MagiaSteam




【闇より還ルもの】還ル者、迎エル者

●
地獄は唐突に始まった。
宵に差し掛かる王都・サンクディゼール。陽光も月光も無く、紅と紺に染まる空の下、人々の悲鳴が響き渡る。街の至る所から、それこそ湧いて出るように大量の還リビトが現れたのだ。いや、現れ続けている。血塗れの、あるいは腐乱した身体。理性を失った昏い双眸。およそ生気は感じられない風貌なのに、確かに動き、歩いていた。
殆どの住民は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。−−しかし、恐慌状態に陥った住民の中には、血迷って還リビトに攻撃する者もいた。
「うわあああああ!」
住民の一人が還リビトに殴りかかる。命中するが、当然殆どダメージは無い。還リビトはぐるりと首を動かしてその住民を見た。「ひ……!」反撃。直撃。還リビトの手刀がその住民の腹を貫き、引き抜かれる。住民だった骸がその場に崩れ落ちた。
「あ、あああ……!」
そのすぐ近くに、へたり込んだ母親と小さな娘がいた。母の方が逃げる時に足をくじいたらしい。娘の方は無事だが、恐怖で母の側を動けないようだった。
還リビトが振り返り、一歩踏み出す。
「う……!」
「キティ、駄目! 動かないで!」
母の勘。母親は咄嗟に娘にそう言い、そしてその判断は正しかった。還リビトは母と娘には目もくれず、のそのそとした歩みでそこから立ち去った。娘はぴくりとも動かず、母は首だけを動かしてその還リビトの背中を追う。(……お城に、向かってる……?)
「お母さん……」
「大丈夫よ、キティ……たぶん、大丈夫……」
抱きついてきた娘をあやし、母親はくじいた足を庇いながら、ゆっくりと立ち上がった。
●
「緊急事態である。王都サンクディゼールに大量の還リビトが出現し、イ・ラプセル王城を目指している。直ちに現場へ急行し、還リビトを殲滅してもらいたい」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士達にそう言った。説明を続ける。
「還リビト達の先頭には豪奢なローブを着た還リビトが目撃されている。恐らくこれが指揮個体であると思われる。−−これが何者かは今は重要ではない。最優先で王城到達前に撃破せよ。
また、還リビト達は住民への攻撃よりも王城への到達を優先している。こちらから攻撃しない限り危険は無いものと思われる。まずは指揮個体を撃破し、算を乱したところを殲滅するのがよいだろう」
言って、クラウスは締めくくった。「時間が無い。出発である」
地獄は唐突に始まった。
宵に差し掛かる王都・サンクディゼール。陽光も月光も無く、紅と紺に染まる空の下、人々の悲鳴が響き渡る。街の至る所から、それこそ湧いて出るように大量の還リビトが現れたのだ。いや、現れ続けている。血塗れの、あるいは腐乱した身体。理性を失った昏い双眸。およそ生気は感じられない風貌なのに、確かに動き、歩いていた。
殆どの住民は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。−−しかし、恐慌状態に陥った住民の中には、血迷って還リビトに攻撃する者もいた。
「うわあああああ!」
住民の一人が還リビトに殴りかかる。命中するが、当然殆どダメージは無い。還リビトはぐるりと首を動かしてその住民を見た。「ひ……!」反撃。直撃。還リビトの手刀がその住民の腹を貫き、引き抜かれる。住民だった骸がその場に崩れ落ちた。
「あ、あああ……!」
そのすぐ近くに、へたり込んだ母親と小さな娘がいた。母の方が逃げる時に足をくじいたらしい。娘の方は無事だが、恐怖で母の側を動けないようだった。
還リビトが振り返り、一歩踏み出す。
「う……!」
「キティ、駄目! 動かないで!」
母の勘。母親は咄嗟に娘にそう言い、そしてその判断は正しかった。還リビトは母と娘には目もくれず、のそのそとした歩みでそこから立ち去った。娘はぴくりとも動かず、母は首だけを動かしてその還リビトの背中を追う。(……お城に、向かってる……?)
「お母さん……」
「大丈夫よ、キティ……たぶん、大丈夫……」
抱きついてきた娘をあやし、母親はくじいた足を庇いながら、ゆっくりと立ち上がった。
●
「緊急事態である。王都サンクディゼールに大量の還リビトが出現し、イ・ラプセル王城を目指している。直ちに現場へ急行し、還リビトを殲滅してもらいたい」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士達にそう言った。説明を続ける。
「還リビト達の先頭には豪奢なローブを着た還リビトが目撃されている。恐らくこれが指揮個体であると思われる。−−これが何者かは今は重要ではない。最優先で王城到達前に撃破せよ。
また、還リビト達は住民への攻撃よりも王城への到達を優先している。こちらから攻撃しない限り危険は無いものと思われる。まずは指揮個体を撃破し、算を乱したところを殲滅するのがよいだろう」
言って、クラウスは締めくくった。「時間が無い。出発である」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.プリマトーヴァ及び還リビトを撃破し、目的地到達を防ぐ
皆様こんにちは、鳥海きりうです。よろしくお願いします。
サンクディゼールに突如現れた還リビトの大群を殲滅する戦闘シナリオです。還リビトのイ・ラプセル城への到達を防ぎ、住民の被害を最小限に抑えることが目的となります。
敵キャラクターのご紹介です。
・かつての学長、プリマトーヴァ
豪奢なローブを着込んだ還リビト。還リビトの大群の先頭に立ち、イ・ラプセル城を目指す。
・プリマトーヴァの近衛 ×15
プリマトーヴァを守る護衛兵の還リビト。プリマトーヴァに敵対するものを攻撃する。武装は剣、槍、弓と様々。
・還リビト ×???
