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互いの実力を見定めるべく、実践的な組手を所望す。

●
「やっぱりガチンコの殴り合いって男の浪漫だよね~。あ、でも魔道師同士の遠距離からの高火力の打ち合いも大迫力だよね。それに……みんなの必殺技も見たいし……」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は妄想していた。
日々魔物や敵国の兵士、悪党と戦う自由騎士達。その彼らの雄姿をもっと間近で見てみたい、と。
きっとこう考えている者もいるはず……自分は自由騎士のなかではどの程度にいるのだろう、と。
ならば。自由騎士同士で本気で戦う事も大きな得るものがあるはず。
格闘スタイル同士の本気の殴りあい、迫力があると思わない?
ガンナー同士の遠距離からの狙撃合戦、緊張感すごくない?
呪術士同士の呪いの掛け合い……怖いっ!!
ヒーラー同士の……回復合戦? なんだか……ほっこりしそう。
ダンサー同士の……例えてたらきりがないよねっ
それに違うスタイルの異種戦闘もやっぱり燃えるよねっ!
防御タンクの鉄壁の防御をこじ開けるのは、重戦士の重い一撃なのか、それとも格闘の技なのか。
レンジャーと軽戦士のスピード対決とか!
魔導師と錬金術の魔導対決も熱いよねっ!
それにダンサーと呪術師の戦いなんてもうどうなるのかわからないよねっ。
「お願いっ……1回! 1回でいいからサ! 1回だけ!」
ヨアヒムの強引な申し出により、自由騎士達の日々の研鑽を披露する、正々堂々のガチンコ勝負が始まった。
さぁ──勝負だぜ!!!
「やっぱりガチンコの殴り合いって男の浪漫だよね~。あ、でも魔道師同士の遠距離からの高火力の打ち合いも大迫力だよね。それに……みんなの必殺技も見たいし……」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は妄想していた。
日々魔物や敵国の兵士、悪党と戦う自由騎士達。その彼らの雄姿をもっと間近で見てみたい、と。
きっとこう考えている者もいるはず……自分は自由騎士のなかではどの程度にいるのだろう、と。
ならば。自由騎士同士で本気で戦う事も大きな得るものがあるはず。
格闘スタイル同士の本気の殴りあい、迫力があると思わない?
ガンナー同士の遠距離からの狙撃合戦、緊張感すごくない?
呪術士同士の呪いの掛け合い……怖いっ!!
ヒーラー同士の……回復合戦? なんだか……ほっこりしそう。
ダンサー同士の……例えてたらきりがないよねっ
それに違うスタイルの異種戦闘もやっぱり燃えるよねっ!
防御タンクの鉄壁の防御をこじ開けるのは、重戦士の重い一撃なのか、それとも格闘の技なのか。
レンジャーと軽戦士のスピード対決とか!
魔導師と錬金術の魔導対決も熱いよねっ!
それにダンサーと呪術師の戦いなんてもうどうなるのかわからないよねっ。
「お願いっ……1回! 1回でいいからサ! 1回だけ!」
ヨアヒムの強引な申し出により、自由騎士達の日々の研鑽を披露する、正々堂々のガチンコ勝負が始まった。
さぁ──勝負だぜ!!!
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.自由騎士同士で勝負する!
麺です。自分達の実力、自由騎士同士でも試してみたいと思いませんか? 麺はちょっと見てみたいと思いました。
自由騎士同士のガチンコ勝負。一体どのような戦いが繰り広げられるのでしょうか。
●ロケーション
森の中の開けた場所。障害となるものはありません。
正々堂々、勝負してお互いの実力を出し切りましょう。
シングル戦を3戦でも、シングルとタッグでも構いません。
誰と誰が戦うかは相談でお決めください。
同じ系等同士で戦うもよし、あえて、苦手とする相手と戦うもよし。
対戦相手とどういう対戦方法で戦うか自由に決めていただいたらあとは戦うだけ。
(例えばスキルは使わず殴りあう……等、特殊ルールはお互いが認めればOKです)
純戦の場合は18ターン(3分間)の制限制。決着がつかなければ引き分けです。
得られるのは勝ち負けなど超越した、新たな経験。それはきっとこれからの戦いにも役立つはずです。
※戦えるのは1人1回まで。連戦はできません。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
見届け人として登場します。戦いには関与しません。
皆様のご参加お待ちしております。
自由騎士同士のガチンコ勝負。一体どのような戦いが繰り広げられるのでしょうか。
●ロケーション
森の中の開けた場所。障害となるものはありません。
正々堂々、勝負してお互いの実力を出し切りましょう。
シングル戦を3戦でも、シングルとタッグでも構いません。
誰と誰が戦うかは相談でお決めください。
同じ系等同士で戦うもよし、あえて、苦手とする相手と戦うもよし。
対戦相手とどういう対戦方法で戦うか自由に決めていただいたらあとは戦うだけ。
(例えばスキルは使わず殴りあう……等、特殊ルールはお互いが認めればOKです)
純戦の場合は18ターン(3分間)の制限制。決着がつかなければ引き分けです。
得られるのは勝ち負けなど超越した、新たな経験。それはきっとこれからの戦いにも役立つはずです。
※戦えるのは1人1回まで。連戦はできません。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
見届け人として登場します。戦いには関与しません。
皆様のご参加お待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
5日
5日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2019年06月25日
2019年06月25日
†メイン参加者 6人†
●
「うむ、激しいぶつかり合いが予想されるのう!」
見学に来た自由騎士は模擬戦の開始を心待ちにしていた。
自由騎士同士の戦いがいよいよ始まる──。
●疾風 VS 万能
(アタシが女だとか考えないことね──)
『機刃の竜乙女』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)は、目の前で少し動揺を見せる『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)を鋭い眼差しで見つめていた。
これまでも幾度と無く戦場を共にし、アダムの力量はわかっている。本気で勝ちに行くなら、それはとても厳しい相手。
(正直なとこ、どうやったら勝てるのかビジョンが浮かばないのよね……でも、アタシの目的のためにも、いつかは打破したいし……負けるなんて嫌だし!)
