MagiaSteam
クロスストーンとラスカルズ




「ここにあるのか……」
 自由騎士達のグループはとある洞窟を訪れていた。
 そこは連なる山脈の中腹。
 研究者の見解によりここにクロスストーンの鉱脈がある可能性が高い事がわかり、調査に来た自由騎士達はランタンの明かりを頼りに人類未踏の洞窟の奥へと進んでいた。
「壁面の強度は結構脆そうだな」
 軽く叩いたくらいではなんとも無いが、大きな衝撃を与えると崩落のおそれもありえそうだ。
 慎重に奥へと進んでいく自由騎士達。

「この模様は……これがそうか」
 1人の自由騎士が地面から拾い上げたのは黒十字模様が特徴の石の欠片。
 あったぞ、と皆に伝えようとしたその時だった。
「そいつを渡してもらおうか」
「ケケケケ……俺たちゃラスカルズ。奪う事がお仕事だぁ」
 現れたのは黒ずくめの男たち。
「ラスカルズっ!?」
「まぁ俺たちが誰かも、お前達が誰かも……そんなこたぁどぉーーーでもいいんだよぉ!!!!」

 そして──
「ケケケ。確かに頂いたぜ」
 奪い取ったクロスストーンを手に、嗤う黒ずくめの男たち。
「ぐ……」
 自由騎士達は男達によって痛めつけられ動く事すらままならない。
「さて帰るか。お前たちにもう用は無ぇよ」
「待てっ!! 逃がしは……しな……い」
「何故お前達は……石を集める……」
「そんな事知ってどうすんだ? ……あるお方が探してるんだよ12個の石をな」
「おっと、しゃべりすぎちまった。……まぁいいか。どうせお前達はここから出れねぇし」
「ある……お方……」
「ケケケ。じゃあな。ほれ。ドーーーーーン!!」
 男が壁に向かって一撃を放つと、ビシッという音と共に地面が揺れ始める。
「おやおやぁ? そんなところで寝ててもいいのか? すぐにここは崩れるぜぇ。ケケケ……ケケケケケケッ!!!」
「くそっ! くそっ!! くそぉぉぉぉーーー!!!」
「きゃぁぁぁぁぁ-------!!!」
 数日後。
 生き埋めとなった自由騎士達の無残な姿が発見された。


「クロスストーンの調査に行った自由騎士がラスカルズに襲われる」
『演算士』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)の顔はいつもどおり悔しさを滲ませる。
 自分に出来るのはここまで。わかってはいる。後は皆に託すしかない無力感を感じているのだろう。
「今からすぐに向かえば、男達が洞窟に入る前に着くはずだ。黒ずくめの男達を撃退。それが今回の依頼だ。だが余裕があれば、洞窟に入り調査を手伝ってくれても構わない」
 よろしく頼むとテンカイは手をひらひら振ると、いつものように部屋の奥へと戻っていった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
麺二郎
■成功条件
1.黒尽くめの男達の撃退
麺です。

この依頼はブレインストーミングスペース
ゼクス・アゾール(CL3000469) 2019年03月21日(木) 00:58:38
の発言等を元に作成されていますが、参加の強制や優先はありません。

ラスカルズが探していると思しき鉱石たち。その鉱石を集めた先には一体何が待ち受けているのでしょうか。


●ロケーション

 連なる山脈の中腹辺りにある洞窟前。そこへたどり着いた自由騎士は今まさに洞窟へ入ろうとする黒ずくめの男達を発見、すぐに戦闘が始まります。
 すでに日は暮れており、月明かりはあるものの洞窟の周りの木々に阻まれ、視界は悪い状況です。足場には問題はありません。
 洞窟への侵入を阻止し、黒尽くめの男達を撃退してください。

●敵&登場人物

・黒尽くめの男(リーダー)x1
 額から頬に掛けて右目に刀傷がある。エメラルドグリーンの水髪を持つ男。他のものより戦闘能力に長けている。
 ラスカルズメンバー。軽戦士スタイル。ミズヒトとのマザリモノ。武器はタガーと長剣の二刀流。
 使用スキルはトリロジーストライクとランク1数種。