サンクディゼール各所に突如現れた還リビトの大群。攻撃されない限り人間には目もくれず、城への到達を目指す。
だいたいクラウスが言った通りです。基本的には現場に急行し、なるはやでプリマトーヴァを落としてください。
プリマトーヴァはボス敵なのでそれなりに強いです。あとは傾向としては魔法使い系であるとだけ申し上げておきます。
また、今回は正当な理由づけがあれば「階差演算室にはいなくて事件発生当初現場にいた」というプレイングもありとします。事件発生直後からの迅速な対応が可能となるでしょう。
ただし、この場合は上記の理由づけに加えて「クラウスが話した前情報は知らない」とした上でのプレイングを行なってください。
また、この場合はプリマトーヴァとエンカウントできる可能性は非常に低くなります。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
この共通タグ【闇より還ルもの】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません。
すべての依頼の成否によって、決戦の結果に影響を及ぼします。
倒しきれなかった敵は決戦のカタコンベに集合することになります。
サンクディゼールに突如現れた還リビトの大群を殲滅する戦闘シナリオです。還リビトのイ・ラプセル城への到達を防ぎ、住民の被害を最小限に抑えることが目的となります。
敵キャラクターのご紹介です。
・かつての学長、プリマトーヴァ
豪奢なローブを着込んだ還リビト。還リビトの大群の先頭に立ち、イ・ラプセル城を目指す。
・プリマトーヴァの近衛 ×15
プリマトーヴァを守る護衛兵の還リビト。プリマトーヴァに敵対するものを攻撃する。武装は剣、槍、弓と様々。
・還リビト ×???
サンクディゼール各所に突如現れた還リビトの大群。攻撃されない限り人間には目もくれず、城への到達を目指す。
だいたいクラウスが言った通りです。基本的には現場に急行し、なるはやでプリマトーヴァを落としてください。
プリマトーヴァはボス敵なのでそれなりに強いです。あとは傾向としては魔法使い系であるとだけ申し上げておきます。
また、今回は正当な理由づけがあれば「階差演算室にはいなくて事件発生当初現場にいた」というプレイングもありとします。事件発生直後からの迅速な対応が可能となるでしょう。
ただし、この場合は上記の理由づけに加えて「クラウスが話した前情報は知らない」とした上でのプレイングを行なってください。
また、この場合はプリマトーヴァとエンカウントできる可能性は非常に低くなります。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
この共通タグ【闇より還ルもの】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません。
すべての依頼の成否によって、決戦の結果に影響を及ぼします。
倒しきれなかった敵は決戦のカタコンベに集合することになります。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年08月14日
2018年08月14日
†メイン参加者 8人†
●
「アリアー!」
夕刻。キッシェ・アカデミー正門前。『星空の奇蹟』ヒルダ・アークライト(CL3000279)は、講義に出ていた『死人の声に寄り添う者』アリア・セレスティ(CL3000222)を迎えに来ていた。出てくる彼女の姿を認め、手を振る。アリアもヒルダを見つけ、駆け寄った。「ヒルダちゃん」
「お疲れ。で、どうする? お茶でもしてく?」
「ううん、その前に演算室に寄りたいかな。何か事件があるかも知れないし」
「はー、真面目ね。でも、そこが私のアリア♡」
ヒルダの手がアリアの尻に伸びる。「ひゃああ!? どこ触ってるの!?」「うふふ。順調に育ってるわね♡」
−−遠く、悲鳴が聞こえた。「「!?」」
突如二人の周りにも数体の還リビトが現れる。アカデミー構内でも同じ現象が起きているらしく、還リビトの生気の無い唸りと、逃げる人々の悲鳴が入り混じり始めていた。「嘘……どうなってるの!?」
「まったくここ最近忙しないわね−−驚くのは後にしましょう、アリア!」
「そうだね−−皆さん避難してください! 構内に戻るか、自由騎士のいるところへ!」
ヒルダは飲み込み早くドレスのスカートから蒸気散弾銃を取り出す。アリアも周囲に避難を呼びかけ、「ヒルダちゃん、跳ぶよ!」「よしなにね!」空中二段飛び。アリアはヒルダを抱えて一気に屋根の上へ跳んだ。「おまたせ!」「最高の乗り心地だったわ。特に枕元の球体がね♡」言いながらヒルダはリュンケウスの瞳を使い、街の状況を確認する。「敵は街中に分散してるわね。市民の殆どは勝手に逃げてるわ。−−敵の進行方向は殆ど同じ……?」
「−−アリア。どうやらこいつらは皆城を目指してるわ。積極的に市民を襲うことは無いみたい」
「手近で襲われてる人はいない?」
