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【闇より還ルもの】その名も高き岩石ペトロ




「その名も高き岩石ペトロ。
 気は優しくて一騎当千。
 お馬を狩って突っ込めば、たちまち敵ははじけ飛ぶ。
 大きな体に分厚い鎧。
 お馬は重くて千鳥足。大きな剣を振り回す。
 その名も高き岩石ペドロ
 お馬がへばってあの世行き」


「未曽有の事態である。諸君。常々、諸君に言い聞かせていた。還リビトに意思はない。しかし、諸君。世界は激動している。今後、発生した還リビトには意思があると断じざるを得ない。」
 『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)のモノクルの照り返しがまぶしい。
「諸君らには、過去の英霊と対峙してもらうことになる。彼らは今も国を守ろうとしてくれているのだ。ただ――今の我々が彼らにとっては『同じ国民に思えぬ輩』と扱われるだけで」
 死人にとって、生者とは異質なものである。
「というわけで、岩石ペドロだ。諸君らもしたことがあるだろう。砂山の上に石を乗せて少しづつ砂をかき取っていく遊びを」
 砂山が千鳥足の馬で、石がペトロだ。
 ペトロを馬から転げ落としたものの負け。
「ペトロは死んだ馬に乗って現れる。ペトロ自体は非常に強固な存在だが、馬は――名馬と言っても馬だ。足元から攻めてくれたまえ。史実通りに。実績は大事だからな」
 岩石ペトロは落馬したところを敵の一軍に襲われ命を落とした。まともに攻撃しても勝ち目はない。落馬したところをたこ殴りにするのだ、動かなくなるまで何度でも。
 そして。と、宰相閣下は言う。
「もちろん、一筋縄ではいかない。諸君らの行く手を死してなお忠実な彼の部下が阻むだろう。肉を持たぬ霞のような存在だが、それ故に厄介と思ってほしい。魔法使いの諸君の奮闘に期待する」
 力押し一辺倒とはいかないようだ。
「嵐のようなペトロの攻撃を耐え忍び、ここぞとばかりに反撃する形になる。耐久戦が予想される。できるだけ多くの機会と効果的な攻撃が結果として諸君らを救うだろう」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
田奈アガサ
■成功条件
1.岩石ペトロと配下の浄化

 田奈です。
 パワーファイターな還リビトに立ち向かっていただきます。

*岩石ペトロ
 重戦士として子供の遊び歌になる程有名でした。
 愛嬌があり、人気もあり、彼のは科には今でも花がたむけられます。
 戦闘では、重戦士として皆さんの隊列を蹴散らそうとするでしょう。
 大変頑健です。

*ペトロの愛馬
 死んでいる馬です。馬鎧を装備していますので頑丈ですが足元がおぼつきません。死んでいるので、転倒してもすぐに復帰します。

*ペトロの部下×3
 透けている煙のような存在です。肉体を失い剣を持てなくなった皆さんに緋文字を書き込んでいくことでしょう。

*環境
 昼。平坦な草原。遮蔽物もありません。
 向こうも逃げ隠れ出来ませんが、皆さんにも逃げ隠れする場所はありません。
 
 この共通タグ【闇より還ルもの】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません。
 すべての依頼の成否によって、決戦の結果に影響を及ぼします。
 倒しきれなかった敵は決戦のカタコンベに集合することになります。
状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
20モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2018年08月14日

