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【ニルヴァン】領主パーヴァリの試練



●領主パーヴァリ
『夜の原野に怪しい一団を見た』
 その報告は、一週間ほど前にニルヴァン領主パーヴァリ・オリヴェル(nCL3000056) のもとへ届けられたものだ。
 それについて、水鏡による予知は未だ届いていない。
 だが、まだ数少ないニルヴァン領の兵士に調査させたところ、どうやらくだんの原野には確かに何者かが現れることがあるようだった。
 五日間に渡る調査の中で、それらしき人影が確認されたのは三度。
 調査を任せた兵士には深入りしないよう厳命してあったため、詳細のほどは分かっていない。しかし、何かがいる。それは確かであった。
「行くとしようか」
 パーヴァリが愛用の弓を担ぎ、言う。
「本当にご領主様も行かれるのですか」
 そう言ったのは、イ・ラプセルから送られてきた領主館の男性職員の一人だった。ノウブルだが、パーヴァリに隔意なく従ってくれるありがたい人材だ。
「ああ、僕も行くよ」
「領主の地位にありながら、そんな軽々と椅子を空けないでくださいませ」
 職員が苦言を呈してくる。
 なるほど、彼の言うことは正しい。領主の地位にあるならば、簡単に前に出るべきではない。パーヴァリ自身もそう思っている。
 しかし、同時に今は自分が前に出るべき時期だとも、彼は考えていた。
「領民は僕のことを快く思っていない。そうだね?」
「……ええ、そうですね」
 問われて、男性職員は苦い顔でうなずいた。
 ニルヴァンに住まう者達は、パーヴァリをあまりよく思っていない。
 それは、彼がヨウセイであるということ以上に、シャンバラに公然と刃向かっていたウィッチクラフトの首魁であることが原因だ。
 シャンバラの民はミトラースの権能によって信仰を強要されていた。
 しかし同時に、そのときに感じていたもの全てが作りものだったワケではない。例えば、反逆者に対する『悪者である』という印象などは。
 ミトラースが滅び、権能の効果が消えても、記憶が消えることはない。
 領民達にとってパーヴァリという存在は未だに『シャンバラという祖国に背き続けた反逆者の首魁』という印象が強いのだ。
「事態が進み、事情が変わり、時代が移っても、人の心はそう簡単には変われない。彼らと僕の間には、埋めるには大きすぎる溝が横たわっている」
「その溝を埋めるために、前に出ると」
「ああ。過去はどうであれ、今の僕はこのニルヴァンを守る責務がある。……まだまだやるべきこともロクに果たせていない若輩だけど、それでも、負った責任を果たす姿を、まずは民に示さなければならない」
「気負い過ぎな気もしますが」
「ド新人だからね。肩の力を抜けるほどの余裕なんてまだまだ持てないよ」
 男性職員が小さく肩をすくめる。
「仕事が溜まらないうちにお戻りください。決済は待ってくれませんからね」
 その言葉に苦笑し、パーヴァリは執務室を出ていった。

