<五麟祭>裏闘技場バトルロワイヤル2016!
●楽しくバトってリフレッシュ!
皆、バトってるか!?
第一回バトルロワイヤルが行なわれてからもう一年。皆の実力は当時とは比べものにならないくらい進化した。
多彩なスキルと武器、そして個性的な能力……。
今回は大勢のファイヴ所属覚者たちが集い、その実力を見せ合うイベントを用意した!
場所は五麟大学の地下闘技場。
内容はバトルロワイヤルだ!
全員で戦い最後に残る一人を決めるというイベントだ。
といってもあくまで模擬戦。リフレッシュして命数だって回復するぞ!
優勝者と準優勝者には賞品としてオーダーメイドの神具をプレゼントしよう!
みんな、ふるって参加してくれ!
皆、バトってるか!?
第一回バトルロワイヤルが行なわれてからもう一年。皆の実力は当時とは比べものにならないくらい進化した。
多彩なスキルと武器、そして個性的な能力……。
今回は大勢のファイヴ所属覚者たちが集い、その実力を見せ合うイベントを用意した!
場所は五麟大学の地下闘技場。
内容はバトルロワイヤルだ!
全員で戦い最後に残る一人を決めるというイベントだ。
といってもあくまで模擬戦。リフレッシュして命数だって回復するぞ!
優勝者と準優勝者には賞品としてオーダーメイドの神具をプレゼントしよう!
みんな、ふるって参加してくれ!

■シナリオ詳細
■成功条件
1.バトルロワイヤルに選手として参加する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
五麟大学の地下に作られた闘技場で行なわれる模擬戦試合です。
途中離脱や途中参加は不可。最後の一人になるまで戦います。
このシナリオではセミオートルールと模擬戦ルールが適用されます。
・セミオートルール
キャラクターはその場において適切なスキルとポジショニングを自動で使用します。
そのためプレイングに細かい戦闘アルゴリズムを書く必要がありません。
プレイングに使用したいスキル、ないしは特別に愛着のある装備を書き込むことで指向性をもたせることができます。
また、バトルスタイルへの拘りや武器の拘りをプレイングに書くことで、乱数判定を上方補正できます。
・模擬戦ルール
命数を使用せず、戦闘不能になったらリタイア扱いとなります。
そのため重軽傷を負うこと無く、命数減少も起きません。
●優勝賞品
今大会の優勝者と準優勝者にはスーパー公務員アタリマンから専用武器をプレゼントします。アタリマンの自腹で。
EXプレイングにベースアイテム、名前(希望があれば)、設定(希望があれば)を書き込んでください。
希望がない場合は研究室の人たちが勝手に考えて作りますので、『おまかせ』と書いて頂いても結構です。
●その他補足事項
・チームを組みたいPCや特に戦いたいがいる場合はフルネームとIDを『ユアワ・ナビ子(nCL2000122)』のようにプレイング冒頭に記入してください。記入がないとはぐれるおそれがあります。
・裏方や観客の枠はありません。そういった場合は白紙扱いになるおそれがあります。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
32/∞
32/∞
公開日
2016年10月26日
2016年10月26日
■メイン参加者 32人■

●変わりゆく戦場風景
「みんなを守るためには、立ち続ける力が要る!」
「壊して超えて、変えてやりたいものがあるんだ」
栗落花 渚(CL2001360)の放った無数の注射器が、葦原 赤貴(CL2001019)の刀一薙ぎによって打ち砕かれる。
今回も始まった五麟大学考地下闘技場でのバトルロワイヤル。
