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アイオロスの球を求めて、下水道へ

奴隷解放組織、フリーエンジンからとある依頼が自由騎士たちに与えられた。
何でも、ヘルメリア全てに蒸気を供給できるだけの蒸気生産能力を持つ、巨大ボイラー『アイオロスの球』の目撃情報が、下水道であったので、捜索をして欲しいというものだった。
最近、下水道には奴隷を捕まえに来る奴隷商人が増えており、下水道に逃げ出し暮らす人々の気も立っているので、ぜひ腕の立つ自由騎士たちにお願いしたいということである。
そのような説明を受け、自由騎士の一人は何かに気が付き、フリーエンジンの人員に尋ねる。もしかして彼らはイブリース化してしまったのではないですか? と。
いくら奴隷商人が多く出没するようになったとはいえ、元々下水道に逃げた彼らが好んで戦闘をするとは思えなかったのだろう。
その言葉にフリーエンジンの人員が小さく首を縦に振った。
『アイオロスの球』の目撃情報と一緒に寄せられた逃亡奴隷の情報に、思い当たるところがあるらしい。
どうやらイブリース化した逃亡奴隷との戦闘は避けられないようだ。
何でも、ヘルメリア全てに蒸気を供給できるだけの蒸気生産能力を持つ、巨大ボイラー『アイオロスの球』の目撃情報が、下水道であったので、捜索をして欲しいというものだった。
最近、下水道には奴隷を捕まえに来る奴隷商人が増えており、下水道に逃げ出し暮らす人々の気も立っているので、ぜひ腕の立つ自由騎士たちにお願いしたいということである。
そのような説明を受け、自由騎士の一人は何かに気が付き、フリーエンジンの人員に尋ねる。もしかして彼らはイブリース化してしまったのではないですか? と。
いくら奴隷商人が多く出没するようになったとはいえ、元々下水道に逃げた彼らが好んで戦闘をするとは思えなかったのだろう。
その言葉にフリーエンジンの人員が小さく首を縦に振った。
『アイオロスの球』の目撃情報と一緒に寄せられた逃亡奴隷の情報に、思い当たるところがあるらしい。
どうやらイブリース化した逃亡奴隷との戦闘は避けられないようだ。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.下水道にあるという『アイオロスの球』に関する情報の入手
2.イブリース化した逃亡奴隷の救助
2.イブリース化した逃亡奴隷の救助
初めまして、高階と申します。
STとして、シナリオを出すのは初めてですが、皆さんの楽しめるシナリオにしたいと思うので、どうぞよろしくお願いします。
今回は『アイオロスの球』を探しに下水道へ行きますが、道中にはイブリース化した逃亡奴隷たちがいます。どうか彼らを助けてあげてください。
●敵情報
・イブリース化した逃亡奴隷(イヌのケモノビト)×2
・イブリース化した逃亡奴隷(ネコのケモノビト)×2
元々ヘルメリアで奴隷をしていたケモノビト4人です。下水道に逃げ出し、力を合わせて生活をしていましたが、最近増えた下水道にやって来る奴隷商人に怯え、不安を感じていたため、イブリース化してしまったようです。
攻撃方法(イヌのケモノビト)
・武器:小剣 近距離・単体
持っていた小剣で攻撃してきます。
スキルとして、ラピッドジーン Lv1を使用できます。
攻撃方法(ネコのケモノビト)
・遠距離・単体
イヌよりも離れて魔法で攻撃してきます。
スキルとして、アニマ・ムンディ Lv1、緋文字 Lv1、アイスコフィン Lv1が使用できます。
●場所情報
・下水道
ヘルメリア王国、地下にある下水道です。蒸気配管が通ってはいますが、薄暗く、臭いもきついでしょう。
『アイオロスの球』は、この下水道の地下深くで目撃されたとのことです。慎重に奥を目指してください。
●その他
・持ち物
下水道を歩くのに必要な持ち物(明かりなど)は、フリーエンジンから支給されます。
STとして、シナリオを出すのは初めてですが、皆さんの楽しめるシナリオにしたいと思うので、どうぞよろしくお願いします。
今回は『アイオロスの球』を探しに下水道へ行きますが、道中にはイブリース化した逃亡奴隷たちがいます。どうか彼らを助けてあげてください。
●敵情報
・イブリース化した逃亡奴隷(イヌのケモノビト)×2
・イブリース化した逃亡奴隷(ネコのケモノビト)×2
元々ヘルメリアで奴隷をしていたケモノビト4人です。下水道に逃げ出し、力を合わせて生活をしていましたが、最近増えた下水道にやって来る奴隷商人に怯え、不安を感じていたため、イブリース化してしまったようです。