勝ちたい──っ!!
小さくライカが漏らした言葉が全て。今の全力をぶつけるのだ。
一方のアダム。
(一対一での殴り合いはロマン。とても良く分かる。ヨアヒムさんの意見には僕も賛成だ)
正々堂々の一騎打ち。騎士としてアダムにとって理想とも思える戦いを、日々共に研鑽を重ねてきた自由騎士の皆と行える。アダムにこれほど嬉しい事は無いだろう。
「だけど……、さ」
ポツリと呟くアダム。
──まさか男性が僕しかいないとは思わないじゃないか!!!!
(どこを見渡しても女性、女性……いやジローさんがいる! 男性だ! そこを見よう!)
唐突にジローに熱い視線を来るアダム。見つめられたジローもどうしていいかわからない。
(バカバカバカ! 僕のバカ! 慌てすぎだぞしっかりしろ。これは訓練。そう訓練だ! 相手は自由騎士の仲でもトップクラスの実力者ばかりじゃないか)
アダムは両頬をぱちんと叩くと改めて目の前に立つ対戦相手を見る。相手は確かに女性。だが胸を借りるべき同士であり、同じ騎士なのだ。
「自由騎士アダム・クランプトン!我が全てを以てお相手しよう」
高らかと名乗りを上げるアダム。そしてそれに呼応するように構えを見せるライカ。
疾風の刃と堅固なる盾の戦いが今始まった。
「勝つ! それだけよ」
先手を取ったのはスピードに勝るライカ。反応速度で大きく勝るライカの刃はアダムの1動作ごとに2度、その牙を剝く。
「ハァーーー!!!」
ライカが影狼で一気にアダムの懐へ飛び込み、更に追撃の拳を見舞うと、ライカの籠手とアダムの装甲が火花を散らす。
速度域の違いはわかっていた。アダムは初撃は受ける事を前提に柳凪でその身を更に固める。
戦いが始まって数十秒の間にライカが感じた事。それは改めて実感するアダムの強さ。
(ああもう、避けるし硬いし攻撃力はあるし! こっちの攻撃が全然通らないんだけど!?)
反応速度と回避力に勝るライカはアダムの攻撃を避けながら攻撃を作り出していくのだが──生半可な攻撃ではダメージすら与えられない。無防備を作れるショック効果もアダムの高い回避能力に阻まれ、なかなか効果を発揮できない。
(とにかく攻める姿勢を崩さずに隙を作り出し、クリティカルな一撃に賭ける!)
ライカは手数の中にその活路を見出そうとしていた。
一方のアダム。その防御力と回避能力、更には柳凪の効果もあり、受けるダメージは少ないものの、息もつかさぬライカの攻撃に責めあぐねていた。無論アダムを受けるばかりではない。ライカが深く踏み込んできた際には、カウンターを狙うように盾の一撃を狙っている。だが、ライカの強化された回避能力の前にはアダムの高命中の盾の突進をもってしてもライカを捉えきれない。攻撃をするりとかわすとライカは間髪いれずに攻撃を放ってくるのだ。
(これは一瞬たりとも気が抜けないぞ……)
ライカは2度行動できる優位性を最大限に活用し、影狼や移動を巧みに利用しヒット&アウェーを繰り返す。アダムもまたそんなライカの攻撃を冷静に見極め、一瞬の隙を探す。
そして状況が大きく動いたのは試合終了間際。殆どの攻撃を避けながらもアダムの重い一撃を2度その身に受けていたライカ。このままではアダムの体力を削りきれ無いと考えたライカが、己が必殺を打ち込むべく、アダムの懐に深く飛び込んだ時だった。
「これが今のアタシの全力よ!!」
血心一閃【絶神】。神をも殺す決意を持って放たれるライカの一撃はアダムの強固な鎧をも貫く。
「ぐっ!?」
苦悶の声を上げるアダム。だが。
「ライカさん。貴女の速度域、今の僕では目で追うのがやっとだった。でも……捕まえた」
ライカの打ち込んだ腕を掴んだアダム。この状態ではさしものライカの回避能力も発揮する事は敵わない。
そしてアダムが超至近距離から放った防御力すら無効化するその攻撃は残るライカの体力を奪い去ったのだった。
「キミ……ちゃんと本気でやった?」
「もちろん。自由騎士相手に手加減なんて出来るはずも無いさ」
「本気でやったなら……まぁいいか。お疲れ様。はぁ、キミは本当に強いわねぇ……」
そう言うとライカは悔しそうな表情を滲ませた。
アダムは全身に鈍い痛みを感じながら戦いを振り返る。もしライカさんが制限時間を気にして焦りを抱かなければ。あのままつかず離れずの攻撃と回避を続けられていたならば。倒れていたのは自分だったかもしれない。ライカの拳は確実にアダムを寸前のところまで追い詰めていたのだ。
(今回はルールが勝敗を決めた。……僕はまだまだ強くならなければ)
アダムは更なる研鑽を改めて誓う。
こうして第1戦は幕を閉じた。
●格闘家 VS 格闘家
「れんしゅー試合! そういうのもいいよね!」
『伝承者』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は体を伸ばしながら戦いに備える。
いつもの生死を賭けた戦いとは違い、日ごろ互いに協力しあう仲間との真剣勝負。それに相手は同じ格闘技の使い手で自身も認める実力者。楽しまないとね──カーミラが滾らぬはずも無かった。
この対戦が決まる少し前。
「自由騎士で組手? へぇ、面白そうね」
軽い気持ちで参加した『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)だったのだが。
「で、私のお相手はだれなの?」
「私だー!!」
そこに現れたのはやる気満々のカーミラ。
(ブハーッ!!)
