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センセイの苦悩

●
「やあ! 君たち、ちょーっと頼み事があるんだけど、引き受けてはくれないかな?」
そんな風に声をかけてきたのは、『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)。
彼のことは噂で知っていた。案内人を名乗る、人が良いので困りごとをよく押し付けられ――もとい引き受けている人物。
はてさて、何故自分達に声をかけてきたのだろう。不思議に思いながらも、話を聞くことにした。
「ああ、助かるよ。実はさ、私塾を営んでる女の子が困ってるらしくてさ――」
●
「ううん……やっぱりわたしがしっかり言わないのがダメなのでしょうか……」
ぺらり、ぺらりと紙を捲って、女性――シェリー・シャノン(nCL3000054)は盛大なため息をついた。
私塾を営んでいるシェリーは、一般市民の、主にこどもたちに勉学――といっても字の読み書きや簡単な計算くらいなのだが――と、簡単な魔術の使い方を教えている。
無償での、小さな小さな私塾だが……もちろん、それにやりがいを感じているし、なにより生徒たちが問題を解けるようになったり、理解をしてくれたときの喜びは無上のものだ。
――しかし、シェリーは、厳しく注意をすることが出来ない。それ故に、今の問題に直面しているのだ。
……宿題が、揃わないのである。
何人かの生徒が、なかなか宿題を提出してくれない。
由々しき事態ではあるのだが、シェリーには注意をすることが出来ない。提出出来ない事情があったなら、それは仕方がないことだとも思うからだ。
けれど、せめて理由は聞きたい。
しかし、先生が直接聞きに行っても、答えにくいかもしれない。
「……どうしましょう……」
このままでは、未提出での注意もしなければならない。シェリーは、頭を抱えていた。
さあ、自由騎士たちよ。そんな悩める先生に代わって、生徒たちに宿題を提出しない理由を聞きに行ってみよう!
「やあ! 君たち、ちょーっと頼み事があるんだけど、引き受けてはくれないかな?」
そんな風に声をかけてきたのは、『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)。
彼のことは噂で知っていた。案内人を名乗る、人が良いので困りごとをよく押し付けられ――もとい引き受けている人物。
はてさて、何故自分達に声をかけてきたのだろう。不思議に思いながらも、話を聞くことにした。
「ああ、助かるよ。実はさ、私塾を営んでる女の子が困ってるらしくてさ――」
●
「ううん……やっぱりわたしがしっかり言わないのがダメなのでしょうか……」
ぺらり、ぺらりと紙を捲って、女性――シェリー・シャノン(nCL3000054)は盛大なため息をついた。
私塾を営んでいるシェリーは、一般市民の、主にこどもたちに勉学――といっても字の読み書きや簡単な計算くらいなのだが――と、簡単な魔術の使い方を教えている。
無償での、小さな小さな私塾だが……もちろん、それにやりがいを感じているし、なにより生徒たちが問題を解けるようになったり、理解をしてくれたときの喜びは無上のものだ。
――しかし、シェリーは、厳しく注意をすることが出来ない。それ故に、今の問題に直面しているのだ。
……宿題が、揃わないのである。
何人かの生徒が、なかなか宿題を提出してくれない。
由々しき事態ではあるのだが、シェリーには注意をすることが出来ない。提出出来ない事情があったなら、それは仕方がないことだとも思うからだ。
けれど、せめて理由は聞きたい。
しかし、先生が直接聞きに行っても、答えにくいかもしれない。
「……どうしましょう……」
このままでは、未提出での注意もしなければならない。シェリーは、頭を抱えていた。
さあ、自由騎士たちよ。そんな悩める先生に代わって、生徒たちに宿題を提出しない理由を聞きに行ってみよう!
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.生徒たちと対話し、宿題の提出を出来るように導く。
●問題を抱えた生徒たち
エレ 女 12歳
☆宿題を提出しない理由……あまり勉強が得意ではなく、点数の低さで叱られるのが嫌だから。
ラディ 男 13歳
☆宿題を提出しない理由……貧しい家の手伝いをしながら少しずつ進めているが、提出期限に間に合わない。
クレア 女 11歳
☆宿題を提出しない理由……もっと本格的な魔術の使い方を教えてもらいたいのに、簡単なものしか教えてもらえない不満の腹いせ。
●プレイング
前述の生徒たちの中から各プレイヤー様に好きな子を一人選んでいただき、宿題を提出しない理由を聞き出し、なんとか宿題を提出出来るように導きましょう!
そのためにNPCシェリーに働きかけることももちろん可能です。
●同行NPC
シェリー・シャノン
基本的には見守りに徹します。皆様からの働きかけがあった場合のみ反応を返します。
※生徒達の年齢と性別を追記いたしました。2018.12.28
エレ 女 12歳
☆宿題を提出しない理由……あまり勉強が得意ではなく、点数の低さで叱られるのが嫌だから。
ラディ 男 13歳
☆宿題を提出しない理由……貧しい家の手伝いをしながら少しずつ進めているが、提出期限に間に合わない。
クレア 女 11歳
☆宿題を提出しない理由……もっと本格的な魔術の使い方を教えてもらいたいのに、簡単なものしか教えてもらえない不満の腹いせ。
●プレイング
前述の生徒たちの中から各プレイヤー様に好きな子を一人選んでいただき、宿題を提出しない理由を聞き出し、なんとか宿題を提出出来るように導きましょう!