攻撃方法(イヌのケモノビト)
・武器:小剣 近距離・単体
持っていた小剣で攻撃してきます。
スキルとして、ラピッドジーン Lv1を使用できます。
攻撃方法(ネコのケモノビト)
・遠距離・単体
イヌよりも離れて魔法で攻撃してきます。
スキルとして、アニマ・ムンディ Lv1、緋文字 Lv1、アイスコフィン Lv1が使用できます。
●場所情報
・下水道
ヘルメリア王国、地下にある下水道です。蒸気配管が通ってはいますが、薄暗く、臭いもきついでしょう。
『アイオロスの球』は、この下水道の地下深くで目撃されたとのことです。慎重に奥を目指してください。
●その他
・持ち物
下水道を歩くのに必要な持ち物(明かりなど)は、フリーエンジンから支給されます。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
5個
1個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
8日
8日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年08月14日
2019年08月14日
†メイン参加者 8人†
●
自由騎士たちは、地下道へと行く準備を開始する。
『殲滅弾頭』ザルク・ミステル(CL3000067)は、目を細め、思案する。なぜ超国家機密であるアイオロスの球がこんな下水道にあるのか、と。罠である可能性も視野に入れながら、フリーエンジンに詳細を確認する。
同じく、『叶わぬ願いと一つの希望』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は、フリーエンジンに形状が分かっているのなら、教えて欲しいと頼んだ。
フリーエンジンが入手した情報は、どれも地下道を住処としていた逃亡奴隷たちからの物で、ある者は実際に地下道で蒸気を噴き出す巨大な球を見たと言い、ある者は元主人が地下道にアイオロスの球と呼ばれるものがあると言っているのを聞いたと言う。どの情報も不確かであるが、共通していたのは、地下道の奥深くにあるということと、球型をして蒸気を噴き出しているという点だった。
続いて、ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)と、『まだ炎は消えないけど』キリ・カーレント(CL3000547)が人数分の支給品を確認する。
「明かりの強いカンテラとか、ありますか? お借りしたいです」
キリがそう願い出ると、横で支給品を1つ1つ点検していたティラミスも、白い手を上げ、フリーエンジンに頼む。
「防臭マスクがあれば、お借りしたいです。それから、シャワーの準備もお願いします」
「シャワーは大事ですわ。そうです、ついでに携帯食料もくださらない? 救出したケモノビトさんにお渡ししたいですわ」
『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)がそう言い、大方の準備が完了した。
●
フリーエンジンによって案内された地下道の入り口から、自由騎士たちは地下道へと入った。地下道自体は誰でも簡単には入れるような作りだが、普通であれば人が入るような場所ではないようだ。少し踏み込むとすぐに辺りは暗くなり、臭いも強くなる。
「この臭い……。やっぱり鼻は覆っていたほうが良いようですね」
ティルダがそう言い、自由騎士たちは各々防臭マスクを身につける。臭いから解放されると、少しアイオロスの球の捜索に専念できるような気がした。
「奴隷商人なんて人たちのせいで、イブリース化してしまった方がいるなんて本当に残念です……」
『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)が暗い顔で言うと、レオンティーナも頷きながら言う。
「こんな場所に逃げ込んで、怯えながら生活しなければならないなんて……」
「イブリース化してしまったケモノビトたちを救うためにも、アイオロスの球の情報を得るためにも、早く捜索を進めるしかないな」
ザルクの言葉に、自由騎士たちは深く頷き、各々スキルを使用しながら捜索を開始する。
「暗闇なら任せてくださいな」
「細かな情報でも、集めて精査することで見えてくるものはある」
レオンティーナと『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)はそう言うと、それぞれリュンケウスの瞳 破、リュンケウスの瞳 急を使用し、地下道の暗闇へと目を凝らす。地下道は暗く入り組んでいるが、2人の瞳にははっきりとその全貌が映し出される。少なくとも付近には、球型の目立つ物はなさそうだった。
