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ブラックオニキスと地下墳墓

●
イ・ラプセル自由騎士団がシャンバラ侵攻を決める少し前──。
首都から蒸気列車を使い、南の終着駅近くの辺境の地。カタコンベ『セバスティアーノ』奥深く。
オオオオオオォォォォ……
オオオォォォ……
皆が松明を持ち、祭壇の前には様々な供え物。祭壇には巨大なアクアディーネの肖像画が飾られている。
その前ではリーダーと思しき人物が傅き呪文のようなものを唱え続けている。
「アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■ぇぇぇぇぇぇ」
カルト狂信集団「アクアティック」。カタコンベの奥で夜な夜な行われる儀式は今日も深夜まで行われていた。
●
「南の辺境あるカタコンベにとある集団が住み着いてしまった。これを排除するのが第一の依頼だ。そして排除後、このカタコンベの3階層より下を調査してもらうのがもう一つの依頼になる」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)はいつもの様に自由騎士たちに依頼内容を告げた。
それぞれカタコンベ周辺に住む者からの告発(たれこみ)と、カタコンベを調査しているアカデミーからの依頼だが、同じカタコンベ関連として今回同時対処する決定がなされたらしい。
「集団は個人個人の戦闘能力は然程無いという事だが……集団心理というのは得てして恐ろしい状況を生みえる。十分に気をつけて欲しい」
イ・ラプセル自由騎士団がシャンバラ侵攻を決める少し前──。
首都から蒸気列車を使い、南の終着駅近くの辺境の地。カタコンベ『セバスティアーノ』奥深く。
オオオオオオォォォォ……
オオオォォォ……
皆が松明を持ち、祭壇の前には様々な供え物。祭壇には巨大なアクアディーネの肖像画が飾られている。
その前ではリーダーと思しき人物が傅き呪文のようなものを唱え続けている。
「アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■ぇぇぇぇぇぇ」
カルト狂信集団「アクアティック」。カタコンベの奥で夜な夜な行われる儀式は今日も深夜まで行われていた。
●
「南の辺境あるカタコンベにとある集団が住み着いてしまった。これを排除するのが第一の依頼だ。そして排除後、このカタコンベの3階層より下を調査してもらうのがもう一つの依頼になる」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)はいつもの様に自由騎士たちに依頼内容を告げた。
それぞれカタコンベ周辺に住む者からの告発(たれこみ)と、カタコンベを調査しているアカデミーからの依頼だが、同じカタコンベ関連として今回同時対処する決定がなされたらしい。
「集団は個人個人の戦闘能力は然程無いという事だが……集団心理というのは得てして恐ろしい状況を生みえる。十分に気をつけて欲しい」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.カタコンベに住み着いたカルト集団を排除する
2.カタコンベ内を調査する
2.カタコンベ内を調査する
好きな順番は豚骨、塩、味噌、醤油。チャーシューはバラ肉を縛って丸くしたもの。煮卵の黄身はとろ~り半熟。麺二郎です。
シャンバラへ侵攻が決定する少し前の出来事です。
辺境にあるカタコンベに何やら怪しげな集団が住み着いてしまったようです。
彼らのすみやかな排除とカタコンベ内の調査をお願いします。
●ロケーション
カタコンベ『セバスティアーノ』
南の辺境地域では比較的規模の大きなカタコンベ。地下の階層は年代も古く、崩壊の危険もあるため、地下3階以下は詳しくは調べられていません。
明かりなどは一切無く、全体的に蟻の巣のような構造をしています。
カルト集団を排除し、カタコンベの地下層(古い資料で10階層である事は確認されている)を可能な限り調査する事が今回の依頼となります。カタコンベの浅い層にはモンスターは居ませんが、深い層には若干のモンスターが居るという記載が残っています。
突入する時間は自由騎士たちに任されているため事前付与などは好きなだけ行えます。ただし日が暮れた後はカタコンベ周辺にイブリース化したモンスターが出るという噂がありますのでお勧めしません。
集団はすでに数ヶ月カタコンベで生活をしているため、カタコンベ内の情報を得る事が出来るかもしれません。
●敵
カルト集団【アクアティック】
アクアディーネ狂信者集団です。あまりにも逸脱した崇拝を行うため住処をなくし、結果カタコンベに住み着きました。16~45歳の男女(ほぼ男)が40人程が共同生活をしています。2、3階層の大きな空間が生活の中心です。
朝・昼・夕・深夜の4回、祭壇の前でアクアディーネに捧げる祈祷があり、それにはほぼ全員が参加します。
常にアクアディーネ(の肖像画)と生活を共にし、アクアディーネのポスターやブロマイドはもちろん、アクアディーネの肖像が縫いこまれた服、アクアディーネの肖像が焼きこまれた食器、アクアディーネの肖像が描かれた抱き枕などと共に生活しています。
全員が何らかの芸術活動をしているアーティストでノウブル。自ら作成した芸術作品を売ることで活動資金としています。アクアディーネへの忠誠(?)を誓う言葉が刻まれたブラックオニキスの腕輪をしています。
バトルスタイルを取得しているものは半数程度。残りは戦闘能力はありません。レンジャー以外のすべてのスタイルがバランスよく居ますが、デミオリの側近以外は戦闘自体はほとんど行った事は無いペーパーバトラーです。
・デミオリ・オタック 32歳。