●君達は誰だ
 昼過ぎごろ、パーヴァリは自由騎士達と合流し、問題の原野に向かった。
「国境ギリギリだな、ここ……」
 同行する自由騎士の一人が地図を見ながら顔をしかめた。
 原野があるのは国境のすぐ南。ニルヴァン領でも最果てに位置する場所だった。ゆえに、パーヴァリ自らが出張ったのだ。
「もし、ヴィスマルクだったら?」
「考えたくないけど、そのときは本国に報告しよう。僕達だけでどうにかできる問題ではなくなるからね」
 話しながら歩いていくと、程なく問題の原野に到着した。
「荒れてるな……」
 周りを見て自由騎士の一人が言う。
 草がまばらに生えているだけで、大体地面がむき出しになっていた。
 そこは、一月にシャンバラが示威行為として行なった山脈への攻撃の影響を強く受けた場所であった。
 見れば、地面と色の合わない大きな岩片がそこかしこに転がっている。
「地形は平たいけど、岩のおかげで隠れる場所はたくさんありそうだね」
 と、パーヴァリが視線を巡らせていた、その先で――ジャリ。
 音がした。
「…………」
 そこにいる全員が身を強張らせ、言葉を止めて視線をかわし合った。
 音が聞こえたのはひときわ大きな岩片の向こう側。自由騎士達から見ると、それは壁のようにしか見えない。回り込む必要があった。
「……任せてくれ」
 パーヴァリが言って、前に出た。
 シャンバラが健在であった頃、魔女狩りから逃げるために足音の消し方と気配の殺し方くらいは心得ていた。
 自由騎士が見守る先で、彼はそろりそろりと岩片を回り込んでいく。
 そして、その向こう側にあったものを見て、パーヴァリは目を見張った。
「――黒騎士ッ」
 そこには、シャンバラ領内ですでに三つの村落を滅ぼしていた黒騎士達がいた。元大司教ジョセフ・クラーマーが接触したという情報は、すでにパーヴァリも聞いていた。しかし、まさかこんなところに?
 いや、今はそれを考えるべきときではない。
 領民が見たという怪しい連中はこの黒騎士達なのだろうか。
 いずれにせよ今は好機だ。連中はまだこちらに気付いていない。自由騎士達と共に奇襲を仕掛けることも出来るだろう。
 そのときのことだった。
「おお、いたぞ!」
 不意に聞こえる大声。
 驚いて振り向くと、そこには武装した十人ほどの男たちがいた。
「散々待たせやがって、やっと出てきたな」
 先頭を走る男がそう言った。
 自由騎士の一人がパーヴァリに「知ってる相手か?」と目で問いかける。
「――いや」
 パーヴァリはかぶりを振る。
 突然現れた男達が放つ殺気は、全てパーヴァリに向けられていた。
「君達は……、誰だ!?」
 男達は反応しない。代わりに答えたのは、自由騎士の一人。
「こいつらの動き――ッ!?」
 訓練した兵士というものは、歩き方ひとつにしても違うものだ。
 ゆえに判断することができた。
「ヴィスマルクだ!」
 何故、ヴィスマルクがここに。
 その疑問の答えは、すぐに思い至った。
 連中は言った。待たせやがって、と。
 つまりこいつらは、パーヴァリが来るのを知っていた。待ち伏せていたのだ。
 どうして他国の兵が彼の動きを知ることができる。
 決まっている。こいつらにそれを教えた何者かがいるのだ。その、何者かとは――
「……あの報告自体が、罠か!」
 そして、ことは最悪の展開に至る。
「自由騎士共! 我らに気付いていたか!」
 その声は背後より、黒騎士達が各々の武器を手に構えようとしていた。
 前方にはヴィスマルクの部隊、背後には黒騎士の一団。
 奇襲をかけるつもりが、完全に挟撃の形となってしまっていた。
「どうするパーヴァリ!」
「やるしか、ない!」
 目つきを険しくしながら、パーヴァリはそう叫ぶのだった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
EXシナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
吾語
■成功条件
1.パーヴァリの生存
2.ヴィスマルク兵の撃退
ニルヴァン領24時。
どーもどーも、吾語です。
この依頼はニルヴァン領主スレッドより発生しました。

往々にして上に立つ者の苦労を下々の民達は知りません。
というか、知ったこっちゃありません。今回はそんな感じのシナリオです。

以下、シナリオ詳細です。

◆戦場
 時刻は昼過ぎごろ。
 地形は平たいのですがでっかい岩がごろごろしてます。遮蔽が多いです。
 戦闘開始時点で、自由騎士側は前にヴィスマルク、後ろに黒騎士という状況です。

◆敵
・ヴィスマルク兵(推定)×10
 銃×3 重×3 魔×2 医×2
 ヴィスマルクの紋章などはもっていませんが動きから見て推定ヴィスマルク兵です。
 練度は自由騎士と同等程度です。パーヴァリを最優先で狙ってきます。

・黒騎士(魔剣士)×6
 本隊ではなく分隊の一つのようです。ゲオルグ・ホーソーンはいません。
 練度はやはり自由騎士と同等程度です。
 6人中2人が隊長格で下記の魔剣士スキルを使用できます。

 ・ダーケンガルメント
  自身に一定時間、HPチャージと「攻撃耐性」、「行動不能耐性」を付与。
  ただし何らかのデメリットが存在する模様。
状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
11モル 
参加費
150LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年07月09日

