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《オラトリオ1818》星降る季節のチャリティバザー




「いらっしゃい! 見てってねー!」
「安くしとくよっ!!」
 威勢のいい声が響く。
 ここはオラトリオ・オデッセイ恒例のチャリティバザー会場。
 その一角に自由騎士達と子供達の姿があった。
「わぁぁぁーーー」
「スゲーー!!」
「いろんなものが売ってる!!」
「あのお人形かわいーー♪」
 子供達の無邪気な声。
「早速こんな機会を作っていただけるとは……あなた方には感謝してもしきれません」
 アージン・サチモフは深々と頭を下げる。
 アージンは孤児院を経営しており、以前自由騎士によってその命を救われた人物だ。
 自由騎士の計らいによって今日、子供達と共に首都城下町へ赴いていた。
「では子供たちをよろしくお願いします」

 細かい事などどうでもいい。
 今日は子供達とバザーを楽しもう。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
日常α
担当ST
麺二郎
■成功条件
1.チャリティーバザーで楽しむ。
2.孤児院の子達にしっかりお手伝いをしてもらう。
先日今年最後の呪文を唱えてまいりました。まことにおいしゅうございました。麺二郎です。

この依頼はブレインストーミングスペース
アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392) 2018年12月17日(月) 20:15:54
ニコラス・モラル(CL3000453) 2018年12月18日(火) 05:55:31
の発言等や、季節柄の空気感を元に作成されました。

普段は様々な依頼をこなす多忙な自由騎士。
一般市民と何気ない会話をする機会はそれほど多くはありません。
今日はそんな自由騎士がほんのひととき戦いを忘れ、各々持ち寄った品物で子供達と協力し合いながら、バザーでの物品販売を行います。


●ロケーション

 オラトリオ・オデッセイ中のとある商店街主催のチャリティーバザー。
 その一角で自由騎士達はバザーの売り子を行います。時間はお昼から夕方6時まで。
 自由騎士一人に対して孤児院の子供が一人つきます。
 販売スペースは自由騎士一人に対し2mx2m程度。どのようなものをどのように並べ、どのような接客を行うかがポイントです。
 バザーに出すものは日用品の範囲で自由となりますが、あまり高価なものはダメですよ。
 アイテムとして所持しているものを売る場合は売れやすくなります。
 ※所持アイテムがなくなる事はありません。
 
 なお、売り上げは全国の孤児院や生活の苦しい人々へと寄付されます。


●登場人物

・アージン・サチモフ
 オリオン孤児院の責任者。今回バザーのお手伝いに孤児達を呼んでもらえた事にとても感謝しています。バザーでの子供達の様子をそっと見守っています。

・孤児院の子供達
 マルコ 10歳男。先日の依頼で起きてきた男の子です。元気はつらつ。
 ベティ 8歳女。おしゃまで快活な子です。
 ニール 14歳男。思春期真っ只中です。
 エル  17歳女。お年頃です。美しい自由騎士に憧れを抱いています。
 トニー 11歳男。気難しい部分もありますが頭の良い子です。。
 アイラ 10歳女。物静かな眼鏡っ子です。
 ブンタ 12歳男。ガキ大将。強い自由騎士に憧れています。
 ベス  14歳女。過去のトラウマで言葉をしゃべる事が出来ません。

 自由騎士の皆さんはこの子達の中からバザーのパートナーを選んで頂きます。


●同行NPC

『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
 バザーの一角で特製の麺料理を来場者に振舞っています。
『演算士』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)
 少しめんどくさそうにジローの手伝いをしています。料理は苦手。


皆様のご参加心よりお待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
2個  1個  1個  1個
11モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
11日
参加人数
8/8
公開日
2019年01月07日