アクアティックのリーダー。『アクアディーネは俺の■』という意味不明な言葉を常に唱えている異端者。格闘スタイル。数々の格闘技に関する専門書を読破しているが道場などでの鍛錬経験は無い。だがなぜかそれなりに強い。格闘スタイルのランク1全てのスキルをLv2まで取得。素早さに極振りされたステータスの持ち主。
技能スキル(EX) ペーパーマスター:体術などの技術書を時間をかけて読み込むだけである程度トレースできます。ただしあくまで表面上のトレースであり、その精度や効力は本来の修行をしたものには及びません。
・蒼い三連星(ツェペリ、アンナ、サム)
デミオリの側近3人衆。42歳男重戦士、22歳女ヒーラー、18歳男軽戦士。
常にデミオリの傍で行動し、有事の際はデミオリを守る陣形を取ります。
3人ともそれぞれのスタイルのランク1スキルを数個取得しています。
・イブリース化したウルヴァリン 30体
日が暮れてからカタコンベを訪れた際のみ登場。恐ろしいほどの俊敏性に加え、骨をも砕く顎の力もイブリース化で更に強化されており、カタコンベを守るように夜な夜な現れます。戦う場合はハード相当の難易度になります。
●同行NPC
ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなければ皆さんを回復支援します。
所持アイテムは着火剤と保存食(パスタ)です。
所持スキルはステータスシートをご参照ください。
皆様のご参加お待ちしております。
シャンバラへ侵攻が決定する少し前の出来事です。
辺境にあるカタコンベに何やら怪しげな集団が住み着いてしまったようです。
彼らのすみやかな排除とカタコンベ内の調査をお願いします。
●ロケーション
カタコンベ『セバスティアーノ』
南の辺境地域では比較的規模の大きなカタコンベ。地下の階層は年代も古く、崩壊の危険もあるため、地下3階以下は詳しくは調べられていません。
明かりなどは一切無く、全体的に蟻の巣のような構造をしています。
カルト集団を排除し、カタコンベの地下層(古い資料で10階層である事は確認されている)を可能な限り調査する事が今回の依頼となります。カタコンベの浅い層にはモンスターは居ませんが、深い層には若干のモンスターが居るという記載が残っています。
突入する時間は自由騎士たちに任されているため事前付与などは好きなだけ行えます。ただし日が暮れた後はカタコンベ周辺にイブリース化したモンスターが出るという噂がありますのでお勧めしません。
集団はすでに数ヶ月カタコンベで生活をしているため、カタコンベ内の情報を得る事が出来るかもしれません。
●敵
カルト集団【アクアティック】
アクアディーネ狂信者集団です。あまりにも逸脱した崇拝を行うため住処をなくし、結果カタコンベに住み着きました。16~45歳の男女(ほぼ男)が40人程が共同生活をしています。2、3階層の大きな空間が生活の中心です。
朝・昼・夕・深夜の4回、祭壇の前でアクアディーネに捧げる祈祷があり、それにはほぼ全員が参加します。
常にアクアディーネ(の肖像画)と生活を共にし、アクアディーネのポスターやブロマイドはもちろん、アクアディーネの肖像が縫いこまれた服、アクアディーネの肖像が焼きこまれた食器、アクアディーネの肖像が描かれた抱き枕などと共に生活しています。
全員が何らかの芸術活動をしているアーティストでノウブル。自ら作成した芸術作品を売ることで活動資金としています。アクアディーネへの忠誠(?)を誓う言葉が刻まれたブラックオニキスの腕輪をしています。
バトルスタイルを取得しているものは半数程度。残りは戦闘能力はありません。レンジャー以外のすべてのスタイルがバランスよく居ますが、デミオリの側近以外は戦闘自体はほとんど行った事は無いペーパーバトラーです。
・デミオリ・オタック 32歳。
アクアティックのリーダー。『アクアディーネは俺の■』という意味不明な言葉を常に唱えている異端者。格闘スタイル。数々の格闘技に関する専門書を読破しているが道場などでの鍛錬経験は無い。だがなぜかそれなりに強い。格闘スタイルのランク1全てのスキルをLv2まで取得。素早さに極振りされたステータスの持ち主。
技能スキル(EX) ペーパーマスター:体術などの技術書を時間をかけて読み込むだけである程度トレースできます。ただしあくまで表面上のトレースであり、その精度や効力は本来の修行をしたものには及びません。
・蒼い三連星(ツェペリ、アンナ、サム)
デミオリの側近3人衆。42歳男重戦士、22歳女ヒーラー、18歳男軽戦士。
常にデミオリの傍で行動し、有事の際はデミオリを守る陣形を取ります。
3人ともそれぞれのスタイルのランク1スキルを数個取得しています。
・イブリース化したウルヴァリン 30体
日が暮れてからカタコンベを訪れた際のみ登場。恐ろしいほどの俊敏性に加え、骨をも砕く顎の力もイブリース化で更に強化されており、カタコンベを守るように夜な夜な現れます。戦う場合はハード相当の難易度になります。
●同行NPC
ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなければ皆さんを回復支援します。
所持アイテムは着火剤と保存食(パスタ)です。
所持スキルはステータスシートをご参照ください。
皆様のご参加お待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
2個
2個
6個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2018年11月20日
2018年11月20日
†メイン参加者 6人†
●
首都より蒸気列車に揺られ、南の終着駅手前で下車した一行は、そこから更に移動。
ようやく目的地のカタコンベ『セバスティアーノ』の前に立っていた。
