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≪Fp1819≫彼女達と祝う春

●ミモザの花香るアデレード
春待ちの祭り、フルール・ド・プランタン。
毎年開催されているこの祝祭が、今年もまた開かれる。
「何て、賑やか……」
マリアンナ・オリヴェル(nCL3000042)が飾り付けられた家々を見て呟く。
聞いた話では、この催しでは親しい人に花やお菓子を送るのだという。
平和なお祭だ。
きっと、この国の人々にとってそれは楽しいものに違いない。
「私は、どうしようかしら」
街を歩きながら、マリアンナは小さく独り言ちた。
親しい人、思い浮かぶ顔はせいぜいが兄パーヴァリくらいなものである。
一応、現在パーヴァリもこの街に滞在している。
だが今さら、兄にどう感謝を伝えればいいのか、そもそもそれが分からない。
他に感謝するべき相手は、自由騎士達だろうか。
この国で友と呼べる者といえばやはり彼らだが、しかし――
「…………」
その顔を思い浮かべて、だがマリアンナは息をついた。
迷惑にならないだろうか。
イヤな顔をされないだろうか。
そんな思いがどうしても頭をよぎってしまうのだ。
シャンバラでは常に魔女狩りに狙われ続けてきた彼女達ヨウセイにとって、祝祭などというものはまず未知のもの。
マリアンナも今日にいたるまで幾度かそれを過ごしてきたが、その彼女をしてまだまだ理解できているとはいいがたい。
祝うとはどうやればいいのか。
どうすればお祭を楽しめるのか。
一人で考えていてもラチが明かないように思えた。
「……ちょっと、街を回ってみようかしら」
アデレードの街には彼女の他にも何人かシャンバラから渡って来たヨウセイがいたはずだ。彼らのところに行ってみるのもいいかもしれない。
「虫のいい話かしら?」
悩みつつも、マリアンナはアデレードを歩き始めた。
春待ちの祭り、フルール・ド・プランタン。
毎年開催されているこの祝祭が、今年もまた開かれる。
「何て、賑やか……」
マリアンナ・オリヴェル(nCL3000042)が飾り付けられた家々を見て呟く。
聞いた話では、この催しでは親しい人に花やお菓子を送るのだという。
平和なお祭だ。
きっと、この国の人々にとってそれは楽しいものに違いない。
「私は、どうしようかしら」
街を歩きながら、マリアンナは小さく独り言ちた。
親しい人、思い浮かぶ顔はせいぜいが兄パーヴァリくらいなものである。
一応、現在パーヴァリもこの街に滞在している。
だが今さら、兄にどう感謝を伝えればいいのか、そもそもそれが分からない。
他に感謝するべき相手は、自由騎士達だろうか。
この国で友と呼べる者といえばやはり彼らだが、しかし――
「…………」
その顔を思い浮かべて、だがマリアンナは息をついた。
迷惑にならないだろうか。
イヤな顔をされないだろうか。
そんな思いがどうしても頭をよぎってしまうのだ。
シャンバラでは常に魔女狩りに狙われ続けてきた彼女達ヨウセイにとって、祝祭などというものはまず未知のもの。
マリアンナも今日にいたるまで幾度かそれを過ごしてきたが、その彼女をしてまだまだ理解できているとはいいがたい。
祝うとはどうやればいいのか。
どうすればお祭を楽しめるのか。
一人で考えていてもラチが明かないように思えた。
「……ちょっと、街を回ってみようかしら」
アデレードの街には彼女の他にも何人かシャンバラから渡って来たヨウセイがいたはずだ。彼らのところに行ってみるのもいいかもしれない。
「虫のいい話かしら?」
悩みつつも、マリアンナはアデレードを歩き始めた。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.フルール・ド・プランタンをたのしむ
2.ヨウセイの皆さんと交流する
2.ヨウセイの皆さんと交流する
春だー!
吾語です。
フルール・ド・プランタンでございます。
今回はアデレードでのお祭の様子をお届けいたします。
成功条件のところにもある通り、このシナリオでは二通りの楽しみ方があります。
1.フルール・ド・プランタンを楽しむ
読んで字のごとく、アデレードの街で春の祝祭を楽しみましょう。
時間帯も字から夜までご自由にお選びください。
街中、港、繁華街など、場所も自由に選べます。おしゃれなカフェもあるよ!
どなたかと一緒に楽しみたい場合はお相手様のお名前とIDの記載をお願いします。
2.ヨウセイの皆さんと交流する
こちらではイ・ラプセルから来たばかりのヨウセイの皆さんと交流をします。
ヨウセイの皆さんはまだ来たばかりで色々と馴染めていません。
お祭自体未経験なヨウセイがほとんどです。
なので、彼らにこの国の楽しいところなどを教えてあげてください。
マリアンナやパーヴァリと話したい場合はこちらをお選びください。
二人以外のヨウセイもいますので、無名のヨウセイと話したいという形でもOKです。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
吾語です。
フルール・ド・プランタンでございます。
今回はアデレードでのお祭の様子をお届けいたします。
成功条件のところにもある通り、このシナリオでは二通りの楽しみ方があります。
1.フルール・ド・プランタンを楽しむ
読んで字のごとく、アデレードの街で春の祝祭を楽しみましょう。
時間帯も字から夜までご自由にお選びください。
街中、港、繁華街など、場所も自由に選べます。おしゃれなカフェもあるよ!