そのためにNPCシェリーに働きかけることももちろん可能です。
●同行NPC
シェリー・シャノン
基本的には見守りに徹します。皆様からの働きかけがあった場合のみ反応を返します。
※生徒達の年齢と性別を追記いたしました。2018.12.28
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
1個
1個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2019年01月07日
2019年01月07日
†メイン参加者 6人†
●悩めるセンセイと自由騎士
「うう……すみません。自由騎士の皆様にわざわざお集まり頂いて……」
半分泣きそうな声でそう言うと、件のセンセイ――シェリー・シャノン(nCL3000054)が、集まった自由騎士たちに頭を下げる。
……。
……という光景が、しばらく続いていた。
「センセイ。センセイ。話が進まないから……ほら、頭を上げて」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)に諭され、なんとか頭を上げたシェリー。彼女は、ゆるりと頭を振ると、ぱちん、と自分の両頬を手で挟み込むようにして軽く叩いた。
そうして、まっすぐに自由騎士たちに向き合うと。
「はい、きちんと話を進めます。……宿題の提出が滞っている生徒は三人いまして……」
●まず最初は、提出「しない」
「ワタシはきゐこさんとクレアさんの対応だな」
『道化の機械工』 アルビノ・ストレージ(CL3000095) が、『真理を見通す瞳』 猪市 きゐこ(CL3000048)と同行者であるシェリーに確かめた。
あの後、宿題の提出が滞っている生徒たちの授業中の様子や振る舞い、センセイから見た性格などを聞いた自由騎士たちは、あまりに大人数で向かっても警戒させてしまうだけだろうと二人一組のペアになり、生徒の対応をしていくことになった。
そして、アルビノときゐこは『クレア』という生徒の対応をすることになったのだが。
「宿題ねぇ……。さくっと提出して好きな事しちゃえばいいのにって気がしてしまうわ!」
きゐこがはっきりと宣言すれば、シェリーの苦笑いが返ってくる。アルビノは、ふむ、と興味深そうにきゐこの話を聞いていた。
「……と、こちらがクレアさんのお家です」
「わかったわ。まず、先生から私たちのことを話してくれる? 先生だけで行っても意固地になるでしょうし、私たちが先に行ったら明らかに怪しいでしょうし」
「は、はいっ。そうですね」
シェリーは多少慌てた様子だったが、すぐに持ち直すとクレアの自宅の扉を叩く。
――少しの間。そして、扉から出て来た少女が話のクレアだろう、とアルビノときゐこは判断した。
「……先生。なんのご用事?」
「えっと、今日はね。少しお話を聞かせてもらいたくて」
「……」
目に見えて、クレアが嫌そうな顔をしたのがわかった。それは、シェリーにも当然わかることで。
「先生と、じゃなくてね。クレアさんとお話をしたいって自由騎士の方々がいらしてるんだ」
「自由騎士?」
ふわ、と。クレアの嫌そうな顔が和らいで。興味を引かれているとわかるものになった。
ふむふむ。その様子をしっかりと観察したアルビノときゐこは、そろそろ頃合いだと判断し、クレアに挨拶をすることにした。
あまり目立たないようにシェリーの後ろ側にいた二人が、クレアの元に歩いていく。
「はじめまして、あなたがクレア?」
「少しお話をさせてもらえればと思います。よろしくお願いしますね」
「はいっ」
「じゃあ、先生はちょっと離れてるね」
そそくさとシェリーがその場から離れる。……背中に、若干の哀愁を漂わせながら。
「……さあ、お話しましょう! クレアはどんなお話に興味があるかしら。私たち、今日はなんでも答えちゃうわ」
「ほ、ほんと?」
「本当に本当です。なにか聞きたいことはありますか?」
「えっとね、すごい魔術について知りたい!」
なるほど、と。きゐことアルビノが視線を合わせる。
「すごい魔術、ね。わかったわ。じゃあ、まずは基礎編からいきましょう。アルビノさんはクレアさんをお願い」
「はい、わかりました」
――。
「すっごーい!」
警戒していたのは何処へやら。クレアはきゐこが持ってきた論文を見て、その目を輝かせている。
それを微笑ましげに見ていたきゐことアルビノだったが、そろそろ頃合いだろうと、アルビノが切り出す。
「なるほど。クレアさんあなたの向上心はすばらしいものですね。だがそれゆえに、不満もありそうですね……例えば……今学んでいるものと自分のレベルがあっていないとか」
クレアは、身をがばっと乗り出した。
「そうなの! わたし、もっとすごい魔術の勉強がしたいのに、先生が教えてくれないから。……宿題があるんだけど、それをまだ出してないの。腹いせ!」
「なるほど、……向上心がある事は良い事ね!」
「はい。とても素晴らしいことです」
きゐことアルビノがそれに同調する。クレアは気を良くしたようで、少し照れたように笑っていた。
「知りたい知識を教えて貰えないととてもやきもきするし何とか知識を奪ってやろうって思うわ! でも、ただ闇雲に難易度の高い事教わっても意味ないでしょ?」
「やみくも?」
「むやみに、という意味よ」
「へえ!」
目を輝かせたクレアに、うんうんと頷きながらきゐこは続ける。