「北西100m地点で学生と還リビトが戦闘になってるわ。ああ、なんか普段から喧嘩自慢してたいけ好かないやつね。カッコつけて突っかかったんでしょう」
「助けてくるね。ヒルダちゃんはここから援護お願い!」
「はいはい、それもまたよしね。−−狙撃銃でもあればよかったかしら」
言って、アリアは屋根から地上へ舞い戻った。抜刀。≪慈悲の祈り≫と≪葬送の願い≫の二刀を携え、街を駆ける。
−−せめて安らかに眠り、二度と悪夢に目覚めぬように。
●
宵に差し掛かる王都サンクディゼール。紅と紺に染まる空を、二つの影が飛んでいた。
「こちらは『イ・ラプセル自由騎士団』アリア・セレーネ(CL3000180)だ! 還リビトにはこちらから手を出さない限り襲われない! 排除は我々オラクルに任せて、落ち着いて避難するように!」
アリアが声域拡張を使い、眼下の民衆に呼びかける。その傍を飛ぶ同じく『イ・ラプセル自由騎士団』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は、双眼鏡を使って敵の姿を探していた。
(前学長……一回ぐらい会ってみたいと思っていた、が……)
その目に一際大きな敵集団が映った。先頭に豪奢なローブを着た還リビトが見える。ロジェはマキナ=ギアを起動する。
「こちらロジェ。目標を確認した。これより最短ルートを指示する」
「了解だ、ロジェ! これより現場に急行するぜ!」
『蒼影の銃士』ザルク・ミステル(CL3000067)は、そう言って通信を切った。
「還リビトの大群が城に到達したら大変! 何としてでも止めなきゃ! −−というわけで、お先!」
傍にいた『いっぽいっぽすすむみち』リサ・スターリング(CL3000343)が秋田犬の姿に変身し、駆け出した。ザルクも後を追って駆ける。敵の進行ルートとそこへの最短ルートはある程度割り出せている。全速で突っ切れば充分速く到達出来るだろう。
(しかしとんでもねえ数の還リビトだな。んで、王国の重鎮まで蘇ってるときた。こないだは昔謀反人にされた騎士様と対峙してきたが……ほんと、この一連の騒動はどうなってんだかな)
考えながらザルクは走る。途中で出会う還リビトは無視した。−−まずは頭を潰す。
「急げ急げ! 第一回狩りビト競争の時間だー!」
『神秘(ゆめ)への探求心』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は言いながら街を駆けて−−いや、跳んで跳ねていた。ダッシュジャンプで屋根の縁に掴まり、さらに屋根からジャンプして高壁をよじ登り、さらにジャンプして洗濯紐を軽機械剣でジップラインにして滑り降り、地面にローリングで着地して速度を維持しつつまたダッシュする。「そういえば、最近しゃべれる還リビトがいるみたいだし、今度の還リビトもそうなのかな? 戦闘しながらでも会話を試みてみよう!」
「−−まあ、話し合いで解決できそうな雰囲気じゃないし、僕は斬るのにためらいは無いけどね!」
怖いお子である。
「えぇっとぉ……てぃっしゅあかでみー、だっけ?」
違う。「ローラ学校なんて行ったことないからよくわかんなーい」
『もてかわハーレム♡マスター』ローラ・オルグレン(CL3000210)は、そんな事を言いながらも御多分に洩れず現場に急行していた。「還リビトって生きてるときの願望とか記憶に従って行動するって聞いたけど、お城に向かって王様にでも会いに行くつもりなのかなぁ? あんな所、行ったって何もイイ事ないと思うけど」
「−−あ、いたいた。アリアちゃーん」
「−−え? ローラさん?」
ローラは道すがらにアリアを発見し、声をかけた。丁度数体の還リビトを斬り伏せ、学生達を避難させたところである。「会えてよかった。ザコ共は後回しでいいから、こっち手伝ってくれない? こいつらは放っとけば害は無いし、ボスっぽいのがお城に向かってるんだって」
「ええ、それは分かりますが−−でも、市民の皆さんの面倒を誰も見ないというのも」
「大丈夫よ。−−あの人達がいるから」
「え−−?」
ローラが指差し、アリアがそちらを見る。−−その目が、輝いた。
「ワシには、オーバーブラストがあぁぁぁぁるっ!」
黒鎧の自由騎士が還リビトの群れを薙ぎ倒す。
「皆さん、お退きを! 僕が捨て奸となりましょう!」
東方出身の自由騎士が盾となって市民を守る。
「ボスっぽいのはお前らに任せた! オレは−−片っ端から殴り飛ばす!」
微妙に可愛い重鎧の自由騎士が、還リビトに殴りかかる。
「私は避難誘導を優先するわ。邪魔な還リビトは頼むわね」
修道服の自由騎士が市民を誘導して避難させる。
「ね?」
「−−そうですね」
応え、アリアはマキナ=ギアを起動した。「ヒルダちゃん、聞こえた? −−行こう。皆が頑張ってくれてるうちに」
「もちろんよ、私のアリア! 先に行くわね!」
「すぐ追いつくから。ローラさん、行きましょう」
「おっけー♡」
言って、三人は駆け出した。後ろは振り返らない。そんな必要は無かった。多くの自由騎士が援護に来てくれた。あれだけの面子がいれば、心配どころか完全勝利をも狙えるだろう。
