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【楽土陥落】ニルヴァンにて

●
「くそっ! ヴィスマルクめ……やはりここも狙ってきたか」
ニルヴァン小管区。
そこはイ・ラプセルのシャンバラ攻略の発端とも言える場所。最重要拠点といっても過言では無い。
だが今そこはヴィスマルク軍によって包囲されようとしていた。
「これだけの数……さすがに守りきれるか……」
「しかし……援軍など……」
歴戦の猛者は他の場所の攻略で不在。ここを守るのは戦闘経験の浅いものばかり。
このまま攻め入られれば結果は目に見えていた。
「持久戦に持ち込むしかない……か」
ヴィスマルクの大軍はもう、すぐ目の前まで迫っている。
圧倒的不利──ニルヴァン陥落は時間の問題かと思われた。
「何とか……間に合ったな」
「もう……ぎりっぎりじゃない……」
「ほえー! こりゃ厳しいねー!」
「だがここを落とされるわけにはいかない」
「数の差は圧倒的だねぇ……」
「だが、それゆえにつけいる隙もある」
「ああ……そうだな。狙うは大将首ただひとつ!」
「派手にぶちかまそうぜ!!」
そこへ現れたのは複数の人影。ニルヴァンの危機を察知した『演算士』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)より特命を受け、駆けつけた自由騎士たち。
彼らはどんな逆境をも跳ね返す。
そう、ヒーローは遅れてやってくる──
「くそっ! ヴィスマルクめ……やはりここも狙ってきたか」
ニルヴァン小管区。
そこはイ・ラプセルのシャンバラ攻略の発端とも言える場所。最重要拠点といっても過言では無い。
だが今そこはヴィスマルク軍によって包囲されようとしていた。
「これだけの数……さすがに守りきれるか……」
「しかし……援軍など……」
歴戦の猛者は他の場所の攻略で不在。ここを守るのは戦闘経験の浅いものばかり。
このまま攻め入られれば結果は目に見えていた。
「持久戦に持ち込むしかない……か」
ヴィスマルクの大軍はもう、すぐ目の前まで迫っている。
圧倒的不利──ニルヴァン陥落は時間の問題かと思われた。
「何とか……間に合ったな」
「もう……ぎりっぎりじゃない……」
「ほえー! こりゃ厳しいねー!」
「だがここを落とされるわけにはいかない」
「数の差は圧倒的だねぇ……」
「だが、それゆえにつけいる隙もある」
「ああ……そうだな。狙うは大将首ただひとつ!」
「派手にぶちかまそうぜ!!」
そこへ現れたのは複数の人影。ニルヴァンの危機を察知した『演算士』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)より特命を受け、駆けつけた自由騎士たち。
彼らはどんな逆境をも跳ね返す。
そう、ヒーローは遅れてやってくる──
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.敵中将を倒し、ヴィスマルク軍を撤退させる
麺です。
シャンバラとの戦いも佳境に突入しました。
そして、ここニルヴァンも戦闘領域に入りますが、敵はシャンバラにあらず。
この戦乱の機会に乗じて、戦争後に切り分けられる予定である土地を増やすため、ニルヴァンを狙ったのはヴィスマルク。その猛攻を防ぐのが今回の依頼となります。
●ロケーション
ニルヴァン小管区最前線。市街地夕刻。ニルヴァンを奪取したイラプセルの拠点程近く。
戦闘経験の浅い自由騎士たちとヴィスマルク軍がにらみ合うその場所に自由騎士は颯爽と現れます。
数の差は歴然。ヴィスマルク軍すべてを相手にしてはさすがに勝ち目はありません。
狙うは最前線で指揮を取る大将首とその直轄の配下。
ただし、大将に近づくためにはソラビトもしくは飛びぬけた運動神経(空中二段飛び、ハイバランサー等)を必要とします。
無い場合は遠距離攻撃のみ可能ですが、大佐を守る兵士を倒すまでは大佐を狙うことは出来ません。
20ターン以内に決着しなければ、周りの兵士に妨害され、作戦は失敗します。
逆境を跳ね返す逆転の一手に、自由騎士の精鋭は、今挑む。
●敵
侵火槍兵団
ドゴール・ジプチ大佐 54歳 重戦士
ニルヴァン侵攻を任された司令官。戦闘経験も多く「暴牛」の異名を持つ。
積極的に前線にでて戦い、愛用の巨大な槌で全てをなぎ倒す。
重戦士ランク2のスキルを複数個活性化しています。【威風】【生執着】。
侵火槍兵 4人
大佐直轄の部下。直轄だけあり個々の能力はかなり高い。
ヒーラー1【冷静沈着】、重戦士2【痛覚遮断】、魔導1【エネミースキャン】。
重戦士は大佐を守るように陣形を組みます。
魔導は自由騎士に回復役がいれば優先的に狙います。
皆様のご参加お待ちしております。
(2019.4.9修正)
ただし、大将に近づくためには飛びぬけた運動神経(空中二段飛び、ハイバランサー等)を必要とします。
無い場合は遠距離攻撃のみ可能ですが、命中精度は下がった状態となります。
↓
ただし、大将に近づくためにはソラビトもしくは飛びぬけた運動神経(空中二段飛び、ハイバランサー等)を必要とします。
無い場合は遠距離攻撃のみ可能ですが、大佐を守る兵士を倒すまでは大佐を狙うことは出来ません。
シャンバラとの戦いも佳境に突入しました。
