≪Vt2017≫様々なチョコをみんなで作ろうよ
●バレンタインが近い日に
「皆でチョコレートを作りましょう」
久方 真由美(nCL2000003)が覚者達を誘う。
もうすぐバレンタインデーだ。その日の為にチョコを作ろうという事だ。
愛するあの人のために。
お世話になっている人のために。
気の合う友人の為に。
感謝する家族の為に。
レシピや材料は用意してある。あとは気持ちを込めるだけ。
さあ、どんなチョコができるだろうか?
「皆でチョコレートを作りましょう」
久方 真由美(nCL2000003)が覚者達を誘う。
もうすぐバレンタインデーだ。その日の為にチョコを作ろうという事だ。
愛するあの人のために。
お世話になっている人のために。
気の合う友人の為に。
感謝する家族の為に。
レシピや材料は用意してある。あとは気持ちを込めるだけ。
さあ、どんなチョコができるだろうか?

■シナリオ詳細
■成功条件
1.チョコを作る
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
チョコレート作り。様々なチョコを作ってみませんか?
●説明
場所は五麟学園内の調理室。材料やレシピは用意してあります。
プレイング(もしくはEXプレイング)に作りたいチョコ料理(普通のチョコでも可)を示せば、お土産に同じチョコが送られます。
チョコパウンドケーキのようにチョコを原料としたケーキでもOKです。
チョコどら焼きのように和菓子風でもOKです。
チョコで作った彫刻? イケるでしょう。
誰かのプレゼント用にオリジナルのチョコを作る。大歓迎です。たっぷり愛をこめてください。
どのようなチョコができるかは、貴方の想像のままに――
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】という タグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
6日
6日
参加費
50LP
50LP
参加人数
35/∞
35/∞
公開日
2017年02月25日
2017年02月25日
■メイン参加者 35人■

●楽しくチョコを作りましょう
「ナナンはねぇ、初めてチョコレートを作るよぉ! お父さんとお母さんにあげるのだ!」
意気込み一杯で食材の前に立つナナンこと皐月 奈南(CL2001483)。頑張ろうとする半面、上手くできるかなという不安もあった。
だがそんな奈南でもできそうなレシピを見つける。これならできそうだととりかかったのは、
「ザクザク食感のブロックチョコだよぉ!」
ホワイトチョコとビターチョコを湯せんで溶かし、クッキーとココアクッキーを砕いて入れる。後はそれを混ぜ、クッキングシートに分けて冷蔵庫で冷やすだけ。
「まだかなー。早くできないかなー」
ワクワクしながらチョコが冷えるのを待つ奈南。料理という未知の世界に対する興味が、その笑顔にあふれていた。
「凝ったものを作るよりは、普通のチョコを作る方が難しいんですよ」
と言うのは風織 紡(CL2000764)だ。そもそもこれは料理大会ではない。自分のチョコを作るのが目的。ならば大事なのは愛情を込めること。それならチョコの形にこだわる必要はないのだ。
「あゆの為に愛情とおまじないを込めて作るですよ」
おまじない?
「あゆが大学の女共から守らなくてはいけないですね。あゆはもてますからね。ぶっ殺す。ぶっ殺すです……」
そんな事を言いながら真顔で語りチョコを作り始める紡だが、チョコ作製はいたって普通だった。チョコを湯せんで溶かし、型に入れて冷やす。カラフルな猪口スプレーでトッピングして、ピンクの包みでラッピングする。
「完成です。さあ、カードも添えて」
笑顔でメッセージを添える紡。そこには姉の愛がたくさん詰まっていた。
「去年は焼きチョコを作りましたからね。今年はチョコラートのコンフェッティにしましょうか」
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)は守護使役のペスカと一緒にチョコを作る。
コンフェッティと聞くと紙吹雪を想像する人もいるだろうが、日本ではドラジェといった方が分かりやすい。婚礼の時に配られるお菓子として有名で、フランスでは男子出産時には青の、女子出産時にはピンクの物を配るという。
「うん。いい甘さですね。ペスカ、おいしいですか?」
守護使役にチョコを食べさせるラーラ。コンフェッティを食べる姿を見て、笑みを浮かべる。
「皆もどうですか? たくさん作りましたから、どうか食べていってください」
男性用の青と女性用のピンクのドラジェを手に、ラーラはチョコを配りだした。幸せは皆と一緒に。
「よっし! 頑張りましょう!」
ガッツポーズと共に気合を入れる神城 アニス(CL2000023)。目の前にはチョコレートを始めとした様々な材料があった。大事な人のことを思いながら、新鮮なイチゴを手に取る。
包丁を手にイチゴをスライスしていく。その後にバターと卵を用意してタルト台を作っていく。タルト台をオーブンに入れて、アニスは一息ついた。
「そうだ。焼き上げる時間までに出汁巻き卵を作りましょう」
フライパンを手にして卵焼きに挑戦するアニス。慣れていないのか、少し形が崩れていた。
そうこうしているうちにキツネ色に焼き上げたタルト台が完成。上にチョコとスライスしたイチゴを乗せて……。
「できました! ……食べてもらえるでしょうか……?」
イチゴチョコタルトを梱包しながら、相手の事を想う。今何処で何をしているのか――
「ザッハトルテにしましょうか」
様々な材料とレシピを前に迷いながら、上月・里桜(CL2001274)は最終的にザッハトルテを作ることにした。オーストリアの代表的な御菓子でもあり、チョコレートケーキの王様と呼ばれている。
レシピを見ながら里桜は生地を作っていく。元々料理好きなこともあり、その手つきは慣れたものだった。
「半分に切った生地の間と回りにアプリコットジャムを塗って、その上からチョコレートでコーティング……チョコレートの温度に注意とコーティングは手早く、ですね」
レシピに書かれてあることを読み、それだけでそつなくトルテを作っていく。キャラメルチョコをまぶし、見た目を整えていく。
「これで完成ですね。……さて、これはどうしましょうか?」
完成したザッハトルテを前に思案する里桜。特にあげる相手もなく、一人で食べるにも少し量が多い。
「そう言えば試食してくださる人がいるのですね」
●【ゴリサー】の面々1
「うめえ!」
鹿ノ島・遥(CL2000227) はチョコを食べ、そう叫んだ。
「さあみんな、どんどん腕をふるって、おいしいチョコを作ってくれ! オレはそれを試食し、第三者的視点から公平に評価しようじゃないか!」
と言う名目で遥は試食に回っていた。成功条件『チョコを作る』とは何だったのか。ともあれ甘いものが大好きな遥は、チョコレートならいくらでも食べることが出来る自信があった。
「ただしイチャイチャするのは場違いなので、他所でやってくれ。ここは神聖なる調理の場なんでな。ペッ! ケッ!」
遥からすればバレンタインは『チョコをタダで食える日』なのだ。愛とか恋とかは二の次で。
「よし次! ……なんだ、この胃腸薬は?」
首をかしげて胃腸薬を見る遥。誰かのやさしさのようだ。
「~♪」
ゆったりとリズムを刻むように歌いながら椿 那由多(CL2001442)がチョコを作る。
「那由多さんは何を作っているんですか?」
「猫型のチョコレートです。八重さんは?」
「私は皆さんが一息つけるようにホットチョコレートを。ふふ、ちょっぴりビターですよ?」
十夜 八重(CL2000122)に尋ねられて、笑顔で答える那由多。八重の手には温められたカップがあった。その中には言葉通り、ホットチョコレートが。
「抹茶チョコとホワイトチョコでコーティングして……ふふ、これで完成」
猫の形で固められたチョコに、抹茶チョコとホワイトチョコで顔を作る那由多。可愛らしいにゃんチョコの出来上がりである。
「お疲れ様です。一杯どうですか?」
「ありがとう。……あ、あちっ」
労いとして八重が差し出すホットチョコレートを口にする那由多。猫舌なのか、小さく悲鳴を上げた後に息を吹きかけてチョコを冷ます。
「熱いですから気をつけてくださいね……って、もう、大丈夫ですか?」
「大丈夫。とてもおいしいわ。でも、お返しですっ」
「わぷっ!?」
お礼とばかりに、那由多は先ほど作ったチョコを八重の口に投げ込んだ。不意を突かれたのかそれを口にする八重。そのままチョコを味わう。
「ふふ、ありがとうございます。とっても美味しいですよ」
「どうも。それじゃあ、皆のお手伝いに行きましょうか」
互いに笑みを浮かべる八重と那由多。そのまま笑いあった後、他の人の手伝いに向かう。初めての人や、作り慣れていない人の元に。