「ふぅ~。空気が美味しいわ。それにしても遠かったわね……」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は深呼吸をしながらポツリと呟く。
「全く持って同意する。ここまでの長い移動は私の人生の中でも数えるほどだ」
『貫く正義』ラメッシュ・K・ジェイン(CL3000120)もその言葉に合わせる。
同じアクアディーネ様を信仰するものとして、可能であれば手荒な真似はしたくないという気持ちはラメッシュにもある。だが……何事も行き過ぎは良くない。ここまで行過ぎた行為に及ぶようになってしまった集団はさすがに矯正せざるを得ないだろうと、気持ちを切り替える。
「それにしても……俺の■なんて! アクアディーネ様はみんなのアクアディーネ様よ。独占なんて許さないんだから」
(でも……アクアディーネ様グッズはちょっと興味あるかも)
なにやら想像しているエルシーの表情が少し緩む。
「ふふふーん! カタコンベ探索たーのしみだなぁ! どんなお宝があるのかな~♪ 早く探索したいっ!」
片や目標となるカタコンベを前に、大きなふわふわの尻尾を揺らしながら目を輝かせているのは『策士の偵察部隊』クイニィー・アルジェント(CL3000178)だ。その意識は既にカタコンベの探索で一杯になっている。
今回の依頼には二つの目的がある。一つはカタコンベに住み着いた狂信者集団の速やかな排除。そしてもう一つはカタコンベ自体の調査、探索だ。このカタコンベは古い文献に多少の情報はあったものの、その真偽も含めて不明点が多い。隠された事や未知の事柄に好奇心旺盛なクイニィーにとって、未知のカタコンベの探索などという絶好のチャンスに興味を持たないはずも無かった。
「ほんとにたのしみっ!! 速く探索したいからちゃっちゃと邪魔な人達を片付けちゃおっと!」
軽い言葉の中にもクイニィーがどれほど探索を楽しみにしているかが見て取れる。
「うんうん、そうだよねー! アクアなんとかなんてトンチキな連中は、どかーんとやっつけて、早くカタコンベの調査したいよねっ!」
『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)もまた探索への期待の高まりが抑えきれないようだ。探索時にどういった行動をするのかを楽しそうにクイニィーと話している。
「それでね、カンテラで光源を確保して──」
そんな2人のやりとりを穏やかな表情で眺めていた『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は、そろそろとばかりに皆へ語りかける。
「ではいきましょうか。情報によれば、この時間は彼らにとって大事な朝の祈りの時間。一箇所に集っているはずです」
テオドールからしてみれば彼らの行っている事はとても理解できるものでは無い。神を慕う事は決して悪い事ではない。だがイ・ラプセル国の品位を考えた際、この集団の行動は容認できるものではないのも事実。荒治療にはなるかもしれないが多少の更生の必要になるだろう、と。
「まぁ……彼らなりに迷惑にならぬよう考えた末の結果なのかもしれないのだが」
全く理解し難い。そう思いながらも彼らの思考を少しでも読み解こうとする。
「よーし、しゅっぱつだーーーっ!!」
カーミラの元気のいい声が響く。
カタコンベの中はひんやりとした空気に包まれていた。明かりは一切無く、どこまでも漆黒の闇が続く。
「明かりはお任せを」
ラメッシュの放った光球は柔らかい光を放ち、行く先を照らす。
漆黒の鎧に身を包んだナイトオウル・アラウンド(CL3000395)を先頭にカタコンベを進む。
カンテラを持つ3人もまた、横道の存在などに注意しながら進んでゆく。
……っ
松脂の燃える匂いと、呪文のようなものを唱える沢山の人の気配。情報どおりアクアティックのメンバーはこの先の広くなった空間で朝の祈祷に勤しんでいるようだ。
「彼らにとって毎日の祈祷は絶対の習慣。全員がここにいるといって間違いないでしょう」
ラメッシュの言葉に皆も頷く。
「狙うは……リーダーね」
エルシーが両手に装備したスカーレット・ナックルを打ち鳴らす。
「……」
ナイトオウルが前に出る。彼が無言になる時。それは戦闘態勢に入った合図。カンテラの光に照らされた彼の漆黒の鎧は鈍重な輝きを放つ。
「アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■ぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
広い空間の中央でその祈祷は行われていた。皆が一心不乱に祈りを捧げ、リーダーと思しき男がアクアディーネの肖像画の祭られた祭壇に向かい呪文を唱えている。
パンパンッ──
そこに響き渡る誰かの手を叩く音。集団の動きが止まり、一斉に音のしたほうを向く。
「はいはーい。王国自由騎士だよー! 不法占拠で君達全員即刻退去を勧告しまーす!」
声をかけたのはクイニィー。
「いきなり何だ!!」「私達の聖なる儀式を邪魔するなんて!!」
アクアティックメンバーの空気が変わる。
「戦闘可能なものはデミオリ様の元へっ! それ以外はいつもの場所へ急げっ!」
蒼い三連星が一人、ツェペリが指令を出す。と、同時に集団も一斉に動き出す。
「あれれ? 抵抗しちゃう? 従わない場合は実力行使しかないよね! しょうがないよねー!」
クイニィーが更に挑発する。その顔にはうっすらと笑みが浮かぶ。
ナイトオウル、エルシー、カーミラが前に出ると同時にラメッシュ、クイニィー、デオドールが後ろへ下がる。狂信者集団アクアティックと自由騎士達の戦いが始まった。
「たぁーーーっ!!」
エルシーはそのしなやかな体躯より繰り出す体術で次々と敵を倒していくも、その数の差もあり徐々に敵に囲まれつつあった。
「隙を見せたなっ!!」
