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マディラシトリンとロベルトドーンの絆

●
ラスカルズの数あるアジトの一つ。
「ジョセフお兄ちゃんが捕まった!? ……ウソでしょ」
驚いた表情でツインテールを揺らすのはジョアンナ・R・ロベルトドーン。
その胸元には深いオレンジ色に輝く宝石のネックレス。
男家系のロベルトドーン家では珍しい16歳の少女だ。
元々才能や他の兄弟との研鑽により、強く美しく純真に成長していた。
女性だけの集団「コルレオン」のリーダーであり、幹部ではないもののその実力は幹部に匹敵するとも言われている存在だ。
「やってくれたわね……。コルレオンも動くわよっ」
ジョアンナが皆に声をかけると空気が変わる。張り詰めるのだ。
「ジョアンナ様。今回はどういう作戦で」
黒いゴシックメイド服に眼鏡の女性が傅く。その髪は綺麗にオールバックで纏められ、凛とした雰囲気と清潔感が漂う。所謂できるメイド長のようないでたちだ。
「あのお兄ちゃんを捕まえるなんて……先ずは実力を知りたいわ」
「わかりました。ではあのゴミムシ共……失礼しました。自由騎士の実力を図れるよう手配いたします」
「任せるわ。それじゃ、準備が出来たら教えてね。あー楽しみ!!」
ラスカルズの中でも異色を放つ集団『コルレオン』。
主な活動は魔物討伐(主に食料的なもの)とアジトの守護警備。状況によっては潜入捜査なども行う。
コルレオンが今、新たなターゲットとして自由騎士団に目をつけた。
●
「うん? これは……? とにかく伝えるか」
自由騎士をいつものように呼び出した『演算士』テンカイ・P・ホーンテンだったが、訝しげな顔をしている。
「どうした?」
いつもと様子が違うテンカイに場に居た自由騎士が尋ねる。
「郊外で荷馬車が襲われる演算が出たんだが……その後の被害が導き出せないんだ」
「……どういうことだ??」
「よくわからん。とりあえず襲われる事は確かなんだ。急いで向かってくれ」
それじゃ頼んだよ、とテンカイはいつもどおり部屋の奥へ消えた。
ラスカルズの数あるアジトの一つ。
「ジョセフお兄ちゃんが捕まった!? ……ウソでしょ」
驚いた表情でツインテールを揺らすのはジョアンナ・R・ロベルトドーン。
その胸元には深いオレンジ色に輝く宝石のネックレス。
男家系のロベルトドーン家では珍しい16歳の少女だ。
元々才能や他の兄弟との研鑽により、強く美しく純真に成長していた。
女性だけの集団「コルレオン」のリーダーであり、幹部ではないもののその実力は幹部に匹敵するとも言われている存在だ。
「やってくれたわね……。コルレオンも動くわよっ」
ジョアンナが皆に声をかけると空気が変わる。張り詰めるのだ。
「ジョアンナ様。今回はどういう作戦で」
黒いゴシックメイド服に眼鏡の女性が傅く。その髪は綺麗にオールバックで纏められ、凛とした雰囲気と清潔感が漂う。所謂できるメイド長のようないでたちだ。
「あのお兄ちゃんを捕まえるなんて……先ずは実力を知りたいわ」
「わかりました。ではあのゴミムシ共……失礼しました。自由騎士の実力を図れるよう手配いたします」
「任せるわ。それじゃ、準備が出来たら教えてね。あー楽しみ!!」
ラスカルズの中でも異色を放つ集団『コルレオン』。
主な活動は魔物討伐(主に食料的なもの)とアジトの守護警備。状況によっては潜入捜査なども行う。
コルレオンが今、新たなターゲットとして自由騎士団に目をつけた。
●
「うん? これは……? とにかく伝えるか」
自由騎士をいつものように呼び出した『演算士』テンカイ・P・ホーンテンだったが、訝しげな顔をしている。
「どうした?」
いつもと様子が違うテンカイに場に居た自由騎士が尋ねる。
「郊外で荷馬車が襲われる演算が出たんだが……その後の被害が導き出せないんだ」
「……どういうことだ??」
「よくわからん。とりあえず襲われる事は確かなんだ。急いで向かってくれ」
それじゃ頼んだよ、とテンカイはいつもどおり部屋の奥へ消えた。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.荷馬車の無事
2.襲った集団の排除
2.襲った集団の排除
のど飴と加湿器ってすばらしい。麺です。
隣町へ移動中の荷馬車が襲われました。荷馬車を襲う集団の排除が依頼目的です。
ですが……どうやらただの盗賊では無いようです。
●ロケーション
主と郊外の谷沿いの街道。お昼。街道の周りは20Mはあろう巨岩から砂利上のものまで大小さまざまな岩石に覆われています。
隣町へ食料を運ぶ貨物車が襲われましたが、縄で縛られているものの略奪や暴力は行われていません。
襲った馬車の前でコルレオンの8人の構成メンバーが待ち構えています。見える場所にはジョアンナとアンは居ません。
●登場人物
ラスカルズ『コルレオン』
・ジョアンナ・R・ロベルトドーン。
コルレオンの若きリーダー。16歳。幻想種(竜人)とのマザリモノ。背中に竜の羽を持つが飛ぶことはできない。
ゴリゴリの格闘スタイルで非常にタフネス。
純真で快活な少女だが、育った環境もあり善悪の区別は無く常識を知らない。
腰まで程ある飴色の髪をツインテールにし、ホットパンツにTシャツと動きやすさ重視。体型がお子ちゃまな事は少し気にしています。
活発で生傷が耐えないため、体の至る所に貼られた絆創膏もトレードマーク。
活性化スキルは震撃 Lv1、鉄山靠 Lv1、影狼 Lv1、旋風腿 Lv1、超回復、精神系耐性、パラライズ耐性、アイドルオーラ、体内時計。
超回復(EX) 意識がある限り常に一定量HPが回復する。
・アン・デュナーク
ジョアンナのお目付け役。23歳。幻想種(蟒蛇)とのマザリモノ。背中が蛇のうろこで覆われているため、うなじを見せるような服装は好まない。ゴシックメイド服の下には爆裂ボディが隠れている。ジョアンナ以外には非常に毒舌。