†メイン参加者 8人†




 バザー会場。そこには子供達と共にバザーに参加する8人の自由騎士とそれを手伝う沢山の自由騎士達の姿があった。


「院長先生も子供達も元気そうで何よりだ。今日はよろしくお願いする。楽しい時間になれば幸いだ」
『キッシェ博覧会学芸員』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)はそう言って声をかけるとアージンは嬉しそうに微笑んだ。
 それにしても……今年のチャリティバザーは盛況のようだ。
「此方も頑張らないとな。エル、今日はよろしく」
「はいっ。よろしくお願いします」
 ウィルアムは穏やかな笑顔でやや緊張気味のエルに声をかけると準備を始める。バザーで売るものはコースターや装飾用のリボンや花の形をした手作りの編み物。バザー開催前からウィリアムがせっせと作り貯めていたものだ。編み物にしたのにも理由がある。それはその汎用性と場所を選ばぬ気軽さ。初心者でも始めやすいかぎ針編みで作ることでエルにも簡単な編み方を教えながら作る事が出来る。
「エルも作ってみてくれ。なぁに失敗しても解けばいいんだ」 
 こうして出品物を更に増やしながらバザーの準備を行っていく。
「いらっしゃい! 全て手編みの一点ものだよっ」
 種類ごとに見栄えよく並べられた手編みの小物達。値段も高すぎず、安すぎずちょうど良い値段をつけて、大人から子供まで手に取りやすくしている。
「声をかけ方はこんな感じかな。……あ、そうだ」
 そういうとウィリアムはエルに一つ頼みごとをする。
「え? 私が?」
 エルが驚いた顔をする。
「頼むよ。きっと売り上げも伸びると思うんだ」
 ウィリアムが頼んだのは持ってきた商品を身に着けてもらうモデルだ。
 ポーチやヘアアクセなどエルのセンスで着飾ってもらう。
「ふふふっ」
 最初は照れていたエルも次第に笑顔になる。
「女の子がいてくれるととても助かるよ。ありがとう」
 やはり飾っているだけと実際に使っている感じが伝わるとでは違うものだ。
「あら。それお洒落ね。一ついただけるかしら」
 エルが身に着けた編み物たちは瞬く間に売れていく。
 それからバザーが終わるまで、ウィリアムの手編みは休む事無く続いた。


「あー言いたい事は分かるぞ。言いたい事は」
 ニールの顔を見るなり『本音が建前を凌駕する男』ニコラス・モラル(CL3000453)は心中お察ししますの表情を返した。
「アレだろ? どうせ可愛いオネーちゃんとか綺麗なオネーちゃんと組めるかもって期待してたんだろ? でも残念、人生そういう事もある、学んどきな」
 がっくりと肩を落とすニール。哀れ。
「さって、肝心の売り物だが……仕事場の連中に手伝ってもらって作った布をメインとした小物と雑貨だ」
 ニールは未だ落胆の表情だ。
「んな顔すんなよ。仕方ないだろー? こういうモンが余りやすい仕事場にいんだからよ」
「おじさんは何の仕事してるのさ?」
「んー? こんな真っ昼間から言えるような仕事じゃねぇよ。ちょいと耳貸せ」
 ニコラスがニールに耳打ちする。
「マジでっ!?」
 ニールの頬がみるみる紅潮する。
「いい反応だ。けど他のヤツらには言うなよ?まだ子供にゃ知るにゃ早い世界だ」
 ニコラスは子供のように無邪気にウィンクする。
「ま、お前さんたち同様、複雑な事情持ちが多い世界だ。だからこそお前達にシンパシーを感じるヤツもいる。僅かなりとも力になりたい、その厚意がこの形だ。だからちゃんと売りはざく必要がある。分かったな?」
 ニールはこくりと頷く。全く関わる事のない世界であるものの、ニコラスの言わんとする事は理解できる気がした。
「さてと、じゃぁ売り方なんだが……女性がターゲットだ。しっかり女性の容姿を見て似合うものを薦めるんだ」
 迷ってる時が落としどころだ。ニコラスはにやりと笑いながらニールの背を叩く。
「んじゃ、ゆるーくやるか。こういうのは気張っても損するだけだぜ」
 ニールは思春期真っ只中。女性に声をかけるのはなかなかに敷居が高かったようだ。
 若干きょどりながらもバザーが終わるまでの間、女性に声をかけ続けていた。
「よく頑張ったな」
 ニコラスはご褒美のお菓子をニールに渡す。

