MagiaSteam




ネコチャンを探して

●
にゃーん。
スリムな体に透き通った細い声。
「あっ、ダメよミーちゃん! これはあなたにはあげられないの」
小さな体に元気で真っ直ぐな声。
な~お。
太い体に濁ったような低い声。
「ユーちゃんまで! だーめ。後でいっぱい遊んであげるから、いい子で待っててよ」
足元にまとわりつく猫たちに、困ったように笑う少女。
納得がいかないように、ユーちゃんと呼ばれた猫が少女に跳びかかった。
目の前の料理を加熱するために魔法を発動しようとしていた少女は、バランスを崩し、しりもちをつく。
「いったた……もう、ユーちゃんってば、危ないじゃない」
そう言われても、本気で怒っていないことがわかっているのか、少女にすり寄る2匹の猫。
魔法は失敗。何も起こりませんでした。
と思っていたら、ワンテンポ遅れて空中で小さな爆発が起きた。
猫たちは驚いて、少女が見たこともないスピードで家を飛び出してしまった。
●
「――と。それから数日経つけど、まだ帰ってきてないみたいなんだ。それで君たちに捜索依頼というわけだ。ただ……」
依頼主から聞いた事情を説明していた『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は、眉間にしわを寄せて唸った。
どうやらその地域で、大怪我をした野良猫が発見されたらしい。
依頼主は、彼女の猫たちが襲われていないか心配しているようだ。
「猫の捜索依頼だけど、イブリースと遭遇する確率が高い。気を付けるんだよ」
ヨアヒムは皆に注意を呼びかけ、自由騎士たちを送り出した。
にゃーん。
スリムな体に透き通った細い声。
「あっ、ダメよミーちゃん! これはあなたにはあげられないの」
小さな体に元気で真っ直ぐな声。
な~お。
太い体に濁ったような低い声。
「ユーちゃんまで! だーめ。後でいっぱい遊んであげるから、いい子で待っててよ」
足元にまとわりつく猫たちに、困ったように笑う少女。
納得がいかないように、ユーちゃんと呼ばれた猫が少女に跳びかかった。
目の前の料理を加熱するために魔法を発動しようとしていた少女は、バランスを崩し、しりもちをつく。
「いったた……もう、ユーちゃんってば、危ないじゃない」
そう言われても、本気で怒っていないことがわかっているのか、少女にすり寄る2匹の猫。
魔法は失敗。何も起こりませんでした。
と思っていたら、ワンテンポ遅れて空中で小さな爆発が起きた。
猫たちは驚いて、少女が見たこともないスピードで家を飛び出してしまった。
●
「――と。それから数日経つけど、まだ帰ってきてないみたいなんだ。それで君たちに捜索依頼というわけだ。ただ……」
依頼主から聞いた事情を説明していた『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は、眉間にしわを寄せて唸った。
どうやらその地域で、大怪我をした野良猫が発見されたらしい。
依頼主は、彼女の猫たちが襲われていないか心配しているようだ。
「猫の捜索依頼だけど、イブリースと遭遇する確率が高い。気を付けるんだよ」
ヨアヒムは皆に注意を呼びかけ、自由騎士たちを送り出した。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.イブリースの浄化
2.捜索対象を依頼主に送り届ける
2.捜索対象を依頼主に送り届ける
初めまして。はやみあきらです。
未熟者ですがよろしくお願いいたします。
●地形
町はずれの森の入り口
捜索のため近隣住民が出入りしていましたが、怪我をした野良猫が発見されてからは、彼らも近寄らなくなっています。
日中の活動です。明るさ等、戦闘や捜索に支障はありません。
●敵
ミーちゃん(ひっかき:近単)
ユーちゃん(体当たり:近単)
2匹にとっては未知である、外の世界への不安からイブリース化した捜索対象です。
浄化して、依頼主と再会させてあげてください。
●同行NPC
