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農民よ、楽土を忘れよ。




「昔々。まだ聖櫃がないくらい昔々。種をまいてすぐに作物ができませんでした」
「うっそだー!」


「――というくらい、シャンバラの農業は自動化されていましたのよ、皆様」
 マリオーネ・ミゼル・ブォージン(nCL3000033)は、由々しき事態ですわ。と、まつげを震わせる。
「種をまく。待つ。生えるですわ。雑草も生えなければ、害虫もわかず、病気にもならず、あっという間に生えますの」
 ――いやな予感がする。
「農業指導をしているイ・ラプセルの農業従事者の方から『三日たっても芽が出ない』『一週間で実が取れない』『雨が降るのに、水をやるって何ですか』『肥料ってなぁに』とシャンバラの農家の人に聞かれて、答えると『そんなことはしたことがない』『おかしい』『必要ない』と全否定されて、心が折れそうになっている。と。常識が違うのですわ」
 ですので。と、プラロークは言う。
「皆様には、農業指導役のメンタルケア及び農業マニュアル作成する、ほんのわずかの間、シャンバラの皆さんに農作業の必要性を説いてもらいたく思いますの」
 出身が様々な自由騎士なら、色々な角度から説明できるだろう。実際耕作していたものも、農作物を扱う商人も、農地経営していた者もいる。
「誤解を恐れず申しますが、たしかにミトラースは信徒にとっては恵み深き神ではあったのですわ。手段はいかがなものかと思いますが」
 聖櫃のもたらすゆがんだ恩恵から、シャンバラの農業は決別する最初の種まきの季節なのだ。
「畑違いなのはわかっておりますのよ。お手数をおかけしますけれど、通商連が一枚かみたいようなのですが――」
 実際、シャンバラの肥沃な大地の使い道はいくらでも思いつくと、カシミロが言っていたのが、記録に残っている。
「ありていに申し上げて、余り喜ばしくない作物を植えられても困りますので」
 よろしくない品種の麻やら芥子やらを栽培されかねない。蔓延したら目も当てられない。
「方法は皆さんにお任せします。シャンバラの大地は楽園の夢から覚めておりますわ。耕す方の意識改革をお任せしますわね」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
国力増強
担当ST
田奈アガサ
■成功条件
1.シャンバラの農民に、農作業は必要だと納得してもらう。
 田奈です。
 種を撒く。収穫する。終わり。の、シャンバラの農民に農作業しないとどうなるかを教えるお仕事です。
 方法は皆さんにお任せします。
 説教もよし。実際作業して見せるもよし。自分たちが最も得意な方法でやってください。
 作業の細かいコツは、その都度本職のイ・ラプセルの農業指導者さんが教えることになってますので、「教わった通りにしないと、作物は育たない」ということを教えてください。

シャンバラでは、聖櫃が出来て以降、年中作物が無尽蔵に生えていました。
 農業技術はロストテクノロジーになっています。おとぎ話で「おじいさんは畑を耕して」などと出てくる程度です。「耕すってなにー」と子供に聞かれて、親が「何だろうねー」と首をかしげるレベルです。
状態
完了
報酬マテリア
3個  3個  1個  1個
12モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年06月16日

†メイン参加者 8人†

『背水の鬼刀』
月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)
『平和を愛する農夫』
ナバル・ジーロン(CL3000441)
『イ・ラプセル自由騎士団』
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『Who are You?』
リグ・ティッカ(CL3000556)



