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【陽動作戦】出航せよ! イ・ラプセル海賊団!!




「というわけで諸君らには海賊になってもらう」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)が唐突にそう告げた。
 時を同じくして発出されたシャンバラ侵攻における『S級指令』。そのS級指令を完遂するための『重要な別任務』として呼び出された自由騎士には状況が把握できない。

 此度のシャンバラ侵攻に向けた重要な別任務。その内容はこうだ。
 シャンバラへの潜入は無論、海からとなる。しかしシャンバラは軍事力は低いものの、海からの他国の侵略を防ぐべく、多くの軍用船が決められた間隔でシャンバラの周辺海域を巡回している。 
 それに対し我々は『スカンディナ海賊団』キャプテンであるアルヴィダ・スカンディナ(nCL3000041)にコンタクトを取り、シャンバラの軍用船の詳細な巡回ルートを把握するに至った。
「それでは、あとはわたくしからご説明させていただきましょう、ええ」
 いつの間にやらそこには『通商連議長』カシミロ・ルンベック(nCL3000024)の姿があった。
 襲撃を行う上で、今回は『イ・ラプセル軍では無い何者か』の襲撃に見立てる必要がある。そこに通商連が協力を申し出て、海賊船と衣装の手配が行われる。という事らしい。
 フレデリックとカシミロの話をあわせて初めて自由騎士たちはこの任務の全容を理解する。

「それにしても何故海賊に?」
 自由騎士たちはもっとな質問をする。

「そこについては改めて説明が必要だろう。本作戦においては『海賊を装うことで襲撃の単発性を演出する』ことが重要なのだ」
 コホン、と一つ咳払いをしてフレデリックが続ける。
「何故ならもう一つの陽動作戦では、イ・ラプセル正規軍として灯台への陽動攻撃を行う事が決定している。同時に二箇所でイ・ラプセル軍による襲撃があったとなれば、シャンバラは更なる襲撃にも警戒を行うだろう。そうなると並行して行う上陸作戦に影響が出てしまう可能性がある。そのためにこちらでは『海賊による単発の襲撃』という装いが必要となるのだ」
 一見突拍子も無いようなこの作戦へ至った経緯を、フレデリックが詳細な情報と共に説明していく。

「皆様のお召しになる衣装や海賊船などにつきましては、わたくしども通商連でご用意させていただきます。もちろん格安で。ええ」
 もみ手に笑顔のカシミロの目は『$』になっている。

「では思う存分暴れてきたまえ、血気盛んな海賊達よ!!」 
 ようやく状況を把握した自由騎士たちに、フレデリックは檄を飛ばす。

「オオォーーーーーっ!!!」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
麺二郎
■成功条件
1.シャンバラ軍用船を襲撃し、潜入部隊への注意を逸らす。
何故このペンネームにしたんだろうとふと真剣に考えることがあります。だって好きだもん。麺二郎です。

いよいよ始まるシャンバラへの侵攻。
防戦一方だったイ・ラプセルもとうとう攻勢へうってでます。

 この依頼は、【S級指令・妖精郷へ】【陽動作戦】のタグのついた依頼に参加した方は参加することができません。
 参加を確認した場合、参加を取り消し、其の費用は返却されません。


その第一歩となるシャンバラへの潜入。ヨウセイの拠点ティルナノグへの潜入というS級指令が完遂されるよう海賊に扮した自由騎士たちによるシャンバラ軍用船の襲撃が今回の任務です。

この襲撃は陽動であるため、軍用船を沈める必要はありません。
いかにド派手に軍用船にアプローチし、注意を惹きつけられるかが重要となります。

まず決めていただくのは海賊団名。かっこよくても可愛くてもOKです。
そして役割。キャプテン、副キャプテン、戦闘員、操舵士等々。
必要なのはリアリティ。いかに一方的に攻めすぎず、海賊として振舞いきれるか。
自由騎士たちの迫真の演技に全ては委ねられているのです。


●ロケーション

 シャンバラ皇国南に位置する半島沖。夕刻。
 通商連のカシミロより得た、シャンバラ軍用船の定期巡回ルートが舞台となります。

 海賊に扮する自由騎士を乗せた船は、ここで待ち伏せし、シャンバラの軍用船を襲撃。
 一定時間軍用船を足止めし、無事離脱することが出来れば任務は成功です。
 軍用船は襲撃された時点では単体で応戦してきますが、一定数の乗船員の戦線離脱、もしくは船体に重大な損傷を受けた場合、一番近くで巡回している軍用船へ応援要請を行います。