エルシーの真後ろをとった敵がエルシーが他のものへ攻撃した瞬間を狙って攻撃を仕掛ける。
「あぶなーーーーいっ!!!」
背後から攻撃せんとする男にカーミラが勢いよく突進する。カーミラは牛の因子を持つケモノビト。その角を利用した突進力は生半端なものではない。
「ぐわぁぁーーーっ!!」
カーミラの突進をマトモに食らった男の意識は一瞬で飛んだ。
「ありがとっ。助かったよ」
エルシーがカーミラに目で合図する。共に格闘スタイルを使いこなすもの。お互いの背中を任せ、目の前の敵へ構えを取る。
「いくよっ!!」「いっくぞーーっ!!」
2人の繰り出す技はお互いを鼓舞し合い、更に高まってゆく。それはまるで2人の演舞。その演舞(こうげき)は受けたものですら魅了するようだった。
「くそっ。まずは相手の回復役をどうにかしろっ!!」
数で勝るアクアティックメンバーは後衛に構えるメンバーに攻撃を仕掛ける。
「しねぇーーーっ!!」
パナケアで仲間を回復していたクイニィーにその攻撃が向かう。
「きゃあっ!?」
クイニィーは思わず目を瞑る。少しの沈黙。クイニィーが目を開けるとそこには悶絶し、ばたりと倒れる男。
そして男の鳩尾へ渾身のヒジをクリーンヒットさせたラメッシュの姿。
「後衛が直接的な戦いが苦手なものしかいないとお思いのようだが、それは早計だ」
彼は回復するだけを良しとせず、自らを常に鍛え、多くの格闘技を身につけている。自ら格闘ヒーラーと名乗る超攻撃系ヒーラーなのだ。
「さてと。逃がしはしませんよ」
テオドールは緋文字とアイスコフィンを巧みに使い分け、集団の行動をコントロールしていく。その絶妙なけん制攻撃は戦闘経験の浅い者達を徐々に追い詰めていく。
圧倒的な殺気を放ちつつ無言のまま剣を振るう漆黒の戦士。変幻自在な格闘術で相手を翻弄する美しき2人の格闘家。さらには後ろでその攻撃を支える回復役と、燃え盛る炎と寒鋭の氷を用いて遠距離から集団を狙う者。戦闘経験の少ないアクアティックの者達は翻弄され、総崩れの様相を呈していた。
「私が相手をするしかあるまい」
3連星に守られるように、奥で構えていたデミオリが動く。
「とりゃぁぁぁーーーーーーっ!!!」
そこへ飛び込んできたのはカーミラ。穆王八駿。幾多の洞窟での修行の果てにカーミラが編み出したその必殺のとび蹴りは自己の瞬発力を爆発的に高め、敵との距離を一気に詰める。
「あなたがリーダーね。大人しく観念しなさいっ」
切り込んだカーミラの後を追うようにエルシーもまた臨戦態勢をとる。
デミオリが構えを取り、三連星もまたデミオリをサポートするように武器を構える。
「我が■たるアクアディーネとの間を邪魔しようとするものよ。せいぜい足掻くがいい!!」
デミオリのその言葉に反応したのはナイトオウルだ。その言葉を聞くや否やすぐに反応する。
「今、なんと仰いましたか? アクアディーネ様を、俺の、なんと?」
ナイトオウルの拳がわなわなと震えている。
「不敬!! 不敬不敬不敬不敬!!! アクアディーネ様は誰のモノでもない!! アクアディーネ様は!! アクアディーネ様は!!! この世を生ける全てを包む光なりっ!!!」
ナイトオウルもまたこの者達とは別ベクトルの飛びぬけた信仰心を持っている。
「こちらを片付けたらすぐにそちらへ向かいますっ!!」
ナイトオウルの攻撃はより一層激しさを増した。
「その構え……貴方も格闘スタイルなんだ。少しは楽しませてよね」
「ふふ。その余裕、数秒後には後悔と変わるであろう」
デミオリは様々な体術の型をいくつも披露しながら、エルシーにプレッシャーをかける。
「確かに型は整っている。それに速さに自信があるのは見て取れる……だけど」
エルシーが感じた違和感。それはすぐに判明する。
それは一瞬だった。
「とりゃーっ!!」
ドゴォォォォーーーーーーン!!!!
見せつけるように型を披露するデミオリにカーミラのぐーパンチが炸裂したのだ。
デミオリの反応速度はかなりものだが、速度と回避は似て非なるもの。自身の型の美しさに酔いしれていたデミオリは不意に近づいてきたカーミラに気づかず、その一撃をもろに顔面に食らってしまったのだ。
3連星は何をしていたのか。なんとデミオリの演舞に気をとられ、すっかり警戒を怠っていた。この3連星、実はデミオリが好き過ぎるが故の親衛隊だった。それゆえにいざ始まったデミオリの演舞に見惚れ、思わず敵への警戒さえ無くしてしまっていたのだ。
「……痛ってぇぇぇぇぇぇーーーーっ!? なに? なんで? パパンにだってぶたれたこと無いのにぃーーーーっ!!」
吹き飛ばされたデミオリは、初めて味わう本気の一撃のそのあまりの激痛にのた打ち回っている。
「うぉぉぉぉおおおおーーーっ!! 痛てぇぇぇぇえええええっぇえ!!」
満を持して登場したリーダーがただの一撃で戦意を消失して悶えている。これにはその場にいた自由騎士も、陶酔するようにデミオリを見ていた三連星も、それまで慣れない戦闘を行っていたアクアティックのメンバーですら言葉を失う。
デミオリの持つ能力『ペーパーマスター』はあらゆる体術の模倣を容易に行える稀有な能力だ。特殊な訓練も無くただ読み込むだけで体現できるようになる。その美しい型を披露したデミオリは体術マスターとして絶対的なリーダーと祭り上げられ、実戦で戦う事などこれまで一度も無く、戦いで痛みを伴う事すら経験してなかったのだ。
ひとしきり悶えたデミオリは、カーミラの元へ駆け寄るや否や頭を地面にめり込ませんばかりの土下座。もう堪忍してくださいと泣きつく結果となった。
「えっと……もしかして終わった?」
すっかり拍子抜けしたエルシーが他の自由騎士を見渡す。
アクアティックのリーダーのとんだ醜態により、この騒動は決着を迎えた。
ただ一人、ナイトオウルだけはその後、感情を静めるのにひと苦労した事は言うまでもない。
●
「で、あんた達カタコンベの事はどれくらい知ってるの?」