†メイン参加者 8人†



●包囲を食い破れ
「やるしか、ない!」
 パーヴァリ・オリヴェルの必死の叫びに、まず応じたのは『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)であった。
「了解した。ならばこの状況を変えることから始めよう」
 言うと、アデルはためらいなく黒騎士の方へと歩み進んでいった。
 今まさに行動に出ようとしていた黒騎士の一人が、彼の接近にぎょっとして動きを止める。
「なるほどね、そういうことかよ!」
 彼の意図するところを瞬時に察し、『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)が近くにいた『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)へと呼びかけた。
「動きを止めるぜ、アリア!」
「蒼と白のマナよ……!」
 二人はうなずきあって、その場でいきなり体を激しく躍らせた。
 無論、それがただの舞であるはずがない。二人の刻むステップは、それ自体が魔導の所作となり、そして発生した渦のごとき大気の流れが、場にいる連中の足を次々に飲み込んで、立っているそこに縛り付けた。
「何だァ、こりゃあ!?」
「クソ、動けねぇ!」
 前方から迫る男達が口々に叫ぶ。これで、幾ばくかの余裕ができた。
「黒騎士側だ、突き抜けろ!」
「はいはい、まったくせわしないわね」
 アデルの掛けた号令に、『浮世うきよの胡蝶』エル・エル(CL3000370)が浮遊しながらため息をつく。
「オリヴェル卿! こちらだ!」
「……分かった!」
 『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が走る方向へ、パーヴァリもまた走り出そうとした。しかし、そこへ黒騎士の一人が迫った。
「魔女、死すべし!」
「いつまでも、死んだお題目を!」
 『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)が苛立たしげに言って、パーヴァリを狙う黒騎士を身を挺して阻む。
 その間にも、自由騎士はほぼ一丸となって黒騎士側へと突っ込み、挟撃の状態になっている現状の打破を狙った。
「最前は任せよ! パーヴァリ殿をお守りするのじゃ!」
 靴音を重く鳴らして、『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)が自ら壁になるようにして前に出る。
 その隣には、『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)。
 魔導の大渦を逃れた黒騎士に対し、同じように身を張って動きを阻んだ。
「聞け! 我が名は自由騎士アダム・クランプトン! 貴殿らが誇り持つ騎士であるならば、まずは名乗られよ!」
 場を考えてのものとは思えない、アダムの名乗り口上。
 当然ながら、それはいつもの彼の天然さが発露した結果ではない。
 この緊急時においての、あえての堂々たる名乗り。それは、黒騎士達の注目を集めるのに十分なインパクトがあった。
「何だ、こいつは!」
 黒騎士達がアダムを見る。その瞬間に確かに隙が生じた。
 それは、自由騎士たちにとって現状を突破するために必要な決定的な隙だった。シノピリカが大きく声を張り上げた。
「突っ切れェェェェェェェェェ!」
 そして一丸となった彼らが、黒騎士達へとブチ当たってついに囲いを破った。後方より「おのれ!」という敵の声が聞こえる。
 これで余裕がもう少しあれば、その声に笑いを返すくらいはできたかもしれない。しかし、どこにそんな余裕があろうか。
「追え! パーヴァリを殺せ!」
 聞こえたのは、黒騎士ではない、いきなり現れた男たちのもの。
 彼らは明らかにパーヴァリを狙っている。黒騎士がここにいたのは、おそらくは偶然であろう。最悪の偶然ではあるが、そこに必然性は見えない。
 しかし男たちは違う。
 彼らは確かに、パーヴァリがこの原野に現れるのを待っていた。
 待ち伏せをするだけの情報が、推定ヴィスマルク兵と思われるあの男たちにはあったのだ。
「……考えたくはないが」
 走りながら、パーヴァリの顔が苦しげに歪む。
 いの一番に、最も考えたくない可能性が思い浮かんでしまったからだ。
 しかし、すぐに彼は思考を切り替えた。今はとにかく、この窮状を切り抜けて領主館に生きて帰らなければならない。
「抜けたわ!」
 空から場を俯瞰しているエルが、皆へと告げる。
「さて、どうなるか」
 黒騎士の囲いを突破し、先頭を行くアダムが後ろを向いた。
 これで最初の挟撃の状態から、自分たち自由騎士とヴィスマルク兵が黒騎士を挟む形に持っていくことができた。
 一抹の期待があった。
 黒騎士とヴィスマルク兵が互いに敵対し、喰らい合わないか。
 それが起きれば、状況は大きく好転するのだが――
「魔女共……!」
 黒騎士達が一斉に振り返った。
 その顔には憎悪と憤怒がありありと表れている。
「そう、うまい話はないか!」
「ならばこちらも全力で対応するのみだ!」
 自由騎士たちも足を止めて、それぞれ武器を構える。
「パーヴァリを守れ!」
 迫る敵勢へ、自由騎士たちが躍りかかっていった。