「賑やかでええなぁこういうの」
「皆さんと楽しめて、何よりです」
わいわいと喋りながらチョコを作る【ゴリサー】の面々を見ながら、二人は微笑んだ。
「ありがとうございます。お返しにクッキーを焼いてきたのでどうぞ」
八重と那由多にチョコの作り方を教えてもらった柳 燐花(CL2000695)は、家で焼いてきたクッキーをおすそ分けする。
(渡すべき相手が家にいると、ゆっくり作れませんし……)
と言う理由でやってきた燐花だが、集まったメンバーを見て少し不安に思っていた。果たして無事にチョコは作れるのだろうか? 自分が、ではなく周りが。
だが予想に反して調理室は甘いチョコの香りが充満していた。その匂いに促されるように燐花もチョコを刻んで湯せんで溶かしていく。
湯せんで溶かしたチョコを型に注ぎ込む。渡す相手のことを思いながら、気持ちを込めてゆっくりと。どうやって渡そうかと考えているうちに、自然と顔がほころんでいた。
「出来上がりです。……この匂いは?」
「小豆の香りだ」
疑問符を浮かべる燐花に赤鈴 炫矢(CL2000267)が答える。中火で煮込んでいる鍋の中には、大量の赤茶色の豆があった。どう見てもチョコではないし、カカオでもない。
慣れないチョコを作るよりは、慣れている料理を作ろうという事で羊羹を作ることにした。寒天や栗なども用意済だ。幼いころから剣術の修行に明け暮れ、料理と言った方面は疎い。作れる料理も限られていた。
「折角だし、チョコ羊羹を作ってみようか」
だがチョコ羊羹の話を聞いて、新たな菓子作りを試してみる。レシピを見ながらチョコを加え、寒天を加えて冷蔵庫で冷やす。そして――
「雛見君、どうかな。へ、変な味じゃ、ないだろうか?」
完成したチョコ羊羹を雛見 玻璃(CL2000865)の所にもっていく。ドキマギする炫矢に対し、玻璃は落ち着いている様に見えた。切り分けられた羊羹をしばらくじっと見て、おもむろに爪楊枝を使って口の中に運ぶ。
「ウン。羊羹だけどチョコの風味がして、意外とおいしい」
「そ、そうか。それは良かった」
「和菓子系って食べる機会あんまないけどこれはこれでイイね。それになんといっても、キミらしいし」
「褒めて……くれたのかな」
玻璃の答えに納得するように頷く炫矢。
「雛見君は何を作っていたのかな?」
「アタシ、お菓子作りとかぶっちゃけ得意じゃないんだよね。
なので他の人が作ってたのを試食とかしてたんだけど」
色々美味しかったね、と他の人の感想を告げた後に皿の上にあるチョコを手にする。
「とりあえず作ってみた」
ビターチョコを溶かし、アーモンドとクルミを混ぜたチョコレート。変な味にはなってないでしょ、と言いながらチョコを一つ指でつまむ。そのままチョコを炫矢の口に近づけて、
「はい、せっかくならアタシのも」
「は、恥ずかしいけれど……あ、あーん」
「ほぐわぁ!?」
奇声と共に切裂 ジャック(CL2001403)の体が宙を舞った。
●【ゴリサー】の面々2
何事と皆が振り向けば、怒りのオーラを放出した酒々井 数多(CL2000149)が拳を振り上げたところだった。
「ときちかぁ! 数多が殴ってきたああ!」
「落ち着いてください、酒々井嬢。その、多分悪気はないとは思いますので」
とっさに時任・千陽(CL2000014)の後ろに隠れるジャック。事情は分からないがとりあえず弁護する千陽。だが数多の怒りはそれで収まるものではなかった。
「大丈夫よ、落ち着いてる。よし、泣くまで殴ろう。泣いても殴ろう」
言葉通り数多は冷静だった。その証拠に手にしているボウルの中にあるチョコマフィンは死守している。これが女子力のなせる業だ。
「大体あんたら真面目にチョコ作りなさいよ!」
「んだよ。俺が菓子作りなんかしたことあるわけねぇだろ」
握り飯を作っていた諏訪 刀嗣(CL2000002)が面倒くさげに答えた。成功条件とは何だったのかパート2。
「ばっちゃんの味噌汁を馬鹿にするな!?」
味噌汁片手にジャックが吼える。成功条件とは何だったのかパート3。
「馬鹿なのアホなの? 死ぬの? 殺すわ。いきなり人の顔舐めてくるアホは」
千陽の後ろから反論するジャック。火に油を注がれたように、数多の怒りが増す。
「おいおい、黒兎。汚れたツラ舐めるとか動物かよお前……引くわ」
「おい。誰の顔が汚れてるか言ってみろ」
「まあまあ。確かに女性の頬を安易に舐めてはいけないな」
仲裁にはいってきたのは一色・満月(CL2000044)だ。
「まだチョコレイトがついておるな、動くなよ」
「え?」
満月は数多の頬についているチョコを布巾で拭き取る。ジャックはこれを取ろうとして数多の頬を舐めたのだ。満月の行動に胸ときめかせている隙に、ジャックは安全圏に離脱する。
「やれやれ。これでひと段落か。しかし諏訪、お前も料理できるのだな。刀以外なにもできないと思っておったぞ」
「別に俺ぁ刀だけ振れりゃ良いんだがな。一人暮らししてっと料理の一つや二つも作れるようになるもんだ」
握り飯を作る刀嗣に、感心するように満月が頷く。刀嗣は肩をすくめて言葉を返した。家から持ってきた鮭と梅干しや明太子を傍に置き、慣れた手つきで炊いたご飯を握っている。
「お前こそ料理なんざ出来るのが意外だぜ」
「姉がよくチョココロッケを作っていてな。見様見真似だが作ってみたのだ」
「見様見真似って……お前作ったことないのかよ」
「なに、カボチャコロッケだって美味しいだろう? 故にチョココロッケもうまいさ。俺はいらないがな」
満月のそばには山のように積まれたコロッケがあった。おそらく味見すらしていないだろうチョココロッケが。名案を思い付いたとポンと手を叩く満月。
「そうだ。味見役がいたな。一つ持って行ってやろうか」
「……あとでカノシマに茶でも点ててやるか」
味見役を買って出たものを不憫に思ったのか、それとも単に自分が飲みたいだけなのか。刀嗣は深い息を吐いてそういった。
「いつものことながら騒がしいですね」
騒ぎから戻った千陽は、ため息とともにそう呟く。だがこの騒がしさは嫌いではない。いつかこの日を回顧し、黄金だったと感じる日が来るのだろうか。
「本当に。でも見ててあきないわ」
千陽の意見に同意するのは環 大和(CL2000477)だ。先ほどまで数多と一緒にチョコを作っていた。手にしているのはチョコレート大福。お餅とチョコレートの絶妙なバランスが生んだ一品である。
「大和嬢のチョコは和菓子と洋菓子を一つにしたものですか……なんと不可思議な」
「わたしは和菓子の方が好きだからチョコレートと組み合わせてみたくてチャレンジしてみたのよ。よければ千陽さん、味見して頂けるかしら?」
「ええ。ではいただきます。
……これは。はい。とてもおいしいです」
「よかった。数多さんに教えてもらったかいがあったわ」
千陽の反応に微笑む大和。チョコレート大福はまだたくさんある。他の人にも配っていく大和。
「こちらもお返しにいいものを作らなくてはいけませんね。レシピ通りに一分の差異もないように作らなくては」
言ってチョコレートを作る千陽。秤を使ってきっちり重量を測る調理法だ。
「丁寧ね、千陽さん。お菓子は科学ともいうし、きっと素晴らしいチョコレートが出来上がると思うわ」
「ありがとうございます。出来上がったらすぐにお届けしますね」
「で、お前は何をしているんだ?」
「凜音ー、みんなが虐めるよ」
香月 凜音(CL2000495)がチョコを溶かしている所にやってきたジャックが泣きついていた。何があったかは同じ調理室に居たので知っている。聞きたいのは、何故まだここにいるかだ。
「え? チョコ食べたいし」
「あー……」
頭を抱える凜音。先ほどの騒乱の空気はすでに消え、皆チョコづくりに勤しんでいる。とりあえず騒動の元となった人物から隠すように立ち、チョコを見た。
「誰かにあげる予定もないしな。ほれ」
作りかけのチョコをジャックに渡す凜音。チョコを作ろうと参加したのはいいが、そう言えば誰に渡すかを考えてなかったのだ。皆と一緒に作るのは楽しいからいいやと割り切っていた。
「って指まで食う奴がいるか。全く」
「切裂のお兄さん、何してるんですか?」
凜音の指に食らいついているジャックを見て、片桐・美久(CL2001026)が疑問符を浮かべる。経緯を知らなければ、何が起きたのかわからないだろう。
「よう、美久。チョコを食べてたんだ」
訂正。知っていても何が起きたかわからない状態だった。
「チョコが食べたいんですか? だったら生チョコの味見のお手伝いをしてもらってもいいですか!」
言って美久は作った生チョコをジャックに差し出す。紅茶風味の生チョコレート。隠し味にビターチョコを混ぜ、ココアパウダーをまぶした一品である。後味見していないけど塩チョコクッキーも添えてあった。
「紅茶風味にしちゃったけど、コーヒーの方がお好みでしたか?