アデルは更に、キリと協力して、鋭聴力で周囲の音に気を配る。シュンシュンと蒸気配管を蒸気が流れる音のほかに、特にこれといった音は聞こえない。
「首都を補えるほどの蒸気を生み出すということは、より高い熱を持っているはず。私は、熱を感知します」
『花より──』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は、サーモグラフィを使用すると、周囲の熱源を感知する。地下道中を張り巡らされた蒸気配管が確認できたが、アイオロスの球と思われる熱源は感知できなかった。
さらにティラミスが、可愛らしい人形のようなウサギ兵士型のホムンクルスを使用し、地下道の脇道や蒸気配管の上などを探索していく。ホムンクルスたちは意気揚々とティラミスの手から降り立っていくが、特にめぼしいものは見つからなかった。
皆の後ろからは、背後に警戒しながらザルクが歩く。
「とりあえず、このまま進みましょう。噂では、アイオロスの球は奥で見つかったと言いますし」
モカが言うと、自由騎士たちはその言葉に頷き、それぞれ視覚、聴覚に気を配りながら、再び進み始める。
●
その後も自由騎士たちの視界や鋭聴覚、熱感知能力に何も引っかからないまま、時が流れていく。
「止まれ! 人影が見えた」
不意にアデルがそう言って、皆を制した。
「はい、確かに前方から人が来ますわ」
レオンティーナが続けてそういうと、デボラが前方を見据え、熱源を確認する。
「30m位前方、4人歩いて来ているようですね」
特別な視覚を持たない者たちの目にもその4人が見えて来ると、すぐにモカがその異様さに気が付く。
大柄なイヌのケモノビト、それから一回り小さいがよく似た容姿のイヌノケモノビトがもう1人。その後ろには、ネコのケモノビトが2人いる。全員男性で、少し汚れた衣服を身に着けているが、異様なのはもちろんそこではない。
ヘルメリアに住まうケモノビトでありながら首輪をしていない。つまりは逃亡奴隷であるのにも関わらず、警戒心を持たずに自由騎士たちに向かってきているのだ。
そして、彼らが間近に迫った時に見えた、その正気を失った恐怖に染まった瞳は……。
「……イブリース!」
「きっとこの方たちが、フリーエンジンの方が言っていた逃亡奴隷の方ですね」
モカはそう言うと、その場でリズミカルにサンシャインダンスを跳ね踊り、自身を強化する。
「早く助けてあげないといけないです」
ティルダが言い、自由騎士たちは各々武器を構える。戦闘の火蓋が切って落とされた。
●
ティルダが藍花昌の杖を構え、スワンプを使用すると、イブリースたちの足元にドロドロとした沼が現れる。イブリースたちは、沼に足を取られ、動きが鈍くなった。
「後衛のみんなに攻撃はさせません!」
デボラはそう宣言すると、敵の前に立ち塞がり、いつでも敵の攻撃を防げるように構える。
ザルクは拳銃を構えると、イブリースたちにバレッジファイヤの集中砲火を浴びせさせる。足元を沼に取られ、動きが鈍くなっているイブリースたちは避けることもできずに、ザルクの銃撃に圧倒される。
ティラミスはすかさずその隙を突くようにイブリース化したイヌのケモノビト2人に接近すると、旋風腿をお見舞いした。
攻撃を受け、後ずさるイヌのケモノビトたちにティラミスが喜んだのもつかの間、すぐさまネコのケモノビトが反撃してくる。レオンティーナは、攻撃をしようとするネコのケモノビトの1人を狙い、戦乙女の弓を構え、攻撃をする。
レオンティーナの攻撃は命中するが、それを意に介した風もなく、ネコのケモノビトたちは空中に文字を描き、炎がティラミスとザルク目掛けて飛んでくる。
イヌのケモノビトに接近し、攻撃をしていたティラミスは緋文字を避けきれず、炎がティラミスと彼女の服を焼く。至近距離からの攻撃に、ティラミスは顔を歪めながらも一歩後ずさった。
ザルクを目掛け飛んできた緋文字は、敵の前に立ち塞がっていたデボラが華麗に受け止める。衝撃を受けながらも、攻撃に備えていたデボラはすぐさま敵に向き直る。
「イヌのケモノビトさんをかき乱すわ」
続いて、キリがそう言うと、サーベルを構えイヌのケモノビトに向かう。サーベルを覆う魔力膜によって、キリがまるで大きな人参を構えているように見える。キリが人参を振るうと、魔力の刃がティラミスを避けるように揺れ、イヌのケモノビトたちのみを攻撃した。
キリの攻撃に目つきを鋭くした小柄な方のイヌのケモノビトが、キリに向かって小剣を構え、切りかかる。
「離れてくれ、攻撃する」