†メイン参加者 8人†




『学ぶ道』レベッカ・エルナンデス(CL3000341)は、双眼鏡を目に当て拳を握り締めていた。
 広々とした草原。逃げも隠れもできない領域にポツンと大きな点が見えてきた。
 近づけば、亡霊がその周囲に浮遊しているだろう。
「感情のある還リビト……何が起きているのかはわかりませんけれど、まずは目の前の事態に対処しませんと」
 オラクル達は戦場への移動を開始する。レベッカは双眼鏡をしまった。
「考えるのはあと! 今は行動あるのみですわ!」
 上官の言うことを忠実に遂行するのはよい兵士。その点レベッカは正しい。 
「――決して考えるのが苦手とかそういうのではないんですのよ!」
 そう、考えすぎはよくない。しかし、異口同音でオラクルは言う。
「あの岩石ペトロまでが還ってくるとは……」
 著名な英雄であるが、実際何をしたかを詳しく言えるものは少ないだろう。
 その名も高き岩石ペトロ。
 退却する友軍を守るために殿を務め、押し寄せる敵を阻んで追い返した英雄。
 援軍と共に戻った友軍が発見したのは、王都を攻めるに十分な戦力を保持できず撤退していく敵軍と、ペトロと愛馬の蹂躙された遺体だった。
 敵軍は、イ・ラプセルの戦意を下げるべくペトロの無残な最期を戯れ歌をして流布したが、イ・ラプセルの民はそれを飲みこみ、歌詞を受け入れ、付け加え、遊びにし、英雄と共に愛した。
「遠からん者は音にも聞け、近からんものは目にも見よ。イ・ラプセルのペトロがこれより先にはいかせぬぞ」
 そして、今。
 岩石ペトロが死んだ馬と肉がない部下を伴って、はるか向こうに王都を臨む草原で、オラクルの前に立ちはだかっている。
「あの有名な岩石ペトロの本物に会えるなんてすっごいぞ!」
 サシャ・プニコフ(CL3000122)の頬がばら色だ。
「――って喜んでいる場合じゃないんだぞ。そのまえにやるべきことをちゃんとやるぞ!」
 サシャは、今回の屋台骨だ。オラクルを立たせ続ける役割を担っている。
「田舎の父母には『再来』と褒められ、王都の幼年学校では『さながら』とからかい囃された……気は優しくて万夫不当、今ペトロとはワシのことよ!」
 言い過ぎたと小さく舌を出す『揺れる豊穣の大地』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)の胸にもペトロは住んでいる。
「でもな、だからこそ……許せねーんだよ。なに勝手にイブリースに、還リビトになってんだよ」
 岩石ペトロに負けないくらい厚い鎧を身にまとった『おにくくいたい』マリア・スティール(CL3000004)は語気を荒げる。
「そんな英霊、見たくねーんだよ!」
 マリアも、ペトロの遊び歌を聞いて育ち、孤児院のもっと小さな子に歌って聞かせている。ペトロはマリアの遠くにある星のようなもので、それが落ちてはマリアの立つ瀬がない。
「かつての英雄とはいえ、生者に仇なすと言うのなら、ここで止めなければなりませんね」
 決意を固める『RE:LIGARE』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)とて、ペトロ落としで遊んでいた。
「色々調べてきたんですがね」
 英雄の死にざまを実際見た者はいない。殿部隊は全滅している。あるのは、「人馬一体」となるほど蹂躙され尽くしたペトロの遺体の記録のみだ。残念ながらカスカが調べたかった事柄は断片的にしかわからなかった。
「歌われる死に様を再現するのって、なんか悪趣味だけど、今回ばかりは仕方ないか」
『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)は、得意の横笛ではなくリラを抱えている。戦術的問題の前では大同小異だ。
「衆寡不敵。流石の岩石ペトロも、数には負けるのネ」
 それが史実であり、残留思念の産物である還リビトであるペトロには呪いにも等しいだろう。
 オラクル達とて、敵軍と同じ戦法を選ばざるをえない状況に思うところがない訳ではない。戦術的問題の前には大同小異とわかっているが。
 しかし、確実に止めねばならない。
 死してなおイ・ラプセルを愛している英雄の剣が無辜の民の血で染まることのないように。
 ペトロ落としで子供たちが楽しく遊び続けられるように。
 英雄よ、憂うことなく再び永久の眠りにつけ。