「私だって難度の高い魔術はすぐには使えなかったし…元の魔術を自己流に改造するにはその魔術に対する高い理解が必要だわ! その為まず今教えて貰ってる物を完璧にしてそれを先生に示す事を提案するわ!」
「……えっと?」
「つまり出された宿題を提出期間よりも圧倒的に早く! そして完璧に仕上げて先生に提出するのよ! その上で先生に「次の宿題までの期間でもう一つ上の難易度の魔道を教えて欲しい」と言えばいいわ! それでも教えてくれなかった場合は理由を聞けばいいと思うわ!」
「……! なるほど!」
「ふむ、クレアさんは理解も早いです。これなら、宿題をした上でなら先生もしっかりと話を聞いてくれると思いますよ」
「ええ、それと、それでも教えてくれなかった場合。自分の問題だったらそれを修正。先生の問題だった場合は残念だけど自分が満足できるレベルの塾を新たに探すといいわ!こればっかりは仕方の無い事だしね……」
「……、う、うん! わたし、ちょっと宿題持ってくる!」
たたたっ、と家の中にかけていったクレアに、きゐことアルビノは顔を見合わせた。
そうして、ちょいちょい、と。遠くからこちらを見ていたシェリーを呼び寄せる。
「これで、クレアさんは宿題を出してくれると思います。そこから先は、先生次第です」
「は、はいっ。ありがとうございました」
「ええ。先生、クレアの話、ちゃんと聞いてあげてちょうだいね?」
「はいっ……!」
「あ、先生! これ……!」
家から飛び出すように出てきたクレアが、シェリーに宿題を手渡す。
それから、クレアとシェリーが会話を交わすのを。今度はきゐことアルビノが遠巻きに見つめていた。
「ふふふ、ワタシは道化。誰の心にもそっと寄り添うのですよ」
「どうせ教えて貰うなら完全に自分の物にしたいじゃない♪ ふふふ♪ 個人的には将来魔術の道に新たな1ページを刻んでくれるように成ってくれれば嬉しいわね♪ 新しい知識はとても良い物だわ!」
二人は、いたずらっぽく笑っている。笑って、クレアとシェリーを見守っていた。
●お次は、提出「したくない」
「お願いします。騎士の皆様」
わたしは、少し離れています。そう言って、シェリーはそそくさとその場から遠巻きになった。
――さて、こちらは『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025) と『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403) の組だ。彼女たちは、エレという少女の担当になっていた。
扉から顔を出してこちらを見ているエレは、非常におどおどとして、自信なさげだ。
そんな彼女に、カノンは笑顔で話しかける。
「改めて、はじめまして! カノンはカノンっていうんだ。それでこっちが」
「はい、私はフーリィンです。よろしくお願いします」
「はじめまして、よ、よろしくお願いします……」
なんとか、といった様子でエレは挨拶を返してくれた。……かなり、尻すぼみになってはいたが。
と、カノンがさっそく切り込んだ。
「エレちゃんはシェリー先生にお勉強を教えてもらってるんだよね?カノンも武術や演技を人に教えてもらってるんだよ。でもそれ程覚えが速い方じゃないから課題が上手く出来ずによく叱られるんだー」
少し、エレがびっくりしたように瞳を開いた。
それを見たフーリィンが、続けざまに言葉を紡ぐ。
「はい、宿題には私も苦しめられてましたよ」
「……騎士さまたちも?」
「うん!」
「そうです。私は勉強が得意ではないので、酷い時はほぼ白紙で提出した事もありました」
え、と。思わずエレが口に出していた。
フーリィンは優しい笑みを浮かべたままに話をしていく。
「怒られたりはしませんでしたね。むしろ、よくこれを堂々と提出出来たものだと褒められ……あれ、呆れられていたのかも?」
ぽかん、とした様子を見せたエレ。
「騎士さまにも、そんなときが……?」
「はい、ありましたよ」
……すると、少しの間もごもごと口を動かしていたエレが、ゆっくりと、話を切り出した。
「あのね、」
「うん」
「宿題があんまり、うまく出来ないの。……それで、叱られるの、怖くて……」
「なるほど……そうでしたか」
フーリィンが、す、とエレに視線を合わせるために少ししゃがんだ。そして、しっかりとエレの目を見て。
「シェリーさんは今出来ないというだけで叱るような先生でしたか?」
また、少しエレの瞳が開かれる。
そこに、すかさずカノンが言葉を重ねた。
「それにね、カノンは叱られるのは嫌じゃないんだよ。叱ると怒るは全然違う。怒るってのはただ感情をぶつけるだけ。でも叱るっていうのは相手が何時かちゃんと出来るって期待してくれてるからなんだ。勿論叱られたくないってエレちゃんの気持ちは解る。でもね、シェリー先生がエレちゃんを叱るとすればそれはエレちゃんに期待してるからだとカノンは思うな。むしろ叱られなくなった方が終りだよ」
「叱られなくなった方が、ダメ」
「うん! それ以前にシェリー先生は理不尽に人を怒ったり叱ったりする人じゃないと思うよ。宿題をきちんと提出した上で解らない所はちゃんと尋ねたら、先生もちゃんと教えてくれると思う」
「はい。……宿題の出来や点数は、あくまで今の状態を確認する目安に過ぎません。分からないところは分からないものとして提出し、後で分かるまで教えて貰いましょう。……無料の私塾をするくらい、先生は貴方達の力になりたいんですから、ね?」