錬金術スタイル。知略派なので直接戦うことは少ないが戦えば強い。
・部下8人
コレルオン構成メンバー。14~28までの女性。みな肉食動物系ケモノビトとのマザリモノ。
格闘スタイル、軽戦士スタイル、ヒーラースタイル、魔導士スタイルがそれぞれ2人ずつ。
全員が精神系耐性とおもてなしを所持。
皆ある程度の実力者ではあるのだが、ラスカルズの輩しか見ていないのでマトモな男を殆ど知らない。
一定の実力を示せば撤退します。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなければ囚われた商人の保護を行います。
所持アイテムは着火剤と保存食(パスタ)です。
所持スキルはステータスシートをご参照ください。
皆さまのご参加心よりお待ちしております。
隣町へ移動中の荷馬車が襲われました。荷馬車を襲う集団の排除が依頼目的です。
ですが……どうやらただの盗賊では無いようです。
●ロケーション
主と郊外の谷沿いの街道。お昼。街道の周りは20Mはあろう巨岩から砂利上のものまで大小さまざまな岩石に覆われています。
隣町へ食料を運ぶ貨物車が襲われましたが、縄で縛られているものの略奪や暴力は行われていません。
襲った馬車の前でコルレオンの8人の構成メンバーが待ち構えています。見える場所にはジョアンナとアンは居ません。
●登場人物
ラスカルズ『コルレオン』
・ジョアンナ・R・ロベルトドーン。
コルレオンの若きリーダー。16歳。幻想種(竜人)とのマザリモノ。背中に竜の羽を持つが飛ぶことはできない。
ゴリゴリの格闘スタイルで非常にタフネス。
純真で快活な少女だが、育った環境もあり善悪の区別は無く常識を知らない。
腰まで程ある飴色の髪をツインテールにし、ホットパンツにTシャツと動きやすさ重視。体型がお子ちゃまな事は少し気にしています。
活発で生傷が耐えないため、体の至る所に貼られた絆創膏もトレードマーク。
活性化スキルは震撃 Lv1、鉄山靠 Lv1、影狼 Lv1、旋風腿 Lv1、超回復、精神系耐性、パラライズ耐性、アイドルオーラ、体内時計。
超回復(EX) 意識がある限り常に一定量HPが回復する。
・アン・デュナーク
ジョアンナのお目付け役。23歳。幻想種(蟒蛇)とのマザリモノ。背中が蛇のうろこで覆われているため、うなじを見せるような服装は好まない。ゴシックメイド服の下には爆裂ボディが隠れている。ジョアンナ以外には非常に毒舌。
錬金術スタイル。知略派なので直接戦うことは少ないが戦えば強い。
・部下8人
コレルオン構成メンバー。14~28までの女性。みな肉食動物系ケモノビトとのマザリモノ。
格闘スタイル、軽戦士スタイル、ヒーラースタイル、魔導士スタイルがそれぞれ2人ずつ。
全員が精神系耐性とおもてなしを所持。
皆ある程度の実力者ではあるのだが、ラスカルズの輩しか見ていないのでマトモな男を殆ど知らない。
一定の実力を示せば撤退します。
●同行NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
特に指示がなければ囚われた商人の保護を行います。
所持アイテムは着火剤と保存食(パスタ)です。
所持スキルはステータスシートをご参照ください。
皆さまのご参加心よりお待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2018年12月22日
2018年12月22日
†メイン参加者 6人†
●
ラスカルズ。略奪、殺人、人攫い……凡そ思いつく悪行の限りを尽くす下衆の集団。
この日、自由騎士にとってそんなラスカルズの印象が大きく変わる事となる。
「……驚いた。本当に居るな」
『実直剛拳』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)は正直驚いていた。
確かに荷馬車の持ち主であろう商人は場所の近くで後ろ手に縛られているが、遠目に見ても命に別状があるような状態ではなさそうだ。
普通の盗賊ならさっさと殺すなり、馬車ごと奪って襲撃現場に長居などしないだろう。
やはり俺達は誘い出されたのかもしれないな──アリスタルフはそう感じざる得なかった。
「逃げずに待ち伏せですか……何か考えがあるんですかねぇ」
『飢えた白狼』リンネ・スズカ(CL3000361)も感じた違和感を言葉にする。
ラスカルズと思われる面々は、襲った荷馬車の前で何かを待つように動かない。荷馬車から貨物を略奪するような行為は見て取れない。
まぁ私としては正面戦闘は願ったり叶ったりなのですが──常日頃より道場での稽古を欠かさないリンネとしては、その違和感以上に稽古の成果を実感できるその場所が目の前に迫ることの高揚感が上回っているようだ。期待からかその大きく立派な尻尾が揺れる。
(なんで待ち構えているのかな)
『慈愛の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)が感じた疑問はこれまでの経験に基づいている。今までそんなことあった? 被害が水鏡に写ってないみたいだし、罠? 様々な憶測がアリアの脳裏を過ぎる。
ラスカルズに関してはアリアは、自由騎士の中でもことさら深く関わっている。略奪、強盗、蹂躙、人攫い。そのような行為を嗤いながら行う集団。それがアリアのもっているラスカルズのイメージだった。これまでの経験を鑑みてもこのようなケースは無かった。
感じた違和感、遮蔽物の多い土地が一層アリアを警戒させる。
アリアは敢えて感知する感情の絞らず、強い感情に反応できるよう意識を集中し続ける。
一方の『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)はやる気満々だ。
(頭目は竜が混じってて、しかも私と同じ格闘スタイル! 腕が鳴るってヤツだね!)
