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ヤバイ、このイブリース超ヤバイ



●戦争ばっかりしてるからこうな……、え、関係ない?
「ヤバイイブリースが出たらしいわ」
 それは水鏡の間での話。
 マリアンナ・オリヴェル(nCL3000042) は「さっき聞いた話だけど」と前置きして、彼女はそれを集められた自由騎士達に対して話し始めた。
「大きくて重くて早くて再生能力があって触手が生えてて火を噴いて空を飛ぶらしいわ」
「ヤバイ……」
「それはヤバイ……」
 集められた自由騎士達が揃ってザワついた。
「しかもそんなイブリースが人里近くに現れて何もせず去って、また現れて何もせず去って、今のところ実害は出てないけど村の人達は気が気じゃないみたい」
「ヤバイな」
「ああ、マジでヤバイな」
 自由騎士達は顔を見合わせて嫌がらせされている村の人々を案じた。
「さらに言うと、ある日はヤバイイブリースAが村上空を飛んで、Bが村の前に現れて、Cが村の裏手に現れたらしいわ!」
「何だって、それはヤバイ!」
「実は三体もいたのか、ヤバイな……」
 そろそろ「その村よく無事だな」と思い始めていた騎士達に、マリアンナは先程聞いた水鏡の予知を皆に知らせた。
「その、何か分からないけれどヤバイイブリースから嫌がらせっぽいことをされていた村がいよいよヤバイイブリースに攻められるらしいわ。みんなでそれを止めましょう!」
「ああ、そうしないとヤバイからな!」
「うん、ヤバイだろうしな!」
  折しもくだんの村は今月開かれるWBRに向けての準備中。
 そこにこんなヤバイモノが乱入したら、それはもうヤバイことになるだろう。ヤバイ。それはヤバイ。そんなヤバイ事態を防ぐためヤバイイブリース並にヤバイ自由騎士達は出陣するのだった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
吾語
■成功条件
1.ヤバイイブリースを三体ともブッ倒す
間が空きましたがお元気ですか、吾語です。
悲しい戦争被害によって今ここにまた望まれざる怪物が――、
はい、全然関係ありません。
別にヘルメリアとの戦争とか1mmも関係ありません。何か出たイブリースです。

Q.つまり?
A.本気出してコロコロしても全然問題ない敵をご用意いたしましたァ!

Q.あれ、でも村襲うんじゃ?
A.水鏡ってすごいよなー! 予知できちゃうんだもんなー! そら先制攻撃よ。

Q.ところでこのイブリースは元々何?
A.人じゃないことは確か。っていうか猛獣じゃない? 何かイブられたんだよ。

Q.ヤバイ?
A.ヤバイ。

以下、シナリオ詳細でーす。

●敵
・ヤバイイブリース×3
 四足、デカイ、重い、早い、かなり治る、触手、火を噴く、飛ぶ。
 炎は貫通100・100です。治癒速度はヤバイです。
 今ここで仕留めないと確実にどっかで被害がでます。
 唯一の安心材料は「飛ぶけどそこまで高くないし遠くにもいけない」です。
 つまり飛行による戦場離脱があっても探せばすぐ見つかります。

●戦場
・村へと通じる結構広い草原
 周りには何もなく広いので戦うのが楽。しかも敵がでかいので目立つ。
 これはもう、ここで戦う以外の選択はありませんね。という場所。
 なお、時間は日中となっております。
状態
完了
報酬マテリア
7個  3個  3個  3個
8モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
8日
参加人数
10/10
公開日
2019年10月24日