――その話をする頃には、エレの顔はすっかり前を向いていた。
●ちょこっと閑話
無事にエレがシェリーに宿題の提出が出来なかった理由を話し、宿題を提出したあとの話を少しだけしよう。
「ありがとうございます、本当に……!」
ぺこぺこと頭を下げるシェリーに、そっと近寄ったのはフーリィンだ。
「先生にも、少しお話があります」
「は、はいっ」
びくりと肩を跳ねさせたシェリーに、フーリィンは、エレにしたようにしっかりと顔を見て。
「厳しく注意する事の前に、きちんとお話を聞いてあげて、一緒に考えてあげる事は出来たのではないでしょうか」
――。
シェリーが、息を飲んだ。
「この先にまた別の何かがあった時、気付いてあげられるのは私達ではなく先生ですから――傷付く事、傷付けてしまうかもしれない事を恐れずに踏み込んであげてくださいね」
生徒を思う優しさと、少しの勇気があれば出来ますから。
その言葉を、しっかりと聞いて。
シェリーは、頷きを返した。
●最後は、提出「したいけれど出来ない」
――これは、彼らが生徒と顔を合わせる少し前のやりとり。
「勉強かー。オレも村で読み書きとか勉強するの、すげえ嫌だったなあ。まあ、必要なことなんだって今ならわかるけど」
大きな街の子も、その辺は同じなのかねー。
『新米兵士』ナバル・ジーロン(CL3000441) が呟けば、隣に立った『楽器と共に歩むもの』ドロテア・パラディース(CL3000435) が苦笑いを返した。
「ですが、先生と子どもたち双方の為に問題解決に向けて頑張るであります! 改めてよろしくお願いするのであります、ナバル殿!」
「ああ、温泉掘りで顔合わせたっけな。よろしくな、ドロテアさん!」
……その直後。ナバルの顔が不思議なかたちで固まった。
それを、本当に不思議そうな顔でドロテアが見やる。
「……?」
「い、いかんいかん! ボンノー退散!!」
「?」
――と、まあ、そんなことがあって。
「……騎士の皆様、よろしくお願いします」
「おう! 任せろ!」
「任せるであります!」
なにか考えている様子のシェリーから頼まれ、二人はラディという少年と顔を合わせた。
ラディは、少し緊張した様子で、ナバルとドロテアの顔を交互に見ている。
「こんにちはであります! 私たちとお話しませんか♪」
「お話?」
「ああ、少しお話ししたいんだ。ダメかな?」
「……ううん、ダメじゃないよ」
そのまま、彼らは少しの間談笑に花を咲かせた。
私塾での楽しかったこと、家の手伝いをしていること――。そして。
「宿題ってあるよな。どうして出さないんだ?」
ある程度話が進み、ラディの緊張も解れた頃に、ナバルが単刀直入に切り出した。
「あー、……えっと。その」
ラディは一瞬肩をびくつかせたが……ナバルとドロテアの顔を交互に見て、……少しうつむいて。
「……家の、手伝いが」
「ん?」
「うちは、貧乏だから。ぼくも手伝ってるんだ。でも、忙しくて、なかなか宿題が出来ないんだ。……途中までは出来ても、全部は、出来なくて」
ナバルとドロテアは、一瞬顔を見合わせると。
「ラディ、お前、大したやつだな! 一生懸命家の手伝いして、さらに勉強も忘れず進めるなんてな!」
「……え」
「そうでありますよ! お手伝いとお勉強、両方とも頑張っているのは立派であります!」
ラディは怒られると思っていたのか、怯えたように閉じかけていた瞳をゆっくりと開いた。
そこには、怒るなんてない。むしろ笑顔で褒めているナバルとドロテアの姿がある。
「……私も宿題関係で苦労した体験があるのですよ。楽器の習い事をしていたのでありますが、この部分を練習してきてね、と宿題を出されたことがありまして。周囲の迷惑にならないよう練習するとなると、場所や時間が限られています。努力したものの、結局途中までしかできるようにならなくてどうしようかと悩みましたね……時間はどうにもできませんからね」
「うんうん。……オレなんて、家の手伝いで疲れたら勉強なんてほっぽり出してたぞ!」
ゆっくりと言い聞かせるように言うドロテアと、はっきりと宣言するナバルに、ラディはまだ少し目を白黒とさせているようだ。
「期限に間に合わないのは、単純に時間が足りないんだろ? そりゃ仕方ねえよ。そこで無理して、例えば寝る時間を削って宿題しても、絶対体壊しちまうぞ。勉強自体が嫌なわけじゃないんだろ? なら、全然大丈夫だって! 先生も、やる気のある生徒を叱ったり見捨てたりする人じゃないと思うしな。その辺は、多分お前のほうがわかるんじゃないか?」
「そうであります! その事情をちゃんと説明すれば、先生はわかってくれるでありましょう。宿題も途中でもいいでありますから、提出するのであります。頑張った証、見てもらわなきゃ勿体ないでありますよ!」
「……、」
目をぱちくりとさせながらも……さきほどまでの少しの怯えはなくなったラディに、ナバルとドロテアが手を差し出す。
「先生は単に、宿題が上がってこない理由を、事情を知りたいだけなのさ。……お話、しにいこうぜ?」
「はい! 私とナバル殿もついているのであります! お話しに行きましょう!」
「……うん!」
●ちょこっと閑話ぱーと②
「ありがとうございました!」
そう言って、頭を下げたシェリーは、ナバルとドロテアが思っていたよりも早く頭を上げた。