「紅茶のチョコかあ、初めてやわ。珈琲好きだが紅茶も好きやで」
「よかった! あとでラッピングして改めて渡しますね!」
ジャックの反応に喜ぶ美久。
「ふふ。お祭りみたいでいいですね」
そんな様子を見ながら水瀬 冬佳(CL2000762)が微笑んでいた。皆で集まって騒ぎながらお菓子を食べるのは、祭りに似た楽しさを思わせる。妖やと戦い神秘を解明するFiVEだが、こういった仲間達との交友もFiVEの一面だ。
(初めて五麟に来た時はお菓子を作った事なんて無かったけれど)
父親関係の伝手からFiVEを紹介されてもうすぐ二年。ここにきて色々と生活が変わった。中でも喫茶店で色々教わることになるとは想像すらしなかった。喫茶店で学んだとおりにチョコを作りながら、静かにほほ笑む冬佳。
「我ながら、大分上達したものです」
チョコをまんべんなくスポンジに塗りながら冬佳は思う。この先、どんな未来が待っているのだろうか? それは夢見ですら見通せぬ先の話。その先が、幸せでありますように。
●愛情込めて手間かけて
「おいそこ! エプロンが似合わないなんて笑うな!」
腰に手を当てて田場 義高(CL2001151)が怒りの声をあげる。とはいえ、言葉ほど怒りの感情はない。自虐的に空気をまぜっかえして、場を和ませようとする大声だ。
褐色のスキンヘッド。筋肉質の大男。それが可愛らしいエプロンをつけてバレンタインのチョコを作っているのだ。似合わないと言われれば確かに似合わない。それは当人も自覚している。
どういうことかと言うと……。
「うちは花屋だからな、バレンタインデーはチャンスなわけよ」
なんでも店で配るチョコレートを作ろうという事らしい。花を買った人にプレゼントとして渡す為に。
「作ったのは女房と娘という事にしておくが……あの二人のチョコは他人には渡せん!」
という事で御客用はお父さん自らが作っているとの事だ。
「これはここだけの秘密だぞ」
「バレンタインはチョコの香りが漂ってますね」
普段はのんびりしている藤 壱縷(CL2001386)も、バレンタインの空気と香りにほだされてか気分は高揚していた。もとより壱縷は他人を励ますことに喜びを感じる人間だ。その為に歌い、その為に笑う。そんな彼女がチョコレートで誰かを励まそうするバレンタインに心躍らせるのは、当然ともいえよう。
手慣れた手つきで調理器具を扱い、チョコを細かく刻んでいく。流れるようにボウルをかき混ぜ、生地を作っていく。砕いたクルミとチョコチップを入れ、オーブンで焼き上げていく。
「上手くできたら皆さんに食べてもらいましょう。ここにいる人達にも」
調理しながら壱縷が思うのは、いつもお世話になっている喫茶店の人達の事。そのお礼が出来ればと思いながら作るチョコパウンドケーキ。そこには目に見えない愛情が含まれていた。
「彼女の為に頑張ろう」
想い人の事を考えながら鈴白 秋人(CL2000565)はチョコの型を用意する。花の形をした型。そしてバーターとチョコレート。既に完成形の構図は頭の中にある。いつも通り落ち着いて調理を始める。
バターとチョコを湯せんで溶かし、卵と牛乳を混ぜたものにココアパウダーと小麦粉と砂糖をふるいにかける。それらを混ぜてオーブンに入れた。
(皆楽しそうだな)
オーブンで焼く間、秋人は調理室で料理している人達を見ていた。チョコ作製に笑う人、余裕の顔を浮かべる人、四苦八苦する人、右往左往する人。様々な表情があるが共通しているのは皆楽しそうという事だ。
勿論、秋人も楽しんでいた。花形のチョコを等分に切り分け、幾つものハート型のガトーショコラを作り上げる。
「喜んで貰えるといいな……」
彼女に渡すことを考え、秋人は笑みを浮かべていた。
ラグー・アッラ・ボロニェーゼ、と聞くと何のことかと思う人も多いが、ミートソースと言えば合点がいくだろう。香味野菜で風味を増したひき肉とトマトを合わせたソースである。
「ボロネーゼは、パスタの定番レシピの一つだってのはみんな知ってるよね。だけど、今日つくるのは隠し味にチョコを使ったボロネーゼなの」
向日葵 御菓子(CL2000429)は講義するように周りの人に説明する。音楽教師の御菓子の説明は要点を得ていた。ボロネーゼができた背景をイタリアの風土や街の特色を交えて説明し、それがどのように日本に伝わったかを説明しながら手を動かす。
「鷹の爪を入れるとチョコの風味なのにピリ辛で、これがまた面白いのよ」
少量の鷹の爪を入れ、パスタにかける。豊潤な香りが食欲を刺激した。
「さぁて、そろそろ妹を呼ぼうかな」
「お姉ちゃん、こっちこっち」
御菓子の呼びかけに手を振る菊坂 結鹿(CL2000432)。そこにはテーブルをいくつもくっつけてチョコフォンデュが作られていた。砕いたチョコをホットミルクに入れ、湯せんで溶かす。その間にフォンデュに使う具材を用意していく。マシュマロ、プチシュー、イチゴ、ドライフルーツ、お煎餅、バウムクーヘン、ビスケット……思い思いの物を串に刺し、並べていく。
溶かしたものをチョコレートファウンテンに入れ、準備完了。あとは好きなものをチョコにつけて食べるだけ。
自分だけではなく学校のクラスメイトを呼んでわいわいと楽しみながらフォンデュを食べていた。チョコをベースとした甘い味が口の中に広がっていく。
(ちょっとカロリーが気になるかもしれないけど……今日くらいはいいよね?)
