「おのれ! てめえまでー!」
司祭の怒りの魔弾はクイニィーにまで飛ぶ。
クイニィーも茂みから隠れて操作していたが、そこへ魔弾の範囲攻撃が及んだ。
「きゃ! いや~ん!!」
クイニィーが被弾した時点で、ある意味、勝負はついた。
前衛のブロックを抜け、空中二段飛びで木々から回り込んで来たアリアが司祭の背後に立っていた!
「な、てめえ、いつの間に! 前衛は何してる!?」
「影狼以外にも接近する手段はあるのよ!」
アリアは葬送の願いと慈悲の祈りの二刀流を構え、猛速度で連続攻撃を打ち込む! 手数の残量など気にしない勢いで、二連撃の鋭利な刃が迅速の吹雪のように炸裂する。司祭もほぼゼロ距離から魔弾を撃つが、何分、近距離戦においてフェンサーとネクロマンサーでは勝負にならない!
司祭は全身を切り刻まれ、血しぶきを上げる。
しかもレベッカの二連銃撃やクイニィーの人形兵士からも追撃が!
「ぐはっ……。ミトラース様……。申し訳、あり、ません……」
満身創痍のジャガー司祭はここで倒れた。
倒された司祭はクイニィーによって捕虜にされた。
●決着
どうして、アリアは前衛のブロックをすんなりと抜けられたのか?
彼女のスペックの優秀さ以外にもそれには理由がある。
司祭がやられてしまう少し前……。
(ちっ、自由騎士団はさすがに強いっす! しかも4対6だった時点で数的にも俺らが不利だったっす。さらに言えば、指揮官はバカのジャガー司祭。勝てるわけがないっすな。ならば……)
そう判断した軽戦士は、自由騎士団側から見て左翼の位置の前衛を放棄した。
彼はリンネに最高速度の一撃を与えた後、後衛に逃げた。
「くっ、油断しましたね! あ、こら、待ちなさい!!」
「おい、狼女! おまえの相手はこっちだ!」
敵の突然の陣形チェンジにリンネは焦った。
隣にいる軽戦士はウェルスの相手をしているのが精一杯なはずだが、前に立ち塞がる。
敵の作戦とは……!?
「リンネ嬢、構うな!!」
ウェルスはそう叫ぶと同時に、立ち塞がった野郎に向けて撃つ。
当然、2対1でとても戦えるわけではないので、軽戦士の戦いはおぼつかない。
エミリオと戦っているはずの軽戦士が今度は代わりに入る。
「俺が相手だ!」
彼がリンネの前に立ち塞がったところで、戦況はさほど変わらないはずだが……。
どがどがーん!
エミリオから炸薬の爆撃が容赦なく浴びせられる。
「このドアホ! 戦闘中によそ見しないでもらえます? 次で死んでくれますか!?」
エミリオがおどけた調子で爆撃した敵を挑発する。
右翼でずっと戦いに集中していたエミリオは事情が飲み込めていない。
だが、陣形チェンジには何かあると思い、敵の注意を自分に引き付けてみた。
「ははは! もらったっす! んじゃ、あばよっ!」
後衛に逃げたケモノビトは、獣化変身をしていたのだ。
ジャガーそのものになり、猛速度で簡易砦へ向かって逃げ出していた。
もはや勝てるわけがないと判断した彼は、一度、逃げることにした。
自分だけでも逃げ切れば、哨戒部隊としては役目を果たしたことになる。
ジャガー司祭に関しては、最後はおとり役として切り捨ててしまったが……。
「待ちなさい!! 待て、待てー!!」
追い回されている方はジャガーに変身した上に視界の見渡しも冴えている。
リンネの方は3倍強化された白狼のケモノビトの脚力で追い駆ける。
(ちっ、しつけー! だが、追手は一人っすね? やっつけちまえばいいかっ!)
これが運命の分かれ道だったのかもしれない。
もし、彼が賢くて、簡易砦まで逃げ切っていたのならば……。
(ん? 止まりましたね? そう? ……私と殺し合いますか?)
両者、間合いを取り、にらむ。
ややあって、最後の一撃が放たれる!