どなたかと一緒に楽しみたい場合はお相手様のお名前とIDの記載をお願いします。
2.ヨウセイの皆さんと交流する
こちらではイ・ラプセルから来たばかりのヨウセイの皆さんと交流をします。
ヨウセイの皆さんはまだ来たばかりで色々と馴染めていません。
お祭自体未経験なヨウセイがほとんどです。
なので、彼らにこの国の楽しいところなどを教えてあげてください。
マリアンナやパーヴァリと話したい場合はこちらをお選びください。
二人以外のヨウセイもいますので、無名のヨウセイと話したいという形でもOKです。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
0個
0個
0個




参加費
50LP
50LP
相談日数
8日
8日
参加人数
16/50
16/50
公開日
2019年03月09日
2019年03月09日
†メイン参加者 16人†
●ミモザの花が咲く街で
「はぇ~~~~、スッゲー賑やかだな」
『田舎者』ナバル・ジーロン(CL3000441)はアデレードの街の入り口でそんな感嘆の言葉を漏らしていた。
アデレードに来るのは初めて、というワケではないが、普段の街の姿を知っているからこそ祭りに賑わう今のアデレードの華やかさに驚くのだ。
彼はいつもと違う街の姿に半ば圧倒されつつ、物珍しげに往来を歩く。と、その耳に聞き覚えのない陽気なメロディが聞こえてきた。
「お~、奇麗な曲だ、な……?」
見てみれば、曲を奏でるのは見覚えのある人物。
「~♪」
それは、『支える者』ドロテア・パラディース(CL3000435)であった。
奏でることに集中している彼女の周りには小さな人だ仮ができている。
ナバルはその中に混じって、しばしドロテアの演奏に聞き入った。
やがて演奏が終わって、ナバルは拍手しながら一歩前に出る。
「よ、ドロテア! 今日もいい演奏だな!」
「ひゃっ! ナ、ナバル殿!? 聴いてたのでありますか!」
「ああ、奇麗な曲だったぜ!」
サムズアップするナバルに、ドロテアは視線を右往左往させる。
「な、何だか恐縮であります……」
そんな彼女の様子には気づかず、ナバルはポンと手を打った。
「なぁ、どうだ? もしこのあと時間あるなら、一緒に見て回らねぇか?」
「え? ……あ」
言われたドロテアは、すぐに彼の状況に気づいた。
「もちろんであります! 案内くらいなら私でも……、あ、いや、してみせますのでお任せください!」
「よっしゃ、心強いぜ!」
パンと手を打つナバルにドロテアは小さな声で、
「あ、あの、途中でお花屋さんに寄ってもいいでありますか?」
「おう! もちろんいいぜ!」
彼の答えに、ドロテアに微笑みを返す。
ミモザの花を買ったら、用意しておいたチョコレートと一緒に。
――上手く贈れたらいいなぁ。
今から少しだけ緊張しているドロテアであった。
●ヨウセイ達が過ごす春
イ・ラプセルはあたたかい。
長年、森の中を逃げ続けていたマリアンナ・オリヴェル(nCL3000042)にとっては、この国はまるでおとぎ話の国のようであった。
「そこにいるのは、マリアンナか」
不思議な思いを抱きつつ歩いていると、声をかけられた。
「あら、アデル」
振り向くと、そこにいたのはアデル・ハビッツ(CL3000496)であった。
前にも見た兜をかぶったままの彼。
「ようこそ、フルール・ド・プランタンへ」
顔こそ見えないものの、その声に歓迎の意を感じ取り、マリアンナは笑う。
「ええ、ありがとう、自由騎士様」
「欲を言えばこのまま案内したいところだが、すまない。今は見回り中でな」
「あら、お祭なのに忙しいのね。一人でも見て回れるわよ」
マリアンナとアデルはしばし他愛のない雑談に花を咲かせた。
そして、アデルが去り際、
「忘れていた。これを」
「ミモザの花?」
「ああ。先日の、写真の礼だ」
「ありがとう。いい香りね」
マリアンナは受け取った花を顔に近づけてうなずいた。
そしてアデルは見回りに戻っていく。
ミモザの花を手に、彼を見送ったマリアンナは散策を再開した。
ちょうど同じ頃、パーヴァリ・オリヴェル(nCL3000056)もまたアデレードの街にやって来ていた。
「何という華やかな……」
そして、春の祝祭の空気にただただ驚かされていた。
「おっと、どこぞの若旦那かと思ったらパーヴァリの旦那じゃねぇか」
「君は……」
後からパーヴァリに話しかけてきたのは、『1000億GP欲しい』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)であった。
「何だい、街が派手で驚いてたとか?」
「あ、ああ。君の言う通りだ。……凄いものだね」
飾り付けられた街を見回し、パーヴァリは感嘆のため息をこぼす。
その背中を、ウェルスが軽く叩いた。
「ここをすげぇと思うならさ、ここに負けない国でも作ったらどうだい?」
「それは、そういう意味かな?」
思いがけない言葉に、パーヴァリは彼へと問い返す。
「このままだとヨウセイはここに庇護されるだけの存在になっちまうだろ」
「僕はそれが悪いとは思わないよ」
「……へぇ」
「君はそうじゃないのかい?」
パーヴァリに真っ直ぐ見つめられ、ウェルスは肩をすくめた。
「ジョークだよ。本気にしないでくれ。お詫びにこの辺案内するからよ」
「ああ、よろしく頼むよ」