ステーリア・アッシュ(nCL3000018)
捜索対象に効果があるかはわかりませんが、猫に好かれる性質(ねこまっしぐら)を持っています。
戦闘は得意でなく、遠足気分で同行します。
「俺も行っていいかな? 猫、見たいし」
未熟者ですがよろしくお願いいたします。
●地形
町はずれの森の入り口
捜索のため近隣住民が出入りしていましたが、怪我をした野良猫が発見されてからは、彼らも近寄らなくなっています。
日中の活動です。明るさ等、戦闘や捜索に支障はありません。
●敵
ミーちゃん(ひっかき:近単)
ユーちゃん(体当たり:近単)
2匹にとっては未知である、外の世界への不安からイブリース化した捜索対象です。
浄化して、依頼主と再会させてあげてください。
●同行NPC
ステーリア・アッシュ(nCL3000018)
捜索対象に効果があるかはわかりませんが、猫に好かれる性質(ねこまっしぐら)を持っています。
戦闘は得意でなく、遠足気分で同行します。
「俺も行っていいかな? 猫、見たいし」

状態
完了
完了
報酬マテリア
5個
1個
1個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2019年06月14日
2019年06月14日
†メイン参加者 6人†
●捜索開始
「皆さん、どうかあの子たちを連れ帰ってください。よろしくお願いいたします……」
一行はまず少女の家へと向かい、捜索対象の写真と2匹がよく遊んでいたおもちゃ、いつも使っていた毛布等を借りることにした。
「きっと見つかります。信じて待っていてください」
「僕も、ネコは好きだし、助けたい」
「うん、頑張って探そうね!」
「がんばろー!」
「ぅおー!」
「それでは、行ってきますね。もしかしたら、ひょっこり帰ってくるかもしれませんし、おうちで待っていてください」
祈るように言う依頼主の少女へ思い思いに声をかけると、そこから2チームに分かれて捜索を開始する。
周囲の住民への聞き込み、そのペットにも『柔和と重厚』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)の動物交流を利用して聞き込みをかけていくが、有力な情報は得られなかった。
そんな中、ステーリア・アッシュ(nCL3000018)に魅かれたのか、痩せ細ったノラネコが姿を見せた。
「あら……お腹が空いているのでしょうか。すみません、私あなたに差し上げられる物は何も……」
「カノン、干し肉ならあるよ。食べるかな?」
アンジェリカを遮って、『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)が声を上げる。
「俺も食べていいかな? いいかな?」
カノンに許可をもらったカーシー・ロマ(CL3000569)もネコの横に座り、干し肉にかぶり付く。
「ずいぶん弱っているみたいだけど、どうしたんだー?」
「食べ物を探して森に入ったんだけど、大きな木の近くを通ったときに突然何かが追いかけてきたんだ。慌てて逃げてきたから、誰だったのかわからないんだけど。こわいなぁ。これじゃあ森に入れないよ。……それじゃあ僕はもう行くね! ごちそうさま。ありがと!」
ネコは食べながら状況を伝えると、満足したのか、走り去ってしまった。
一方。
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)の知り合いなのか、ふらりと現れたノラネコがフーリィンに飛び乗る。
「わっ。あら……? 先日街でお会いしたネコさんですね。どうされたのでしょう?」
ぺろりと舐めた前足には血が滲んでいた。
「怪我をしているのか。僕に見せてごらん」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)が怪我の治療をする。
野良ネコは、フーリィンの持つ写真を見て一声鳴いた。
ネコのケモノビトであるスピンキー・フリスキー(CL3000555)が翻訳する。