 ──この日、少年は一つ大人の階段を上った。のかもしれない。


「初めましてベティ。こう見えてアタシも自由騎士なんだよ」
 驚くベティにウィンクで答えたのはトミコ・マール(CL3000192)。
 確かに見た目はどこにでもいるようなトミコが孤児院を救ってくれた自由騎士と聞けば驚くのも無理はない。
 じゃぁ準備を始めようか。トミコはそういうとお店から持参した数々の食器や調理道具を並べ始める。
「ベティも一緒に並べてみるかい?」
「うん」
 子供と接するときに重要なのは子供だけにさせるのではなく一緒にやる事。
 ナイフやフォーク、お皿やコップ。おたまに包丁、お鍋にフライパン。ピカピカに磨かれた道具達が並べられていく。
「いらっしゃい! トラットリアマールからの大放出! 気軽に使える台所用品や調理道具が安くなってるよぉっ」
 トミコの威勢の良いよく通る声がバザーに響く。
「ほら、ベティも声かけしてごらん。いらっしゃいませーってさ」
 トミコが笑顔でベティを促す。すると──
「い、いらっさいませーっ」
 ベティが満面の笑みで声をかけ始める。その可愛らしい仕草と声に道行く人達も立ち止まる。
「おやおや、可愛らしい売り子さんだね」
 瞬く間にトミコのブースは人だかりが出来る。
「ベティ、お客さんにこれ渡しておくれ。笑顔を忘れちゃいけないよ」
「あいっ!」
 次々と売れていく調理道具達。綺麗に梱包された道具はベティが笑顔でお客さんに渡していく。
「ベティ、おつりはお客さんと数を確認しながら渡しておくれ」
「えっと、これおつりで……1まい2まい、3まいっ!」
 出来るだけ人と触れ合って欲しいからね。トミコはそんな事を思いながらベティに様々な体験をさせていった。
「ふふふ、ベティったらおままごとを始めたみたいだねぇ」
 ベティは食器を使って遊び始めたようだ。
 バザーが終わる。少し残ったものの、その殆どは売り切れになっていた。
「今日は一日ご苦労さん。楽しかったかい?」
 そこには満面の笑みのベティの姿があった。


『商人魂(あきんどそうる)』ディルク・フォーゲル(CL3000381)は過去のトラウマから言葉を発する事が出来ないベスとコンビを組んでいた。
 それは話す事が出来ないベスに変わって、自分のこの話術が少しは役に立つかなと思っての事。なにより、そういうトラウマを持っている子供が笑顔になる手伝いをしたいとディルクが感じていたからだ。
「初めましてベスさん、ディルクといいます。お絵かきや工作はお好きですか?」
 ベスの目線に合わせ屈んで挨拶をするディルクに、ベスはこくりと頷いた。
「無理に笑おうとすると慣れない時は難しいです。だから、想像しましょう。喜ぶお客様の顔を」
 何かあればかいてくれればいいよと、ペンとパルプ紙をベスに渡し、バザーの準備を進めていく。
 その出品物は木彫りのリングや木製ヘアアクセ。その殆どが手彫りしたものだ。
 その傍らには彫りかけた木片。手彫りのものは実演販売が効果的──そこは生粋の商人であるディルク、抜かりは無い。
 ディルクは巧みな話術で立ち止る人々の興味を引いていく。そして売れればベスが一つ一つ丁寧に丁寧に梱包をして渡す。
「あら、こちらはどんなものが彫られるのかしら?」
「これはですね……」
 ディルクが取り出したのは一枚の絵。可愛らしい花が描かれている。つい先ほどベスが描いた物だ。
「この絵がそのまま立体となり、美しく咲くのです」
 手先も器用なディルクはすぐに実演を開始。観客が固唾を呑んで見守る中、ただの木片は見る見る命を吹き込まれていく。
「……完成ですっ!」
 そこにはまるでベスの書いた絵がそのまま飛び出してきたような見事な花が咲き誇っていた。
「あ……」
 後ろから声がした気がした。
「ベスさん……今……」
 ディルクが振り返るとそこにはぽろぽろと涙を流すベスの姿。その目線の先は自分の書いた絵とディルクの彫った咲き誇る花。
「……き……れい……」

 ある手先の器用な商人は、一人の少女から暗く苦い過去の記憶を払拭した。
 そして自分の感情を声に出して表現するという極々当たり前の所作を、少女に再び与えたのだ。


 バザー開催日より少し前の事。
『慈愛の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)は仲の良い女自由騎士と共に孤児院を訪ねていた。
「よろしくね、トニー君」
 バザーでコンビを組むトニーと挨拶を交わし、言葉を引き出していく。
「セピア・プレゼンターレって知ってる?」
「もちろん知ってるよ。毎年アージンさんが僕たちに贈ってくれるんだ」
 トニーの表情がぱぁと明るくなる。
「そっか……うんうん、文房具の贈答と、カードの返礼だね」
 改めてアリアはオリオン孤児院を守れたことを嬉しく思った。この表情を見れたのだから。
「バザーなのだけど……私たちは返礼用の押し花カードを作りましょう」
「花はどうするの?」
 そう問いかけるトニーにアリアは笑顔で答える。
「と、言うわけで押し花用の花を摘みに行きましょう!」
「そっか。この季節らしさを今の花で表現するんだねっ」
 さすがトニー君。アリアの考えにもすぐに気づいたようだ。孤児院の近くの野草が沢山咲いている野原へ来た2人。
「どんな花が良いと思う?」
 アリアは出来るだけトニーに考える機会を与える。
「うーん。押し花にするなら……花びらは薄い方がいいよね。あとは……あんまり大きいとはみ出ちゃうから大きさも気をつけないと」
「うんうん。すごいねトニー君。」
 トニーは本当に賢い子だ。アリアには一つの考えが浮かんでいる。
「トニー君は将来どんなことがしたいのかな?」
「うーん。……アージンさんのお手伝いをしたい、かな」
 そういって笑うトニー。アリアはトニーの頭を撫でる。その瞳は優しい。