お互い、それ以上は踏み込まず、二人は雑談しながら歩いて行った。
マリアンナは公園のベンチに座っていた。
一通り街を歩き回って、ここからどうしようか思案しているところだ。
「あら……?」
せわしない足音が聞こえて、何かと思って顔を挙げると、そこに『ノラ狗』篁・三十三(CL3000014)の姿があった。
先刻の自分と同じように、周りの景色を興味深げに眺めている。
「もしかして、道に迷ってますか?」
「あ、えっと……。あれ!」
マリアンナが話しかけると、三十三は何かに気づいたように声をあげた。
「ヨウセイさん、だよね?」
「え? ええ、そうだけど。マリアンナよ。よろしくね」
自由騎士だろうか。
そう思いながら名乗ると、三十三はにっこりと笑ってうなずいてきた。
「俺はケモノビトの篁・三十三っていうんだ、よろしく!」
「三十三は、ヨウセイのことを知っているの?」
「うん。報告書しか見てないけどね」
ということは、やはり彼は自由騎士らしい。
「実は長いこと街から離れててさ、久しぶりに戻って来たんだ!」
「そうなの。じゃあ、街の案内はいらないかしら?」
「あ、いるいる! 一緒にお祭回ろうよ!」
「ええ、いいわよ」
マリアンナはベンチから立ち上がり、三十三と共に祭りに加わっていった。
「お、いたいた。やはり目立つな、貴様は!」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)に見つかった。
だから何だという話ではないが。
だが唐突だったので、パーヴァリは驚いていた。
「いきなり、何事だい?」
「何事も何もあるか、マリアンナとは会ったのか?」
ツボミはいきなり核心を突いてきた。
「それは……」
「貴様がこの街に来たのは、マリアンナの様子を見るためだろう?」
突き刺すように彼女は言う。
決めつけるかのような物言いだが、しかしその実、大当たりだ。
「よし、行くぞ」
ツボミはパーヴァルの腕を掴んで引っ張った。
「いや、だが……」
「ええい、ここまで来て煮え切らないことを言うな! そもそも貴様らはこういうめでたい日でも別々に行動してるとはどういうことだ! もっと兄妹仲良くイチャイチャしなさいよ!」
「……何を言っているんだ、君は」
パーヴァリは思わず真顔になった。
ものすごい物言いだが、しかし、ツボミの本気はありありと伝わってくる。
「分かった。ついていくから引っ張らないでくれ」
元々の目的はそれなのだ。パーヴァリは観念することにした。
「ところで、マリアンナはどこにいるか知ってるのかい?」
「え、貴様知ってるんじゃないのか?」
ツボミから返ってきた答えは、それだった。
「「…………」」
二人は、互いに探るような目で相手を見た。
「探すぞ」
「探そう」
そういうことになった。
●春の大スイーツ祭
「あ、いたいた!」
三十三の案内を終えて、どうしようかと考えていたマリアンナに向かって、声をかける者がいた。
「みんな、集まってどうしたの?」
そこにいたのは五人の自由騎士。
マリアンナに声をかけたのは『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)だった。きゐこはニコッと笑ってマリアンナの腕を掴む。
「さ、行くわよ」
「え? え? 何、いきなり」
「これからですねぇ、アデレード甘味処全店制覇をしに行きますぅ~」
独特の間延びした声で『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)がそんな説明をしてくれた。
「へぇ、そうなん……、えっ」
説明の内容にうなずきかけたマリアンナだが、その動きが固まる。
何か、凄いことをしようとしていないか、この人達。
「それじゃあ、行きましょうか。マリアンナさん」
きゐことは反対の手を取って、『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)が歩き出そうとした。
「え、待って。私もなの?」
「うむ? そういう話ではなかったのか?」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)がさも当然のように言うが、マリアンナは一切同意した覚えがない。
「まぁ、店も近いし、少し付き合ってくれれば大丈夫だ」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)が戸惑うマリアンナに教えるようにして告げてきた。
「少しだけ、ね。それだったら……」
ちょうど小腹も減っていたところだ。
彼らとならば共に食べるのもいいだろうか、と、彼女は思ってしまった。
だが罠。それこそが罠。
少しとはいったいどれほどの時間なのか。
それを確認しなかったマリアンナの末路とは――!
「「おーいしー!」」
マリアンナ含めた女子四名が声を合わせた。
春のとれたてスイーツ盛り合わせは、口の中が春になる味だった。
「うむ、確かに美味だな、これは」
テオドールもスプーンですくったフルーツを口に入れてうなずく。
甘味強めで酸味は弱め。しかし、酸味があるからこそ口の中が甘ったるくならない。自然が生み出した絶妙のバランスと言えよう。
「確かに美味い。が、しかしこれは……」
同じくフルーツを楽しみつつ、リュリュは思った。
量、多くないか?