リーダーを失い、大人しく投降したメンバーにクイニィーが問いかける。
「我々もよくは知らない……ただ」
「ただ?」
「アクアディーネ様への忠誠心を示す為の儀式を行っていた」
その儀式は所謂度胸試しのようなものだった。アクアディーネ様への忠誠心示すため一人でこのカタコンベの下層へ潜る。そして自身が限界と感じた場所に何か目印となるものを置いて戻ってくるというものだった。何階層まであるかなどについてはメンバーもわからないという。
「じゃぁやっぱり実際潜ってみるしかないよね♪」
すぐにクイニィーをはじめとした探索部隊が組まれる。
「じゃぁいってくるねーっ」
探索班が出発すると監視に残ったナイトオウル、ラメッシュ、テオドールの3人は、一同にうなだれすっかり大人しくなったアクアティックのメンバーを見渡す。
「信仰心が厚い事自体に問題があるわけではない。その表現の仕方が問題なのだ」
ラッシュが問いかける。全てを否定する訳では無く、あくまでその表現方法に是非を問う。元をただせば同じアクアディーネを信奉する民。可能な限り更正を促したいのだ。
「そのとおりである。君達は決して見捨てられた存在ではない。我々もこれ以上君達に危害を加えるつもりは毛頭ない。だがここは故人を敬う場所であり、人の住む場所ではないのだ」
テオドールもまた状況を包み隠さず伝え、アクアティックのメンバーが自ら問題を把握し、行動を起こしやすいよう配慮する。
「そういえば、このカタコンベ内についてどこまで知っているのか教えてくれないか?」
テオドールは優しく穏やかな物言いでメンバーから情報を引き出していく。
『もしもーーし! 聞こえる? こちら探索班。今第5層くらいかな。そういえばアクアティックのメンバーから何か追加で聞き出せた?』
マキナギアからクイニィーの声がする。
「うむ。色々聞いてみたのだが……やはりあの儀式として以外は奥へ進む事も無かったようで有益な情報は無いようだ」
『そっかー。残念。じゃぁまた連絡するねー』
元気の良いカーミラの声と共に通信は切れる。この通信にはマキナ=ギアの通信性能を測る意図もあったのだが今のところ感度も良好。問題ないようだ。
監視するものが他にいれば我々も探索に加われるのではないか? 騒動が終わったあとそう思ったラメッシュは自由騎士団本部へ連絡したのだが……やはりここは辺境。近くに駐屯しているものもおらず、早くとも明日の早朝になるとの事だった。致し方あるまい。ラメッシュはそのまま監視の任務に就いた。
一方落ち着いたナイトオウルはアクアティックのメンバーに語りかける。
「……しかし、あなた方が見目麗しき女神の崇高美に目を輝かせるのは無理もない話です。慈悲深き女神はあなた方の崇拝を許すでしょう」
「おお……アクアディーネ様……」
その言葉に涙するものもいた。皆一様にアクアディーネへ祈りを捧げている。
「『尊い』 はいっ! 皆で声を出してっ!!」
「「「「尊い!」」」」
「そう、その調子。アクアディーネ様は尊いっ!! はいっ!!」
「「「「「アクアディーネ様は尊いっ」」」」」
「よろしいですか!! 『アクアディーネ様は尊い』です!!! 俺の■などと近しい場所に置くのではなく、遠くから崇め奉る精神をしっかり学びなさい」
「は、はいっ!!」
ヘルムを脱ぎ、戦闘モードから切り替わったナイトオウルは、戦闘時の寡黙ぶりとはうって変わって饒舌にアクアディーネへの信仰のあり方を余すところ無く伝えていた。
「はい。ではもう一度『アクアディーネ様は尊い』!!」
ナイトオウルのお説教(?)は探索組が戻ってくるまでの間、ずっと続くのだった。
●
\クックドゥドゥルドゥーーーーッ/
「むむむ、聞こえましたぞ」
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)が鳴き声が聞こえたことを伝える。朝6時だ。
「文献どおりここは10階層だったみたいね。これ以上先は無さそう」
最奥と思われる空間を一通り調べ終え、そこまでの道中なども含め蒸気カメラに収めたエルシーがクイニィーとカーミラに呼びかける。
「うーん。残念。歴史的な大発見は無しかぁ。何かありそうな気がしてたのにっ!!」
カーミラも残念そうだ。
「鶏も鳴いたみたいだし、そろそろタイムアップだね。こちら探索班。今から戻るよっ」
クイニィーがマキナ=ギアで監視班へ連絡する。
『ラジャー。こちらも取り押さえたメンバーの引渡しが終わったところだ。何か見つかったかい?』
「んー……。これと言って特に無いかな」
クイニィーが答える。その声はやはり残念そうだ。
「とはいっても弱めの魔物は至る所にいたし、地形やこの暗さなんかも十分に探索し甲斐はあったかな。資料になりそうな写真は沢山撮っておいたからアカデミーへの報告も問題ないと思う」
エルシーはそれなりの満足感を得たようだ。
「そういえば……ところどころにアクアティックのメンバーが置いたっぽいものがあったなー」
カーミラは例の儀式の名残を見つけていたようだ。
『それじゃぁ気をつけて戻ってきてくれ。皆で待っている』
狂信者集団の排除とカタコンベの調査はこうして幕を閉じたのであった。
首都より蒸気列車に揺られ、南の終着駅手前で下車した一行は、そこから更に移動。
ようやく目的地のカタコンベ『セバスティアーノ』の前に立っていた。
「ふぅ~。空気が美味しいわ。それにしても遠かったわね……」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は深呼吸をしながらポツリと呟く。
「全く持って同意する。ここまでの長い移動は私の人生の中でも数えるほどだ」
『貫く正義』ラメッシュ・K・ジェイン(CL3000120)もその言葉に合わせる。