「カードを挟む本はこれね。『考究魔術百科事典』研究論文。内容がどーでも良すぎて、扱いに困ってたのよね……よかった読んでみる?」
 押し花カードを作り終えた二人。トニーは興味があるのか辞典を読みふけっていた。

 そして当日。
「さあ、頑張ろうね!」
「はいっ!」
 自分達で一生懸命作ったカード達。そのどれもが同じものが無い世界でただひとつのカードだ。
「「いらっしゃいませーーっ!」」
 アリアとトニーの元気な声がバザーにこだました。


「マルコ、今日はよろしく頼む」
『実直剛拳』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)は笑顔で話しかけた。
「は、はいっ……あっ!!」
 マルコが知っている顔だという事に気づく。
「ありがとっ!!」
 ペコリとお辞儀するマルコの頭をくしゃくしゃと撫でた。
 アリスタルフが用意したのは玩具類。家にあったもので、比較的綺麗で状態の良いものを選んできていた。ぬいぐるみや布製の人形に包み割り人形、汽車の玩具に積み木のセット、よく弾むボールや玩具の剣と種類は豊富だ。
(人形達は綺麗な布を被せた木箱の上に座らせて見栄えよく。積み木で建物を作り、汽車を停まらせ展示。ボールや剣は少し離れた場所に置き、試遊できるように……)
 アリスタルフはバザーでの商品の配置にも気を配る。
「これはまた……」
 ブース自体の一体感は前を通る人たちの目を奪い立ち止らせる。
「マルコはどういった玩具で遊びたい?」
 アリスタルフは横にちょこんと座るマルコに声をかける。
「ボクはね……汽車が好き。いつかね、汽車に乗ってお父さんとお母さんがいる所に迎えにいくんだ」
 どこにいるんだ? と聞くと、ずっとずっと遠い場所にいるって教えてもらったと、マルコは言った。信じているのだ。
「よし! マルコ。今からお前を汽車の販売担当に任命する!」
「え? ボクが?」
「この汽車でどうやって遊ぶのか、丁寧に説明する役目だ。出来るか?」
「うんっ! だってボク、汽車大好きだもん」
 マルコに笑顔が戻る。
 それからアリスタルフは玩具が売れるたびに新しい担当に任命し、お客さんとの沢山の会話をマルコに経験させた。
「今日は一日よく頑張ったな」
 バザー終わりに頭を撫でると、マルコは嬉しそうにはにかんだ。
 少し売れ残った玩具にふと目をやる。ふとよぎる過去。

『アリスタルフや、今日は汽車を買ってきたぞ』
『今日は積み木だ』
『今日は──』
 アリスタルフが事故で両足を失いキジンとなる前の不自由な時期。祖父母がアリスタルフが少しでも元気になるようにと事あるごとに買い与えた玩具たち。

 残ったものは寄付しよう──だって今の俺にはもう必要ないものだから。
 今まで、ありがとう──。


「よーし、チャリティバザーがんばるぞー! みんなにも楽しい思い出になればいいな♪」
『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は小さな劇団に参加している。
 それを活かしたのが今回のバザーの出し物『役者メイクをして記念撮影』だ。
 普段役者メイクなんてする機会ないだろーから売れると思うんだけど……というカノンのアイデアは当たった。
「さぁさぁバザーにお越しの皆さん。普段と違う自分になってみませんかー? 女性も男性も舞台の主役のよーなメイクをするよー! ほら、こんな風に!」
 そこには可愛くメイクされ、綾織のスカーフやおしゃれな靴、ジュエリーで飾ったアイラがいた。

 普段は物静かで大人しく、目立つことも無い眼鏡っ子のアイラ。それがおさげの髪を下ろし、眼鏡を外し、カノンが施したメイクと衣装で着飾った瞬間、小さなプリンセスになったのだ。
「これが……アイラ?」
 鏡を見て誰よりも驚いたのはアイラ本人だろう。
 しばらく鏡を見て呆けていたアイラは、次第に鏡で色々な角度から自分を見始める。表情を変えてみたり、ポーズをとってみたり。