「ウガアアア!!(おらおら! 突撃だあああっ!!)」
猛速度でジャガーが突っ込んで来る!
「むっ!! そこですか!!」
リンネはジャガー相手に零距離ぎりぎりまで間合いを詰めた。
そして、ジャガーが突進してくるその顔面めがけて……!!
必殺の寸勁が完成した。
ジャガーは間正面から受けた拳の衝撃が全身に流れてけいれんし、ぶっ倒れた。
リンネは衝撃を敵の顔面から伝えきったと同時に、突撃の威力で吹き飛ばされた。
「きゃっ!!」
リンネは後方にある大木に背中を叩きつけられた。
それなりの衝撃だが、戦闘不能というほどではない。
一方のジャガーは必殺の一撃をくらって既に動かなくなっていた。
「ふぅ……。勝った、ん、ですね?」
***
リンネがジャガー相手に森で追いかけっこをしている最中、前衛たちも決着をつけていた。
「おい、エミリオの旦那? ちょいとしんどそうだな? まだやれるか?」
ウェルスは軽く傷を負い、体力的に消耗しながらも前衛仲間に問いかける。
「ははは、そっちこそ? 私、アルケミーにしては前衛でやる方だと思いますよ?」
エミリオも軽戦士の刃を受けて服や肌が切れている箇所もあるが、まだ笑っていられた。
次で決めるか、とどちらの自由騎士も思ったらしく、お互いに頷いた。
敵陣の前衛も最後の覚悟を決めていた。
仲間のジャガーが無事に簡易砦まで帰れるかどうかはわからない。
だが、自分たちがもはやここまでだということはわかっていた。
ジャガー軽戦士たちは渾身の力を振り絞るが如く構える!
「へへ、やってやるぜ!」
ウェルスはそう叫ぶと、必殺の銃撃をリロードした。
上空で強烈な弾頭が爆裂し、刺し殺すような鉄の雨が猛烈に降り注がれる!
「ええな、爆発で終わりや!! ひゃっはー!!」
エミリオも炸薬を生成し放り投げた。
ウェルスの必殺の一撃に追撃して、大爆発!
嵐のような爆撃で残り2人の敵勢はばったりと倒れた。
敵をこてんぱんに叩き潰してからエミリオはあることに気が付いた。
「ところで、偵察部隊っていう割には派手に動いてしまっていますが……大丈夫なんでしょうかね?」
その場にいた友軍全員が、はっとしたようだ。
ああ、やっちまったよ……と。
●調査報告
クイニィーはジャガー司祭をつんつんと暗殺針で突っついていた。
「ネクロマンサーってどんな感じなのか、まだ正確に知らないんだよね? 知りたいなぁ、知りたいなー! どんな攻撃技を持ってるのかなー? 戦闘不能者を操ったりー、地面をドロドロにして動けなくすることもできるんでしょ? あとは? あとはどんなことができるのー? ねぇねぇ、教えてよー!」
戦闘不能で倒されたジャガー司祭は死んではいないものの口が利けない。
「俺たちの仲間には魔女狩りを殺すために仲間ごと撃つ凶暴な奴とか、知ってることをどんな手を使ってでも引き出そうとする恐ろしい奴もいる……。だが、あんたらのことを素直に話すなら俺が間に入って許してやらんでもないぞ?」
部下2人も既に戦闘不能で伸びている。とてもウェルスに応答はできない。
「クイニィーさんにウェルスさん……。さすがにあれだけやったので、後は国に任せては……」
優しいアリアは、司祭や彼の部下たちの境遇を憐れんだ。
そこで、レベッカがみんなに提案する。
「もともとわたくしたちの役目は偵察でしたわね? せめて簡易砦の正確な位置だけでも把握して撤退しませんか?」
「この先に、崖があって……。そう遠くないところに簡易砦があるみたいですよ?」
森の中でジャガーを追いかけ、倒したリンネが獲物を担いで帰って来た。