女子の方を見てみると、小食のフーリィンこそ食べるペースはゆっくりだが、
「「おーいしー!」」
残りの女子三名、すごい勢いでフルーツを平らげていく。
一店目からこの調子か。
果たして、これで全店制覇などできるのだろうか。わざわざ事前に甘味処をピックアップした自分の苦労は水泡に帰すのではないか。
そんな不安が、リュリュの頭をよぎった。
だが、彼の肩をテオドールがポンと叩いてかぶりを振った。
「大丈夫だ、安心したまえ。ロジェ卿の心配は杞憂に終わるだろう」
まるで予言のような言い方である。
だがすぐに、リュリュは彼の言葉が真実だと知ることになる。
――甘味処、二軒目。
ここではケーキのたぐいが販売されていた。
「「おーいしー!」」
一件目と変わらぬ勢いで、女性陣はケーキを楽しんでいた。
フーリィンも、他三名よりはゆっくりだが、しかし、食べ進めてはいる。
「…………」
何となく、リュリュはこの先の展開が読めてきた。
――甘味処、三軒目。
「「おーいしー!」」
大体同じ展開であった。
「そうか。……そうかー」
ここに至ってリュリュは、テオドールの言葉の意味するところを知った。
なお、フーリィンは同じ店にいたヨウセイの女性と歓談しつつ食べていた。
――甘味処、四軒目。
「「おーいしー!」」
もはや以下同文以外に記す言葉はない。
「……女生とはすごいな、テオドール」
「理解されたか、ロジェ卿。そう、これが『甘味は別腹』というやつだ」
すっかりおなかを満たした男性二人が、飲み物を口にしつつ談じる。
「あ、ひどいですねぇ。私達ぃ、そんな大食いじゃありませんよぉ」
「そーよそーよ! 甘いものがちょっと好きなだけよ!」
男共の話が聞こえたらしく、八千代ときゐこが抗議してきた。
リュリュは思った。
……ちょっと?
「でも、本当においしいわ。お菓子って言っても、こんなに種類があるのね」
マリアンナが楽しげに笑う。
その声には確かな感動の色があった。
彼女の笑みを見られただけでも、ここまで連れてきた甲斐があった。
きゐこ達はそう実感することができた。
「次はどんなお菓子があるのかしら。楽しみだわ!」
だが溌溂と笑うマリアンナの笑みに、テオドールは「やっぱ女性すげーわ」と内心に思ったり、思わなかったり。
四軒目の甘味を制覇し、彼らは店を出る。
すると――
「マリアンナ」
彼女を呼ぶ、男性の声。マリアンナが振り向くと、
「……兄様?」
パーヴァリがそこにいた。
●冬が終わって春が来て
「ええい、こんな時に用事とは全く! だがミッションは完遂した! あとは託すぞ、たまたま偶然遭遇したアンネリーザよ!」
「本当に偶然接触しただけなのになぜか全てを託されたけど案件が案件だけに了解したわ。行ってらっしゃい、ツボミ」
という感じでツボミは去り、代わりにたまたまアデレードに来ていた『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)が代役を務めることになった。
彼女に課せられた使命は一つ、パーヴァリとマリアンナを何とかすることである。なお、『何とか』の部分には様々な意味が含まれるものとする。
「…………」
「…………」
マリアンナとパーヴァリは、お互い近くにいながらも相手の顔を見ることなく、ずっと黙り込んでいた。
これを、『何とか』しなければいけないワケだ。
「あー、もー! お祭なのに何でそんな陰気な顔してるのよ、二人とも!」
「アンネリーザ、分かってるけど……」
マリアンナは困惑しているが、しかし、距離感が未だに掴めずいる兄との関係性を何とかしたいという思いは確かにあった。
「あれ、パーヴァリさんじゃない」
「君は確か、エルシーか。こんにちは」
パーヴァリの方は、居合わせた『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)と話をしているようだった。
だがエルシーもマリアンナに気づき、
「何、どうしたの、これ?」
「実はね……」
アンネリーザがエルシーに事情を説明した。
すると、エルシーはパーヴァリの前で大笑いし始めた。
「何を怖がってるのよ。赤竜騎士団ともやり合ったヨウセイのリーダーが!」
「返す言葉もないよ……」
全くその通りだと認めるしかなく、パーヴァリは力なく苦笑した。
「マリアンナさんもよ。今更だけど、S級指令お疲れ様」
「あ、ありがとう……」
いきなり労をねぎらわれて、マリアンナの戸惑いはさらに増した。
そこを、エルシーが突き刺す。
「お兄さんと仲良くするのって、S級指令より難しいことかしら?」
「うーん剛速球火の玉ストレート……」
聞いていたアンネリーザも苦笑いするしかないド直球であった。
そこにさらに、ヨーゼフ・アーレント(CL3000512)が通りかかってきた。
「おや、そちらの男女はヨウセイの方かな?」
彼は後ろに二人のヨウセイを連れていた。
「ちょうど、こちらの二人の案内をしていたところでね」
「こんにちは、モニカよ」
『魔法少女まじかる☆モニィ』モニカ・シンクレア(CL3000504)が礼儀正しくお辞儀をした。
「黒き閃光(自称)のオルパだよ。よろしく、って、パーヴァリじゃないか」
もう一方、挨拶をした『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)はパーヴァリのことを知っていた。彼はウィッチクラフト所属であった。
「こんなにヨウセイのみんなが、来てたのね……」
マリアンナが、どこか不思議そうに呟いた。
街でも何人かは見かけたが、こうして実際に会ってみると、イ・ラプセルに移ったヨウセイは本当に多いのだなと実感する。