・黒尽くめの男 x8
 軽戦士、ガンナーが半々。リーダーと同じく皆ミズヒトとのマザリモノ。全員リーダーに陶酔しており、皆自らの意思で右目が縫い付けられている。全員がリーダーを守る盾となります。
 連携を駆使し、遠距離近距離の攻撃を巧みに使い分ける。
 集団戦に長けており、陣形を崩さぬよう、敵へのブロック能力にも長ける。
 使用スキルはランク1のみ。

・自由騎士 4人
 石の調査にきた新米の自由騎士たちです。入り口で戦闘が行われている事など知る由も無く洞窟探索を続けています。

●同行NPC

『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
 特に指示が無い場合は、回復サポートに従事します。
 所持スキルはステータスシートをご確認ください。

皆様のご参加お待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
8モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
6/6
公開日
2019年07月10日

†メイン参加者 6人†




 急がないとっ──

 テンカイの話を聞くや否や、仲間と共に現場へと向かう『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。手に持つカンテラに明かりが灯っていないのには理由がある。それは敵に自身たちが近づいているのを悟らせぬよう──状況次第では奇襲を仕掛けんが為の布石。敵の数は多い。先ずは敵の数を減らし、数的不利を打破する。そこにつけ入る隙が生じるハズ──エルシーは策を練る。
(ラスカルズ……という方々を、私は皆さんほど知りません……どの様な経緯があって、何故、クロスストーンという鉱石を狙っていて、そしてそれを何に使用しようとしているのかも……)
 憂いを帯びた表情で皆と行動を共にするのは『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)。ラスカルズという存在への、漠然とした不安のようなものがたまきの表情を曇らせる。
(ですが……、その方々が、罪の無い命を脅かす存在であるならば……私は、その方々から、皆さんを守りたいと、強く……強く思います!)
 雲の隙間から月明かりがたまきを照らす。覚悟を決めたたまきの青く澄んだ瞳は美しく輝いていた。

 何も本当に洞窟爆破しなくても──

『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)はぽつりと呟く。
(それは確かにその方が楽って、この前言ったけど……)
 まさか本当に実行されるとは──現地へ急ぐアリアの心境はなんとも複雑であった。
 学術的な事には疎い『一帖の盾』ランスロット・カースン(CL3000391)であったが、護衛であれば話は別だ。
「しかしラスカルズ……またあの連中か。それに……ヤツラが探す石には、如何なる価値があるのか」
『一帖の盾』ランスロット・カースン(CL3000391)のラスカルズが集める鉱石への疑問は深まるばかり。過去を思い出しながらその凛々しく整った眉を顰める。
「まぁ本来の目的が何であるにせよ、眼前の狼藉は止めねばなるまい」
 共に現地へ急ぐ自由騎士達を見ながらランスロットは改めて打破を誓う。

 俺は一帖の盾、我が国の平穏を守る盾である──

 ランスロットが眼光鋭く目線を向けるは、明かりを灯さず気配を殺しながらひた走るこの道のはるか先。同胞を嬲らんとするまだ見ぬ悪漢どもであった。
(ラスカル……ズ? きいたことあるようなないような……おもいだせない)
『悪の怪人表情とぼしいガール』リムリィ・アルカナム(CL3000500)は何度もその言葉を反復する。
(しんまいのじゆうきしたち。おなじなわばりのなかま。だからたすける)
 限られた世界で生きていたリムリィに芽生えた孤児院の皆とは別の仲間意識。それはリムリィが着実に成長している証。
(てきをこわせばたすけられる)
 リムリィの硬く握られた拳に更に力が込められる。

 それなら──それだけなら。わたしにもできるはず──

 リムリィのまだ幼い心は方法を探す。新たに増えた大切な仲間を守る方法を。徐々に広がりつつある大事な縄張りを守る方法を。例えそれが自身を傷つける事になろうとも、リムリィは今出せる答えを、ただ只管に体現するのだ。暗闇の先を見通すリムリィは、敵を洞窟に入らせまいと更に加速するのであった。