同じアクアディーネ様を信仰するものとして、可能であれば手荒な真似はしたくないという気持ちはラメッシュにもある。だが……何事も行き過ぎは良くない。ここまで行過ぎた行為に及ぶようになってしまった集団はさすがに矯正せざるを得ないだろうと、気持ちを切り替える。
「それにしても……俺の■なんて! アクアディーネ様はみんなのアクアディーネ様よ。独占なんて許さないんだから」
(でも……アクアディーネ様グッズはちょっと興味あるかも)
なにやら想像しているエルシーの表情が少し緩む。
「ふふふーん! カタコンベ探索たーのしみだなぁ! どんなお宝があるのかな~♪ 早く探索したいっ!」
片や目標となるカタコンベを前に、大きなふわふわの尻尾を揺らしながら目を輝かせているのは『策士の偵察部隊』クイニィー・アルジェント(CL3000178)だ。その意識は既にカタコンベの探索で一杯になっている。
今回の依頼には二つの目的がある。一つはカタコンベに住み着いた狂信者集団の速やかな排除。そしてもう一つはカタコンベ自体の調査、探索だ。このカタコンベは古い文献に多少の情報はあったものの、その真偽も含めて不明点が多い。隠された事や未知の事柄に好奇心旺盛なクイニィーにとって、未知のカタコンベの探索などという絶好のチャンスに興味を持たないはずも無かった。
「ほんとにたのしみっ!! 速く探索したいからちゃっちゃと邪魔な人達を片付けちゃおっと!」
軽い言葉の中にもクイニィーがどれほど探索を楽しみにしているかが見て取れる。
「うんうん、そうだよねー! アクアなんとかなんてトンチキな連中は、どかーんとやっつけて、早くカタコンベの調査したいよねっ!」
『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)もまた探索への期待の高まりが抑えきれないようだ。探索時にどういった行動をするのかを楽しそうにクイニィーと話している。
「それでね、カンテラで光源を確保して──」
そんな2人のやりとりを穏やかな表情で眺めていた『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は、そろそろとばかりに皆へ語りかける。
「ではいきましょうか。情報によれば、この時間は彼らにとって大事な朝の祈りの時間。一箇所に集っているはずです」
テオドールからしてみれば彼らの行っている事はとても理解できるものでは無い。神を慕う事は決して悪い事ではない。だがイ・ラプセル国の品位を考えた際、この集団の行動は容認できるものではないのも事実。荒治療にはなるかもしれないが多少の更生の必要になるだろう、と。
「まぁ……彼らなりに迷惑にならぬよう考えた末の結果なのかもしれないのだが」
全く理解し難い。そう思いながらも彼らの思考を少しでも読み解こうとする。
「よーし、しゅっぱつだーーーっ!!」
カーミラの元気のいい声が響く。
カタコンベの中はひんやりとした空気に包まれていた。明かりは一切無く、どこまでも漆黒の闇が続く。
「明かりはお任せを」
ラメッシュの放った光球は柔らかい光を放ち、行く先を照らす。
漆黒の鎧に身を包んだナイトオウル・アラウンド(CL3000395)を先頭にカタコンベを進む。
カンテラを持つ3人もまた、横道の存在などに注意しながら進んでゆく。
……っ
松脂の燃える匂いと、呪文のようなものを唱える沢山の人の気配。情報どおりアクアティックのメンバーはこの先の広くなった空間で朝の祈祷に勤しんでいるようだ。
「彼らにとって毎日の祈祷は絶対の習慣。全員がここにいるといって間違いないでしょう」
ラメッシュの言葉に皆も頷く。
「狙うは……リーダーね」
エルシーが両手に装備したスカーレット・ナックルを打ち鳴らす。
「……」
ナイトオウルが前に出る。彼が無言になる時。それは戦闘態勢に入った合図。カンテラの光に照らされた彼の漆黒の鎧は鈍重な輝きを放つ。
「アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■、アクアディーネは俺の■ぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
広い空間の中央でその祈祷は行われていた。皆が一心不乱に祈りを捧げ、リーダーと思しき男がアクアディーネの肖像画の祭られた祭壇に向かい呪文を唱えている。
パンパンッ──
そこに響き渡る誰かの手を叩く音。集団の動きが止まり、一斉に音のしたほうを向く。
「はいはーい。王国自由騎士だよー! 不法占拠で君達全員即刻退去を勧告しまーす!」
声をかけたのはクイニィー。
「いきなり何だ!!」「私達の聖なる儀式を邪魔するなんて!!」
アクアティックメンバーの空気が変わる。
「戦闘可能なものはデミオリ様の元へっ! それ以外はいつもの場所へ急げっ!」
蒼い三連星が一人、ツェペリが指令を出す。と、同時に集団も一斉に動き出す。
「あれれ? 抵抗しちゃう? 従わない場合は実力行使しかないよね! しょうがないよねー!」
クイニィーが更に挑発する。その顔にはうっすらと笑みが浮かぶ。
ナイトオウル、エルシー、カーミラが前に出ると同時にラメッシュ、クイニィー、デオドールが後ろへ下がる。狂信者集団アクアティックと自由騎士達の戦いが始まった。
「たぁーーーっ!!」
エルシーはそのしなやかな体躯より繰り出す体術で次々と敵を倒していくも、その数の差もあり徐々に敵に囲まれつつあった。
「隙を見せたなっ!!」
エルシーの真後ろをとった敵がエルシーが他のものへ攻撃した瞬間を狙って攻撃を仕掛ける。
「あぶなーーーーいっ!!!」
背後から攻撃せんとする男にカーミラが勢いよく突進する。カーミラは牛の因子を持つケモノビト。その角を利用した突進力は生半端なものではない。
「ぐわぁぁーーーっ!!」
カーミラの突進をマトモに食らった男の意識は一瞬で飛んだ。
「ありがとっ。助かったよ」