「待ち構えてるってことは何か策でもあるのかな?」
策だろうが企みだろうが、ぶっ潰してやる──拳を打ち鳴らすカーミラの黄金の瞳は、静かに燃えていた。
襲われた荷馬車のすぐ近くまでやってきた自由騎士たち。そこには襲撃したと思われる集団がいた。当然あちらも自由騎士を認識しているはずだが、襲い掛かってくる様子は無い。
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は改めて相手を見渡す。
(……全員女性!? それに何というか賊にしては小綺麗というか……)
自身が持つ盗賊のイメージとはかけ離れるそのいでたちに、エルシーは少し困惑する。
「まぁ、いいわ」
とにかく全員捕縛すればいい話。詳しい話はそれからよ──エルシーは籠手を合わせる。戦闘準備は万全だ。
「君達の目的はなんだ? 何か言い分があるなら聞こう」
周囲を警戒しながらも、アリスタルフは問う。その真意を確かめんがために。
「我々はコルレオン。先ずは手合わせ願おうか」
アリスタルフの問いに答えは無い。場を包む空気が変わり一糸乱れぬ統率の取れた動き。女達が戦闘態勢に入ったのだ。
「女性と戦うのは苦手なんだが……」
ふぅと息を吐くアリタルフ。コルレオンと自由騎士の戦いが幕を開ける。
●
(フフッ。始まったみたいね)
「よおーし!! じゃぁいっくよー!!」
カーミラがふん、と気合を入れると龍氣螺合で自己を強化する。それにあわせてエルシーとアリスタルフも前へでる。『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279) は後方から照準を合わせ、アリアはすぅと一歩引きヒルダの横へ。作戦メンバーの回復能力も考慮し、先ずは後方から出来るだけダメージを抑える作戦を取る。リンネもまた、前へ出て拳を合わせたい気持ちをぐっと抑えて、後方からの回復支援に従事する。
双方の戦闘準備が終わると合図も無く、戦いの火蓋は切って落とされる。
まず皆が考えたのは回復層の差。回復の差は戦いにおいて大きく戦況を左右する。長引けばそれだけ不利になるのは確実だ。
だが自由騎士にもアドバンテージがある。相手はこちらの戦闘スタイルを知らないが、こちらは彼女達の戦闘スタイルを認識している。この差は大きい。そしてその差は開始直後にこそ如実に現れる。
「ハァーーーーッ!!」
アリアが後方から二連の気を飛ばし、コルレオンの散開を防ぐ。その間にエルシーは一気に接敵し、接近戦へ。同じ格闘タイプであろう女2人と拳と拳をぶつけ合う。
「タァーーーーッ!!」
「ハッ!!」
組み手のごとく激しくぶつかり合う籠手と籠手が、火花を散らす。
(周りの様子を見ながら……という訳にもいかなそうね)
女達の流れるような連続攻撃を交わし、受け止めながらもエルシーは感覚を研ぎ澄ませる。
エルシーのセフィラは確かに告げていた。襲われた荷馬車と周囲を囲う巨岩群には何かがあると。
(やっぱり……何かあるわっ)
エルシーは仲間にアイコンタクトをすると、すぅと息を整える。
「ここからはこっち(戦い)に集中させてもらうわよっ!!」
少し遅れてカーミラ。いつも全力全開。カーミラに混ざるウシの要素が層思わせるのだろうか。考えるよりも先に行動してしまいそうなイメージもある彼女だが、その思考は極めて緻密で繊細である。
真っ先に落とすべきは敵の回復役。それを踏まえて攻防の中で、荷馬車などへ被害が及ばぬよう、自身と敵との位置把握を常に怠らない。
その瞳の先に後衛を捉えれば鉄山靠にて敵を撃ち、相対する敵諸共後方へもダメージを与えていく。
「うぉおおおーーーーーっ!!!!」
カーミラが吼える。出て来い……出て来い……出て来いっ!!! カーミラはまだ見ぬ敵を迎え撃たんと全身の血を滾らせる。
一方アリスタルフは攻めあぐねていた。
相手が女性だからといって軽んじてるつもりは毛頭無い。女性男性問わず強者が居る事は、この頼もしい仲間たちを見ても明らかだ。
だが、それでも。心優しき青年には対峙する相手への一瞬の躊躇が付きまとう。無意識に顔や腹部への攻撃を避けてしまうのだ。そしてそれはアリスタルフの攻撃のリズムを崩し、少なくないダメージへと繋がっていく。それに対し、相手は一切の躊躇を見せない。明らかに後れを取っている状況だった。
騎士として恥じない行動を常に心がける。アリスタルフのこの信念はのちに大きく影響を及ぼす事になる。
そんな中、リンネは前衛の回復に余念が無い。長引けば不利。自身の回復がこの戦いの要である事は明白だった。戦闘を重ねるうちにコルレオンのメンバーもそれに気づき始める。自ずとリンネを狙う攻撃は増え、その対処に迫られていく。
そして数の優位を巧みに利用し、前衛をすり抜けた女軽戦士がリンネへその刃を向ける。
「もらった!!」
リンネに迫る刃。だがその時、リンネの口元は──笑っていた。
日々何百何千と繰り返した所作が、その日々の弛まぬ鍛錬が、リンネの身体を瞬時に反応させる。
「……ぐふっ」
女の鳩尾に突き刺さるは札を手にしたリンネの拳。飛び込んできた相手の攻撃を寸前で交わし、そのまま放つは零距離からの無間白撃。所謂寸勁である。
回復役と思われたリンネからの思わぬ強烈な一撃に、よろめきながらも距離をとる女。
「回復役だと油断しましたか? 迂闊ですねぇ」
向かい来る敵に凄然と立ち向かう、頼もしきヒーラーの姿がそこにはある。
「いくわよっ!! アリア合わせてっ」
自己を奮起し、その闘争心を増大させたヒルダは、敵魔道士の攻撃を掻い潜りながら鳥尾星と牽牛星の名を冠した銃を撃ち放つ。
その散弾銃から放たれるは無尽蔵なる灼熱の弾幕。前後衛厭わず降り注ぐその攻撃たるや、メンバー屈指の破壊力を誇る。
その絨緞爆撃ともいえるヒルダの攻撃をかいくぐった者には、更にアリアの蒼い刃が音も無く牙を剝く。
コルレオンの女達の連携もさることながら、ヒルダとアリアの連携もまた美しい。
ヒルダとアリアが共にすごした日々が、共に戦った経験が、二人を共鳴(シンクロ)させていく。
そしてしばらくの混戦。
数では後れを取る自由騎士であったが、その実力差は次第に大きく現れ始める。
「ハァ……ハァ……」
無論自由騎士も無傷ではない。だがそれ以上にコルレオンメンバーの消耗の色が濃くなっていた。双方未だ倒れる者は居ないがそれも時間の問題だろう。
(ほほー。アイツら結構やるわね……あの子達じゃ荷が重そう。そろそろかしらっ)
ドォォォオオオオオーーーーーーン!!!!