●シャンバラの亡霊
「黒騎士が来るぞ」
「分かってるわ。ええ、見ずともね」
 警戒を呼び掛けるアデルに、エルは笑ってそう返した。
 自分たちを魔女と呼び、己の正義を信じて疑わない死んだ神の残した汚物。
「侮るつもりはないわ。……あいつの置き土産なんだから!」
 エルが魔導の矢を放つ。
 一矢はかわされたが、同時に放たれたもう一矢が敵の鎧を貫いた。
「ぐおお! おのれぇ!」
 苦悶の声を漏らしながら、黒騎士の一人がエルへと手をかざした。
 直感が働く。空中のエルはその直感に従って右に身をかわした。直後、空間に発生した漆黒の影が刃のようにエルが今いた場所を薙いだ。
「我が業剣をかわすか!」
「こっちも、それなりには情報を集めているんですよ!」
 攻撃直後、敵が動きを止めたところでアリアが突っ込んでいく。
「――呪法」
 双剣を閃かせる彼女に、黒騎士が低くつぶやく。
 すると、その身に黒い影のようなものがまとわりついた。
 アリアが両手に持った刃が、黒騎士の甲冑を直撃する。しかし――、
「この、手ごたえ……!?」
「フハハハハハハ、無駄、無駄、無駄!」
 攻撃を受けたというのに、黒騎士は平然と笑っていた。
 アリアの攻撃がまるで通じていないようだ。
「だったら、こちらで!」
 だが今度は魔導による一撃をお見舞いする。さすがに切り替えの早さだ。
「む、ぐぅ!?」
 アリアの攻撃に、黒騎士はうめいた。
 その様子を見てエルが気づく。
「……効きすぎてない?」
 アリアが放ったのは魔導による攻撃だが、それは別に特別なものではない。
 だがやけに通りがよかったと、アリア自身も感じていた。
「チィッ!」
 黒騎士は舌を打つと、手にした剣をふるい黒い炎をあたりにまき散らした。
「うあ!?」
「自由騎士共ォォォォォォォォォ!」
 声を憤怒に染めて、黒騎士が攻め込んで来ようとする。
「それ以上は、させるものか!」
 魔導の矢が黒騎士を撃った。パーヴァリによる牽制であった。
「貴様ッ!」
 黒騎士の憎悪に満ちたまなざしが、彼の方へとむけられた。
「何してるんだ、パーヴァリ!」
 傍らに立っていたオルパが、パーヴァリを叱責する。
「分かってるのか、狙われてるのはおまえなんだぞ!」
「だが、僕も自由騎士だ」
「言われずとも知ってる、だが今優先すべきはそっちじゃないだろうが!」
 そしてオルパはパーヴァリの前に立ち、弓を引き絞って黒騎士を狙った。
「こいつらだけじゃない、あの男達だっておまえを狙ってる。……頼むぜ」
 懇願されて、パーヴァリは低く「すまない」と告げた。
「さて――」
 そしてオルパは黒騎士へと向き直り、矢を放つ。
「さっさと倒れろよ、黒騎士共! ミトラースはもう死んだぜ!」
 その言葉に、黒騎士らは揃ってギリリと噛み合わせた歯を軋ませた。
「我らが神を愚弄するか、痴れ者が!」
「俺に仕留められる程度の神なんて、そう扱われて当然だろうが!」
 光を灯した魔導の矢が、黒騎士へ向けて放たれた。
 そして、ヴィスマルク兵と思われる男たちが遅れて戦線へと突入してくる。
「パーヴァリ・オリヴェルを殺せェ!」
 ここからが、戦いの本番であった。