 自由騎士の乗る船は蒸気機関を搭載した鉄製の船です。
 シャンバラの魔導攻撃にもある程度は耐えうる頑丈さを備えています。
 船の性能としてはシャンバラの軍用船を大きく上回るため、陽動のための時間稼ぎが十分に達成された後は、前後の移動を阻害される状況でなければ戦線を容易に離脱できます。


●ターゲット

 軍用船『セントエリーゼ』
 船首楼と船尾楼を持ち、3本の帆柱を備えたガレオン船。乗船員は150名ほど。その殆どが魔道による攻撃を行える戦闘員です。
 シャンバラ自体の軍事力の低さもあり、軍用船自体は性能よりも派手さが意識されています。
 そのため船の性能は悪くスピードもあまり出ません。
 大砲などの装備も搭載されてはいますが、精度が良くないため基本的には乗船員による魔導攻撃が主です。
 50名以上の乗船員の戦線離脱、もしくは機関部が破壊され、自力走行が不能になると応援要請を行います。


●サポート

 この作戦ではサポートに入られた方は、様々な用件をこなす一般海賊員となります。
 そのためサポートが多ければ多いほど陽動作戦にリアリティが加算され、よりシャンバラ軍用船の注意を引きつける事が可能となります。


●同行NPC

 ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
 怪しい貴族風マスクを身につけている以外は普段のまま。特に指示が無ければ船の操縦に専念します。
 所持スキルはステータスシートをご参照ください。

ご参加お待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
11モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2018年11月15日

†メイン参加者 8人†




 海賊船フンギ・エ・ファンチューレ号は出航のときを迎える。
「錨をあげろーーーっ!!!」
「高く掲げよ! この旗をっ!!」
 船員達の威勢のいい声が響く。
「おーーっほっほっほ!! わたくし達は泣く子も黙る乙女とキノコ海賊団! 全てを根こそぎ頂戴致しますわー!!」
『ライバルは女海賊』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)は高らかに宣言する。
 ジュリエットには超えるべき目標がある。スカンディナ海賊団アルヴィダ。それはかなり一方的なライバル宣言ではあるのだが、彼女を超えなければならないという強い決意がジュリエットにはある。
 自ら望んで海賊のキャプテンとなった今、アルヴィダのように強く美しい海賊にならなくては。静かな闘志が燃え上がる。

 数時間後。一行は目的地であるシャンバラ軍用船巡航路の程近くに到着する。
『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)はふと、これまでを振り返る。
 アルヴィダさんといい、随分海賊と縁のある人生になってしまった。更には今度は僕自身が海賊になるなんて。
「……まぁいいさ、これも国の為、仲間の為。これより僕は自由騎士ではなく血気盛んな海賊となる!」
 僕の役割は副キャプテン。キャプテンであるジュリエットさんを支える役目だ。無茶をしがちな後輩だからしっかり見ておかないとね。衣装はキャプテンに合わせつつ控えめに……後は僕だと分からない様に口調も変えて、と。 
「演じるのなら徹底的にいかないとね……あー、ごほんごほんっ」
 一息整え咳払いをしたアダムの顔はすっかり海賊のそれだった。

『スウォンの退魔騎士』ランスロット・カースン(CL3000391)はため息をひとつ。
 いざシャンバラを攻めると思えば、海賊の真似事とは……。歴史ある騎士の生まれである彼にはいささかの抵抗感は否めない。だが。これは祖国の為の奉公である。抜かり無く努めなければならぬと気を引き締める。
 思うところはあれども、やるからには万全を期す。普段の清爽な姿からは想像もできない派手な上着に髑髏のマントを羽織ったランスロットは海賊そのものである。
 当然見た目だけではない。此度は海上戦。落水の可能性も考慮し、普段の装備とは別に軽装備に変えている。先の先まで考慮するランスロットに抜かりは無い。
「今から我々は乙女とキノコ海賊団。イ・ラプセルとは縁もゆかりもない無法者である!!」

『聖母殺し』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)は甲板に立ち、海風を受けていた。
「海賊の振りをして本隊に目が行かないよう陽動する……ね」
 ライカは与えられた任務をつぶやく。まぁアタシはこれを成功させて、シャンバラを潰す足掛かりを得るだけ。聖母はこの手で殺した。ライカは拳を握り締める。
「……次はシャンバラの神も殺す」
 ライカの静かな激情は常に胸の奥に燃えている。