突然響きわたる爆発音。
その場に居た誰もが戦いを止め、目を向けたその先には──少し離れた位置にある巨岩の上で腕を組み、キラッキラの華やかなオーラに身を包み余裕の笑みを見せる少女の姿。自由騎士は確信する。間違いなくジョアンナだと。しかしそこにお目付け役のアンの姿は無い。
ジョアンナは巨岩から軽やかに飛び降りると、何の警戒もせずにこちらへ向かって歩いてくる。
「みんな、ご苦労様っ」
ジョアンナがパンパンと手を鳴らすと、女達は戦闘体勢を解除し、ジョアンナへ傅く。
(あれが竜人のマザリモノ!? ……ちょっとかっこいいかも)
エルシーがそう感じたのも無理は無い。自信に満ちた立ち振る舞いと整った容姿、そして背中に見える竜の翼。確かにその少女には人を惹きつけるものがあった。
すっかり毒気を抜かれたかに思われた自由騎士だったのだが。ここで動いたのはアリア。
ガキィィィン。
アリアの最速の一撃をジョアンナが籠手で防ぐ。
「わわっ!? あっぶないなー!!」
なおもアリアの猛攻は続く。
「貴方に聞きたい事があります。隻眼のドミニクという男を知っていますか?」
鍔迫り合いの続く中、ジョアンナは少し考えるようなそぶりを見せる。
「んー? どうだったかなぁ? ジョーが知ってたらどうだってのさ?」
ぴく。アリアの動きが一瞬とまる。ゆらりと深翠の瞳が揺れた。
「教えなさい! ドミニクは何処にいるっ!!」
ラピッドジーンからの疾風刃、疾風刃、疾風刃。
激昂したアリアは我を忘れてジョアンナを攻撃し続ける。
「ちょ、わっ! やめっ」
ジョアンナもその猛攻には手も足も出ないのか防御体勢をとり続けたのだが。
シュッ。アリアの刃がジョアンナの頬を掠め、その頬から鮮血が流れる。
「わっ! ……(ギリッ)」
ジョアンナの気配が変わるのと同時にその場にいた全員が確かに感じた別の殺気。
「大丈夫。問題ない」
誰に向けてかそう言うと、アリアの攻撃を裁き続けるジョアンナ。猛攻を続けるアリアが一呼吸行ったその瞬間だった。ジョンアンナの放った螺旋の蹴りがアリアを捉える。
「きゃぁぁぁああぁーーーーっ」
空を舞うアリア。そのまま地面へ叩きつけられる。
「くふ……っ」
かろうじて意識はあるがアリアが受けたダメージは大きい。
「わ、ごめんっ! でもそっちが悪いのよ。こちらの話も聞かずに──」
「よくも……よくも……よくもよくもよくもアリアを!!!!!!!!!!」
ヒルダの中で何かが弾けた。
「うぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉっぉぉぉ!!!!!!!」
両手に持った銃の弾をありったけ撃ち込む。まだ足りない。こんなものでは。ヒルダはありったけの全力をその身に凝縮し、自らを弾丸と化す捨て身の技を繰り出す。ヒルダの咆哮と共に画かれた螺旋軌道は一直線にジョアンナを狙い打つ。
「ジョアンナ様ぁぁぁっ!!!」
馬車の中から何かが飛び出した。
当初からヒルダが怪しいと睨んでいた荷馬車。戦いの最中に確認する事はかなわなかったが、やはりそこには何者かがいたのだ。
すさまじい爆発音と共に砂煙が舞い上がる。
砂煙が晴れるとそこには──ぐったりとしたヒルダと砕けたホムンクルスの残骸。そしてゴシックメイド服だったであろうものに身を包んだ女の姿があった。崩れ落ちるように女が膝をつく。そのぼろぼろになった服の状態がヒルダの放った技の凄まじさを物語っていた。
「ありがと、アン。さすがにマトモに食らってたらジョーもやられちゃってた……よ」
エルシー、カーミラ、リンネ、そしてアリスタルフ。残る全員が武器を構える。
「ジョアンナ様、やはりゴミムシはゴミムシ。貴方様が興味を持つほどの存在ではないのでは?」
口から流した鮮血を拭うアンの自由騎士に対しての口調は刺々しく辛らつそのものだ。
だが、そんなアンに対して違うよ、とジョアンナは首を横に振る。
「ねぇ!! いいから話を聞いてくれるかなっ。そうしないとこの2人、殺しちゃうよ」
ジョアンナは笑顔でそう言った。裏表など無い純粋な笑顔。そう思えたが故に、自由騎士は構えを解かざる得なかった。
「おっけー! ねぇ、この2人すぐ回復してっ!」
ジョアンナは仲間にアリアとヒルダの回復を命じたのだった。
●
「んん……」
ヒルダとアリアが意識を取り戻すとそこではジョアンナと自由騎士達がなにやら話をしている最中だった。
「俺は騎士、アリスタルフ・ヴィノクロフ。君が今回の件の首謀者だな。名は何と言う?」
「ジョアンナ。ジョアンナ・R・ロベルトドーンよ。アナタ達がお兄ちゃんを捕まえたんでしょ? だからわざわざ会いに来たの」
少女が自由騎士に興味を持ったのは兄を捕まえられた復讐心ではなく、兄を倒した強さへの純粋な興味。彼女にとって兄が捕まった事はそれ以上に強い人が居たというだけの事。
先ほどまで戦っていたとは到底思えないような軽い口調で、ジョアンナはコルレオンの活動内容や、知っていることを驚くほどあっさりと答えた。
「ん~ドミニクだっけ? やっぱり知らないなぁ~。コルレオンは……というかラスカルズ自体殆ど他のグループと関わること無いしね。うちは食料供給とかしてるからまだ交流あるほうだけど……幹部なんてお兄ちゃん以外誰ともあったこと無いなぁ」
にひひ、と笑いながら答える様子はごくごく普通の少女だ。
自由騎士達がジョアンナと話すことで感じたこと。それはこの少女の純粋さ。そして純粋ゆえの危うさ。
「そうですか。貴方は何も知らないのですね……」