†メイン参加者 10人†



●ヤバイ、この自由騎士達ヤバイ
「ヤバァァァァァァァァァァァァイ!」
「チョーヤバァァァァァァァァァァァァァァァァァイ!」
 鳴き声である。
「いたわ、みんな! あれがヤバイイブリースよ!」
 平原でそれを見つけたマリアンナが、ヤバイイブリースの方を指さした。
「む、あれか……」
 『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)が彼女の指さした方角を確認すると、確かにいた。かなりの巨体。四足の獣のようだが、翼があって触手がうねうねしている。
「……なるほど、ヤバイな」
「うむ、確かにあれはヤバイな」
 アデルの隣に立った『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)も、いかにも重みがありそうなイブリースの姿を見てうなずいた。
「元は何の動物かしら? 獅子? 虎? 馬にも見えるし、狼にも見えるわ……」
 イブリースは元々何らかの生物が異形と化したもの。それならば基となった生物がいるはずだが、と、『遠き願い』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)は想像を広げた。
「ヤッバァァァァァァァァァァァァイ! マジヤバァァァァァァァァァァァァァァイ!」
「鳴き声は、どの獣のものでもないわね。完全に変わってるわ。ヤバイ感じに」
 『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)がイブリースの鳴き声にそんな感想を漏らす。WBRも近いこの時期、あんなヤバイのはさっさと掃討するに限るだろう。
「……火も噴くらしいね、警戒しないと。本当にヤバイ相手みたいだし」
 『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)も、注意深くイブリースを観察しながらそう呟いた。自分達が突破されれば、村に被害が出る。それは許容できない。
「いかに相手がヤバかろうとも、ヨツカは負けない。負けるわけにはいかない」
「応とも! ヤベェ匂いがプンプンしてやがるが、だからこそ燃えるってモンよ!」
 『背水の鬼刀』月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)と『ゴーアヘッド』李 飛龍(CL3000545)の二人は、すでに臨戦態勢だ。ヨツカなぞは「いざ、いざ」と闘志を全身に巡らせている。
「いや~、それにしても……」
 『ReReボマー?』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)がイブリースを観察しつつ、
「ヤバイわー、これはマジでヤバイわー、何がヤバイって、何もかもがヤバイわー、見た目もヤバイし、泣き声もヤバイし、雰囲気もヤバイし、翼もヤバイし、触手もヤバイし、何か全体的にヤバイってコトしか伝わってこないのがヤバイわー。イブリース超ヤバイわー」
 そして彼は一度口を閉ざし、
「……いや、ヤバイがゲシュタルト崩壊するわ」
 などと自分にツッコミを入れたが、残念なことに筆者のそれはとっくに崩壊している。
 さて――、
「うーん、楽」
 『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)が、指の骨をパキポキ鳴らしながら、そんなことを言い出した。
「あら、何が楽なんですか?」
 ドデカイ武具を手に、『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)がミルトスに尋ねてみた。するとミルトスは笑って、
「だって、今回は他国の軍隊が相手ではないので、気兼ねなくすっきりブン殴れるでしょう? しかも私は抑えなので、サシで殴り合えるワケです。あのヤバイのと。……気持ちよく戦えそうな上に、楽じゃないですか。色々と。ねぇ?」
「あら、確かにそうですね。ええ、気楽な感じで、こう、ヤバイ自由騎士のヤバイシスター、アンジェリカ参・上・です! のような――、ちょっと違いますかね?」
 ドデカイ武具をブンブン振り回しながら笑うアンジェリカと、ニコニコ笑ってシャドーボクシング的な何かを始めるミルトスを見て、テオドールはポツリとこぼした。
「実はあの二人こそ、ヤバイのではないかね?」
「「…………」」
 答える者はいなかったが、言外にあるものは完全に一致する自由騎士達であった。

