崩落メランコリックストローク
崩落メランコリックストローク


●憂鬱鬱蒼茂蒼嵐
 いつもはそんなことがないのだけれど。
 そんなことは本当に無いのだけれど、少しだけ、本当に少しだけネガティブであったのだ。
 それは彼氏に交際関係を断たれたとか、試験結果がいつもより著しく悪かっただとか、この結果に帰宅後の母の表情が容易に想像できるだとか。
 そういうことであったのだ。
 場所も悪かったのかもしれない。
 学校からの帰り道。いつもの駅。イヤホンから流れてくるいつもの音楽。構内放送が流れる。もうじき、いつもの電車が来るのだ。
 なんだろう。疲れたとか、嫌になったとか、逃げたくなったとか、そういうことじゃないのに。
 そういうことを考えたこともないのに。
 私の足は、自然と前を向いていた。
 同じ学校の生徒らが私を制止する声に耳も貸さずに、私は線路の上へと身を投げだした。
 そうだ、これでいいんだ。
 これでもう何もかも解決す――――――暗転。

 社会人になると、一日の意識の大半は仕事の方へと向くものだ。
 車の中。赤信号。
 夕方六時。
 気持ちは沈んでいる。仕事で大きなミスを犯したのだ。
 残業を言い出て失態を取り返そうとしたのだが、上司には効率が下がるから明日やるようにと帰されてしまった。
 このご時世にえらくホワイトなものだとは思うが、その日のうちに片付かなかった案件というのは頭のなかで強くしこりを残すもの。
 今悩んでも解決しないと分かってはいるのだが、堂々巡りの思考からはなかなか抜け出せずに居た。
 悶々と。悶々と、悩む。考える。巡らせる。ふと、閃いた。
 閃いたので、アクセルを思い切り踏みつけた。
 横薙ぎに走る車の群れに飛び込んだ。
 これでいい。こうすればいい。なんて簡単なこ――――――暗転。


●落下傀儡望墜落
 きっかけは些細なことだった。
 駅・道路等目立った場所での自殺者が急増している。また彼らの関係者に確認したところ、特に思い悩むような素振りもコミュニティであぶれていうわけでもなく、そういったことをするような人物とは到底考えられなかったと。
 皆が、口々にそう言ったのだ。
 そのため、調査が入った。
 僅かな違和感。だが、非日常はそういった隙間にも潜り込んでいるものだと経験則から彼らは知っていたから。
 結果として、ひとつの古妖の存在が浮かび上がる。
 自殺幇助。自殺示唆。
 魔が差した。という時の『魔』そのもの。
 消して見過ごせぬその害は、なんとしても排除せねばならない。
 よって、そういうことになった。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:yakigote
■成功条件
1.古妖『アシステックスーサイド』の討伐
2.なし
3.なし
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

自殺幇助を行う古妖が現れました。
これに遭遇した場合、自然と自らの命を絶つよう意識を誘導されます。
古妖を発見し、戦闘により排除してください。

●エネミーデータ
アシステックスーサイド
・泣き顔の仮面をつけた細身の人型。大衆に紛れていても何故か悪目立ちせず、注視せねばその存在を見逃してしまう。
・道路や駅、屋上といった安易に死に到ることが可能な場所で遭遇する。対象を唆し、自然と自殺するように意識を誘導する。
・直接の害を及ぼす古妖ではないため、直接攻撃する能力を一切持たない。常時二回行動。
・『そういう』感情を持った状態で『そういう』場所に立ち寄った対象に好んで近づきます。自分たちでそういうシチュエーションを作ってもいいし、そういう一般人を探して張り込んでも問題ありません。ただ、古妖の好むシチュエーションでなければ探し出すことは不可能です。
・強さを妖の基準でいうとランク2~3程度。
・メランコリックヴォイス
 毎ターン、自然治癒判定後にアシステックスーサイドの行動を消費せずに発動します。
 戦闘範囲全域が対象です。
 いわゆる「よし、自殺しよう」という状態異常にかけます。そのバッドステータスにかかった場合、飛び降りる・刃物で自分を刺すといった自傷行為に及びやすくなります。
 ターン経過につれて抵抗難易度が上がります。