回を重ねるごとに新しい戦法や戦術が生まれ、自らの最適化を図る彼らのスタイルもまた先鋭化を進めていく。
今回際だって見えたのは『同系統のぶつかり』であった。
苦手分野を避けたり得意な敵を探ったりしていくうち、体術使いが同じ体術使いと衝突し、防御特化型が同じ特化型とぶつかるなどといった現象が起き始め、戦場は5~6ブロックに分かれて展開するようになった。
勿論バトルロワイヤル形式になると必ず現われる相手集団から離れてつぶし合いを待つスタイルも未だ健在。そしてつぶし合いを待とうにも逃げ隠れする場所はないのでガンガン攻めるスタイルの相手に食いつかれるパターンもまた健在である。
ということで、今回はそんなブロック別れしたエリアのほぼ中央。
なんやかんやでぶつかり合ってしまった人々から中継したい。
「今回も、勉強させて頂きます」
トンファーを防御型に構える松原・華怜(CL2000441)。
渚の後方をとると、格段にレベルアップした後ろ回し蹴りを繰り出した。
速度と熱で靴底から炎があがる華怜の得意技、のさらなる進化版である。
他の相手に集中していた渚は側頭部直撃。
転がりながらもメタルケースを開き、身体全体のバネをつかって華怜へ最接近。三本ほどの注射器を一気に突きだした。
それをトンファーによる払い上げで回避。膝蹴りに持ち込む。
心臓部を直撃した筈だが、硬すぎる手応え。反撃を警戒して反射的に飛び退――こうとした所へ赤貴が強引にぶつかってきた。
刀を担いだ状態からのショルダータックル。俗に言う体当たり斬りである。
「力をよこせ、赫者逸刀!」
強引に振り払うかの如く、担いだ刀をスイング。刀に込められたエネルギーが波のように放たれ、華怜と渚を同時に吹き飛ばした。
そんな赤貴のすぐ後ろをとる深緋・久作(CL2001453)。
挟むように反対側をとるラーラ・ビスコッティ(CL2001080)。
挟まれた。と言うより、盾にされた。
まずいと思う暇も無く久作は射撃を加えながら赤貴との距離をつめにかかる。一方でラーラは魔導書を開いて魔方陣を小さく圧縮した直列配置。槍のように頭上へ浮かべると、おなじみのおまじないを唱えた。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を。イオ・ブルチャーレ!」
貫通でも列でもなく全体攻撃。炎の波が赤貴を中心に全体へ広がり、久作をも包み込んでいく。
が、次の瞬間に現われたのは頭上たかくに跳躍する久作の影であった。
大上段からカトラスを振り下ろし、ラーラを切り捨てる。
振り向くと、刀に炎を纏わせた坂上 懐良(CL2000523)が突撃してくる所だった。
振り向きざまにカトラスで防御。
ぶつかる刃。膝を叩き込もうとした所で、身をひねって足払いをかけてくる。久作の身体が地面に転がりそうになって、急速にバランスを取り直す。
カウンターベースの術体スイッチングタイプ。なかなかに相手が悪い。
それに。
「戦略と戦術のバリエーションこそオレの武器。そして素敵な女の子の情報をゲットして回るのが、オレの生き様だぜ! フッフゥー!」
苦手なテンションだ。
●最強の盾で殴るなら、矛盾は生じない
大量に倒れていた。
惨劇の場というわけではない。誰かの放ったスーパーねむねむ空間によって、回避の弱い者から次々にぶっ倒れていったのだ。
戦場ではこういう奴ほど狙われるが、今回はバトルロワイヤル。厄介な相手から狙っていこうという趣旨の参加者が多かったおかげで割と放って置かれているねむねむさんたちである。
そんな中で、橡・槐(CL2000732)がぱちりと片目を開けた。
「ふふふ、陳腐化した戦法こそ足下をすくうのです」
死んだふりならぬ眠ったふりである。このまま敵をやり過ごして終盤のトップ争いに食い込むのが狙いだ……が……。