「ところで、何かあったのかね?」
場の空気を敏感に察したヨーゼフが、アンネリーザに尋ねた。
「まぁ、ちょっとね」
アンネリーザは事情を説明しようかと迷った。
そこに、モニカが口をはさんでくる。
「ねぇ、一緒にお祭を見て回りましょうよ。せっかくここで会ったんだし」
「それはいいアイディアだ。俺もそうしたいが、どうだい?」
突然の誘いであった。
しかし、アンネリーザはそこでアイコンタクトを送った。
その意味を即座に理解し、エルシーはうなずく。
「うん、それがいいと私も思うわ!」
「エルシー?」
「どうする? 何か食べに行く? ヨウセイさんってお魚は食べるの?」
「待ってくれ、僕達は……」
言いかけるパーヴァリの背中を、オルパが押してきた。
「いいから行こうぜ、パーヴァリ。祭りなんだぜ。そんなシケた顔してちゃ、楽しめるものも楽しめないだろ?」
マリアもまた、まだ逡巡の気持ちが強かった。
しかし、モニカが彼女の手を握る。
「行きましょうよ、マリアンナ。こんなに賑やかなのよ。楽しまない手はないでしょう? それに、私のハープも聴いてもらいたいわ」
にこやかに笑うモニカに、マリアンナは少し考える。
「ねぇ、兄様」
「マリアンナ?」
呼ばれたパーヴァリが見ると、マリアンナが手を差し出していた。
「行きましょう。兄様と一緒にお祭を見たいの」
「……ああ。分かったよ」
パーヴァリもその顔を柔らかく崩して、彼女の手を取った。
見ていたヨーゼフが腕を組んで深くうなずく。
「何があったかは知らないが、仲良きことは美しきかな、だな」
「いやぁ、本当に助かったわ……」
アンネリーザは彼に深く感謝した。
「あ、そうだ! チョコレートを買いましょ。みんなで贈りあうの!」
「ミモザの花も準備しなきゃな。そういう祭りなんだろ?」
「待って、まだ甘味処全店制覇ができてないわ! マリアンナさん!」
「全店制覇! 何それ面白そう!」
人も、亜人も、ヨウセイも混じって、みんなで楽しく騒ぎながらフルール・ド・プランタンの祭りはまだ続く。
それは、朗らかな春の訪れを祝う祭りであった。
「はぇ~~~~、スッゲー賑やかだな」
『田舎者』ナバル・ジーロン(CL3000441)はアデレードの街の入り口でそんな感嘆の言葉を漏らしていた。
アデレードに来るのは初めて、というワケではないが、普段の街の姿を知っているからこそ祭りに賑わう今のアデレードの華やかさに驚くのだ。
彼はいつもと違う街の姿に半ば圧倒されつつ、物珍しげに往来を歩く。と、その耳に聞き覚えのない陽気なメロディが聞こえてきた。
「お~、奇麗な曲だ、な……?」
見てみれば、曲を奏でるのは見覚えのある人物。
「~♪」
それは、『支える者』ドロテア・パラディース(CL3000435)であった。
奏でることに集中している彼女の周りには小さな人だ仮ができている。
ナバルはその中に混じって、しばしドロテアの演奏に聞き入った。
やがて演奏が終わって、ナバルは拍手しながら一歩前に出る。
「よ、ドロテア! 今日もいい演奏だな!」
「ひゃっ! ナ、ナバル殿!? 聴いてたのでありますか!」
「ああ、奇麗な曲だったぜ!」
サムズアップするナバルに、ドロテアは視線を右往左往させる。
「な、何だか恐縮であります……」
そんな彼女の様子には気づかず、ナバルはポンと手を打った。
「なぁ、どうだ? もしこのあと時間あるなら、一緒に見て回らねぇか?」
「え? ……あ」
言われたドロテアは、すぐに彼の状況に気づいた。
「もちろんであります! 案内くらいなら私でも……、あ、いや、してみせますのでお任せください!」
「よっしゃ、心強いぜ!」
パンと手を打つナバルにドロテアは小さな声で、
「あ、あの、途中でお花屋さんに寄ってもいいでありますか?」
「おう! もちろんいいぜ!」
彼の答えに、ドロテアに微笑みを返す。
ミモザの花を買ったら、用意しておいたチョコレートと一緒に。
――上手く贈れたらいいなぁ。
今から少しだけ緊張しているドロテアであった。
●ヨウセイ達が過ごす春
イ・ラプセルはあたたかい。
長年、森の中を逃げ続けていたマリアンナ・オリヴェル(nCL3000042)にとっては、この国はまるでおとぎ話の国のようであった。
「そこにいるのは、マリアンナか」
不思議な思いを抱きつつ歩いていると、声をかけられた。
「あら、アデル」
振り向くと、そこにいたのはアデル・ハビッツ(CL3000496)であった。
前にも見た兜をかぶったままの彼。
「ようこそ、フルール・ド・プランタンへ」
顔こそ見えないものの、その声に歓迎の意を感じ取り、マリアンナは笑う。
「ええ、ありがとう、自由騎士様」
「欲を言えばこのまま案内したいところだが、すまない。今は見回り中でな」
「あら、お祭なのに忙しいのね。一人でも見て回れるわよ」
マリアンナとアデルはしばし他愛のない雑談に花を咲かせた。
そして、アデルが去り際、
「忘れていた。これを」
「ミモザの花?」
「ああ。先日の、写真の礼だ」
「ありがとう。いい香りね」
マリアンナは受け取った花を顔に近づけてうなずいた。
そしてアデルは見回りに戻っていく。
ミモザの花を手に、彼を見送ったマリアンナは散策を再開した。
ちょうど同じ頃、パーヴァリ・オリヴェル(nCL3000056)もまたアデレードの街にやって来ていた。
「何という華やかな……」
そして、春の祝祭の空気にただただ驚かされていた。
「おっと、どこぞの若旦那かと思ったらパーヴァリの旦那じゃねぇか」
「君は……」
後からパーヴァリに話しかけてきたのは、『1000億GP欲しい』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)であった。