そんなことに怯えながら、しかし甘味への誘惑に身を委ねていた。
●【工藤サンド】って何ですかっ
さてそんな中【工藤サンド】の面々は――
「工藤サンドって何ですかっ。そもそもなんで男三人でチョコ作らないといけないんですか!」
「いいじゃねえか。人生の先輩として恋愛のアドバイスをしてやるから」
「恋愛のアドバイスか……」
工藤・奏空(CL2000955)と風祭・誘輔(CL2001092)と三上・千常(CL2000688)の三人は奏空を挟むようにしてチョコを作っていた。正確には――
「チョコと言えばブランデーだな。頂くぜ」
「つまみが欲しいな……ロックは不味かったか?」
誘輔と千常は味付け用の洋酒を飲み、チョコを作っているのは奏空一人だった。成功条件とは以下省略。
「ま、まあ恋愛のアドバイスをしてくれるのなら……」
どう見ても酒を飲みに来ただけの二人だが、恋愛のことを教えてもらえるのなら聞いてみようと思った。十五歳の多感な少年。好きな人とどうすればいいのか、悩む年齢だ。
「ああ、アドバイス、アドバイスね……。いや実はバレンタインで本命貰った経験なくてなぁ」
のっけから不安になる千常の言葉であった。
「わびしー人生だなオイ。俺ぁもうガキの頃からモテてモテて困っちまったよ。この季節は毎年チョコ責めだ」
呆れるように誘輔がため息をつく。言いながらブランデーを嚥下した。
「いいか工藤、人生の先輩からアドバイスだ。いざって時は押し倒せ。会話が途切れたら押し倒せ。がばっといっちまえ!」
「犯罪だよ! 酔ってるでしょう!」
キレのいいツッコミを入れる奏空。
「ああン? この程度の酒で俺が酔うわけないだろうが」
「知ってる! それ酔ってる人の常套句だから!」
「とにかくだな。女は飽きっぽくて冷めやすい生き物だ。恋にのぼせ上ってるうちが花だぜ。最終的にうまくまとまれば犯罪じゃなくなるしな。
ほら三上もなんか言ってやれ」
「探偵として言えることは、結婚しても浮気する人は多いという事だ」
「現実的すぎるから! 恋愛の相談じゃないよね!?」
「安心しろ。恋愛経験なんざなくても探偵にはなれる」
「わーん! ただの酔っ払いだー!」
酔っ払い二人のいろいろな意味で大人な意見に叫ぶ奏空であった。
――そんなこんなの騒動の中、作られたのがガトーショコラである。
「おっ お裾分けか? 気がきいてるんじゃんか。遠慮なく食わせてもらうぜ」
「あ、俺にも? ありがとさん」
「……なんか、すげー疲れた……」
ラッピングされたガトーショコラを手にする誘輔と千常。その横でぐったりとする奏空。
酔った大人には近づかないでおこう。少年は深く心に刻むのであった。
●【甘菓子】の少年達
「ヤマトくんのイチゴチョコ、美味しそうだねー!」
「小唄のクッキーもうまそうだな! ちょっと焦げてるくらい気にするなって!」
「クッキーなら簡単に作れるって聞いたんだけどなー」
御影・きせき(CL2001110)と黒崎 ヤマト(CL2001083)と御白 小唄(CL2001173)の三人はお菓子を作ってその場で試食会をしていた。
「火加減が難しい。もう少し弱火の方がよかったのか」
小唄は少し焦げたチョコチップクッキーを見ながら反省点を考えていた。元々料理自体をするわけではないため、微妙な火加減が分からないのだ。こればかりは経験的なものなので、何度かやって感覚をつかむしかない。
「失敗は成功の元っていうし、やっぱりさ、こういうのって気持ちも大事だと思う!」
ヤマトはイチゴにチョコをかけて、それを口にする。チョコの濃厚な味わいとイチゴの甘酸っぱい味が絡み合い、口の中に広がる。噛めば噛むほど二つの味が絡み合い、その度に甘さが脳を刺激していく。
「そうそう。簡単なものでも気持ちがこもっていれば問題ないよ!」
チョコバナナケーキを手にきせきが元気よく頷く。お世話になっているドクターにチョコ料理のことを聞いたところ、勧められたのがチョコバナナケーキだ。ホットケーキと同じ要領で生地ができるため、お手軽でおやつにぴったりだ。
「きせきのケーキすごい! もうケーキってだけですごい!」
「おおー! すごい! きせきに教わりたい! 先生って呼ぶぞ!」
「え、そんなすごくないよ!? すぐにできるって!
そうだ! みんなで作ってみようよー!」
きせきのケーキを称賛する小唄とヤマト。きせきは謙遜しながら思いついたように同じものを作ろうと提案する。二人は目を輝かせて頷いた。
「よっし! オレ、ホットプレートもっと借りてくる!」
「どうすればいいのか教えて!」
「ええとね。先ずは――」
弾かれるように動き出す【甘菓子】の少年達。甘くておいしいものが食べたいという事もあるが、こうして同じことを一緒にすることが楽しくて仕方なかった。
●【QUARTET】のお料理会
「皆と一緒にチョコを作れると聞いて、とても楽しみにしてきたんです」
「お誘いありがとうございます。紡さん」
「料理というか 調理一般壊滅的なんだけど……」
「イブちゃんは……手、切らないようにしようね……?」
天野 澄香(CL2000194)、田中 倖(CL2001407)、如月・彩吹(CL2001525)、麻弓 紡(CL2000623)の四人はエプロンをかけながらそんな会話をしていた。紡は手に絆創膏を持ち、彩吹が怪我した時のために用意していた。
「大丈夫です。レシピ通りに作れば美味しくなります」
「後は包丁で指を切らないようにしてくださいね」
形式としては料理に慣れている澄香と倖があまり料理が得意ではない紡と自称壊滅的な彩吹に教える形式だ。普段刀を使う彩吹だから、包丁で指を切るという事はないだろう……と高をくくっていたら、
「違う! 包丁はそうやって持たないから!? それだとホラー映画の怪人ですよ!」
鉈のように包丁を握った彩吹を見て、慌てて止める倖。
「包丁がだめならおろし金を使ってチョコを小さくしていけば――あ、指おろした」
「血!? 早く止血しなくちゃ! 大樹の息吹ー!」
「あ、倖隊長! もうちょっとで粉振るい終わ――!」
「粉ッ!? ふるいを持ってる時は急に動いちゃ、けほけほっ!」
「……どこから教えればいいのでしょうか……?」
彩吹の出血騒ぎや紡の粉塵舞いなど様々な事件はあったが、そんな艱難辛苦(?)を乗り越えて料理は出来上がる。
「僕はチョコケーキポップを作りました」
倖はきれいな球状のチョコケーキを皿に盛る。コアントローをきかせた生地にダークチョコレートのコーティング。オレンジの香りとまろやかな甘みが広がる大人の味だ。
「私は一口チョコです。皆さんどうぞ」
澄香が用意したのは小さく丸めたチョコレートだ。一口サイズのチョコにスプレーチョコやアラザンを周りにくっつけた一品。見た目も綺麗で食べるのがもったいなくなる。
「出来ました!」
チョコレイトでデコレートされたスプーンクッキーは紡の作品だ。通常のチョコだけではなく、ホワイトチョコやナッツやマシュマロと色とりどり。紡のセンスが溢れ出ていた。
「うん チョコレートに見える」
頷く彩吹の前には、花形のチョコレイト。小さな星やハートを添えられたチョコは、多少不格好かもしれないが間違いなく彩吹の手作りチョコだ。
「こうして大勢でお菓子を作るのは、一人での作業とはまた違った楽しみがあって良いですね」
「ええ。こちらこそありがとう、また一緒に何か作りましょうね」
「ふふ 私こそ楽しかった。修行しておくから また誘ってね」
「さあ、皆で試食しよう。お茶もあるし」
倖、澄香、彩吹、紡が互いのチョコを見て微笑みあう。一緒に何かをする。それだけで時間が経つのを忘れてしまいそうになるほど楽しい。
紡が用意した花茶がコップに注がれる。
いただきます、と四人の合掌が重なった。
●Happy Valentine’s Day!
二月十四日。バレンタインデー。
その日も様々なドラマがあったのだが、それはまた別の物語である。
「ナナンはねぇ、初めてチョコレートを作るよぉ! お父さんとお母さんにあげるのだ!」
意気込み一杯で食材の前に立つナナンこと皐月 奈南(CL2001483)。頑張ろうとする半面、上手くできるかなという不安もあった。
だがそんな奈南でもできそうなレシピを見つける。これならできそうだととりかかったのは、
「ザクザク食感のブロックチョコだよぉ!」
ホワイトチョコとビターチョコを湯せんで溶かし、クッキーとココアクッキーを砕いて入れる。後はそれを混ぜ、クッキングシートに分けて冷蔵庫で冷やすだけ。
「まだかなー。早くできないかなー」
ワクワクしながらチョコが冷えるのを待つ奈南。料理という未知の世界に対する興味が、その笑顔にあふれていた。
「凝ったものを作るよりは、普通のチョコを作る方が難しいんですよ」
と言うのは風織 紡(CL2000764)だ。そもそもこれは料理大会ではない。自分のチョコを作るのが目的。ならば大事なのは愛情を込めること。それならチョコの形にこだわる必要はないのだ。
「あゆの為に愛情とおまじないを込めて作るですよ」
おまじない?
