MagiaSteam
館の白い悪夢




 ケイコ・シュワルツはようやく一日の仕事を終え、自分の部屋へと戻ってきた。ふう、と疲れの滲んだため息を吐く。館の家事雑事全般を取り仕切るケイコの仕事は過密だ。それはいいけど最近の若い子は雑過ぎる。クオリティが低い。もっと細やかな気配りができないと、ここでだってどこでだって通用しないわよ−−というお説教をこんこんと部下達にしてきたところだ。少しはしっかりしてほしい。『旦那様』が帰ってきた途端にこれだ−−
 不意に、廊下の方から足音が聞こえた。硬質な音は靴によるものだろうか。まったく、とケイコは苛立たしく呟いた。就寝時間はとうに過ぎているのに。いったい誰がうろついてるのかしら。ケイコは外しかけていたヘッドドレスと眼鏡を付け直し、様子を見にいくことにした。
 自室のドアを開き、照明の落ちた廊下に出る。−−暗い周囲を見回し、ケイコは首を傾げた。人がうろついているなら、何であれ灯を使うはずだ。この館は広い。真っ暗な中でうろついていたら本当に迷子になりかねない。部下達にもそれはしっかり教えてあるのだ。お嬢様−−いや、確かに黙って出歩くことが多いが、夜中にトイレに行くぐらいなら普通にランタンを使う。そして、本気で抜け出そうとしているのなら、彼女は足音など立てない。
 がしゃり、と鎧の身じろぎのような音が聞こえた。振り返る。
 暗闇の中に、紅く光る双眸が浮かんだ。その上で震える触覚。下で蠢く巨大な顎。月明かりにその全貌が浮かんだ。−−蟻。しかしその体躯は全長2mは下らない。身を包む鎧の如き甲殻は白く、背には一対の羽根が生えていた。羽根つきの、巨大な白蟻。
 あり得ない驚愕と、日頃の疲れも重なったのだろう。ケイコは声も無く驚愕の表情を浮かべ、そのまま仰向けに倒れた。


「というわけで、今回の依頼は白蟻退治だ」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は、集まった自由騎士達にそう説明した。「おっと、害虫駆除は云々っていうくだりはもういいからな。分かってるだろ? イブリース化した巨大な白蟻が民家に住み着いたそうだ。行って駆除してやってくれ。出てくる穴を探し出して、巣を破壊できれば最高だな」
「場所は?」
「それがな」
 フレデリックは一度言葉を切り、それから答えた。「知ってるやつもいるかな。場所はガスティール大工廠の長、ガスティール・オーネストの邸宅。大工廠の中央北寄り、第一工場のさらにその先にあるそうだ。大豪邸だ。敵の通路を探すのは骨だろう。それともう一つ問題がある」
「何です?」
「ガスティール邸のメイドオフィサー、ケイコ・シュワルツは職歴十五年の凄腕メイドさんだが−−その分厳しいそうでな。邸に入るにはドレスコードがある。身なり身だしなみが整っていないとダメだそうだ。彼女の機嫌を損ねると、最悪門前払いを食う可能性もある」
「……面倒くせえ……」
「そう言うな。いつもいつも血腥い戦場じゃ気が滅入るってもんだろう。たまにはお洒落して金持ちの家にお呼ばれしてこい。あるいは」
 言葉を切り、フレデリックは悪戯っぽく笑った。「この際暫く放っとくか? 相手がドレスコード解除して泣きついてくるまで待ってもいいぞ」
「……いや、それは」
「だろ? じゃ、頼んだぞ」
 言って、フレデリックは話を終えた。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
鳥海きりう
■成功条件
1.敵の全滅
 皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
 白蟻のイブリース、ブランシュアントとの戦闘シナリオです。敵の全滅が成功条件となります。

 敵及びサブキャラクターのご紹介です。
・ブランシュアント ×10
 白蟻のイブリース。体長2m前後。主な武器は前顎。羽が生えており、飛行可能。
・ケイコ・シュワルツ
 ガスティールの館のメイド長さん。ある意味この依頼の最大の敵。厳格な性格で、部屋の汚れやドレスコードに厳しい。
・ガスティール・オーネスト
 ガスティール大工廠の長。最近出張から帰ってきたらしい。雑事はガフやケイコに任せ、殆ど自室に籠っている。
・エルル・オーネスト(nCL3000034)
 ガスティール・オーネストの娘。現在は館周辺をうろついている。

