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噂の館

「ねえ……知って、いるかい?」
たまたま、本当にたまたま街中を中を歩いていると『芸術は爆発』アンセム・フィンディング(nCL3000009)に出会い話しをしていた時だ。彼からこんな話しを聞いた。
「なん、ふぁ、でも、先日亡くなったとある芸術家の館にイブリースが出るとかなんとか、ふぁ」
そんな話しを彼はなんでもない様に話し始めた。彼の様子から何ともないと言いたげだが、イブリースと聞いては深く聞かざるを得なかった。
「ぼくも、ふぁ、詳しくは知らないけれど、面白半分でそこに入った人が、あそこにイブリースがいたって騒いでいるんだ。ふぁ」
どの様なイブリースなのかと尋ねると、アンセムは首を傾げ「ああ」と呟き、イブリースの存在を否定した。
「あの館にはイブリースはいないよ。ただ、ふぁ」
ただ、何なのだろうと思っているとアンセムは少し考えた後、こう言った。
「きみたち、その館に行ってきたらどうだい? まあ、ちょっとした騒動になると思うけど、楽しめると思うよ」
それじゃあ、と言ってあくびをしながらアンセムはその場を去った。疑念を持ちながらも何となく、興味が引かれたものだからその噂になっていると言う芸術家の館に行ってみることにするのだった。
●
「なあ、今度は誰が来るだろうな?」
「さあ? でも楽しんでいってくれる人だと良いな。そうしたら──」
「「お爺さんも喜んでくれる」」
芸術家の館。そこに二つの影があった。子供だ。子供が二人、そこにはいた。
彼等はここ、芸術家の館に住む亡くなった芸術家が暮らしていた館によく遊びにきていた子供達だ。
亡くなった芸術家は彼等のためにこの館を作ったと言っても過言ではない。それほど彼等を愛していた。
だが、そんな芸術家は亡くなった。だから、彼等はこの館に人を呼び芸術家の名を知らしめようとこの館に人を呼び込み始めたのだった。彼等は人を呼び込み、その人を怖がらせることによって噂を大きくしようとしているのだ。
だが、噂の内容を知らない彼等はこの館に人が寄り付かない様になっている事を知らない。
そう言った場所はとある人物たちには需要があるわけで……。
「ここだな」
芸術家の館に踏み込もうとしている者がいた。彼の名はダウン・フォル。暗殺者だ。
「ここを拠点に、目標を狙う。邪魔者は……排除だ」
ダウンはそう言って芸術家の館に足を踏み入れた。
たまたま、本当にたまたま街中を中を歩いていると『芸術は爆発』アンセム・フィンディング(nCL3000009)に出会い話しをしていた時だ。彼からこんな話しを聞いた。
「なん、ふぁ、でも、先日亡くなったとある芸術家の館にイブリースが出るとかなんとか、ふぁ」
そんな話しを彼はなんでもない様に話し始めた。彼の様子から何ともないと言いたげだが、イブリースと聞いては深く聞かざるを得なかった。
「ぼくも、ふぁ、詳しくは知らないけれど、面白半分でそこに入った人が、あそこにイブリースがいたって騒いでいるんだ。ふぁ」
どの様なイブリースなのかと尋ねると、アンセムは首を傾げ「ああ」と呟き、イブリースの存在を否定した。
「あの館にはイブリースはいないよ。ただ、ふぁ」
ただ、何なのだろうと思っているとアンセムは少し考えた後、こう言った。
「きみたち、その館に行ってきたらどうだい? まあ、ちょっとした騒動になると思うけど、楽しめると思うよ」
それじゃあ、と言ってあくびをしながらアンセムはその場を去った。疑念を持ちながらも何となく、興味が引かれたものだからその噂になっていると言う芸術家の館に行ってみることにするのだった。
●
「なあ、今度は誰が来るだろうな?」
「さあ? でも楽しんでいってくれる人だと良いな。そうしたら──」
「「お爺さんも喜んでくれる」」
芸術家の館。そこに二つの影があった。子供だ。子供が二人、そこにはいた。
彼等はここ、芸術家の館に住む亡くなった芸術家が暮らしていた館によく遊びにきていた子供達だ。
亡くなった芸術家は彼等のためにこの館を作ったと言っても過言ではない。それほど彼等を愛していた。
だが、そんな芸術家は亡くなった。だから、彼等はこの館に人を呼び芸術家の名を知らしめようとこの館に人を呼び込み始めたのだった。彼等は人を呼び込み、その人を怖がらせることによって噂を大きくしようとしているのだ。
だが、噂の内容を知らない彼等はこの館に人が寄り付かない様になっている事を知らない。
そう言った場所はとある人物たちには需要があるわけで……。
「ここだな」
芸術家の館に踏み込もうとしている者がいた。彼の名はダウン・フォル。暗殺者だ。
「ここを拠点に、目標を狙う。邪魔者は……排除だ」