・アシスタントヴォイス
 アシステックスーサイドは通常攻撃を行いません。代わりにこの行動を通常攻撃とします。
 この攻撃が命中した場合、次のターンのメランコリックヴォイスへの抵抗判定に失敗します。

・フォロースーサイドヴォイス
 アシステックスーサイドが戦闘不能になった際にメランコリックヴォイスが自動発動します。

●シチュエーションデータ
・昼間。利用者の多い駅のホーム。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
5日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
7/8
公開日
2016年11月09日

■メイン参加者 7人■

『田中と書いてシャイニングと読む』
ゆかり・シャイニング(CL2001288)
『清純派の可能性を秘めしもの』
神々楽 黄泉(CL2001332)

●アスファルトにキスをするまでの無限時間
 疲労と不安が精神を鷲掴みにし摩耗していくときは、甘いものを摂取し、娯楽に勤しみ、いつもより多く睡眠時間を設ける。それでもステータスの異常が治らないなら、少しだけ傾いている。

 構内アナウンスが聞こえる。どのホームからであるのかは、電子板に赤い注釈が表示されるためわかりやすい。
 電子乗車券を指定されたタイルに触れさせることで、簡易的なゲートが無効化される。この如何にも誤魔化せそうなゲートが成り立つのは、この国の人間性によるものだろう。物理的な締め出しは必要ない。ほんの少しの警告で成り立っている。その是非をどうと問われれば、無感動なものだと答えるしか無い。この内と外を隔てる小さな門は今回の一切と関係がなく、あるのはすべて内側であるのだ。
「自殺幇助……を行う古妖ですか」
 改札を抜けながら、納屋 タヱ子(CL2000019)は手元の端末に表示された資料を再度読み返していた。そういう生き物だ、と言われればそれまでだ。餌場に放り込まれれば、どんな肉食獣もひとを食うだろう。そこに善悪を挟む余地はない。絶対悪とは逆説、悪ではないのだ。
「人と相容れぬ古妖が人の世界に居る以上、排除するしかありません。許せない、というのは少し違います。なんだか、やるせないです……」
「ワー、人を自殺する様に誘導するって結構恐ろしい古妖デスネ……」
『『恋路の守護者』』リーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)が心情を吐露する。大多数にとって、やはり死とは人生における最悪だ。全体で見ればサイクルのひとつでしかないかもしれないが、それを故意に誘発する必要性はどこにもない。
「デーモ大丈夫! 私は何がアッテモ! 愛しの彼と結婚するマデハ自殺なんてシマセンネ! ソシテ! 私が来たからにはもう誰も自殺なんてさせマセンネ! 私に任せるのデース!!」
「ゆかりの夢は、世界中のみんなに笑顔を届けること。絶望している人にもささやかな笑顔を届けられるような、そんな人になること。笑顔を取り戻す前に自殺へ導く古妖、放置するわけにはいきません!」
『田中柚花梨a.k.a.』ゆかり・シャイニング(CL2001288)の思い描くそれと、件のこれは一律相反するものだ。これは立ちふさがる一種のシステムだ。これは一切が別規範で動くものだ。なれば許されざる敵である。不要なルールを受け入れてはならないのだ。
「ん、この古妖、悪い子。悪い子は、お仕置き、する」
 シンプルな答えを出した『アンシーリーコートスレイヤー』神々楽 黄泉(CL2001332)。ひとを死に至らしめる。それがたとえそういう生き物であったとして、関係がない。ひとの肉を知った獣を殺処分するように。それはどうしようもなく、ありとあらゆる意味で『悪い』のだ。独善と、言わば言うが良い。互いに元より相容れぬのだ。
「人間社会、まだよく解らないけど、生死は、私達でも同じ、重要な事。それを揺さぶるの、駄目」
「自殺とはまったく勿体無い。死ぬ気になれば死ぬ場所はいくらでもあるというのに」
『教授』新田・成(CL2000538)のいうそれは、粗末にするなという一般論とは少し違うものだろう。どういう風に活かすも殺すも、己次第であるというのは一元的な立場からのもの良いかもしれないが、それでもそういう前提である国に生まれているのだ。哲学は風土に寄り添っている。
「ただいま電車が止まっているようでして」
 ひとを減らしていく。ゼロにするわけにはいかないが、自分の腕に収まる範囲であればありがたい。
「アシステックスーサイドか……魔が差したって話は聞いたことがあるけど、そういうのが古妖としてほんとに存在するとはな」
 不可思議な事象にはこういうものが絡んでいるのだろうかと『守人刀』獅子王 飛馬(CL2001466)が首をかしげる。全くない、とは言い切れないだろう。現代科学はメンタルによるカオス値を計測できない。古くから、感情というものが行動の成否や決定に大きく働きかけることを知りながら、その法則性を計算できていない。さらに言えば、それがメンタルによるものだけであるのかすら、判明していないのだ。
 未知とは、解明されていない科学である。実証されていない事実である。であるならば、こういったものが関わっていないと言い切ることなど出来はしない。その可能性を否定できない。観測されていないという一点を否定出来ればの話だが。
 戯言を交えながら、適当なエスカレータの段に足をかける。
 さて、この死はどのようであるだろう。