そして、ここニルヴァンも戦闘領域に入りますが、敵はシャンバラにあらず。
この戦乱の機会に乗じて、戦争後に切り分けられる予定である土地を増やすため、ニルヴァンを狙ったのはヴィスマルク。その猛攻を防ぐのが今回の依頼となります。
●ロケーション
ニルヴァン小管区最前線。市街地夕刻。ニルヴァンを奪取したイラプセルの拠点程近く。
戦闘経験の浅い自由騎士たちとヴィスマルク軍がにらみ合うその場所に自由騎士は颯爽と現れます。
数の差は歴然。ヴィスマルク軍すべてを相手にしてはさすがに勝ち目はありません。
狙うは最前線で指揮を取る大将首とその直轄の配下。
ただし、大将に近づくためにはソラビトもしくは飛びぬけた運動神経(空中二段飛び、ハイバランサー等)を必要とします。
無い場合は遠距離攻撃のみ可能ですが、大佐を守る兵士を倒すまでは大佐を狙うことは出来ません。
20ターン以内に決着しなければ、周りの兵士に妨害され、作戦は失敗します。
逆境を跳ね返す逆転の一手に、自由騎士の精鋭は、今挑む。
●敵
侵火槍兵団
ドゴール・ジプチ大佐 54歳 重戦士
ニルヴァン侵攻を任された司令官。戦闘経験も多く「暴牛」の異名を持つ。
積極的に前線にでて戦い、愛用の巨大な槌で全てをなぎ倒す。
重戦士ランク2のスキルを複数個活性化しています。【威風】【生執着】。
侵火槍兵 4人
大佐直轄の部下。直轄だけあり個々の能力はかなり高い。
ヒーラー1【冷静沈着】、重戦士2【痛覚遮断】、魔導1【エネミースキャン】。
重戦士は大佐を守るように陣形を組みます。
魔導は自由騎士に回復役がいれば優先的に狙います。
皆様のご参加お待ちしております。
(2019.4.9修正)
ただし、大将に近づくためには飛びぬけた運動神経(空中二段飛び、ハイバランサー等)を必要とします。
無い場合は遠距離攻撃のみ可能ですが、命中精度は下がった状態となります。
↓
ただし、大将に近づくためにはソラビトもしくは飛びぬけた運動神経(空中二段飛び、ハイバランサー等)を必要とします。
無い場合は遠距離攻撃のみ可能ですが、大佐を守る兵士を倒すまでは大佐を狙うことは出来ません。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年04月22日
2019年04月22日
†メイン参加者 8人†
●
「天が呼ぶ!地が呼ぶ!敵を倒せとあっしを呼ぶ!! 英雄は遅れて登場するものである! ……とはいえ、あっしは英雄などと言うガラではないでござろうが、こういうのはノリが大切なのですぞ」
そう言いつつもノリノリな『ひっこぬかれた猫舌』瑠璃彦 水月(CL3000449)がやってきたのはニルヴァン。そう、今まさにヴィスマルクの大群が押しかけんとしているニルヴァンだ。
「ふむふむ、大将狙いの奇策とな? 悪く言えば玉砕覚悟の鉄砲玉作戦ですな」
瑠璃彦の言葉は的を得ている。確かに少数精鋭といえば聞こえはいいが、その実かなりの危険が伴う。最悪の場合命を落とす事もありえるのだ。
「だが安心して欲しいですぞ、あっしらは銃弾とはいえなんと銀の弾丸! 化け物に当たれば一発大逆転! 外したらサイナラでござるが、まぁそれはどの道変わらないので大丈夫ですぞ!」
瑠璃彦が胸を張る。そこにあるのは確かな自信。これまで培ってきた実績と経験が、瑠璃彦をまた一歩ヒーローへと導いていく。
その横には双眼鏡でヴィスマルク軍の動きを追う『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)がある。
(やはりニルヴァン小管区を狙ってきたか)
「全く、油断も隙もないな」
ルークの言葉には、ぎりぎりのところで間に合ったという安堵とまだ予断を許さないという緊張感が入り混じる。
「まぁ……たいした歓迎は出来ないが、土産に鉛弾くらいはくれてやる」
ルークが弾を装填する。込める弾丸の一つ一つに譲れない気持ちが込められていく。
「アレがヴィスマルク軍か……」
なるほど、と頷くのは『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。確かにシャンバラともイ・ラプセルとも違うな。身に着ける武具などの違いもあるが、それ以上に醸し出す重々しい雰囲気が全く異なっていた。
ニルヴァン攻略時には負傷により、この地へ赴く事が出来なかったオルパ。だが今、ヴィスマルクによって危機に晒されようとしているこの地に彼は来た。そして状況は逼迫している。一刻の猶予も無い状況にかわりはない。だが……この不利な状況を、大将首を獲る事でひっくり返そうってのか……。──面白い、俺も乗るぜ。
オルパの心は躍る。そう、今度こそ自身の手で道を切り開くのだ。
「そうですよぉ~ニルヴァンはイ・ラプセルとシャンバラを繋ぐ重要な聖霊門がありますぅ! ここは絶対に落とされる訳にはいきません〜! 防衛しますよぉ!」
少々のんびりした口調。だがしっかりと意思の伝わる言葉で皆に発破を掛けたのは『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)だ。
シェリルはこれまでのシャンバラでの戦いを振り返る。シャンバラは噂違わぬ魔導国家であった。そのためシェリルの得意とする魔導の攻撃はなかなか効果的とはいえなかった。──ならヴィスマルクは?