● 
「くそっ。靴が汚れちまったじゃねぇか。なんで俺がわざわざこんな山奥によぉ」
「全くですぜ、アニキ。石ころ採取なんざ他のモンに行かせて欲しいもんですわ」
「酒も女も無ぇ。ツマンねえぜ、アニキぃ~」
 口々に愚痴を零す黒ずくめの男達。一様に真っ黒な服を身につけ、その右目は何かを封印するがごとく縫いつけられている。明らかに普通では無い集団。その中に唯一右目が縫われておらずアニキと呼ばれる男がいた。
「まぁそう言うな。この指令は首領からのトップダウン。こいつを成功させればきっと首領の評価はダダ上がりだぜ。そうなれば……わかるよな」
 ごくりと男達が喉を鳴らす。首領に認められる──それがラスカルズにとってどれ程のものかはわからない。だが明らかに目つきと気配の変わった男達の様子がすべてを物語る。
「見えてきやしたぜ、アニキ! あの洞窟がそうじゃないですかい?」
 ああ、そうかもな──アニキと呼ばれる男がそう言おうとした瞬間、その背後から軽快なタップ音が聞こえたのだった。

「なんだこの音は!?」
 その音を奏でるはアリア。聞き入ったものに待つは前後不覚の迷い道。
「あらまの中がグルグルだぁ……」
「あんだぁ~これやぁ?」
 巻き込まれた男達が軽く混乱する中、更なる追撃が男達を狙う。
「ラスカルズだな。では、死んでもらうぞ」
 本当に殺すわけではない。だがランスロットの言葉には男達を本当にそう思わせるほどの十分な殺気が込められていた。
「初撃必中! 安全装置解除・銃剣乱舞ぉぉぉおおお!!」
 ランスロットが一気に近づき、剣に仕込まれた銃を極至近距離で乱射する。
「ぐわぁぁっ!?」
「ぎゃぁぁぁ!!!」
 出会いがしらのランスロットの必殺に、成すすべなく吹き飛ぶ数名の男達。
「自由騎士よ! 観念なさい!!」
 柳凪を付与し、物理耐性をつけたエルシーが構えながら言い放つ。
「自由騎士だと!?」
「あいつらが何人もの幹部達を……」
 どよめく男達。そこへ──やさしい光を放つ存在が一つ。たまきだ。その存在を敢えて晒すように自らを発光させながら祈りを込めるたまき。その祈りは癒しの力となり、全ての自由騎士達に治癒の効果を付与する。
 そのたまきのすぐ近く。淡く光るたまきを守るように立つのはアリア。タップで混乱を狙いつつ、回復の要となるたまきをも守れる絶妙な位置取りをするアリア。これまでの数々の経験はアリアを自然に最善へと導いてゆく。
「さぁ行きますよ」
 奇襲を嫌いながらも総崩れにはならず、にらみ合う自由騎士とラスカルズ。一触即発の空気が漂う。
「生意気なヤツラだな。お前達、乱れるんじゃねぞ。いつもどおりでいい。それで俺ちゃ無敵だ」
 リーダーと思しき男が号令を掛ける。
「アニキ!」
「応!」
「「「我ら、その名を隻眼連(せきがんれん)。アニキの為なら死すら厭わず」」」
 瞬く間に男達は隊形を整え、自由騎士達の攻撃にあわせた連携を取り始める。
「そうはさせないっ!!」
 エルシーが一気に前に出て攻撃を仕掛けるものの、前衛と拳を交わす瞬間を後方の男が狙い打つ。さしものエルシーも反応しきれず、距離をとらざる得ない。
(あの右目……死角になるかと思ったけど……そうはいかないか。それに……近距離遠距離攻撃の使い分けが絶妙……厄介ね)
 エルシーは状況を冷静に判断する。
(でも……生憎私は超接近戦が十八番だから)
 連携を恐れて前に出なければ勝機は遠のくばかり。エルシーは自身の尤も得意とする攻撃に全てを委ねる。エルシーの武闘家としての誇りがそこにはある。
 気付けばランスロットの一撃を受け吹きとんだ男達も、傷を負いながらも合流。連携は更に強度を増す。
「へぇ……あの敵リーダーなかなか強そうじゃん? いいねぇ、燃えてきたぜ!」
 李 飛龍(CL3000545)はリーダーに狙うを定める。だが敵の守りは堅い。先ずは守護する男達を打破する必要がある。
「ククク。俺たちだって伊達や酔狂で徒党を組んじゃいねぇぜ。数には意味がある。この数がいい。守り、攻められるこの数……。全ては勝って、奪い、全てを手に入れるための手段なんだぜぇ!!」
「アニキの言うとおりだぜ!」
「ケケケ!! やれるもんならやってみな!!」
 連携に絶対の自信を持つ此度の敵。確かにその連携はすばらしいものであった。
 ランスロットやエルシー、リムリィが前に出るが、その攻撃を遮るように後方からの射撃が狙う。そして遠近交えた攻撃でひとたび体制を崩そうものなら、刀傷の男の三連撃が即座に打ち込まれるのだ。
 戦線を崩そうとランスロットはバーチカルブロウを叩き込もむべく近寄るが、相次ぐ後方からの攻撃に体勢を崩され、不完全な状態で繰り出された拳は敵の陣形を崩すに至る事が出来ない。
 たまきは戦線維持にと、絶え間なく癒しの雨を降らせ続けるが、敵もさるもの、隙あらばたまきを狙い打ってくる。
「危ないっ!!」
 その攻撃はアリアが身を挺して防いでいる。たまきには届かない。しかし。
(たまきさんがこうも狙われると……)
 たまきを守り、支援重視のアリアはなかなか攻撃を転じる事が出来ない。
 前衛の3人が必死に食い下がり、攻撃を続けるも、数で上回る男達の陣をなかなか切り崩す事はできず、こう着状態は続く。
「なぜ、いしあつめる?」
 リムリィは戦いの中で情報を引き出そうとしていた。混戦の中、刀傷の男に言葉を放つ。
「ハハッ!! それを知ってどうするんだ?」
「きょうみ、ある」
「興味……ただの興味かよ。……ハハハ!!!」
「面白れぇな。じゃぁ少しだけ教えてやる。この石はな。俺達マザリモノにとって……希望なんだよ」
 希望。確かに刀傷の男はそういった。どういうこと? 今のリムリィには理解できない。