ダウンはそう言って芸術家の館に足を踏み入れた。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.子供達の安全を確保、経緯を聞く
2.暗殺者『ダウン・フォル』を倒せ
2.暗殺者『ダウン・フォル』を倒せ
今回はいろんな仕掛けがある館が舞台です。
自身で仕掛けを考え行動しても構いません。
時間帯は昼に館に入り、解決は夜とします。日は跨ぎません。
ダウン・フォル
とある貴族に雇われた暗殺者で狙いはとある商人です。物語上に関係のない人物たちの小競り合いで雇われた人物です。生活拠点を探していたときに芸術家の館の噂を聞きそこを訪れた人物です。
子供達を見つけ殺そうとしますが、館の仕掛けを熟知している子供たちに逃げられ、探しているところです。
PCが訪れた際にはあなたたちも殺害対象です。隙を見せたりすれば殺されます。
武器は針です。長く、細い針で心臓を一突きします。刺された後は見えず、刺されて十分後に死にます。刺された時は蚊に刺された様な痛みです。気をつけてください。武器は針だけですが、彼の身のこなしは凄まじいものです。ヒットアンドアウェイを得意とします。
子供達
名はありませんが、ダウンに追われています。確保し、ダウンの正体を明かしてもらいましょう。
襲われた事で、彼が武器を所持し、子供達自身が殺されそうになったことを話してくれます。
子供達を確保し、信頼されること、またはダウンの仲間ではないことを証明すれば子供達が自身たちで現れ情報を得ることができます。
自身で仕掛けを考え行動しても構いません。
時間帯は昼に館に入り、解決は夜とします。日は跨ぎません。
ダウン・フォル
とある貴族に雇われた暗殺者で狙いはとある商人です。物語上に関係のない人物たちの小競り合いで雇われた人物です。生活拠点を探していたときに芸術家の館の噂を聞きそこを訪れた人物です。
子供達を見つけ殺そうとしますが、館の仕掛けを熟知している子供たちに逃げられ、探しているところです。
PCが訪れた際にはあなたたちも殺害対象です。隙を見せたりすれば殺されます。
武器は針です。長く、細い針で心臓を一突きします。刺された後は見えず、刺されて十分後に死にます。刺された時は蚊に刺された様な痛みです。気をつけてください。武器は針だけですが、彼の身のこなしは凄まじいものです。ヒットアンドアウェイを得意とします。
子供達
名はありませんが、ダウンに追われています。確保し、ダウンの正体を明かしてもらいましょう。
襲われた事で、彼が武器を所持し、子供達自身が殺されそうになったことを話してくれます。
子供達を確保し、信頼されること、またはダウンの仲間ではないことを証明すれば子供達が自身たちで現れ情報を得ることができます。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
5/10
5/10
公開日
2020年05月02日
2020年05月02日
†メイン参加者 5人†
「アンセムさんの言っていたのは、ココか……」
「ここが噂のお屋敷かー」
「「あっ」」
キース・オーティス(CL3000664)、『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は館を見上げそんな言葉を言った時だ。彼と彼女はお互いの存在に気付いた。
「これはこれは、カノンさん。この様なところで出会うとは、あなたもアンセムさんから?」
「はい! 面白いって聞いて来ちゃいました!」
「ふふっ、そうですか。実は私もです。どうです? ご一緒しませんか?」
「良いですよ!」
「面白いとは聞きましたが、何が出てくるのか……実に楽しみですね」
「芸術家の方の館だと言っていたので、きっと美術品が多くあるんですよ!」
「そうですね。さあ、何があるのか」
「早速入ってみましょう!」
カノンはドアノブに手をかけキースが笑みを浮かべながら館内の美術品に胸をときめかせながら玄関の前に立った時だ。
『ガコッ』
そんな音共に玄関の床が開いた。
「「……ん?」」
視界が下に下がる。落ちているなんて認識もなくいきなり起きた異常事態にカノンはドアノブを強く握り、何とか落ちるのを回避したが、キースはいきなりのことに何の反応もできず、突如開いた床下の落とし穴に落ちていった。
カノンは何が起きたのかわからず呆然としていたが、次の瞬間落とし穴にキースが落ちたのだと気付くと、ドアの部にぶら下がりながら、叫んだ。
「キース!」
「だ、大丈夫です……」
下を見ると、意外に落とし穴は浅かった様ですぐに彼の無事な姿は確認できた。それも、大きなクッションが下にあり、怪我の心配もない設計となっていた。
「よ、よかったぁ〜」