「なんだ、ネコ探しか? そんなことより助けてくれよ。悪魔が住み着いたって噂になっててよ。おちおち散歩もできやしねぇ」
「悪魔?」
「あぁ。どこにいるんだか知らねぇが、気付かず近付いて襲われた奴もいるらしい。最近噂のアブねぇ奴さ。まぁ、悪魔は1匹って話だ。探しネコと関係あるかはわかんねぇな」
森の入り口で合流した一行。
それぞれ得た情報から、悪魔が捜索対象だと推測できた。
やはり森を調べる必要があるようだ。
「捜索対象のにゃんこ達がイブリース化しちゃってるんだね……」
「そのようだ。ここからが本番だ。気を引き締めて行こう」
カノンの言葉にマグノリアが言うと、一同は顔を見合わせ頷いた。
●帰ろう
森に入る前に展開した、カーシーのサーチエネミーが敵性反応を捉えた。
「もう少し奥みたいだね~」
「俺の出番やな! 様子見てくるから、みんなは待っててな!」
囮役のスピンキーが先行、カーシーも少し離れて追従する。
他の仲間は木の陰に隠れ、様子をうかがう。
ふたりが見えなくなって数秒。
「迷子の迷子の――にゃあああ! いきなりなんじゃー!? せめて最後まで言わせてくれぇー!」
スピンキーは、名乗り口上を終えるより早く、細身のネコに追い回されていた。
「スピンキー! 加勢するぞー!」
スピンキーを追いかけるネコを追いかける、ネコのようなネコでないもの。
額に宝石がキラリと光るそれは、幻想変身したカーシーだ。
「あれは……ミーちゃん? ユーちゃんは、どこでしょう?」
細身のネコは、捜索対象によく似ていた。
フーリィンは疑問を声に出しつつ、もう1匹を探して辺りを見回す。
森の中をぐるぐると駆け回る3匹。
一見すると無作為に駆け回っているように思えたが、ネコが1本の木を中心に動いているらしいことに気付いたマグノリアは、その中心の木に目星をつけて観察する。
「木の幹が、抉れている……?」
その声に一同が目を凝らすと、幹には何かをひっかけたような傷がいくつもあった。
一同はその傷を、目で追っていく。
「――上だ!!」
誰ともなく叫んだその声に、カーシーはネコを追うのをやめ、身を翻した。
木に駆け寄り、その幹を上っていく。
が、スピンキーを追っていたはずのネコが先程までとは比べられないほどの猛スピードで追ってきた。
そのまま幹を駆け上がるカーシーに跳びかかり、叩き落す。
「しまっ……!」
「任せて!」
飛び出したカノンが見事に受け止めたため、大事には至らなかった。
直後、幻想変身の解けたカーシーは普段の姿に戻っていた。
細身のネコは木を守るように、一行を威嚇している。
「下がダメなら、上から行ってみようか」
言いながら、ステーリアが翼を広げ、丸いネコのいる高さまで飛びあがる。
その間に、一行は戦闘配置についていた。
ステーリアがゆっくりと近づいていくと、丸いネコは更に丸くなる。
「避けて!」
マグノリアの声に後退すると、さっきまでいた場所めがけて丸いネコが跳びかかってきた。
しかし、ステーリアの後退により、そのまま落下してしまった。
「私が皆様をお守りします。この子たちも」
アンジェリカが前に出て、柳凪でネコを受け流すと地面に下ろしてやった。
それから前衛に立ち、味方を守るように動く。
「ごめんね、ちょっと痛いかもだけど……すぐに元に戻して飼い主さんの所へ連れて帰ってあげるから、ね!」
カノンはネコたちへの攻撃を躊躇う気持ちを抑えるように、ぐっと拳を握って、震撃を放つ。
対してカウンターを放つように、細身のネコがカノンをひっかく。
「ごめんね……少しだけ、我慢して」
マグノリアは目を閉じて、周囲に感じる魔力を取り込み、自身の魔力に換える。
丸いネコがスピンキーに向けて走り出すと、アンジェリカがその前に立ちはだかった。
「治癒は任せてください」
後衛に立つフーリィンは、回復担当だ。
「ショウターイム!」
もうひとりの後衛カーシーは打楽器を打ち鳴らしながら踊り出す。
何故か隣のステーリアも一緒になってステップを踏んでいる。
「うなーーー!」