思わず噴出すエルシー。
「カーミラさん!?」
(え、え-! カーミラさんといえば、自由騎士トップクラスのパワーを誇る最強の元気娘じゃないっ。……気を抜いたら、命の保証はないわね……私)
こんなやり取りも交えつつ、2人は格闘家同士として相見える事となったのである。
「よろしくね」
エルシーがカーミラと握手を交わす。
「それじゃいくよ」
カーミラが小石を拾って空高く放り投げる。地面に落ちた瞬間が開始の合図だ。
「「はぁぁぁーーーーー!!」」
開始と同時に2人が行ったのは自己強化。カーミラが龍氣螺合で命中力を高めるとエルシーは柳凪で耐久力を高める。
(エルシーは脚が速いからね! 何より命中力をアップしないと!)
(パワーとタフネスはカーミラさんが上。ならばダメージを少しでも軽減しないと!)
攻撃と防御。それぞれが己が長所と相手を理解し、最善の手を打つ。
そして始まったのは──超至近距離での技と技のぶつかりあい。両者ともに必殺の間合いで繰り出される幾十の拳撃や足技。
「くらえーーっ!!」
出し惜しみなどしない。そう決めたカーミラが早い段階で放ったのは絶拳。今はなきレオナルトから受け取った技。
だが、命中精度低めのその技は、相手が回避能力の高いエルシーという事も相成って空を切る。
「……あぶなかっ──うっ」
エルシーの右上腕に鈍い痛みが走る。絶拳の攻撃範囲は拳1つの攻撃とは思えぬほどに広い。完全に避けたつもりだったが、エルシーを僅かに捉えていたのだ。
(かすっただけでこの威力……大技を出す隙は与えられないわね!)
その後スピードとリーチに勝るエルシーはその手数でカーミラを圧倒する。だが対するカーミラもまた高めた命中力を武器にその重い一撃一撃を、エルシーへと繰り出していく。
「ハァァァァ-!!」
エルシーの軽く舞うようなステップの中で見せる数々の手技足技。
「うぉーーー!! どっせーい!」
頭突きや突進など、その小柄な見た目からは想像も出来ないような猛り狂う闘牛が如き攻撃でエルシーに迫るカーミラ。
戦法は違えども両者一歩もひかない戦いは続く中、徐々にその均衡は破られていく。
エルシーが行ったのはあえての速度域コントロール。完全な先手を取らず相手の攻撃にあわせるように自らも攻撃し、リーチの差を活かす戦法をとったのだ。どうしても先に攻撃を受ける事になるカーミラ。そのため自身の攻撃に載せた威力を100%エルシーに与えきれない情況を作られてしまう。
だがカーミラがこのまま終わるはずも無い。直接戦って改めてその身に感じたエルシーという存在、情報をこの戦いの僅かな時間の中で冷静に見極めていく。そしてスピードの違い、リーチの違い──相手の優位性に逆に利用する方法にたどり着く。
エルシーが打ち込んできた拳をぎりぎりで避けると、そのまま低い体勢で懐に潜り込む。
「えっ!?」
エルシーにはカーミラが一瞬消えたようにも感じたかもしれない。
「ぅおりゃー!」
そしてカミーラが放ったのは投げ技。エルシーの腰の辺りをぐわしと掴み全力で投げたのだ。
「クハッ!!」
思いもよらぬ攻撃に一瞬受身が遅れたエルシー。激しく地面に叩きつけられる。
だが、カーミラもまたその一瞬の隙をつくまでに受けたダメージは甚大。追撃は出来ず息を整えるので精一杯の状況だった。
「ハァ……ハァ……」
(やっぱりすごいわ。カーミラさんリーチの差を逆に利用するなんて……っ)
お互いの手の内は見せあった。あとは死力を出し尽くすのみ。
「うぉぉぉぉぉおおおおお」
カーミラが気力を振り絞る。
「穆王八駿!!!!」
瞬時に移動し、エルシーの視界から僅かに外れると、空中二段飛びで高く空中に飛び上がる空からの奇襲攻撃だ。
(早い!? 避けきれないっ!!)