●ニルヴァンの片隅で
 ニルヴァンとヴィスマルクの国境線近く。
 そこで今、領主パーヴァリの命を狙う者たちが武器をふるって暴れていた。
「パーヴァリィィィィィ!」
「やらせるものか!」
 だが、彼を守らんと前に出たアダムが敵の攻撃を受け止める。
 魔導の気流による足止めも、敵の実力もあってかそう長くはもたなかった。ウェルスもアリアも、再び足止めを行う隙を伺うも、
「オオオオオオオオオオ!」
「クソッ! 邪魔すんじゃねぇ!」
 攻撃してくる黒騎士が邪魔をして、なかなか思うように動けずにいた。
 自由騎士全員を狙ってくる黒騎士に対し、所属不明の男たちは明らかに狙いをパーヴァリ一人に絞っていた。
 ライフルを持った男が、遠距離から彼を狙う。
「させはせんよ!」
 しかし、それに気づいたテオドールがそこに割って入った。
 弾丸が彼の肩をえぐった。
「ぬ、ゥ!」
「テオドール!」
「心配には及ばんさ、オリヴェル卿。それよりも退避を!」
「しかし……」
「いいから逃げろ、パーヴァリ! 前に出るんじゃない!」
 オルパからも再び怒鳴られて、パーヴァリはしばしの逡巡ののちに退いた。
「どうやら、俺たちの狙いが分かってるようだな」
「そりゃあ、あれだけ派手に叫べばのう」
 不機嫌そうに言うライフルの男に、シノピリカが肩をすくめる。
「君たちは一体、なぜパーヴァリさんを狙うんだ!」
「ハッ、問われて答えるとでも?」
 アダムの問いに、男はあざけりを返した。
「まあいい。ここに黒騎士なんて連中がいたのはとんだ幸運だ、なぁ!」
「我らの邪魔をするのでなければ好きにしろ!」
 黒騎士は怒りのままに答え、自由騎士をまっすぐにらみつける。
 彼らには、男の存在など眼中にないらしい。
「厄介だな」
 今という状況を俯瞰し、アデルは槍を構えつつ頭を痛めた。
 パーヴァリを守るのならば、こちらから攻勢に出すぎてもいけない。
 まるで籠城戦だな、と、軽くつぶやく。
「圧し潰せェ!」
 叫ばれた号令に応じて、男たちが動き出した。
「来るぞ、押し返せ!」
 アデルの言葉に、自由騎士もまた動いた。
「ウオオオオオオオオ、自由騎士ィィィィィィィィ!」
「全く、お呼びでないんじゃがな、おまえらなど!」
 シノピリカは黒騎士への対応を優先した。
 攻めてくる敵の斬撃を、己の義手でしっかりと受け止めて跳ね返す。
 そして敵に密着させたまま、徐々に足を動かして位置を調整し、
「――ここ!」
 彼女の右目に光が瞬く。
 黒騎士に相対しつつ、だがヴィスマルク兵も巻き込める位置に立った。
 そして、義手に備えられた銃撃機構を開放し、遠慮なく弾幕を叩き込む。
「喰らうがよいわァ!」
「ぐ、オオオオオオオオオオオオオオ!?」
 黒騎士にとって不運であったのは、彼が影をまとえなかったことだ。
 もしそれができていれば、被るダメージははるかに少なく済んだだろう。
 しかし、現実は非情であった。
 シノピリカの銃撃を、彼は最も近くで浴びることになってしまった。
「ぐ、が……」
 甲冑を穴だらけにしながら、黒騎士は静かに倒れこみかける。
「立てェい! その程度で、我らが大望を成せると思うか!」
「うお……、おおおおおおおおお!」
 しかし別の黒騎士に叱責されて、彼は倒れる寸前で踏み出し、そしてそのまま踏ん張って自らを立て直した。シノピリカが目を剥く。
「何ともタフな……」
 しかし、彼女の攻撃は個に対してのものではなく、場に対しての攻撃だ。
「クソォ、痛ェ、痛ェェェェェェェェ!」
「足が、クッ、このアマァァァァァ!」
 銃撃に巻き込まれた男たちが、口々に悲鳴をあげ、怒りに罵る。
「手ごたえ、ありじゃ!」
 効果大。シノピリカは義手を握りしめた。
「隙ができたね。……ならば、畳みかける!」
 そしてパーヴァリを守る位置に立っていたアダムが、一転して攻めに出る。
 前に出すぎるワケにはいかない。
 しかし、どうせ敵はどちらもこっちを狙っているのだ。
 ならばわざわざ突出する必要はなく、全力で迎え撃てばいいだけの話。
「君たちに恨みはない。だが、仲間を守るのも騎士の務めだ!」
「くだらんことを!」
 大剣を持ったヴィスマルク兵が襲い掛かってきた。
 しかしそのとき、すでにアダムは攻撃態勢に入っていた、
「一歩、遅い!」
 彼の腕が変形する。
 それはまるでリボルバーのごとき回転型弾倉を備えた、発射装置。
「吹き飛べ――――!」
 シノピリカの弾幕にも劣らない、爆撃としか言いようのない全弾発射。
 それは迫る男を巻き込んで、周囲にいた敵勢力を丸々飲み込んだ。
 そして、炸裂。
 爆音と共に、原野に土煙が巻き上がった。
「…………ッ」
 ガクン、と、腕が一気に重みを増した。
 この攻撃、高い威力を誇るのはいいが、反動が大きいのがネックだった。
 しかし、
「く、そ……!」
 土煙の向こうから、大剣で身を支える男が姿を現す。
 アダムの攻撃をまともに受けて、男はそのまま倒れた。黒騎士ほどの根性は、どうやら彼にはなかったらしい。
 広範囲を巻き込んで、しかし、まだ敵はかなりの数が健在だ。
「まだ、終わらないか」
 つぶやいて、彼は重くなった片腕を掴んで具合を確かめる。
 戦いは、もうしばらく続きそうだった。