●ナインポイントエイトに身を委ねて
 生きたくはない。死にたくもない。その宙ぶらりんの間でも生きている。生きているんだ。立派でなくとも、清貧でなくとも。だからそう、罵倒してくれるな。それがナイフなんだ。

 さて、死について考えてみようか。
 死ぬ、というシステムが受動的になったときそれは非常に理不尽なものへと変貌する。
 なぜなら、死というものがどんな生命としても個で言う中でどうしようもなく絶対的に最終的に本当に取り返しのつかない結末であるからだ。
 どのようなものであれ、死ぬ。
 個とは矮小である。
 重篤人が奇跡的な薬品開発のお陰で残り50年を生きる一方で、屈強に鍛え上げた愛国を歌う兵が民間人の銃弾で傷害を終える。
 命は軽い。命は尊い。命は消えやすい。命は重要だ。本当に?
 見ていられない。その通りだ。見ていたくない。そ―――間もなく―――の通りだ。
 何度か殺した。何度も殺した。そうだ、お前が殺した。
 これからも繰り返すだろう。
 心は張り裂けそうで、弾け飛んでしまいそうで。
 沸き上がる吐き気を我慢できずに。それでも後悔が苦悶が悲鳴が絶叫が胸の奥から流れ出てくれなく―――通過し―――て。
 嗚呼。
 嗚呼。
 嗚呼。自分など、いないほうがいいのだ。その通りだ。
 自分が居ないほうが、誰も死ななくてすむ。そうだ。自分が居ないほうが、自分の代わりに誰かが殺さなくてすむ。そ―――危険ですので―――うだとも。
 嗚呼そうだ。死のう。
 こんな世界。こんな優しくない世界。こんな優しくなく無情な世界。
 逃げ出そう。逃げ出してしまおう。
 次こそは、もっと強く生まれていますように。
 次こそは、もっとマシな世界でいますように。
 
 ホームの縁に、足をかける。
 誰かが静止しようとする声が聞こえたような気がしたが、もう遅い。
 間もなく。
 電車が通過します。
 危険ですので。
『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)は思い切り飛び込むことにしました。

●それを思う恐怖よりも
 明日、インディーズから追いかけてるバンドが地上波に出るんだ。それくらいの理由で良いんだ。不安で不審で不全で不感症な中に揺蕩っていようと、それくらいでいいんだ。生きるために眠る理由なんて。