自らにかかる影。
本能的に聞きを察し、槐はその場から飛び退いた。
ズドン、という音と共にシールドブーメランが地面に突き刺さった。
「もう私にBS責めは通じません」
引き抜くは納屋 タヱ子(CL2000019)。物理防御教の教祖である。嘘である。ラージシールド二枚持ちで味方ガードしまくれば大体の敵には勝てるやん戦法をファイヴへ積極的に持ち込んだ盾の有名人である。
「この感じ、覚えがありますね」
「うーん、あれ以来トップ争いを逃してますからねえ。そろそろ戦車装甲が欲しいところ」
なんだかんだで防御型同士の争いとなった――が、そこへ。
「その勝負、俺が引き受けたぁ!」
佐戸・悟(CL2001371)が二人の間に割り込み、仁王立ちした。
腹に巻き付けたラージシールド装甲と、腕に巻き付けたスモールシールド装甲、そして殻の纏ったドMの空気が槐とタヱ子をどん引きさせた。
「どうした! 俺のドMハートを燃やしてみろ! 激しく責めてこい!」
両手でカモンカモンする悟を簡単に責められる者は居ない。そういうつもりでやってない。
そこへ更に飛び込んできたのは、二刀流の獅子王 飛馬(CL2001466)である。
この前知人に『盾を刀って言い張る人を見たんだけど』と言われて『それは長細い鉄板だよ』と教えてあげたことが記憶に新しい飛馬君である。
「俺にとってこれは修行。誰でもいい、とにかくつえー奴と戦わせろ!」
槐は乱戦を避けるべく牽制射撃をしながらバックダッシュ。
それを刀でがしがし弾いて距離とつめにかかる飛馬。
ドロップキックを仕掛ける悟と、それを盾でフルガードするタヱ子。
相手が鉄壁過ぎて泥沼化確実の乱戦具合である。
そして、泥沼と言えばこの人。(言葉を選んでおります)
「今日こそ勝って、リョージを振り向かせるのデース!」
軽く血の涙を流したリーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)が突っ込んできた。
物理防御に拘るタヱ子と異なりリーネは物特バランス防御型。物理防御550オーバーのタヱ子のインパクトに対し、総合防御力で彼女に匹敵しているのだ。
それも最大防御に四ターン要する彼らに対して半分の手数で完了させている。地味に蒼炎の導のかけ直しターンがネックになっている飛馬やタヱ子をしのぐ可能性を秘めているニュースタイルディフェンダーなのだ。当然相当無理もしているが。
「これで天下をとって見せマスネ! あの死兆星が落ちる前にィ!」
●バトルは本来楽しむものだ!
「さーて今回はどんな勝負になるや――らっ?」
榊原 時雨(CL2000418)は背後から飛んできたエアブリットをのけぞり回避。
振り向くと、楠瀬 ことこ(CL2000498)がきゅぴんとしたポーズで立っていた。一応言っておくとタッグ相手である。
「あれー? 今回はほっぺかすらなかった!」
「流石に覚えたわ!」
「いつもの遊びもいいんだけどさ? 一度は正面からーなんて」
ぎゅいんとギターをひと弾きして、ことこは薄く笑った。
「思ったり」
「ええやないの……」
槍を鋭く構える時雨。
「じゃあことこが勝った場合のみ時雨ぴょんはことこのおもちゃになりまーす!」
「させるか! うちが勝ったらスイパラおごらせたる!」
エアブリット全力乱射。
対して正面から空圧ごとぶち抜いて突撃する時雨。
友情(?)のガチンコバトルが今始まった。
ちなみに勝負は、耐久力の差で時雨が勝った。ことこはめっちゃ拗ねた。
肩で荒い息をする緒形 逝(CL2000156)。
対して子供が持つには大きすぎる妖刀を垂直に構えて立つ工藤・奏空(CL2000955)。
「いざ対峙すると、なんだろう……この緊張感」
「――!」