アデルの言葉にキリが攻撃された腕を庇いながら下がると同時に、イヌのケモノビトたちの面前に躍り出たアデルがジョルトランサーを構える。凄まじい音と共に打ち出された銃弾がイヌのケモノビトたちを襲う。ティルダのスワンプによってろくに攻撃を避けられない中、集中攻撃を受けたイヌのケモノビトたちは少し消耗しているように見える。
モカは、追い打ちをかけるように目にも止まらぬステップを踏み、タイムスキップで大柄なイヌのケモノビトに攻撃をする。
しかし、イブリースも負けていない。華麗なモカの動きに翻弄されながらも、大柄なイヌのケモノビトはそのまま小剣でモカに切りかかった。イヌのケモノビトの攻撃に一瞬動きが止まったモカだが、すぐにイヌのケモノビトたちの後衛、ネコのケモノビトの方へと躍り出、そのまま熱く情熱的なステップでレイピアを振るいながら、太陽と海のワルツを踊る。
モカの殺戮ワルツがイブリースたちを翻弄する中、キリが自由騎士たちの前にローブを広げ、全ての攻撃を受け止めようと壁となる。
●
疲労を見せながらも前衛に立ち、皆を庇うキリ。大人しい彼女だが、早くケモノビトたちを助けたいという気持ちから、貪欲に攻撃を受け止めていた。
彼女の賢明なパリィングのおかげもあって、自由騎士たちは大きな負傷もなく、既にイヌのケモノビト2人を浄化することができていた。
自由騎士たち同様にキリのローブによって庇われているイヌのケモノビトたちは、未だにイブリース化が解けないネコのケモノビトたちの異様な様子と、自分たちを気遣う自由騎士たちに、彼らが敵ではないことを理解しているようで、大人しくしている。
イヌのケモノビトたちを気にしながらも、レオンティーナがハーベストレインで皆を回復する。特に攻撃を一手に受けていたキリと、舞踊りながら前線に飛び込んだモカは暖かなレオンティーナの魔力に安堵したように見える。
「レオンティーナさん、ありがとうございます!」
体の傷が癒されたことで、気力も回復したのか、モカは笑顔を浮かべ、レオンティーナにお礼を言う。
ザルクのバレッジファイヤによる絶え間ない銃の連射がネコのケモノビトたちを襲い、その死角からティラミスが旋風腿で攻撃する。
漸く倒れ、浄化された1人のネコのケモノビトを、キリがすかさずローブの裏に匿う。
「このままもう1人も早く浄化しましょう」
デボラはそう言うと、その体からは想像の付かない大きな咆哮を上げ、残ったネコのケモノビトに攻撃する。デボラの咆哮に怯んだネコのケモノビトにすかさずアデルが武器を振りかざし、叩きつける。
倒れかけた体に畳みかけるようにティルダがアイスコンフィを打ち込めば、奴隷商人に怯え、イブリース化してしまったケモノビトたちは全員無事に浄化されたのだった。
●
最後に浄化されたため、状況が分かっておらず怯えたネコのケモノビトを安心させるように、自由騎士たちはその場に武器を置くと、ティラミスとマイナスイオンを出したキリがそっと近づく。
「私たちは敵ではありません」
「フリーエンジンから話を聞いて、助けに来たんです」
ティラミスの顔を見て、奴隷商人ではないと分かったのか、キリのマイナスイオンに癒されたのか、ネコのケモノビトは少し不安そうな表情を崩した。
「大丈夫ですわ」
レオンティーナも優しく声をかけながら、ケモノビトたちの傷を応急手当てする。自由騎士たちとの戦闘以外でも傷つくことがあったのだろうか、もう治りかけの傷や大小さまざまな傷を見て、レオンティーナは彼らの生活を思って顔を歪めた。
落ち着いた様子のケモノビトたちを応急手当てしながら、まずは今後どうしたいかを自由騎士たちは尋ねた。
「フリーエンジンが保護することもできますし、国外に出たいと言うなら、私たちの国、イ・ラプセルならきっと受け入れてくれます。ここで出会ったのも何かの縁です、ちょっと図々しいかもしれないですけど私たちはもう友達ですよ。友達は見捨てませんから、できる限りサポートしたいです」
ティラミスの優しい言葉に、ケモノビトたちはティラミスの方を見るが、すぐに顔を逸らす。
「あの、どうかしましたか?」
「……服が、ズボンが破れています」
控えめに答えたのはネコのケモノビトだった。ティラミスが自分を見下ろせば、破れたズボンの隙間から下着が見えている。ティラミスは慌ててズボンをたくし上げ、なんとか下着が見えないようにするが、その顔は赤い。
「えーと、とにかく今ここで決めてもらわなくても大丈夫です。いつか思い出した時にフリーエンジンや私たちを訪ねてもらえれば嬉しいです」
モカが気を取りなおして言った言葉に、ケモノビトたちは自由騎士たちが信用できると思ったのか、ひとまずフリーエンジンの元について行きたいと答えた。