エルシーがカーミラに目で合図する。共に格闘スタイルを使いこなすもの。お互いの背中を任せ、目の前の敵へ構えを取る。
「いくよっ!!」「いっくぞーーっ!!」
2人の繰り出す技はお互いを鼓舞し合い、更に高まってゆく。それはまるで2人の演舞。その演舞(こうげき)は受けたものですら魅了するようだった。
「くそっ。まずは相手の回復役をどうにかしろっ!!」
数で勝るアクアティックメンバーは後衛に構えるメンバーに攻撃を仕掛ける。
「しねぇーーーっ!!」
パナケアで仲間を回復していたクイニィーにその攻撃が向かう。
「きゃあっ!?」
クイニィーは思わず目を瞑る。少しの沈黙。クイニィーが目を開けるとそこには悶絶し、ばたりと倒れる男。
そして男の鳩尾へ渾身のヒジをクリーンヒットさせたラメッシュの姿。
「後衛が直接的な戦いが苦手なものしかいないとお思いのようだが、それは早計だ」
彼は回復するだけを良しとせず、自らを常に鍛え、多くの格闘技を身につけている。自ら格闘ヒーラーと名乗る超攻撃系ヒーラーなのだ。
「さてと。逃がしはしませんよ」
テオドールは緋文字とアイスコフィンを巧みに使い分け、集団の行動をコントロールしていく。その絶妙なけん制攻撃は戦闘経験の浅い者達を徐々に追い詰めていく。
圧倒的な殺気を放ちつつ無言のまま剣を振るう漆黒の戦士。変幻自在な格闘術で相手を翻弄する美しき2人の格闘家。さらには後ろでその攻撃を支える回復役と、燃え盛る炎と寒鋭の氷を用いて遠距離から集団を狙う者。戦闘経験の少ないアクアティックの者達は翻弄され、総崩れの様相を呈していた。
「私が相手をするしかあるまい」
3連星に守られるように、奥で構えていたデミオリが動く。
「とりゃぁぁぁーーーーーーっ!!!」
そこへ飛び込んできたのはカーミラ。穆王八駿。幾多の洞窟での修行の果てにカーミラが編み出したその必殺のとび蹴りは自己の瞬発力を爆発的に高め、敵との距離を一気に詰める。
「あなたがリーダーね。大人しく観念しなさいっ」
切り込んだカーミラの後を追うようにエルシーもまた臨戦態勢をとる。
デミオリが構えを取り、三連星もまたデミオリをサポートするように武器を構える。
「我が■たるアクアディーネとの間を邪魔しようとするものよ。せいぜい足掻くがいい!!」
デミオリのその言葉に反応したのはナイトオウルだ。その言葉を聞くや否やすぐに反応する。
「今、なんと仰いましたか? アクアディーネ様を、俺の、なんと?」
ナイトオウルの拳がわなわなと震えている。
「不敬!! 不敬不敬不敬不敬!!! アクアディーネ様は誰のモノでもない!! アクアディーネ様は!! アクアディーネ様は!!! この世を生ける全てを包む光なりっ!!!」
ナイトオウルもまたこの者達とは別ベクトルの飛びぬけた信仰心を持っている。
「こちらを片付けたらすぐにそちらへ向かいますっ!!」
ナイトオウルの攻撃はより一層激しさを増した。
「その構え……貴方も格闘スタイルなんだ。少しは楽しませてよね」
「ふふ。その余裕、数秒後には後悔と変わるであろう」
デミオリは様々な体術の型をいくつも披露しながら、エルシーにプレッシャーをかける。
「確かに型は整っている。それに速さに自信があるのは見て取れる……だけど」
エルシーが感じた違和感。それはすぐに判明する。
それは一瞬だった。
「とりゃーっ!!」
ドゴォォォォーーーーーーン!!!!
見せつけるように型を披露するデミオリにカーミラのぐーパンチが炸裂したのだ。
デミオリの反応速度はかなりものだが、速度と回避は似て非なるもの。自身の型の美しさに酔いしれていたデミオリは不意に近づいてきたカーミラに気づかず、その一撃をもろに顔面に食らってしまったのだ。
3連星は何をしていたのか。なんとデミオリの演舞に気をとられ、すっかり警戒を怠っていた。この3連星、実はデミオリが好き過ぎるが故の親衛隊だった。それゆえにいざ始まったデミオリの演舞に見惚れ、思わず敵への警戒さえ無くしてしまっていたのだ。
「……痛ってぇぇぇぇぇぇーーーーっ!? なに? なんで? パパンにだってぶたれたこと無いのにぃーーーーっ!!」
吹き飛ばされたデミオリは、初めて味わう本気の一撃のそのあまりの激痛にのた打ち回っている。
「うぉぉぉぉおおおおーーーっ!! 痛てぇぇぇぇえええええっぇえ!!」
満を持して登場したリーダーがただの一撃で戦意を消失して悶えている。これにはその場にいた自由騎士も、陶酔するようにデミオリを見ていた三連星も、それまで慣れない戦闘を行っていたアクアティックのメンバーですら言葉を失う。
デミオリの持つ能力『ペーパーマスター』はあらゆる体術の模倣を容易に行える稀有な能力だ。特殊な訓練も無くただ読み込むだけで体現できるようになる。その美しい型を披露したデミオリは体術マスターとして絶対的なリーダーと祭り上げられ、実戦で戦う事などこれまで一度も無く、戦いで痛みを伴う事すら経験してなかったのだ。
ひとしきり悶えたデミオリは、カーミラの元へ駆け寄るや否や頭を地面にめり込ませんばかりの土下座。もう堪忍してくださいと泣きつく結果となった。
「えっと……もしかして終わった?」
すっかり拍子抜けしたエルシーが他の自由騎士を見渡す。
アクアティックのリーダーのとんだ醜態により、この騒動は決着を迎えた。
ただ一人、ナイトオウルだけはその後、感情を静めるのにひと苦労した事は言うまでもない。
●
「で、あんた達カタコンベの事はどれくらい知ってるの?」
リーダーを失い、大人しく投降したメンバーにクイニィーが問いかける。
「我々もよくは知らない……ただ」
「ただ?」
「アクアディーネ様への忠誠心を示す為の儀式を行っていた」
その儀式は所謂度胸試しのようなものだった。アクアディーネ様への忠誠心示すため一人でこのカタコンベの下層へ潜る。そして自身が限界と感じた場所に何か目印となるものを置いて戻ってくるというものだった。何階層まであるかなどについてはメンバーもわからないという。