いつかは相対するであろうヴィスマルクの正規軍であれば如何なものか。今後を見据えるシェリルの中ではニルヴァンを守るコトと同等なほどの価値のある事柄だ。
「ええ、そうですね」
シェリルの言葉に静かに、そして強い意思を持って答えたのは『聖き雨巫女』たまき 聖流(CL3000283)。
「この拠点を、ヴィスマルクに渡す訳にはいきません。ここを皮切りに、今後ヴィスマルクがイ・ラプセルに侵攻し易くなる事を、未然に防ぐ為に……。私は、私の最大限出来る限りの戦いをします」
心優しき癒し手は守る事がどれだけ大切なことか、誰よりも理解している。
「さぁ、私達の戦いを始めましょう。最善を尽くせば……勝利の女神は、必ずや我々に微笑んでくれるでしょう。」
穏やかに笑顔を見せるのは『歩く懺悔室』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。その穏やかな空気とは対照的に、アンジェリカが身につける武器は身長ほどはあろうかという巨大な十字架と鉄の塊。華奢な彼女が扱うには大きく無骨すぎる武器。だがアンジェリカの腕力はいとも簡単にその武器を操る。その姿は神々しいまでの豪胆。そう、彼女が十字架を振り上げればそこは懺悔室となるのだ。
「よっしゃ! みんな準備は出来てるねっ! 飛ぶよっ!!」
力強くトミコ・マール(CL3000192)が合図する。
最大のピンチを最高のチャンスに変える。8人の自由騎士たちの戦いが始まる──。
●
「フフフ……ニルヴァンなど落ちたも同然。またこれで武勲を挙げてしまうな。ハッハッハ」
圧倒的大軍を引き連れ、ニルヴァン入りしたドゴール・ジプチ大佐。負けることなど考えようも無い圧倒的進軍に彼の心は緩みきっていた。
「あれがターゲットだな」
「そうみたい」
「それじゃ皆用意はいいかい?」
「わたしとたまきさんは遠方からサポートします~」
「ご武運を」
近づく術を持たないシェリルとたまきは遠方より援護体勢をとる。
「それじゃぁ飛ぶでござるか」
「いきましょう」
瑠璃彦とアリアが飛ぶ。
「参りましょう」
「敵陣への急襲……誰かを救う事に比べれば楽な仕事だ」
アンジェリカとルークが高く飛び、空を蹴る。
「よし、それじゃいくよっ」
トミコが羽ばたく。
「さぁいくぜ」
オルパは建物の造詣を巧みに利用する。
それぞれの特性を活かしながら異なる放物線を描き、6人は一気に敵大将の目前へと躍り出る。
「な、何者だ!?」
狼狽したのは側近の兵士達。大将を守るのが役目の彼らだが……実際は大将の元まで敵が迫ることなど殆ど無い。そこへたどり着く前に事は済んでいたためだ。
だがこの日は違う。来ないはずの敵がいるのだ。
「はじめまして、ミスター。さっそくで悪いが、招かれざる客にはお帰り願おうか」
オルパが見据えるのは大将首ただ一つ。だが、さすがにそうやすやすとは近づかせてもらえそうに無い。なぜなら側近の兵士達は動揺しながらもすぐにジプチ大佐を守る隊形をとったためだ。一気に決めたいと考えていたオルパもこれには作戦の変更を余儀なくされる。まずは……回復役を落とす。オルパが構える。その両手には漆黒と深紅のダガーが怪しく光る。
「反撃する暇など与えはしない」
「っ!?」
突如兵士の目の前に現れたのはルーク。影狼で一気に距離を縮めヒーラーへ一気に攻撃しようとしたのだが。
「ここは通さん」
ヒーラーを守る重戦士によってその攻撃は阻まれたものの、極至近距離からの攻撃はルークの行く手を遮る重戦士の鎧に大きなダメージを与えていた。
「ぬぅ……この威力。ジプチ大佐! こやつらやはり只者ではありませんぞ」
「最優先で我を守れ。絶対にヤツラを近づけるで無いぞ。ヒーラーは我を回復し続けるのだ。他の物など回復する必要など無い」
ジプチはわが身を守るよう命令する。この命令はドコまでも自分本位。自分のためだけにすべてを動かす。
(攻撃を受けても無いのに回復させつづけるなんて……!)