その目が以前とはまた違うものを宿しているのを見て、……ナバルが口を開く。
「先生にも少しだけ。……もう大丈夫かもだけど」
にぱっと、笑顔。ナバルはシェリーの肩を激励の意味を込めて、軽く叩いた。
「相手の事情を思いやれる先生は、優しいよな! でも、思うだけで止まらず、もう一歩踏み込む勇気は必要だと思うぜ!」
「!」
シェリーは、目を微かに見開いた。
「……はい。皆様から頂いた言葉、忘れません」
●もう一幕
「わー、っとと。少し待ってくれ、ドロテアさん!」
「? なんでありますか? ナバル殿」
帰り際、ドロテアを呼び止めたナバル。ナバルを不思議そうに見ているドロテアに。
「あー、……えっと。その」
「どうしたでありますか? さっきのラディ殿のような感じがするであります」
……しばらく、そう言われながら口をもごもごさせていたナバルだったが。ついに。
「その! 温泉掘りの時! いろいろ見ちゃってごめん!」
「……」
……。
「……ああ! あの時の!」
「え、」
……あまり気にしていない様子のドロテアに、ちょっとびっくりしたナバル。
だが、
「うん。……謝れたから、よかった……」
●それからどうした?
「えっとね、先生考えました。みんなとしっかり向き合うために、なにが必要なのか。
それは、優しすぎることじゃなくて、時には傷付き、傷付けることもあるけど、それを恐れないで、みんなに接することだと、思いました。考える機会を、もらいました。
これから、先生はたまにみんなを叱るかもだけれど、それはね、みんなが嫌いだからじゃなくて、みんなをしっかりわかりたいから、みんなに先生が思っていることをわかって、その上で自分の道を考えてほしいからです。
難しいかもしれませんが、先生も一緒にがんばっていきます。だから、一緒に、進んでいきましょう」
「うう……すみません。自由騎士の皆様にわざわざお集まり頂いて……」
半分泣きそうな声でそう言うと、件のセンセイ――シェリー・シャノン(nCL3000054)が、集まった自由騎士たちに頭を下げる。
……。
……という光景が、しばらく続いていた。
「センセイ。センセイ。話が進まないから……ほら、頭を上げて」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)に諭され、なんとか頭を上げたシェリー。彼女は、ゆるりと頭を振ると、ぱちん、と自分の両頬を手で挟み込むようにして軽く叩いた。
そうして、まっすぐに自由騎士たちに向き合うと。
「はい、きちんと話を進めます。……宿題の提出が滞っている生徒は三人いまして……」
●まず最初は、提出「しない」
「ワタシはきゐこさんとクレアさんの対応だな」
『道化の機械工』 アルビノ・ストレージ(CL3000095) が、『真理を見通す瞳』 猪市 きゐこ(CL3000048)と同行者であるシェリーに確かめた。
あの後、宿題の提出が滞っている生徒たちの授業中の様子や振る舞い、センセイから見た性格などを聞いた自由騎士たちは、あまりに大人数で向かっても警戒させてしまうだけだろうと二人一組のペアになり、生徒の対応をしていくことになった。
そして、アルビノときゐこは『クレア』という生徒の対応をすることになったのだが。
「宿題ねぇ……。さくっと提出して好きな事しちゃえばいいのにって気がしてしまうわ!」
きゐこがはっきりと宣言すれば、シェリーの苦笑いが返ってくる。アルビノは、ふむ、と興味深そうにきゐこの話を聞いていた。
「……と、こちらがクレアさんのお家です」
「わかったわ。まず、先生から私たちのことを話してくれる? 先生だけで行っても意固地になるでしょうし、私たちが先に行ったら明らかに怪しいでしょうし」
「は、はいっ。そうですね」
シェリーは多少慌てた様子だったが、すぐに持ち直すとクレアの自宅の扉を叩く。
――少しの間。そして、扉から出て来た少女が話のクレアだろう、とアルビノときゐこは判断した。
「……先生。なんのご用事?」
「えっと、今日はね。少しお話を聞かせてもらいたくて」
「……」
目に見えて、クレアが嫌そうな顔をしたのがわかった。それは、シェリーにも当然わかることで。
「先生と、じゃなくてね。クレアさんとお話をしたいって自由騎士の方々がいらしてるんだ」
「自由騎士?」
ふわ、と。クレアの嫌そうな顔が和らいで。興味を引かれているとわかるものになった。
ふむふむ。その様子をしっかりと観察したアルビノときゐこは、そろそろ頃合いだと判断し、クレアに挨拶をすることにした。
あまり目立たないようにシェリーの後ろ側にいた二人が、クレアの元に歩いていく。
「はじめまして、あなたがクレア?」
「少しお話をさせてもらえればと思います。よろしくお願いしますね」
「はいっ」
「じゃあ、先生はちょっと離れてるね」
そそくさとシェリーがその場から離れる。……背中に、若干の哀愁を漂わせながら。
「……さあ、お話しましょう! クレアはどんなお話に興味があるかしら。私たち、今日はなんでも答えちゃうわ」
「ほ、ほんと?」
「本当に本当です。なにか聞きたいことはありますか?」
「えっとね、すごい魔術について知りたい!」
なるほど、と。きゐことアルビノが視線を合わせる。
「すごい魔術、ね。わかったわ。じゃあ、まずは基礎編からいきましょう。アルビノさんはクレアさんをお願い」
「はい、わかりました」
――。
「すっごーい!」