彼女はもう少し先まで進んでしまったので、気が付いたことがあったようだ。
「んじゃ、それだけ確認したらずらかるぞ!」
「ですね」
ウェルスとエミリオがそう同意し、残りの仲間たちも異論はなかった。
前哨戦の偵察部隊VS哨戒部隊は、イ・ラプセル側の勝利に終わった。
簡易砦の位置把握に捕虜という手土産も持って帰れたようで、偵察としてもミッション完了だ。
了
プラロークの長から指令を受け、6人の自由騎士たちが北の森に偵察に来ていた。
6人の中でも比較的森歩きに慣れている『学ぶ道』レベッカ・エルナンデス(CL3000341)が先頭を歩いていた。
「それにしても……。ヴィスマルクに続いてシャンバラもですか? アクアディーネ様、大人気ですわね。何が何でも敵を撃退して、アクアディーネ様をお守りしないと……」
彼女の隣を歩く『飢えた白狼』リンネ・スズカ(CL3000361)も呟く。
「ふぅ、女神様も苦労が絶えませんねぇ? しかし宗教闘争……。縁ですねぇ。うちの神社も数代前は宗教弾圧への抵抗をしていたと聞いています。ま、それはそれとして、相手の侵攻を迎撃するのが私たちの務め!」
レベッカとリンネのすぐ後ろでは、『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)が遠方をじっと見ていた。
森林の奥で怪しい動きをしている奴らがいるようだ……。
「あれ? あの人たちって、もしかして?」
アリアの隣にいる『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)も頷いた。
「だな? ……シャンバラの奴らに違いないな?」
ちなみに今日の熊さんはちょっと怪しい姿をしている。両手にはタクティカルグローブを装着、体にはアサシンローブをまとい、顔は包帯でぐるぐる巻きだ。万が一、敵に遭遇して取り逃した時、自分の姿を報告されないためである。
ウェルスの後ろにいる『子リスの大冒険』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は、ちょこまか動く小動物の如く慌てる。
「うわーい、なんか木陰から近づいて来るね!? 向こうも少人数なのかな? 見つけちゃったからには倒さないわけにはいかないよね~! ちゃっちゃと終わらせよう!」
最後尾をとぼとぼ歩くのは『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)だ。(ちょっと眠そう)
「ふわぁ~!? そうですか……? ま、軽く爆撃して蹴散らしてやりますよ!」
まもなく戦闘に入るのでここで位置を入れ替える。
アリアが前に出て、レベッカが後退した。
「こちらの偵察任務がバレないように、逃がすわけにはいかないわね!」
リンネも走る姿勢に移る。
「まぁ、見つかったのなら倒せば良いだけのことです。威力偵察というのもある故にねぇ?」
各自、迎撃の準備を整えて、進行!
●奇襲と前衛
自由騎士団の陣営前方50メートル地点。
シャンバラの哨戒部隊を率いるジャガー司祭は焦っていた。
「あ、あいつら!! 気づきやがったか! しまった、向かって来るぞ! 迎え撃て!」
部下の軽戦士3人は、へいへいとか、はいよーとか、やる気のない返事で応答する。
一方、アリアがとてつもない速度で奇襲に来る!
強化されたアリアの速度はまるで突っ込んで来る兵器だ。
速度の弾丸と化した彼女は、ゆらめく残像をまとう蜃気楼のようだ。
(くっ!? この速度でどう迎え撃つんすか?)