アリアは大佐の言動にこれまで対峙してきた幾多の者達と同じ空気を感じていた。
思い起こされるのはアデレードの防衛線。嗤いながらアリアをいたぶる兵士達の歪んだ顔。忘れようとしても忘れられない出来事。脳裏によぎるだけで全身が震える。
それでもアリアは強い意思で相手を見つめる。消せない過去ならば──思い起こすほども無いほどに今を強く生きるしかない。
「先ずは動きを止めるっ」
アリアは踊る。その踊りは兵士達の視線を奪い、気付けば兵士達は歩を止める。
「ぬぅ……移動不能か! こしゃくな」
ジプチがアリアの踊りの本質を見抜くが、その身はすでにアリアの術中。いかに巨大な槌を振り回そうとその足は動かない。
「さぁて、アンタの相手はアタシだよ」
重戦士の前にはトミコ。腕を組み仁王立つその姿には、ヴィスマルクの重戦士も圧を感じざるを得ない。
「やぁやぁ我こそはアマノホカリより流れて来たりて、水護の拳をもって悪鬼羅刹を鎮める者なり! 名は水月瑠璃彦、水神の加護と修羅をその身に背負うケモノなり! かの武に優れしヴィスマルクの国とやらに真の英雄とは居られるであろうか? 武器を振り回すことは牛でも出来ようぞ、魔を放つは阿呆でも出来ようぞ、群れるだけなら鼠でも出来ようぞ。今一度問おう、かの国に真の英雄は居るであろうか!」
読みどおりだった。瑠璃彦の長口上は、大将を守らんとする側近たちの感情を逆なでする。
「ふざけた事をぬかすな!!」
「アイツを生かして帰すな!!」
特に阿呆と罵られた魔導を操るものの怒りは凄まじい。狙いを瑠璃彦ただ1人に絞る。
(うむ……思った以上に注目を集めてしまったでござるな)
瑠璃彦はニカッと笑うと構えを取る。これもまた瑠璃彦の作戦であった。
「では……懺悔の準備は出来ましたか?」
穏やかな笑顔を浮かべながら、巨大な武器を携えるアンジェリカのその姿はどこか異質の存在感を醸し出す。
そのまま前へ出るアンジェリカとトミコ。ヴィスマルク重戦士もまたそれに合わせるように前に出る。両者一歩もひかない。それぞれが背負うは国の威信。その時だった。
「お待たせ致しましたぁ! 最大火力で道を開きますぅ! ここからが本番ですよぉ〜!」
それはシェリルの声。6人が一気に近づき戦闘を行っている間にシェリルが行ったこと。それは自己の魔導力をさらに高めた上でのジウスドラの函の発動。短期決戦である事はシェリルも十分に理解している。だが、だからこそアドバンテージがとりやすい初撃の重要性は高い。故にシェリルはあえて時間をかけ、初撃でいかに高ダメージを与えるかに集中した。そしてその作戦は見事にハマる。練り上げた魔導の波動は最終目的である大佐を含む敵全員を巻き込み、大きなダメージを与えたのだ。
「やりましたぁ~~」
喜びの表情を浮かべるシェリルとその横で微笑むたまき。確かにシェリルとたまきは敵本陣まで到達するだけのスキルはもちあわせては居なかった。だが、シェリルには遠距離でも敵を攻撃しうる魔導の力が、たまきには味方を親し続ける回復能力がある。それがどれ程自由騎士にとって優位な状況を生み出すものか。その存在感は計り知れない。
「私は殆ど回復しか出来ません……。攻撃は皆さんの力を信じるしかありません……。ですが私は皆さんの事を回復する事で、そんな皆さんを守る事が出来たなら……。いえ、出来たなら……では無く、皆さんの事を私が、必ずお守りします!」
直接の戦いでは無いかもしれない。でも癒し手には癒し手の戦いがある。そしてもそれも前で戦うみなと同じく命を賭して行うものだと。たまきが見せた決意の表情は確かにそう言っているように思えた。
「ぐはぁっ」
まず倒れたのは敵魔導兵。アンジェリカとトミコが重戦士と打撃戦を繰り広げる中、サンシャインダンスで自己強化したアリアが一気に魔導兵に肉薄する。そしてそこで繰り出すは疾風刃・改。アリアがその身を持って感じ、会得した技。
神速アタッカーのアリアにとって己が速度を攻撃に転化できる優れものだったのだが。
(……やっぱり、もう風が完全にはついてこないのね)
攻撃に転化できる速度には限りがある。そしてその限界をアリアはすでに迎えていたのだ。
自身が磨き上げた速度という武器のすべてを転化できない事を感じながらもアリアは剣を振るう。なすべきことの先には更なる限界突破の道があると信じて。圧倒的な速度の差から生まれるアリアの猛攻は程なく魔導兵の意識を奪い去ったのであった。
「それにしても頑丈だねぇ」
「そうですね。けれどもいずれは落ちるはずです」
重戦士を相手する2人。無論双方とも無事ではない。正面から打ち合い、ぼろぼろになった姿がそれを物語っている。それでもたまきが施す回復は2人を奮い立たせ、重戦士2人を完全に押さえ込んでいた。
「今がチャンスだな」
「違いない」
オルパとルークが見据える先には敵ヒーラーの姿。少数精鋭の電撃戦において回復されることでの戦闘の長期化は是が非でも避けたい状況。だがいまアンジェリカとトミコが重戦士を抑えることで敵ヒーラーを庇うものは居ない。
「貫け! アローレイン!!」
「俺の弾丸で終わらせるぜ」
オルパの放った矢の雨が、術者の手元を凍てつかせ、ルークの放った弾丸はヒーラーの急所を的確に打ち抜いた。
「ジプチ……様……申し訳ありま……せん」
ヒーラーは静かに倒れた。最後まで命令を守り、ジプチだけを回復し続けたそのままに。
「くそっ! どいつもこいつも使えないヤツラだ!!」
交戦中の重戦士に守られているとはいえ、回復と遠距離での攻撃手段を失ったことにジプチは苛立ちを隠せない。
「こうなれば我自らがその首とってくれよう」
腐っても大佐クラスの称号を与えられた者。槌を構えるジプチには相応の威圧感が漂う。
「やっと大将のおでましでござるな」
愛用の秋刀魚と柳葉魚を構える瑠璃彦。
「あんたには別にうらみは無いが……この進軍、とめさせてもらうぜ」
瑠璃彦と肩を並べるのはルーク。その両手には決意の弾丸が込められた銃。
「フハハ、笑わせるな。イ・ラプセル風情が何を……オワッ!?」
突如飛んできた緋き炎がジプチの足元を焼く。
「わたしたちだっているのですぅ~」
放ったのは遠くでえへんと胸を張るシェリル。そしてその横には絶えず自由騎士を癒し続けるたまきの姿。