「何だい、街が派手で驚いてたとか?」
「あ、ああ。君の言う通りだ。……凄いものだね」
飾り付けられた街を見回し、パーヴァリは感嘆のため息をこぼす。
その背中を、ウェルスが軽く叩いた。
「ここをすげぇと思うならさ、ここに負けない国でも作ったらどうだい?」
「それは、そういう意味かな?」
思いがけない言葉に、パーヴァリは彼へと問い返す。
「このままだとヨウセイはここに庇護されるだけの存在になっちまうだろ」
「僕はそれが悪いとは思わないよ」
「……へぇ」
「君はそうじゃないのかい?」
パーヴァリに真っ直ぐ見つめられ、ウェルスは肩をすくめた。
「ジョークだよ。本気にしないでくれ。お詫びにこの辺案内するからよ」
「ああ、よろしく頼むよ」
お互い、それ以上は踏み込まず、二人は雑談しながら歩いて行った。
マリアンナは公園のベンチに座っていた。
一通り街を歩き回って、ここからどうしようか思案しているところだ。
「あら……?」
せわしない足音が聞こえて、何かと思って顔を挙げると、そこに『ノラ狗』篁・三十三(CL3000014)の姿があった。
先刻の自分と同じように、周りの景色を興味深げに眺めている。
「もしかして、道に迷ってますか?」
「あ、えっと……。あれ!」
マリアンナが話しかけると、三十三は何かに気づいたように声をあげた。
「ヨウセイさん、だよね?」
「え? ええ、そうだけど。マリアンナよ。よろしくね」
自由騎士だろうか。
そう思いながら名乗ると、三十三はにっこりと笑ってうなずいてきた。
「俺はケモノビトの篁・三十三っていうんだ、よろしく!」
「三十三は、ヨウセイのことを知っているの?」
「うん。報告書しか見てないけどね」
ということは、やはり彼は自由騎士らしい。
「実は長いこと街から離れててさ、久しぶりに戻って来たんだ!」
「そうなの。じゃあ、街の案内はいらないかしら?」
「あ、いるいる! 一緒にお祭回ろうよ!」
「ええ、いいわよ」
マリアンナはベンチから立ち上がり、三十三と共に祭りに加わっていった。
「お、いたいた。やはり目立つな、貴様は!」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)に見つかった。
だから何だという話ではないが。
だが唐突だったので、パーヴァリは驚いていた。
「いきなり、何事だい?」
「何事も何もあるか、マリアンナとは会ったのか?」
ツボミはいきなり核心を突いてきた。
「それは……」
「貴様がこの街に来たのは、マリアンナの様子を見るためだろう?」
突き刺すように彼女は言う。
決めつけるかのような物言いだが、しかしその実、大当たりだ。
「よし、行くぞ」
ツボミはパーヴァルの腕を掴んで引っ張った。
「いや、だが……」
「ええい、ここまで来て煮え切らないことを言うな! そもそも貴様らはこういうめでたい日でも別々に行動してるとはどういうことだ! もっと兄妹仲良くイチャイチャしなさいよ!」
「……何を言っているんだ、君は」
パーヴァリは思わず真顔になった。
ものすごい物言いだが、しかし、ツボミの本気はありありと伝わってくる。
「分かった。ついていくから引っ張らないでくれ」
元々の目的はそれなのだ。パーヴァリは観念することにした。
「ところで、マリアンナはどこにいるか知ってるのかい?」
「え、貴様知ってるんじゃないのか?」
ツボミから返ってきた答えは、それだった。
「「…………」」
二人は、互いに探るような目で相手を見た。
「探すぞ」
「探そう」
そういうことになった。
●春の大スイーツ祭
「あ、いたいた!」
三十三の案内を終えて、どうしようかと考えていたマリアンナに向かって、声をかける者がいた。
「みんな、集まってどうしたの?」
そこにいたのは五人の自由騎士。
マリアンナに声をかけたのは『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)だった。きゐこはニコッと笑ってマリアンナの腕を掴む。
「さ、行くわよ」
「え? え? 何、いきなり」
「これからですねぇ、アデレード甘味処全店制覇をしに行きますぅ~」
独特の間延びした声で『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)がそんな説明をしてくれた。
「へぇ、そうなん……、えっ」
説明の内容にうなずきかけたマリアンナだが、その動きが固まる。
何か、凄いことをしようとしていないか、この人達。
「それじゃあ、行きましょうか。マリアンナさん」
きゐことは反対の手を取って、『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)が歩き出そうとした。
「え、待って。私もなの?」
「うむ? そういう話ではなかったのか?」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)がさも当然のように言うが、マリアンナは一切同意した覚えがない。
「まぁ、店も近いし、少し付き合ってくれれば大丈夫だ」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)が戸惑うマリアンナに教えるようにして告げてきた。
「少しだけ、ね。それだったら……」
ちょうど小腹も減っていたところだ。
彼らとならば共に食べるのもいいだろうか、と、彼女は思ってしまった。
だが罠。それこそが罠。
少しとはいったいどれほどの時間なのか。
それを確認しなかったマリアンナの末路とは――!