まさかこんな所に落とし穴があるとは思わず未だ呆然としながらキースはそう答えた。
と、その時だ。
「だ、誰ですか?」
玄関が開いた。その扉を開いたのはセアラ・ラングフォード(CL3000634)だ。
キースは見た。彼女は前しか見ておらず下を見ていない。そのため、外の様子を見ようと一歩踏み出そうとしている姿を彼は見た。
「まっ──」
「へ?」
セアラは下を見る。その時にはもう遅かった。
「き、きゃあああああああ!」
彼女は落とし穴に落ちた。
「な、何事ですか?」
「何かあったのでしょうか?」
そんな言葉が館の中から聞こえて来た。
カノンはリュンケンスの瞳を発動し、中の様子を見た。そこには慌ててこちらに走り寄ってくる『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)と何やら、玄関の横についているロープを引っ張った状態の『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)の姿があった。
「……からくり屋敷かな?」
カノンは一人、玄関の扉にへばり付きながらそう呟くのだった。
●
「ああ、酷い目にあった」
「すみません……すみません……」
「ああ、良いんです。聖流さんお気になさらず」
「そうです。聖流様。私の不注意もありましたから……」
「本当に申しわけありません……」
「いいよいいよ。気にしないで、この館のことが何となく分かったからそれで相殺って事で」
「……本当にすみません」
今回の発端を作ってしまった聖流は被害にあった三人に謝り倒している時だ。
「成る程、こうなっているのですね」
そんな事を呟きながらパカパカと玄関前の落とし穴の仕掛けを開いては閉じ開いては閉じと観察しているアンジェリカ。彼女は興味深げにその仕掛けを見ていた。
「それにしても、こういう仕掛けが多くありそうだね。ちょっと館を探索しない?」
「良いですね! 賛成です!」
カノンの言葉に速攻で賛成の声を上げたアンジェリカ。
「良いですよ。面白そうだ」
「私は……」
キースも賛同したが先程失態を犯した聖流は後ろめたさがあるのか素直に賛成し辛そうにしていた。
「聖流様。いきましょう?」
しかしそんな彼女に声をかけ一人帰ろうとしている彼女に声をかける者がいた。セアラだ。
「し、しかし……」
「大丈夫です。気にしすぎですよ。むしろ今帰られては、そちらの方が良い気分がしませんから」
「うっ」
「ですから、いきましょう? 聖流様」
「は、はい」
「じゃあ、皆で探索するという事で!」
「そうですね、しかし、全部見ようとすると時間が足りませんね……どうしましょうか?」
「二組に分かれるのはどうだろうか? 一階と二階で分かれ探索。それなら後で情報交換もできますよアンジェリカさん」
「そうですねキースさん。では、そうしましょう。組は……行きたい方に手をあげましょう」
●
一階
「……美術品が多いな」
「それは、芸術家の館ですから自身の作品を飾っているのでは?」
「なっにがあるかな〜」
一階には聖流、カノンそしてキースの姿があった。彼らは一階を探索しながら周りの様子をキョロキョロと眺めていた。
「私は専門ではないが……この絵画の色彩と奥行きは素晴らしい。この彫刻は、躍動感が素晴らしいな」
「キースちゃん。色々見て回るのは良いけど、さっきみたいに、あっ」
「どうしまし──」
「うわぁ!」
キースが彫刻に触れた時だ。彫刻の首が沈んだ。
『ガコン! チン』
そんな音を鳴らして天井から階段が降って来た。
「ああ、びっくりだ。壊したかと思ったよ」
「いやーすごいなあ」
「……危ないですね。この館」
ボソリと、降って来た階段の近くにいた聖流は興味とは違う意味で胸を高鳴らせていた。率直に言って少し怖かったのだ。
「ところでカノンさん、今のよくわかりましたね」
「うん? ああリュンケンスの瞳を使ってるんだ。いろんな仕掛けが見えて面白いよ」
「そうなんですね。例えばどんな仕掛けがあるんですか?」
「うんと、そうだね。たとえば〜、そこの扉は引き戸で、中には何だろう? 仕掛けを連鎖して何かを運ぶのかな? なんかそんなのとか、そっちの絵には鳩が隠れてたり他には──」
「他には?」
「……子供?」
「子供?」
カノンの目には確かに子供の姿が映っていた。ちょうど落ちて来た階段の上、一階と二階の間に二人の子供が震えながら身を隠していた。
「ん? これは……」
そして、キースは何か光る物を見つけそれを拾っていた。
「針?」
それは大きな針だった。しかし視認し難い程に細い針。それが床に落ちていた。
「何故、こんなものが……」
チラリと足元を見る。見え難いが何やら細い糸が階段の下敷きになっている。
