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オラクル。のち、自由騎士

●
「実はこれ……前々からみんなに聞きたかったんだけどね~」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は少し酔った素振りを見せながら、同じ酒場で食事を楽しんでいた自由騎士達に話しかけた。
「君たちって自由騎士団に入る前はどんな感じだったの? それでさ、なんで自由騎士団の門をたたいたのかな~~~って」
「おー。なんだか面白そうな話をされておりますなぁ」
そこへ『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)も合流し、皆のなれ初めや入団初日の様子など、話していかないかという流れに。
「そういうヨアヒムはどうなのさ」
「あー。俺さ? ちょっとおっかない幼馴染がいてそいつに無理やり……あ、これナイショな!! 絶対言わないでくれよな!!」
イ・ラプセル自由騎士団。まだ発足して一年程度の組織だがこの一年の輝かしい活躍はすでに国内外に広まっている。そんな飛ぶ鳥を落とすような勢いの組織で貴方は活動しているのだ。
「私は──」
「俺は──」
「ボクは──」
これから語られるのは少しだけ前の君たちの話。
それぞれの始まりの物語。
「実はこれ……前々からみんなに聞きたかったんだけどね~」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は少し酔った素振りを見せながら、同じ酒場で食事を楽しんでいた自由騎士達に話しかけた。
「君たちって自由騎士団に入る前はどんな感じだったの? それでさ、なんで自由騎士団の門をたたいたのかな~~~って」
「おー。なんだか面白そうな話をされておりますなぁ」
そこへ『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)も合流し、皆のなれ初めや入団初日の様子など、話していかないかという流れに。
「そういうヨアヒムはどうなのさ」
「あー。俺さ? ちょっとおっかない幼馴染がいてそいつに無理やり……あ、これナイショな!! 絶対言わないでくれよな!!」
イ・ラプセル自由騎士団。まだ発足して一年程度の組織だがこの一年の輝かしい活躍はすでに国内外に広まっている。そんな飛ぶ鳥を落とすような勢いの組織で貴方は活動しているのだ。
「私は──」
「俺は──」
「ボクは──」
これから語られるのは少しだけ前の君たちの話。
それぞれの始まりの物語。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.自由騎士団に入団する前の話をする。
麺です。なにやらここのところ新しい自由騎士の方も増えているように感じております。
となると皆の共通の話題というものが欲しいもの。シャンバラとの戦いやこれまでの様々な依頼の思い出良いものですが、新人として門をたたく入団初日は誰しもが経験する貴重な経験。そして入団に至るまでの話などもそれぞれ違い、みな興味があるのでは無いでしょうか。
そんなお話を食事や飲み物を楽しみながらみなで語りあおうという趣旨でございます。
●ロケーション
自由騎士行きつけの酒場。みながリラックスしている良い雰囲気。
ヨアヒムの素朴な疑問から話は広がりを見せます。
オラクルとなった日のこと、自由騎士に入団する前のこと、入団した日のことなど、自由騎士団に入団する前の話を自由に語っていただければと思います。
ご参加お待ちしております。
となると皆の共通の話題というものが欲しいもの。シャンバラとの戦いやこれまでの様々な依頼の思い出良いものですが、新人として門をたたく入団初日は誰しもが経験する貴重な経験。そして入団に至るまでの話などもそれぞれ違い、みな興味があるのでは無いでしょうか。
そんなお話を食事や飲み物を楽しみながらみなで語りあおうという趣旨でございます。
●ロケーション
自由騎士行きつけの酒場。みながリラックスしている良い雰囲気。
ヨアヒムの素朴な疑問から話は広がりを見せます。
オラクルとなった日のこと、自由騎士に入団する前のこと、入団した日のことなど、自由騎士団に入団する前の話を自由に語っていただければと思います。
ご参加お待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
3個
3個
1個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2019年06月02日
2019年06月02日
†メイン参加者 6人†
●
「なになに? おれっちの武勇伝聞きたいん?」
誰よりも早くその話に乗ったのはどこか央華大陸を思わせる服装をした李 飛龍(CL3000545)だった。彼は最近自由騎士に入ったルーキーの1人だ。
「お~~元気がいいね♪ じゃぁ早速聞かせてよ」