エルシーは咄嗟に両腕を交差させ防御行動をとる。
「うぉぉっぉぉぉーーーー」
蹴り上げた脚を渾身の力で振り下ろしたカーミラ。どぉんと大きな衝撃音と共に土ぼこりが舞う。
「はぁ……はぁ……」
「う……くっ……」
両者共にすでに満身創痍。次の一撃で勝負は決まる──先に動いたのはエルシー。握り締めた拳に全ての気持ちを乗せる。
(きっとカーミラさんはあの技で来るっ)
「うぉぉぉぉーーーー!! 緋色の衝撃ぉぉぉぉぉぉぉーーー!!!」
エルシーの放つ拳に相対するのはカーミラもまた強い気持ちで固めた拳──絶拳。
2人の拳は交差し、互いを貫く。
「これが……レオナルトの真の──」
「……私の勝──」
言葉途中で力尽きたエルシーとカーミラ。地面に突っ伏し荒い息を吐く。だがその表情はどこか穏やかで満足げだった。
「この際だから言っておくけれど、私が自由騎士になったとき、格闘スタイルのお手本にした人達がいるのよ。その中の1人は……カーミラさんだから」
エルシーがそういうとカーミラは少し驚いた顔をする。
「そういえばその籠手、あの洞窟で拾ったヤツだよね。喰らう側になったのは初めてだけど……やっぱりすごいね! でも私のガントレットだって負けてないぞっ」
照れくさかったのかもしれない。カーミラは話題を変えると自身の使い込まれたガントレットを誇らしげに掲げる。
そんなカーミラを見ながらエルシーもまた自身の籠手を慈しむ仕草を見せた。
同じ格闘家として高めあう2人の研鑽はきっとこれからも続くのだろう。
●超重 VS 鉄壁
キリ・カーレント(CL3000547)と『柔和と重厚』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)の試合は、その実力差を鑑み特殊ルールが加えられた。
「それでは私は偶数ターンのみ行動しますね」
「すみません、このような形をとっていただいて。ご迷惑おかけします」
ぺこりと頭を下げるキリといえいえ~と微笑むアンジェリカ。
(キリに胸を貸してくれる方は、経験も地力も遥かに上の綺麗で素敵なシスターのアンジェリカさん)
キリは自ら頬をぱちんと叩くと気合を入れる。
「よろしくお願いします!」
「では参りましょう。さあ、キリ様の持ち得る全てを私へ叩き込んで下さい。私も、それら全てを全力で受け取りましょう」
穏やかに微笑むアンジェリカ。こうして試合は始まる。
初手。動くのはキリのみ。先ずは自己強化が定石であるところだが──。
(初手はスティールハイ。……と見せかけて!)
キリが放ったのはにんじんソード Lv1。まるで人参のように緑から橙へ変化する光刃が放たれる。
防御に徹するアンジェリカに命中。その身にパラライズの効果を与えることに成功する。
(定石なんて関係ない! これがどんなときでも諦めず這い蹲ってでも生きてきたキリの戦い方。小物と思われていい。だって……事実だもの)
実力差は承知の上。だからといってキリは勝利を諦めたりはしない。純粋な攻撃力や経験以外にも武器はきっとあるのだから。
次のターン、キリはその防御を少しでも高めんとスティールハイを使用する。アンジェリカは付与された状態異常により行動できないでいた。
「あらあら……」
未だ行動できないアンジェリカにキリは先ずは正面から切りかかる。ガキィンと大きな金属音がして、キリのサーベルはアンジェリカの持つ巨大な十字架にその攻撃を阻まれる。
(やっぱり正面からじゃ無理だよね……)
穏やかな微笑を崩さないアンジェリカは速度域の違いを発揮し、柳凪とオーバーロードを連続で掛けると万全の防御体制を構成した。
(あの技は……確かダメージ軽減と……体力回復っ!?)
「それではいきますよ」
ここからの戦いは正確には試合ではない。
実力差を考えればこの特殊ルールであってもキリには成す術は無いのは明白だった。キリの最大の攻撃をもってしてもアンジェリカには殆ど攻撃は通らないのだから。
だが、攻撃が効かない相手に対峙する事は無意味であろうか、否。これは敵との戦いではない。相手は仲間なのだ。キリにしてみれば攻撃が通じないからこそ何が出来るのか。それを考え、行動し、経験とする最大のチャンスに違いないのだ。
「しっかり防御してくださいね」
キリの攻撃2回に一度、アンジェリカが振り下ろす超重の攻撃は重く、深く、全力の防御を持って望むキリの体の芯を貫くような衝撃を与える。幾度と無くその威力に圧倒され、次第にぼろぼろになっていくキリ。
だが倒されても倒されてもその目は光を失わず、何度でも立ち上がる。
キリは学んでいる。一つ一つの攻撃から。少しでも多くを学びたい。その気持ちがキリを突き動かす。
(力加減はしていますが……)
アンジェリカは驚きを隠せずにいた。これは模擬戦であり、訓練と考えていたアンジェリカは確かにキリが少しでも経験を積める様にと攻撃を加減し、防御しやすい角度で打ち込んでいた。
だが、それでもここまで打ち込まれれば心折られてもおかしくは無いはず。けれどもキリにその様子は微塵も感じられないのだ。
攻撃を防御し、その度に傷つき、倒れても歯を食いしばり立ち上がる。そして、ダメージは殆ど与えられないと知りつつも、その場にあるものは何でも利用し攻撃を行うキリ。砂を蹴り上げ、小石を投げ、凡そ正々堂々とはかけ離れた行動をしながら少しでもアンジェリカの気を引き、隙と動揺を引きずりだそうとする。
(全部通じなくたって……絶対に諦めない!!)