「……どうやら、仕掛ける者と、それに掛かる者がいまこの館にいるらしい」
●
二階
「これは、何でしょうか?」
アンジェリカはいかにも怪しげな紐を引っ張る。
「ひ、ひいいいいぃぃぃぃぃ!」
天井から降って来たグロテスクな人形を見てセアラは悲鳴を上げた。
「あっ、あれは何でしょう?」
「あっあっ、アンジェリカ様!」
「はい? なんでしょう?」
「そこら中の怪しげな者を片っ端から触っていくのはやめてくださいよぉ……」
「? 何故です?」
心底分からないという様に首を傾げる彼女はこの館を一番楽しんでいる者だろう。
「だって、安全な物ばかりじゃないかもしれないじゃないですか」
「大丈夫ですよ。だって、楽しませようという気持ちしか感じませんもの」
「?」
「わかりませんか? 玄関の落とし穴、先ほどの人形、どれもこれも殺傷性なんて一つもなく、逆に怪我をしない様にと配慮してある程です。この館に住んでいた芸術家は誰かを楽しませようとしていたのでしょうね……」
「……」
「そう思うと、楽しまなくては、なんて思ってしまうのです」
「……」
「まあ、想像ですけどね」
「……よし! 楽しみましょうアンジェリカ様」
アンジェリカのその言葉を聞いたセアラは先ほどまでの不安げだった言葉を翻しそう言った。
「ふふっ、そうですね」
「じゃあ、そこの部屋を開いてみましょう」
そう言ってセアラはその扉を開いた。
『プツン』
「へ?」
何か、切れた音がした様なと下を見た。その時だ。
「死ね」
その声の主人はその手に持った大きな針をセアラ目掛けて振り下ろした。
●
一階
「君達、迷子?」
カノンは発見した子供達にそう尋ねた。
首を横に振る子供達。
「君達、ココで何をしている?」
キースは少し強めにそう尋ねた。優しく語りかけようが、気遣おうが無駄に見えたからだ。
「……」
「あんたら、何者だよ!」
一人は黙りを決め込み視線を合わせようともせず震えている、もう一人は果敢に彼らに噛み付く様にそう尋ねた。どちらも何かを怖がっている様に足を震わせ、この状況ですら恐怖を抱いている様に見受けられる。
「私達は自由騎士だ」
「じ、ゆう、騎士?」
「自由騎士! やったこれで助かる!」
「助かる? どういうことかしら?」
助かる、だなんて何かに襲われていたかの様な言葉だ。聖流はそこに疑問を持った。
「危ない奴がいるんだ!」
「殺されそうになったんだ!」
「何?」
「針を持ってた!」
「でかい針だ!」
「それはこういうのかい?」
キールは先ほど拾った針を子供達に見せた。
「それ。それだ!」
「じゃあ、あいつを倒したのか!?」
「いや、この館に仕込まれていた物だ」
キールがそう言うと彼らは顔を開くし怒りの声を上げ始めた。
「っ! あいつ! お爺さんの館にこんな物仕掛けやがって……!」
「ここは、そんな物仕掛けて良い場所じゃない!」
「……ここは一体どんな場所なんですか? 芸術家の館では?」
聖流がそう尋ねると、子供達は口々にこの館のことを話し始めた。
ここは芸術家のお爺さんが子供達が楽しめる様にと作った場所である事、おじいさんとの思い出の場所である事、そしてこの館の主人であるお爺さんが亡くなりお爺さんの名を広めようと小細工した事、子供達は多くを語ってくれた。
「……君達の気持ちはわかった。だがだ、少しやり方が強引だったな」
話しを聞き終わったキースの感想がそれだった。
「なっ、何でだよ!」
「ここが何と噂されているか知っているか? 『イブリースのが出る館だ』」
「なっ!」
「君たちのやり方は人を怖がらせそう言う奴を引き込む手助けをしてしまう行為だった。結果的にだが、な」
「お、俺たちは……」
「そんな、つもりじゃ……」
「だから、あとは任せておけ」
キールはそう言った。
「君達が言う針を持った男も、この館の噂も一掃する事を約束しよう」
「「おじさん」」
「むっ、まあ良い。そうと分かれば行動だ」
「剣呑な人もいるんだなー」
「『サンクチュアリ』危険ですからあなた達はこの階段の上で隠れていてください」
「「わ、わかった」」
さあ、行動を開始しよう。と思ったその時だ。
『き……え……か?』
「! セアラさんどうしました!?」
『二階、ひだり、おく──』
セアラのテレパスはその声と共に途切れた。
「セアラ!」
「っ! 私が韋駄天で急行します!」
「お願いします聖流さん!」
聖流はテレパスの様子から尋常ではない様子であると気付きその速度を上げ現場に急行していった。
「私達も急ぎましょう」
「うん、行こう!」
●
二階
「くっ!」
「ちっ、しぶとい」
その頃、アンジェリカと男は戦いを行なっていた。
(どうしましょうか。セアラ様は……)
アンジェリカは先程まで一緒に戦っていた彼女の様子が気になっていた。
(どう言う事でしょう?)