 所変われば、品変わる。神の愛の示し方も変わる。
「生き物は、神様のお恵みで、健やかです」
 全力で笑顔のシャンバラの民に、荒野の厳しさを教えなくてはならない。
 いい天気だ。農業指導するにはよい日和。
 整然とした畑があれてきている。雑草が生え、土が乾いている。
 放置されている状態だ。シャンバラの民にとっては「いつも道理にしているのに、なんか変」なのだろう。
「は、初めてのお仕事で緊張しますけど、よろしくお願いしますっ」
 ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は緊張していた。里から出てきてまだ間もないから自分が世間知らずだと自覚している。
それにこれからたくさんシャンバラの民が集まっているところに行くのだ。ティルダが彼らから直接何かされたわけではないが――。
「シャンバラでは、そんなに簡単に作物が採れたのですね」
(ヨウセイを犠牲にした、聖櫃の力で)
 口から出てくる声と頭をよぎった言葉が、自分でも驚くほど陰鬱だった。
 ふ。と、そよいでいた風が止まった気がした。
「……何でも、ないです」
 腹の底に居座る重たいものをあたりかまわずまき散らすのは違う。
「さてと、これまでの常識を覆す、か」
『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)は、ティルダの言葉を受けて小さく頷き、ほとんど進んでいないまっさらな畑予定地を見渡した。おそらくは自動的にいい感じになっていたのだろう。それだけの農地を運用するのにどれだけのヨウセイが文字通り搾取されていたのか。それを是としない未来をイ・ラプセルは選んだ。その選択に付随する責任を果たさなくてはならない。自らの正義のみを叫び、作った荒れ地を顧みないのは悪鬼羅刹と変わりはない。
 用意されている農具はピカピカで、イ・ラプセル様式だ。最近持ち込まれたのがありありとわかる。そして、ほとんど使われていないこともわかる。
 シャンバラにじょうろはなかった。作物にちょうどいい雨が降っていたからだ。
 そもそも灌漑設備がなかった。余計な水を排水する必要がないのだ。水路を掘る必要があった。
 必要がない。だからないのだ。
「聖櫃がそれほどのモンだったとは……そりゃ、そんなのに慣れきってたら普通の農業とか、わかんないよなあ」
『平和の盾』ナバル・ジーロン(CL3000441)、一年前はガチで農民でした。
「でも、そんなことも言ってらんないよな。多少厳しくしてでも、普通の農業やってもらわなきゃ、後々困るのはシャンバラの人たちのほうなんだし。よっし、やれるだけのことをやるぞ!」
「なかなかに大変な事だけど、これからずっとの事だからね……頑張って意識改革したいと思うよ」
 そう呟くアルビノの足元にしゃがみ込む、女軍人――というよりは、一地方豪族――というよりは開墾者――故郷で「大雑把な農作業」に駆り出されていた『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。
 出番があるわけないと思っていたら、いの一番にあった。
「まずは田畑とする予定の土地に転がる岩を全て山に運ぶ! 然る後、縦横に巡る木の根を引っこ抜く!――までは終わっていると思えば、十分進んでいるといえる。地味自体は……うむ、ええ土しとるやないけ!」
 思わず、お国訛りが出てしまう。そうなのだ。ええ土なのだ。このまま荒れ野にするのは忍びない。多大な犠牲を払った土なのだ。ならば、無駄にはできない。絶対にだ。いいとこから見ていこう。
「それまでの当たり前を捨てるのはむずかしいのですね。けれど無いものに固執してもしょうがないのです」
『餓鬼』リグ・ティッカ(CL3000556)、長いものには巻かれる主義。アルビノが深く頷く。
「むずかしいことは専門家の方にお任せして、リグは、リグにもわかることをしますのです」
 そう。技術論はあとからだ。
「ここから行ける集落全部に集まるように言ってきたぞ」
月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)に、皆、口々にねぎらいの声をかける。
「農業の在り方を語るのであれば、大人も、子供も。学ぶ者は、多いほうがいい。子供ならばなおさら、大地が水を吸うように、吸収していくだろう」
 ヒトを介しては趣旨がゆがんでしまうのが世の常だ。直接聞いて、自分で考えてほしい。
(これからシャンバラの大地で育つのは、作物だけではない。ヒトも同じだ。彼らに種を撒き、ヨツカたちはその手伝いをする)