 貴方達は、何故、この鉱山を狙っているのですか──
 誰かの命を傷付けるのなら、私が容赦しませんよ──
 
 たまきもまた男達に語りかける。何故悪行を繰り返すのか。何故命を奪うのか。ラスカルズと言う存在はずっと命を繋ぎ続けたたまきの心を乱さんとするもの。だからこそたまきは祈り続ける。癒しこそが──それこそがたまきの選んだ道なのだから。
「俺たちの陣が敗れるわけがネェ」
 こうしたこう着状態のなか、男達の心境に変化が現れる。それは緩みとも取れる愚かな思考。そしてそれはラスカルズがラスカルズである事の証明ともいえるもの。
「ケケケ、よくみりゃ粒沿いじゃねぇか。アニキぃ、こいつらいてこましたら俺、1人もらっていいっすか」
「おいふざけんな、俺が先だろ。あっちの赤毛なんて見てみろよ。いーい体してやがる……やべぇ滾ってきた。滾ってきたぜぇぇぇぇ」
 エルシーに目線を送ると腰をゆっくりくねらせる男。
「グ……グフ……お、おでは後ろにいる……あ、あの清純そうなオンナがいい。き、きっといい声で鳴く」
 どもりながらも男が指差したのはたまき。突然指差され、にたりと不気味な笑顔を向けられたたまき。思わず背筋に冷たいものが走る。
「あっちの二刀の女もいいぜぇ……見ろよあのむっちりとしたふともも。裸にひん剥いて体中嘗め回してぇぜぇええ」
 長い舌で舌なめずりをしながらアリアを見つめる男。その蛇のような目はアリアを熱い目線で見つめている。
「おい、お前らまだそういうのは早ぇえんじゃねぇか」
 刀傷の男が凄みを利かせる。
「す、すいやせ──」
「まず俺が選ぶにきまってんじゃねぇか。俺はあの……つるぺただ」
 そういって目を向けたのはリムリィ。……アンタそっち系か!!
「さすがアニキ!」
「やっぱりアニキだ! 誰も相手にしなさそうなところを真っ先に攻める!!」
「そこにしびれる憧れるぅ!!」
 攻めあぐねる自由騎士に気が緩んだのか、いつしか容姿端麗な自由騎士達の値踏みを始め、下衆い言葉が飛び交う男達。
 その醜悪な言動に静かに怒りを露にするのはランスロット。
「どこまでも救いようの無いクズ共め」
 握る剣に力が篭る。このような下衆な者たちを倒せずして何が騎士であるか。盾である我は何を守れるというのか。ここは危険を顧みず我が前に出て陣形を崩す。賭けである事は承知。だが我には信頼できる仲間達がいる。何も問題ない。そう決意したランスロットが盾を構えて突撃しようとしたその時だった。