しかし、残念だが、彼等の素晴らしい活躍を語るのは、またの機会に回そうと思う。
●
『現場』に最初に到達したのは、ジニーだった。王都サンクディゼールとイ・ラプセル城を隔てる大橋の袂。豪奢なローブを着た還リビトを先頭に、その周囲を近衛兵らしき還リビトが取り囲んでいる。そしてその後ろに続く、還リビトの群れ。
「クラウスは指揮個体をって言うけど、まずは護衛を片付けないと!」
言って、ジニーは敵陣めがけて駆けた。ヒートアクセル。軽機械剣の一撃が近衛剣兵を逆袈裟に斬り裂いた。反撃。ジニーはバク転で距離を取り、かわす。
「とうちゃーく! 皆、先頭は城の前の大橋だよ!」
続いて到着したリサが変身を解き、仲間に連絡する。そしてジニーに続いて震撃で近衛剣兵に攻撃を仕掛ける。命中。近衛が堪らず膝を突き、反撃するがリサは軽くこれをかわす。
「いいぞ! まずは近衛を減らすとしようぜ!」
ザルクが到着し、さらに近衛剣兵に銃撃する。ヘッドショット。頭を失った近衛の身体がぐらりと倒れた。一体撃破。
(私は……学長殿を狙うとするか)
空から到着したアリアは着地し、緋文字の印を描く。発生した炎は狙い違わずプリマトーヴァを襲った。ローブが燃え上がり、しかしプリマトーヴァが腕を一振りすると消える。「……やはり、さほど効かんか……?」
「私は遊撃に回ります! ヒルダちゃん、私を好きに使って!」
「使う!?」
「そういう意味じゃない!」
言いながらアリアは敵陣に踏み込み、槍を持った近衛に斬りかかる。「私を好きにしてって……あらやだアリアったら、そんな、突然大胆になっちゃって!」「だからそういう意味じゃない!」オーバーブラスト。ヒルダの放った散弾が周囲の近衛を撃ち抜く。反撃。アリアはステップでこれをかわすが、ヒルダに二体が向いた。ヒルダは一撃をかわし、もう一撃は食らう。「っと、なかなかやるわね!」
「えーっと、それじゃあ……まずはノートルダムかな!」
ローラはノートルダムの息吹を使用した。まだ緊急の回復は必要ないという判断である。この一手を我慢すれば、先の六手を買える。
「ふむ、それはいい……だが、さらにこうすれば万全だな」
ロジェが到着し、ヒルダの傷をハーベストレインで癒す。「ありがと!」「気にするな」
敵が動く。プリマトーヴァの近衛残り十四体は、剣兵が四、槍兵が五、弓兵が五という構成だった。まず四体の槍兵がリサを狙う。「う−−で、でも負けない!」四体のうち三体はヒルダの攻撃で傷を負った者だった。リサは二体の攻撃を受けるが、反撃でその二体を沈める。三体目の攻撃を辛くもかわし、反撃の鉄山靠で打ち返した。
しかし−−四体目の槍が、リサの身体を横薙ぎに斬り裂いた。「ず、ずるくない……?」戦闘不能。リサはうつ伏せに血の海に倒れる。
次に三体の剣兵がヒルダに向いた。本来なら四体で取り囲みたいところだが、隣にアリアがいてそうもいかない。「ふふ、大人気ね−−覚悟しなさいベイビー!」剣兵の攻撃を受けつつも、ヒルダはショットガン・オーバーブラストで反撃する。刃が風を斬る音と重い銃声が交錯する。やがて文字通り蜂の巣になった近衛の一体が血の海に沈んだ。ヒルダは銃口から上がる紫煙を吹き消す。「ふっ−−残念。仕留めきれなかったわね」
「ヒルダちゃん!」
「え?」
アリアの警告は一瞬遅かった。二本の矢がヒルダの身体に突き立つ。「あ−−やっぱり、狙撃銃、検討しようかな……」剣兵の攻撃に加えて弓兵の追撃も受け、ヒルダは堪らずふらりと倒れた。戦闘不能。
残る剣兵と槍兵はジニーを狙った。「おっと−−そうそう思い通りにはいかないよ!」槍兵の攻撃をスライディングでかわし、すれ違いざまに足を斬りつける。しかしそこを剣兵が襲った。「おおっと!」素早く起き上がって直撃は避けるが、腕を斬られる。
そこへ三体の弓兵が放った矢が襲った。「なんのなんの−−っと!」素早い動きで二発はかわすが、一発は被弾する。
爆発。「ジニー!」
プリマトーヴァの緋文字がジニーを襲った。炎に巻かれたジニーが転がる。「き、きいたぁ〜……」戦闘不能。
「ヒルダちゃん、しっかりして! ヒルダちゃん!」
アリアは思わず倒れたヒルダを抱き起こしていた。ヒルダが首を巡らせ、アリアを見て微笑む。「もちろんよ、アリア」「え−−ヒルダちゃん−−?」
「負けるもんですか……これが終わったら、アリアと▪️▪️▪️▪️するのよぉぉぉぉっ!」
「そんな理由で!?」
奇跡的復活。ヒルダは盛大なピー音とともに蘇った。ただしHPはノートルダム込みで200ぐらいです。
「俺の凍結弾を受けてみな!」
援護に来ていた自由騎士が傷ついた槍兵にアイスコフィンを放つ。命中。槍兵は凍りついたまま倒れ、動かなくなる。
「頭がガラ空きなんだよ!」
ザルクはヒルダが弱らせた剣兵を銃撃し、また一体を地に沈めた。
「敵にも損害は与えている。立て直せ」
「ヒルダさん、うまくやってね!」
ロジェとローラが魔法でヒルダを全快させる。
「やはり、まずは近衛からか」
アリアの緋文字がヒルダの周囲に残っていた剣兵を炎上させ、爆発させた。残り八体。