ヨアヒムは皆にドリンクを勧めながら飛龍の話に耳を傾ける。
「おれっちがこっちに来る前にやってた事、それは…師匠について修行の旅をしてたのさ! え、旅ってどの辺か、だって? まー、あちこちいろんなとこ連れてかれたもんだね」
飛龍は腕を組みうんうんと頷きながら話を続ける。
「大抵は険しい山奥だったり、魔物だらけの森の中だったり……今思えば子供連れてくような場所じゃねーよな……よく生き延びたもんだぜ。……流石おれっち」
旅はよほど過酷なものだったのだろう。飛龍はこれまでを振り返り、感慨に浸る。
「……っと、話ずれたな。とりあえずそんな感じであちこち武者修行してたんだけど、おれっち気付いちゃったのよね。このままついてくだけじゃ師匠を超える事はできねーって」
「それは何故じゃ?」
ふむふむと話を聞いていた『アイギスの乙女』フィオレット・クーラ・スクード(CL3000559)が興味津々に尋ねる。
「んー。だって、師匠ってば同じ道中でもおれっちの倍以上修行してるんだもんなー。師匠ホントマジすげぇ」
師匠の話をする飛龍はいつも以上に活き活きとしている。きっとそれは心からの尊敬の現われなのだろう。
「で、そんな事を考えてたら、自由騎士の事しってよ。おれっちピーンときたね! そう……ここならおれっちより強いやつと戦う機会もいっぱいくるってな!」
拳を握り締め期待に満ち溢れた目を輝かせながら飛龍の言葉は熱を帯びていく。この上ない期待感が飛龍を熱くさせているのだ。
「でさ。師匠に修行のために自由騎士なって広い世界に揉まれてきたいって言ったら、思いのほかあっさりオッケーもらえて……そんで自由騎士になったってわけさ!」
「なるほどね~。さらに強くなるため……か。なんだかその理由、すごくらしいよね♪」
そうヨアヒムが笑顔で語りかけると、飛龍は急に何か思い出したかのように厳しい表情になる。
「……ただ、師匠言ってたな。次会う時は成長みるために本気で戦うっつって。とにかく次会うまでに気合いれて強くならねぇとやばいんだよな……」
青ざめたような表情の飛龍。その表情からも師匠がどれ程の実力なのか計り知れるというものだ。
「うおー! こうしちゃいられねぇぜ!」
突如立ち上がると飛龍はダッシュでその場を後にした。
「え!? おーい!! お勘定~~~っ!!」
ヨアヒムが立ち上がり追いかけようとしたのだが。
「まあまあ。きっと戻ってきますよ。それよりも……あ、追加のフルーツティーを頂けますか? それと蜂蜜は別添えでお願いします」
お代わりの飲み物を注文しながらヨアヒムを嗜めたのは『癒せる吟遊詩人見習い』ミスリィ・クォード(CL3000548)。ミスリィもまた見習いとして最近活動を始めた自由騎士だ。肩ほどまでの水様の美しい髪を揺らす彼女は、母の生業でもあった吟遊詩人を目指し修行中の身でもある。
「え? 私自身の物語ですか……? ええと、そうですね」
ヨアヒムに促されミスリィは語り始める。オラクルとなった日……そして自由騎士となった日の事を。
「私が神の声を聞いたのは13歳の誕生日を迎えた日の夢でした」
ミスリィがオラクルになったのは1年と少し前のこと。突然聞こえた神の声に戸惑いもあった事だろう。
「最初お母さ……母は私がオラクルである事を隠したかった様ですけど……少し良い世の中になりましたね。強制では無く自分で選べるんですもの」
「確かにそうなのじゃ。ほんに良い世の中になったのぅ」
フィオレットが相槌を打つ。
オラクルである事。それは力を得るという事に他ならない。だがそれは誇る事でもあり……危険も伴う事でもある。ミスリィの母が隠そうとしたのはその危険を危惧して事だったのであろう。それは子を思う純粋な母の思い。
そしてそれを感じていたからこそ、ミスリィは自ら自由騎士の門を叩くまで母の気持ちを尊重していたのであろう。
そんな日々の中、吟遊詩人として修行するミスリィの中である欲求が膨れ上がっていく。
『本物の英雄をこの目で見たい。そして感じたい──。吟遊詩人は英雄譚や日々生きる人々のよしなしごとを称え歌い上げるものでしょう?』
「作りものじゃない私の目で見た英雄譚……。本物の英雄を間近で見るために、私は自由騎士の門を叩いたのです」
きっと歌の説得力が違うと思うんです。と、ミスリィは微笑みながら言う。見聞きした事、色んな歌を歌いたい 出来れば聞く人の心に届けたい。ミスリィが目指す吟遊詩人はそれが出来る者なのだ。
「英雄譚……かぁ」
ヨアヒムがほぅ……といった表情でミスリィを見つめる。するとミスリィが慌てて言葉を続ける。
「あと、授かった力を少しでもお手伝いに役立てられたらって思って」
見つめられる事に少し照れながらも話を続けるミスリィ。
「でも母には早いって反対されて……結局ちゃんと家で生活して帰って来る事を条件に入団を許して貰いました。そう言う所はやっぱり母親なんだなぁって」
お母さんも沢山の街を渡り歩いた吟遊詩人なのにね──ミスリィはそんな事を思いながらもくすりと蒼い髪を揺らしながら微笑んだ。
──お嬢ちゃんが、かい?