●守り抜くために
 パーヴァリにとって、今この瞬間はただただ苦いだけだった。
 ニルヴァンの領主として、自ら前に出る必要があると思っていた。
 自分を快く思わない者がいることを知りつつも、そうした者たちに自らを理解してもらうために、率先して動く必要があるのだと。
 そう思って、今日、ここまで来た。
 だが、その結果がこれだ。
 仲間である自由騎士に守られながら、彼らを危険に晒してしまった。
 そして自分は戦線に立つこともできず、今は岩陰に身を潜めている。
「……クソ」
 珍しく、彼の口から汚い言葉が漏れ出た。
 そうしてしまうほどに今の自分が情けなく、ふがいなく、そして苦かった。
「頼む、皆、無事でいてくれ」
 矢も届かない場所で戦う仲間たちへ、パーヴァリはただただそう祈った。
 だが、戦場において祈りなど大した意味を持たない。
 戦場でモノをいうのは、いつだって力だ。
「おおおおお!」
 アデルが果敢に敵に突っ込んでく。
 その先にいるのは杖を持ったヴィスマルク兵。おそらくはヒーラー。
 敵を倒すならば、まずは癒し手から。
 戦闘の早期終了を狙うのならばそれは鉄則。ヒーラーの存在は、いつだって生命線だ。だからこそ、彼は突撃していった。
「クソ! 止めろ!」
 敵もそれは重々承知のようで、ガンナーがライフルでアデルを撃つ。
 銃撃が装甲を貫き、肉を焼いた。
 激痛が脳髄を直撃するが、しかし、アデルは止まらない。
「このくらいの痛みは、慣れているんでな!」
「あ……」
 敵ヒーラーに肉薄し、彼は突撃槍をまっすぐに突き上げた。
 内部の撃発機構が炸裂し、ヒーラーの胸部を穂先が激しくえぐっていく。
「ぐぉ、え……!」
 胸を大きく陥没させて、ヒーラーが小さく吹き飛んだ。
「この、野郎ォォォォォォォォ!」
 ガンナーと、さらに魔導士がアデルを狙って集中攻撃を行なう。
「馬鹿野郎! さっさと戻って来いよ!」
 ウェルスが叫び、牽制の銃撃をお見舞いした。
「ああ、すまない……」
 アデルが潔く退く。その身はすでに傷だらけだ。
 ウェルスが見れば、他の自由騎士たちも相応に傷を負っていた。
「出し惜しみはしてられねぇな、こりゃ」
 言いつつ、彼は広域に作用する癒しの魔導を発動させて、仲間の傷を癒す。
「だいぶ楽になったな。……行くか」
 そしてまた前に踏み出したアデルを見送り、ウェルスはライフルに弾丸を込めなおした。そこに、テオドールがやってくる。
「よぉ、テオドールの旦那。調子はどうだい?」
「そうだな、そう悪くはないな。オリヴェル卿を守らなければならないという意思が強いからか、数では劣るが士気では勝っているように感じるよ」
 律儀に答えるテオドールに、ウェルスは「そりゃよかった」と肩を笑った。
「撃たれた傷は?」
「大したことはないとも、ライヒトゥーム卿のおかげだ」
「面と向かって言われちゃ、なんとも返しようがないが、ね!」
 言って、そしてウェルスは弾丸を撃ち放つ。
 剣戟と、銃撃と、怒声と、悲鳴と、そこにあるのは紛れもない戦場。
「誰が、オリヴェル卿を罠にはめたのだろうな」
「さてな。それを考えるのは、今でなきゃダメかい?」
「……フフ、いや、そんなことはないとも」
 ウェルスの指摘にテオドールは笑って、己の杖を高く掲げた。
「そうさな、今は戦うべきとき。なれば口は噤もう。力を示そう!」
「そういうこった! あんなしょっぱい連中、押し切ってやろうぜ!」
 テオドールが狙うのは、やはり敵のヒーラー。
 シャンバラよりもたらされし呪術の力が、敵に向かって解放される。
「むぐ……ッ!?」
 敵ヒーラーが急激に重みを増した自身に驚き、声を上げた。
 見る。そしてテオドールと視線がぶつかる。
 そのとき、ウェルスはすでにヒーラーへと向かって狙いを定め終えていた。
「おう、こっちを見てくれてありがとよ」
「しまっ……!」
 銃声。そして、敵ヒーラーの腹ド真ん中を弾丸が貫いていった。
「ごば……、ァ……!」
「チッ、クソがァァァァァァァ!」
 だが敵もやられてばかりではない。
 敵魔導士が解き放った魔力の波動が押し寄せて、黒騎士もろとも自由騎士へと襲い掛かる。さすがにこれは避けようがなかった。
「やるじゃねぇか、だがよ。……だがよォ!」
 しかし再度、ウェルスが範囲型の癒しの魔導を行使してすぐさま場を立て直す。そして彼は、ヴィスマルク兵に向かってこう怒鳴った。
「どうしたどうした、ヴィスマルクの優良ノウブル様方よぉ! こんな場末での仕事ひとつ満足にできねぇのかい! 全く素晴らしいなヴィスマルクの選ばれしノウブル様ってヤツァ、ご立派すぎて笑っちまうぜ!」
「クッ、ハッハッハッハ! なるほどそれは大した優良さであることだ!」
 ウェルスの軽口に、テオドールはつい大声で笑ってしまった。
 それが、ヴィスマルク兵の神経を逆なでする。
「テ、メェらァァァァァァァァ!」
 分かりやすいくらいの激昂であった。
 当然、そこに隙ができる。
「――機が巡ってきたな」
 アデルが冷静にそれを判断し、そして皆へと告げた。
「ここで決めるぞ! 総員、突撃!」
 戦いは、そろそろ節目を迎えつつあった。