 ドレスコードはそこまで厳格ではありません。貴方らしい清潔な服装でお越しください。お洒落してると高ポイントです。
 また、ネームド・ゲスト・タグをお持ちの方は『旦那様の取引先であり恩人』と見做されるため、どんな服装で何を持っていようがケイコは何も言いません。
 また、館の周辺をエルル・オーネストがおさんぽしています。彼女に仲介させて中に入り込む方法もあるでしょう。

 また、館内での戦闘はなるべくお控えください。巣への通路を発見し、内部に侵入して巣を破壊し、敵を全滅させてください。

 簡単ですが、説明は以上です。
 皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
11モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
6/10
公開日
2018年12月13日

†メイン参加者 6人†




 依頼を受けた自由騎士達はガスティール大工廠の向こう、ガスティール・オーネストの邸宅を訪れた。白亜の大理石を基調に造られた白の館。周囲の花壇には色とりどりの花が咲き乱れ、黒と灰色しかない大工廠とはまるで別世界だった。
「はえー……見事な豪邸じゃのう……故郷の我が家とはえらい違いじゃ」
『ビッグ・ヴィーナス』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は、大工廠を抜けて辿り着いたオーネストの館を見上げてそう言った。「とは言え、白蟻の害に泣くのは豪邸だろうと小屋だろうと同じこと。自由騎士の機動力を見せてくれるわ!」
「蟻……白蟻か……。うん、良く無いな。被害が出ない内に排除しよう」
 ダリアン オブゼタード(CL3000458)もシノピリカに続いてそう言う。
「退治してくれって依頼を出してるくせにドレスコードにうるさいなんて、お金持ちは面倒臭いねー。私はタグ持ってるから軽装でいいよね? まぁ、仕事だからちゃんとやるけどー」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)はネームド・ゲスト・タグをちゃらちゃら振り回しながらぼやく。
「ここがガスティール・オーネストの大豪邸か。ずいぶんデカイな……この豪邸を建てるのに何百何千もの亜人が犠牲に」
「違います」
「あ、やっぱり? こりゃ失礼−−って」
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)はツッコミに振り返り、目を丸くした。『おさんぽ少女』エルル・オーネスト(nCL3000034)。
「いつからいたんだ−−ま、手間が省けたのはよしとするか。こんにちは、久しぶりだなエルル嬢。ここの子供だったんだな」
 ウェルスの挨拶に、エルルはスカートの裾を摘んでお辞儀する。そして、手で前庭の奥−−館の玄関を示した。「案内してくれるかい?」ウェルスの言葉にエルルは頷く。
 エルルの案内を受けて、自由騎士達は館の前庭を抜け、玄関へとその歩を進めた。