イヌのケモノビトたちは兄弟で、もう長いこと下水道で暮らしているということだった。ネコのケモノビトたちはそれぞれ別な主人から逃げてきた逃亡奴隷ということだが、イヌのケモノビト兄弟は彼らを自分の住処に招き入れ、4人で協力して暮らしているらしい。
彼らの住処へ荷物を取りに行くのにつき合いながら、自由騎士たちはアイオロスの球についての情報収集を始めた。
「いくつか教えてくれ。俺たちはアイオロスの球というものを探している」
アデルの言葉にケモノビトたちは首を傾げる。元々国外から連れてこられた奴隷ということで、アイオロスの球の噂自体知らないということだった。
「どんなものか教えて頂ければ、知っている範囲でお答えできると思います」
イヌのケモノビトの兄の方がそう言うと、アデルが1つずつアイオロスの球について聞いていく。
「下水道で、何らかの蒸気機関やヘルメリアの兵士、技術者を見かけたことはあるか?」
「いえ、蒸気配管はありますが……機関はないと思います。兵士や技術者が近寄ることもあまり」
「異音や機械の駆動音が聞こえたり、蒸気が漏れているような箇所、湿度の高い場所はあるか?」
「特にこの下水道の奥では配管を流れる上記の音以外はあまり聞きませんね。蒸気が漏れていたり、湿度の高いところもないと思います」
その返事にアデルは肩を落とすが、続いてザルクが指を折りながらフリーエンジンから聞いたアイオロスの球についての特徴を伝える。
「形状は丸く、地下道の奥にあると聞いている。そのようなものを見たことは? 蒸気が噴出しているそうなのだが」
「え! それなら……」
「ちょうどあんな感じの……えっ!」
ザルクの言葉に思いついたことがあるのか、何かを言おうとしたネコのケモノビトに、デボラが前方に見えてきた丸い形状の大きな物体を指さし、固まる。
それはちょうど地下道の奥にあり、丸く大きな、噂にあったアイオロスの球の特徴に一致するものだった。
「えっと、あれは俺たちの家です。拾った材料で作ったものでして」
「その、蒸気が出るというのは、どうでしょうか?」
ティルダの言葉にイヌのケモノビトの弟が丸い建物の上部から突き出た煙突を指さす。
「料理をした時なんかはあの煙突から煙が出ることがあります」
結局偽情報だったようだが、念のため、自由騎士たちはスキルを使用して周囲を観察する。下水道に入ってきたばかりの時同様、彼らの視界にも聴力にも、特に異常は見当たらなかった。
こうして、自由騎士たちは下水道にあったアイオロスの球の噂は偽情報だったことを解明し、4人の逃亡奴隷たちを救うことができたのだった。
自由騎士たちは、地下道へと行く準備を開始する。
『殲滅弾頭』ザルク・ミステル(CL3000067)は、目を細め、思案する。なぜ超国家機密であるアイオロスの球がこんな下水道にあるのか、と。罠である可能性も視野に入れながら、フリーエンジンに詳細を確認する。
同じく、『叶わぬ願いと一つの希望』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は、フリーエンジンに形状が分かっているのなら、教えて欲しいと頼んだ。
フリーエンジンが入手した情報は、どれも地下道を住処としていた逃亡奴隷たちからの物で、ある者は実際に地下道で蒸気を噴き出す巨大な球を見たと言い、ある者は元主人が地下道にアイオロスの球と呼ばれるものがあると言っているのを聞いたと言う。どの情報も不確かであるが、共通していたのは、地下道の奥深くにあるということと、球型をして蒸気を噴き出しているという点だった。
続いて、ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)と、『まだ炎は消えないけど』キリ・カーレント(CL3000547)が人数分の支給品を確認する。
「明かりの強いカンテラとか、ありますか? お借りしたいです」
キリがそう願い出ると、横で支給品を1つ1つ点検していたティラミスも、白い手を上げ、フリーエンジンに頼む。
「防臭マスクがあれば、お借りしたいです。それから、シャワーの準備もお願いします」
「シャワーは大事ですわ。そうです、ついでに携帯食料もくださらない? 救出したケモノビトさんにお渡ししたいですわ」
『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)がそう言い、大方の準備が完了した。
●
フリーエンジンによって案内された地下道の入り口から、自由騎士たちは地下道へと入った。地下道自体は誰でも簡単には入れるような作りだが、普通であれば人が入るような場所ではないようだ。少し踏み込むとすぐに辺りは暗くなり、臭いも強くなる。