「見えたよっ!! シャンバラ軍用船、発見!!」
 髑髏とキノコが描かれたバンダナを巻いた海賊らしい衣装に身を包んだ『小さな海賊騎士』シア・ウィルナーグ(CL3000028)が皆に伝令する。自らの念願でもあったマスト上部の見張り台での監視の任務。遥か遠くの海原を見渡すシアの双眼鏡はシャンバラ軍用船をしっかりと捉えたのだ。
 シアの心は躍る。真似事と言えども広い海原を自由に航海する海賊にはある種の憧れもある。このまま宝探しなんて出来たら……そう思いつつも今回の任務を思い出す。シャンバラ軍用船に乙女とキノコ海賊団の恐ろしさを教えてあげないとっ!
 シアも気合十分だ。
「敵船発見!! 総員戦闘態勢に移れっ!!」
『実直剛拳』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)が見張りからの伝令を皆に伝える。
 アリスタルフは少々気苦労人の気があるようだ。海賊を演じるにあたり決められていく様々な事柄に突っ込みを入れることも無く、流されるまま受け入れていた。
 現に彼の頭には髑髏とキノコのバンダナがしっかりと巻かれている。頭には団を象徴するバンダナ、顔にはアイパッチをつけ、白いシャツにサルエルパンツ。誰よりも堂に入った海賊姿である。
 そして見た目だけではない、シャツの下にはしっかりと鎖帷子を仕込み、イ・ラプセルのオラクルの証明でもある体に浮かんだ紋章には包帯を巻き、万が一にもばれることを防ぐ念の入れようだ。どんなに無法者を装っても、その生来の真面目さが滲み出てしまう。

「何だ!! あの船はっ!?」
 一方シャンバラ軍用船側も捕捉。見張りが覗く望遠鏡にはピンクのハートの中央にキノコ帽を被った髑髏の旗がたなびく。
「この海域に海賊だとっ!? 一体どこの所属だ。スカンディナか? それとも最近活動範囲を広めているダンシングシミターか?」
「どちらでもありませんっ!! 始めて見る旗を掲げていますっ」
「何だとっ!? ……名を挙げようとするルーキーか。我が神の国へ侵攻するとは……愚か者どもめ!!」
 シャンバラ軍用船も一斉に戦闘態勢を整えてゆく。

「カーミ……ローゼちゃん! それじゃこっちからも指示出すねっ」
「りょーかーーいっ! 任せといてっ!!」
『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)はシアからの指示で狙いを定める。カーミラは砲撃手。その姿はスカンディナ海賊団アルヴィダを参考にセクシー女海賊路線だ。アルヴィダにも勝るとも劣らないその豊満な体つきもあり、まるでカーミラのために誂えたような完璧な仕上がり具合だった。
『──出来るだけ派手に暴れてくれたまえ。その襲撃が派手であればあるほどこの陽動の効果は高まる』
 カーミラはフレデリックの指令を思い出す。
「砲撃、ド派手にいっくよーーーっ!! 陽動作戦っ! 開始っ!!」
 カミーラの砲撃は開戦の合図となる。
「どっかんどっかんいくよーーっ!!!」
 カミーラ率いる砲撃部隊の一斉砲撃が始まる。
 無論この砲撃は陽動のためのものだ。軍用船へ命中させる必要はない。むしろ命中させて軍用船を窮地に陥れすぎては、いち早く救援を呼ばれてしまう。
 そのため砲撃は照準を僅かにずらし、軍用船際の海面を狙う。シャンバラの軍用船は旧式のガレオン船。その性能もあり、砲撃によって起こる波や衝撃でも十分に足止め可能なのだ。
 無論シャンバラ軍用船もただ手をこまねいているばかりではない。
 砲撃や魔導部隊による遠距離攻撃が始まるが、砲撃は当たる事は無く、頼みの魔導攻撃もイ・ラプセルの鋼鉄の船にはたいしたダメージを与える事は無い。
『学びの結晶』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は敵船から降り注ぐ攻撃の最中、船医兼雑用係として慌しく動き回る。その姿は青と白のストライプの海賊衣装に猫耳と尻尾。動くたびに猫耳と尻尾が揺れるラブリーキャットである。お世辞抜きにもかわゆい。
「人呼んで海猫のリィンとは私の事です♪ あ、皆さんやりすぎは厳禁ですよ~」
 ばっちり決めポーズをとったフーリィンは他の砲撃手に細かい指示を行いながら、周りをフォローしていく。
 両船は互いに遠距離攻撃を撃ちあい、けん制を繰り返す。
 操舵士を任された『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)はフーリィンからの指示通り巧みな操縦で軍用船からの被弾を最小限に抑えつつも、敵船との距離を徐々に縮めてゆく。
「海をも越え、まだ見ぬ麺を探し歩くワタシの航海術、しかと見られよっ!! 生きることは戦うことですぞっ」