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
 ガスティールの館の玄関前では、メイド長のケイコ・シュワルツが待ち受けていた。
「こんにちわぁ〜♡ イ・ラプセル自由騎士団でぇ〜す♡」
『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)はいつもの癒し手の聖衣で、いつもの営業スマイルで挨拶した。なんかふりがながおかしい気がするがまあ見た目はいい。首にはネームド・ゲスト・タグを下げている。
「いつもお世話になっております、ローラ・オルグレン様。どうぞお通りください」
「ごめんねぇ〜。白蟻退治に良さそうで失礼じゃない服っていうと、これしか思いつかなくてぇ」
「いえ、問題ございません。どうぞお通りください」
 ふりがなはケイコには識別できない。あくまでいつも通りなローラの口調にもケイコは何も言わず、ローラは難なくそこを通過した。
「初めまして、だな? ウェルス・ライヒトゥームだ。今日はよろしくな、ケイコ嬢」
 続いてウェルスが挨拶する。彼はモーニングコートにシルクハットで華麗にキメていた。さらに首にはタグをつけている。ケイコは深々とお辞儀した。
「ようこそ、ウェルス様。お待ちしておりました。今日はよろしくお願い致します」
 ケイコは顔を上げ、それから苦笑まじりのため息を吐いた。「……お嬢様」ウェルスに肩車してもらっているエルルに。
「くまー」
「……ウェルス様、ご迷惑ではありませんか?」
「いや、構わんぜ」
「……どうぞ、お通りください。お嬢様が駄々をこねましたら、お呼びください」
 ああ、と応え、ウェルスも館の中へ入る。
「失礼、シュワルツ殿。部外者にかき回されるご不興は重々承知の上だが、どうか捜査にご協力願いたくあります」
 続いてシノピリカが挨拶する。いつもの軍服姿だが、やはりタグをつけている。「いつもお世話になっております、シノピリカ様。不興などととんでもない。不興と言うならあの怪物の方に決まっておりますわ」
「でしょうな。指揮下の諸氏……メイドや下働きたちに、何か変わった事はありましたか? あるいは、御身が見た所で屋敷に怪しい所などは……?」
「それですわ。皆すっかり震え上がってしまって、辞めたいと言い出す子まで出る始末なのです。まったく最近の若い子ときたら。根性が足りませんわ」
 真っ先に震え上がってぶっ倒れたのはお前だろうに。「……では、麾下のメイド方にもお話を伺います。これにて」
 一礼し、シノピリカも館に入る。
「お初にお目にかかります。話に伺い是非力になりたいと思いまして。詳しい話を聞かせて頂きたく。あ、これは手土産です。お忙しい中時間を取って頂きましたので、もし宜しければ皆様で、どうぞ」
 ダリアンはいつもの軍服に暗金の鎧で訪れていた。さらに手土産の南国フルーツを差し出す。「まあ、これはご丁寧に。さあどうぞ、お通りください」「失礼します」
 ダリアンも無事にそこを通過した。
「こんにちはー。こんなんでいい?」
 クイニィーは普通に挨拶した。さりげなくタグを首にかけておく。「クイニィー・アルジェント様ですね。いつもお世話になっております。……はい、問題ございません。お通りください」
「どーも」
 クイニィーも問題なくそこを通過する。
「こんにちは。アリア・セレスティです。今日はよろしくお願いします」
『慈愛の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)はいつもの学生服の上にバトルドレスという出で立ちだった。やはり首にはタグをかけている。「いつもお世話になっております、アリア様。どうぞお通りください」