●ヤバイ、このバトルヤバイ
「作戦――、復唱」
 アデルの掛けた号令に、自由騎士達が口を開く。
「敵は三体いるので、アタシと――」
 と、ライカが言って、次にミルトス。
「私で二体を抑えます」
「そして残る一体を――」
 彼女の言葉を継いだのはエルシーで、
「各個撃破で」
 さらにエミリオと続き、
「叩く」
「倒す」
「仕留める」
「撃滅します」
「ぶっ潰してやる!」
 マグノリア、テオドール、ヨツカ、アンジェリカ、飛龍の順でお送りいたしました。
「それじゃあ、いいわねみんな! 『一体ずつ囲んで棒で殴る作戦』開始よ!」
「誰だ、その作戦名を考えたヤツは」
 気合を入れるため叫ぶマリアンナへ、だが疑問を呈したアデルの声は乾いていた。
「ヤバァァァァァァァァァァァァァァァァァァイ!」
「おっと、話の途中だがヤバイイブリースだ。皆、最善の行動を期待する!」
 かくして、なしくずしのうちに戦闘開始。
 初撃を飾るのは、誰であろうテオドールだ。
「フッ、最近少しだけおなか引っ込んだんじゃありません? と妻に言われ平時に比べて『これは体を動かさねばなるまい』モチベーション+200%の我が秘術を喰らってみたまえよ!」
「え、引っ込んだ……?」
「いやむしろ、前より……」
「シーッ! 思っても口に出してはいけません!」
「フッハハハハハハ! 聞こえん、聞こえんとも! 妻の言葉こそ我が唯一の真理、真実!」
 テンションアゲアゲのテオドールが、強烈な魔導を発動。
 白い風雪にも似た魔力がイブリースに吹き付けて、その身を強い束縛によって戒める。
「ヤバァァァァァイ、シビレテヤバァァァァァァァァァイ!」
「あれ、しゃべってませんか?」
「いや鳴き声だろう。そう思っておこう」
「はぁ……」
 触手をウネウネさせるイブリースの傷は、しかし、再生しない。
 テオドールの魔導が、治癒を阻害しているのだ。
「今だ、諸君! 一気呵成に攻め倒してしまえ!」
 その場でスクワットを始めたテオドールが皆へと叫んだ。そしてスクワットは四回でやめた。
「うむ、膝への負担を考えるとこのくらいで適当だろう、フゥ……、ハァ……」
 息を切らせるテオドールの横を、ヨツカと飛龍が駆け抜けていく。
「いざ、いざ――!」
「ハッハァ、強いヤツはブッ倒――――す!」
 血気盛んにヤバイイブリースに挑みかかる自由騎士二人。
 その有様はいかにも勇ましくはあるが、
「ヤバ――――イ! ファイアーヤバァァァァァァァァイ!」
「ぬおお!?」
「うっ、おあ!」
 ヤバイイブリースの噴いた炎が、二人を大きく呑み込んだ。
「……お、のれ! ヨツカは退かぬ!」
 炎に巻かれ灼熱に焼かれながら、だがヨツカは踏み込んで野太刀を敵に叩きつけた。
 だが、切り裂く感触はない。
 ガツッ、と、柔らかくも硬い何かを叩く手応えだけが返ってきた。
「クッ、肉体の強度までヤバイというのかッ」
「だったら、叩いて叩いて叩きまくって、柔らかく仕上げてやるぜェ!」
 全身に軽度の火傷を負いつつも止まらず、今度は飛龍がイブリースに全身でぶつかっていく。
 重い衝突音。反動で彼の体は跳ね返るがイブリースも傾いだ。
「ヤバァァァァァァァァイ! ダメージヤバァァァァァァァァァァァァァァイ!」
 効いたらしい。
 そして二人は共に焼ける痛みの中に視線を交わし、
「飛龍!」
「応よ!」
「「畳みかけるッ!」」
 イブリースの体が傾き、出来た隙へとヨツカが飛び込んで渾身の野太刀振り回し。
 研ぎ澄まされた剛刃が二度、三度とイブリースの巨体に傷を刻んでいく。そしてその威力に、イブリースの体はさらに押されて新たな隙が生じ、飛龍。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 裂帛の咆哮と共に繰り出された一撃が、ヨツカが刻んだ傷に直撃、ビチィと避ける音がして血と肉片が辺りに勢いよく飛び散った。イブリースがヤバイ程にもがく。