ミスリィは自由騎士の門を叩いたとき、門番に苦笑いされた時の事を思い出す。自分の世間知らずさはここへ来て初めて実感した。だからこそ今なら門番の対応の理由が少し解る気がした。
「でも私の物語はこれからなので」
決意の表情でそう言うミスリィは、手元においていたリラを抱え軽く爪で弾いた。
「あ、そうです。語るにあたっての伴奏は御入用ですか?」
話し終わったミスリィは、今度はそれぞれの物語の伴奏を奏でる。その様子を黙ってみているヨアヒム。
(ミスリィ。君は一つだけ認識違いをしてる。本物の英雄を間近で見たいと君は言った。でもね……ミスリィ。君自体もまたその本物の英雄になる可能性を秘めた存在なんだよ)
少し酔っちゃったかな──ヨアヒムがそんな事を思いながらミスリィを見ているとすぅと肩口から沿うようにヨアヒムの身体に伸びてくるきめ細やかな肌の手。
「はぁん、ヨアヒムはん、酔うてはりますなぁ。このあとはうちの店に来はって、ゆぅっくりしていってなぁ?」
妖艶な笑みを浮かべながらヨアヒムに身体を預けるのは『虚実の世界、無垢な愛』蔡 狼華(CL3000451)。
「そ、それじゃ次は狼華ちゃんヨロシク~~ッ」
触れた場所から感じる、少しひんやりとした体温にどきりとしながらも、ヨアヒムは次なる話し手にバトンを渡す。
「自由騎士団に入る前? うちは今でも自由騎士であってもサロン・シープの、マダムの羊や。そもそも、うちは自由騎士団に入りたくて入った訳やあらへんし」
「ぬぬ。それじゃぁ何故に狼華さんは自由騎士に入ったのじゃ?」
すっかり進行役となっていたフィオレットが尋ねる。
「……マダムが才能があるんやったら、お国の為、人様の為に使え言うたから仕方なくなぁ……。まぁ、サロン・シープからも何人か自由騎士団に入りよったし、面倒みへん訳にはいかへんやろ……」
口ごもりながら話を続ける狼華だったのだが。次の一言で空気が変わる。
うちは元々、奴隷として売られてた商品や──。
その告白に言葉を失う者もいた。
「なんや、おかしな事やあらへんやろ? この国も先王がご逝去召されるまで、奴隷制度がおうたんやし。それも昨年の始めまで……つい最近の話や」
誰もが忘れていた。いや忘れてしまおうとしていた紛れも無い事実。かつてこの国にも存在した奴隷制度。その奴隷制度の被害者とも言える存在がここにいたのだ。
「あぁ、そんじょそこらの汚ったない市場で遣り取りされとったもんとは一緒にせんといてな」
一瞬淀んだ空気を入れ替えるように狼華が話を続けていく。
「うちは所作から手習い、武芸に色事、ぜぇんぶ一通り教え込まれた一級品や……」
言葉とは裏腹に少し自嘲気味の憂いた表情をみせる狼華。
「そんな一級品の『商品』やったうちを買い上げたのがマダムや。マダムは色んな貴族や軍じ……まぁそれはええわ。兎も角奴隷を買いそうな奴に取り入って、そういう場所へ行きはっては奴隷商から亜人を買い上げとった」
狼華の独白に聞き入る自由騎士達。
「マダムは買った奴隷をヒトとして扱ってくれはる」
(そう……マダムに買うてもろうてうちは初めて『商品』から『ヒト』になったんや──)
「今の王様が継承なさって奴隷制度がのうなったのを、一等喜んどったんはマダムやった。うちはマダムに恩を返さんといかへん。せやからうちは、マダムが望むなら自由騎士にもなるし、なんやって出来るんや……。しょーもない話や、これで仕舞い終い!」
話を終えた狼華はすぐにいつもの調子に戻る。すると控えめだったミスリィのリラの音も本来の音を奏で始める。いつしか自由騎士達もまた賑わいを取り戻していた。
「じゃぁつぎは……わたし」
そう言って話し始めたのは、姉の迎えを待っていた『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)。自由騎士になった理由……みんなはどんな感じなんだろう──。漠然とそんな事を思いながら聞いていたリムリイ。そうしてリムリィは過去を語りだす。
わたしがうまれたとき。ははおやをころしたんだって──
「殺……、一体どういう意味じゃ?」
いつものように淡々と話すリムリィから、突然聞こえた物騒な言葉にフィオレットが問う。
「うまれつきちからとかつよかったから。おなかであばれたのかも。おぼえてないけど」
