



空白の未来視

「そうか」
白紙の未来を告げられたエドワードは極力冷静さを保ったまま、一言漏らした。
「私の未来視でも、3年後の確度は30%程度です。まだ、十分に変わる、そう思います」
それは願望だ。変えてほしい未来なのだから。
「自由騎士たちにはこの未来を伝えようと思う。アクアディーネ様、それでいいね?」
「はい」
女神による未来の託宣。その意味は大きい。
「国民たちにはまだ知らせない。もちろん他国にもだ。空白の未来の影響が広がればどうなるかはわからない。けれど、自由騎士たちは<可能性>。あの道化師はそう言っているのだろう?
で、あるなら、私はその可能性に賭けようと思う。彼ら自由騎士に白紙の未来に色を乗せてもらおう、そう思う」
まっすぐに前を見る若き国王の目に曇りはない。
ヴィスマルク侵攻において、勝てるはずもない戦いに、彼らは勝利した。
何もかもが足りないあの戦いを勝ち抜いた。
そしてみたこともないような奇跡によって。故に、エドワードは彼らに光を見出している。
「ずいぶん王様らしくなったのね」
「はは、言いながらも私の胃は悲鳴をあげているのだけどね」
集められた自由騎士たちは3年後の白紙の未来を告げられた。
不安を隠せないもの、意外にも勝気な目をするもの、自由騎士たちの反応は様々だ。
「といっても、まだ確定していない未来だ。この最悪の未来を君たちの可能性で、打破することを、願う」
命令するとは言わなかった。
願いだと言った。
「先が見えないということは、その先を我々は自らの意志で作り上げることができるということだ。皆の進まんとする意思こそ、神ですら見通せぬ未来を切り開くための光明になると私は思う。だから」
エドワードはそこで一拍溜める。
「我々は神々の蟲毒に勝利し、世界を救おう!」