逝は背を丸めて荒く呼吸する状態から、たった一瞬で奏空の眼前に急接近していた。
腕を振り込んでくる。
咄嗟に飛び退こうとするが、足首を掴まれる。
振り上げられ、地面に叩き付けられたかと思いきや、高く放り上げられた。
「おっちゃん……!」
奏空は願いを込めて刀を振り込む。
防御はしない。あえて斬られつつ、逝は奏空の肩にヘッドバッドを打ち付けた。
いや、何かに失敗してヘッドバッドに至ったようだ。
地面を転がる奏空。
手から離れて飛んだ刀に再び飛びつくと、逝にしっかりと向き合うように構える。
「俺のこと、少しは食べてもいいからさ。だから……おっちゃんを奪わないで、悪食!」
時任・千陽(CL2000014)はナイフを逆手に構え、距離を詰めて連続で打ち出していく。
対する天堂・フィオナ(CL2001421)はロングソードの間合いより内側に入られないようにバックスウェーをかけながら、気合いで千陽を打ち払っていた。
「て、手強い……!」
フィオナが感じたのは千陽の隙のなさである。何か一つに特化した覚者はファイヴ内外問わず多いが、千陽のようにバランスを極めたファイターは少ない。
効率を突き詰めて突き詰めて、自分を磨き上げた結果きわめて球に近い形となった石である。
どう打ってもかならず対応してくるのだ。
それはステータス面にも現われていて、高い反応速度から繰り出す攻めの戦法はフィオナの全速力をもってしてようやく対抗できるほどである。
「負けない……!」
フィオナの足と後ろ髪が青く輝き、マントのように広く靡く。
その勢いを、千陽は脇腹への膝蹴りひとつで相殺。ナイフの柄でフィオナを殴り飛ばす。
「時任さん、やっぱつえーな!」
振り返ると、鹿ノ島・遥(CL2000227)が空手の構えをとっていた。
「いえ、これも役目ですので」
「役目ね……」
遥はテンポ良く距離を詰めると、拳を思い切り叩き込んだ。
「知ってるか、時任さん。バトルってほんとは、楽しいもんなんだぜ!」
拳の距離で打ち、払い、更に打ち、息もつかせず繰り広げられる攻防の高速パズルゲーム。考えていないようでいて、遥は組み手となると途端に天才的になる。
いや、逆か。
考えないから、天才なのだ。
千陽の脳裏にチリチリとなにかが沸いた。学生時代にスポーツで遊んだ時の高揚感に近い何か。それにギリギリの緊張感を足したカクテルが脳内にしみこんでいく。
フィオナが青い光と共に飛び込んでくる。
これだ。
バトルは本来……。
●二人の力は無限大
柳 燐花(CL2000695)が残像を生んだ。
四つに分裂した燐花の影を目で追うこと無く、成瀬 翔(CL2000063)はスマホアプリを操作。
デジタル呪符を表示させると、圧縮音声で術を代理詠唱した。
「そこだ!」
燐花の鼻先に突き出されるスマートホン。解き放たれる電撃の竜。
対して翔は全身十箇所が同時に切り裂かれたように血が噴き出した。
「うおっこれってスリリング……!」
「ほら翔、がんばれー」
麻弓 紡(CL2000623)がクーンシルッピをくるくるやって、翔の傷口を瞬間再生させていく。
「さんきゅ!」
「おー」
パチンとハイタッチする翔と紡。
対して燐花はバク転を繰り返して引き下がり、蘇我島 恭司(CL2001015)に背中をぽんと叩かれた。目線だけで恭司を見る。
「こういう催し物に参加されるお方だとは思っておりませんでした」
「まあ、確かにねえ」
いつものような、ソフトな笑い方だ。
「それにしても、やっぱり燐ちゃんは早いねぇ。僕ももう少し速度を意識しようかな」
「私の速度は、お爺様が叩き込んだ基礎がありますから」
力を速さで補う燐花の戦法は、ここへきて鋭い刃へと変わりつつある。
より硬くて重い武器を探していたアステカ民族がカミソリを見つけたようなものだ。