警戒していたのは何処へやら。クレアはきゐこが持ってきた論文を見て、その目を輝かせている。
それを微笑ましげに見ていたきゐことアルビノだったが、そろそろ頃合いだろうと、アルビノが切り出す。
「なるほど。クレアさんあなたの向上心はすばらしいものですね。だがそれゆえに、不満もありそうですね……例えば……今学んでいるものと自分のレベルがあっていないとか」
クレアは、身をがばっと乗り出した。
「そうなの! わたし、もっとすごい魔術の勉強がしたいのに、先生が教えてくれないから。……宿題があるんだけど、それをまだ出してないの。腹いせ!」
「なるほど、……向上心がある事は良い事ね!」
「はい。とても素晴らしいことです」
きゐことアルビノがそれに同調する。クレアは気を良くしたようで、少し照れたように笑っていた。
「知りたい知識を教えて貰えないととてもやきもきするし何とか知識を奪ってやろうって思うわ! でも、ただ闇雲に難易度の高い事教わっても意味ないでしょ?」
「やみくも?」
「むやみに、という意味よ」
「へえ!」
目を輝かせたクレアに、うんうんと頷きながらきゐこは続ける。
「私だって難度の高い魔術はすぐには使えなかったし…元の魔術を自己流に改造するにはその魔術に対する高い理解が必要だわ! その為まず今教えて貰ってる物を完璧にしてそれを先生に示す事を提案するわ!」
「……えっと?」
「つまり出された宿題を提出期間よりも圧倒的に早く! そして完璧に仕上げて先生に提出するのよ! その上で先生に「次の宿題までの期間でもう一つ上の難易度の魔道を教えて欲しい」と言えばいいわ! それでも教えてくれなかった場合は理由を聞けばいいと思うわ!」
「……! なるほど!」
「ふむ、クレアさんは理解も早いです。これなら、宿題をした上でなら先生もしっかりと話を聞いてくれると思いますよ」
「ええ、それと、それでも教えてくれなかった場合。自分の問題だったらそれを修正。先生の問題だった場合は残念だけど自分が満足できるレベルの塾を新たに探すといいわ!こればっかりは仕方の無い事だしね……」
「……、う、うん! わたし、ちょっと宿題持ってくる!」
たたたっ、と家の中にかけていったクレアに、きゐことアルビノは顔を見合わせた。
そうして、ちょいちょい、と。遠くからこちらを見ていたシェリーを呼び寄せる。
「これで、クレアさんは宿題を出してくれると思います。そこから先は、先生次第です」
「は、はいっ。ありがとうございました」
「ええ。先生、クレアの話、ちゃんと聞いてあげてちょうだいね?」
「はいっ……!」
「あ、先生! これ……!」
家から飛び出すように出てきたクレアが、シェリーに宿題を手渡す。
それから、クレアとシェリーが会話を交わすのを。今度はきゐことアルビノが遠巻きに見つめていた。
「ふふふ、ワタシは道化。誰の心にもそっと寄り添うのですよ」
「どうせ教えて貰うなら完全に自分の物にしたいじゃない♪ ふふふ♪ 個人的には将来魔術の道に新たな1ページを刻んでくれるように成ってくれれば嬉しいわね♪ 新しい知識はとても良い物だわ!」
二人は、いたずらっぽく笑っている。笑って、クレアとシェリーを見守っていた。
●お次は、提出「したくない」
「お願いします。騎士の皆様」
わたしは、少し離れています。そう言って、シェリーはそそくさとその場から遠巻きになった。
――さて、こちらは『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025) と『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403) の組だ。彼女たちは、エレという少女の担当になっていた。
扉から顔を出してこちらを見ているエレは、非常におどおどとして、自信なさげだ。
そんな彼女に、カノンは笑顔で話しかける。
「改めて、はじめまして! カノンはカノンっていうんだ。それでこっちが」
「はい、私はフーリィンです。よろしくお願いします」
「はじめまして、よ、よろしくお願いします……」
なんとか、といった様子でエレは挨拶を返してくれた。……かなり、尻すぼみになってはいたが。
と、カノンがさっそく切り込んだ。
「エレちゃんはシェリー先生にお勉強を教えてもらってるんだよね?カノンも武術や演技を人に教えてもらってるんだよ。でもそれ程覚えが速い方じゃないから課題が上手く出来ずによく叱られるんだー」
少し、エレがびっくりしたように瞳を開いた。
それを見たフーリィンが、続けざまに言葉を紡ぐ。
「はい、宿題には私も苦しめられてましたよ」
「……騎士さまたちも?」
「うん!」
「そうです。私は勉強が得意ではないので、酷い時はほぼ白紙で提出した事もありました」
え、と。思わずエレが口に出していた。
フーリィンは優しい笑みを浮かべたままに話をしていく。
「怒られたりはしませんでしたね。むしろ、よくこれを堂々と提出出来たものだと褒められ……あれ、呆れられていたのかも?」
ぽかん、とした様子を見せたエレ。
「騎士さまにも、そんなときが……?」
「はい、ありましたよ」
……すると、少しの間もごもごと口を動かしていたエレが、ゆっくりと、話を切り出した。
「あのね、」
「うん」
「宿題があんまり、うまく出来ないの。……それで、叱られるの、怖くて……」
「なるほど……そうでしたか」