シャンバラの軽戦士はひとまず全力で防御する。
だが……。
「そこね! とぅ!!」
ジャガー軽戦士はアリアの速度が目視できないのではない。
そもそも彼女の存在がそこにあると意識することすら難しいのだ。
「ぬおおっす!?」
全力で防御したものの、軽戦士は完全に防ぎきれなかった。
アリアの最速の一撃が決まった瞬間である。
アリアがたった今、攻撃した相手は自由騎士団側の位置から見て左翼にいた軽戦士だ。
ジャガー司祭は真ん中の後衛にいながら、呪文を唱える。
「ぎゃはは! 呪われちまえ、自由騎士め!」
アリアが次の奇襲に移ろうとすると、前方にいる他の軽戦士2人が彼女を抑え込む。
それぞれ連続斬撃で迎え撃ち、アリアに挑む。
さらに司祭の詠唱も決まり、アリアの真下から暗黒の光を放つ渦が召喚された。
「きゃあああ!」
アリアの反応速度がぐっと落ちる。
だが、この程度の速度が落ちてひるむ彼女ではない。
「私と相対したからには、逃がさないわよ!!」
アリアは剣戟を抑え込むと空中へ飛翔した。
そして宙返りをしながら、重力に逆らう回転剣舞の軌道を描く。
まるで流星が閃光をまとって突撃するかのようだ。
「ぎゃあああ!」
真ん中にいた軽戦士が斬撃の嵐に見舞われ膝をつく。
まだ戦闘不能にはしていないものの、まずまずの奇襲だ。
「アリア様! ご無事ですか?」
3倍速で追いつき、アリアの付近背後で待機していたリンネが解除呪文をかけてくれた。
アリアの身体周りで蠢いていた嫌な暗黒波動が一気に消し飛んだ。
「交代ね!」
「了解です!」
アリアは後退し、後衛に就いた。
入れ替わりに前衛はリンネが出る。
その時点でウェルスとエミリオが追いついた。
ウェルスは、銃撃力強化を。
エミリオは、体力強化を。
それぞれを自分自身にかけた後に移動したこともあってこの時間差だ。
今、両陣営の前衛が自分の対戦相手と向き合う。
自由騎士団側から向かって左翼がリンネの担当。
真ん中がウェルスの担当。
右翼がエミリオの担当。
「そーれ、行きますよー!」
エミリオが生成して抱えていた危うい色のフラスコを前方の敵に向かってぶん投げる。
どっかああん、どかどかどかーん!!
凄まじい威力で大爆発を起こす錬金術の爆薬は炸裂が止まらない。
しかも状態異常のおまけ付きだ。
「げほげほ、ぐはあ……。うぎゃああ、なんだ、これ!?」
爆撃を受けた軽戦士は、権能の力で魔抗力が高いものの、鈍くなるわ、毒々しいわ、熱いわ、で死にそうだ。
ウェルスの方は、対戦相手と距離を詰めながら銃を向ける。
「よう兄弟(同種族)! あんたらみたいな優秀なケモノビトが朝から使い走りだなんて不相応だな? ん? なんだその引きつった顔は? 言葉は不要か? ……なら、続きはあんたらを倒した後でゆっくりとするか!(やべぇ、哨戒に見つかる偵察って間抜けすぎる! 挑発と猛攻の勢いでごまかせー!)」
「けっ、挑発には乗るか!!」
ウェルスは敵の冷静さをくじこうと仕掛けるが、相手もなかなか乗って来ない。
熊の銃士は、愛銃で急所攻撃を繰り出して、状態異常を狙う。
しかし相手は森で戦い慣れている軽戦士だ。
俊足で銃撃を回避しながら、ウェルスに切り込んで来る!
「くっ、不覚! だが、まだまだ!!」
ウェルスが大型のシールドで敵の次の猛撃を防ぎ、跳ね飛ばし、距離を取る。
敵に一撃が入り、相手はやや冷静さを失った!
リンネも物理衝撃を流す構えで自己強化しつつ、速度を強化する軽戦士と相対していた。
暗殺針や飛術札で攻撃するものの、当たらなかったり弾かれたりする。
対戦相手の方も最高速度の一撃で突っ込んで来る!
「ぐっ! やりますね……!(まずい、すきがないです! 攻撃の片手間で味方を回復したいのですが、なかなかそれを許してくれませんね?)」
それでも前衛の3人は、後衛の仲間に一歩も近づかせまいと、必死でブロックする。
そう、真っ先に倒すべきは軽戦士たちなどではなく、もっとも危険なネクロマンサーだからだ。
●司祭VS後衛
敵陣にしても前衛は苦戦していた。
今のところ自由騎士団側の前衛3人に対して1人ずつの割り当てで戦っている。
ということは、3対3でブロックをしているという意味でもあるので、後衛は後衛同士で戦うことになる。
苦戦している前衛たちの傷を癒そうと、ジャガー司祭が回復魔術をかけようとしたそのとき……。
パン、パパン!!