●そして原野には静けさが戻り
 ――はじめに変化があったのは、黒騎士達だった。
 どこか遠くから、甲高い笛の根が聞こえてくる。
 その音の直後、黒騎士達の動きが変わった。
「……クソッ」
 オルパと戦っていた黒騎士はそう毒づくと、武器を持ったまま飛び退いた。
「お?」
「撤退の合図だ、この勝負は預けるぞ! 自由騎士共!」
 六人の黒騎士は傷つき、追い込まれながらもしかし結局一人たりとも倒れることなくその場からの撤退を開始した。
「フン、さっさと無様に逃げるがいいわ!」
 一瞬、追撃を仕掛けようとしたエルだが、すぐに思い直してそう言い放つ。
 自分の目的はこいつらの処断ではない。
 それを取り違えることは、してはならない。
 逃げようとする黒騎士達を追う者は誰一人としていなかった。
 そして黒騎士は去って、場には自由騎士とヴィスマルク兵のみが残る。
 エルが笑った。
「さぁ、これで分かりやすくなったわ。――焼かれちまえ」
 その笑みはあまりにも獰猛で、そして強烈な、獲物を見る獣の笑みだった。
 戦場に電磁の渦が発生し、熱した鍋に水をブチまけたかのような音がする。
 それは、電磁力場が敵を打ち据える音。
 エルの魔導が、敵の大半を捉えて爆ぜた音であった。
「う、おおおお!」
「ぐがああああああああああ!!?」
 激しい電撃に身を焼かれ、男たちは黒い煙を上げて棒立ちになってしまう。
 自由騎士は今こそ、戦いの終わりを確信した。
 そして、
「皆、頑張ってくれ――!」
 背後に聞こえる、パーヴァリの声。アダムが力強く、右腕を突き上げた。
「終わらせよう。こんな戦い!」
「クソ、クソ、クソ、クソ、クソォォォォォォォォォォォォォ!」
 ヴィスマルク兵はなお立って抗おうとする。
 未だ倒れずに踏ん張っているのはさすがといえよう。
 しかし、相手が悪かった。
「守るためならば、僕達は、いくらでも強くなれる!」
 アダムの振るった拳が敵重戦士の顔面をまっすぐに打ち抜いた。
「しっかりと相手を選んで襲いな。でなきゃ、こうなっちまうぜ!」
 オルパの振るう二本のダガーが、もう一人の重戦士を深く切り裂く。
「この、程度……、この……!」
 それでも武器を振りかざす相手へ、彼はだが油断などしていなかった。
「その根性は認めてやるよ。じゃあな!」
 至近距離よりの、初伝・山彦の矢。
 ほぼ同時に放たれた二発の魔導の矢が、敵の顔と胸とに直撃する。
 これはキツい。さすがに耐え切れず、重戦士はそのまま崩れ落ちた。
「フハハハハハ、やるではないか! オルパ殿!」
 豪快に笑い飛ばしたのは、シノピリカ。
 頭から流れる血を舌で軽く舐めて、彼女の義手が弧を描く。
「これはワシも、全力でキメんと、なァァァァ!」
「う、わぁぁぁぁぁぁ!!?」
 分厚い鋼鉄の塊を顔面にくらって、敵ガンナーが大きく吹き飛んでいった。
 それを見て、シノピリカが豊かな胸を張る。
「うむ、新記録じゃ!」
 次々に敵を打ち倒していく仲間を見て、アリアが目を丸くした。
「みんな、すごいなぁ」
 と、その背後を敵魔導士が狙う。
「せ、せめて一人くらいは……!」
 だが、魔導士が見ている前で、フッとアリアの姿が消えた。
「なっ! ど、どこに……!」
 左右に視線を巡らせるも、アリアの姿はない。
 当然だった。このとき、彼女は敵の頭上を飛び越えていたのだから。
「こっちです!」
「う、うおお!?」
 そしてアリアの双刃が閃いて、敵魔導士が十字に切り裂かれた。
 こうしてまた一人倒れ、敵はいよいよ追い詰められた。
 戦いの趨勢はもはや決したといってもいい、だが、アデルはまだ前に出る。
「まだ続けるというのならば、とことんまでやるが?」
「……くっ」
「君たちは、こんな戦いに命をかけるのかい?」
 重ねてアダムが尋ねた。
 自由騎士は壁を作るように並んで、ヴィスマルク兵を威圧する。
「……俺たちを捕まえねぇのか?」
 倒れた仲間を抱えて、男の一人がにらみつつ問いかけてきた。
「捕まえようとすれば、そちらとてまだ抵抗するつもりなのだろう?」
 テオドールがそれを告げるが、男の表情は変わらない。
 今も敵意あふれるその表情が何よりの返答であった。
 加えて、ヴィスマルク兵であるという自由騎士の推測も、所詮は推測でしかない。そしておそらく、この男たちは自らの所属組織に通じるようなものなど何一つ持っていないはずだ。
 ジリジリと、男たちが後退していく。
 自由騎士はそれを止めようとはしなかった。
 事態がどう転ぼうと、理は自由騎士側にあるのだ。男たちにできることなど、もう、逃げることくらいなものだ。
「ヘ、ヘヘ! 何がニルヴァンの領主だ! テメェが守ってる連中に裏切られてちゃ何の世話もねぇよなぁ! クソが、クソがよぉ!」
 最後まで罵倒を繰り返しながら、男たちは逃げていった。
 そしてやがてその姿は消えて、場には静寂が戻ってくる。
「……本当に、捕まえなくてよかったのかよ?」
 ウェルスが尋ねるが、アダムが息をついて答えた。
「僕たちだって相応に消耗してるからね……。最後までやってたら、何人かは倒れていたかもしれない。そこまでやる理由はないよ」
「そういうことだ」
 アデルもうなずき、パーヴァリが隠れている岩陰へ目を向けた。
「それよりも、パーヴァリ」
「……ああ」
 岩陰から出てきたパーヴァリの表情は、きつく張りつめていた。
 男たちの去り際の捨て台詞が、彼にも聞こえていたのだ。
「戻って、調べる必要があるね」
 言ったその声は、どこまでも固かった。