「この臭い……。やっぱり鼻は覆っていたほうが良いようですね」
ティルダがそう言い、自由騎士たちは各々防臭マスクを身につける。臭いから解放されると、少しアイオロスの球の捜索に専念できるような気がした。
「奴隷商人なんて人たちのせいで、イブリース化してしまった方がいるなんて本当に残念です……」
『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)が暗い顔で言うと、レオンティーナも頷きながら言う。
「こんな場所に逃げ込んで、怯えながら生活しなければならないなんて……」
「イブリース化してしまったケモノビトたちを救うためにも、アイオロスの球の情報を得るためにも、早く捜索を進めるしかないな」
ザルクの言葉に、自由騎士たちは深く頷き、各々スキルを使用しながら捜索を開始する。
「暗闇なら任せてくださいな」
「細かな情報でも、集めて精査することで見えてくるものはある」
レオンティーナと『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)はそう言うと、それぞれリュンケウスの瞳 破、リュンケウスの瞳 急を使用し、地下道の暗闇へと目を凝らす。地下道は暗く入り組んでいるが、2人の瞳にははっきりとその全貌が映し出される。少なくとも付近には、球型の目立つ物はなさそうだった。
アデルは更に、キリと協力して、鋭聴力で周囲の音に気を配る。シュンシュンと蒸気配管を蒸気が流れる音のほかに、特にこれといった音は聞こえない。
「首都を補えるほどの蒸気を生み出すということは、より高い熱を持っているはず。私は、熱を感知します」
『花より──』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は、サーモグラフィを使用すると、周囲の熱源を感知する。地下道中を張り巡らされた蒸気配管が確認できたが、アイオロスの球と思われる熱源は感知できなかった。
さらにティラミスが、可愛らしい人形のようなウサギ兵士型のホムンクルスを使用し、地下道の脇道や蒸気配管の上などを探索していく。ホムンクルスたちは意気揚々とティラミスの手から降り立っていくが、特にめぼしいものは見つからなかった。
皆の後ろからは、背後に警戒しながらザルクが歩く。
「とりあえず、このまま進みましょう。噂では、アイオロスの球は奥で見つかったと言いますし」
モカが言うと、自由騎士たちはその言葉に頷き、それぞれ視覚、聴覚に気を配りながら、再び進み始める。
●
その後も自由騎士たちの視界や鋭聴覚、熱感知能力に何も引っかからないまま、時が流れていく。
「止まれ! 人影が見えた」
不意にアデルがそう言って、皆を制した。
「はい、確かに前方から人が来ますわ」
レオンティーナが続けてそういうと、デボラが前方を見据え、熱源を確認する。
「30m位前方、4人歩いて来ているようですね」
特別な視覚を持たない者たちの目にもその4人が見えて来ると、すぐにモカがその異様さに気が付く。
大柄なイヌのケモノビト、それから一回り小さいがよく似た容姿のイヌノケモノビトがもう1人。その後ろには、ネコのケモノビトが2人いる。全員男性で、少し汚れた衣服を身に着けているが、異様なのはもちろんそこではない。
ヘルメリアに住まうケモノビトでありながら首輪をしていない。つまりは逃亡奴隷であるのにも関わらず、警戒心を持たずに自由騎士たちに向かってきているのだ。
そして、彼らが間近に迫った時に見えた、その正気を失った恐怖に染まった瞳は……。
「……イブリース!」
「きっとこの方たちが、フリーエンジンの方が言っていた逃亡奴隷の方ですね」
モカはそう言うと、その場でリズミカルにサンシャインダンスを跳ね踊り、自身を強化する。
「早く助けてあげないといけないです」
ティルダが言い、自由騎士たちは各々武器を構える。戦闘の火蓋が切って落とされた。
●
ティルダが藍花昌の杖を構え、スワンプを使用すると、イブリースたちの足元にドロドロとした沼が現れる。イブリースたちは、沼に足を取られ、動きが鈍くなった。
「後衛のみんなに攻撃はさせません!」
デボラはそう宣言すると、敵の前に立ち塞がり、いつでも敵の攻撃を防げるように構える。
ザルクは拳銃を構えると、イブリースたちにバレッジファイヤの集中砲火を浴びせさせる。足元を沼に取られ、動きが鈍くなっているイブリースたちは避けることもできずに、ザルクの銃撃に圧倒される。