どのような状況でも諦めない──それを体現するように幾度と無く立ち上がるキリの姿にその場にいる全ての者達は目を離せずにいた。
(これは……本気を出さねば逆に失礼ですね)
アンジェリカがキリに話しかける。
「これから貴方へ振るう一撃は私の必殺。それを受け止める覚悟はおありですか」
服もボロボロで体中傷だらけ。流れる鼻血も拭わずにキリは……もちろん、と笑った。
天穿つ喝采の一撃──
決着。
キリが目を開けるとそこにはいつものように穏やかに微笑むアンジェリカの姿があった。どうやら気絶してしまったようだ。
(負けちゃったかぁ……)
「全力でしたよ。私も」
キリは穏やかに微笑むアンジェリカに抱きつきたい衝動を抑えながらこう言った。
「えと、その、握手して頂けますか」
こうして最後の模擬戦は幕を閉じたのであった。
●
「うむうむ、どれも正々堂々と良い勝負じゃったのう!」
模擬戦を終えた自由騎士達を癒す見学者の姿もある。
「皆さん今日はありがとうございました!」
深々とお辞儀をしたのはキリ。
「頑張ってたわね。どんな状況であれ勝利に対して貪欲な姿勢。嫌いじゃないわ」
アンジェリカとの試合を見ていたエルシーがキリに話しかける。他の皆もキリの健闘を称える。
(先輩の皆さん達はやっぱりすごい……その背中はまだまだ遠くて……)
自身の試合までの間、他の試合を食い入るような目で見ていたキリ。握られたメモ帳には細かい字でびっしりとその戦いの様子や気付いた事がメモされている。それは先輩達の戦いの中からも一つでも多くの事を学ぼうとするキリの弛まぬ向上心そのもの。
(でもキリもいつかその背中に追いついて……肩を並べられるようになりたいです……)
その努力はきっといつか実を結ぶことだろう。
そして……模擬戦後のアクア神殿。
そこにはアクアディーネに慰めてもらうライカの姿があったという。
「うむ、激しいぶつかり合いが予想されるのう!」
見学に来た自由騎士は模擬戦の開始を心待ちにしていた。
自由騎士同士の戦いがいよいよ始まる──。
●疾風 VS 万能
(アタシが女だとか考えないことね──)
『機刃の竜乙女』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)は、目の前で少し動揺を見せる『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)を鋭い眼差しで見つめていた。
これまでも幾度と無く戦場を共にし、アダムの力量はわかっている。本気で勝ちに行くなら、それはとても厳しい相手。
(正直なとこ、どうやったら勝てるのかビジョンが浮かばないのよね……でも、アタシの目的のためにも、いつかは打破したいし……負けるなんて嫌だし!)
勝ちたい──っ!!
小さくライカが漏らした言葉が全て。今の全力をぶつけるのだ。
一方のアダム。
(一対一での殴り合いはロマン。とても良く分かる。ヨアヒムさんの意見には僕も賛成だ)
正々堂々の一騎打ち。騎士としてアダムにとって理想とも思える戦いを、日々共に研鑽を重ねてきた自由騎士の皆と行える。アダムにこれほど嬉しい事は無いだろう。
「だけど……、さ」
ポツリと呟くアダム。
──まさか男性が僕しかいないとは思わないじゃないか!!!!
(どこを見渡しても女性、女性……いやジローさんがいる! 男性だ! そこを見よう!)
唐突にジローに熱い視線を来るアダム。見つめられたジローもどうしていいかわからない。
(バカバカバカ! 僕のバカ! 慌てすぎだぞしっかりしろ。これは訓練。そう訓練だ! 相手は自由騎士の仲でもトップクラスの実力者ばかりじゃないか)
アダムは両頬をぱちんと叩くと改めて目の前に立つ対戦相手を見る。相手は確かに女性。だが胸を借りるべき同士であり、同じ騎士なのだ。
「自由騎士アダム・クランプトン!我が全てを以てお相手しよう」
高らかと名乗りを上げるアダム。そしてそれに呼応するように構えを見せるライカ。
疾風の刃と堅固なる盾の戦いが今始まった。
「勝つ! それだけよ」
先手を取ったのはスピードに勝るライカ。反応速度で大きく勝るライカの刃はアダムの1動作ごとに2度、その牙を剝く。
「ハァーーー!!!」
ライカが影狼で一気にアダムの懐へ飛び込み、更に追撃の拳を見舞うと、ライカの籠手とアダムの装甲が火花を散らす。
速度域の違いはわかっていた。アダムは初撃は受ける事を前提に柳凪でその身を更に固める。
戦いが始まって数十秒の間にライカが感じた事。それは改めて実感するアダムの強さ。
(ああもう、避けるし硬いし攻撃力はあるし! こっちの攻撃が全然通らないんだけど!?)