「ありがとうございます。それで−−この服よりも、屋敷内で行動するならより相応しい恰好があると思うんです」
「? −−つまり?」
 アリアの意図が分からず、ケイコは訊き返す。アリアは真面目な顔でこう言った。
「メイド服を貸して頂けませんか?」
 ケイコは目を丸くする。眼鏡が1cmずり落ちた。「はい?」


「で、エルル嬢。件の白蟻だが、お嬢は何か知らないか?」
 ウェルスの問いに、エルルは答える。「した」
「下? 一階ってことか?」
「やねうらには、いない」
「言い切るな。なんでだ?」
「みてきた」
「……マジか」
「まじ」
「ってことは、あとは壁の中か、地下か……だが、そんな大きさの白蟻が大量に潜むスペースとなると……」
「した」
「かなあ」
「きたきたぁ! さっすがお金持ち、こういうのも揃えてるぅ♡」
「……何か?」
 ローラはラウンジにいたワイシャツに黒のスラックスのイケメンを発見していた。今日の被害者もといイケメンはキム・ギルバート。オーネスト邸での勤続五年。ボーイからフットマン、バーテンダー、スタイリストを経て現在はハウスキーパー補佐を務める、若き執事候補生である。
「こんにちはぁ♡ 自由騎士団から来ましたローラ・オルグレンでぇす♡ ちょっとお話いいですかぁ?」
「……私に分かることでしたら」
「白蟻ってぇ、どこから出てくるとか分かりますぅ?」
「……夜は私とケイコさんで二度戸締りを確認しています。ドアや窓に損傷が無いので、外から入ってくるわけではないと思います」
「……中に『通路』があるってことぉ?」
「おそらくは。……あの、近くないですか」
「もっと他に無い? 役に立つイケメンには、サービスするよぉ?」
「どちらで白蟻を見ましたか? 普段の掃除の際に、白蟻を発見した日の前後から、不自然に物が動いた形跡がある場所などはありませんか?」
 ダリアンは館内で働いているメイド達に聞き込みをしていた。メイド達は顔を見合わせる。「……物置部屋、かなあ」「古い方のね」「わかる。なんか物動いてたりするよね」
「……古い方の物置、ですか」
「微妙に物が動いてたりするんだそうです。荒らされてるわけではないのですが、帰って怪しいですよね」
「……何をしているのです、アリアさん」
 ダリアンはメイド達にしれっと混じっているアリアに訊き返した。メイド服である。「一時とはいえ、この邸で働くわけですから。ケイコさんには何となく、クラウスさんと同じ空気を感じます。真面目に応対すれば、真摯に力を貸してくれる人だと思って」
「……そうですか」
「貴女達!」
 ケイコの声が響き、アリア含めたメイド達の背筋が伸びる。「お話は手短にするようにと言ったでしょう! 仕事はまだまだ残っていますよ! ムーブ・ナウ!」
「「「い、イエス・マム!」」」
「アリアさん、今日のディナーの食器の準備は?」
「ま、まだです」
「やりなさい。料理長に今日のメニューは聞いてる?」
「ま、まだです、料理長は休憩中で」
「先にやりなさいと言ったでしょう! 料理長が帰ってきてからじゃ間に合いませんよ! 何とかなさい!」
「い、イエス・マム!」
 アリア含むメイド達は蜘蛛の子を散らすように去っていった。ケイコも軽くため息を吐き、颯爽とその場を去っていく。「……ご武運を」
「じゃあ、その古い方の物置を見てみよっか。木の壁とか土壁とかがあって、そこが食い破られてるとか?」
 クイニィーが言い、ダリアンが答える。「ああ。ウェルスとローラを呼んでくる。シノピリカ先輩、よろしいでしょうか?」
「うむ、よしなにじゃ! アリア殿は−−すぐに戻ろう。我々は先に進むとしようぞ」
「……すぐ、戻れますか?」
「すぐやらんと怒られるじゃろう。ケイコ殿に」