●数日後の話
「僕は、ニルヴァンの領主の座を退くことにした」
 ニルヴァンの領主館にて、集められた自由騎士たちを前に彼はそう言った。
 集まったのは、先日の戦いで彼を守った八人。
 聞いて直後、アダムが気色ばんだ様子で、
「何故だい? 君は君なりに頑張っていたじゃないか!」
「そう言ってもらえるのはうれしいよ。だが、この間の一件が、ね……」
「あの一件か。……真相は分かったのか?」
 問うアデルに、パーヴァリは苦い顔つきでうなずいた。
「あの男たちの言葉通りだったよ」
「それは……」
「ニルヴァンの領民の一部が、裏でヴィスマルクに内通していた」
 自由騎士たちの間に衝撃が走った。
「彼らはすでに捕縛されて、今は取り調べられている最中だ」
「だが、何故……?」
「僕が領主だから、らしい」
 なんだそれは、としか言いようのない理由であった。
 しかし、内通した領民にとってパーヴァリはシャンバラに逆らった大罪人であり、国を簒奪して領主になった卑怯者。
 ――という認識らしかった。
「そ、そんな話はないでしょう! なんで、そんな……!」
 アリアが叫ぶが、パーヴァリは首を横に振る。
「君たちから見れば違うだろう。でも、領民は戦いの深い事情なんて知らないし、知ったとしても感情の問題だけは理屈じゃどうにもならない」
「ミトラースの権能による信仰はなくなったはずだが?」
「あれはあくまでも信仰心を植え付ける権能であり、シャンバラの民の心のすべてを洗脳するようなものじゃなかった」
 パーヴァリの言葉通りだ。
 ミトラースの権能は信仰心を強めるもの。それだけでしかない。
 それがなくなったとしても、シャンバラの民にとって祖国とはシャンバラであり、それに逆らったパーヴァリへの印象は良くないのだろう。
「原因が明らかになった以上、それを取り除く必要がある」
「だから、領主を辞する、と?」
「ああ」
 テオドールに、パーヴァリは深くうなずく。
「イ・ラプセルのためにできることならば、何でもするつもりだ。しかし、僕自身が火種になることは避けなければならない」
 そう言われてしまっては、自由騎士たちは言い返すことができなかった。
 領民が疎んでるのは、あくまでもパーヴァリという個人だ。
 イ・ラプセルや自由騎士に対する悪感情でない以上、彼さえ退けばこの問題はひとまず解決することになる。
「後任はどうするつもり?」
 今度はエルが確かめるように言ってきた。
「すでに、本国の方で募集が始まっているはずだよ。イ・ラプセルはよい国だ。きっと、僕よりも優れた領主が引き継いでくれるはずさ」
 そしてパーヴァリは皆を見て、
「僕はしばらくここに残って後任の領主に色々と教えることになる。でもそれが終わったら、一介の自由騎士として本国に戻ることになるだろう。でも、その前にこれだけは君たちに言っておきたい」
「何かね?」
「僕のために危険な目に遭わせてすまない」
 そうして頭を下げてから、すぐに彼は顔を上げて、
「そして、僕を守ってくれてありがとう。君たちは最高の友だ」
「ヘッ、当たり前だろ!」
 どこか嬉しそうに、オルパが声を上げた。
 こうして、パーヴァリ・オリヴェルはニルヴァン領の領主の座から退くことになった。
 そしてこれを契機に、イ・ラプセルは自由騎士複数名による領地運営へと舵を切ることになる。
 その試みの結果がどうなるのか、分かるのはまだ当分先の話だろう。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

お疲れさまでした!
何とかパーヴァリを守ることに成功しましたね。

しかし、彼は領主を退くことになりました。
戦争というものは本当に単純にはいかないものです。

領地運営の今後はニルヴァンの方をお確かめください。
それでは、ご参加いただきありがとうございました!
FL送付済