「あゆが大学の女共から守らなくてはいけないですね。あゆはもてますからね。ぶっ殺す。ぶっ殺すです……」
そんな事を言いながら真顔で語りチョコを作り始める紡だが、チョコ作製はいたって普通だった。チョコを湯せんで溶かし、型に入れて冷やす。カラフルな猪口スプレーでトッピングして、ピンクの包みでラッピングする。
「完成です。さあ、カードも添えて」
笑顔でメッセージを添える紡。そこには姉の愛がたくさん詰まっていた。
「去年は焼きチョコを作りましたからね。今年はチョコラートのコンフェッティにしましょうか」
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)は守護使役のペスカと一緒にチョコを作る。
コンフェッティと聞くと紙吹雪を想像する人もいるだろうが、日本ではドラジェといった方が分かりやすい。婚礼の時に配られるお菓子として有名で、フランスでは男子出産時には青の、女子出産時にはピンクの物を配るという。
「うん。いい甘さですね。ペスカ、おいしいですか?」
守護使役にチョコを食べさせるラーラ。コンフェッティを食べる姿を見て、笑みを浮かべる。
「皆もどうですか? たくさん作りましたから、どうか食べていってください」
男性用の青と女性用のピンクのドラジェを手に、ラーラはチョコを配りだした。幸せは皆と一緒に。
「よっし! 頑張りましょう!」
ガッツポーズと共に気合を入れる神城 アニス(CL2000023)。目の前にはチョコレートを始めとした様々な材料があった。大事な人のことを思いながら、新鮮なイチゴを手に取る。
包丁を手にイチゴをスライスしていく。その後にバターと卵を用意してタルト台を作っていく。タルト台をオーブンに入れて、アニスは一息ついた。
「そうだ。焼き上げる時間までに出汁巻き卵を作りましょう」
フライパンを手にして卵焼きに挑戦するアニス。慣れていないのか、少し形が崩れていた。
そうこうしているうちにキツネ色に焼き上げたタルト台が完成。上にチョコとスライスしたイチゴを乗せて……。
「できました! ……食べてもらえるでしょうか……?」
イチゴチョコタルトを梱包しながら、相手の事を想う。今何処で何をしているのか――
「ザッハトルテにしましょうか」
様々な材料とレシピを前に迷いながら、上月・里桜(CL2001274)は最終的にザッハトルテを作ることにした。オーストリアの代表的な御菓子でもあり、チョコレートケーキの王様と呼ばれている。
レシピを見ながら里桜は生地を作っていく。元々料理好きなこともあり、その手つきは慣れたものだった。
「半分に切った生地の間と回りにアプリコットジャムを塗って、その上からチョコレートでコーティング……チョコレートの温度に注意とコーティングは手早く、ですね」
レシピに書かれてあることを読み、それだけでそつなくトルテを作っていく。キャラメルチョコをまぶし、見た目を整えていく。
「これで完成ですね。……さて、これはどうしましょうか?」
完成したザッハトルテを前に思案する里桜。特にあげる相手もなく、一人で食べるにも少し量が多い。
「そう言えば試食してくださる人がいるのですね」
●【ゴリサー】の面々1
「うめえ!」
鹿ノ島・遥(CL2000227) はチョコを食べ、そう叫んだ。
「さあみんな、どんどん腕をふるって、おいしいチョコを作ってくれ! オレはそれを試食し、第三者的視点から公平に評価しようじゃないか!」
と言う名目で遥は試食に回っていた。成功条件『チョコを作る』とは何だったのか。ともあれ甘いものが大好きな遥は、チョコレートならいくらでも食べることが出来る自信があった。
「ただしイチャイチャするのは場違いなので、他所でやってくれ。ここは神聖なる調理の場なんでな。ペッ! ケッ!」
遥からすればバレンタインは『チョコをタダで食える日』なのだ。愛とか恋とかは二の次で。
「よし次! ……なんだ、この胃腸薬は?」
首をかしげて胃腸薬を見る遥。誰かのやさしさのようだ。
「~♪」
ゆったりとリズムを刻むように歌いながら椿 那由多(CL2001442)がチョコを作る。
「那由多さんは何を作っているんですか?」
「猫型のチョコレートです。八重さんは?」
「私は皆さんが一息つけるようにホットチョコレートを。ふふ、ちょっぴりビターですよ?」
十夜 八重(CL2000122)に尋ねられて、笑顔で答える那由多。八重の手には温められたカップがあった。その中には言葉通り、ホットチョコレートが。
「抹茶チョコとホワイトチョコでコーティングして……ふふ、これで完成」
猫の形で固められたチョコに、抹茶チョコとホワイトチョコで顔を作る那由多。可愛らしいにゃんチョコの出来上がりである。
「お疲れ様です。一杯どうですか?」
「ありがとう。……あ、あちっ」
労いとして八重が差し出すホットチョコレートを口にする那由多。猫舌なのか、小さく悲鳴を上げた後に息を吹きかけてチョコを冷ます。
「熱いですから気をつけてくださいね……って、もう、大丈夫ですか?」
「大丈夫。とてもおいしいわ。でも、お返しですっ」
「わぷっ!?」
お礼とばかりに、那由多は先ほど作ったチョコを八重の口に投げ込んだ。不意を突かれたのかそれを口にする八重。そのままチョコを味わう。
「ふふ、ありがとうございます。とっても美味しいですよ」
「どうも。それじゃあ、皆のお手伝いに行きましょうか」
互いに笑みを浮かべる八重と那由多。そのまま笑いあった後、他の人の手伝いに向かう。初めての人や、作り慣れていない人の元に。
「賑やかでええなぁこういうの」
「皆さんと楽しめて、何よりです」
わいわいと喋りながらチョコを作る【ゴリサー】の面々を見ながら、二人は微笑んだ。
「ありがとうございます。お返しにクッキーを焼いてきたのでどうぞ」
八重と那由多にチョコの作り方を教えてもらった柳 燐花(CL2000695)は、家で焼いてきたクッキーをおすそ分けする。
(渡すべき相手が家にいると、ゆっくり作れませんし……)
と言う理由でやってきた燐花だが、集まったメンバーを見て少し不安に思っていた。果たして無事にチョコは作れるのだろうか? 自分が、ではなく周りが。
だが予想に反して調理室は甘いチョコの香りが充満していた。その匂いに促されるように燐花もチョコを刻んで湯せんで溶かしていく。
湯せんで溶かしたチョコを型に注ぎ込む。渡す相手のことを思いながら、気持ちを込めてゆっくりと。どうやって渡そうかと考えているうちに、自然と顔がほころんでいた。
「出来上がりです。……この匂いは?」
「小豆の香りだ」
疑問符を浮かべる燐花に赤鈴 炫矢(CL2000267)が答える。中火で煮込んでいる鍋の中には、大量の赤茶色の豆があった。どう見てもチョコではないし、カカオでもない。
慣れないチョコを作るよりは、慣れている料理を作ろうという事で羊羹を作ることにした。寒天や栗なども用意済だ。幼いころから剣術の修行に明け暮れ、料理と言った方面は疎い。作れる料理も限られていた。
「折角だし、チョコ羊羹を作ってみようか」
だがチョコ羊羹の話を聞いて、新たな菓子作りを試してみる。レシピを見ながらチョコを加え、寒天を加えて冷蔵庫で冷やす。そして――