「現状の認識の確認をする」
 『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は、集待ったシャンバラの農業従事者をぐるりと見まわした。
 彼の位が高いのはその立ち居振る舞いで十分知れた。
 つまり、彼の口から出る言葉には責任が一緒に乗る。ここで話した内容がその場の戯言で片付かなくないのだ。彼は貴族なのだから。
「まず……ここにいる者に1つ懇願を」
 だから、テオドールがそう口にしたとき、場内は水を打ったように静かになって、かえって自由騎士達は忘れかけていた「身分」という概念を思い出したのだ。
 懇願だ。命令ではない。だから余計に重い。厳しい身分制度がしみ込んでいるシャンバラの民にとって高い身分の者があえてそう言うということがどういうことかは自明の理だ。
「今からする話は出来るだけ口に戸をしてほしい。人によっては酷い嫌悪や罪悪感を抱いてしまう故な」
 そんな話をあえてするということは、ここにいるおまえたちは忘れるなということだ。
『イ・ラプセル自由騎士団』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)の把握は早かった。
 ニルヴァン要塞建設やらで地面に触れる機会が多かったから、肥沃なシャンバラの大地が聖櫃の賜物というのも実感としてのみ込むことが容易だった。
(その裏であった犠牲については知らんのか知っててもそれが当たり前やと思っていたのか思い返すと複雑やけど――)
 その複雑さを脇に侵さず白日の下にさらすのが、テオドールの役目だった。
「聖櫃の恩恵については正しく認識しているだろう。その恩恵がミトラース神の消滅と運命を共にした事、アクアディーネ様が同じ恩恵を与えぬ事を伝えよう」
 さわさわさわさわと場が波立った。
「では何故与えぬのか。聖櫃がヒトの命を燃料とする為だ」
 いや、そんなことはない。と、シャンバラの民はいう。
「いや、ミトラースはそんなことはしていない。ヒトを燃料にするなんてとんでもない」
 口々にシャンバラの民は言う。
「燃料はヨウセイだ。ヨウセイはヒトではないだろう」
 ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は、目をすがめた。
 腹の底から湧き上がってくる嫌悪感を奥歯で噛んで飲み下す。
 無邪気なシャンバラの「民」にとって常識だ。ミトラースはヨウセイはヒトではなく、狩らねばならない存在とおっしゃった。
 恨んでいないと言ったら嘘になる。憤っていないかと言ったら嘘になる。湧き上がってくる言葉は形をとらずにグルグルと喉の奥に引っかかる。
「うむ。では、なぜヨウセイは魔女と呼ばれ、狩られていたのだろう」
 テオドールの問いにシャンバラの民は口々に答える。自明の理だ。
「その通り。ミトラース神の愛を受け入れなかったからだな。では――ティルダ」
 シャンバラの民の視線がティルダに注がれる。ヨウセイだ。ヨウセイがいる。ヨウセイがヒトのような様子でいる。
「君は、ミトラースの愛を拒んだのかい?」
 言葉が詰まっていた喉の奥から転がり落ちた。
「いいえ。いいえ。ミトラースはわたし達ヨウセイに、一度だって一人にだって、語り掛けてはきませんでした!」
 たくさんのヨウセイが殺された。干からびていった。その中のヨウセイのたった一人だってミトラースに接触されたものはいなかった。干からびていったヨウセイは「なんでこんな目に遭わせるの?」と問うただろうに。
 卵が先か鶏が先か。神ならぬ身にはわからない。愛を拒んだから燃料にしたか。あるいは。
「一人の、ある時代のヨウセイが愛を拒んだから全てのヨウセイを切り捨てるのは怠惰ではないかな。そうでなければ狭量だ。本当の理由は聖櫃の燃料がヨウセイ族だったからだ」
 燃料に注ぐ愛はない。拒まれたから注がないのではなく、はじめから注ぐ対象ではなかったのを言いつくろったか。だ。