司祭から見て前方東20mの木陰から弾丸が撃ち込まれる。
連続銃撃で、司祭の詠唱は手元が狂い、鮮血が飛び散る。
(ふぅ! 狙い通りですわね!)
レベッカは、前衛が戦ってくれている間、後衛の位置で銃撃能力を強化していた。しかも森についての知識もあるので木陰に隠れるのもお手の物。つまり、どこからかわかりづらい場所から急所攻撃の連続射撃を彼女は放っていた。
「てめえ……!! やってくれるじゃねえか!」
ジャガー司祭は味方の前衛は放っておいて、敵の後衛から始末することにした。
魔弾が炸裂する!
「きゃあ!!」
魔弾はミトラースの権能付きで範囲攻撃だ。
司祭は、銃撃が撃ち込まれた辺りを適当に爆撃したのだが、隠れていたレベッカが巻き込まれて被弾した。
「おらあ! ガンガン行くぜ!」
調子に乗った司祭は次の魔弾を放つ。
レベッカは逃げるので精一杯だ。
ぎゅぃん!!
鋭い竜の牙を剣に変えた騎士がいきなりの突撃!
「うぎゃあ!?」
突然の二連斬撃を胴体の真ん中から浴びて、司祭が膝をつく。
すると、後方では……。
「ウケケ!」
怪しく鳴く緑色の大きなリスがいた。
いや、これは森にいるリスなんかではなく……。
その場から司祭めがけてタックルで追加アタック!
さすがの司祭も正体不明の連続攻撃には面食らっていた。
そう、今のような攻撃手段は錬金術だ。
放った人物は、もちろん、クイニィー。
(まずはどう見ても怪しそうな後衛から何とかしないとね! ネクロマンサーらしき奴からやっちゃえば勝機はあるよね!)
クイニィーは後衛に就く前に、そして後衛に就いてからも準備をしていた。
レベッカの銃撃に司祭が気を取られているすきにホムンクルスを生成して放つ。
なるべく目立たないようにして、遠回り、後方から司祭へ近づかせた。
そして司祭が油断してレベッカを狙い撃ちにするタイミングでスパルトイの一撃。
ちょうどホムンクルスの追撃も続いた。
「おのれ! てめえまでー!」
司祭の怒りの魔弾はクイニィーにまで飛ぶ。
クイニィーも茂みから隠れて操作していたが、そこへ魔弾の範囲攻撃が及んだ。
「きゃ! いや~ん!!」
クイニィーが被弾した時点で、ある意味、勝負はついた。
前衛のブロックを抜け、空中二段飛びで木々から回り込んで来たアリアが司祭の背後に立っていた!
「な、てめえ、いつの間に! 前衛は何してる!?」
「影狼以外にも接近する手段はあるのよ!」
アリアは葬送の願いと慈悲の祈りの二刀流を構え、猛速度で連続攻撃を打ち込む! 手数の残量など気にしない勢いで、二連撃の鋭利な刃が迅速の吹雪のように炸裂する。司祭もほぼゼロ距離から魔弾を撃つが、何分、近距離戦においてフェンサーとネクロマンサーでは勝負にならない!
司祭は全身を切り刻まれ、血しぶきを上げる。
しかもレベッカの二連銃撃やクイニィーの人形兵士からも追撃が!
「ぐはっ……。ミトラース様……。申し訳、あり、ません……」
満身創痍のジャガー司祭はここで倒れた。
倒された司祭はクイニィーによって捕虜にされた。
●決着
どうして、アリアは前衛のブロックをすんなりと抜けられたのか?
彼女のスペックの優秀さ以外にもそれには理由がある。
司祭がやられてしまう少し前……。
(ちっ、自由騎士団はさすがに強いっす! しかも4対6だった時点で数的にも俺らが不利だったっす。さらに言えば、指揮官はバカのジャガー司祭。勝てるわけがないっすな。ならば……)
そう判断した軽戦士は、自由騎士団側から見て左翼の位置の前衛を放棄した。
彼はリンネに最高速度の一撃を与えた後、後衛に逃げた。
「くっ、油断しましたね! あ、こら、待ちなさい!!」
「おい、狼女! おまえの相手はこっちだ!」
敵の突然の陣形チェンジにリンネは焦った。
隣にいる軽戦士はウェルスの相手をしているのが精一杯なはずだが、前に立ち塞がる。
敵の作戦とは……!?