どうやらリムリィの母親はリムリィを生んだときに何らかの理由で亡くなったようだった。
「ちちおやのことはすこしおぼえてる。わたしをいっぱいたたいたりけったりしてた。でも、やってるほうがいたそうだったな。わたしはむかしからがんじょうだったし」
押し黙る自由騎士達。殺したというのはきっと父親がリムリィに向けて発し続けた言葉なのだろう。お前のせいで母親は死んだ。お前が殺したんだ、と。
「ちちおやはそういうもの。だと、まえはおもってた。いまならちがうってわかる。たぶん、あれはこわれてた」
あれ。リムリィは自身の父親をそう呼んだ。愛情を与えられていない子が、どうして親を愛せるだろか。憎悪の感情だけを向けられ続けた子が、どうして己が感情を素直に出せるであろうか。
リムリィは感情をほとんど表に出さない。それは出さないのではなく……出し方がわからないのではないか。
その場にいた自由騎士達は、リムリィの本質を垣間見たような気がした。
「そのあともいろいろあったけど。さいごにおねえちゃんにであって。いんにひきとられて。あたらしくかぞくになったんだ」
ミスリィの奏でるリラの音が店に響く。その音色はどこか儚げで。
「じゆうきしになったりゆうはかんたん。おねえちゃんがなったから。いんのそとでもいっしょにいられる。
とてもうれしい」
普段は無表情のリムリィだが、姉の話をする時は時折僅かな笑顔を見せる。
「あとは。たたかえるから。たたかえばつよくなれる。つよくなればやくにたてる」
父親にその存在をも否定され続けたからであろうか。リムリィは誰かの役に立つという行為には並々ならぬ思いがあるようだ。
「わたしはうまれつきけっこうつよい。けど、なにかをこわすことしかできなかった。でも、それだけじゃないって。ほかにもできることがあるって。おねえちゃんがいったから」
生まれてすぐに母親を壊した。その後、父親の罵詈雑言をその身に刻みながらリムリィが得た力。それはただひたすらに目の前のものを壊すだけの力。けれどリムリィは自由騎士になって気付く。自分に与えられた力は壊すだけでは無いという事。人を救う事の出来る力でもある事。
ちょっと。ちょっとだけど。そういうのもさがしてる──
リムリィの探すものが見つかる日はそう先の話ではなさそうだ。
『落花』アルミア・ソーイ(CL3000567)は皆の話に聞き入っていた。
時には笑って、またある時は泣きそうな顔で。リムリィとは対照的に、喜怒哀楽でころころとよく変わる表情。
「じゃ。そろそろ話してみる?」
そろそろ大丈夫だよねと、ヨアヒムがアルミアの背中をそっと押す。
不幸な過去は自分だけじゃない──それを実感し、意を決したのであろう。ずっと聞き役に徹していたアルミアが戸惑いながらも自らの過去を話し始めた。
「私は……田舎村の出身でした。最近、シャンバラとの戦いがあった頃です。騎士さん達がうちの村に、今後使うかもしれないからと、シャンバラの物を納屋に置いていって」
アルミアの話に耳を傾ける自由騎士達。
「畑仕事の合間に、整理してたんです。恐ろしいことが書かれた本を見つけたりもしたけれど、異国の物だからそういうものかなと思っていました」
耳に心地よいミスリィのリラの音の中、アルミアの話は続く。
「それから間もなく、怖い人たちが沢山来て……金目の物なんてない。そう言った父さんと母さんは、殺されました。私も殴られて、切られて。本の事を思い出して。死霊術……両親が蘇るのなら、なんでもいいって思いました」
少しの沈黙。事の顛末を息を呑んで待つ自由騎士達。
「結局、私だけ生き残りました。怖い人達は……死にました」
「そうじゃったか……」
フィレットはなんともいえぬ表情をしていた。
「そしてしばらくするとシャンバラの物は手に負えないと、村の人達は私を首都に送り出しました。でも、私は畑仕事しか知らなかったから、どこにどう話せばいいのかわからなくて。裏路地でまた怖い人に捕まって」
アルミアの不幸は連鎖していく。話すことで当時を思い出しているのだろうか。アルミアの瞳にはうっすらと涙が滲む。
「それで……術で抵抗したら、それで生活費を稼げって。殺したりはせずちょっと驚かすだけ。そしてほんの少しお金を貰って……」
突然都会につれてこられ、右も左もわからぬうちに悪事の手伝いをさせられる事になったアルミア。話すことで改めて感じる罪悪感。気付けば体が震えている。これはきっと、過去を話すことで自由騎士の仲間達から拒絶されるのではという恐怖だったのかもしれない。