スピンキーは雄叫びを上げ、果敢に飛び掛かる。
飼い猫である2匹は戦闘にも慣れておらず、倒すのはさほど難しくなかった。
揺れる木漏れ日の下、くたりと横たわる2匹のネコ。
マグノリアがパナケアをかけると、よろよろと立ち上がり、一行から逃げるように後退した。
依頼主に借りた毛布を広げるカーシーの横で、スピンキーが同じネコとして声をかける。
「こっちおいでよ。俺たちはふたりの味方だぜー。飼い主が心配して待ってるぞー。一緒に帰ろうぜー」
無理に近寄ることはせず、地面に座り込んで声をかけ続けるスピンキーに、ネコたちは恐る恐る近寄って行く。
「干し肉もあるよ!」
カノンが取り出した干し肉をじっと見つめる丸いネコの背を押すように、呆れたように尾を当てる細身のネコ。
2匹はゆっくりと一行に近づくと、座って一声鳴いた。
何があったのか尋ねると、丸いネコが語り出す。
「ねーちゃんが何かやって、ぼーんってなって、びっくりして逃げてきちゃったんだ。それで、勢いのまま走ってたら森に着いたんだ。ここは見たこともない食べ物がいっぱいあって、楽しくなっちゃって! すっごい頑張って木に登ったんだけど、降りれなくなっちゃったんだ」
「いやもうホント、バカだよねぇ。突っ走るから追いかけて行ったらあのザマだもん。森には怖いヤツもいるってねーちゃん言ってたのにさ。しょうがないからボクがコイツを守ってたってわけ」
「ぼくとしては、ミーが一番こわ――なんでもないです……ごめんって!」
一行は2匹の救出成功を喜びつつも、話を聞いて呆れた顔をして、細身のネコに同情の視線を向けるのだった。
干し肉にかじりつく2匹をタオルで拭いてやり、ブラシを当てて毛並みを整える。
「よし、きれいになったね!」
「それでは飼い主さんの所へ戻りましょうか。おふたりが戻るのを、首を長くして待っていますよ」
アンジェリカはしゃがんで視線を合わせると、2匹に語り掛ける。
フーリィンとステーリアがそれぞれを抱きかかえ、一行は少女の家へ向かった。
●おかえり
「ミーちゃん、ユーちゃん! よかった……おかえり!」
両腕に愛猫を抱いて、少女は一行に向き直る。
「本当にありがとうございました。この子たちにまた会えたのは、皆さんのおかげです。お返しできるもの、これくらいですが、よかったら食べてもらえませんか?」
そう言って少女が差し出したのは手作りのクッキーだった。
「この子たちとたくさん遊んで、もう放さないであげてくださいね。美味しそうですね。せっかくですし、いただきましょうか」
「マジで!? いいの!? やったー!」
美味しいクッキーを食べながら、ネコたちを撫でたり抱っこしたり、思い思いに過ごした騎士たちだった。
「皆さん、どうかあの子たちを連れ帰ってください。よろしくお願いいたします……」
一行はまず少女の家へと向かい、捜索対象の写真と2匹がよく遊んでいたおもちゃ、いつも使っていた毛布等を借りることにした。
「きっと見つかります。信じて待っていてください」
「僕も、ネコは好きだし、助けたい」
「うん、頑張って探そうね!」
「がんばろー!」
「ぅおー!」
「それでは、行ってきますね。もしかしたら、ひょっこり帰ってくるかもしれませんし、おうちで待っていてください」
祈るように言う依頼主の少女へ思い思いに声をかけると、そこから2チームに分かれて捜索を開始する。
周囲の住民への聞き込み、そのペットにも『柔和と重厚』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)の動物交流を利用して聞き込みをかけていくが、有力な情報は得られなかった。
そんな中、ステーリア・アッシュ(nCL3000018)に魅かれたのか、痩せ細ったノラネコが姿を見せた。
「あら……お腹が空いているのでしょうか。すみません、私あなたに差し上げられる物は何も……」
「カノン、干し肉ならあるよ。食べるかな?」
アンジェリカを遮って、『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)が声を上げる。