 やるべきことはきちんとやるサシャとルーの詠唱。
 オラクルは、受けた傷を治す力を賦活される。後ろは気にせず前に突っ込む陣形だ。
 見かけによらずいい所のボンボンである『いつかそう言える日まで』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は、父母に手を引かれて岩石ペトロの墓参りをした記憶がある。
 そこには馬とびっくりするほど重装備な騎士が乗っている銅像が立っていた。生前のペトロを偲び、遺品を基に忠実に作られたものだと父は言っていた。
 だからこそ、今、呼吸もせずによどんだ目を向ける馬に乗ったペトロが生前そのままだということがわかる。
「……うむ、早いとこ眠らせてやらんとな」
 そう。やれる。
 あの日仰ぎ見た銅像のモデルを今ここで斬り倒せる!
 己を鼓舞し、大剣をふるう。ほとばしる衝撃が馬の脚にまともにぶつかった。傾ぐ馬。
 が、グイッと地面に接しようとしていた頭が再び前を向く。英雄の手綱さばきは馬上戦闘に特化している。その動作のため、英雄に隙ができた。
 呼吸を整え、予備動作を指の先までいきわたらせたミルトスが馬の前肢の付け根に内より壊す拳をたたき込む。間髪入れない。畳みかける。
「オレ、決めたんだ」
 マリアの全ては黒鉄の機甲の下に。
「アンタを倒して、オレのがもっと強い重戦士だって言いふらしてやる」
 堅い鎧に柔らかな動き。鋼を動かすのは生きているマリアの技だ。
「そんでめちゃくちゃ強くなって、この国を守って、ペトロみたいに歌になってやる!」
 両腕に構えた盾で英雄をかしいだ馬ごと地面に倒して押し潰す。
「アンタも強かったよ、カッコ良かったよって付け加えて貰うからな!」
 歌に歌われるほど高名に、ペトロに連なる重戦士になるのだ。
「基本、馬を狙う予定なんですけどね」
 だが、この好機を見過ごすのは名折れである。
 甲高い破裂音と共にするりと砕ける鞘から産まれるように放たれる、カスカの愛刀・逢瀬切乱丸。
 カスカがこの技を使うたび、しっくりとなじんだ鞘と永久の別れを繰り返す刀だ。
 騎上にあるときは狙うことのかなわない厚いヨロイの隙間も眼前ならば斬り筋に同じ。
 切っ先の加速はそのまま威力となり、地に伏す英雄を襲う。 
「おお、愛馬よ。忠義の相棒よ。私はここに『いる』」
 地に伏したペトロの嘆きは、英雄の最期を知るオラクルの胸を締め付ける。彼は死の間際に叫んだという。
『だというのに、私を置いて逝くというのか!』
 遊びの終わりはその言葉に締めくくられる。敗者はなるたけ愛馬への愛情をこめて言うのがルールだ。その後付け加えられた一説を歌う。
 しかし、変質した還リビトは違うことを言った。
「ゆえに、お前もここにある『べき』だ」
 砂山の砂を再びかき集めるように、死せる馬の曲がった四肢や割られた腹は原型を取り戻し、その上にペドロがさっそうとまたがる。
(何度転ばされても乗馬を続けるのは、生前の記憶や実体験に依る還リビトの本能がそうさせているのか、或いは自らの愛馬への何らかの強い想いがあったのか……)
 カスカの考察は、今後の還リビトとの戦いの中で何中の成果を産むかも知れない。
「どちらにせよ、そういう強い拘りは嫌いじゃないですよ」
 そういって、技を繰り出すたびに新たな逢瀬の相手を求めねばならない愛刀を握り直す。
 オラクル達は、互いに目を交わした。還リビト相手だ。生者の常識は通じない。
 だがこれだけはわかった、馬はペトロが動いている限り何度でもよみがえる。馬に死なれたことで敗北したペトロの「愛馬さえ健在ならば」という残留思念の産物であるがゆえに。