彼女は先ほどまで元気に戦っていたものだから襲われた時にないもなかったのだと判断していたのだが、幾分か立った後何故か彼女の体調は悪くなっていった。今では立つこともできず床に倒れ込んでいる。
それがどこか彼女には引っかかっていった。
「考え事とは余裕ですね」
「くぅっ!」
アンジェリカはセアラのことが気にかかり、さらに彼女を守りながら戦うと言う状況を強いられ、完全に苦戦していた。
(誰か、早く来て!)
出なければ一つの命が潰えるそう思えて仕方がなかった。
と、その時だ。
「アンジェリカさん!」
聖流の声が聞こえたのはそんな時だった。
「聖流様! くっ! セアラ様を!」
その時、アンジェリカは聞いた。足音、聖流以外の足音だ。足音は二つ、彼女にはわかった。キースとカノン。二人の足音だ。彼らと合流できればこの男を捕らえる事が出来る。そう思った。実際、アンジェリカと男の戦いは五分五分だった。倒れたセアラ、彼女の身を気遣いながら五分五分、なら本領を発揮できれば、仲間が増えれば確実に男を捕縛できるはずだった。
「ちぃっ!」
しかし、それには男も気付いていた。彼らのどちらも只者ではない。彼は彼女の名を知らないがアンジェリカ程の力量の者がさらに増える。そうなれば自身の身も危うい。なればここは……。彼はそう考え逃亡を決意した。
アンジェリカは彼の挙動に気付いた。
「行かせません!」
アンジェリカは逃走を図ろうとした男にギアインパクトを放ち逃亡を阻止しようとしたが、彼の軽い身のこなしによってそれは避けられ、逃亡を許すことになった。
「くっ! 逃しましたか……」
「アンジェリカさん、セアラさん!」
「アンジェリカ、セアラ!」
「こちらは大丈夫です! ただ……」
ちらりと、セアラを見る。
「こちらも大丈夫です。針で心臓を一差しされていましたが直しました」
「そう、ですか。よかった」
セアラも聖流の手によって傷を治し、気は失っているが一命は取り留めた。
「それより、ここに針を持った男がいませんでしたか?」
「ええ、戦闘になりました。その後に……取り逃しました」
「そう、ですか」
「申し訳ありません、私の失態です」
「いいえ、アンジェリカさん。今から探せば良いのです」
「今から皆に手配を始めましょう」
「……そう、ですね」
●
それから、子供達には館の広告としてカノンの劇団で仕掛けたの多い館のお爺さんと子供達の心温まる劇を上演し、その館には人が集まる様になり、ちょっとした有名所となった。
が、そこに潜伏していた男のことだが、どれだけ探しても見つからず翌朝死体となって発見された。彼が何者だったのか、そしてどうしてあそこにいたのか結局分からずじまいのままこの話は幕を閉じたのだった。
「ここが噂のお屋敷かー」
「「あっ」」
キース・オーティス(CL3000664)、『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は館を見上げそんな言葉を言った時だ。彼と彼女はお互いの存在に気付いた。
「これはこれは、カノンさん。この様なところで出会うとは、あなたもアンセムさんから?」
「はい! 面白いって聞いて来ちゃいました!」
「ふふっ、そうですか。実は私もです。どうです? ご一緒しませんか?」
「良いですよ!」
「面白いとは聞きましたが、何が出てくるのか……実に楽しみですね」
「芸術家の方の館だと言っていたので、きっと美術品が多くあるんですよ!」
「そうですね。さあ、何があるのか」
「早速入ってみましょう!」
カノンはドアノブに手をかけキースが笑みを浮かべながら館内の美術品に胸をときめかせながら玄関の前に立った時だ。
『ガコッ』
そんな音共に玄関の床が開いた。
「「……ん?」」
視界が下に下がる。落ちているなんて認識もなくいきなり起きた異常事態にカノンはドアノブを強く握り、何とか落ちるのを回避したが、キースはいきなりのことに何の反応もできず、突如開いた床下の落とし穴に落ちていった。
カノンは何が起きたのかわからず呆然としていたが、次の瞬間落とし穴にキースが落ちたのだと気付くと、ドアの部にぶら下がりながら、叫んだ。
「キース!」