「ヤバァァァァァァァイ! クソヤバァァァァァァァァァイ!」
「まだまだ終わらん……ッ!?」
 追撃を仕掛けようとする飛龍だったが、その右足首にするりと触手が巻きついた。
「飛龍ッ!」
 気づいたヨツカが触手を叩ッ切ろうと野太刀を振り上げたが、何とその腕に別の触手が巻き付いて、二人は勢いよく空中に跳ね上げられた。
「ぬぅぅぅぅぅ!」
「く、離せよ、この! こ……!」
 そして、二人は同時に地面にしたたかに打ちつけられた。
 激しい衝撃に二人は自分が壊れたのではないかと錯覚する。だが、
「ちょっと、その辺にしてくれませんか。さすがにそれ以上はヤバイ」
 いきなりイブリースの頭部で爆裂、触手は緩んでヨツカと飛龍は何とか拘束から抜け出した。
 エミリオが持ち込んだ小型人形による支援砲火であった。
 イブリースはなお二人に固執するが、今度はマリアンナの矢が足を撃ち抜く。
「今のうちに、二人を!」
「全く、前に出すぎ!」
 エルシーが走って意識も定まらないヨツカ達を担ぎ、一旦退く。
 そして待ち構えていたマグノリアが直ちに癒しの魔導を二人へと施していく。
「ふぅ、ヤバイヤバイ。割と間一髪だったね」
 筋肉の断裂、軽い骨折、かなり数が多い。一撃でこれとは、確かに敵はヤバイ強さだ。
 だが魔導により傷は癒えて、ほどなく二人は目を覚ます。
「ぐ、まだまだ……」
「俺は負けて、ねぇ……!」
「もちろん。でも、もう少しだけ待ってほしいね」
 二人を諭しながら、マグノリアはさらに癒しの魔導を使った。
「さて、じゃあ次はこっちの出番と行きましょうか」
「あらあら、もうですか」
 代わって前に出たのは、エルシーとアンジェリカであった。
「早くしないと、再生しだすだろうし、キメるなら今しかないわよね」
「そうですね。ええ。それでは――」
 二人が駆ける。
 前にエルシー、遅れてアンジェリカ。
「ヤバァァァァァァァイ! トブッテヤバァァァァァァァァァイ!」
 イブリースが翼を広げようとする。しかし、そんなこと、エルシーはお見通しだった。
「やらせるか、っての!」
 唸りをあげる回天號砲。極限まで圧縮された闘気が、イブリースの片翼を付け根から突き飛ばした。イブリースが「ヤバァァァァァァァァァイ!」と言いながら墜落する。
「転がった、丸見えの腹、いただく!」
 そして勢いのままに全体重を乗せた拳を、イブリースの腹に突き刺した。
「ヤバッ……! ッバァァァァァァァァァァイ!」
 絶叫と共に触手が左右から彼女を狙うが、
「あらまぁ、ヤバイヤバイ」
 みたび閃く重剣が、触手を切るのではなく叩き千切った。
 アンジェリカの一撃――、いや、三連撃であった。
「好機! 火力を集中させろ!」
 地面にひっくり返り、触手まで失ったイブリースを前に、アデルが集中攻撃を指示。
 遠距離よりエミリオの小型人形による爆撃とマリアンナの支援、マグノリアもそれに加わる。
 爆ぜて、焼かれ、溶かされ、貫かれ、しかし、
「ヤバァァァァァァァァァァァァァイ!」
 敵、未だ健在!
「大した丈夫さだが、こいつでどうだ!」
 アデルの、突撃槍による渾身の刺突。穂先が固い肉をブチ抜いて大穴を開ける。
 さらにそこへアンジェリカが間合いを詰めて――、
「世に平穏のあらんことを」
 ギアインパクト!
「世に平穏のあらんことを」
 ギアインパクト!
「世に平穏のあらんことを」
 ギアインパクト!
「世に平穏のあらんことを」
 ギアインパクト!
「世に平穏のあらんことを」
 ギアインパクト!
「世に平穏の――」
「アンジェリカ、死んでる、死んでる!」
「あら?」
 アンジェリカが見ると、ヤバイイブリースは完全に動かなくなっていた。
「世に平穏のあらんことを」
 ギアインパクト!
 しかし、情け無用のダメ押し追撃。ほら、念押しって大切だし。
 かくしてヤバイイブリースの一体は、君が浄化するまでギアインパクトをやめない! されてしまったのだった。周りが「アンジェリカ、ヤバイ」と思うのは当然だろう、そりゃ。