「でも、今は自由騎士か。よかったじゃん!」
そういってにこやかに語りかけたのはヨアヒムだった。
「(だぁいじょうぶ、自由騎士にだって皆んな色々な過去をもってる。大事なのは今。今何をして、何を目指しているかって事!)」
ヨアヒムは小声でそう言うとウィンクをひとつ。その後は他の皆と談笑しながら酒を酌み交わしていた。
「今は……これからの事、考えないとって思います」
私はもう失うものは無いから──そう続けようとしたアルミア。でも……こんな話を。こんな私を。受け入れてくれるこの自由騎士団、そして仲間達。気付けばこの今という時間を失いたくないという気持ちがアルミアの中に芽生え始めているようだった。
「さぁ、クライマックスじゃ。くーの話をとくと聞くがよい!」
おおとりを飾るべくフィオレットが腕を組んで立ち上がり、演説体勢をみせる。
「くーが自由騎士になった理由はじゃな──」
まだまだ宴は終わらない。自由騎士それぞれにはそれぞれ歩んできた道があり、その目前にはそこからさらに道が伸びている。
自由騎士達はこれからも、人生という長い道のりを仲間達とともに歩んで行く。
はたして道の先に待ち受けるものは如何なるものか──。
「なになに? おれっちの武勇伝聞きたいん?」
誰よりも早くその話に乗ったのはどこか央華大陸を思わせる服装をした李 飛龍(CL3000545)だった。彼は最近自由騎士に入ったルーキーの1人だ。
「お~~元気がいいね♪ じゃぁ早速聞かせてよ」
ヨアヒムは皆にドリンクを勧めながら飛龍の話に耳を傾ける。
「おれっちがこっちに来る前にやってた事、それは…師匠について修行の旅をしてたのさ! え、旅ってどの辺か、だって? まー、あちこちいろんなとこ連れてかれたもんだね」
飛龍は腕を組みうんうんと頷きながら話を続ける。
「大抵は険しい山奥だったり、魔物だらけの森の中だったり……今思えば子供連れてくような場所じゃねーよな……よく生き延びたもんだぜ。……流石おれっち」
旅はよほど過酷なものだったのだろう。飛龍はこれまでを振り返り、感慨に浸る。
「……っと、話ずれたな。とりあえずそんな感じであちこち武者修行してたんだけど、おれっち気付いちゃったのよね。このままついてくだけじゃ師匠を超える事はできねーって」
「それは何故じゃ?」
ふむふむと話を聞いていた『アイギスの乙女』フィオレット・クーラ・スクード(CL3000559)が興味津々に尋ねる。
「んー。だって、師匠ってば同じ道中でもおれっちの倍以上修行してるんだもんなー。師匠ホントマジすげぇ」
師匠の話をする飛龍はいつも以上に活き活きとしている。きっとそれは心からの尊敬の現われなのだろう。
「で、そんな事を考えてたら、自由騎士の事しってよ。おれっちピーンときたね! そう……ここならおれっちより強いやつと戦う機会もいっぱいくるってな!」
拳を握り締め期待に満ち溢れた目を輝かせながら飛龍の言葉は熱を帯びていく。この上ない期待感が飛龍を熱くさせているのだ。
「でさ。師匠に修行のために自由騎士なって広い世界に揉まれてきたいって言ったら、思いのほかあっさりオッケーもらえて……そんで自由騎士になったってわけさ!」
「なるほどね~。さらに強くなるため……か。なんだかその理由、すごくらしいよね♪」
そうヨアヒムが笑顔で語りかけると、飛龍は急に何か思い出したかのように厳しい表情になる。
「……ただ、師匠言ってたな。次会う時は成長みるために本気で戦うっつって。とにかく次会うまでに気合いれて強くならねぇとやばいんだよな……」
青ざめたような表情の飛龍。その表情からも師匠がどれ程の実力なのか計り知れるというものだ。
「うおー! こうしちゃいられねぇぜ!」
突如立ち上がると飛龍はダッシュでその場を後にした。
「え!? おーい!! お勘定~~~っ!!」
ヨアヒムが立ち上がり追いかけようとしたのだが。
「まあまあ。きっと戻ってきますよ。それよりも……あ、追加のフルーツティーを頂けますか? それと蜂蜜は別添えでお願いします」
お代わりの飲み物を注文しながらヨアヒムを嗜めたのは『癒せる吟遊詩人見習い』ミスリィ・クォード(CL3000548)。ミスリィもまた見習いとして最近活動を始めた自由騎士だ。肩ほどまでの水様の美しい髪を揺らす彼女は、母の生業でもあった吟遊詩人を目指し修行中の身でもある。