 夕食のメニューを聞きに料理長を探しに行ったアリア以外の自由騎士達は、館一階のに足を踏み入れた。木造の倉庫は窓も照明器具も無く、昼なお闇に閉ざされている。「さて、どこかな」ウェルスがカンテラを灯し、呟く。
「ううむ、だいぶ物が詰まっておるのう。少しどかすとするか」
 シノピリカは通路と視界を確保する為、中の物を片付け始めた。
「食い破って出てくるとしたら……古いとことか?」
 ローラは木造の壁を見て、古く脆そうな箇所を探す。
(柱の中を通る事は身体の方が大きいから難しいだろうし……やはり来るとしたら壁や床、天井辺りからか……)
 ダリアンもカンテラを掲げ、物置の中を探索する。
「あー、これじゃない?」
 カンテラを掲げたクイニィーが声を上げる。古い木の壁の一角に、直径1m程の穴が開いている。屈めば入っていけそうだ。「館の中で戦うわけにはいかないよねえ……入る?」
「ならば、ワシが先鋒を務めよう。避けるスペースは無さそうじゃしの」
 言って、シノピリカが先に穴へと入っていく。他の自由騎士達も慎重にその後に続いた。

 細い通路の先には広い空間があった。カンテラの光でも端までは照らせない。その中に複数の虫の足音や羽音が蠢いていた。巣穴。「見つけたな……あったぜ、アリア嬢。もう来れそうか?」
『は、はい! すぐやります! ちょっと待っててください!』
「……どっちに言ったのか分からねえな」
「そのうち来るよ。あたしは下準備でもしてようかな」
 クイニィーはカンテラを消し、ホムンクルスを生成した。インビシブルで暗闇に潜みつつ、ホムンクルスを索敵に放つ。
 暗闇の中から一匹の白蟻がウェルスに襲いかかった。命中。白蟻の顎がウェルスの脚に食らいつく。「っと−−しゃあねえ、始めるか!」ダブルシェル。直撃。食らいついた白蟻の頭部に二発の銃弾が撃ち込まれ、白蟻はぐったりと動かなくなる。一体撃破。
「……かいふく」
 肩の上のエルルがウェルスの傷を癒す。「おお、ありがと。……もう帰ってもいいんだぞ?」「かえらなくても?」「そ、あー、まあ……もういっか。何とかなるだろ」
「白蟻はよくない。昔父の楽譜棚がやられた事があった。−−早めに殲滅しよう!」
 ダリアンはカンテラで視界を確保し、手近の一体に斬りかかった。バッシュ。命中。方天戟の刺突が白蟻を貫く。二体撃破。
「ひとのことを言えた義理ではないが……でかいの。この館にとっては、まさに悪夢よな!」
 シノピリカも前進した。「SIEGER、蒸気装填! 喰らえ、インパクト!」SIEGER・IMPACT 改二。シノピリカの拳が白蟻に撃ち込まれ、押し込まれたエネルギーで白蟻が爆散した。噴出した大量の蒸気の向こうでシリンダー音が響く。三体目。
 敵が動く。残る白蟻は七体。そのうち四体がシノピリカに向かった。
「望むところ! ワシの気力の続く限り−−否! 気力が尽きても殴る! 殴る! 殴るのみぃ!」
 白蟻の攻撃は全て命中するが、シノピリカは倒れない。反撃の拳が放たれる。三体を沈め、一体はバックステップでこれを回避した。
 他の三体はダリアンに向かった。「−−受けて立つ!」白蟻三体の攻撃を、ダリアンは一発は回避し、二発は食らった。
「っ……館内でない以上、手加減はしない! ただ往くのみ!」
 バッシュ。反撃の方天戟が縦横に振るわれる。二体を撃破し、一体はこれを回避した。残り二体。
「はいはい回復するよぉ〜」
 ローラがハーベストレインでシノピリカとダリアンの傷を癒す。「いつもすまんの、ローラ殿!」「助かる」
「見つけたらわりと簡単だったね……フラグアウト」
 ティンクトラの雫。クイニィーが投擲した魔力手榴弾が白蟻に命中した。強毒を伴う緑色の炎に巻かれ、白蟻が動かなくなる。九体目。
「お待たせしましたー!」
「お」
 エコーズ。声と共に飛んだ魔力の短剣が最後の白蟻の頭を射抜いた。十体撃破。戦闘終了。「でも、かっこよく斬り込んで来たりはしないんだな」「よっぽど苦手なんだねえ」
「ちーがーいーまーす。時間が無いから威力より速度を優先したまでで。そもそもこのサイズだともうなんか一周して大丈夫ですから。それにメイド服汚したら怒られるし」
「ともあれ、終わったな。館の方々に報告に戻ろう」
「うむ! この館も、これで夜毎悪夢に悩まされることもあるまい!」
「ま、よかったんじゃない? 戻ろっか」
 合流したアリアも含め、自由騎士達はその場を後にした。その後ケイコに駆除完了を報告し、彼女が作成した報告書の確認作業を行って、彼等はオーネスト邸を後にした。


「……ご報告は以上です、旦那様」
「うむ」
 その日の夜。オーネスト邸二階執務室。ケイコの持ってきた報告書を読み終え、ガスティール・オーネストはそれをデスクに置いた。「王と女王がいるかもしれない、か」
「他にもいくつか書かれてあります。そもそも何故イブリース化したのか、魔素や瘴気の調査を行い、その対処をするべきだと」
「では、頼んでおいてくれ。とりあえず、今回の巣穴は塞いだのだな?」
「ええ、やっておきました。職人が詰められるだけの石を詰めて、壁も急造ですが石壁に造り直してもらっています。少なくとも、しばらくは大丈夫かと」
「スモーカーに魚人に白蟻か……危険な幻想種への対策も何か考えんとな」
 ガスティールはため息を吐き、それからケイコに手を振った。「ご苦労。今日はもう休んで良い」
「はい、旦那様。失礼します」
 ケイコが退出し、ガスティールは窓の向こうを見た。広大な大工廠は月光を照り返す事も無く、ただ黒く闇に沈んでいた。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『エレガントベア』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『ルーキーメイドさん』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『暗金の騎士』
取得者: ダリアン オブゼタード(CL3000458)
特殊成果
『ヘマタイトのカフス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『ヘマタイトのカフス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『メイドの心得』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アリア・セレスティ(CL3000222)
『ヘマタイトのカフス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ローラ・オルグレン(CL3000210)
『ヘマタイトのカフス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ダリアン オブゼタード(CL3000458)
『ヘマタイトのカフス』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:クイニィー・アルジェント(CL3000178)

†あとがき†

皆様お疲れ様でした並びにご参加ありがとうございました。

 MVPはウェルス・ライヒトゥーム様。最もエレガントでした。ありがとうございました。

 改めまして、皆様お疲れありがとうございました。
FL送付済