ティラミスはすかさずその隙を突くようにイブリース化したイヌのケモノビト2人に接近すると、旋風腿をお見舞いした。
攻撃を受け、後ずさるイヌのケモノビトたちにティラミスが喜んだのもつかの間、すぐさまネコのケモノビトが反撃してくる。レオンティーナは、攻撃をしようとするネコのケモノビトの1人を狙い、戦乙女の弓を構え、攻撃をする。
レオンティーナの攻撃は命中するが、それを意に介した風もなく、ネコのケモノビトたちは空中に文字を描き、炎がティラミスとザルク目掛けて飛んでくる。
イヌのケモノビトに接近し、攻撃をしていたティラミスは緋文字を避けきれず、炎がティラミスと彼女の服を焼く。至近距離からの攻撃に、ティラミスは顔を歪めながらも一歩後ずさった。
ザルクを目掛け飛んできた緋文字は、敵の前に立ち塞がっていたデボラが華麗に受け止める。衝撃を受けながらも、攻撃に備えていたデボラはすぐさま敵に向き直る。
「イヌのケモノビトさんをかき乱すわ」
続いて、キリがそう言うと、サーベルを構えイヌのケモノビトに向かう。サーベルを覆う魔力膜によって、キリがまるで大きな人参を構えているように見える。キリが人参を振るうと、魔力の刃がティラミスを避けるように揺れ、イヌのケモノビトたちのみを攻撃した。
キリの攻撃に目つきを鋭くした小柄な方のイヌのケモノビトが、キリに向かって小剣を構え、切りかかる。
「離れてくれ、攻撃する」
アデルの言葉にキリが攻撃された腕を庇いながら下がると同時に、イヌのケモノビトたちの面前に躍り出たアデルがジョルトランサーを構える。凄まじい音と共に打ち出された銃弾がイヌのケモノビトたちを襲う。ティルダのスワンプによってろくに攻撃を避けられない中、集中攻撃を受けたイヌのケモノビトたちは少し消耗しているように見える。
モカは、追い打ちをかけるように目にも止まらぬステップを踏み、タイムスキップで大柄なイヌのケモノビトに攻撃をする。
しかし、イブリースも負けていない。華麗なモカの動きに翻弄されながらも、大柄なイヌのケモノビトはそのまま小剣でモカに切りかかった。イヌのケモノビトの攻撃に一瞬動きが止まったモカだが、すぐにイヌのケモノビトたちの後衛、ネコのケモノビトの方へと躍り出、そのまま熱く情熱的なステップでレイピアを振るいながら、太陽と海のワルツを踊る。
モカの殺戮ワルツがイブリースたちを翻弄する中、キリが自由騎士たちの前にローブを広げ、全ての攻撃を受け止めようと壁となる。
●
疲労を見せながらも前衛に立ち、皆を庇うキリ。大人しい彼女だが、早くケモノビトたちを助けたいという気持ちから、貪欲に攻撃を受け止めていた。
彼女の賢明なパリィングのおかげもあって、自由騎士たちは大きな負傷もなく、既にイヌのケモノビト2人を浄化することができていた。
自由騎士たち同様にキリのローブによって庇われているイヌのケモノビトたちは、未だにイブリース化が解けないネコのケモノビトたちの異様な様子と、自分たちを気遣う自由騎士たちに、彼らが敵ではないことを理解しているようで、大人しくしている。
イヌのケモノビトたちを気にしながらも、レオンティーナがハーベストレインで皆を回復する。特に攻撃を一手に受けていたキリと、舞踊りながら前線に飛び込んだモカは暖かなレオンティーナの魔力に安堵したように見える。
「レオンティーナさん、ありがとうございます!」
体の傷が癒されたことで、気力も回復したのか、モカは笑顔を浮かべ、レオンティーナにお礼を言う。
ザルクのバレッジファイヤによる絶え間ない銃の連射がネコのケモノビトたちを襲い、その死角からティラミスが旋風腿で攻撃する。
漸く倒れ、浄化された1人のネコのケモノビトを、キリがすかさずローブの裏に匿う。
「このままもう1人も早く浄化しましょう」
デボラはそう言うと、その体からは想像の付かない大きな咆哮を上げ、残ったネコのケモノビトに攻撃する。デボラの咆哮に怯んだネコのケモノビトにすかさずアデルが武器を振りかざし、叩きつける。
倒れかけた体に畳みかけるようにティルダがアイスコンフィを打ち込めば、奴隷商人に怯え、イブリース化してしまったケモノビトたちは全員無事に浄化されたのだった。
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最後に浄化されたため、状況が分かっておらず怯えたネコのケモノビトを安心させるように、自由騎士たちはその場に武器を置くと、ティラミスとマイナスイオンを出したキリがそっと近づく。
「私たちは敵ではありません」
「フリーエンジンから話を聞いて、助けに来たんです」