 やがてシャンバラ軍用船と海賊船が接舷直前となったその時、颯爽と船首に立つ人影があった。キャプテンジュリエットその人である。
「わたくしは乙女とキノコ海賊団のキャプテン、人呼んでキャプテンジュリエット!!」
 よく通るその透き通るような声とド派手な爆発音。その名乗りはシャンバラの全乗船員に聞こえ及び、全ての視線が注がれる完璧な名乗り。
「無益な殺生は流儀に反しますから、命まではとりませんわ! ですけれど、抵抗するようであれば無傷のままではいられませんことよ! それでは皆さん、やっておしまいなさい!」
 ジュリエットの号令と共に、敵船へ飛び移ったのはライカ。
 直前に付与したラピッドジーンは更なる加速を生みだし、誰よりも先に敵船へ飛び移ったのだ。
「この距離を……我が神の祝福も無い海賊風情が渡ってきた……だと」
 あまりに突然の襲来に動揺しながらも、単身乗り込んできた海賊を取り囲むシャンバラ兵。そこにいたのは──美しい黒髪を風に揺らし、鋭く紅い眼光を持つ女だった。
「女……だとっ!?」
 シャンバラ兵の驚きの言葉も言い切らぬうちにライカが動く。そのスピードはシャンバラ兵の反応を軽く凌駕する。
「ぐほあっ!?」
 気づけば数人のシャンバラ兵にその最速の拳が打ち込まれ、意識を失う。
 ──こういう時に不殺の権能って面倒よね。それにオラクルというのも。ライカは思う。
「まぁアタシは殺しても構わないけど」
 そうつぶやいたライカだったが、キャプテンの意は汲み取っている。
「女だと思って甘く見るなっ!! こやつは神敵である!!」
 海賊であるならば多くの場合、自分をアピールするものだ。だがライカは大業な名乗りはしなかった。それはまるでこの一撃一撃こそが自分だといわんばかりに。
「リンド……いざ参る」
 ライカを囲むように戦闘体制をとるシャンバラ兵。さすがに数に圧倒するシャンバラ兵を先行して相手どるライカにも緊張が走る。
「とーーーーーーーーーっ!!!!」
 そこへ突撃してきたのはカーミラだ。独自の呼吸法と自己暗示で能力を高めたカーミラは、船に橋がかかるのを待ちきれず、なんと敵船へ向けて必殺のとび蹴りをかまし、そのまま乗り込んで来たのだ。
「この距離をひと蹴りで……こいつも化け物か……」
 慄くシャンバラ兵を尻目にライカとカーミラはここから見事な連携を見せる。ライカの神速の拳が、カーミラの鋭い蹴りが、次々とシャンバラ兵を打ち倒していく。