「え? 私自身の物語ですか……? ええと、そうですね」
ヨアヒムに促されミスリィは語り始める。オラクルとなった日……そして自由騎士となった日の事を。
「私が神の声を聞いたのは13歳の誕生日を迎えた日の夢でした」
ミスリィがオラクルになったのは1年と少し前のこと。突然聞こえた神の声に戸惑いもあった事だろう。
「最初お母さ……母は私がオラクルである事を隠したかった様ですけど……少し良い世の中になりましたね。強制では無く自分で選べるんですもの」
「確かにそうなのじゃ。ほんに良い世の中になったのぅ」
フィオレットが相槌を打つ。
オラクルである事。それは力を得るという事に他ならない。だがそれは誇る事でもあり……危険も伴う事でもある。ミスリィの母が隠そうとしたのはその危険を危惧して事だったのであろう。それは子を思う純粋な母の思い。
そしてそれを感じていたからこそ、ミスリィは自ら自由騎士の門を叩くまで母の気持ちを尊重していたのであろう。
そんな日々の中、吟遊詩人として修行するミスリィの中である欲求が膨れ上がっていく。
『本物の英雄をこの目で見たい。そして感じたい──。吟遊詩人は英雄譚や日々生きる人々のよしなしごとを称え歌い上げるものでしょう?』
「作りものじゃない私の目で見た英雄譚……。本物の英雄を間近で見るために、私は自由騎士の門を叩いたのです」
きっと歌の説得力が違うと思うんです。と、ミスリィは微笑みながら言う。見聞きした事、色んな歌を歌いたい 出来れば聞く人の心に届けたい。ミスリィが目指す吟遊詩人はそれが出来る者なのだ。
「英雄譚……かぁ」
ヨアヒムがほぅ……といった表情でミスリィを見つめる。するとミスリィが慌てて言葉を続ける。
「あと、授かった力を少しでもお手伝いに役立てられたらって思って」
見つめられる事に少し照れながらも話を続けるミスリィ。
「でも母には早いって反対されて……結局ちゃんと家で生活して帰って来る事を条件に入団を許して貰いました。そう言う所はやっぱり母親なんだなぁって」
お母さんも沢山の街を渡り歩いた吟遊詩人なのにね──ミスリィはそんな事を思いながらもくすりと蒼い髪を揺らしながら微笑んだ。
──お嬢ちゃんが、かい?
ミスリィは自由騎士の門を叩いたとき、門番に苦笑いされた時の事を思い出す。自分の世間知らずさはここへ来て初めて実感した。だからこそ今なら門番の対応の理由が少し解る気がした。
「でも私の物語はこれからなので」
決意の表情でそう言うミスリィは、手元においていたリラを抱え軽く爪で弾いた。
「あ、そうです。語るにあたっての伴奏は御入用ですか?」
話し終わったミスリィは、今度はそれぞれの物語の伴奏を奏でる。その様子を黙ってみているヨアヒム。
(ミスリィ。君は一つだけ認識違いをしてる。本物の英雄を間近で見たいと君は言った。でもね……ミスリィ。君自体もまたその本物の英雄になる可能性を秘めた存在なんだよ)
少し酔っちゃったかな──ヨアヒムがそんな事を思いながらミスリィを見ているとすぅと肩口から沿うようにヨアヒムの身体に伸びてくるきめ細やかな肌の手。
「はぁん、ヨアヒムはん、酔うてはりますなぁ。このあとはうちの店に来はって、ゆぅっくりしていってなぁ?」
妖艶な笑みを浮かべながらヨアヒムに身体を預けるのは『虚実の世界、無垢な愛』蔡 狼華(CL3000451)。
「そ、それじゃ次は狼華ちゃんヨロシク~~ッ」
触れた場所から感じる、少しひんやりとした体温にどきりとしながらも、ヨアヒムは次なる話し手にバトンを渡す。
「自由騎士団に入る前? うちは今でも自由騎士であってもサロン・シープの、マダムの羊や。そもそも、うちは自由騎士団に入りたくて入った訳やあらへんし」
「ぬぬ。それじゃぁ何故に狼華さんは自由騎士に入ったのじゃ?」
すっかり進行役となっていたフィオレットが尋ねる。
「……マダムが才能があるんやったら、お国の為、人様の為に使え言うたから仕方なくなぁ……。まぁ、サロン・シープからも何人か自由騎士団に入りよったし、面倒みへん訳にはいかへんやろ……」
口ごもりながら話を続ける狼華だったのだが。次の一言で空気が変わる。
うちは元々、奴隷として売られてた商品や──。