敵魔導とヒーラーを倒した今、自由騎士の回復の要であるたまきが標的となる事ももはや無い。
これより先は全員全力。すべてを出し切って敵対象を討ち取るのみ。
たまきが回復の合間を見てリズムを刻む。そのリズムは相手の調子を狂わせ攻撃精度を下げていく。
「ふぜけおって!! この虫ケラどもが!!」
ジプチが振るう槌が風を巻き起こす。
「お覚悟!!」
瑠璃彦が強く拳を握り締める。
「何とかここまでもってこれたな」
倒れるわけにはいかないんでな──ルークが自身に柳凪を施す。それは覚悟の表れ。
「ちぇ。結局全員野郎じゃん。かわいこちゃん位用意してくれよ~」
そんな軽口を叩くオルパ。だがいざジプチ大佐を前に表情が変わる。
「さぁて。暴牛っていう異名がつくくらいだ。楽しませてもらえるんだよな」
オルパはあえて接近戦を挑もうとしている。もちろんそれはただの特攻では無い。武器との相性を考え、自身が尤も有利と思える状況で相手をする。いつもはお調子者で明るいオルパが見せるもう一つの顔。それは敵にしか見せない冷たい笑顔。
「こちらも終わりました」
そこへ重戦士を相手していたアンジェリカとトミコも加わる。
「数居れば我に勝てるとでも思ったか。戯けが!!」
ジプチと自由騎士の戦いは熾烈を極める。そして──ジプチが膝を折り、投降したのはリミットのわずかばかり前。自由騎士達がジプチの前に現れてから僅か数分後の出来事であった。
●
「敵将、討ち取ったりぃぃぃぃ!!」
瑠璃彦が声高に勝どきをあげる。瑠璃彦にとって始めての合戦で得た最高の成果。
「これで敵軍は総崩れとなるでしょう」
アンジェリカは終始変わらぬ笑顔。だが傷ついた身体とぼろぼろの服が戦いの壮絶さを物語っていた。
「とはいえ、周りは敵だらけだ。行うべきは行った。ここは速く撤収しないとな」
ルークが敵兵を銃撃で威嚇しながら速やかに引き上げるよう皆に進言する。胸の奥で強い気持ちを誰よりも熱く滾らせている男は、それでいて誰よりも冷静に今を対処しようとしていた。
「では……戻りましょう」
たまきの顔には安堵が浮かぶ。そしてその表情と雰囲気は自由騎士たちの緊張をほぐす。
「うわぁあーーーー!! ジプチ大佐がやられた!!」
「もうだめだっ!!」
「退却だ!! 逃げろーーーっ!!!」
混乱するヴィスマルク軍の兵士が撤退していく中。一際高い建物の上には8人の自由騎士の姿。
「こちらは片付きました。え!? ……が、……に、……了解しました」
完了報告をしたアリアをみる自由騎士たち。
「行かないとな」
「ええ、まだきっと間に合います」
それぞれが頷く。次の瞬間もうそこには自由騎士たちの姿は無かった。
──某所。
「へへっ。次はここでござるな」
「あらあら、まあまあ」
「ああ、こっちもまた厳しい状況だな」
「一難差ってまた一難ってところだねぇ」
「どこへ行ってもかわらない。私は私はすべき事をするだけ」
「大丈夫です……回復は私に任せてください」
「それじゃ。もうひとふんばりです~」
「今度はかわいこちゃんはいるかな~」
そう。英雄(ヒーロー)はいつだって遅れてやってくる!
「天が呼ぶ!地が呼ぶ!敵を倒せとあっしを呼ぶ!! 英雄は遅れて登場するものである! ……とはいえ、あっしは英雄などと言うガラではないでござろうが、こういうのはノリが大切なのですぞ」
そう言いつつもノリノリな『ひっこぬかれた猫舌』瑠璃彦 水月(CL3000449)がやってきたのはニルヴァン。そう、今まさにヴィスマルクの大群が押しかけんとしているニルヴァンだ。
「ふむふむ、大将狙いの奇策とな? 悪く言えば玉砕覚悟の鉄砲玉作戦ですな」
瑠璃彦の言葉は的を得ている。確かに少数精鋭といえば聞こえはいいが、その実かなりの危険が伴う。最悪の場合命を落とす事もありえるのだ。
「だが安心して欲しいですぞ、あっしらは銃弾とはいえなんと銀の弾丸! 化け物に当たれば一発大逆転! 外したらサイナラでござるが、まぁそれはどの道変わらないので大丈夫ですぞ!」
瑠璃彦が胸を張る。そこにあるのは確かな自信。これまで培ってきた実績と経験が、瑠璃彦をまた一歩ヒーローへと導いていく。
その横には双眼鏡でヴィスマルク軍の動きを追う『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)がある。
(やはりニルヴァン小管区を狙ってきたか)
「全く、油断も隙もないな」
ルークの言葉には、ぎりぎりのところで間に合ったという安堵とまだ予断を許さないという緊張感が入り混じる。
「まぁ……たいした歓迎は出来ないが、土産に鉛弾くらいはくれてやる」
ルークが弾を装填する。込める弾丸の一つ一つに譲れない気持ちが込められていく。
「アレがヴィスマルク軍か……」
なるほど、と頷くのは『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。確かにシャンバラともイ・ラプセルとも違うな。身に着ける武具などの違いもあるが、それ以上に醸し出す重々しい雰囲気が全く異なっていた。
ニルヴァン攻略時には負傷により、この地へ赴く事が出来なかったオルパ。だが今、ヴィスマルクによって危機に晒されようとしているこの地に彼は来た。そして状況は逼迫している。一刻の猶予も無い状況にかわりはない。だが……この不利な状況を、大将首を獲る事でひっくり返そうってのか……。──面白い、俺も乗るぜ。
オルパの心は躍る。そう、今度こそ自身の手で道を切り開くのだ。
「そうですよぉ~ニルヴァンはイ・ラプセルとシャンバラを繋ぐ重要な聖霊門がありますぅ! ここは絶対に落とされる訳にはいきません〜! 防衛しますよぉ!」
少々のんびりした口調。だがしっかりと意思の伝わる言葉で皆に発破を掛けたのは『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)だ。
シェリルはこれまでのシャンバラでの戦いを振り返る。シャンバラは噂違わぬ魔導国家であった。そのためシェリルの得意とする魔導の攻撃はなかなか効果的とはいえなかった。──ならヴィスマルクは?