 レベッカの弾丸がいつもと違う音をまとう。
(魔導攻撃はあまり得意ではないのですが……物理攻撃は効かなさそうですし、仕方ありませんわ)
 修道女であるミルトスの周りに亡霊が固まったのは、アクアディーネの慈悲を求めているからだろうか。
 ミルトスに突進する亡霊は助けを求めているようにもレベッカには見える。
「援軍がもっと迅速であったなら」
「敵軍な卑怯な真似をしなかったなら」
「もっと我らに力があったなら」
 ペトロと共に戦い彼を残して散った騎士の亡霊が呪いの血文字を生者に刻もうと飛んでくる。
 突き出された指ごと透き通る腕をレベッカに吹き飛ばされた亡霊が虚ろな目をさまよわせる。
 英雄の「私には忠実な部下がいる」という残留思念に引きずられて現世に引きずり出された亡霊。
 叩きこまれるミルトスの拳は、迷える魂を安寧の楽園に向けさせる。
 滑らかな回避。堕落の緋文字を身に刻むことを許さず、容赦ない拳を繰り出しながら、唇は聖句を紡ぐ。
「行け、汝らは去らしめられる」
 亡霊よ、汝らの戦はとうに終わっている。戦場より離脱せよ。
 拳に宿らせる力を別次元に切り替えることも考えたが、圧倒的な現実の方が「効く」とミルトスは判断した。
 ミルトスには「拳」があり、亡霊には「ない」
 亡霊のために、ルーが氷の柩を誂えた。
「早期撃破ネ。折角の好機を挟撃される手はかなわないヨ」
 念には念を入れて練り上げた龍気が柩の蓋を頑丈に封した。
 英雄に立ち向かってる仲間のための癒しに使う分を勘定に入れている。行商人のコスト管理が戦況を有利に導く。
 なりふり構わないのが前衛の務め。それを支え切るのが後衛の務め。
 ペトロの部隊は支える後衛がいない単科編成だった。そういう時代だったのだ。


「ガチで岩石ペトロと殴り合いしたかったけど、決戦が控えていて、逃げられるかもしんねーんじゃそんな事も言ってらんね」
 マリアの両盾が重い音を立て、たたきつけられた剛剣でシノピリカの左腕から火花が散る。
「ご生害に至った戦法で臨む我らを、さぞ呪っておいでじゃろうが……貴公の国を守ろうとする遺志は我らが受け継ぐ! いや、既に受け継いでおる!」
 馬上の還リビトに聞こえているだろうか。聞く耳を持っているだろうか。
「もはや、貴公の存在その物が王国に仇成してしまっておるのじゃ!」
 もうもうと蒸気を吐き出す鎧装の一撃で馬の腹部が爆発した。
 死んでいなければ倒れていた。死んでいるので立ち上がってくる。
 虎の子の一撃を食らわせても立ち上がってくるモノ達を前にしても、シノピリカは絶望を覚えたりしない。
「――さあ、岩石ペトロよ! 我慢くらべと参ろうか!」
 オラクルは、こみあげてくる血反吐を何度も吐き捨てた。
 ペトロの斬撃は切るのではなく衝撃で中身をぐちゃぐちゃにしてくるのだ。
 めちゃめちゃに吹き飛ばされて、受け身を取り損なえば前後不覚になっているところに丸太のような剛剣が降ってくる。
「うー……中々手強いんだぞ。さすが岩石ペトロなんだぞ。ものすっごく丈夫なんだぞ」
 手足をちぢこませ、ダメージを最小に押さえつつもサシャの顔は痛みに青ざめている。
「それでも少しずつ削っていけばいつかは石も転がり落ちるんだぞ。お遊びの岩石ペトロと同じなんだぞ!」
 サシャの調律したマナが叩きつけられる衝撃で痛んだ内臓を修復し、割られた血肉を修復する。
 支援部隊がぎりぎりまで前進して、前線部隊の下支えに務める。 
 彼らはペトロと刃を交えてはならないのだ。もしもの時は、王都に急ぎ転進し、決戦時の敵戦力増大報告をしなくてはならない。
「……相手は英雄。生半可な戦いにはならないことなど、覚悟の内だ」
 ボルカスは、吐き出した血で濡れた歯をむき出して笑った。
「ちょろちょろ前に出てくるんじゃねえ! 邪魔になりたくなきゃ下がってろ!」 
 敵味方の別なく至近にいたものすべてをぶっ飛ばす。
 一度下がって隊列を整えてくる後続を信じて放つ不退転の技だ。
 亡霊を倒したレベッカとミルトスとルーが馬への攻撃に集中する。総がかりで馬を引きずり倒す頻度が増した。
 後方からきた分、比較的体力に余裕があったミルトスが手遅れになる前に盾を買って出たのも、オラクル達が立ち続けられた一因だろう。
 ルーのリラとカスカの繰り出す光速の斬撃が馬の四肢を硬直させ、ペトロの行動を阻害する。
 オラクルの吐いた血反吐を分銅にして、勝利の天秤が生者の側に傾く。
 軽戦士と言えど、これ以上は靴底から火を噴きかねない光速斬撃。
 馬が立ち上がるのにこれまでにないほど時間がかかる。
 今までペトロに与えた損害は無駄ではない。
 ここが、攻め時。
 甦った英雄への手向けの血と剣戟はもう十分に振舞った。 レベッカの弾丸が、執拗にペトロの兜に穴をあけ続ける。 部位狙いで落ちる命中率は手数でカバーだ。
「岩石ペトロ、死者にできる事は最早何もないのです」
 修道女は言う。ゆえに、あらゆるモノが死を恐れる。神さえも死ぬ。
「この国を守るという誓いは、確かに受け継がれています。もういいのです」
 ペトロはもう極限まで戦い抜いたのだ。
 中途半端に立った馬の足元をかいくぐり、ミルトスの掌底が鎧越しにペトロをこの世にとどまり続けることもかなわないものに変えてしまう。
「ゆっくりと休んでいてください」