アリアの欲した情報を彼女は持っていなかった。がくりと肩を落とすアリアにヒルダが寄り添う。だが、彼女はれっきとしたラスカルズのメンバーだ。繋がっていれば今後情報を得る事が出来るかもしれない。
何より彼女の態度を見るに、自由騎士がたとえ他のラスカルズを打ち倒そうとも、彼女には何も関係ないのだ。それはただ自由騎士が強かった。それだけの事。
彼女が興味を持つ強さを自由騎士が持ち続ける限り、今後も何かしらのアプローチはあるだろう。何より彼女達はラスカルズでありながら、これまで犯してきた数々の悪行には一切加担していないのだ。
「そういえば……アリスタルフだっけ? これ全員アナタの妾?」
さも当たり前といわんばかりにジョアンナはそう言った。
「……ふへっ!?」
「「「「「なっ!?」」」」」
アリスタルフは素っ頓狂な声をあげ、その場の空気が固まる。
「だって、いつだって強い男に女は集るものでしょ? それにアナタ戦ってるときも手加減、してたよね」
アナタはどのくらい強いのかしら。そう言って不意に近づいたジョアンナをアリスタルフは遠ざけようとしたのだが。
ふに。
アリスタルフの手はジョアンナの胸元に。
「きゃっ!?」
思わず固まるジョアンナとアリスタルフ。
「キサマァァァァァ!!! ミジンコの分際でジョアンナ様のささやかなお胸にぃっ!!!」
「ちょっとアン!! ささやかってどういう事!!!」
それまで張り詰めていた場の空気が、少し緩んだ気がした。
「あーーっ!!」
唐突にジョアンナが大声を上げる。彼女の体内時計がある時間を告げたのだ。
「そろそろご飯の時間じゃない!! アン、帰るよ!!」
このまま返すわけには。エルシーが動こうとしたその時だった。
「我々は貴方たちを呼び出すために荷馬車を襲いました。それは事実です。けれどもなんら被害は与えていませんよ。……もちろん貴方たちさえこのまま何もしなければ…・・・ですが」
アンは感情を感じさせない笑顔で自由騎士達にそう告げた。
「ねぇ。キミ達……もしかしてジョーとやりたかったの?」
唐突にジョアンナが呟く。その顔は先ほどまでの温和な顔ではなく、戦士のそれだ。
「あら、気づかれちゃいましたか」
ジョアンナの視線の先にはリンネとカーミラ。どちらもその瞳の奥には燃え盛る炎を宿している。
敵を強さを垣間見たが故に、自らもその身を投じたいと考えるのは戦いの中に身を置く者の性であろうか。
「だってそんな目をされたら……ね。また今度、やりあおうよ!」
そういうとジョアンナの顔はどこにでも居るような少女の顔に戻っていた。
今度と言わずあわよくば、と思っていた二人は、そんなジョアンナを見てすっかり毒気を抜かれてしまう。
「ふぅ……わかった! 次会った時こそ一対一の勝負だーーーー!!」
キラキラ輝くオーラを放ちながらビシッと指差すカーミラに、ジョアンナは拳を握って答えた。
辺りはすっかり日も暮れ、深い闇に覆われていた。
「ではまた。皆様ご機嫌麗しゅう」
そう言うと最後まで残っていたアンも暗闇に消える。
ラスカルズという組織の懐が深いのか、それともコルレオンが異質なのか。
今の自由騎士は判断する術を持ち合わせては居なかった。
ラスカルズ。略奪、殺人、人攫い……凡そ思いつく悪行の限りを尽くす下衆の集団。
この日、自由騎士にとってそんなラスカルズの印象が大きく変わる事となる。
「……驚いた。本当に居るな」
『実直剛拳』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)は正直驚いていた。
確かに荷馬車の持ち主であろう商人は場所の近くで後ろ手に縛られているが、遠目に見ても命に別状があるような状態ではなさそうだ。
普通の盗賊ならさっさと殺すなり、馬車ごと奪って襲撃現場に長居などしないだろう。
やはり俺達は誘い出されたのかもしれないな──アリスタルフはそう感じざる得なかった。
「逃げずに待ち伏せですか……何か考えがあるんですかねぇ」
『飢えた白狼』リンネ・スズカ(CL3000361)も感じた違和感を言葉にする。
ラスカルズと思われる面々は、襲った荷馬車の前で何かを待つように動かない。荷馬車から貨物を略奪するような行為は見て取れない。
まぁ私としては正面戦闘は願ったり叶ったりなのですが──常日頃より道場での稽古を欠かさないリンネとしては、その違和感以上に稽古の成果を実感できるその場所が目の前に迫ることの高揚感が上回っているようだ。期待からかその大きく立派な尻尾が揺れる。
(なんで待ち構えているのかな)
『慈愛の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)が感じた疑問はこれまでの経験に基づいている。今までそんなことあった? 被害が水鏡に写ってないみたいだし、罠? 様々な憶測がアリアの脳裏を過ぎる。
ラスカルズに関してはアリアは、自由騎士の中でもことさら深く関わっている。略奪、強盗、蹂躙、人攫い。そのような行為を嗤いながら行う集団。それがアリアのもっているラスカルズのイメージだった。これまでの経験を鑑みてもこのようなケースは無かった。
感じた違和感、遮蔽物の多い土地が一層アリアを警戒させる。
アリアは敢えて感知する感情の絞らず、強い感情に反応できるよう意識を集中し続ける。
一方の『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)はやる気満々だ。
(頭目は竜が混じってて、しかも私と同じ格闘スタイル! 腕が鳴るってヤツだね!)