「なるほどねえ」
神具処理のされていない拳銃に術式を付与して連射する恭司。
対して間に割り込んだ紡が弾丸をキャッチ。スリングショットにひっかけると、雷撃と共に発射した。
そんな場へと連続ロンダートからひねりを加えたムーンサルトジャンプで飛び込んでくる魂行 輪廻(CL2000534)。
服装が服装なだけに大変なことになりやしないかと翔は硬直した。
した瞬間を狙って刀を振り込む輪廻。切り込みからわざと柄を話して相手の後ろに回り込んで打撃を加えつつ刀をキャッチという……剣術というよりもはや複合新体操のような動きである。セラミックリボンなど武器にしたらさぞかし絵になるだろう。
「おい輪廻、いくらなんでも危なっかしすぎるぞ。少しは慎みをもて」
周囲を撫でるように激しい雷撃を解き放つ天明 両慈(CL2000603)。
「あら、慎みってこれのことかしらねん♪」
片足をあられもなく上げてぴたりと顔につける輪廻。
どういう理屈かみえそうで見えない。
「女の子の身体は武器になるのよん。目を奪われるようじゃまだまだねん♪」
「地味に女性にも効果があるのが恐ろしい所です」
などと言いながら、ゆだんなく鎖鎌を放つ七海 灯(CL2000579)。
両慈が間に割り込み、鎖を腕に巻き付けて拮抗させる。
そこへ高速飛行で頭上をとった三島 椿(CL2000061)が弓を矢につがえて発射。矢が水の竜に変わり、両慈たちをたちまち飲み込んでいく。そこへ両慈の電撃や翔の電撃、さらには恭司の手製爆弾まで加わって視界が真っ白に染まっていく。
激流を突き抜け、加速する灯。
同じくジグザグな残像を作って加速する燐花。
さらには甘い香りを振りまきながら彼女たちの後ろに回り込む輪廻。
戦いは激しさを極めていく。
紡の放ったパチンコ玉を紙一重でかわし、椿が矢を放つ。それを空中でへし折って駆け抜ける燐花。
入り乱れる戦場の中で、椿は鋭く状況を俯瞰していた。
「強くなりたい」
想いが言葉になってあふれ出ていく。
「負けたくない……!」
椿は大きく高く飛翔すると、矢の束を一斉に弓につがえた。
●肉体こそが最強の武器
刀を抜いて、構え、名目する焔陰 凛(CL2000119)。
周囲を駆け回る御影・きせき(CL2001110)と御白 小唄(CL2001173)が、時折ぶつかり合いながら凛の隙を狙っている。
背後をとったきせきが、目をぎらりと光らせた。
「えーい!」
「甘いわ!」
振り込みコンマ五秒前に身を翻し、きせきの脇腹を斬ってすり抜けていく。
返す刀で連続斬り。
しかし器用に別の刀で防御したきせきは、さらなる斬撃を縦横無尽にはねのけていく。
まるで親に遊んで貰っている子供のような無邪気さだ。
無邪気さがゆえに隙が無く、童心ゆえに殺気がない。気配を読んで後の先をとる凛のスタイルにはかなり相性が悪い相手だ。とはいえこの世は弱肉強食。魑魅魍魎の跋扈する魔境である。
これまで人ならざる化け物だの巨人だのドラゴンだのをぶった切ってきた凛にとって、苦手分野は乗り越えねばならない。
対してきせきは本当に楽しそうだ。
「僕はこういうの、一番むいてるかも! もっといくよー!」
「そこです!」
背後をとった小唄がパンチできせきを吹き飛ばすと、返す刀で凛に殴りかかる。
打ち合いの途中で間合いをとられた。
凛は急いで飛び退き、体勢を整える。
「これは、全力出さんと勝負ができんわ……!」
一方で、明石 ミュエル(CL2000172)はある挑戦をしていた。
「体術使いと、戦ったら……どうなるのかな」
「どうなる、とは」
田中 倖(CL2001407)が眼鏡を中指で押し上げながら歩み寄ってくる。
レンズの反射と手によって隠れた表情は、ミュエルに言いしれぬ不安感をよぎらせる。