敵が動く。五体の弓兵が前衛のアリアに矢を射かけた。「来るのが分かっていれば!」アリアは三発をかわし、しかし二発は被弾する。反撃。アリアの放った氷弾が弓兵達を撃ち抜く。
プリマトーヴァも前衛のアリアを狙った。緋文字。命中。アリアは咄嗟にガードしてなんとか堪える。「うう、流石はかつての学長、プリマトーヴァ……!」
残っていた剣兵と槍兵が前衛を抜いた。ザルクに斬りかかる。「くそ、来やがったか!」剣はかわし、槍は食らった。反撃。銃撃は二発とも命中する。
「ザルクの旦那、ダブル・シュートといくか!」
「悪くないな!」
ザルクの銃弾と援護の氷弾が同時に近衛を撃ち倒した。
「先に行くわよ、アリア!」
「お願い!」
ヒルダが弓兵の群れに飛び込んだ。「迂闊にアリアに手を出したのが運の尽きね!」オーバーブラスト。傷を負っていた弓兵が一挙に沈み、プリマトーヴァもダメージを受ける。
「行きます、学長!」
アリアがプリマトーヴァに斬りかかる。命中。反撃。アリアはターンして爆発を避ける。
「さらばだ、学長。−−見事なご講義だった」
「還るんだ学長。静かなる海に……」
アリアの緋文字がプリマトーヴァを灼き、ロジェのダーツが突き立つ。プリマトーヴァの身体が大きく傾いだ。
「……いけんじゃね?」
ローラが呟き、目を細めて笑う。前に進み出て、呼んだ。「学長さーん♡」プリマトーヴァが振り向く。
ローラは過去最高の笑顔で、言った。
「▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️」
内なるローラ。圧倒的な凍気がプリマトーヴァを凍結させる。ローラは背を向け、髪をかき上げた。「クソが」破砕。プリマトーヴァだったものが氷片となって弾け飛ぶ。
「……なーんちゃって♡」
すかさずローラは取り繕うが、誰も見ていなかった。−−見たら殺されると思った。
「ふぃー、死ぬかと思ったー……」
「皆、お疲れ様ー。きついかもとは思ったけど、まさかやられちゃうなんて……」
戦闘終了後。仲間達の治療で息を吹き返したリサとジニーと共に、自由騎士達は橋の袂で態勢を立て直していた。「で、どうするよ、あれ」ザルクが指差す。学長と近衛は倒したが、残りの還リビトはまだ前進を続けていた。−−しかし、橋には向かってこない。城を素通りし、さらに南西を目指している。
「やるだけさ。どうやるかは、学長殿が教えてくれた」
「どういうことですか?」
アリアの言葉に、アリアが問いかける。その問いにはロジェが答えた。
「集中攻撃だ。有無を言わせず畳み掛けて一人ずつ潰していく。学長はどうやらそういう戦法が得意らしい」
「袋叩きってこと?」
「遠くから銃とか魔法でってのもいーよね。トロいし♡」
「それに、なんか何体か戻ってない? なんで?」
ヒルダが誰にともなく問う。確かに、全ての還リビトが城の方を目指しているわけではなかった。戸惑うように立ち尽くすも者や、明らかに引き返そうとしている者もいる。「多分」アリアが口を開いた。
「皆さんが、頑張ってくれてるんです。……ちょっとやりすぎちゃってるぐらい」
攻撃すれば還リビトは向かって来る。つまり、それを利用すれば還リビトを誘導することも出来るのである。『彼等』は今も戦っている。ちょっとやりすぎちゃってるぐらいに。
自由騎士達は立ち上がった。王都を奪還し、仲間達を救うために。
夜は、まだ始まったばかりだった。
「アリアー!」
夕刻。キッシェ・アカデミー正門前。『星空の奇蹟』ヒルダ・アークライト(CL3000279)は、講義に出ていた『死人の声に寄り添う者』アリア・セレスティ(CL3000222)を迎えに来ていた。出てくる彼女の姿を認め、手を振る。アリアもヒルダを見つけ、駆け寄った。「ヒルダちゃん」
「お疲れ。で、どうする? お茶でもしてく?」
「ううん、その前に演算室に寄りたいかな。何か事件があるかも知れないし」
「はー、真面目ね。でも、そこが私のアリア♡」
ヒルダの手がアリアの尻に伸びる。「ひゃああ!? どこ触ってるの!?」「うふふ。順調に育ってるわね♡」
−−遠く、悲鳴が聞こえた。「「!?」」
突如二人の周りにも数体の還リビトが現れる。アカデミー構内でも同じ現象が起きているらしく、還リビトの生気の無い唸りと、逃げる人々の悲鳴が入り混じり始めていた。「嘘……どうなってるの!?」
「まったくここ最近忙しないわね−−驚くのは後にしましょう、アリア!」
「そうだね−−皆さん避難してください! 構内に戻るか、自由騎士のいるところへ!」
ヒルダは飲み込み早くドレスのスカートから蒸気散弾銃を取り出す。アリアも周囲に避難を呼びかけ、「ヒルダちゃん、跳ぶよ!」「よしなにね!」空中二段飛び。アリアはヒルダを抱えて一気に屋根の上へ跳んだ。「おまたせ!」「最高の乗り心地だったわ。特に枕元の球体がね♡」言いながらヒルダはリュンケウスの瞳を使い、街の状況を確認する。「敵は街中に分散してるわね。市民の殆どは勝手に逃げてるわ。−−敵の進行方向は殆ど同じ……?」