「雛見君、どうかな。へ、変な味じゃ、ないだろうか?」
完成したチョコ羊羹を雛見 玻璃(CL2000865)の所にもっていく。ドキマギする炫矢に対し、玻璃は落ち着いている様に見えた。切り分けられた羊羹をしばらくじっと見て、おもむろに爪楊枝を使って口の中に運ぶ。
「ウン。羊羹だけどチョコの風味がして、意外とおいしい」
「そ、そうか。それは良かった」
「和菓子系って食べる機会あんまないけどこれはこれでイイね。それになんといっても、キミらしいし」
「褒めて……くれたのかな」
玻璃の答えに納得するように頷く炫矢。
「雛見君は何を作っていたのかな?」
「アタシ、お菓子作りとかぶっちゃけ得意じゃないんだよね。
なので他の人が作ってたのを試食とかしてたんだけど」
色々美味しかったね、と他の人の感想を告げた後に皿の上にあるチョコを手にする。
「とりあえず作ってみた」
ビターチョコを溶かし、アーモンドとクルミを混ぜたチョコレート。変な味にはなってないでしょ、と言いながらチョコを一つ指でつまむ。そのままチョコを炫矢の口に近づけて、
「はい、せっかくならアタシのも」
「は、恥ずかしいけれど……あ、あーん」
「ほぐわぁ!?」
奇声と共に切裂 ジャック(CL2001403)の体が宙を舞った。
●【ゴリサー】の面々2
何事と皆が振り向けば、怒りのオーラを放出した酒々井 数多(CL2000149)が拳を振り上げたところだった。
「ときちかぁ! 数多が殴ってきたああ!」
「落ち着いてください、酒々井嬢。その、多分悪気はないとは思いますので」
とっさに時任・千陽(CL2000014)の後ろに隠れるジャック。事情は分からないがとりあえず弁護する千陽。だが数多の怒りはそれで収まるものではなかった。
「大丈夫よ、落ち着いてる。よし、泣くまで殴ろう。泣いても殴ろう」
言葉通り数多は冷静だった。その証拠に手にしているボウルの中にあるチョコマフィンは死守している。これが女子力のなせる業だ。
「大体あんたら真面目にチョコ作りなさいよ!」
「んだよ。俺が菓子作りなんかしたことあるわけねぇだろ」
握り飯を作っていた諏訪 刀嗣(CL2000002)が面倒くさげに答えた。成功条件とは何だったのかパート2。
「ばっちゃんの味噌汁を馬鹿にするな!?」
味噌汁片手にジャックが吼える。成功条件とは何だったのかパート3。
「馬鹿なのアホなの? 死ぬの? 殺すわ。いきなり人の顔舐めてくるアホは」
千陽の後ろから反論するジャック。火に油を注がれたように、数多の怒りが増す。
「おいおい、黒兎。汚れたツラ舐めるとか動物かよお前……引くわ」
「おい。誰の顔が汚れてるか言ってみろ」
「まあまあ。確かに女性の頬を安易に舐めてはいけないな」
仲裁にはいってきたのは一色・満月(CL2000044)だ。
「まだチョコレイトがついておるな、動くなよ」
「え?」
満月は数多の頬についているチョコを布巾で拭き取る。ジャックはこれを取ろうとして数多の頬を舐めたのだ。満月の行動に胸ときめかせている隙に、ジャックは安全圏に離脱する。
「やれやれ。これでひと段落か。しかし諏訪、お前も料理できるのだな。刀以外なにもできないと思っておったぞ」
「別に俺ぁ刀だけ振れりゃ良いんだがな。一人暮らししてっと料理の一つや二つも作れるようになるもんだ」
握り飯を作る刀嗣に、感心するように満月が頷く。刀嗣は肩をすくめて言葉を返した。家から持ってきた鮭と梅干しや明太子を傍に置き、慣れた手つきで炊いたご飯を握っている。
「お前こそ料理なんざ出来るのが意外だぜ」
「姉がよくチョココロッケを作っていてな。見様見真似だが作ってみたのだ」
「見様見真似って……お前作ったことないのかよ」
「なに、カボチャコロッケだって美味しいだろう? 故にチョココロッケもうまいさ。俺はいらないがな」
満月のそばには山のように積まれたコロッケがあった。おそらく味見すらしていないだろうチョココロッケが。名案を思い付いたとポンと手を叩く満月。
「そうだ。味見役がいたな。一つ持って行ってやろうか」
「……あとでカノシマに茶でも点ててやるか」
味見役を買って出たものを不憫に思ったのか、それとも単に自分が飲みたいだけなのか。刀嗣は深い息を吐いてそういった。
「いつものことながら騒がしいですね」
騒ぎから戻った千陽は、ため息とともにそう呟く。だがこの騒がしさは嫌いではない。いつかこの日を回顧し、黄金だったと感じる日が来るのだろうか。
「本当に。でも見ててあきないわ」
千陽の意見に同意するのは環 大和(CL2000477)だ。先ほどまで数多と一緒にチョコを作っていた。手にしているのはチョコレート大福。お餅とチョコレートの絶妙なバランスが生んだ一品である。
「大和嬢のチョコは和菓子と洋菓子を一つにしたものですか……なんと不可思議な」
「わたしは和菓子の方が好きだからチョコレートと組み合わせてみたくてチャレンジしてみたのよ。よければ千陽さん、味見して頂けるかしら?」
「ええ。ではいただきます。
……これは。はい。とてもおいしいです」
「よかった。数多さんに教えてもらったかいがあったわ」
千陽の反応に微笑む大和。チョコレート大福はまだたくさんある。他の人にも配っていく大和。
「こちらもお返しにいいものを作らなくてはいけませんね。レシピ通りに一分の差異もないように作らなくては」
言ってチョコレートを作る千陽。秤を使ってきっちり重量を測る調理法だ。
「丁寧ね、千陽さん。お菓子は科学ともいうし、きっと素晴らしいチョコレートが出来上がると思うわ」
「ありがとうございます。出来上がったらすぐにお届けしますね」
「で、お前は何をしているんだ?」
「凜音ー、みんなが虐めるよ」
香月 凜音(CL2000495)がチョコを溶かしている所にやってきたジャックが泣きついていた。何があったかは同じ調理室に居たので知っている。聞きたいのは、何故まだここにいるかだ。
「え? チョコ食べたいし」
「あー……」
頭を抱える凜音。先ほどの騒乱の空気はすでに消え、皆チョコづくりに勤しんでいる。とりあえず騒動の元となった人物から隠すように立ち、チョコを見た。
「誰かにあげる予定もないしな。ほれ」
作りかけのチョコをジャックに渡す凜音。チョコを作ろうと参加したのはいいが、そう言えば誰に渡すかを考えてなかったのだ。皆と一緒に作るのは楽しいからいいやと割り切っていた。
「って指まで食う奴がいるか。全く」
「切裂のお兄さん、何してるんですか?」
凜音の指に食らいついているジャックを見て、片桐・美久(CL2001026)が疑問符を浮かべる。経緯を知らなければ、何が起きたのかわからないだろう。
「よう、美久。チョコを食べてたんだ」
訂正。知っていても何が起きたかわからない状態だった。
「チョコが食べたいんですか? だったら生チョコの味見のお手伝いをしてもらってもいいですか!」
言って美久は作った生チョコをジャックに差し出す。紅茶風味の生チョコレート。隠し味にビターチョコを混ぜ、ココアパウダーをまぶした一品である。後味見していないけど塩チョコクッキーも添えてあった。
「紅茶風味にしちゃったけど、コーヒーの方がお好みでしたか?