「だ、大丈夫です……」
下を見ると、意外に落とし穴は浅かった様ですぐに彼の無事な姿は確認できた。それも、大きなクッションが下にあり、怪我の心配もない設計となっていた。
「よ、よかったぁ〜」
まさかこんな所に落とし穴があるとは思わず未だ呆然としながらキースはそう答えた。
と、その時だ。
「だ、誰ですか?」
玄関が開いた。その扉を開いたのはセアラ・ラングフォード(CL3000634)だ。
キースは見た。彼女は前しか見ておらず下を見ていない。そのため、外の様子を見ようと一歩踏み出そうとしている姿を彼は見た。
「まっ──」
「へ?」
セアラは下を見る。その時にはもう遅かった。
「き、きゃあああああああ!」
彼女は落とし穴に落ちた。
「な、何事ですか?」
「何かあったのでしょうか?」
そんな言葉が館の中から聞こえて来た。
カノンはリュンケンスの瞳を発動し、中の様子を見た。そこには慌ててこちらに走り寄ってくる『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)と何やら、玄関の横についているロープを引っ張った状態の『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)の姿があった。
「……からくり屋敷かな?」
カノンは一人、玄関の扉にへばり付きながらそう呟くのだった。
●
「ああ、酷い目にあった」
「すみません……すみません……」
「ああ、良いんです。聖流さんお気になさらず」
「そうです。聖流様。私の不注意もありましたから……」
「本当に申しわけありません……」
「いいよいいよ。気にしないで、この館のことが何となく分かったからそれで相殺って事で」
「……本当にすみません」
今回の発端を作ってしまった聖流は被害にあった三人に謝り倒している時だ。
「成る程、こうなっているのですね」
そんな事を呟きながらパカパカと玄関前の落とし穴の仕掛けを開いては閉じ開いては閉じと観察しているアンジェリカ。彼女は興味深げにその仕掛けを見ていた。
「それにしても、こういう仕掛けが多くありそうだね。ちょっと館を探索しない?」
「良いですね! 賛成です!」
カノンの言葉に速攻で賛成の声を上げたアンジェリカ。
「良いですよ。面白そうだ」
「私は……」
キースも賛同したが先程失態を犯した聖流は後ろめたさがあるのか素直に賛成し辛そうにしていた。
「聖流様。いきましょう?」
しかしそんな彼女に声をかけ一人帰ろうとしている彼女に声をかける者がいた。セアラだ。
「し、しかし……」
「大丈夫です。気にしすぎですよ。むしろ今帰られては、そちらの方が良い気分がしませんから」
「うっ」
「ですから、いきましょう? 聖流様」
「は、はい」
「じゃあ、皆で探索するという事で!」
「そうですね、しかし、全部見ようとすると時間が足りませんね……どうしましょうか?」
「二組に分かれるのはどうだろうか? 一階と二階で分かれ探索。それなら後で情報交換もできますよアンジェリカさん」
「そうですねキースさん。では、そうしましょう。組は……行きたい方に手をあげましょう」
●
一階
「……美術品が多いな」
「それは、芸術家の館ですから自身の作品を飾っているのでは?」
「なっにがあるかな〜」
一階には聖流、カノンそしてキースの姿があった。彼らは一階を探索しながら周りの様子をキョロキョロと眺めていた。
「私は専門ではないが……この絵画の色彩と奥行きは素晴らしい。この彫刻は、躍動感が素晴らしいな」
「キースちゃん。色々見て回るのは良いけど、さっきみたいに、あっ」
「どうしまし──」
「うわぁ!」
キースが彫刻に触れた時だ。彫刻の首が沈んだ。
『ガコン! チン』
そんな音を鳴らして天井から階段が降って来た。
「ああ、びっくりだ。壊したかと思ったよ」
「いやーすごいなあ」
「……危ないですね。この館」
ボソリと、降って来た階段の近くにいた聖流は興味とは違う意味で胸を高鳴らせていた。率直に言って少し怖かったのだ。
「ところでカノンさん、今のよくわかりましたね」
「うん? ああリュンケンスの瞳を使ってるんだ。いろんな仕掛けが見えて面白いよ」