「−−アリア。どうやらこいつらは皆城を目指してるわ。積極的に市民を襲うことは無いみたい」
「手近で襲われてる人はいない?」
「北西100m地点で学生と還リビトが戦闘になってるわ。ああ、なんか普段から喧嘩自慢してたいけ好かないやつね。カッコつけて突っかかったんでしょう」
「助けてくるね。ヒルダちゃんはここから援護お願い!」
「はいはい、それもまたよしね。−−狙撃銃でもあればよかったかしら」
言って、アリアは屋根から地上へ舞い戻った。抜刀。≪慈悲の祈り≫と≪葬送の願い≫の二刀を携え、街を駆ける。
−−せめて安らかに眠り、二度と悪夢に目覚めぬように。
●
宵に差し掛かる王都サンクディゼール。紅と紺に染まる空を、二つの影が飛んでいた。
「こちらは『イ・ラプセル自由騎士団』アリア・セレーネ(CL3000180)だ! 還リビトにはこちらから手を出さない限り襲われない! 排除は我々オラクルに任せて、落ち着いて避難するように!」
アリアが声域拡張を使い、眼下の民衆に呼びかける。その傍を飛ぶ同じく『イ・ラプセル自由騎士団』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は、双眼鏡を使って敵の姿を探していた。
(前学長……一回ぐらい会ってみたいと思っていた、が……)
その目に一際大きな敵集団が映った。先頭に豪奢なローブを着た還リビトが見える。ロジェはマキナ=ギアを起動する。
「こちらロジェ。目標を確認した。これより最短ルートを指示する」
「了解だ、ロジェ! これより現場に急行するぜ!」
『蒼影の銃士』ザルク・ミステル(CL3000067)は、そう言って通信を切った。
「還リビトの大群が城に到達したら大変! 何としてでも止めなきゃ! −−というわけで、お先!」
傍にいた『いっぽいっぽすすむみち』リサ・スターリング(CL3000343)が秋田犬の姿に変身し、駆け出した。ザルクも後を追って駆ける。敵の進行ルートとそこへの最短ルートはある程度割り出せている。全速で突っ切れば充分速く到達出来るだろう。
(しかしとんでもねえ数の還リビトだな。んで、王国の重鎮まで蘇ってるときた。こないだは昔謀反人にされた騎士様と対峙してきたが……ほんと、この一連の騒動はどうなってんだかな)
考えながらザルクは走る。途中で出会う還リビトは無視した。−−まずは頭を潰す。
「急げ急げ! 第一回狩りビト競争の時間だー!」
『神秘(ゆめ)への探求心』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は言いながら街を駆けて−−いや、跳んで跳ねていた。ダッシュジャンプで屋根の縁に掴まり、さらに屋根からジャンプして高壁をよじ登り、さらにジャンプして洗濯紐を軽機械剣でジップラインにして滑り降り、地面にローリングで着地して速度を維持しつつまたダッシュする。「そういえば、最近しゃべれる還リビトがいるみたいだし、今度の還リビトもそうなのかな? 戦闘しながらでも会話を試みてみよう!」
「−−まあ、話し合いで解決できそうな雰囲気じゃないし、僕は斬るのにためらいは無いけどね!」
怖いお子である。
「えぇっとぉ……てぃっしゅあかでみー、だっけ?」
違う。「ローラ学校なんて行ったことないからよくわかんなーい」
『もてかわハーレム♡マスター』ローラ・オルグレン(CL3000210)は、そんな事を言いながらも御多分に洩れず現場に急行していた。「還リビトって生きてるときの願望とか記憶に従って行動するって聞いたけど、お城に向かって王様にでも会いに行くつもりなのかなぁ? あんな所、行ったって何もイイ事ないと思うけど」
「−−あ、いたいた。アリアちゃーん」
「−−え? ローラさん?」
ローラは道すがらにアリアを発見し、声をかけた。丁度数体の還リビトを斬り伏せ、学生達を避難させたところである。「会えてよかった。ザコ共は後回しでいいから、こっち手伝ってくれない? こいつらは放っとけば害は無いし、ボスっぽいのがお城に向かってるんだって」
「ええ、それは分かりますが−−でも、市民の皆さんの面倒を誰も見ないというのも」
「大丈夫よ。−−あの人達がいるから」
「え−−?」
ローラが指差し、アリアがそちらを見る。−−その目が、輝いた。
「ワシには、オーバーブラストがあぁぁぁぁるっ!」
黒鎧の自由騎士が還リビトの群れを薙ぎ倒す。
「皆さん、お退きを! 僕が捨て奸となりましょう!」
東方出身の自由騎士が盾となって市民を守る。
「ボスっぽいのはお前らに任せた! オレは−−片っ端から殴り飛ばす!」
微妙に可愛い重鎧の自由騎士が、還リビトに殴りかかる。
「私は避難誘導を優先するわ。邪魔な還リビトは頼むわね」
修道服の自由騎士が市民を誘導して避難させる。
「ね?」
「−−そうですね」
応え、アリアはマキナ=ギアを起動した。「ヒルダちゃん、聞こえた? −−行こう。皆が頑張ってくれてるうちに」
「もちろんよ、私のアリア! 先に行くわね!」
「すぐ追いつくから。ローラさん、行きましょう」
「おっけー♡」