 声の出ない悲鳴。
 数秒の茫然自失。
 通り過ぎた特急列車。その前に身を投げ出し、轢き飛ばされた仲間の姿はタヱ子の視界にはない。
 落。死。挽肉。見えないことが、安否の確認できないことが余計に不安を掻き立てる。
 守れなかった。一瞬だけ沸いた自責の念。そこに、死神が忍び寄る。
 わたしのせいだ。お前のせいだ。どうすればいい。責任を取ればいい。どうやって。この世において最大の決着はひとつだ。そうだ。死だ。死ぬのだ。この生命を持って過ちに決着をつけるのだ。さあ自らの首に手をかけよう。これで誰もが納得してくれる。それで誰もが理解してくれる。首の骨が軋む音。呼吸がままならない。こんなことは違う。そうどこかで考えていても、酸素の回らない脳はやがて活動を―――その腕を仲間に無理やり引きはがされた。
「生きてる! まだ生きている!」
 その言葉に、朦朧としていた頭が活性化する。視界を巡らせた。倒れている仲間。遠目でもわかる重篤。だが、生きている。
 走り、駆ける。今度は間に合わせるために。

 火傷や出血といった明らかな身体的変化が見受けられないとはいえ、古妖にかどわかされたその様は比較的見分けがつきやすい。
 戦闘中の苛烈な運動行動のそれでありながら、唐突に動きを止める。目の焦点が合わなくなり、視線がおぼろげになる。
 そういった仲間を見つけては、リーネはペットボトルに抽出した液体をかけていく。
「死ぬのはイケマセーン! 私で良ければ何でもシマスカラ、正気に戻るのデース!」
 安易なネットスラングで返事をしてはいけない。
 明るくふるまって、仲間の肩をたたき、声をかけ、音を聞いて、耳を傾け、心を落とし、己の手首を壁に叩きつけた。
 がん、がん、がん。何度も、何度も、何度も。叩きつける。手首がおかしな方向に曲がる。骨がひしゃげる。指が珍妙な現代あゝとのようなものに進化していく。
 おかしなものが見える。ねえ、君よ。君よ。その隣にいる彼女はだあれ?
「アァ、ナマジ打たれ強いノガ、イケマセンネ……痛いの、続くばかりで、死ねマセンネ……」

 ホームに身を投げ出しそうになった駅利用者に、ゆかりが必死で声をかける。
「ここで我慢すればきっと笑顔になれる出来事に出会えますよ! 面白いテレビ番組とか! 美味しいお料理とか! そういう些細なことでも! 何もなければ、ゆかりが皆さんに笑顔を届ける係になります!」
 そうだ、そんな些細なことでいい。この世界が根こそぎ灰色であったとしても、ほんの少しだけ色づいてくれていればそれでいい。バラエティの次回予告、ゲームソフトの発売日、日曜日まであとどのくらい。どれほど小さなことでもいい。大人物でなくてかまわない。生きていてほしい。だから、その手を離さないで―――ほしかった。
 投げ出される。やめて。落ちないで。落ちていかないで。そんな。嗚呼。嗚呼。嗚呼。ごめんなさい。
 ごめんなさい。謝らなきゃ。どうやるんだっけ。そう、そうだ。火を、くべて、このみが、やけつきるまで。
 何か布のようなものではたかれて、我に返る。自分の衣服についた燃え残りを慌てて叩き消した。
 いつの間にか自分の真横にいた古妖が、つまらなさそうに身を引くのが見えた。