「じゃぁやっぱり実際潜ってみるしかないよね♪」
すぐにクイニィーをはじめとした探索部隊が組まれる。
「じゃぁいってくるねーっ」
探索班が出発すると監視に残ったナイトオウル、ラメッシュ、テオドールの3人は、一同にうなだれすっかり大人しくなったアクアティックのメンバーを見渡す。
「信仰心が厚い事自体に問題があるわけではない。その表現の仕方が問題なのだ」
ラッシュが問いかける。全てを否定する訳では無く、あくまでその表現方法に是非を問う。元をただせば同じアクアディーネを信奉する民。可能な限り更正を促したいのだ。
「そのとおりである。君達は決して見捨てられた存在ではない。我々もこれ以上君達に危害を加えるつもりは毛頭ない。だがここは故人を敬う場所であり、人の住む場所ではないのだ」
テオドールもまた状況を包み隠さず伝え、アクアティックのメンバーが自ら問題を把握し、行動を起こしやすいよう配慮する。
「そういえば、このカタコンベ内についてどこまで知っているのか教えてくれないか?」
テオドールは優しく穏やかな物言いでメンバーから情報を引き出していく。
『もしもーーし! 聞こえる? こちら探索班。今第5層くらいかな。そういえばアクアティックのメンバーから何か追加で聞き出せた?』
マキナギアからクイニィーの声がする。
「うむ。色々聞いてみたのだが……やはりあの儀式として以外は奥へ進む事も無かったようで有益な情報は無いようだ」
『そっかー。残念。じゃぁまた連絡するねー』
元気の良いカーミラの声と共に通信は切れる。この通信にはマキナ=ギアの通信性能を測る意図もあったのだが今のところ感度も良好。問題ないようだ。
監視するものが他にいれば我々も探索に加われるのではないか? 騒動が終わったあとそう思ったラメッシュは自由騎士団本部へ連絡したのだが……やはりここは辺境。近くに駐屯しているものもおらず、早くとも明日の早朝になるとの事だった。致し方あるまい。ラメッシュはそのまま監視の任務に就いた。
一方落ち着いたナイトオウルはアクアティックのメンバーに語りかける。
「……しかし、あなた方が見目麗しき女神の崇高美に目を輝かせるのは無理もない話です。慈悲深き女神はあなた方の崇拝を許すでしょう」
「おお……アクアディーネ様……」
その言葉に涙するものもいた。皆一様にアクアディーネへ祈りを捧げている。
「『尊い』 はいっ! 皆で声を出してっ!!」
「「「「尊い!」」」」
「そう、その調子。アクアディーネ様は尊いっ!! はいっ!!」
「「「「「アクアディーネ様は尊いっ」」」」」
「よろしいですか!! 『アクアディーネ様は尊い』です!!! 俺の■などと近しい場所に置くのではなく、遠くから崇め奉る精神をしっかり学びなさい」
「は、はいっ!!」
ヘルムを脱ぎ、戦闘モードから切り替わったナイトオウルは、戦闘時の寡黙ぶりとはうって変わって饒舌にアクアディーネへの信仰のあり方を余すところ無く伝えていた。
「はい。ではもう一度『アクアディーネ様は尊い』!!」
ナイトオウルのお説教(?)は探索組が戻ってくるまでの間、ずっと続くのだった。
●
\クックドゥドゥルドゥーーーーッ/
「むむむ、聞こえましたぞ」
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)が鳴き声が聞こえたことを伝える。朝6時だ。
「文献どおりここは10階層だったみたいね。これ以上先は無さそう」
最奥と思われる空間を一通り調べ終え、そこまでの道中なども含め蒸気カメラに収めたエルシーがクイニィーとカーミラに呼びかける。
「うーん。残念。歴史的な大発見は無しかぁ。何かありそうな気がしてたのにっ!!」
カーミラも残念そうだ。
「鶏も鳴いたみたいだし、そろそろタイムアップだね。こちら探索班。今から戻るよっ」
クイニィーがマキナ=ギアで監視班へ連絡する。
『ラジャー。こちらも取り押さえたメンバーの引渡しが終わったところだ。何か見つかったかい?』
「んー……。これと言って特に無いかな」
クイニィーが答える。その声はやはり残念そうだ。
「とはいっても弱めの魔物は至る所にいたし、地形やこの暗さなんかも十分に探索し甲斐はあったかな。資料になりそうな写真は沢山撮っておいたからアカデミーへの報告も問題ないと思う」
エルシーはそれなりの満足感を得たようだ。
「そういえば……ところどころにアクアティックのメンバーが置いたっぽいものがあったなー」
カーミラは例の儀式の名残を見つけていたようだ。
『それじゃぁ気をつけて戻ってきてくれ。皆で待っている』
狂信者集団の排除とカタコンベの調査はこうして幕を閉じたのであった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
特殊成果
『アクアディーネ抱き枕』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:エルシー・スカーレット(CL3000368)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:エルシー・スカーレット(CL3000368)
†あとがき†
探索班が探索している間の説得もあり、カタコンベに住み着いた集団の中には今後新たな道を歩むものも出ることでしょう。
またカタコンベの調査結果はアカデミーに伝えられ、自由騎士団での活用も思案されているようです。
MVPはアクアティックに新たな信仰の方向性を示した貴方へ。
ご参加ありがとうございました。
またカタコンベの調査結果はアカデミーに伝えられ、自由騎士団での活用も思案されているようです。
MVPはアクアティックに新たな信仰の方向性を示した貴方へ。
ご参加ありがとうございました。
FL送付済