言って、三人は駆け出した。後ろは振り返らない。そんな必要は無かった。多くの自由騎士が援護に来てくれた。あれだけの面子がいれば、心配どころか完全勝利をも狙えるだろう。
しかし、残念だが、彼等の素晴らしい活躍を語るのは、またの機会に回そうと思う。
●
『現場』に最初に到達したのは、ジニーだった。王都サンクディゼールとイ・ラプセル城を隔てる大橋の袂。豪奢なローブを着た還リビトを先頭に、その周囲を近衛兵らしき還リビトが取り囲んでいる。そしてその後ろに続く、還リビトの群れ。
「クラウスは指揮個体をって言うけど、まずは護衛を片付けないと!」
言って、ジニーは敵陣めがけて駆けた。ヒートアクセル。軽機械剣の一撃が近衛剣兵を逆袈裟に斬り裂いた。反撃。ジニーはバク転で距離を取り、かわす。
「とうちゃーく! 皆、先頭は城の前の大橋だよ!」
続いて到着したリサが変身を解き、仲間に連絡する。そしてジニーに続いて震撃で近衛剣兵に攻撃を仕掛ける。命中。近衛が堪らず膝を突き、反撃するがリサは軽くこれをかわす。
「いいぞ! まずは近衛を減らすとしようぜ!」
ザルクが到着し、さらに近衛剣兵に銃撃する。ヘッドショット。頭を失った近衛の身体がぐらりと倒れた。一体撃破。
(私は……学長殿を狙うとするか)
空から到着したアリアは着地し、緋文字の印を描く。発生した炎は狙い違わずプリマトーヴァを襲った。ローブが燃え上がり、しかしプリマトーヴァが腕を一振りすると消える。「……やはり、さほど効かんか……?」
「私は遊撃に回ります! ヒルダちゃん、私を好きに使って!」
「使う!?」
「そういう意味じゃない!」
言いながらアリアは敵陣に踏み込み、槍を持った近衛に斬りかかる。「私を好きにしてって……あらやだアリアったら、そんな、突然大胆になっちゃって!」「だからそういう意味じゃない!」オーバーブラスト。ヒルダの放った散弾が周囲の近衛を撃ち抜く。反撃。アリアはステップでこれをかわすが、ヒルダに二体が向いた。ヒルダは一撃をかわし、もう一撃は食らう。「っと、なかなかやるわね!」
「えーっと、それじゃあ……まずはノートルダムかな!」
ローラはノートルダムの息吹を使用した。まだ緊急の回復は必要ないという判断である。この一手を我慢すれば、先の六手を買える。
「ふむ、それはいい……だが、さらにこうすれば万全だな」
ロジェが到着し、ヒルダの傷をハーベストレインで癒す。「ありがと!」「気にするな」
敵が動く。プリマトーヴァの近衛残り十四体は、剣兵が四、槍兵が五、弓兵が五という構成だった。まず四体の槍兵がリサを狙う。「う−−で、でも負けない!」四体のうち三体はヒルダの攻撃で傷を負った者だった。リサは二体の攻撃を受けるが、反撃でその二体を沈める。三体目の攻撃を辛くもかわし、反撃の鉄山靠で打ち返した。
しかし−−四体目の槍が、リサの身体を横薙ぎに斬り裂いた。「ず、ずるくない……?」戦闘不能。リサはうつ伏せに血の海に倒れる。
次に三体の剣兵がヒルダに向いた。本来なら四体で取り囲みたいところだが、隣にアリアがいてそうもいかない。「ふふ、大人気ね−−覚悟しなさいベイビー!」剣兵の攻撃を受けつつも、ヒルダはショットガン・オーバーブラストで反撃する。刃が風を斬る音と重い銃声が交錯する。やがて文字通り蜂の巣になった近衛の一体が血の海に沈んだ。ヒルダは銃口から上がる紫煙を吹き消す。「ふっ−−残念。仕留めきれなかったわね」
「ヒルダちゃん!」
「え?」
アリアの警告は一瞬遅かった。二本の矢がヒルダの身体に突き立つ。「あ−−やっぱり、狙撃銃、検討しようかな……」剣兵の攻撃に加えて弓兵の追撃も受け、ヒルダは堪らずふらりと倒れた。戦闘不能。
残る剣兵と槍兵はジニーを狙った。「おっと−−そうそう思い通りにはいかないよ!」槍兵の攻撃をスライディングでかわし、すれ違いざまに足を斬りつける。しかしそこを剣兵が襲った。「おおっと!」素早く起き上がって直撃は避けるが、腕を斬られる。
そこへ三体の弓兵が放った矢が襲った。「なんのなんの−−っと!」素早い動きで二発はかわすが、一発は被弾する。
爆発。「ジニー!」
プリマトーヴァの緋文字がジニーを襲った。炎に巻かれたジニーが転がる。「き、きいたぁ〜……」戦闘不能。
「ヒルダちゃん、しっかりして! ヒルダちゃん!」
アリアは思わず倒れたヒルダを抱き起こしていた。ヒルダが首を巡らせ、アリアを見て微笑む。「もちろんよ、アリア」「え−−ヒルダちゃん−−?」
「負けるもんですか……これが終わったら、アリアと▪️▪️▪️▪️するのよぉぉぉぉっ!」
「そんな理由で!?」
奇跡的復活。ヒルダは盛大なピー音とともに蘇った。ただしHPはノートルダム込みで200ぐらいです。
「俺の凍結弾を受けてみな!」
援護に来ていた自由騎士が傷ついた槍兵にアイスコフィンを放つ。命中。槍兵は凍りついたまま倒れ、動かなくなる。
「頭がガラ空きなんだよ!」
ザルクはヒルダが弱らせた剣兵を銃撃し、また一体を地に沈めた。
「敵にも損害は与えている。立て直せ」
「ヒルダさん、うまくやってね!」
ロジェとローラが魔法でヒルダを全快させる。