●ヤバイ、この決着ヤバイ
 当然すぎる話だが、ライカとミルトスはボロッボロだった。
「ヤバイヤバイヤバイ! ファイアーヤバァァァァァァァァァイ!」
「ええい、声はふざけているクセに、厄介な!」
 横に身をかわすライカだが、超高熱の炎はその余熱だけで彼女の肌をジリジリと焼いて体力を奪っていった。
 つかず離れず、自分にとって得意な距離を保ちながら、回避を主体とした戦い方でイブリースに立ち向かうライカだが、いかんせん、敵の動きもまた速い。
「ヤバァァァァァァァァァァァァイ!」
「うるさい、くたばれ!」
 その巨体に見合わぬ俊敏さを見せる敵に、ライカは肉体を加速させて挑みかかる。
 しかしその腕に、触手が巻き付いた。彼女の想像よりも、さらに速く。
「しまっ……!?」
「ヤバイッタラ、ヤバァァァァァァイ!」
 イブリースは触手を思い切り引っ張って、ライカの体を引き寄せる。
「クソ、ふざけないでよ! 触手プレイするなら、ミルトスにしてろ!」
 ライカは自分を引き寄せる勢いをそのまま己の加速に使い、イブリースの顔面に向かって全力の飛び蹴りを浴びせた。爪先にガヅッ、という感触。
 足の爪がはがれたか、一瞬激痛が走ったが、戦いのさなかに早まった血流は彼女にそれを忘れさせた。ライカは軽く構え、すぐに追撃に移った。
「死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね、死ねェェェェェェェ!」
 本来ならば距離を空けた上で打ち放つ連撃を、彼女は至近距離で行う。
「ヤバァァァァァァァァァァァァイ!」
 だが反撃の炎に、ライカは全身を焼かれた。
 一方、ミルトス―――、
「ヤバイ、ヤバイ、ヤバァァァァァァァァァァイ!」
「そうですね、ヤバイですね。ほら、もっと、もっと! もっとヤバく行きましょう!」
 愉しんでいた。
 ヤバイイブリースを前に、彼女は全身傷だらけになりながらも拳を振るう。
 当初は、ライカと二人で連携を組みながら戦おうとしたものの、イブリースが存外賢かったらしく、二体が大きく離れて動こうとしたため一対一を余儀なくされていた。
 だがミルトスからすれば、実のところその方が気楽だったりした。
 だって、仲間のことも気にせずに、目の前の相手殴ることだけに集中できるし?
「マジヤバァァァァァァァァァァァァァァァァイ!」
「フフフフフ、負けたくないですか? そうですか。……私もですよ!」
 ミルトスが眼光をギラつかせ、握った拳を迷いなく振るった。
 殴る。
 殴り返される。
 殴る。
 殴り返される。
 殴る、蹴る。
 その分、殴り返される。
 服は破れ、肌は裂け、肉は抉られ、傷の幾つかは骨まで達しようとした。
 しかしそれでも、
「ア、ハハハァ♪」
 血風を纏うミルトスの表情は、これまでにないほど輝いていた。
 迫る触手も蹴りと手刀で的確に打ち落とし、シスターミルトスの触手プレイなど到底程遠い。
 だが、どれほど喜悦に身を浸そうとも、人である以上限界は来る。
「お、っと……」
 いきなり足から力が抜けて、ミルトスは自分から血が失われすぎていることを自覚した。
 仲間の自由騎士達が駆けつけたのは、そのときだった。
「行って、アデル!」
「分かっている、全力だ!」
 マリアンナの支援を受け、アデルがライカ側のイブリースに突っ込んだ。
 気づいたライカとミルトスが、ほぼ同時に叫んでいた。
「マグノリア、こっち来て!」
「マグノリアさん、こっち来てください!」
「……え、僕かい?」
 マグノリアが若干の戸惑いを覚えつつ尋ね返すと、二人はまたほぼ同時に、
「回復して! こいつ殺したいから!」
「回復してください! こいつ倒したいので!」
「う~ん、イヤすぎるモテ方だね」
 頬を掻きつつ、マグノリアは近くのライカの方から気を癒していく。
 その間にも、牽制に入ったアデルが、ライカを焼いたイブリースに向かって全力の一撃。
「おおォ!」
「ヤバァァァァァァァァァァァァイ!?」
 巨体が傾ぐ。ライカが稼いだダメージが、多少なりとも残っていたか。
「殺すわ」
 そこに、傷を何とか癒したライカも加わって、さらにはエミリオの小型人形がドカンと炸裂。
 そしてミルトスの方も、マグノリアに傷を癒してもらい、戦線に復帰。
「ヤバァァァァァイ!」
「マジヤバァァァァァァァァイ!」
「そうですね、なかなかヤバかったですよ、あなた達。それでも、勝つのはこちらですが!」
 仲間の助勢も加われば、イブリース側に勝ち目は残らず、
「ヤ、ヤバァ……」
「そうだな――」
 倒れたイブリースの最期の鳴き声に、アデルは深くうなずいた。
「どうしたの? もう終わり? 死んだの? 死んだなら死んだと言いなさい!」
「ああ、何ですか? もう倒れたのですか? もう少しだけ殴り合いませんか? ねぇ?」
 全身血まみれで言うライカとミルトスを見て、彼はもう一度うなずいた。
「確かに、ヤバイな」
 何がどうヤバいのか、彼は語らずに黙した。

 余談である。
 今回、このヤバイイブリースに対して基となった生物が気になっていた者が数名いた。
 そこで自由騎士達は浄化の権能を用いてイブリースを倒したワケだが、浄化されて元の姿を取り戻したその生物の亡骸を見て、皆おののきながら呟いた。
「ヤバイ……」
「これはヤバイな……」
 その後、この戦いに参加した自由騎士達は全員、生涯に渡って自分が見たイブリースの正体について他言することは一切なかったという。――マジヤバイ。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『ヤバイ、この殺意超ヤバイ』
取得者: ライカ・リンドヴルム(CL3000405)
『ヤバイ、このシスター超ヤバイ』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
『ヤバイ、この戦闘狂超ヤバイ』
取得者: ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)

†あとがき†

お疲れ様です。
無事に勝利をおさめることができました。

激戦でした……。
とにかくヤバイ激戦でした。

ですが皆さんはそのヤバい戦いに勝利したのです。
これはヤバイ事実です。マジヤバイ。

では、次のシナリオでまたお会いしましょう。
ありがとうございマジヤバイ。
FL送付済