「紅茶のチョコかあ、初めてやわ。珈琲好きだが紅茶も好きやで」
「よかった! あとでラッピングして改めて渡しますね!」
ジャックの反応に喜ぶ美久。
「ふふ。お祭りみたいでいいですね」
そんな様子を見ながら水瀬 冬佳(CL2000762)が微笑んでいた。皆で集まって騒ぎながらお菓子を食べるのは、祭りに似た楽しさを思わせる。妖やと戦い神秘を解明するFiVEだが、こういった仲間達との交友もFiVEの一面だ。
(初めて五麟に来た時はお菓子を作った事なんて無かったけれど)
父親関係の伝手からFiVEを紹介されてもうすぐ二年。ここにきて色々と生活が変わった。中でも喫茶店で色々教わることになるとは想像すらしなかった。喫茶店で学んだとおりにチョコを作りながら、静かにほほ笑む冬佳。
「我ながら、大分上達したものです」
チョコをまんべんなくスポンジに塗りながら冬佳は思う。この先、どんな未来が待っているのだろうか? それは夢見ですら見通せぬ先の話。その先が、幸せでありますように。
●愛情込めて手間かけて
「おいそこ! エプロンが似合わないなんて笑うな!」
腰に手を当てて田場 義高(CL2001151)が怒りの声をあげる。とはいえ、言葉ほど怒りの感情はない。自虐的に空気をまぜっかえして、場を和ませようとする大声だ。
褐色のスキンヘッド。筋肉質の大男。それが可愛らしいエプロンをつけてバレンタインのチョコを作っているのだ。似合わないと言われれば確かに似合わない。それは当人も自覚している。
どういうことかと言うと……。
「うちは花屋だからな、バレンタインデーはチャンスなわけよ」
なんでも店で配るチョコレートを作ろうという事らしい。花を買った人にプレゼントとして渡す為に。
「作ったのは女房と娘という事にしておくが……あの二人のチョコは他人には渡せん!」
という事で御客用はお父さん自らが作っているとの事だ。
「これはここだけの秘密だぞ」
「バレンタインはチョコの香りが漂ってますね」
普段はのんびりしている藤 壱縷(CL2001386)も、バレンタインの空気と香りにほだされてか気分は高揚していた。もとより壱縷は他人を励ますことに喜びを感じる人間だ。その為に歌い、その為に笑う。そんな彼女がチョコレートで誰かを励まそうするバレンタインに心躍らせるのは、当然ともいえよう。
手慣れた手つきで調理器具を扱い、チョコを細かく刻んでいく。流れるようにボウルをかき混ぜ、生地を作っていく。砕いたクルミとチョコチップを入れ、オーブンで焼き上げていく。
「上手くできたら皆さんに食べてもらいましょう。ここにいる人達にも」
調理しながら壱縷が思うのは、いつもお世話になっている喫茶店の人達の事。そのお礼が出来ればと思いながら作るチョコパウンドケーキ。そこには目に見えない愛情が含まれていた。
「彼女の為に頑張ろう」
想い人の事を考えながら鈴白 秋人(CL2000565)はチョコの型を用意する。花の形をした型。そしてバーターとチョコレート。既に完成形の構図は頭の中にある。いつも通り落ち着いて調理を始める。
バターとチョコを湯せんで溶かし、卵と牛乳を混ぜたものにココアパウダーと小麦粉と砂糖をふるいにかける。それらを混ぜてオーブンに入れた。
(皆楽しそうだな)
オーブンで焼く間、秋人は調理室で料理している人達を見ていた。チョコ作製に笑う人、余裕の顔を浮かべる人、四苦八苦する人、右往左往する人。様々な表情があるが共通しているのは皆楽しそうという事だ。
勿論、秋人も楽しんでいた。花形のチョコを等分に切り分け、幾つものハート型のガトーショコラを作り上げる。
「喜んで貰えるといいな……」
彼女に渡すことを考え、秋人は笑みを浮かべていた。
ラグー・アッラ・ボロニェーゼ、と聞くと何のことかと思う人も多いが、ミートソースと言えば合点がいくだろう。香味野菜で風味を増したひき肉とトマトを合わせたソースである。
「ボロネーゼは、パスタの定番レシピの一つだってのはみんな知ってるよね。だけど、今日つくるのは隠し味にチョコを使ったボロネーゼなの」
向日葵 御菓子(CL2000429)は講義するように周りの人に説明する。音楽教師の御菓子の説明は要点を得ていた。ボロネーゼができた背景をイタリアの風土や街の特色を交えて説明し、それがどのように日本に伝わったかを説明しながら手を動かす。
「鷹の爪を入れるとチョコの風味なのにピリ辛で、これがまた面白いのよ」
少量の鷹の爪を入れ、パスタにかける。豊潤な香りが食欲を刺激した。
「さぁて、そろそろ妹を呼ぼうかな」
「お姉ちゃん、こっちこっち」
御菓子の呼びかけに手を振る菊坂 結鹿(CL2000432)。そこにはテーブルをいくつもくっつけてチョコフォンデュが作られていた。砕いたチョコをホットミルクに入れ、湯せんで溶かす。その間にフォンデュに使う具材を用意していく。マシュマロ、プチシュー、イチゴ、ドライフルーツ、お煎餅、バウムクーヘン、ビスケット……思い思いの物を串に刺し、並べていく。
溶かしたものをチョコレートファウンテンに入れ、準備完了。あとは好きなものをチョコにつけて食べるだけ。
自分だけではなく学校のクラスメイトを呼んでわいわいと楽しみながらフォンデュを食べていた。チョコをベースとした甘い味が口の中に広がっていく。
(ちょっとカロリーが気になるかもしれないけど……今日くらいはいいよね?)
そんなことに怯えながら、しかし甘味への誘惑に身を委ねていた。
●【工藤サンド】って何ですかっ
さてそんな中【工藤サンド】の面々は――
「工藤サンドって何ですかっ。そもそもなんで男三人でチョコ作らないといけないんですか!」
「いいじゃねえか。人生の先輩として恋愛のアドバイスをしてやるから」
「恋愛のアドバイスか……」
工藤・奏空(CL2000955)と風祭・誘輔(CL2001092)と三上・千常(CL2000688)の三人は奏空を挟むようにしてチョコを作っていた。正確には――
「チョコと言えばブランデーだな。頂くぜ」
「つまみが欲しいな……ロックは不味かったか?」
誘輔と千常は味付け用の洋酒を飲み、チョコを作っているのは奏空一人だった。成功条件とは以下省略。
「ま、まあ恋愛のアドバイスをしてくれるのなら……」
どう見ても酒を飲みに来ただけの二人だが、恋愛のことを教えてもらえるのなら聞いてみようと思った。十五歳の多感な少年。好きな人とどうすればいいのか、悩む年齢だ。
「ああ、アドバイス、アドバイスね……。いや実はバレンタインで本命貰った経験なくてなぁ」
のっけから不安になる千常の言葉であった。
「わびしー人生だなオイ。俺ぁもうガキの頃からモテてモテて困っちまったよ。この季節は毎年チョコ責めだ」
呆れるように誘輔がため息をつく。言いながらブランデーを嚥下した。
「いいか工藤、人生の先輩からアドバイスだ。いざって時は押し倒せ。会話が途切れたら押し倒せ。がばっといっちまえ!」
「犯罪だよ! 酔ってるでしょう!」
キレのいいツッコミを入れる奏空。
「ああン? この程度の酒で俺が酔うわけないだろうが」
「知ってる! それ酔ってる人の常套句だから!」
「とにかくだな。女は飽きっぽくて冷めやすい生き物だ。恋にのぼせ上ってるうちが花だぜ。最終的にうまくまとまれば犯罪じゃなくなるしな。
ほら三上もなんか言ってやれ」
「探偵として言えることは、結婚しても浮気する人は多いという事だ」
「現実的すぎるから! 恋愛の相談じゃないよね!?」
「安心しろ。恋愛経験なんざなくても探偵にはなれる」
「わーん! ただの酔っ払いだー!」
酔っ払い二人のいろいろな意味で大人な意見に叫ぶ奏空であった。
――そんなこんなの騒動の中、作られたのがガトーショコラである。
「おっ お裾分けか? 気がきいてるんじゃんか。遠慮なく食わせてもらうぜ」
「あ、俺にも? ありがとさん」
「……なんか、すげー疲れた……」
ラッピングされたガトーショコラを手にする誘輔と千常。その横でぐったりとする奏空。
酔った大人には近づかないでおこう。少年は深く心に刻むのであった。
●【甘菓子】の少年達
「ヤマトくんのイチゴチョコ、美味しそうだねー!」
「小唄のクッキーもうまそうだな! ちょっと焦げてるくらい気にするなって!」
「クッキーなら簡単に作れるって聞いたんだけどなー」
御影・きせき(CL2001110)と黒崎 ヤマト(CL2001083)と御白 小唄(CL2001173)の三人はお菓子を作ってその場で試食会をしていた。
「火加減が難しい。もう少し弱火の方がよかったのか」
小唄は少し焦げたチョコチップクッキーを見ながら反省点を考えていた。元々料理自体をするわけではないため、微妙な火加減が分からないのだ。こればかりは経験的なものなので、何度かやって感覚をつかむしかない。
「失敗は成功の元っていうし、やっぱりさ、こういうのって気持ちも大事だと思う!」
ヤマトはイチゴにチョコをかけて、それを口にする。チョコの濃厚な味わいとイチゴの甘酸っぱい味が絡み合い、口の中に広がる。噛めば噛むほど二つの味が絡み合い、その度に甘さが脳を刺激していく。
「そうそう。簡単なものでも気持ちがこもっていれば問題ないよ!」
チョコバナナケーキを手にきせきが元気よく頷く。お世話になっているドクターにチョコ料理のことを聞いたところ、勧められたのがチョコバナナケーキだ。ホットケーキと同じ要領で生地ができるため、お手軽でおやつにぴったりだ。
「きせきのケーキすごい! もうケーキってだけですごい!」
「おおー! すごい! きせきに教わりたい! 先生って呼ぶぞ!」
「え、そんなすごくないよ!? すぐにできるって!