「……神なんぞに縋る哀れな畜生に豪勢な船なんざ不釣り合いだ。てめぇらにはオンボロ船がお似合いだぜ!! 奪わせろ! てめぇらの全てを奪わせろ! 俺達ゃ乙女とキノコ海賊団! 乙女は着飾る服をご所望だ! 野郎ども! 橋をかけろっ!!」
 アダムの号令にあわせて、軍用船への橋が準備される。ここからは一気に総力戦になる。
「神をも恐れぬおろかな所業。その身をもって償うといい……神敵を殲滅せよ!!」
 けたたましい音と共に船が繋がる。
「ふぅ~。橋も架かったし、さて皆さん……って!? もう切り込んでますっ!?」
 フーリィンが驚くのも無理は無い。橋が架かるや否やすでに皆、敵船へ乗り込んでいたのだ。
「まってくださ~い! 海猫の回復、お忘れじゃないですかぁ~っ」
 フーリィンは慌てて後を追った。
「ヒャッハー! 痛い目にあいたくなければ大人しく金目の物を出すんだよ!」
 堂に入った海賊っぷり。ノリノリのシアは、引き上げた加速に身を任せて船上を駆け巡る。
「我が神を冒涜する者どもめ!! 何が目的だっ!!」
 シャンバラ兵の問いに、待ってましたとばかりのシア。
「ふふ、こんな世の中、武器や火薬はいくらあっても困りはしないよっ!!」
 武器目当て。軍用船を襲うにはもっともな理由だ。
「「その通り!!」」
 そこに別の声がする。
「誰だっ!?」
 シャンバラ兵の視線の先にはポーズを決めるアリスタルフとランスロットの姿。
「乙女とキノコ海賊団、『白天狗』ヴィノ。喜べ、この船は我らが船長の目に留まった」
「同じく『荒ぶるエリンギ』ランス。命が惜しくば、武器を捨て抵抗をやめよ」
 若干上ずった名乗りといい、その通り名といい、シャンバラ兵の怒りを滾らせるには十分な効果だった。
「白天狗に荒ぶるエリンギだとぉ……我が神を愚弄するかぁっ!!」
 シャンバラ兵が一斉に呪文を唱え始める。
「させるかぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!」
 そこへアダムの豪腕が唸る。
「ぎょわぁぁぁーーーーーっ!!」
 アダムの放った一撃は強烈な衝撃と共に、シャンバラ兵を一斉に吹き飛ばす。
「オレは乙女とキノコ海賊団副キャプテン、クラン。お前らを蹂躙するこの名前……よーく覚えておきやがれぇっ!!」
 アダムの名乗りもまた、その堂々とした物言いと溢れ出る風格とが相まって、シャンバラ兵に深く刻まれた。

 それからしばらくは混戦が続く。時間をかけることも作戦のうち故だ。
 ランスロットはシャンバラ兵をむんずと掴み、鋭い殺気を浴びせながら言い放つ。
「武器庫は何処だ。命が惜しくば武器と弾薬をあるだけ出せ」
 シャンバラ兵はおびえながら船尾を指差す。
「そうか。ならオマエはもう用済みだ。死ね」
 ランスロットが更なる殺気を浴びせる。すでに心折れたシャンバラ兵はそのまま気絶した。
「それにしても……何故天狗……」
 吹き飛ばされたシャンバラ兵がつぶやく。
 と、その目の前にはアリスタルフの姿。その瞳からはすでに光が失われている。
「何故って……聞きたいの?」
「ひ、ひぃぃ」
「白卵天狗茸は致死性の毒を持っている非常に危険な毒キノコです」
「な、何を言ってるんだ!?」 
「少量であってもかなり重い症状が現れ、回復しても内臓や脳等に障害が残ると言われています」
「そんな事は聞いてないぞ!! もうやめてくれっ!!」
「摂取直後は消化器系の激しい中毒症状がでるとされています」
「コイツ……目がヤバイ!! 言ってる事も怖い!! 我が神よ……っ(ガクッ)」
 目から光の消えたアリスタルフの早口でまくし立てるような説明はシャンバラ兵を恐怖で暗転させる。

 一方その頃、フーリィンは仲間を回復しながら船と船を繋ぐ橋で強奪した武器を運び込む作業に勤しんでいた。
「ひゃっはー! 略奪ですよっ! 手が空いている人はどんどん武器弾薬を持ってきてください! ヴィスでいくらでも高く売れますからね!」
 あえてシャンバラ兵に聞こえるように、流れ作業でどんどん略奪品を運び込む。
 
「そろそろ頃合ですわね……一気に行きますわよっ」
 力を溜めに溜め込んだジュリエットが力を解放する。それはシャンバラ軍用船を全方位から攻撃せしめるジュリエットの渾身の玻璃の城。
「「「「「ぐわぁぁーーーーっ!!」」」」」
 全方向から降り注ぐ攻撃にシャンバラ兵は次々と倒れていく。
「このわたくしに抵抗するとこのような目に遭いますのよ! おーっほほほ!!」
 高らかに笑うジュリエット。
「くっ……この無法者達に神の鉄槌を……くらえっ!!」
 攻撃を僅かに避けたシャンバラ兵がジュリエットの背後から攻撃を仕掛ける。
「あぶないっ!!」
 そこには身を挺してジュリエットを守るアダムの姿。
「……さ、さすがは副キャプテン。わたくしを身を挺して守るなんて……褒めて差し上げますわっ」
 アダムの行動に喜びが隠しきれないジュリエット。平静を装いつつもその顔は紅潮している。
 だがそれにも気づかぬほど最前線で戦い続けたアダムの体力は消耗していた。
「ウォォオオオォォォーーーーーッ!!!」
 突然アダムが吼える。狂人化──それは自身のピンチにのみ引き起こせる攻撃力を爆発的に上げる手段(わざ)。
 狂人と化したアダムの放つ一撃一撃は更に重みを増し、弾丸の如き疾走でシャンバラ兵をなぎ倒していく。
 彼の通った後に残るは、ただなぎ倒されたシャンバラ兵のみ。
 勝敗は決したのだ。