「そして状況を憂慮した彼らの有志がイ・ラプセルに助けを求めてきた。これが先の戦の発端だ」
「農作物を育てるために、自分の子供を殺して地面にばら撒けって言われたら、あんたら納得するか? オレらには、そういうことをしてるように見えた。納得しなかった。だから潰した。そこに後悔はないよ」
 ナバルは、そう言った。
「そして、ミトラースは去り、アクアディーネ様が残った」
 戦い、勝った。世界のありようは勝者が決める。
 ミトラースとて民を愛していた。ただ、その民の域にヨウセイが入っておらず、民でないものを搾取するのに何の抵抗も持っていなかっただけ。それだけのことだ。
「――せ」
 ティルダの口から言葉がこぼれた。テオドールが先を促した。
「ティルダ、そのまま続けてくれるかい」
 彼女は発言するように言われた。
「せ、世界は変わったのです。ミトラースは去りました。気づいてください」
 震える声。ヨウセイの話を聞いてもらえるか、分からない。だが、思いを吐露することがティルダの力になる。
「い、今までは作物は勝手に育ってたそうですけど、これからは違うのです。世話をしてあげないと枯れてしまいます。聖櫃は、もう無いのですから。世界は変わったのです。ヨウセイが隠れ住む必要が無くなったように」
 ヨウセイは聖櫃の電池になるために生まれてくるんじゃない。
「シャンバラを恨んでいないと言えば嘘になりますけど、もうシャンバラは無いのです」
 だから、あなた達に怒りをぶつけたりしない。シャンバラは滅びたから。死ぬべきものは死に、とらわれるべきものはとらわれたから。
「このまま農作業をせずにいれば人々は飢える。植物も充分に育つ事が出来ず枯れる。それは悲しい事だと思うのです」
 飢えることがどういうことなのかも、この人たちは知らない。
「恩恵が無い農作物は非常に繊細な存在なのだ。これは知識の共有だ。だから彼らの言葉に耳を傾けてほしい」
 繊細なのだ。とても。恩恵を失ったシャンバラ全体が。
 だから、耳を傾けてほしい。
 イ・ラプセルは、あなた達を不幸にするために侵攻したのではないのだから。
「あのお」
 シャンバラの民の一人が手を上げた。
「それじゃあ、アクアディーネ様にヨウセイを使わない聖櫃を作ってもらえばいいのではないでしょうか?」
 無邪気な問いだった。新しい神様に自分たちが知る便利なモノを「献上」するのはよい「民」だ。
 テオドールは頷いた。
「さて。さて例えの話にはなるが、今まで通りの恩恵を受けたければ妻を差し出せ、子を差し出せと言われたら――」
 かつての――ミトラースの権能を受けたシャンバラの民なら、喜んで差し出しただろう。差し出す方も差し出される方も誇らかに。だが、ミトラースが去った今、緩やかに疑念が生じる。そこまですることか? さわさわと場が波立つ。神去りし地のヒトのなんと寄る辺なきことか。
「先ほど彼――ナバルが言ったようにイ・ラプセルで首を縦に振るものはいない。アクアディーネ様はそのような事をしない方だ」
 アクアディーネは自分の土地の民への恩恵を偏らせることはない。特典もない代わり搾取もない。選ばれしものの恍惚はなく、えらばれぬ者の絶望もない。イ・ラプセルとて楽園ではない。職分・身分の別はあるし、そこに生じる差別や区別もある。それは、アクアディーネに起因したものではなく人の営みの中で生じたものだ。恩寵は彼女の前で残酷なまでに平らかだ。
「これがアクアディーネ様が聖櫃という形で恩恵を与えぬ理由だ」
 神官が聞いたら目を向いて反論してきそうな方便を含みながらも、(それはシャンバラの民にとっては些末なことだろう)とテオドールは割り切っていた。彼は貴族である。民を統制し、よき方向に導くのが生まれながらの責務である。
「イ・ラプセルの民も、ヨウセイ犠牲の元に育った作物は考えただけで心痛むわ」
 アリシアも声を上げる。
 便利なのに。と、さわさわと場が波立つ。ヨウセイがダメなら他のものでも――。
「ヨツカは余所者だ。理解できないことも、受け入れがたいことも多い。シャンバラの民の気持ちも、分からないでもない。『郷に入れば、郷に従え』とも言える、が」
 アマノホカリから流れてきて、まだイ・ラプセルにも慣れていない。
「何故、イ・ラプセルの者たちがこれほど心を砕くのだと思う?それに応えようと、思わないのか?」
 なぜと言われても。と、どろどろしたものが場にたまる。戦勝国の教化ではないのか。
「気づいてください。聖櫃は、もう二度と動かないのです。あんなモノは、もう二度と! ヨウセイだろうとノウブルだろうと、どんな種族もどんな生き物も、あんなものの電池になるために生まれてくるんじゃないんです! あんなものに頼ってちゃダメなんです!」
 ティルダは叫んだ。
 場は、水を打ったように静かになった。アクアディーネの水がイブリースを浄化するように。