その告白に言葉を失う者もいた。
「なんや、おかしな事やあらへんやろ? この国も先王がご逝去召されるまで、奴隷制度がおうたんやし。それも昨年の始めまで……つい最近の話や」
誰もが忘れていた。いや忘れてしまおうとしていた紛れも無い事実。かつてこの国にも存在した奴隷制度。その奴隷制度の被害者とも言える存在がここにいたのだ。
「あぁ、そんじょそこらの汚ったない市場で遣り取りされとったもんとは一緒にせんといてな」
一瞬淀んだ空気を入れ替えるように狼華が話を続けていく。
「うちは所作から手習い、武芸に色事、ぜぇんぶ一通り教え込まれた一級品や……」
言葉とは裏腹に少し自嘲気味の憂いた表情をみせる狼華。
「そんな一級品の『商品』やったうちを買い上げたのがマダムや。マダムは色んな貴族や軍じ……まぁそれはええわ。兎も角奴隷を買いそうな奴に取り入って、そういう場所へ行きはっては奴隷商から亜人を買い上げとった」
狼華の独白に聞き入る自由騎士達。
「マダムは買った奴隷をヒトとして扱ってくれはる」
(そう……マダムに買うてもろうてうちは初めて『商品』から『ヒト』になったんや──)
「今の王様が継承なさって奴隷制度がのうなったのを、一等喜んどったんはマダムやった。うちはマダムに恩を返さんといかへん。せやからうちは、マダムが望むなら自由騎士にもなるし、なんやって出来るんや……。しょーもない話や、これで仕舞い終い!」
話を終えた狼華はすぐにいつもの調子に戻る。すると控えめだったミスリィのリラの音も本来の音を奏で始める。いつしか自由騎士達もまた賑わいを取り戻していた。
「じゃぁつぎは……わたし」
そう言って話し始めたのは、姉の迎えを待っていた『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)。自由騎士になった理由……みんなはどんな感じなんだろう──。漠然とそんな事を思いながら聞いていたリムリイ。そうしてリムリィは過去を語りだす。
わたしがうまれたとき。ははおやをころしたんだって──
「殺……、一体どういう意味じゃ?」
いつものように淡々と話すリムリィから、突然聞こえた物騒な言葉にフィオレットが問う。
「うまれつきちからとかつよかったから。おなかであばれたのかも。おぼえてないけど」
どうやらリムリィの母親はリムリィを生んだときに何らかの理由で亡くなったようだった。
「ちちおやのことはすこしおぼえてる。わたしをいっぱいたたいたりけったりしてた。でも、やってるほうがいたそうだったな。わたしはむかしからがんじょうだったし」
押し黙る自由騎士達。殺したというのはきっと父親がリムリィに向けて発し続けた言葉なのだろう。お前のせいで母親は死んだ。お前が殺したんだ、と。
「ちちおやはそういうもの。だと、まえはおもってた。いまならちがうってわかる。たぶん、あれはこわれてた」
あれ。リムリィは自身の父親をそう呼んだ。愛情を与えられていない子が、どうして親を愛せるだろか。憎悪の感情だけを向けられ続けた子が、どうして己が感情を素直に出せるであろうか。
リムリィは感情をほとんど表に出さない。それは出さないのではなく……出し方がわからないのではないか。
その場にいた自由騎士達は、リムリィの本質を垣間見たような気がした。
「そのあともいろいろあったけど。さいごにおねえちゃんにであって。いんにひきとられて。あたらしくかぞくになったんだ」
ミスリィの奏でるリラの音が店に響く。その音色はどこか儚げで。
「じゆうきしになったりゆうはかんたん。おねえちゃんがなったから。いんのそとでもいっしょにいられる。
とてもうれしい」
普段は無表情のリムリィだが、姉の話をする時は時折僅かな笑顔を見せる。
「あとは。たたかえるから。たたかえばつよくなれる。つよくなればやくにたてる」
父親にその存在をも否定され続けたからであろうか。リムリィは誰かの役に立つという行為には並々ならぬ思いがあるようだ。
「わたしはうまれつきけっこうつよい。けど、なにかをこわすことしかできなかった。でも、それだけじゃないって。ほかにもできることがあるって。おねえちゃんがいったから」
生まれてすぐに母親を壊した。その後、父親の罵詈雑言をその身に刻みながらリムリィが得た力。それはただひたすらに目の前のものを壊すだけの力。けれどリムリィは自由騎士になって気付く。自分に与えられた力は壊すだけでは無いという事。人を救う事の出来る力でもある事。