フーリィンが、す、とエレに視線を合わせるために少ししゃがんだ。そして、しっかりとエレの目を見て。
「シェリーさんは今出来ないというだけで叱るような先生でしたか?」
また、少しエレの瞳が開かれる。
そこに、すかさずカノンが言葉を重ねた。
「それにね、カノンは叱られるのは嫌じゃないんだよ。叱ると怒るは全然違う。怒るってのはただ感情をぶつけるだけ。でも叱るっていうのは相手が何時かちゃんと出来るって期待してくれてるからなんだ。勿論叱られたくないってエレちゃんの気持ちは解る。でもね、シェリー先生がエレちゃんを叱るとすればそれはエレちゃんに期待してるからだとカノンは思うな。むしろ叱られなくなった方が終りだよ」
「叱られなくなった方が、ダメ」
「うん! それ以前にシェリー先生は理不尽に人を怒ったり叱ったりする人じゃないと思うよ。宿題をきちんと提出した上で解らない所はちゃんと尋ねたら、先生もちゃんと教えてくれると思う」
「はい。……宿題の出来や点数は、あくまで今の状態を確認する目安に過ぎません。分からないところは分からないものとして提出し、後で分かるまで教えて貰いましょう。……無料の私塾をするくらい、先生は貴方達の力になりたいんですから、ね?」
――その話をする頃には、エレの顔はすっかり前を向いていた。
●ちょこっと閑話
無事にエレがシェリーに宿題の提出が出来なかった理由を話し、宿題を提出したあとの話を少しだけしよう。
「ありがとうございます、本当に……!」
ぺこぺこと頭を下げるシェリーに、そっと近寄ったのはフーリィンだ。
「先生にも、少しお話があります」
「は、はいっ」
びくりと肩を跳ねさせたシェリーに、フーリィンは、エレにしたようにしっかりと顔を見て。
「厳しく注意する事の前に、きちんとお話を聞いてあげて、一緒に考えてあげる事は出来たのではないでしょうか」
――。
シェリーが、息を飲んだ。
「この先にまた別の何かがあった時、気付いてあげられるのは私達ではなく先生ですから――傷付く事、傷付けてしまうかもしれない事を恐れずに踏み込んであげてくださいね」
生徒を思う優しさと、少しの勇気があれば出来ますから。
その言葉を、しっかりと聞いて。
シェリーは、頷きを返した。
●最後は、提出「したいけれど出来ない」
――これは、彼らが生徒と顔を合わせる少し前のやりとり。
「勉強かー。オレも村で読み書きとか勉強するの、すげえ嫌だったなあ。まあ、必要なことなんだって今ならわかるけど」
大きな街の子も、その辺は同じなのかねー。
『新米兵士』ナバル・ジーロン(CL3000441) が呟けば、隣に立った『楽器と共に歩むもの』ドロテア・パラディース(CL3000435) が苦笑いを返した。
「ですが、先生と子どもたち双方の為に問題解決に向けて頑張るであります! 改めてよろしくお願いするのであります、ナバル殿!」
「ああ、温泉掘りで顔合わせたっけな。よろしくな、ドロテアさん!」
……その直後。ナバルの顔が不思議なかたちで固まった。
それを、本当に不思議そうな顔でドロテアが見やる。
「……?」
「い、いかんいかん! ボンノー退散!!」
「?」
――と、まあ、そんなことがあって。
「……騎士の皆様、よろしくお願いします」
「おう! 任せろ!」
「任せるであります!」
なにか考えている様子のシェリーから頼まれ、二人はラディという少年と顔を合わせた。
ラディは、少し緊張した様子で、ナバルとドロテアの顔を交互に見ている。
「こんにちはであります! 私たちとお話しませんか♪」
「お話?」
「ああ、少しお話ししたいんだ。ダメかな?」
「……ううん、ダメじゃないよ」
そのまま、彼らは少しの間談笑に花を咲かせた。
私塾での楽しかったこと、家の手伝いをしていること――。そして。
「宿題ってあるよな。どうして出さないんだ?」
ある程度話が進み、ラディの緊張も解れた頃に、ナバルが単刀直入に切り出した。
「あー、……えっと。その」
ラディは一瞬肩をびくつかせたが……ナバルとドロテアの顔を交互に見て、……少しうつむいて。
「……家の、手伝いが」
「ん?」
「うちは、貧乏だから。ぼくも手伝ってるんだ。でも、忙しくて、なかなか宿題が出来ないんだ。……途中までは出来ても、全部は、出来なくて」
ナバルとドロテアは、一瞬顔を見合わせると。
「ラディ、お前、大したやつだな! 一生懸命家の手伝いして、さらに勉強も忘れず進めるなんてな!」
「……え」
「そうでありますよ! お手伝いとお勉強、両方とも頑張っているのは立派であります!」
ラディは怒られると思っていたのか、怯えたように閉じかけていた瞳をゆっくりと開いた。
そこには、怒るなんてない。むしろ笑顔で褒めているナバルとドロテアの姿がある。
「……私も宿題関係で苦労した体験があるのですよ。楽器の習い事をしていたのでありますが、この部分を練習してきてね、と宿題を出されたことがありまして。周囲の迷惑にならないよう練習するとなると、場所や時間が限られています。努力したものの、結局途中までしかできるようにならなくてどうしようかと悩みましたね……時間はどうにもできませんからね」
「うんうん。……オレなんて、家の手伝いで疲れたら勉強なんてほっぽり出してたぞ!」
ゆっくりと言い聞かせるように言うドロテアと、はっきりと宣言するナバルに、ラディはまだ少し目を白黒とさせているようだ。