「俺も食べていいかな? いいかな?」
カノンに許可をもらったカーシー・ロマ(CL3000569)もネコの横に座り、干し肉にかぶり付く。
「ずいぶん弱っているみたいだけど、どうしたんだー?」
「食べ物を探して森に入ったんだけど、大きな木の近くを通ったときに突然何かが追いかけてきたんだ。慌てて逃げてきたから、誰だったのかわからないんだけど。こわいなぁ。これじゃあ森に入れないよ。……それじゃあ僕はもう行くね! ごちそうさま。ありがと!」
ネコは食べながら状況を伝えると、満足したのか、走り去ってしまった。
一方。
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)の知り合いなのか、ふらりと現れたノラネコがフーリィンに飛び乗る。
「わっ。あら……? 先日街でお会いしたネコさんですね。どうされたのでしょう?」
ぺろりと舐めた前足には血が滲んでいた。
「怪我をしているのか。僕に見せてごらん」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)が怪我の治療をする。
野良ネコは、フーリィンの持つ写真を見て一声鳴いた。
ネコのケモノビトであるスピンキー・フリスキー(CL3000555)が翻訳する。
「なんだ、ネコ探しか? そんなことより助けてくれよ。悪魔が住み着いたって噂になっててよ。おちおち散歩もできやしねぇ」
「悪魔?」
「あぁ。どこにいるんだか知らねぇが、気付かず近付いて襲われた奴もいるらしい。最近噂のアブねぇ奴さ。まぁ、悪魔は1匹って話だ。探しネコと関係あるかはわかんねぇな」
森の入り口で合流した一行。
それぞれ得た情報から、悪魔が捜索対象だと推測できた。
やはり森を調べる必要があるようだ。
「捜索対象のにゃんこ達がイブリース化しちゃってるんだね……」
「そのようだ。ここからが本番だ。気を引き締めて行こう」
カノンの言葉にマグノリアが言うと、一同は顔を見合わせ頷いた。
●帰ろう
森に入る前に展開した、カーシーのサーチエネミーが敵性反応を捉えた。
「もう少し奥みたいだね~」
「俺の出番やな! 様子見てくるから、みんなは待っててな!」
囮役のスピンキーが先行、カーシーも少し離れて追従する。
他の仲間は木の陰に隠れ、様子をうかがう。
ふたりが見えなくなって数秒。
「迷子の迷子の――にゃあああ! いきなりなんじゃー!? せめて最後まで言わせてくれぇー!」
スピンキーは、名乗り口上を終えるより早く、細身のネコに追い回されていた。
「スピンキー! 加勢するぞー!」
スピンキーを追いかけるネコを追いかける、ネコのようなネコでないもの。
額に宝石がキラリと光るそれは、幻想変身したカーシーだ。
「あれは……ミーちゃん? ユーちゃんは、どこでしょう?」
細身のネコは、捜索対象によく似ていた。
フーリィンは疑問を声に出しつつ、もう1匹を探して辺りを見回す。
森の中をぐるぐると駆け回る3匹。
一見すると無作為に駆け回っているように思えたが、ネコが1本の木を中心に動いているらしいことに気付いたマグノリアは、その中心の木に目星をつけて観察する。
「木の幹が、抉れている……?」
その声に一同が目を凝らすと、幹には何かをひっかけたような傷がいくつもあった。
一同はその傷を、目で追っていく。
「――上だ!!」
誰ともなく叫んだその声に、カーシーはネコを追うのをやめ、身を翻した。
木に駆け寄り、その幹を上っていく。
が、スピンキーを追っていたはずのネコが先程までとは比べられないほどの猛スピードで追ってきた。
そのまま幹を駆け上がるカーシーに跳びかかり、叩き落す。
「しまっ……!」
「任せて!」
飛び出したカノンが見事に受け止めたため、大事には至らなかった。
直後、幻想変身の解けたカーシーは普段の姿に戻っていた。
細身のネコは木を守るように、一行を威嚇している。
「下がダメなら、上から行ってみようか」