反応速度と回避力に勝るライカはアダムの攻撃を避けながら攻撃を作り出していくのだが──生半可な攻撃ではダメージすら与えられない。無防備を作れるショック効果もアダムの高い回避能力に阻まれ、なかなか効果を発揮できない。
(とにかく攻める姿勢を崩さずに隙を作り出し、クリティカルな一撃に賭ける!)
ライカは手数の中にその活路を見出そうとしていた。
一方のアダム。その防御力と回避能力、更には柳凪の効果もあり、受けるダメージは少ないものの、息もつかさぬライカの攻撃に責めあぐねていた。無論アダムを受けるばかりではない。ライカが深く踏み込んできた際には、カウンターを狙うように盾の一撃を狙っている。だが、ライカの強化された回避能力の前にはアダムの高命中の盾の突進をもってしてもライカを捉えきれない。攻撃をするりとかわすとライカは間髪いれずに攻撃を放ってくるのだ。
(これは一瞬たりとも気が抜けないぞ……)
ライカは2度行動できる優位性を最大限に活用し、影狼や移動を巧みに利用しヒット&アウェーを繰り返す。アダムもまたそんなライカの攻撃を冷静に見極め、一瞬の隙を探す。
そして状況が大きく動いたのは試合終了間際。殆どの攻撃を避けながらもアダムの重い一撃を2度その身に受けていたライカ。このままではアダムの体力を削りきれ無いと考えたライカが、己が必殺を打ち込むべく、アダムの懐に深く飛び込んだ時だった。
「これが今のアタシの全力よ!!」
血心一閃【絶神】。神をも殺す決意を持って放たれるライカの一撃はアダムの強固な鎧をも貫く。
「ぐっ!?」
苦悶の声を上げるアダム。だが。
「ライカさん。貴女の速度域、今の僕では目で追うのがやっとだった。でも……捕まえた」
ライカの打ち込んだ腕を掴んだアダム。この状態ではさしものライカの回避能力も発揮する事は敵わない。
そしてアダムが超至近距離から放った防御力すら無効化するその攻撃は残るライカの体力を奪い去ったのだった。
「キミ……ちゃんと本気でやった?」
「もちろん。自由騎士相手に手加減なんて出来るはずも無いさ」
「本気でやったなら……まぁいいか。お疲れ様。はぁ、キミは本当に強いわねぇ……」
そう言うとライカは悔しそうな表情を滲ませた。
アダムは全身に鈍い痛みを感じながら戦いを振り返る。もしライカさんが制限時間を気にして焦りを抱かなければ。あのままつかず離れずの攻撃と回避を続けられていたならば。倒れていたのは自分だったかもしれない。ライカの拳は確実にアダムを寸前のところまで追い詰めていたのだ。
(今回はルールが勝敗を決めた。……僕はまだまだ強くならなければ)
アダムは更なる研鑽を改めて誓う。
こうして第1戦は幕を閉じた。
●格闘家 VS 格闘家
「れんしゅー試合! そういうのもいいよね!」
『伝承者』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は体を伸ばしながら戦いに備える。
いつもの生死を賭けた戦いとは違い、日ごろ互いに協力しあう仲間との真剣勝負。それに相手は同じ格闘技の使い手で自身も認める実力者。楽しまないとね──カーミラが滾らぬはずも無かった。
この対戦が決まる少し前。
「自由騎士で組手? へぇ、面白そうね」
軽い気持ちで参加した『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)だったのだが。
「で、私のお相手はだれなの?」
「私だー!!」
そこに現れたのはやる気満々のカーミラ。
(ブハーッ!!)
思わず噴出すエルシー。
「カーミラさん!?」
(え、え-! カーミラさんといえば、自由騎士トップクラスのパワーを誇る最強の元気娘じゃないっ。……気を抜いたら、命の保証はないわね……私)
こんなやり取りも交えつつ、2人は格闘家同士として相見える事となったのである。
「よろしくね」
エルシーがカーミラと握手を交わす。
「それじゃいくよ」
カーミラが小石を拾って空高く放り投げる。地面に落ちた瞬間が開始の合図だ。
「「はぁぁぁーーーーー!!」」
開始と同時に2人が行ったのは自己強化。カーミラが龍氣螺合で命中力を高めるとエルシーは柳凪で耐久力を高める。
(エルシーは脚が速いからね! 何より命中力をアップしないと!)
(パワーとタフネスはカーミラさんが上。ならばダメージを少しでも軽減しないと!)
攻撃と防御。それぞれが己が長所と相手を理解し、最善の手を打つ。
そして始まったのは──超至近距離での技と技のぶつかりあい。両者ともに必殺の間合いで繰り出される幾十の拳撃や足技。
「くらえーーっ!!」
出し惜しみなどしない。そう決めたカーミラが早い段階で放ったのは絶拳。今はなきレオナルトから受け取った技。
だが、命中精度低めのその技は、相手が回避能力の高いエルシーという事も相成って空を切る。
「……あぶなかっ──うっ」
エルシーの右上腕に鈍い痛みが走る。絶拳の攻撃範囲は拳1つの攻撃とは思えぬほどに広い。完全に避けたつもりだったが、エルシーを僅かに捉えていたのだ。
(かすっただけでこの威力……大技を出す隙は与えられないわね!)