「メイクの後は記念写真撮影! お菓子一つ分の格安価格で提供するよー!」
 カノンが声を賭けると、綺麗に着飾ったアイラを見たお客さんが口々に記念写真を希望し始める。
「お母さん! 私もやってみたい!」
「ボクも!!」
「では我輩もひとつ」
 大盛況だ。
「アイラちゃんも呼び込みしてみる?」
 こく、と小さく頷くとアイラは恐る恐る声を出す。
「いらっしゃい……ませ……す……っごく可愛くなれ……ますよっ」
 まだまだその声は小さい。でもアイラは勇気を振り絞ったのだ。
 その後はカノンとアイラ2人で協力しながら沢山のお客さんの写真を撮り、喜んでもらう事が出来た。

 バザーは大盛況のうちに幕を閉じた。
「アイラちゃんも何時か誰かを喜ばせたり楽しませたりできる人になってくれたら嬉しいな」
 アイラは力強く頷いた。その顔はきっとこれまで一番の満面の笑みだった。


(バザーを通して労働の尊さを学んでもらえるといいわよね)
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は切にそう願う。
 エルシーが用意するのは独自のソースで野菜と麺を炒めたソース炒麺だ。
「私は自由騎士のエルシー。よろしくね、ブンタ君」
「よろしくなっ!」
 ブンタは所謂ガキ大将。人あたりは強めだ。
「今日はガチだからね。ジローさんの麺料理には負けられないわ」
「ジローって誰だよ? ねーちゃんの彼氏か?」
「なっ!? 違うわよ。麺をこよなく愛す人。いわばライバルね」
「なーんだ。つまんねーの」
「はいはい、調理を始めるわよっ」
 エルシーはエプロンをつけて手際よく調理を進めていく。
 隠すと逆にえろくなる。普段のエルシーの服装にエプロンをつけると……こう……。
 するとブンタの悪戯心に火がついた。エルシーのお尻をぺちぺちと叩き始めたのだ。
「もうっ! ブンタ君何してるの?」
 振り返った時だった。
「隙ありっ! たーーーっち!」
 ブンタはエルシーのおっぱいを掴もうと手を伸ばしたのだが──ブンタの視界は空転し、気づけば地面に転がされていた。
「甘いわね、ブンタ君。」
 エルシーは瞬時にブンタの手首をひねり、悪戯を阻止したのだ。
「す──」
「す?」
「すげぇぇぇぇぇーーーーっ!!!」
 ブンタのエルシーを見る目が変わった。強い自由騎士に憧れているブンタにとってエルシーは一気に尊敬の対象となったのだ。
 それからのブンタは変わった。エルシーの言うことを忠実に守り、テキパキと働いた。
「みんな食べていってよ!!」
 大きな声ではきはきと。その声にお客さんが沢山集る。
「まぁいい匂い……一つ頂いてみようかしら」
(炒めたソースの食欲をそそる香り……この誘いには、何人たりとも抗えないわ!)
 その後もエルシーは調理を続け、バザー終了よりだいぶ早くに完売してしまった。
「ブンタ君、ありがとうね。これは私からの今日のお駄賃よ」
 エルシーはブンタのおでこにキスをする。少し驚いた顔をしていたブンタだったのだが。
「えへへ……エルシーねーちゃん、ありがとな!! オレも……絶対自由騎士になるからっ!!」
 そんなブンタの表情は将来を期待させるに十分なものだった。



「まだ残ってる?」
 ジローの屋台の前にはエルシーとウィリアムの姿。
「まだありますぞーっ」
 ジローが笑顔で麺を出す。温かい麺が2人の身体に染み渡る。
「これ、私の。食べてみて」
「かたじけないですぞ、では」
 ジローが一口。

\うーーーーーまーーーーーいーーーーーぞーーーーー!!!/

 こうしてバザーは大成功で幕を閉じたのだった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『難攻不落の双丘』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『メイキャッパー』
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)
特殊成果
『感謝状』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員

†あとがき†

皆さんの温かい心遣いで孤児院の子供達はとても貴重な体験をする事が出来ました。
この体験はきっと子供達の心を豊かにすることでしょう。

MVPは貴重な体験の思い出を作った貴方へ。きっとこの写真を見るたびに思い出すのでしょうね。

ご参加誠にありがとうございました。
ご感想など頂ければ幸いです。
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