「食料も良いね!美味しいお菓子があったらそれもちょうだい!」
 シアはどさくさにまぎれて武器だけでなく、美味しいものも頂戴しようとしている。
「ふっふっふ。ヴィスがあっちこっちで喧嘩してるから弾薬は人気商品だー!」
 カーミラも船の装飾品をはがしつつ、襲撃理由を聞き取れる程度に口に出す。
 ある程度の略奪後、ライカはわざと援軍が来るように仕向けた。適度な状況で撤退理由を作る。これもまたリアリティを追求した結果だった。
 
「船長、敵の増援が来たみたいですよ!」
 そこに海賊船の見張り台から敵増援の知らせを受けたフーリィンが、皆へ退却の時を伝える。
 軍用船の一定時間の足止め、武器(お菓子含む)の類の略奪、多くのシャンバラ兵の戦線離脱。これ以上無いほどの成果を上げた乙女とキノコ海賊団。後はきっちり離脱すれば作戦は成功する。

「神の仇成す無法者めっ!! ……名を……名を名乗れっ!!」
 かろうじて意識のあるシャンバラ兵が叫ぶ。

 我らの名は──……っ!!!

「よし、全員船に戻ってるな」
 ランスロットが全員の無事を確かめ、海賊船は一気にヴィスマルク方面へ離脱する。
 増援の軍用船も性能の違いを悟りすぐに追跡をとりやめた。離脱は拍子抜けするほどにあっさり成功する。

「白卵天狗といえなかった……まだまだ自分は惰弱だ」
 勢いに乗り切れなったことを悔やむアリスタルフ。
「略奪品は……カシミロさんが買い取ってくれるかな?」
 戦利品を値踏みしながら、フーリィンは通商連へ取引を持ちかける気のようだ。目が$になったもみ手のカシミロが容易に想像できる。


 後日シャンバラでは新しい手配書が各所に配られ、乙女とキノコ海賊団の名はシャンバラ全土に知れ渡る事となる。

 以下ノ者ヲ捕エタ者ニ懸賞金ヲ与エル

【乙女とキノコ海賊団】
 キャプテン
『高笑い』キャプテンジュリエット
 懸賞金 3000万GP

 副キャプテン
『狂人』クラン
 懸賞金 1500万GP

『豪脚』ローゼ
 懸賞金 620万GP

『語らず』リンド
 懸賞金 620万GP

『白天狗』ヴィノ
 懸賞金 520万GP

『荒ぶるエリンギ』ランス
 懸賞金 520万GP

『お菓子大好き』ウィルナ
 懸賞金 520万GP

『海猫』リィン
 懸賞金 300万GP

『裸マスク』ジロー
 懸賞金 1000GP

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『『海猫』リィン』
取得者: フーリィン・アルカナム(CL3000403)
『『語らず』リンド』
取得者: ライカ・リンドヴルム(CL3000405)
『『お菓子大好き』ウィルナ』
取得者: シア・ウィルナーグ(CL3000028)
『『豪脚』ローゼ』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『『高笑い』キャプテンジュリエット』
取得者: ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)
『『荒ぶるエリンギ』ランス』
取得者: ランスロット・カースン(CL3000391)
『『狂拳』クラン』
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)
『『白天狗』ヴィーノ』
取得者: アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)

†あとがき†

この一戦で乙女とキノコ海賊団およびその団員の名はシャンバラに知れ渡る事となりました。
参加メンバーは立派な賞金首となりましたが、変装や偽名などを巧みに使っているため、特に影響はありません。

MVPは見事な名乗りを演出したキャプテンへ。
声域拡張&アイドルオーラ。完璧な名乗りでシャンバラに新たな海賊団の存在を知らしめました。

懸賞金はその役割や独自の技などによって算出されたものです。
今後まずは億越えを目指し、海賊お(検閲により削除されました)

ご参加ありがとうございました。
FL送付済