その後スピードとリーチに勝るエルシーはその手数でカーミラを圧倒する。だが対するカーミラもまた高めた命中力を武器にその重い一撃一撃を、エルシーへと繰り出していく。
「ハァァァァ-!!」
エルシーの軽く舞うようなステップの中で見せる数々の手技足技。
「うぉーーー!! どっせーい!」
頭突きや突進など、その小柄な見た目からは想像も出来ないような猛り狂う闘牛が如き攻撃でエルシーに迫るカーミラ。
戦法は違えども両者一歩もひかない戦いは続く中、徐々にその均衡は破られていく。
エルシーが行ったのはあえての速度域コントロール。完全な先手を取らず相手の攻撃にあわせるように自らも攻撃し、リーチの差を活かす戦法をとったのだ。どうしても先に攻撃を受ける事になるカーミラ。そのため自身の攻撃に載せた威力を100%エルシーに与えきれない情況を作られてしまう。
だがカーミラがこのまま終わるはずも無い。直接戦って改めてその身に感じたエルシーという存在、情報をこの戦いの僅かな時間の中で冷静に見極めていく。そしてスピードの違い、リーチの違い──相手の優位性に逆に利用する方法にたどり着く。
エルシーが打ち込んできた拳をぎりぎりで避けると、そのまま低い体勢で懐に潜り込む。
「えっ!?」
エルシーにはカーミラが一瞬消えたようにも感じたかもしれない。
「ぅおりゃー!」
そしてカミーラが放ったのは投げ技。エルシーの腰の辺りをぐわしと掴み全力で投げたのだ。
「クハッ!!」
思いもよらぬ攻撃に一瞬受身が遅れたエルシー。激しく地面に叩きつけられる。
だが、カーミラもまたその一瞬の隙をつくまでに受けたダメージは甚大。追撃は出来ず息を整えるので精一杯の状況だった。
「ハァ……ハァ……」
(やっぱりすごいわ。カーミラさんリーチの差を逆に利用するなんて……っ)
お互いの手の内は見せあった。あとは死力を出し尽くすのみ。
「うぉぉぉぉぉおおおおお」
カーミラが気力を振り絞る。
「穆王八駿!!!!」
瞬時に移動し、エルシーの視界から僅かに外れると、空中二段飛びで高く空中に飛び上がる空からの奇襲攻撃だ。
(早い!? 避けきれないっ!!)
エルシーは咄嗟に両腕を交差させ防御行動をとる。
「うぉぉっぉぉぉーーーー」
蹴り上げた脚を渾身の力で振り下ろしたカーミラ。どぉんと大きな衝撃音と共に土ぼこりが舞う。
「はぁ……はぁ……」
「う……くっ……」
両者共にすでに満身創痍。次の一撃で勝負は決まる──先に動いたのはエルシー。握り締めた拳に全ての気持ちを乗せる。
(きっとカーミラさんはあの技で来るっ)
「うぉぉぉぉーーーー!! 緋色の衝撃ぉぉぉぉぉぉぉーーー!!!」
エルシーの放つ拳に相対するのはカーミラもまた強い気持ちで固めた拳──絶拳。
2人の拳は交差し、互いを貫く。
「これが……レオナルトの真の──」
「……私の勝──」
言葉途中で力尽きたエルシーとカーミラ。地面に突っ伏し荒い息を吐く。だがその表情はどこか穏やかで満足げだった。
「この際だから言っておくけれど、私が自由騎士になったとき、格闘スタイルのお手本にした人達がいるのよ。その中の1人は……カーミラさんだから」
エルシーがそういうとカーミラは少し驚いた顔をする。
「そういえばその籠手、あの洞窟で拾ったヤツだよね。喰らう側になったのは初めてだけど……やっぱりすごいね! でも私のガントレットだって負けてないぞっ」
照れくさかったのかもしれない。カーミラは話題を変えると自身の使い込まれたガントレットを誇らしげに掲げる。
そんなカーミラを見ながらエルシーもまた自身の籠手を慈しむ仕草を見せた。
同じ格闘家として高めあう2人の研鑽はきっとこれからも続くのだろう。
●超重 VS 鉄壁
キリ・カーレント(CL3000547)と『柔和と重厚』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)の試合は、その実力差を鑑み特殊ルールが加えられた。
「それでは私は偶数ターンのみ行動しますね」
「すみません、このような形をとっていただいて。ご迷惑おかけします」
ぺこりと頭を下げるキリといえいえ~と微笑むアンジェリカ。
(キリに胸を貸してくれる方は、経験も地力も遥かに上の綺麗で素敵なシスターのアンジェリカさん)
キリは自ら頬をぱちんと叩くと気合を入れる。
「よろしくお願いします!」
「では参りましょう。さあ、キリ様の持ち得る全てを私へ叩き込んで下さい。私も、それら全てを全力で受け取りましょう」
穏やかに微笑むアンジェリカ。こうして試合は始まる。
初手。動くのはキリのみ。先ずは自己強化が定石であるところだが──。
(初手はスティールハイ。……と見せかけて!)