「待ち構えてるってことは何か策でもあるのかな?」
策だろうが企みだろうが、ぶっ潰してやる──拳を打ち鳴らすカーミラの黄金の瞳は、静かに燃えていた。
襲われた荷馬車のすぐ近くまでやってきた自由騎士たち。そこには襲撃したと思われる集団がいた。当然あちらも自由騎士を認識しているはずだが、襲い掛かってくる様子は無い。
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は改めて相手を見渡す。
(……全員女性!? それに何というか賊にしては小綺麗というか……)
自身が持つ盗賊のイメージとはかけ離れるそのいでたちに、エルシーは少し困惑する。
「まぁ、いいわ」
とにかく全員捕縛すればいい話。詳しい話はそれからよ──エルシーは籠手を合わせる。戦闘準備は万全だ。
「君達の目的はなんだ? 何か言い分があるなら聞こう」
周囲を警戒しながらも、アリスタルフは問う。その真意を確かめんがために。
「我々はコルレオン。先ずは手合わせ願おうか」
アリスタルフの問いに答えは無い。場を包む空気が変わり一糸乱れぬ統率の取れた動き。女達が戦闘態勢に入ったのだ。
「女性と戦うのは苦手なんだが……」
ふぅと息を吐くアリタルフ。コルレオンと自由騎士の戦いが幕を開ける。
●
(フフッ。始まったみたいね)
「よおーし!! じゃぁいっくよー!!」
カーミラがふん、と気合を入れると龍氣螺合で自己を強化する。それにあわせてエルシーとアリスタルフも前へでる。『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279) は後方から照準を合わせ、アリアはすぅと一歩引きヒルダの横へ。作戦メンバーの回復能力も考慮し、先ずは後方から出来るだけダメージを抑える作戦を取る。リンネもまた、前へ出て拳を合わせたい気持ちをぐっと抑えて、後方からの回復支援に従事する。
双方の戦闘準備が終わると合図も無く、戦いの火蓋は切って落とされる。
まず皆が考えたのは回復層の差。回復の差は戦いにおいて大きく戦況を左右する。長引けばそれだけ不利になるのは確実だ。
だが自由騎士にもアドバンテージがある。相手はこちらの戦闘スタイルを知らないが、こちらは彼女達の戦闘スタイルを認識している。この差は大きい。そしてその差は開始直後にこそ如実に現れる。
「ハァーーーーッ!!」
アリアが後方から二連の気を飛ばし、コルレオンの散開を防ぐ。その間にエルシーは一気に接敵し、接近戦へ。同じ格闘タイプであろう女2人と拳と拳をぶつけ合う。
「タァーーーーッ!!」
「ハッ!!」
組み手のごとく激しくぶつかり合う籠手と籠手が、火花を散らす。
(周りの様子を見ながら……という訳にもいかなそうね)
女達の流れるような連続攻撃を交わし、受け止めながらもエルシーは感覚を研ぎ澄ませる。
エルシーのセフィラは確かに告げていた。襲われた荷馬車と周囲を囲う巨岩群には何かがあると。
(やっぱり……何かあるわっ)
エルシーは仲間にアイコンタクトをすると、すぅと息を整える。
「ここからはこっち(戦い)に集中させてもらうわよっ!!」
少し遅れてカーミラ。いつも全力全開。カーミラに混ざるウシの要素が層思わせるのだろうか。考えるよりも先に行動してしまいそうなイメージもある彼女だが、その思考は極めて緻密で繊細である。
真っ先に落とすべきは敵の回復役。それを踏まえて攻防の中で、荷馬車などへ被害が及ばぬよう、自身と敵との位置把握を常に怠らない。
その瞳の先に後衛を捉えれば鉄山靠にて敵を撃ち、相対する敵諸共後方へもダメージを与えていく。
「うぉおおおーーーーーっ!!!!」
カーミラが吼える。出て来い……出て来い……出て来いっ!!! カーミラはまだ見ぬ敵を迎え撃たんと全身の血を滾らせる。
一方アリスタルフは攻めあぐねていた。
相手が女性だからといって軽んじてるつもりは毛頭無い。女性男性問わず強者が居る事は、この頼もしい仲間たちを見ても明らかだ。
だが、それでも。心優しき青年には対峙する相手への一瞬の躊躇が付きまとう。無意識に顔や腹部への攻撃を避けてしまうのだ。そしてそれはアリスタルフの攻撃のリズムを崩し、少なくないダメージへと繋がっていく。それに対し、相手は一切の躊躇を見せない。明らかに後れを取っている状況だった。
騎士として恥じない行動を常に心がける。アリスタルフのこの信念はのちに大きく影響を及ぼす事になる。
そんな中、リンネは前衛の回復に余念が無い。長引けば不利。自身の回復がこの戦いの要である事は明白だった。戦闘を重ねるうちにコルレオンのメンバーもそれに気づき始める。自ずとリンネを狙う攻撃は増え、その対処に迫られていく。
そして数の優位を巧みに利用し、前衛をすり抜けた女軽戦士がリンネへその刃を向ける。
「もらった!!」
リンネに迫る刃。だがその時、リンネの口元は──笑っていた。
日々何百何千と繰り返した所作が、その日々の弛まぬ鍛錬が、リンネの身体を瞬時に反応させる。
「……ぐふっ」
女の鳩尾に突き刺さるは札を手にしたリンネの拳。飛び込んできた相手の攻撃を寸前で交わし、そのまま放つは零距離からの無間白撃。所謂寸勁である。
回復役と思われたリンネからの思わぬ強烈な一撃に、よろめきながらも距離をとる女。
「回復役だと油断しましたか? 迂闊ですねぇ」
向かい来る敵に凄然と立ち向かう、頼もしきヒーラーの姿がそこにはある。
「いくわよっ!! アリア合わせてっ」
自己を奮起し、その闘争心を増大させたヒルダは、敵魔道士の攻撃を掻い潜りながら鳥尾星と牽牛星の名を冠した銃を撃ち放つ。
その散弾銃から放たれるは無尽蔵なる灼熱の弾幕。前後衛厭わず降り注ぐその攻撃たるや、メンバー屈指の破壊力を誇る。
その絨緞爆撃ともいえるヒルダの攻撃をかいくぐった者には、更にアリアの蒼い刃が音も無く牙を剝く。
コルレオンの女達の連携もさることながら、ヒルダとアリアの連携もまた美しい。
ヒルダとアリアが共にすごした日々が、共に戦った経験が、二人を共鳴(シンクロ)させていく。
そしてしばらくの混戦。
数では後れを取る自由騎士であったが、その実力差は次第に大きく現れ始める。
「ハァ……ハァ……」
無論自由騎士も無傷ではない。だがそれ以上にコルレオンメンバーの消耗の色が濃くなっていた。双方未だ倒れる者は居ないがそれも時間の問題だろう。
(ほほー。アイツら結構やるわね……あの子達じゃ荷が重そう。そろそろかしらっ)
ドォォォオオオオオーーーーーーン!!!!