 一般の人に知られないよう、霊廟はすぐに整えられるらしい。
 オラクル達の勝利を信じて待機していた者達が手はずを整えていた。
「岩石ペトロもお馬さんも無事に浄化されてよかったぞ」
 馬車に乗せられた遺体を見送りながらサシャは言う。
「還リビトで蘇らなくてもペトロはこれからもお歌とお砂遊びでずっとずっと生き続けるんだぞ!」
 英雄は死なない。次の世代へと引き継がれ、愛されるのだ。
「その名も高き岩石ペトロ、お馬といっしょに土の下、御霊は女神のお膝元。守った国を眺めてる」
 調子が多少外れても、イ・ラプセルの民は歌える。
「羨ましいナー。歌に残されて愛されるなんて。死に様を揶揄されてもいいじゃない、歌に残れば永遠だよ永遠! ウワー!」
「なー!」
 血筋を残せないルーがリラを鳴らしながら声を上げると、マリアが同調する。
「その名も高き岩石ペトロ……私はその名も、それに因んだ遊戯も知らないんですが……」
 異邦人のカスカが言う。知らなかったからこそ苛烈な剣を振るえたという側面もあったかもしれない。還リビトはそれゆえ厄介な存在なのだ。再び動くようになった愛する者を更なる死に至らしめる葛藤が数多の人々をを死に追いやる。
「おお、そうじゃ! 折角じゃから、ご本人の前でやってみるか、岩石ペトロ! 童心に帰ってみるのも悪くあるまい」
 カスカが応という前に、シノピリカは手はずを整えた。
 ルーが、序盤のメロディをつま弾く。
「普段ならお金取るけど、今日は無料でいいや」
 歌姫のミルトスも旋律に加わる。
「ではワシから……ああっバランスがー。カスカ、さあ。慎重に。知らぬなら実地が一番です」
 シノピリカはやけに乗り気だ。
「――挑まれたからには、うけてたちますけれどね」
 カスカは逃げない。
 大人も子供も遊んで歌って笑う。
「なあ、オレさ、花とかよくわかんなくてさ。 カッコよかったヤツに送る手向けの花とかよ、何選べば良いのかな。 今度それを持って来たいんだよ」
 砂を掻きながら言うマリアにルーが色々な花の名前を上げる。買ってくれるなら儲けもの。
 死してなお人びとを笑顔にできるペトロは救国の英雄。
 彼との戦いを骨身に染みさせたオラクル達が一番よく知っている。

†シナリオ結果†

大成功

†詳細†

FL送付済