いつかは相対するであろうヴィスマルクの正規軍であれば如何なものか。今後を見据えるシェリルの中ではニルヴァンを守るコトと同等なほどの価値のある事柄だ。
「ええ、そうですね」
シェリルの言葉に静かに、そして強い意思を持って答えたのは『聖き雨巫女』たまき 聖流(CL3000283)。
「この拠点を、ヴィスマルクに渡す訳にはいきません。ここを皮切りに、今後ヴィスマルクがイ・ラプセルに侵攻し易くなる事を、未然に防ぐ為に……。私は、私の最大限出来る限りの戦いをします」
心優しき癒し手は守る事がどれだけ大切なことか、誰よりも理解している。
「さぁ、私達の戦いを始めましょう。最善を尽くせば……勝利の女神は、必ずや我々に微笑んでくれるでしょう。」
穏やかに笑顔を見せるのは『歩く懺悔室』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。その穏やかな空気とは対照的に、アンジェリカが身につける武器は身長ほどはあろうかという巨大な十字架と鉄の塊。華奢な彼女が扱うには大きく無骨すぎる武器。だがアンジェリカの腕力はいとも簡単にその武器を操る。その姿は神々しいまでの豪胆。そう、彼女が十字架を振り上げればそこは懺悔室となるのだ。
「よっしゃ! みんな準備は出来てるねっ! 飛ぶよっ!!」
力強くトミコ・マール(CL3000192)が合図する。
最大のピンチを最高のチャンスに変える。8人の自由騎士たちの戦いが始まる──。
●
「フフフ……ニルヴァンなど落ちたも同然。またこれで武勲を挙げてしまうな。ハッハッハ」
圧倒的大軍を引き連れ、ニルヴァン入りしたドゴール・ジプチ大佐。負けることなど考えようも無い圧倒的進軍に彼の心は緩みきっていた。
「あれがターゲットだな」
「そうみたい」
「それじゃ皆用意はいいかい?」
「わたしとたまきさんは遠方からサポートします~」
「ご武運を」
近づく術を持たないシェリルとたまきは遠方より援護体勢をとる。
「それじゃぁ飛ぶでござるか」
「いきましょう」
瑠璃彦とアリアが飛ぶ。
「参りましょう」
「敵陣への急襲……誰かを救う事に比べれば楽な仕事だ」
アンジェリカとルークが高く飛び、空を蹴る。
「よし、それじゃいくよっ」
トミコが羽ばたく。
「さぁいくぜ」
オルパは建物の造詣を巧みに利用する。
それぞれの特性を活かしながら異なる放物線を描き、6人は一気に敵大将の目前へと躍り出る。
「な、何者だ!?」
狼狽したのは側近の兵士達。大将を守るのが役目の彼らだが……実際は大将の元まで敵が迫ることなど殆ど無い。そこへたどり着く前に事は済んでいたためだ。
だがこの日は違う。来ないはずの敵がいるのだ。
「はじめまして、ミスター。さっそくで悪いが、招かれざる客にはお帰り願おうか」
オルパが見据えるのは大将首ただ一つ。だが、さすがにそうやすやすとは近づかせてもらえそうに無い。なぜなら側近の兵士達は動揺しながらもすぐにジプチ大佐を守る隊形をとったためだ。一気に決めたいと考えていたオルパもこれには作戦の変更を余儀なくされる。まずは……回復役を落とす。オルパが構える。その両手には漆黒と深紅のダガーが怪しく光る。
「反撃する暇など与えはしない」
「っ!?」
突如兵士の目の前に現れたのはルーク。影狼で一気に距離を縮めヒーラーへ一気に攻撃しようとしたのだが。
「ここは通さん」
ヒーラーを守る重戦士によってその攻撃は阻まれたものの、極至近距離からの攻撃はルークの行く手を遮る重戦士の鎧に大きなダメージを与えていた。
「ぬぅ……この威力。ジプチ大佐! こやつらやはり只者ではありませんぞ」
「最優先で我を守れ。絶対にヤツラを近づけるで無いぞ。ヒーラーは我を回復し続けるのだ。他の物など回復する必要など無い」
ジプチはわが身を守るよう命令する。この命令はドコまでも自分本位。自分のためだけにすべてを動かす。
(攻撃を受けても無いのに回復させつづけるなんて……!)
