



まつりのあと

「やあ、青いネコチャン」
神殿にカツカツと音を響かせながら彼は声をかける。
「道化師、今度は何を?」
彼女はあからさまに表情を曇らせた。
「祭りを楽しみにきたのさ! それくらいはいいだろ? 君に祈りをささげる素敵な祭りだ」
彼は嘯く。
「そう……。楽しんだのなら何よりです。で、何を企んでいるのですか?」
彼女は訝しんだ。
「たまにはね、外をでれないくせに外がきになってしかたない、ネコチャンのために世間話でもってね」
「どんな気の迷いですか?」
「君、ほんと僕には冷たいよね。ソースヌードル食べたり、トウモロコシ食べたり、あとは何をしたかな? ワインをブショネったり。そりゃあ楽しかったさ。はい、お土産。」
彼は彼女に赤い赤い、丸いアップルキャンディを差し出す。
「どういう、つもりですか?」
「どういうつもりもなにもないさ。たまには意地悪以外のこともしたくてね」
――カツン。
彼は踵を鳴らす。彼は消える。
「ほんとうに、ほんとうによくわかりません」
彼女はアップルキャンディに口をつけ、さくり、かじる。
「ひゃう?!」
赤いアップルキャンディはとても酸っぱい。通常ではありえない。
「あの、道化師は……」
ブショネの味は彼女にはお気に召さなかったようだ。