そうだ! みんなで作ってみようよー!」
きせきのケーキを称賛する小唄とヤマト。きせきは謙遜しながら思いついたように同じものを作ろうと提案する。二人は目を輝かせて頷いた。
「よっし! オレ、ホットプレートもっと借りてくる!」
「どうすればいいのか教えて!」
「ええとね。先ずは――」
弾かれるように動き出す【甘菓子】の少年達。甘くておいしいものが食べたいという事もあるが、こうして同じことを一緒にすることが楽しくて仕方なかった。
●【QUARTET】のお料理会
「皆と一緒にチョコを作れると聞いて、とても楽しみにしてきたんです」
「お誘いありがとうございます。紡さん」
「料理というか 調理一般壊滅的なんだけど……」
「イブちゃんは……手、切らないようにしようね……?」
天野 澄香(CL2000194)、田中 倖(CL2001407)、如月・彩吹(CL2001525)、麻弓 紡(CL2000623)の四人はエプロンをかけながらそんな会話をしていた。紡は手に絆創膏を持ち、彩吹が怪我した時のために用意していた。
「大丈夫です。レシピ通りに作れば美味しくなります」
「後は包丁で指を切らないようにしてくださいね」
形式としては料理に慣れている澄香と倖があまり料理が得意ではない紡と自称壊滅的な彩吹に教える形式だ。普段刀を使う彩吹だから、包丁で指を切るという事はないだろう……と高をくくっていたら、
「違う! 包丁はそうやって持たないから!? それだとホラー映画の怪人ですよ!」
鉈のように包丁を握った彩吹を見て、慌てて止める倖。
「包丁がだめならおろし金を使ってチョコを小さくしていけば――あ、指おろした」
「血!? 早く止血しなくちゃ! 大樹の息吹ー!」
「あ、倖隊長! もうちょっとで粉振るい終わ――!」
「粉ッ!? ふるいを持ってる時は急に動いちゃ、けほけほっ!」
「……どこから教えればいいのでしょうか……?」
彩吹の出血騒ぎや紡の粉塵舞いなど様々な事件はあったが、そんな艱難辛苦(?)を乗り越えて料理は出来上がる。
「僕はチョコケーキポップを作りました」
倖はきれいな球状のチョコケーキを皿に盛る。コアントローをきかせた生地にダークチョコレートのコーティング。オレンジの香りとまろやかな甘みが広がる大人の味だ。
「私は一口チョコです。皆さんどうぞ」
澄香が用意したのは小さく丸めたチョコレートだ。一口サイズのチョコにスプレーチョコやアラザンを周りにくっつけた一品。見た目も綺麗で食べるのがもったいなくなる。
「出来ました!」
チョコレイトでデコレートされたスプーンクッキーは紡の作品だ。通常のチョコだけではなく、ホワイトチョコやナッツやマシュマロと色とりどり。紡のセンスが溢れ出ていた。
「うん チョコレートに見える」
頷く彩吹の前には、花形のチョコレイト。小さな星やハートを添えられたチョコは、多少不格好かもしれないが間違いなく彩吹の手作りチョコだ。
「こうして大勢でお菓子を作るのは、一人での作業とはまた違った楽しみがあって良いですね」
「ええ。こちらこそありがとう、また一緒に何か作りましょうね」
「ふふ 私こそ楽しかった。修行しておくから また誘ってね」
「さあ、皆で試食しよう。お茶もあるし」
倖、澄香、彩吹、紡が互いのチョコを見て微笑みあう。一緒に何かをする。それだけで時間が経つのを忘れてしまいそうになるほど楽しい。
紡が用意した花茶がコップに注がれる。
いただきます、と四人の合掌が重なった。
●Happy Valentine’s Day!
二月十四日。バレンタインデー。
その日も様々なドラマがあったのだが、それはまた別の物語である。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『手作りチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:風織 紡(CL2000764)
『お味噌汁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:切裂 ジャック(CL2001403)
『チョコパウンドケーキ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:藤 壱縷(CL2001386)
『洋酒』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:風祭・誘輔(CL2001092)
『ガトーショコラ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『チョコラートコンフェッティ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『洋酒』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:三上・千常(CL2000688)
『手作りチョコ&ケーキ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:香月 凜音(CL2000495)
『握り飯』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:諏訪 刀嗣(CL2000002)
『チョココロッケ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:一色・満月(CL2000044)
『胃薬』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鹿ノ島・遥(CL2000227)
『手作りチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:柳 燐花(CL2000695)
『ザッハトルテ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:上月・里桜(CL2001274)
『チョコマフィン』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:酒々井 数多(CL2000149)
『イチゴチョコタルト』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:神城 アニス(CL2000023)
『ホットチョコレート』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:十夜 八重(CL2000122)
『チョコ大福』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:時任・千陽(CL2000014)
『猫型チョコレート』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:椿 那由多(CL2001442)
『生チョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:片桐・美久(CL2001026)
『チョコレートケーキ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:水瀬 冬佳(CL2000762)
『花屋の手作りチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:田場 義高(CL2001151)
『チョコボロネーゼパスタ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:向日葵 御菓子(CL2000429)
『チョコフォンデュ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:菊坂 結鹿(CL2000432)
『ハート型ガトーショコラ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鈴白 秋人(CL2000565)
『チョコチップクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:御白 小唄(CL2001173)
『ザクザク食感のブロックチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:皐月 奈南(CL2001483)
『チョコレート大福』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:環 大和(CL2000477)
『スプーンクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:麻弓 紡(CL2000623)
『花形チョコレート』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:如月・彩吹(CL2001525)
『チョコホットケーキ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:御影・きせき(CL2001110)
『一口チョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:天野 澄香(CL2000194)
『チョコ羊羹』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:赤鈴 炫矢(CL2000267)
『チョコケーキポップ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:田中 倖(CL2001407)
『手作りチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:雛見 玻璃(CL2000865)
『イチゴチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:黒崎 ヤマト(CL2001083)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:風織 紡(CL2000764)
『お味噌汁』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:切裂 ジャック(CL2001403)
『チョコパウンドケーキ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:藤 壱縷(CL2001386)
『洋酒』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:風祭・誘輔(CL2001092)
『ガトーショコラ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:工藤・奏空(CL2000955)
『チョコラートコンフェッティ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)
『洋酒』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:三上・千常(CL2000688)
『手作りチョコ&ケーキ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:香月 凜音(CL2000495)
『握り飯』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:諏訪 刀嗣(CL2000002)
『チョココロッケ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:一色・満月(CL2000044)
『胃薬』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鹿ノ島・遥(CL2000227)
『手作りチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:柳 燐花(CL2000695)
『ザッハトルテ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:上月・里桜(CL2001274)
『チョコマフィン』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:酒々井 数多(CL2000149)
『イチゴチョコタルト』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:神城 アニス(CL2000023)
『ホットチョコレート』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:十夜 八重(CL2000122)
『チョコ大福』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:時任・千陽(CL2000014)
『猫型チョコレート』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:椿 那由多(CL2001442)
『生チョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:片桐・美久(CL2001026)
『チョコレートケーキ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:水瀬 冬佳(CL2000762)
『花屋の手作りチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:田場 義高(CL2001151)
『チョコボロネーゼパスタ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:向日葵 御菓子(CL2000429)
『チョコフォンデュ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:菊坂 結鹿(CL2000432)
『ハート型ガトーショコラ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:鈴白 秋人(CL2000565)
『チョコチップクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:御白 小唄(CL2001173)
『ザクザク食感のブロックチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:皐月 奈南(CL2001483)
『チョコレート大福』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:環 大和(CL2000477)
『スプーンクッキー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:麻弓 紡(CL2000623)
『花形チョコレート』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:如月・彩吹(CL2001525)
『チョコホットケーキ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:御影・きせき(CL2001110)
『一口チョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:天野 澄香(CL2000194)
『チョコ羊羹』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:赤鈴 炫矢(CL2000267)
『チョコケーキポップ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:田中 倖(CL2001407)
『手作りチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:雛見 玻璃(CL2000865)
『イチゴチョコ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:黒崎 ヤマト(CL2001083)

■あとがき■
貴方のバレンタインが良き日でありますように。