アリアは大佐の言動にこれまで対峙してきた幾多の者達と同じ空気を感じていた。
思い起こされるのはアデレードの防衛線。嗤いながらアリアをいたぶる兵士達の歪んだ顔。忘れようとしても忘れられない出来事。脳裏によぎるだけで全身が震える。
それでもアリアは強い意思で相手を見つめる。消せない過去ならば──思い起こすほども無いほどに今を強く生きるしかない。
「先ずは動きを止めるっ」
アリアは踊る。その踊りは兵士達の視線を奪い、気付けば兵士達は歩を止める。
「ぬぅ……移動不能か! こしゃくな」
ジプチがアリアの踊りの本質を見抜くが、その身はすでにアリアの術中。いかに巨大な槌を振り回そうとその足は動かない。
「さぁて、アンタの相手はアタシだよ」
重戦士の前にはトミコ。腕を組み仁王立つその姿には、ヴィスマルクの重戦士も圧を感じざるを得ない。
「やぁやぁ我こそはアマノホカリより流れて来たりて、水護の拳をもって悪鬼羅刹を鎮める者なり! 名は水月瑠璃彦、水神の加護と修羅をその身に背負うケモノなり! かの武に優れしヴィスマルクの国とやらに真の英雄とは居られるであろうか? 武器を振り回すことは牛でも出来ようぞ、魔を放つは阿呆でも出来ようぞ、群れるだけなら鼠でも出来ようぞ。今一度問おう、かの国に真の英雄は居るであろうか!」
読みどおりだった。瑠璃彦の長口上は、大将を守らんとする側近たちの感情を逆なでする。
「ふざけた事をぬかすな!!」
「アイツを生かして帰すな!!」
特に阿呆と罵られた魔導を操るものの怒りは凄まじい。狙いを瑠璃彦ただ1人に絞る。
(うむ……思った以上に注目を集めてしまったでござるな)
瑠璃彦はニカッと笑うと構えを取る。これもまた瑠璃彦の作戦であった。
「では……懺悔の準備は出来ましたか?」
穏やかな笑顔を浮かべながら、巨大な武器を携えるアンジェリカのその姿はどこか異質の存在感を醸し出す。
そのまま前へ出るアンジェリカとトミコ。ヴィスマルク重戦士もまたそれに合わせるように前に出る。両者一歩もひかない。それぞれが背負うは国の威信。その時だった。
「お待たせ致しましたぁ! 最大火力で道を開きますぅ! ここからが本番ですよぉ〜!」
それはシェリルの声。6人が一気に近づき戦闘を行っている間にシェリルが行ったこと。それは自己の魔導力をさらに高めた上でのジウスドラの函の発動。短期決戦である事はシェリルも十分に理解している。だが、だからこそアドバンテージがとりやすい初撃の重要性は高い。故にシェリルはあえて時間をかけ、初撃でいかに高ダメージを与えるかに集中した。そしてその作戦は見事にハマる。練り上げた魔導の波動は最終目的である大佐を含む敵全員を巻き込み、大きなダメージを与えたのだ。
「やりましたぁ~~」
喜びの表情を浮かべるシェリルとその横で微笑むたまき。確かにシェリルとたまきは敵本陣まで到達するだけのスキルはもちあわせては居なかった。だが、シェリルには遠距離でも敵を攻撃しうる魔導の力が、たまきには味方を親し続ける回復能力がある。それがどれ程自由騎士にとって優位な状況を生み出すものか。その存在感は計り知れない。
「私は殆ど回復しか出来ません……。攻撃は皆さんの力を信じるしかありません……。ですが私は皆さんの事を回復する事で、そんな皆さんを守る事が出来たなら……。いえ、出来たなら……では無く、皆さんの事を私が、必ずお守りします!」
直接の戦いでは無いかもしれない。でも癒し手には癒し手の戦いがある。そしてもそれも前で戦うみなと同じく命を賭して行うものだと。たまきが見せた決意の表情は確かにそう言っているように思えた。
「ぐはぁっ」
まず倒れたのは敵魔導兵。アンジェリカとトミコが重戦士と打撃戦を繰り広げる中、サンシャインダンスで自己強化したアリアが一気に魔導兵に肉薄する。そしてそこで繰り出すは疾風刃・改。アリアがその身を持って感じ、会得した技。
神速アタッカーのアリアにとって己が速度を攻撃に転化できる優れものだったのだが。
(……やっぱり、もう風が完全にはついてこないのね)
攻撃に転化できる速度には限りがある。そしてその限界をアリアはすでに迎えていたのだ。
自身が磨き上げた速度という武器のすべてを転化できない事を感じながらもアリアは剣を振るう。なすべきことの先には更なる限界突破の道があると信じて。圧倒的な速度の差から生まれるアリアの猛攻は程なく魔導兵の意識を奪い去ったのであった。
「それにしても頑丈だねぇ」
「そうですね。けれどもいずれは落ちるはずです」
重戦士を相手する2人。無論双方とも無事ではない。正面から打ち合い、ぼろぼろになった姿がそれを物語っている。それでもたまきが施す回復は2人を奮い立たせ、重戦士2人を完全に押さえ込んでいた。
「今がチャンスだな」
「違いない」
オルパとルークが見据える先には敵ヒーラーの姿。少数精鋭の電撃戦において回復されることでの戦闘の長期化は是が非でも避けたい状況。だがいまアンジェリカとトミコが重戦士を抑えることで敵ヒーラーを庇うものは居ない。
「貫け! アローレイン!!」
「俺の弾丸で終わらせるぜ」
オルパの放った矢の雨が、術者の手元を凍てつかせ、ルークの放った弾丸はヒーラーの急所を的確に打ち抜いた。