ティラミスの顔を見て、奴隷商人ではないと分かったのか、キリのマイナスイオンに癒されたのか、ネコのケモノビトは少し不安そうな表情を崩した。
「大丈夫ですわ」
レオンティーナも優しく声をかけながら、ケモノビトたちの傷を応急手当てする。自由騎士たちとの戦闘以外でも傷つくことがあったのだろうか、もう治りかけの傷や大小さまざまな傷を見て、レオンティーナは彼らの生活を思って顔を歪めた。
落ち着いた様子のケモノビトたちを応急手当てしながら、まずは今後どうしたいかを自由騎士たちは尋ねた。
「フリーエンジンが保護することもできますし、国外に出たいと言うなら、私たちの国、イ・ラプセルならきっと受け入れてくれます。ここで出会ったのも何かの縁です、ちょっと図々しいかもしれないですけど私たちはもう友達ですよ。友達は見捨てませんから、できる限りサポートしたいです」
ティラミスの優しい言葉に、ケモノビトたちはティラミスの方を見るが、すぐに顔を逸らす。
「あの、どうかしましたか?」
「……服が、ズボンが破れています」
控えめに答えたのはネコのケモノビトだった。ティラミスが自分を見下ろせば、破れたズボンの隙間から下着が見えている。ティラミスは慌ててズボンをたくし上げ、なんとか下着が見えないようにするが、その顔は赤い。
「えーと、とにかく今ここで決めてもらわなくても大丈夫です。いつか思い出した時にフリーエンジンや私たちを訪ねてもらえれば嬉しいです」
モカが気を取りなおして言った言葉に、ケモノビトたちは自由騎士たちが信用できると思ったのか、ひとまずフリーエンジンの元について行きたいと答えた。
イヌのケモノビトたちは兄弟で、もう長いこと下水道で暮らしているということだった。ネコのケモノビトたちはそれぞれ別な主人から逃げてきた逃亡奴隷ということだが、イヌのケモノビト兄弟は彼らを自分の住処に招き入れ、4人で協力して暮らしているらしい。
彼らの住処へ荷物を取りに行くのにつき合いながら、自由騎士たちはアイオロスの球についての情報収集を始めた。
「いくつか教えてくれ。俺たちはアイオロスの球というものを探している」
アデルの言葉にケモノビトたちは首を傾げる。元々国外から連れてこられた奴隷ということで、アイオロスの球の噂自体知らないということだった。
「どんなものか教えて頂ければ、知っている範囲でお答えできると思います」
イヌのケモノビトの兄の方がそう言うと、アデルが1つずつアイオロスの球について聞いていく。
「下水道で、何らかの蒸気機関やヘルメリアの兵士、技術者を見かけたことはあるか?」
「いえ、蒸気配管はありますが……機関はないと思います。兵士や技術者が近寄ることもあまり」
「異音や機械の駆動音が聞こえたり、蒸気が漏れているような箇所、湿度の高い場所はあるか?」
「特にこの下水道の奥では配管を流れる上記の音以外はあまり聞きませんね。蒸気が漏れていたり、湿度の高いところもないと思います」
その返事にアデルは肩を落とすが、続いてザルクが指を折りながらフリーエンジンから聞いたアイオロスの球についての特徴を伝える。
「形状は丸く、地下道の奥にあると聞いている。そのようなものを見たことは? 蒸気が噴出しているそうなのだが」
「え! それなら……」
「ちょうどあんな感じの……えっ!」
ザルクの言葉に思いついたことがあるのか、何かを言おうとしたネコのケモノビトに、デボラが前方に見えてきた丸い形状の大きな物体を指さし、固まる。
それはちょうど地下道の奥にあり、丸く大きな、噂にあったアイオロスの球の特徴に一致するものだった。
「えっと、あれは俺たちの家です。拾った材料で作ったものでして」
「その、蒸気が出るというのは、どうでしょうか?」
ティルダの言葉にイヌのケモノビトの弟が丸い建物の上部から突き出た煙突を指さす。
「料理をした時なんかはあの煙突から煙が出ることがあります」
結局偽情報だったようだが、念のため、自由騎士たちはスキルを使用して周囲を観察する。下水道に入ってきたばかりの時同様、彼らの視界にも聴力にも、特に異常は見当たらなかった。
こうして、自由騎士たちは下水道にあったアイオロスの球の噂は偽情報だったことを解明し、4人の逃亡奴隷たちを救うことができたのだった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
軽傷
†あとがき†
みなさん、アイオロスの球についていろいろと考えて頂けて、プレイングを読んでいて楽しかったです。また、逃亡奴隷に対しても、優しい対応をしてくださいましたが、国外に出るという提案をして頂いたティラミスさんにMVPを差し上げたいと思います。
FL送付済