ちょっと。ちょっとだけど。そういうのもさがしてる──
リムリィの探すものが見つかる日はそう先の話ではなさそうだ。
『落花』アルミア・ソーイ(CL3000567)は皆の話に聞き入っていた。
時には笑って、またある時は泣きそうな顔で。リムリィとは対照的に、喜怒哀楽でころころとよく変わる表情。
「じゃ。そろそろ話してみる?」
そろそろ大丈夫だよねと、ヨアヒムがアルミアの背中をそっと押す。
不幸な過去は自分だけじゃない──それを実感し、意を決したのであろう。ずっと聞き役に徹していたアルミアが戸惑いながらも自らの過去を話し始めた。
「私は……田舎村の出身でした。最近、シャンバラとの戦いがあった頃です。騎士さん達がうちの村に、今後使うかもしれないからと、シャンバラの物を納屋に置いていって」
アルミアの話に耳を傾ける自由騎士達。
「畑仕事の合間に、整理してたんです。恐ろしいことが書かれた本を見つけたりもしたけれど、異国の物だからそういうものかなと思っていました」
耳に心地よいミスリィのリラの音の中、アルミアの話は続く。
「それから間もなく、怖い人たちが沢山来て……金目の物なんてない。そう言った父さんと母さんは、殺されました。私も殴られて、切られて。本の事を思い出して。死霊術……両親が蘇るのなら、なんでもいいって思いました」
少しの沈黙。事の顛末を息を呑んで待つ自由騎士達。
「結局、私だけ生き残りました。怖い人達は……死にました」
「そうじゃったか……」
フィレットはなんともいえぬ表情をしていた。
「そしてしばらくするとシャンバラの物は手に負えないと、村の人達は私を首都に送り出しました。でも、私は畑仕事しか知らなかったから、どこにどう話せばいいのかわからなくて。裏路地でまた怖い人に捕まって」
アルミアの不幸は連鎖していく。話すことで当時を思い出しているのだろうか。アルミアの瞳にはうっすらと涙が滲む。
「それで……術で抵抗したら、それで生活費を稼げって。殺したりはせずちょっと驚かすだけ。そしてほんの少しお金を貰って……」
突然都会につれてこられ、右も左もわからぬうちに悪事の手伝いをさせられる事になったアルミア。話すことで改めて感じる罪悪感。気付けば体が震えている。これはきっと、過去を話すことで自由騎士の仲間達から拒絶されるのではという恐怖だったのかもしれない。
「でも、今は自由騎士か。よかったじゃん!」
そういってにこやかに語りかけたのはヨアヒムだった。
「(だぁいじょうぶ、自由騎士にだって皆んな色々な過去をもってる。大事なのは今。今何をして、何を目指しているかって事!)」
ヨアヒムは小声でそう言うとウィンクをひとつ。その後は他の皆と談笑しながら酒を酌み交わしていた。
「今は……これからの事、考えないとって思います」
私はもう失うものは無いから──そう続けようとしたアルミア。でも……こんな話を。こんな私を。受け入れてくれるこの自由騎士団、そして仲間達。気付けばこの今という時間を失いたくないという気持ちがアルミアの中に芽生え始めているようだった。
「さぁ、クライマックスじゃ。くーの話をとくと聞くがよい!」
おおとりを飾るべくフィオレットが腕を組んで立ち上がり、演説体勢をみせる。
「くーが自由騎士になった理由はじゃな──」
まだまだ宴は終わらない。自由騎士それぞれにはそれぞれ歩んできた道があり、その目前にはそこからさらに道が伸びている。
自由騎士達はこれからも、人生という長い道のりを仲間達とともに歩んで行く。
はたして道の先に待ち受けるものは如何なるものか──。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
お互いの過去を見直し、理解を深めることで自由騎士の団結はより強まっていくことでしょう。
MVPは音という演出で語りを盛り上げてくれた貴女へ。
ご参加ありがとうございました。
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ご参加ありがとうございました。
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