まずは捕縛蔓。地面から大量のツルを生やすが、倖は即座にジャンプ。
ミュエルへと一気に距離を詰めてくる。
対してミュエルはポーチからサシェを一個引き抜いて投擲。
爆発した花の香りに耐えながら、倖はミュエルに反転ラビットキックを叩き込んだ。
強制的に身体のバランスを崩され、仰向けに転倒するミュエル。
そのうえにマウントをとって、倖は再び眼鏡のレンズを光らせた。
途中まで協力するフリをして急に裏切るという戦術で勝ち残ってきた倖である。
「僕は決して……『いい人』ではないのですよ」
拳を振り上げ――たその瞬間、横合いから繰り出された紅崎・誡女(CL2000750)のパンチ。
開発テスト用を実戦用に組み替えたバニラカラーのショットガントレットが、倖の頬に激突した。
きりもみ回転して飛んでいく倖。
当然誡女はミュエルを助けたわけではない。
両腕にショットガントレットを装着した誡女の、次なる標的はミュエルである。
ミュエルは自分を中心にサシェをわざとはじけさせ、誡女はそれをガードしながら飛び退く。
次なるサシェをオーバースローで投げつけるミュエル。それをパンチで迎撃する誡女。
炸裂した棘散舞とショットチップがぶつかり合い、誡女の身体に防ぎきれなかったトゲがざくざくと刺さっていく。
「なるほど……」
誡女はうっすらと笑った。
味方と戦うというのは、なかなかどうして楽しめる。
●頂上決戦!
それぞれの苛烈なぶつかり合いの果てに、ごく僅かな参加者だけが勝ち残っていく。
「絶対に、勝って……ふりむかせて……」
頭からだらだらと血を流しながら、気合いだけでずかずかと歩くリーネ。
「絶対に、負けない……彼女の、隣に……」
傷ついた翼を畳み、弓をしっかりと構える椿。
リーネの目が凶悪に光り、椿めがけて走り出す。
空圧を伴った矢がリーネの肩を貫く。しかし止まらない。
激しい水流がリーネを飲み込む。しかし止まらない。
椿は無数の矢をいっきにつがえ、引き打ちの限りを尽くした。
が、止まらない。
眼前に迫るリーネ。
振り上げた拳が椿をとらえかけたその瞬間、横合いから小唄が飛びかかってきた。
「わるいけど、手加減なしだよ!」
小唄のボディブローがリーネの脇腹にめり込む。スローになった世界の中で小唄は身を高速で翻して回し蹴り。リーネはもんどりうって吹き飛び、バウンドの果てに気を失った。
次は自分だ。本能的に察した椿は弓をあえて手放し、小唄の胸に手のひらを押し当てた。
引き打ちなど意味が無い。逃げていては勝ち残れない。
『あの場所』に立てない。
「退かない!」
最大術式が発動。
と同時に小唄の拳に力が漲る。
零距離で全力と全力がぶつかり合う。
「フッ……ついに、ここまで勝ち残っちまったか」
懐良は、がらんとした戦場の中心に立っていた。
煙や砂埃であたりがみえなくなっているが、そろそろ勝ち残った誰かが訪れる頃だ。
近づく足音に、前髪をふぁさぁってかき上げながら振り返る。
「さあ、俺と頂上決戦という名のデートをしてくれるのは、誰だ?」
「俺だぜ!」
煙を払い、遥がビッと親指を立てた。
懐良はうつ伏せに倒れた。
きをつけ姿勢で倒れた。
そのまま起き上がらなかった。
「お、おい、露骨にやる気なくすなよ……!」
「ここは椿ちゃんのところじゃーん。親友の横に立つために努力を重ねた美女が自らの形を手に入れるために変幻自在の戦法をもつ俺に勝利して見事勝ち取る感動の展開じゃーん」
「えー、でも小唄とぶつかり合ってギリギリのところだったぜ。俺が両方倒したけど」
「たおすなよー」
「倒すよ!」
ドン、と足を踏みしめる。大地が鳴り、空気が動く。
彼をまく煙が螺旋を描いて立ち上っていくのが、懐良にも見えた。
冗談言ってる場合じゃねえ。ここで引いたら男じゃない。