「リンネ嬢、構うな!!」
ウェルスはそう叫ぶと同時に、立ち塞がった野郎に向けて撃つ。
当然、2対1でとても戦えるわけではないので、軽戦士の戦いはおぼつかない。
エミリオと戦っているはずの軽戦士が今度は代わりに入る。
「俺が相手だ!」
彼がリンネの前に立ち塞がったところで、戦況はさほど変わらないはずだが……。
どがどがーん!
エミリオから炸薬の爆撃が容赦なく浴びせられる。
「このドアホ! 戦闘中によそ見しないでもらえます? 次で死んでくれますか!?」
エミリオがおどけた調子で爆撃した敵を挑発する。
右翼でずっと戦いに集中していたエミリオは事情が飲み込めていない。
だが、陣形チェンジには何かあると思い、敵の注意を自分に引き付けてみた。
「ははは! もらったっす! んじゃ、あばよっ!」
後衛に逃げたケモノビトは、獣化変身をしていたのだ。
ジャガーそのものになり、猛速度で簡易砦へ向かって逃げ出していた。
もはや勝てるわけがないと判断した彼は、一度、逃げることにした。
自分だけでも逃げ切れば、哨戒部隊としては役目を果たしたことになる。
ジャガー司祭に関しては、最後はおとり役として切り捨ててしまったが……。
「待ちなさい!! 待て、待てー!!」
追い回されている方はジャガーに変身した上に視界の見渡しも冴えている。
リンネの方は3倍強化された白狼のケモノビトの脚力で追い駆ける。
(ちっ、しつけー! だが、追手は一人っすね? やっつけちまえばいいかっ!)
これが運命の分かれ道だったのかもしれない。
もし、彼が賢くて、簡易砦まで逃げ切っていたのならば……。
(ん? 止まりましたね? そう? ……私と殺し合いますか?)
両者、間合いを取り、にらむ。
ややあって、最後の一撃が放たれる!
「ウガアアア!!(おらおら! 突撃だあああっ!!)」
猛速度でジャガーが突っ込んで来る!
「むっ!! そこですか!!」
リンネはジャガー相手に零距離ぎりぎりまで間合いを詰めた。
そして、ジャガーが突進してくるその顔面めがけて……!!
必殺の寸勁が完成した。
ジャガーは間正面から受けた拳の衝撃が全身に流れてけいれんし、ぶっ倒れた。
リンネは衝撃を敵の顔面から伝えきったと同時に、突撃の威力で吹き飛ばされた。
「きゃっ!!」
リンネは後方にある大木に背中を叩きつけられた。
それなりの衝撃だが、戦闘不能というほどではない。
一方のジャガーは必殺の一撃をくらって既に動かなくなっていた。
「ふぅ……。勝った、ん、ですね?」
***
リンネがジャガー相手に森で追いかけっこをしている最中、前衛たちも決着をつけていた。
「おい、エミリオの旦那? ちょいとしんどそうだな? まだやれるか?」
ウェルスは軽く傷を負い、体力的に消耗しながらも前衛仲間に問いかける。
「ははは、そっちこそ? 私、アルケミーにしては前衛でやる方だと思いますよ?」
エミリオも軽戦士の刃を受けて服や肌が切れている箇所もあるが、まだ笑っていられた。
次で決めるか、とどちらの自由騎士も思ったらしく、お互いに頷いた。
敵陣の前衛も最後の覚悟を決めていた。
仲間のジャガーが無事に簡易砦まで帰れるかどうかはわからない。
だが、自分たちがもはやここまでだということはわかっていた。
ジャガー軽戦士たちは渾身の力を振り絞るが如く構える!
「へへ、やってやるぜ!」
ウェルスはそう叫ぶと、必殺の銃撃をリロードした。
上空で強烈な弾頭が爆裂し、刺し殺すような鉄の雨が猛烈に降り注がれる!