「そうなんですね。例えばどんな仕掛けがあるんですか?」
「うんと、そうだね。たとえば〜、そこの扉は引き戸で、中には何だろう? 仕掛けを連鎖して何かを運ぶのかな? なんかそんなのとか、そっちの絵には鳩が隠れてたり他には──」
「他には?」
「……子供?」
「子供?」
カノンの目には確かに子供の姿が映っていた。ちょうど落ちて来た階段の上、一階と二階の間に二人の子供が震えながら身を隠していた。
「ん? これは……」
そして、キースは何か光る物を見つけそれを拾っていた。
「針?」
それは大きな針だった。しかし視認し難い程に細い針。それが床に落ちていた。
「何故、こんなものが……」
チラリと足元を見る。見え難いが何やら細い糸が階段の下敷きになっている。
「……どうやら、仕掛ける者と、それに掛かる者がいまこの館にいるらしい」
●
二階
「これは、何でしょうか?」
アンジェリカはいかにも怪しげな紐を引っ張る。
「ひ、ひいいいいぃぃぃぃぃ!」
天井から降って来たグロテスクな人形を見てセアラは悲鳴を上げた。
「あっ、あれは何でしょう?」
「あっあっ、アンジェリカ様!」
「はい? なんでしょう?」
「そこら中の怪しげな者を片っ端から触っていくのはやめてくださいよぉ……」
「? 何故です?」
心底分からないという様に首を傾げる彼女はこの館を一番楽しんでいる者だろう。
「だって、安全な物ばかりじゃないかもしれないじゃないですか」
「大丈夫ですよ。だって、楽しませようという気持ちしか感じませんもの」
「?」
「わかりませんか? 玄関の落とし穴、先ほどの人形、どれもこれも殺傷性なんて一つもなく、逆に怪我をしない様にと配慮してある程です。この館に住んでいた芸術家は誰かを楽しませようとしていたのでしょうね……」
「……」
「そう思うと、楽しまなくては、なんて思ってしまうのです」
「……」
「まあ、想像ですけどね」
「……よし! 楽しみましょうアンジェリカ様」
アンジェリカのその言葉を聞いたセアラは先ほどまでの不安げだった言葉を翻しそう言った。
「ふふっ、そうですね」
「じゃあ、そこの部屋を開いてみましょう」
そう言ってセアラはその扉を開いた。
『プツン』
「へ?」
何か、切れた音がした様なと下を見た。その時だ。
「死ね」
その声の主人はその手に持った大きな針をセアラ目掛けて振り下ろした。
●
一階
「君達、迷子?」
カノンは発見した子供達にそう尋ねた。
首を横に振る子供達。
「君達、ココで何をしている?」
キースは少し強めにそう尋ねた。優しく語りかけようが、気遣おうが無駄に見えたからだ。
「……」
「あんたら、何者だよ!」
一人は黙りを決め込み視線を合わせようともせず震えている、もう一人は果敢に彼らに噛み付く様にそう尋ねた。どちらも何かを怖がっている様に足を震わせ、この状況ですら恐怖を抱いている様に見受けられる。
「私達は自由騎士だ」
「じ、ゆう、騎士?」
「自由騎士! やったこれで助かる!」
「助かる? どういうことかしら?」
助かる、だなんて何かに襲われていたかの様な言葉だ。聖流はそこに疑問を持った。
「危ない奴がいるんだ!」
「殺されそうになったんだ!」
「何?」
「針を持ってた!」
「でかい針だ!」
「それはこういうのかい?」
キールは先ほど拾った針を子供達に見せた。
「それ。それだ!」
「じゃあ、あいつを倒したのか!?」
「いや、この館に仕込まれていた物だ」
キールがそう言うと彼らは顔を開くし怒りの声を上げ始めた。
「っ! あいつ! お爺さんの館にこんな物仕掛けやがって……!」
「ここは、そんな物仕掛けて良い場所じゃない!」
「……ここは一体どんな場所なんですか? 芸術家の館では?」
聖流がそう尋ねると、子供達は口々にこの館のことを話し始めた。
ここは芸術家のお爺さんが子供達が楽しめる様にと作った場所である事、おじいさんとの思い出の場所である事、そしてこの館の主人であるお爺さんが亡くなりお爺さんの名を広めようと小細工した事、子供達は多くを語ってくれた。
「……君達の気持ちはわかった。だがだ、少しやり方が強引だったな」