突然響きわたる爆発音。
その場に居た誰もが戦いを止め、目を向けたその先には──少し離れた位置にある巨岩の上で腕を組み、キラッキラの華やかなオーラに身を包み余裕の笑みを見せる少女の姿。自由騎士は確信する。間違いなくジョアンナだと。しかしそこにお目付け役のアンの姿は無い。
ジョアンナは巨岩から軽やかに飛び降りると、何の警戒もせずにこちらへ向かって歩いてくる。
「みんな、ご苦労様っ」
ジョアンナがパンパンと手を鳴らすと、女達は戦闘体勢を解除し、ジョアンナへ傅く。
(あれが竜人のマザリモノ!? ……ちょっとかっこいいかも)
エルシーがそう感じたのも無理は無い。自信に満ちた立ち振る舞いと整った容姿、そして背中に見える竜の翼。確かにその少女には人を惹きつけるものがあった。
すっかり毒気を抜かれたかに思われた自由騎士だったのだが。ここで動いたのはアリア。
ガキィィィン。
アリアの最速の一撃をジョアンナが籠手で防ぐ。
「わわっ!? あっぶないなー!!」
なおもアリアの猛攻は続く。
「貴方に聞きたい事があります。隻眼のドミニクという男を知っていますか?」
鍔迫り合いの続く中、ジョアンナは少し考えるようなそぶりを見せる。
「んー? どうだったかなぁ? ジョーが知ってたらどうだってのさ?」
ぴく。アリアの動きが一瞬とまる。ゆらりと深翠の瞳が揺れた。
「教えなさい! ドミニクは何処にいるっ!!」
ラピッドジーンからの疾風刃、疾風刃、疾風刃。
激昂したアリアは我を忘れてジョアンナを攻撃し続ける。
「ちょ、わっ! やめっ」
ジョアンナもその猛攻には手も足も出ないのか防御体勢をとり続けたのだが。
シュッ。アリアの刃がジョアンナの頬を掠め、その頬から鮮血が流れる。
「わっ! ……(ギリッ)」
ジョアンナの気配が変わるのと同時にその場にいた全員が確かに感じた別の殺気。
「大丈夫。問題ない」
誰に向けてかそう言うと、アリアの攻撃を裁き続けるジョアンナ。猛攻を続けるアリアが一呼吸行ったその瞬間だった。ジョンアンナの放った螺旋の蹴りがアリアを捉える。
「きゃぁぁぁああぁーーーーっ」
空を舞うアリア。そのまま地面へ叩きつけられる。
「くふ……っ」
かろうじて意識はあるがアリアが受けたダメージは大きい。
「わ、ごめんっ! でもそっちが悪いのよ。こちらの話も聞かずに──」
「よくも……よくも……よくもよくもよくもアリアを!!!!!!!!!!」
ヒルダの中で何かが弾けた。
「うぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉっぉぉぉ!!!!!!!」
両手に持った銃の弾をありったけ撃ち込む。まだ足りない。こんなものでは。ヒルダはありったけの全力をその身に凝縮し、自らを弾丸と化す捨て身の技を繰り出す。ヒルダの咆哮と共に画かれた螺旋軌道は一直線にジョアンナを狙い打つ。
「ジョアンナ様ぁぁぁっ!!!」
馬車の中から何かが飛び出した。
当初からヒルダが怪しいと睨んでいた荷馬車。戦いの最中に確認する事はかなわなかったが、やはりそこには何者かがいたのだ。
すさまじい爆発音と共に砂煙が舞い上がる。
砂煙が晴れるとそこには──ぐったりとしたヒルダと砕けたホムンクルスの残骸。そしてゴシックメイド服だったであろうものに身を包んだ女の姿があった。崩れ落ちるように女が膝をつく。そのぼろぼろになった服の状態がヒルダの放った技の凄まじさを物語っていた。
「ありがと、アン。さすがにマトモに食らってたらジョーもやられちゃってた……よ」
エルシー、カーミラ、リンネ、そしてアリスタルフ。残る全員が武器を構える。
「ジョアンナ様、やはりゴミムシはゴミムシ。貴方様が興味を持つほどの存在ではないのでは?」
口から流した鮮血を拭うアンの自由騎士に対しての口調は刺々しく辛らつそのものだ。
だが、そんなアンに対して違うよ、とジョアンナは首を横に振る。
「ねぇ!! いいから話を聞いてくれるかなっ。そうしないとこの2人、殺しちゃうよ」
ジョアンナは笑顔でそう言った。裏表など無い純粋な笑顔。そう思えたが故に、自由騎士は構えを解かざる得なかった。
「おっけー! ねぇ、この2人すぐ回復してっ!」
ジョアンナは仲間にアリアとヒルダの回復を命じたのだった。
●
「んん……」
ヒルダとアリアが意識を取り戻すとそこではジョアンナと自由騎士達がなにやら話をしている最中だった。
「俺は騎士、アリスタルフ・ヴィノクロフ。君が今回の件の首謀者だな。名は何と言う?」
「ジョアンナ。ジョアンナ・R・ロベルトドーンよ。アナタ達がお兄ちゃんを捕まえたんでしょ? だからわざわざ会いに来たの」
少女が自由騎士に興味を持ったのは兄を捕まえられた復讐心ではなく、兄を倒した強さへの純粋な興味。彼女にとって兄が捕まった事はそれ以上に強い人が居たというだけの事。
先ほどまで戦っていたとは到底思えないような軽い口調で、ジョアンナはコルレオンの活動内容や、知っていることを驚くほどあっさりと答えた。
「ん~ドミニクだっけ? やっぱり知らないなぁ~。コルレオンは……というかラスカルズ自体殆ど他のグループと関わること無いしね。うちは食料供給とかしてるからまだ交流あるほうだけど……幹部なんてお兄ちゃん以外誰ともあったこと無いなぁ」
にひひ、と笑いながら答える様子はごくごく普通の少女だ。
自由騎士達がジョアンナと話すことで感じたこと。それはこの少女の純粋さ。そして純粋ゆえの危うさ。
「そうですか。貴方は何も知らないのですね……」