「「おーいしー!」」
マリアンナ含めた女子四名が声を合わせた。
春のとれたてスイーツ盛り合わせは、口の中が春になる味だった。
「うむ、確かに美味だな、これは」
テオドールもスプーンですくったフルーツを口に入れてうなずく。
甘味強めで酸味は弱め。しかし、酸味があるからこそ口の中が甘ったるくならない。自然が生み出した絶妙のバランスと言えよう。
「確かに美味い。が、しかしこれは……」
同じくフルーツを楽しみつつ、リュリュは思った。
量、多くないか?
女子の方を見てみると、小食のフーリィンこそ食べるペースはゆっくりだが、
「「おーいしー!」」
残りの女子三名、すごい勢いでフルーツを平らげていく。
一店目からこの調子か。
果たして、これで全店制覇などできるのだろうか。わざわざ事前に甘味処をピックアップした自分の苦労は水泡に帰すのではないか。
そんな不安が、リュリュの頭をよぎった。
だが、彼の肩をテオドールがポンと叩いてかぶりを振った。
「大丈夫だ、安心したまえ。ロジェ卿の心配は杞憂に終わるだろう」
まるで予言のような言い方である。
だがすぐに、リュリュは彼の言葉が真実だと知ることになる。
――甘味処、二軒目。
ここではケーキのたぐいが販売されていた。
「「おーいしー!」」
一件目と変わらぬ勢いで、女性陣はケーキを楽しんでいた。
フーリィンも、他三名よりはゆっくりだが、しかし、食べ進めてはいる。
「…………」
何となく、リュリュはこの先の展開が読めてきた。
――甘味処、三軒目。
「「おーいしー!」」
大体同じ展開であった。
「そうか。……そうかー」
ここに至ってリュリュは、テオドールの言葉の意味するところを知った。
なお、フーリィンは同じ店にいたヨウセイの女性と歓談しつつ食べていた。
――甘味処、四軒目。
「「おーいしー!」」
もはや以下同文以外に記す言葉はない。
「……女生とはすごいな、テオドール」
「理解されたか、ロジェ卿。そう、これが『甘味は別腹』というやつだ」
すっかりおなかを満たした男性二人が、飲み物を口にしつつ談じる。
「あ、ひどいですねぇ。私達ぃ、そんな大食いじゃありませんよぉ」
「そーよそーよ! 甘いものがちょっと好きなだけよ!」
男共の話が聞こえたらしく、八千代ときゐこが抗議してきた。
リュリュは思った。
……ちょっと?