 無邪気という毒が洗い流されると、事態は急速に動き出した。
 アリシアは、三つの箱に、三つのトマトを用意していた。
「品質保証付きの流通しているトマト――これは出荷を目的に作られてるやつ。味はもちろん抜群や」
 いつものトマト。とシャンバラの民はいう。
「こっちは青空市場で売る量を作るのがやっとこさやけど、普通の物より時間と手間をかけて育てたトマトや」
 なにこれ。とシャンバラの民は言う。
「ついでに勝手に生えてきて実が付いたトマト。実が割れて皮も硬くて青臭い」
 こんなの見たことない。と、シャンバラの民は言う。
 アマノホカリの流れをくむアリシアには、シャンバラの民の今の現j法は曾祖母が直面した問題と同じくらいの距離感だ。
(とりあえず今は農業の大切さを教えなあかん)
 彼らを生かすために。そこに生まれたことが罪ということはできないから。
(愛情込めてやらんと作物は育たないことと味に変化が出ることを教えてあげたいって思うわ)
「それぞれ味の違いわかるやろか? 作物は同じものでもより愛情かけて育ててやったほうが美味しい。育て方で味も変わってくるからそれが楽しいと思うんよ。もちろん流通している作物も手を抜いているわけじゃないねんけどね」
「愛情をかけるというのはどういうことですか? 愛情は何でできてるんですか? それと聖櫃は何が違うんですか?」 
 自由騎士達は顔を見合わせた。
「赤ちゃんを育てることを想像するといいかもな。赤ちゃんは、一人じゃ生きていけない。親が一生懸命世話しなきゃいけないよな」
 ナバルが言うのに、アリシアも同意した。
「農作物も一緒だ。ただ種を撒いただけじゃ、芽も出ないか、すぐに枯れるかだ。清潔なベッド、適度な栄養、近づく害虫や害獣からも守ってあげる」
「リグもそう思います。リグはおこめが好きですが、植物の場合は太陽の光と、水と、肥料がゴハン、でしょうか?」
「せやで」
「ゴハンが無いと、リグは動けなくなってしまうのです。ずっと食べなかったら死んじゃうのです。ひもじいのはすごくすごくつらいのです、ぜったいよくないのです」
 経験に裏打ちされたひもじいという実感を伴わない言葉。
「あとあと、リグはお風呂がすきなのです。きれいになると気持ちがいいのです。とろーんってします。お風呂に入れない、トイレにも行けずに手すらもろくに洗えない。どろどろのよれよれでずっといると、やっぱり病気になってしまうのです」
 子供が、子供にするように世話してください。というのは、シャンバラの民にもわかりやすかった。
「枯れた葉を摘んであげたり、虫に葉っぱを食べられないようにしたり、周りの雑草に栄養を取られたりしないようにしてあげるのです?」
 リグがナバルを見上げると、ナバルは満面の笑みを浮かべた。
「そうやって、大事に大事に育ててあげないと、すぐに病気になったり、死んでしまう。そう、農作物ってのは、生き物なんだ。」
「リグはこどもなのでこれ以上はわからないのです! ここから先の詳しいことは先生たちにきいてくださいです!」
 お手上げ―とすると、周囲から笑みがこぼれた。
「話の後は実演だ! むしろオレはこっちのが得意!」
 ナバルの指導は実践的だった。それにシノピリカも加わって更に筋力具合が高まる。
「こらそこー! 水撒きすぎ! そこはもっとしっかり腰入れて!! こうだ、こう!」
 アルビノをして「ワタシ自身の意識改革でもあったのかもしれないね」と後に語らしめるほどの熱意が注がれていた。
「ヨツカはだいたい何でも食う、が。美味いにこしたことはない。この地で育ち、収穫されたものを食うのが楽しみだ。きっと、美味いぞ」
「おいしいお野菜ができるの、リグも楽しみにしてますですよ」
 一番早い収穫は、夏の盛りになることだろう。

†シナリオ結果†

大成功

†詳細†

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