「ええな、爆発で終わりや!! ひゃっはー!!」
エミリオも炸薬を生成し放り投げた。
ウェルスの必殺の一撃に追撃して、大爆発!
嵐のような爆撃で残り2人の敵勢はばったりと倒れた。
敵をこてんぱんに叩き潰してからエミリオはあることに気が付いた。
「ところで、偵察部隊っていう割には派手に動いてしまっていますが……大丈夫なんでしょうかね?」
その場にいた友軍全員が、はっとしたようだ。
ああ、やっちまったよ……と。
●調査報告
クイニィーはジャガー司祭をつんつんと暗殺針で突っついていた。
「ネクロマンサーってどんな感じなのか、まだ正確に知らないんだよね? 知りたいなぁ、知りたいなー! どんな攻撃技を持ってるのかなー? 戦闘不能者を操ったりー、地面をドロドロにして動けなくすることもできるんでしょ? あとは? あとはどんなことができるのー? ねぇねぇ、教えてよー!」
戦闘不能で倒されたジャガー司祭は死んではいないものの口が利けない。
「俺たちの仲間には魔女狩りを殺すために仲間ごと撃つ凶暴な奴とか、知ってることをどんな手を使ってでも引き出そうとする恐ろしい奴もいる……。だが、あんたらのことを素直に話すなら俺が間に入って許してやらんでもないぞ?」
部下2人も既に戦闘不能で伸びている。とてもウェルスに応答はできない。
「クイニィーさんにウェルスさん……。さすがにあれだけやったので、後は国に任せては……」
優しいアリアは、司祭や彼の部下たちの境遇を憐れんだ。
そこで、レベッカがみんなに提案する。
「もともとわたくしたちの役目は偵察でしたわね? せめて簡易砦の正確な位置だけでも把握して撤退しませんか?」
「この先に、崖があって……。そう遠くないところに簡易砦があるみたいですよ?」
森の中でジャガーを追いかけ、倒したリンネが獲物を担いで帰って来た。
彼女はもう少し先まで進んでしまったので、気が付いたことがあったようだ。
「んじゃ、それだけ確認したらずらかるぞ!」
「ですね」
ウェルスとエミリオがそう同意し、残りの仲間たちも異論はなかった。
前哨戦の偵察部隊VS哨戒部隊は、イ・ラプセル側の勝利に終わった。
簡易砦の位置把握に捕虜という手土産も持って帰れたようで、偵察としてもミッション完了だ。
了
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『派手な偵察部隊』
取得者: エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『勢いある偵察部隊』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『策士の偵察部隊』
取得者: クイニィー・アルジェント(CL3000178)
『奇襲の偵察部隊』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『速攻の偵察部隊』
取得者: リンネ・スズカ(CL3000361)
『生真面目な偵察部隊』
取得者: レベッカ・エルナンデス(CL3000341)
取得者: エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『勢いある偵察部隊』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『策士の偵察部隊』
取得者: クイニィー・アルジェント(CL3000178)
『奇襲の偵察部隊』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『速攻の偵察部隊』
取得者: リンネ・スズカ(CL3000361)
『生真面目な偵察部隊』
取得者: レベッカ・エルナンデス(CL3000341)
†あとがき†
シナリオのご参加ありがとうございました。
皆さんのご活躍で北方迎撃戦の前哨戦が良い方向へと向かえました。
MVPは、レベッカさん。
最後まで偵察部隊の本来の役割を気にかけてくれたことに感謝です。
称号は、皆さん。
それぞれの偵察部隊でのご活躍に応じた称号を配布させて頂きました。
ぜひ今後も続くだろうシャンバラ戦で輝かしい勝利を収めてください。
皆さんを応援しています!
皆さんのご活躍で北方迎撃戦の前哨戦が良い方向へと向かえました。
MVPは、レベッカさん。
最後まで偵察部隊の本来の役割を気にかけてくれたことに感謝です。
称号は、皆さん。
それぞれの偵察部隊でのご活躍に応じた称号を配布させて頂きました。
ぜひ今後も続くだろうシャンバラ戦で輝かしい勝利を収めてください。
皆さんを応援しています!
FL送付済