キリが放ったのはにんじんソード Lv1。まるで人参のように緑から橙へ変化する光刃が放たれる。
防御に徹するアンジェリカに命中。その身にパラライズの効果を与えることに成功する。
(定石なんて関係ない! これがどんなときでも諦めず這い蹲ってでも生きてきたキリの戦い方。小物と思われていい。だって……事実だもの)
実力差は承知の上。だからといってキリは勝利を諦めたりはしない。純粋な攻撃力や経験以外にも武器はきっとあるのだから。
次のターン、キリはその防御を少しでも高めんとスティールハイを使用する。アンジェリカは付与された状態異常により行動できないでいた。
「あらあら……」
未だ行動できないアンジェリカにキリは先ずは正面から切りかかる。ガキィンと大きな金属音がして、キリのサーベルはアンジェリカの持つ巨大な十字架にその攻撃を阻まれる。
(やっぱり正面からじゃ無理だよね……)
穏やかな微笑を崩さないアンジェリカは速度域の違いを発揮し、柳凪とオーバーロードを連続で掛けると万全の防御体制を構成した。
(あの技は……確かダメージ軽減と……体力回復っ!?)
「それではいきますよ」
ここからの戦いは正確には試合ではない。
実力差を考えればこの特殊ルールであってもキリには成す術は無いのは明白だった。キリの最大の攻撃をもってしてもアンジェリカには殆ど攻撃は通らないのだから。
だが、攻撃が効かない相手に対峙する事は無意味であろうか、否。これは敵との戦いではない。相手は仲間なのだ。キリにしてみれば攻撃が通じないからこそ何が出来るのか。それを考え、行動し、経験とする最大のチャンスに違いないのだ。
「しっかり防御してくださいね」
キリの攻撃2回に一度、アンジェリカが振り下ろす超重の攻撃は重く、深く、全力の防御を持って望むキリの体の芯を貫くような衝撃を与える。幾度と無くその威力に圧倒され、次第にぼろぼろになっていくキリ。
だが倒されても倒されてもその目は光を失わず、何度でも立ち上がる。
キリは学んでいる。一つ一つの攻撃から。少しでも多くを学びたい。その気持ちがキリを突き動かす。
(力加減はしていますが……)
アンジェリカは驚きを隠せずにいた。これは模擬戦であり、訓練と考えていたアンジェリカは確かにキリが少しでも経験を積める様にと攻撃を加減し、防御しやすい角度で打ち込んでいた。
だが、それでもここまで打ち込まれれば心折られてもおかしくは無いはず。けれどもキリにその様子は微塵も感じられないのだ。
攻撃を防御し、その度に傷つき、倒れても歯を食いしばり立ち上がる。そして、ダメージは殆ど与えられないと知りつつも、その場にあるものは何でも利用し攻撃を行うキリ。砂を蹴り上げ、小石を投げ、凡そ正々堂々とはかけ離れた行動をしながら少しでもアンジェリカの気を引き、隙と動揺を引きずりだそうとする。
(全部通じなくたって……絶対に諦めない!!)
どのような状況でも諦めない──それを体現するように幾度と無く立ち上がるキリの姿にその場にいる全ての者達は目を離せずにいた。
(これは……本気を出さねば逆に失礼ですね)
アンジェリカがキリに話しかける。
「これから貴方へ振るう一撃は私の必殺。それを受け止める覚悟はおありですか」
服もボロボロで体中傷だらけ。流れる鼻血も拭わずにキリは……もちろん、と笑った。
天穿つ喝采の一撃──
決着。
キリが目を開けるとそこにはいつものように穏やかに微笑むアンジェリカの姿があった。どうやら気絶してしまったようだ。
(負けちゃったかぁ……)
「全力でしたよ。私も」
キリは穏やかに微笑むアンジェリカに抱きつきたい衝動を抑えながらこう言った。
「えと、その、握手して頂けますか」
こうして最後の模擬戦は幕を閉じたのであった。
●
「うむうむ、どれも正々堂々と良い勝負じゃったのう!」
模擬戦を終えた自由騎士達を癒す見学者の姿もある。
「皆さん今日はありがとうございました!」
深々とお辞儀をしたのはキリ。
「頑張ってたわね。どんな状況であれ勝利に対して貪欲な姿勢。嫌いじゃないわ」
アンジェリカとの試合を見ていたエルシーがキリに話しかける。他の皆もキリの健闘を称える。
(先輩の皆さん達はやっぱりすごい……その背中はまだまだ遠くて……)
自身の試合までの間、他の試合を食い入るような目で見ていたキリ。握られたメモ帳には細かい字でびっしりとその戦いの様子や気付いた事がメモされている。それは先輩達の戦いの中からも一つでも多くの事を学ぼうとするキリの弛まぬ向上心そのもの。
(でもキリもいつかその背中に追いついて……肩を並べられるようになりたいです……)
その努力はきっといつか実を結ぶことだろう。
そして……模擬戦後のアクア神殿。
そこにはアクアディーネに慰めてもらうライカの姿があったという。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
模擬戦いかがだったでしょうか。
文字数が足りずジローによる実況中継は割愛となりました。
「知っているのか!! 雷○!!」
MVPは貴女へ。弛まぬ向上心はきっと次の結果を生みます。
ご参加ありがとうございました。
文字数が足りずジローによる実況中継は割愛となりました。
「知っているのか!! 雷○!!」
MVPは貴女へ。弛まぬ向上心はきっと次の結果を生みます。
ご参加ありがとうございました。
FL送付済