「やはり、まずは近衛からか」
アリアの緋文字がヒルダの周囲に残っていた剣兵を炎上させ、爆発させた。残り八体。
敵が動く。五体の弓兵が前衛のアリアに矢を射かけた。「来るのが分かっていれば!」アリアは三発をかわし、しかし二発は被弾する。反撃。アリアの放った氷弾が弓兵達を撃ち抜く。
プリマトーヴァも前衛のアリアを狙った。緋文字。命中。アリアは咄嗟にガードしてなんとか堪える。「うう、流石はかつての学長、プリマトーヴァ……!」
残っていた剣兵と槍兵が前衛を抜いた。ザルクに斬りかかる。「くそ、来やがったか!」剣はかわし、槍は食らった。反撃。銃撃は二発とも命中する。
「ザルクの旦那、ダブル・シュートといくか!」
「悪くないな!」
ザルクの銃弾と援護の氷弾が同時に近衛を撃ち倒した。
「先に行くわよ、アリア!」
「お願い!」
ヒルダが弓兵の群れに飛び込んだ。「迂闊にアリアに手を出したのが運の尽きね!」オーバーブラスト。傷を負っていた弓兵が一挙に沈み、プリマトーヴァもダメージを受ける。
「行きます、学長!」
アリアがプリマトーヴァに斬りかかる。命中。反撃。アリアはターンして爆発を避ける。
「さらばだ、学長。−−見事なご講義だった」
「還るんだ学長。静かなる海に……」
アリアの緋文字がプリマトーヴァを灼き、ロジェのダーツが突き立つ。プリマトーヴァの身体が大きく傾いだ。
「……いけんじゃね?」
ローラが呟き、目を細めて笑う。前に進み出て、呼んだ。「学長さーん♡」プリマトーヴァが振り向く。
ローラは過去最高の笑顔で、言った。
「▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️」
内なるローラ。圧倒的な凍気がプリマトーヴァを凍結させる。ローラは背を向け、髪をかき上げた。「クソが」破砕。プリマトーヴァだったものが氷片となって弾け飛ぶ。
「……なーんちゃって♡」
すかさずローラは取り繕うが、誰も見ていなかった。−−見たら殺されると思った。
「ふぃー、死ぬかと思ったー……」
「皆、お疲れ様ー。きついかもとは思ったけど、まさかやられちゃうなんて……」
戦闘終了後。仲間達の治療で息を吹き返したリサとジニーと共に、自由騎士達は橋の袂で態勢を立て直していた。「で、どうするよ、あれ」ザルクが指差す。学長と近衛は倒したが、残りの還リビトはまだ前進を続けていた。−−しかし、橋には向かってこない。城を素通りし、さらに南西を目指している。
「やるだけさ。どうやるかは、学長殿が教えてくれた」
「どういうことですか?」
アリアの言葉に、アリアが問いかける。その問いにはロジェが答えた。
「集中攻撃だ。有無を言わせず畳み掛けて一人ずつ潰していく。学長はどうやらそういう戦法が得意らしい」
「袋叩きってこと?」
「遠くから銃とか魔法でってのもいーよね。トロいし♡」
「それに、なんか何体か戻ってない? なんで?」
ヒルダが誰にともなく問う。確かに、全ての還リビトが城の方を目指しているわけではなかった。戸惑うように立ち尽くすも者や、明らかに引き返そうとしている者もいる。「多分」アリアが口を開いた。
「皆さんが、頑張ってくれてるんです。……ちょっとやりすぎちゃってるぐらい」
攻撃すれば還リビトは向かって来る。つまり、それを利用すれば還リビトを誘導することも出来るのである。『彼等』は今も戦っている。ちょっとやりすぎちゃってるぐらいに。
自由騎士達は立ち上がった。王都を奪還し、仲間達を救うために。
夜は、まだ始まったばかりだった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
軽傷
称号付与
『静かなる天眼』
取得者: リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『慈愛の剣姫』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『血に染まる銃姫』
取得者: ヒルダ・アークライト(CL3000279)
取得者: リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『慈愛の剣姫』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『血に染まる銃姫』
取得者: ヒルダ・アークライト(CL3000279)
†あとがき†
皆様お疲れ様でした並びにご参加あありがとうございました。
MVPはヒルダ・アークライト様。本編ではああ書きましたが、やはりショットガンこそ正義なのでしょう。その場合、落ちる前提で復活の確度を上げるのもまた一手かも知れません。
改めまして、皆様お疲れありがとうございました。
MVPはヒルダ・アークライト様。本編ではああ書きましたが、やはりショットガンこそ正義なのでしょう。その場合、落ちる前提で復活の確度を上げるのもまた一手かも知れません。
改めまして、皆様お疲れありがとうございました。
FL送付済