 ──じゃぁそろそろ反撃だよね!

 皆の頭上から声がした。
「誰だ!?」
 男達が辺りを見渡す。
「いっくぜーーー!!」
 ハイバランサーで一気に木々を駆け上り、気配を消して男達の頭上にある木々まで移動し、タイミングを見計らっていた飛龍。
 気の緩みを見せた男達の頭上から一気に攻撃を畳み掛ける。
「油断大敵!! くらえっ!!」
 敵陣の中心に降り立つとすぐさまその拳を近くの男へ捻りこむ。陣を中から崩壊させる。これが上から全てを見渡した飛龍の導き出した答えだった。
「ぐわっ!?」
「こいつ!!!」
「打つな!! 味方に当たる!!」
 同士討ちを避け、陣の中心にいる飛龍への攻撃を静止した刀傷の男。その一瞬攻撃が止まり、連携が乱れる。
「みなさん!」
 たまきの祈りが皆を癒し、反撃の火蓋は切って落とされる。
「好機!!」
「いま」
「うぉぉぉーーーー!!」
 このチャンスを逃す自由騎士ではない。気力を振り絞り皆が前に踏み出す。
「緋色の衝撃ぉぉぉぉおおおおお!!!」
 エルシーの気合や諸々を込めた拳が。
「U.S.R」
 リムリィが淡々と振り下ろす巨大なハンマーが。
「おおおおおおお!!!」
 全てのなぎ倒すランスロットの蒸気盾の突進が。
 そして──。
「今こそ見せます。ダンサーの真髄をっ」
 前に飛び出したアリア。刻むワルツが魅せるはリズムに合わせ、踊るように武器を振るう殺戮の演舞。
「ぎゃぁぁぁ!!!」
「ぐわぁぁぁ!!」
 男達の悲鳴が響き渡る。
 ラスカルズにとっての大きな誤算。それは相手が誰でもない自由騎士であった事。強い精神と自由な発想から来る予想もしえない行動力、そしてそれを可能とする身体を備えた者たちであったこと。
「俺……た……ちの無敵の陣……が」
「うそだ……ろ」
 次々と倒れていく男達。気付けば経っているのは刀傷の男ただ1人。
「へへーっ!! あとはてめぇだけだぜっ」
 武道家特有の前後左右に揺れるなステップを踏みながら挑発する飛龍。
「ククク。俺さえ残っていれば問題ない。俺は1人だろうと最強だ」
「全部受け流せますか?」
「何っ!?」
 不意に耳元で聞こえた声と同時に繰り出されるは長剣と蛇腹剣の波状攻撃。
「同じ二刀使いかっ!!」
 