「悪い子、お仕置き」
 黄泉の振り回す大斧が、古妖の体を肩から斜めに裂いた。
 血液のたぐいは一切流れない。代わりに、傷の断面はコーヒーのように黒と白が入り混じっている。それが、ますますこれを死神めいて見せた。
 振り回す。振り回して、振り回す。黄泉はこれしか知らぬ、これしか知らぬのだ。
 直接的な攻撃手段を持たないがゆえに、直線的なそれには弱いのか、古妖はただ逃げる。逃げて、囁くだけだ。これもまた、これしか知らぬのだろう。そういう生き物なのだ。
 もっと、もっと強くなって、強くなるのだ。母のように、父祖のように。強く、なれなかったら。なれなかったら、どうなるのだろう。
 と。攻撃の手が止まる。死神は強い思いを見逃さない。それがプラスであれマイナスであれ、その囁きはするりと耳に入り、上から下に、突き落とす。
「何でか、解らないけど、凄く死にたく、なった、何で?」
 その発言に危機を感じたのだろう。仲間が駆け寄ってきて、自分を揺さぶった。

 昼日中。誰もが利用する公共施設。
 そんな場所で人が何人も飛び降りを計り、幾人かが切ったはったを始めれば、パニックも起きようものだ。
 だが、事前に成がひと入りを極力抑えてきた功もあるのだろう。ホームの中は、動き回れぬという程には手狭ではなかった。それくらいには、ひとをまばらに出来ていたのだ。
 古妖にとって、駅のホームとは飛び降りるものだ。線路の上に身を投げ出すためにあるものだ。だから、成はその上から強襲を仕掛けたのである。
 頭上。自分に向かって落ちてくるだなどと、飛び降りを引き起こす古妖とて思いもしない。大上段。真上も真上から、その仮面ごと死神の脳天から切りつけた。
 仮面が割れて、ずれる。ずれたままで、固定される。固定されたままで、それでも死を囁いている。
 ぐらりと揺れる脳。湧き上がる死への渇望。冷水を思い切り顔にかけられた。味方の仕業だろう。頭の中が晴れ渡る。
「残念ながら六十余年も生きれば、これまで生きてきた生の方にある種の確信を持つのですよ」

 あたまが痛い。
 あたまが痛い。
 一体、どれだけの時間がたったのだろう。一体、あとどれだけ続くのだろう。
 飛馬の疑問に誰も答えられぬまま、戦いは続く。
 多くは、敵の特異性からくるものだ。自殺衝動。これのせいで攻撃は散発的になり、仲間が止めにかかるためになおのこと手間を取られ、長引いていく。
 朦朧とする。今も頭の片隅で死が甘美さを囁き続けている。逃げろ。やめろ。終わらせろ。我慢をするな。耐えなくていい。つらい思いをする必要はない。
「わりぃけどな。こっちは守りに特化した修行ばっか積んできてんだ。飛び降りようが刀で刺そうが簡単には死なねー体なんだよ」
 言霊は、自らを奮い立たせるためのものだ。そうして立ち上がる。意識がクリアにならぬまま、死神に刃を向けている。
 電子音。
 構内アナウンス。最悪だ。これで何人が死ぬか。
 それは、死にまどろみながらも残る、覚者としての矜持か。守るものとしての生きざまか。
 皆を動かした。走る、駆ける、死んでいる場合ではないというように。
 誰もが誰も、武器を手にして。

●果てに至る病
 日を浴びる。新鮮な空気を取り入れる。呼吸にだけ集中する。過去に囚われない。未来を覗かない。一寸先は闇。その方が救われることもある。

 からんと、仮面が落ちた。
 はたと古妖を探すが、どこにもいない。
 あの歪になったひとがたは、いない。いないのなら、これが本体だろう。
 仮面が割れる。ぱきりと。断末魔が飛び出した。

「死ね」

 視界がぼやける。
 ひとつの思考に支配される。
 身体が傾く。
 脳がそれに侵される。
 足が動く。
 みんな、そっちに動いていく。
 構内アナウンスが聞こえる。
 間もなく。
 電車が通過します。
 危険ですので。

 了。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

目が覚める。頬に張り付いて痛い涙の痕だけが証明する。




 
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