話しを聞き終わったキースの感想がそれだった。
「なっ、何でだよ!」
「ここが何と噂されているか知っているか? 『イブリースのが出る館だ』」
「なっ!」
「君たちのやり方は人を怖がらせそう言う奴を引き込む手助けをしてしまう行為だった。結果的にだが、な」
「お、俺たちは……」
「そんな、つもりじゃ……」
「だから、あとは任せておけ」
キールはそう言った。
「君達が言う針を持った男も、この館の噂も一掃する事を約束しよう」
「「おじさん」」
「むっ、まあ良い。そうと分かれば行動だ」
「剣呑な人もいるんだなー」
「『サンクチュアリ』危険ですからあなた達はこの階段の上で隠れていてください」
「「わ、わかった」」
さあ、行動を開始しよう。と思ったその時だ。
『き……え……か?』
「! セアラさんどうしました!?」
『二階、ひだり、おく──』
セアラのテレパスはその声と共に途切れた。
「セアラ!」
「っ! 私が韋駄天で急行します!」
「お願いします聖流さん!」
聖流はテレパスの様子から尋常ではない様子であると気付きその速度を上げ現場に急行していった。
「私達も急ぎましょう」
「うん、行こう!」
●
二階
「くっ!」
「ちっ、しぶとい」
その頃、アンジェリカと男は戦いを行なっていた。
(どうしましょうか。セアラ様は……)
アンジェリカは先程まで一緒に戦っていた彼女の様子が気になっていた。
(どう言う事でしょう?)
彼女は先ほどまで元気に戦っていたものだから襲われた時にないもなかったのだと判断していたのだが、幾分か立った後何故か彼女の体調は悪くなっていった。今では立つこともできず床に倒れ込んでいる。
それがどこか彼女には引っかかっていった。
「考え事とは余裕ですね」
「くぅっ!」
アンジェリカはセアラのことが気にかかり、さらに彼女を守りながら戦うと言う状況を強いられ、完全に苦戦していた。
(誰か、早く来て!)
出なければ一つの命が潰えるそう思えて仕方がなかった。
と、その時だ。
「アンジェリカさん!」
聖流の声が聞こえたのはそんな時だった。
「聖流様! くっ! セアラ様を!」
その時、アンジェリカは聞いた。足音、聖流以外の足音だ。足音は二つ、彼女にはわかった。キースとカノン。二人の足音だ。彼らと合流できればこの男を捕らえる事が出来る。そう思った。実際、アンジェリカと男の戦いは五分五分だった。倒れたセアラ、彼女の身を気遣いながら五分五分、なら本領を発揮できれば、仲間が増えれば確実に男を捕縛できるはずだった。
「ちぃっ!」
しかし、それには男も気付いていた。彼らのどちらも只者ではない。彼は彼女の名を知らないがアンジェリカ程の力量の者がさらに増える。そうなれば自身の身も危うい。なればここは……。彼はそう考え逃亡を決意した。
アンジェリカは彼の挙動に気付いた。
「行かせません!」
アンジェリカは逃走を図ろうとした男にギアインパクトを放ち逃亡を阻止しようとしたが、彼の軽い身のこなしによってそれは避けられ、逃亡を許すことになった。
「くっ! 逃しましたか……」
「アンジェリカさん、セアラさん!」
「アンジェリカ、セアラ!」
「こちらは大丈夫です! ただ……」
ちらりと、セアラを見る。
「こちらも大丈夫です。針で心臓を一差しされていましたが直しました」
「そう、ですか。よかった」
セアラも聖流の手によって傷を治し、気は失っているが一命は取り留めた。
「それより、ここに針を持った男がいませんでしたか?」
「ええ、戦闘になりました。その後に……取り逃しました」
「そう、ですか」
「申し訳ありません、私の失態です」
「いいえ、アンジェリカさん。今から探せば良いのです」
「今から皆に手配を始めましょう」
「……そう、ですね」
●
それから、子供達には館の広告としてカノンの劇団で仕掛けたの多い館のお爺さんと子供達の心温まる劇を上演し、その館には人が集まる様になり、ちょっとした有名所となった。
が、そこに潜伏していた男のことだが、どれだけ探しても見つからず翌朝死体となって発見された。彼が何者だったのか、そしてどうしてあそこにいたのか結局分からずじまいのままこの話は幕を閉じたのだった。