 軽戦士、特に二刀で大事なのは重心移動や体のバランス──
 
 目の前の二刀を操る男は敵だ。それ以上の存在では無い。だがアリアには二刀に特別な思いがある。だからこそ、無意識にその技量を測ってしまう。
「ハァッ!!」
 アリアが繰り出すは両の剣による滅多切り。テレフォンとも思える攻撃に男がどう反応するか。それを見極めんとする。
「くそっ!?」
 アリアの連撃を剣で受け流し続ける男。その動きには優雅さの欠片も無く、ただ打ち付けられる剣撃をかろうじて受けているだけであった。
(……)
 アリアは少し残念そうな表情を見せるとバックステップで男と距離を取った。ここまで。彼から得るものは何も無い。そうアリアは判断したのだ。
「あとはおれっちにやらせてくれよっ!!」
 開始当社からリーダー狙いだった飛龍。戦うのをじらされた分の衝動が今爆発する。
(きっちりたたっこんでやるぜー!!)
「くらえ!! おれっちのとっておきっ!!」
「そんな攻撃、俺が喰らうかぁっ!!」
 
 それはどうかしら──
 それはどうだろうな──

 飛龍の攻撃にあわせるようにエルシーとランスロットが動く。その動きは攻撃を行うつつも、刀傷の男の動きを制限するもの。それは男達のお株を奪うような自由騎士達の連携。
(なっ……これじゃ避けきれ──)
「グハァァァーーーーーー!!!」
 飛龍の渾身の前蹴りが男の鳩尾に深くめり込む。
「ゲハァーッ!? グハッ……」
 吐瀉物を撒き散らしながら男がのた打ち回る。
(……くそっ。せめてこの洞窟を……)
 男はふらふらと洞窟を向け歩を進める。だが──その動きに敏感に反応するものがいた。洞窟を背に男の前に仁王立つその者は。
「もう、おわり」
 男の前には自身が冗談交じりに名指ししたつるぺ──リムリィ。
「や……やめっ」
 男が気を失う前、最後に見たものは、華奢な少女から振り下ろされる強大なハンマーであった。


「ううぅ……」
「目が覚めたみたいね。貴方達には聞きたい事が沢山あるわ」
「ケケケケッ。俺達がそうそうしゃべるとおもってるのか」
「お嬢ちゃんが、ベッドの上でお相手してくれるならしゃべるかもなぁ」
 その身を拘束されながらも醜悪な貌で嗤う男達。
「……ドミニク」
 だがアリアがポツリと呟いた言葉で状況は一変する。
「……!?」
「俺達は何もしらねぇ!! 本当に知らないんだ!!」
「頼む……許してくれ」
「俺達が何かばらしたと知られたら……ひぃぃぃ」
 顔面蒼白になりガクガクと震えだす男達。饒舌だった刀傷の男も口を閉ざす。よほどの恐怖の対象なのであろうか。
(これは……)
 これ以上は無理みたいね。アリアは話題を変える。
「何故集めるの? それに希望ってどういう事?」
 リムリィとのやり取りの際に確かに聞こえた言葉。石は希望だと。
「……石を集めれば奇跡が起こる」
「奇跡?」
 それ以降、アリアがどれだけ問い詰めようと男達は何一つ言葉を発する事は無かった。


 一方その頃。
「こ、これか?」
 洞窟を進んでいた新人自由騎士達。その目の前にはクロスストーンの鉱脈と思われる地層の筋。
「見つけたぞ!」
「やった!!」
 喜びを声に出すルーキー達。そこに現れたのは討伐後すぐに洞窟へと向かった自由騎士達。
「見つけたみたいね。お疲れ様迎えにきたわよ」
「皆さんご無事ですか」
「調査は我々の任務では無いと思うが……先行する自由騎士や調査を希望する仲間の護衛となれば話は別だ」
 何気にツンデレな部分を見せるランスロット。
 依頼を無事成し遂げた自由騎士達をエルシーとたまきは笑顔で労った。

 こうしてまた一つラスカルズの企みは自由騎士によって阻止されたのであった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

ルーキーは無事任務を完遂し、ラスカルズの企みは阻止されました。
石を集める事とラスカルズにとっての希望。それはどう繋がっていくのでしょうか。

MVPは文字通り皆の盾となり最前で戦い抜いた貴方へ。

ご参加ありがとうございました。
FL送付済