言いながら、ステーリアが翼を広げ、丸いネコのいる高さまで飛びあがる。
その間に、一行は戦闘配置についていた。
ステーリアがゆっくりと近づいていくと、丸いネコは更に丸くなる。
「避けて!」
マグノリアの声に後退すると、さっきまでいた場所めがけて丸いネコが跳びかかってきた。
しかし、ステーリアの後退により、そのまま落下してしまった。
「私が皆様をお守りします。この子たちも」
アンジェリカが前に出て、柳凪でネコを受け流すと地面に下ろしてやった。
それから前衛に立ち、味方を守るように動く。
「ごめんね、ちょっと痛いかもだけど……すぐに元に戻して飼い主さんの所へ連れて帰ってあげるから、ね!」
カノンはネコたちへの攻撃を躊躇う気持ちを抑えるように、ぐっと拳を握って、震撃を放つ。
対してカウンターを放つように、細身のネコがカノンをひっかく。
「ごめんね……少しだけ、我慢して」
マグノリアは目を閉じて、周囲に感じる魔力を取り込み、自身の魔力に換える。
丸いネコがスピンキーに向けて走り出すと、アンジェリカがその前に立ちはだかった。
「治癒は任せてください」
後衛に立つフーリィンは、回復担当だ。
「ショウターイム!」
もうひとりの後衛カーシーは打楽器を打ち鳴らしながら踊り出す。
何故か隣のステーリアも一緒になってステップを踏んでいる。
「うなーーー!」
スピンキーは雄叫びを上げ、果敢に飛び掛かる。
飼い猫である2匹は戦闘にも慣れておらず、倒すのはさほど難しくなかった。
揺れる木漏れ日の下、くたりと横たわる2匹のネコ。
マグノリアがパナケアをかけると、よろよろと立ち上がり、一行から逃げるように後退した。
依頼主に借りた毛布を広げるカーシーの横で、スピンキーが同じネコとして声をかける。
「こっちおいでよ。俺たちはふたりの味方だぜー。飼い主が心配して待ってるぞー。一緒に帰ろうぜー」
無理に近寄ることはせず、地面に座り込んで声をかけ続けるスピンキーに、ネコたちは恐る恐る近寄って行く。
「干し肉もあるよ!」
カノンが取り出した干し肉をじっと見つめる丸いネコの背を押すように、呆れたように尾を当てる細身のネコ。
2匹はゆっくりと一行に近づくと、座って一声鳴いた。
何があったのか尋ねると、丸いネコが語り出す。
「ねーちゃんが何かやって、ぼーんってなって、びっくりして逃げてきちゃったんだ。それで、勢いのまま走ってたら森に着いたんだ。ここは見たこともない食べ物がいっぱいあって、楽しくなっちゃって! すっごい頑張って木に登ったんだけど、降りれなくなっちゃったんだ」
「いやもうホント、バカだよねぇ。突っ走るから追いかけて行ったらあのザマだもん。森には怖いヤツもいるってねーちゃん言ってたのにさ。しょうがないからボクがコイツを守ってたってわけ」
「ぼくとしては、ミーが一番こわ――なんでもないです……ごめんって!」
一行は2匹の救出成功を喜びつつも、話を聞いて呆れた顔をして、細身のネコに同情の視線を向けるのだった。
干し肉にかじりつく2匹をタオルで拭いてやり、ブラシを当てて毛並みを整える。
「よし、きれいになったね!」
「それでは飼い主さんの所へ戻りましょうか。おふたりが戻るのを、首を長くして待っていますよ」
アンジェリカはしゃがんで視線を合わせると、2匹に語り掛ける。
フーリィンとステーリアがそれぞれを抱きかかえ、一行は少女の家へ向かった。
●おかえり
「ミーちゃん、ユーちゃん! よかった……おかえり!」
両腕に愛猫を抱いて、少女は一行に向き直る。
「本当にありがとうございました。この子たちにまた会えたのは、皆さんのおかげです。お返しできるもの、これくらいですが、よかったら食べてもらえませんか?」
そう言って少女が差し出したのは手作りのクッキーだった。
「この子たちとたくさん遊んで、もう放さないであげてくださいね。美味しそうですね。せっかくですし、いただきましょうか」
「マジで!? いいの!? やったー!」
美味しいクッキーを食べながら、ネコたちを撫でたり抱っこしたり、思い思いに過ごした騎士たちだった。