「ジプチ……様……申し訳ありま……せん」
ヒーラーは静かに倒れた。最後まで命令を守り、ジプチだけを回復し続けたそのままに。
「くそっ! どいつもこいつも使えないヤツラだ!!」
交戦中の重戦士に守られているとはいえ、回復と遠距離での攻撃手段を失ったことにジプチは苛立ちを隠せない。
「こうなれば我自らがその首とってくれよう」
腐っても大佐クラスの称号を与えられた者。槌を構えるジプチには相応の威圧感が漂う。
「やっと大将のおでましでござるな」
愛用の秋刀魚と柳葉魚を構える瑠璃彦。
「あんたには別にうらみは無いが……この進軍、とめさせてもらうぜ」
瑠璃彦と肩を並べるのはルーク。その両手には決意の弾丸が込められた銃。
「フハハ、笑わせるな。イ・ラプセル風情が何を……オワッ!?」
突如飛んできた緋き炎がジプチの足元を焼く。
「わたしたちだっているのですぅ~」
放ったのは遠くでえへんと胸を張るシェリル。そしてその横には絶えず自由騎士を癒し続けるたまきの姿。
敵魔導とヒーラーを倒した今、自由騎士の回復の要であるたまきが標的となる事ももはや無い。
これより先は全員全力。すべてを出し切って敵対象を討ち取るのみ。
たまきが回復の合間を見てリズムを刻む。そのリズムは相手の調子を狂わせ攻撃精度を下げていく。
「ふぜけおって!! この虫ケラどもが!!」
ジプチが振るう槌が風を巻き起こす。
「お覚悟!!」
瑠璃彦が強く拳を握り締める。
「何とかここまでもってこれたな」
倒れるわけにはいかないんでな──ルークが自身に柳凪を施す。それは覚悟の表れ。
「ちぇ。結局全員野郎じゃん。かわいこちゃん位用意してくれよ~」
そんな軽口を叩くオルパ。だがいざジプチ大佐を前に表情が変わる。
「さぁて。暴牛っていう異名がつくくらいだ。楽しませてもらえるんだよな」
オルパはあえて接近戦を挑もうとしている。もちろんそれはただの特攻では無い。武器との相性を考え、自身が尤も有利と思える状況で相手をする。いつもはお調子者で明るいオルパが見せるもう一つの顔。それは敵にしか見せない冷たい笑顔。
「こちらも終わりました」
そこへ重戦士を相手していたアンジェリカとトミコも加わる。
「数居れば我に勝てるとでも思ったか。戯けが!!」
ジプチと自由騎士の戦いは熾烈を極める。そして──ジプチが膝を折り、投降したのはリミットのわずかばかり前。自由騎士達がジプチの前に現れてから僅か数分後の出来事であった。
●
「敵将、討ち取ったりぃぃぃぃ!!」
瑠璃彦が声高に勝どきをあげる。瑠璃彦にとって始めての合戦で得た最高の成果。
「これで敵軍は総崩れとなるでしょう」
アンジェリカは終始変わらぬ笑顔。だが傷ついた身体とぼろぼろの服が戦いの壮絶さを物語っていた。
「とはいえ、周りは敵だらけだ。行うべきは行った。ここは速く撤収しないとな」
ルークが敵兵を銃撃で威嚇しながら速やかに引き上げるよう皆に進言する。胸の奥で強い気持ちを誰よりも熱く滾らせている男は、それでいて誰よりも冷静に今を対処しようとしていた。
「では……戻りましょう」
たまきの顔には安堵が浮かぶ。そしてその表情と雰囲気は自由騎士たちの緊張をほぐす。
「うわぁあーーーー!! ジプチ大佐がやられた!!」
「もうだめだっ!!」
「退却だ!! 逃げろーーーっ!!!」
混乱するヴィスマルク軍の兵士が撤退していく中。一際高い建物の上には8人の自由騎士の姿。
「こちらは片付きました。え!? ……が、……に、……了解しました」
完了報告をしたアリアをみる自由騎士たち。
「行かないとな」
「ええ、まだきっと間に合います」
それぞれが頷く。次の瞬間もうそこには自由騎士たちの姿は無かった。
──某所。
「へへっ。次はここでござるな」
「あらあら、まあまあ」
「ああ、こっちもまた厳しい状況だな」
「一難差ってまた一難ってところだねぇ」
「どこへ行ってもかわらない。私は私はすべき事をするだけ」
「大丈夫です……回復は私に任せてください」
「それじゃ。もうひとふんばりです~」
「今度はかわいこちゃんはいるかな~」
そう。英雄(ヒーロー)はいつだって遅れてやってくる!
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『一番槍』
取得者: 瑠璃彦 水月(CL3000449)
『柔和と重厚』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
『微笑みの癒し手』
取得者: たまき 聖流(CL3000283)
取得者: 瑠璃彦 水月(CL3000449)
『柔和と重厚』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
『微笑みの癒し手』
取得者: たまき 聖流(CL3000283)
†あとがき†
ヴィスマルク侵火槍兵団大佐ドゴール・ジプチは倒れ、ヴィスマルク軍は四散。
8人のヒーローの活躍でニルヴァンの危機はひとまず去りました。
MVPはすべてを守りきった貴方へ。
ご参加ありがとうございました。
8人のヒーローの活躍でニルヴァンの危機はひとまず去りました。
MVPはすべてを守りきった貴方へ。
ご参加ありがとうございました。
FL送付済