アリアの欲した情報を彼女は持っていなかった。がくりと肩を落とすアリアにヒルダが寄り添う。だが、彼女はれっきとしたラスカルズのメンバーだ。繋がっていれば今後情報を得る事が出来るかもしれない。
何より彼女の態度を見るに、自由騎士がたとえ他のラスカルズを打ち倒そうとも、彼女には何も関係ないのだ。それはただ自由騎士が強かった。それだけの事。
彼女が興味を持つ強さを自由騎士が持ち続ける限り、今後も何かしらのアプローチはあるだろう。何より彼女達はラスカルズでありながら、これまで犯してきた数々の悪行には一切加担していないのだ。
「そういえば……アリスタルフだっけ? これ全員アナタの妾?」
さも当たり前といわんばかりにジョアンナはそう言った。
「……ふへっ!?」
「「「「「なっ!?」」」」」
アリスタルフは素っ頓狂な声をあげ、その場の空気が固まる。
「だって、いつだって強い男に女は集るものでしょ? それにアナタ戦ってるときも手加減、してたよね」
アナタはどのくらい強いのかしら。そう言って不意に近づいたジョアンナをアリスタルフは遠ざけようとしたのだが。
ふに。
アリスタルフの手はジョアンナの胸元に。
「きゃっ!?」
思わず固まるジョアンナとアリスタルフ。
「キサマァァァァァ!!! ミジンコの分際でジョアンナ様のささやかなお胸にぃっ!!!」
「ちょっとアン!! ささやかってどういう事!!!」
それまで張り詰めていた場の空気が、少し緩んだ気がした。
「あーーっ!!」
唐突にジョアンナが大声を上げる。彼女の体内時計がある時間を告げたのだ。
「そろそろご飯の時間じゃない!! アン、帰るよ!!」
このまま返すわけには。エルシーが動こうとしたその時だった。
「我々は貴方たちを呼び出すために荷馬車を襲いました。それは事実です。けれどもなんら被害は与えていませんよ。……もちろん貴方たちさえこのまま何もしなければ…・・・ですが」
アンは感情を感じさせない笑顔で自由騎士達にそう告げた。
「ねぇ。キミ達……もしかしてジョーとやりたかったの?」
唐突にジョアンナが呟く。その顔は先ほどまでの温和な顔ではなく、戦士のそれだ。
「あら、気づかれちゃいましたか」
ジョアンナの視線の先にはリンネとカーミラ。どちらもその瞳の奥には燃え盛る炎を宿している。
敵を強さを垣間見たが故に、自らもその身を投じたいと考えるのは戦いの中に身を置く者の性であろうか。
「だってそんな目をされたら……ね。また今度、やりあおうよ!」
そういうとジョアンナの顔はどこにでも居るような少女の顔に戻っていた。
今度と言わずあわよくば、と思っていた二人は、そんなジョアンナを見てすっかり毒気を抜かれてしまう。
「ふぅ……わかった! 次会った時こそ一対一の勝負だーーーー!!」
キラキラ輝くオーラを放ちながらビシッと指差すカーミラに、ジョアンナは拳を握って答えた。
辺りはすっかり日も暮れ、深い闇に覆われていた。
「ではまた。皆様ご機嫌麗しゅう」
そう言うと最後まで残っていたアンも暗闇に消える。
ラスカルズという組織の懐が深いのか、それともコルレオンが異質なのか。
今の自由騎士は判断する術を持ち合わせては居なかった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
特殊成果
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:エルシー・スカーレット(CL3000368)
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アリア・セレスティ(CL3000222)
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:リンネ・スズカ(CL3000361)
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『赤茶色の羽根x3』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:エルシー・スカーレット(CL3000368)
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アリア・セレスティ(CL3000222)
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:リンネ・スズカ(CL3000361)
『赤茶色の羽根』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『赤茶色の羽根x3』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)
†あとがき†
ジョアンナ。身を置く環境はさておきその実力は自由騎士団の精鋭にも引けを取らないものでした。今回の件で自由騎士の強さに興味を持った彼女は、何らかの形でまた自由騎士の前に現れることでしょう。
今後自由騎士がその力を示し続ける限り、コルレオンとはパイプが繋がった状態となります。
MVPはジョアンナに少女の顔をさせた貴方に。ここでこう来るとは麺もびっくりでした。
ご参加ありがとうございました。
ご感想など頂けましたら幸いです。
今後自由騎士がその力を示し続ける限り、コルレオンとはパイプが繋がった状態となります。
MVPはジョアンナに少女の顔をさせた貴方に。ここでこう来るとは麺もびっくりでした。
ご参加ありがとうございました。
ご感想など頂けましたら幸いです。
FL送付済