「でも、本当においしいわ。お菓子って言っても、こんなに種類があるのね」
マリアンナが楽しげに笑う。
その声には確かな感動の色があった。
彼女の笑みを見られただけでも、ここまで連れてきた甲斐があった。
きゐこ達はそう実感することができた。
「次はどんなお菓子があるのかしら。楽しみだわ!」
だが溌溂と笑うマリアンナの笑みに、テオドールは「やっぱ女性すげーわ」と内心に思ったり、思わなかったり。
四軒目の甘味を制覇し、彼らは店を出る。
すると――
「マリアンナ」
彼女を呼ぶ、男性の声。マリアンナが振り向くと、
「……兄様?」
パーヴァリがそこにいた。
●冬が終わって春が来て
「ええい、こんな時に用事とは全く! だがミッションは完遂した! あとは託すぞ、たまたま偶然遭遇したアンネリーザよ!」
「本当に偶然接触しただけなのになぜか全てを託されたけど案件が案件だけに了解したわ。行ってらっしゃい、ツボミ」
という感じでツボミは去り、代わりにたまたまアデレードに来ていた『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)が代役を務めることになった。
彼女に課せられた使命は一つ、パーヴァリとマリアンナを何とかすることである。なお、『何とか』の部分には様々な意味が含まれるものとする。
「…………」
「…………」
マリアンナとパーヴァリは、お互い近くにいながらも相手の顔を見ることなく、ずっと黙り込んでいた。
これを、『何とか』しなければいけないワケだ。
「あー、もー! お祭なのに何でそんな陰気な顔してるのよ、二人とも!」
「アンネリーザ、分かってるけど……」
マリアンナは困惑しているが、しかし、距離感が未だに掴めずいる兄との関係性を何とかしたいという思いは確かにあった。
「あれ、パーヴァリさんじゃない」
「君は確か、エルシーか。こんにちは」
パーヴァリの方は、居合わせた『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)と話をしているようだった。
だがエルシーもマリアンナに気づき、
「何、どうしたの、これ?」
「実はね……」
アンネリーザがエルシーに事情を説明した。
すると、エルシーはパーヴァリの前で大笑いし始めた。
「何を怖がってるのよ。赤竜騎士団ともやり合ったヨウセイのリーダーが!」
「返す言葉もないよ……」
全くその通りだと認めるしかなく、パーヴァリは力なく苦笑した。
「マリアンナさんもよ。今更だけど、S級指令お疲れ様」
「あ、ありがとう……」
いきなり労をねぎらわれて、マリアンナの戸惑いはさらに増した。
そこを、エルシーが突き刺す。
「お兄さんと仲良くするのって、S級指令より難しいことかしら?」
「うーん剛速球火の玉ストレート……」
聞いていたアンネリーザも苦笑いするしかないド直球であった。
そこにさらに、ヨーゼフ・アーレント(CL3000512)が通りかかってきた。
「おや、そちらの男女はヨウセイの方かな?」
彼は後ろに二人のヨウセイを連れていた。
「ちょうど、こちらの二人の案内をしていたところでね」
「こんにちは、モニカよ」
『魔法少女まじかる☆モニィ』モニカ・シンクレア(CL3000504)が礼儀正しくお辞儀をした。
「黒き閃光(自称)のオルパだよ。よろしく、って、パーヴァリじゃないか」
もう一方、挨拶をした『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)はパーヴァリのことを知っていた。彼はウィッチクラフト所属であった。
「こんなにヨウセイのみんなが、来てたのね……」
マリアンナが、どこか不思議そうに呟いた。
街でも何人かは見かけたが、こうして実際に会ってみると、イ・ラプセルに移ったヨウセイは本当に多いのだなと実感する。
「ところで、何かあったのかね?」
場の空気を敏感に察したヨーゼフが、アンネリーザに尋ねた。
「まぁ、ちょっとね」
アンネリーザは事情を説明しようかと迷った。
そこに、モニカが口をはさんでくる。
「ねぇ、一緒にお祭を見て回りましょうよ。せっかくここで会ったんだし」
「それはいいアイディアだ。俺もそうしたいが、どうだい?」
突然の誘いであった。
しかし、アンネリーザはそこでアイコンタクトを送った。
その意味を即座に理解し、エルシーはうなずく。
「うん、それがいいと私も思うわ!」
「エルシー?」
「どうする? 何か食べに行く? ヨウセイさんってお魚は食べるの?」
「待ってくれ、僕達は……」
言いかけるパーヴァリの背中を、オルパが押してきた。
「いいから行こうぜ、パーヴァリ。祭りなんだぜ。そんなシケた顔してちゃ、楽しめるものも楽しめないだろ?」
マリアもまた、まだ逡巡の気持ちが強かった。
しかし、モニカが彼女の手を握る。
「行きましょうよ、マリアンナ。こんなに賑やかなのよ。楽しまない手はないでしょう? それに、私のハープも聴いてもらいたいわ」
にこやかに笑うモニカに、マリアンナは少し考える。
「ねぇ、兄様」
「マリアンナ?」
呼ばれたパーヴァリが見ると、マリアンナが手を差し出していた。
「行きましょう。兄様と一緒にお祭を見たいの」
「……ああ。分かったよ」
パーヴァリもその顔を柔らかく崩して、彼女の手を取った。
見ていたヨーゼフが腕を組んで深くうなずく。
「何があったかは知らないが、仲良きことは美しきかな、だな」
「いやぁ、本当に助かったわ……」
アンネリーザは彼に深く感謝した。
「あ、そうだ! チョコレートを買いましょ。みんなで贈りあうの!」
「ミモザの花も準備しなきゃな。そういう祭りなんだろ?」
「待って、まだ甘味処全店制覇ができてないわ! マリアンナさん!」
「全店制覇! 何それ面白そう!」
人も、亜人も、ヨウセイも混じって、みんなで楽しく騒ぎながらフルール・ド・プランタンの祭りはまだ続く。
それは、朗らかな春の訪れを祝う祭りであった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
お疲れさまでした!
いやー、楽しいお祭でしたね!
これが皆様にとっての春の思い出になれば幸いです。
それでは、また次の機会にお会いしましょう!
ご参加いただきありがとうございました!
いやー、楽しいお祭でしたね!
これが皆様にとっての春の思い出になれば幸いです。
それでは、また次の機会にお会いしましょう!
ご参加いただきありがとうございました!
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