「いいから、やろうぜ!」
「……」
無言で立ち上がる懐良。
刀を片手で、半身に構えて突き出すように構える。剣道にこんな構えはない、フェンシングの構えだ。
遥の最大リーチが腕と足までしかないことを考慮してのアドバンテージである。
「戦いは始まる前から勝敗が決しいらしいぜ。十分な準備した奴が勝つ」
「戦いは一から終わりまでが楽しいらしいぜ。充分に味わった奴が勝つ」
「フッ……」
「はは……」
二人の考えは相容れない。
相容れないが、同じことだった。
真正面から突撃する遥。
懐良が突きを繰り出すが、それを紙一重で回避。しかし高速で引いた懐良がさらなる突きを心臓部めがけて繰り出していく。
それが、腕の回転によって払われた。
払われたそばから懐良はフォームチェンジ。相手の側面に回転スウェーで回り込んで、両手持ちのフルスイングを繰り出す。
中段受けでガード。腕に巻いた帯に彼のエネルギーが伝わり、刀が弾かれる。
兼良は一旦飛び退き、距離をとった。
戦いとは。
倒せば勝ちのゲームではない。
そんな『つまらない』ものは、地球をかち割って終わりである。
楽しんで勝つ。
優位をとって勝つ。
自分の中に設定した折れない芯をぶつけ合い、振り抜いた時にこそ真の勝利が訪れるのだ。
「あーあ、女の子の汗、翻るスカート、高揚する頬。最後に見たかったよなあ」
「よく言うぜ」
遥は拳を引き、全力を込めていく。
対する懐良もまた、握る刀に激しい炎を纏わせていた。
「お前も、楽しんでるじゃねーか」
「――!」
折れない芯の勝負なれば。
遥の真の勝利とは、相手を自らの土俵に引きずりこみ、『楽しさ』の中で勝負をつけることなのだ。
「こいつ……!」
両者、走る。
衝突。
爆発。
大炎上の末に。
「無敵じゃねえか」
懐良はがくりと膝を突き、倒れた。
お互い楽しく戦えたなら。
勝っても負けても、人類みんな幸せだ。
拳をまっすぐに突き抜いた遥は、目をぱっと開いて笑った。
「よし、楽しかった!」
「みんなを守るためには、立ち続ける力が要る!」
「壊して超えて、変えてやりたいものがあるんだ」
栗落花 渚(CL2001360)の放った無数の注射器が、葦原 赤貴(CL2001019)の刀一薙ぎによって打ち砕かれる。
今回も始まった五麟大学考地下闘技場でのバトルロワイヤル。
回を重ねるごとに新しい戦法や戦術が生まれ、自らの最適化を図る彼らのスタイルもまた先鋭化を進めていく。
今回際だって見えたのは『同系統のぶつかり』であった。
苦手分野を避けたり得意な敵を探ったりしていくうち、体術使いが同じ体術使いと衝突し、防御特化型が同じ特化型とぶつかるなどといった現象が起き始め、戦場は5~6ブロックに分かれて展開するようになった。
勿論バトルロワイヤル形式になると必ず現われる相手集団から離れてつぶし合いを待つスタイルも未だ健在。そしてつぶし合いを待とうにも逃げ隠れする場所はないのでガンガン攻めるスタイルの相手に食いつかれるパターンもまた健在である。
ということで、今回はそんなブロック別れしたエリアのほぼ中央。
なんやかんやでぶつかり合ってしまった人々から中継したい。
「今回も、勉強させて頂きます」
トンファーを防御型に構える松原・華怜(CL2000441)。
渚の後方をとると、格段にレベルアップした後ろ回し蹴りを繰り出した。
速度と熱で靴底から炎があがる華怜の得意技、のさらなる進化版である。
他の相手に集中していた渚は側頭部直撃。
転がりながらもメタルケースを開き、身体全体のバネをつかって華怜へ最接近。三本ほどの注射器を一気に突きだした。
それをトンファーによる払い上げで回避。膝蹴りに持ち込む。