「期限に間に合わないのは、単純に時間が足りないんだろ? そりゃ仕方ねえよ。そこで無理して、例えば寝る時間を削って宿題しても、絶対体壊しちまうぞ。勉強自体が嫌なわけじゃないんだろ? なら、全然大丈夫だって! 先生も、やる気のある生徒を叱ったり見捨てたりする人じゃないと思うしな。その辺は、多分お前のほうがわかるんじゃないか?」
「そうであります! その事情をちゃんと説明すれば、先生はわかってくれるでありましょう。宿題も途中でもいいでありますから、提出するのであります。頑張った証、見てもらわなきゃ勿体ないでありますよ!」
「……、」
目をぱちくりとさせながらも……さきほどまでの少しの怯えはなくなったラディに、ナバルとドロテアが手を差し出す。
「先生は単に、宿題が上がってこない理由を、事情を知りたいだけなのさ。……お話、しにいこうぜ?」
「はい! 私とナバル殿もついているのであります! お話しに行きましょう!」
「……うん!」
●ちょこっと閑話ぱーと②
「ありがとうございました!」
そう言って、頭を下げたシェリーは、ナバルとドロテアが思っていたよりも早く頭を上げた。
その目が以前とはまた違うものを宿しているのを見て、……ナバルが口を開く。
「先生にも少しだけ。……もう大丈夫かもだけど」
にぱっと、笑顔。ナバルはシェリーの肩を激励の意味を込めて、軽く叩いた。
「相手の事情を思いやれる先生は、優しいよな! でも、思うだけで止まらず、もう一歩踏み込む勇気は必要だと思うぜ!」
「!」
シェリーは、目を微かに見開いた。
「……はい。皆様から頂いた言葉、忘れません」
●もう一幕
「わー、っとと。少し待ってくれ、ドロテアさん!」
「? なんでありますか? ナバル殿」
帰り際、ドロテアを呼び止めたナバル。ナバルを不思議そうに見ているドロテアに。
「あー、……えっと。その」
「どうしたでありますか? さっきのラディ殿のような感じがするであります」
……しばらく、そう言われながら口をもごもごさせていたナバルだったが。ついに。
「その! 温泉掘りの時! いろいろ見ちゃってごめん!」
「……」
……。
「……ああ! あの時の!」
「え、」
……あまり気にしていない様子のドロテアに、ちょっとびっくりしたナバル。
だが、
「うん。……謝れたから、よかった……」
●それからどうした?
「えっとね、先生考えました。みんなとしっかり向き合うために、なにが必要なのか。
それは、優しすぎることじゃなくて、時には傷付き、傷付けることもあるけど、それを恐れないで、みんなに接することだと、思いました。考える機会を、もらいました。
これから、先生はたまにみんなを叱るかもだけれど、それはね、みんなが嫌いだからじゃなくて、みんなをしっかりわかりたいから、みんなに先生が思っていることをわかって、その上で自分の道を考えてほしいからです。
難しいかもしれませんが、先生も一緒にがんばっていきます。だから、一緒に、進んでいきましょう」
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『包み込む者』
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)
『引き上げる者』
取得者: ナバル・ジーロン(CL3000441)
『寄り添う者』
取得者: アルビノ・ストレージ(CL3000095)
『導く者』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)
『伝える者』
取得者: フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『支える者』
取得者: ドロテア・パラディース(CL3000435)
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)
『引き上げる者』
取得者: ナバル・ジーロン(CL3000441)
『寄り添う者』
取得者: アルビノ・ストレージ(CL3000095)
『導く者』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)
『伝える者』
取得者: フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『支える者』
取得者: ドロテア・パラディース(CL3000435)
特殊成果
『センセイの指示棒』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
†あとがき†
生徒たちは、宿題をきちんと提出出来るようになったみたいです。
先生はこれから、しっかりと前を向いて、生徒たちと進んでいけ……たら、いいですね。がんばりましょう。
MVPは、生徒と先生に向き合って、しっかり自分にも向き合ったあなたへ。
後日、皆様にあの先生の元から指示棒が届けられました。これからしっかりやっていきますという意思の現れのようです。
先生はこれから、しっかりと前を向いて、生徒たちと進んでいけ……たら、いいですね。がんばりましょう。
MVPは、生徒と先生に向き合って、しっかり自分にも向き合ったあなたへ。
後日、皆様にあの先生の元から指示棒が届けられました。これからしっかりやっていきますという意思の現れのようです。
FL送付済