心臓部を直撃した筈だが、硬すぎる手応え。反撃を警戒して反射的に飛び退――こうとした所へ赤貴が強引にぶつかってきた。
刀を担いだ状態からのショルダータックル。俗に言う体当たり斬りである。
「力をよこせ、赫者逸刀!」
強引に振り払うかの如く、担いだ刀をスイング。刀に込められたエネルギーが波のように放たれ、華怜と渚を同時に吹き飛ばした。
そんな赤貴のすぐ後ろをとる深緋・久作(CL2001453)。
挟むように反対側をとるラーラ・ビスコッティ(CL2001080)。
挟まれた。と言うより、盾にされた。
まずいと思う暇も無く久作は射撃を加えながら赤貴との距離をつめにかかる。一方でラーラは魔導書を開いて魔方陣を小さく圧縮した直列配置。槍のように頭上へ浮かべると、おなじみのおまじないを唱えた。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を。イオ・ブルチャーレ!」
貫通でも列でもなく全体攻撃。炎の波が赤貴を中心に全体へ広がり、久作をも包み込んでいく。
が、次の瞬間に現われたのは頭上たかくに跳躍する久作の影であった。
大上段からカトラスを振り下ろし、ラーラを切り捨てる。
振り向くと、刀に炎を纏わせた坂上 懐良(CL2000523)が突撃してくる所だった。
振り向きざまにカトラスで防御。
ぶつかる刃。膝を叩き込もうとした所で、身をひねって足払いをかけてくる。久作の身体が地面に転がりそうになって、急速にバランスを取り直す。
カウンターベースの術体スイッチングタイプ。なかなかに相手が悪い。
それに。
「戦略と戦術のバリエーションこそオレの武器。そして素敵な女の子の情報をゲットして回るのが、オレの生き様だぜ! フッフゥー!」
苦手なテンションだ。
●最強の盾で殴るなら、矛盾は生じない
大量に倒れていた。
惨劇の場というわけではない。誰かの放ったスーパーねむねむ空間によって、回避の弱い者から次々にぶっ倒れていったのだ。
戦場ではこういう奴ほど狙われるが、今回はバトルロワイヤル。厄介な相手から狙っていこうという趣旨の参加者が多かったおかげで割と放って置かれているねむねむさんたちである。
そんな中で、橡・槐(CL2000732)がぱちりと片目を開けた。
「ふふふ、陳腐化した戦法こそ足下をすくうのです」
死んだふりならぬ眠ったふりである。このまま敵をやり過ごして終盤のトップ争いに食い込むのが狙いだ……が……。
自らにかかる影。
本能的に聞きを察し、槐はその場から飛び退いた。
ズドン、という音と共にシールドブーメランが地面に突き刺さった。
「もう私にBS責めは通じません」
引き抜くは納屋 タヱ子(CL2000019)。物理防御教の教祖である。嘘である。ラージシールド二枚持ちで味方ガードしまくれば大体の敵には勝てるやん戦法をファイヴへ積極的に持ち込んだ盾の有名人である。
「この感じ、覚えがありますね」
「うーん、あれ以来トップ争いを逃してますからねえ。そろそろ戦車装甲が欲しいところ」
なんだかんだで防御型同士の争いとなった――が、そこへ。
「その勝負、俺が引き受けたぁ!」
佐戸・悟(CL2001371)が二人の間に割り込み、仁王立ちした。
腹に巻き付けたラージシールド装甲と、腕に巻き付けたスモールシールド装甲、そして殻の纏ったドMの空気が槐とタヱ子をどん引きさせた。
「どうした! 俺のドMハートを燃やしてみろ! 激しく責めてこい!」
両手でカモンカモンする悟を簡単に責められる者は居ない。そういうつもりでやってない。
そこへ更に飛び込んできたのは、二刀流の獅子王 飛馬(CL2001466)である。
この前知人に『盾を刀って言い張る人を見たんだけど』と言われて『それは長細い鉄板だよ』と教えてあげたことが記憶に新しい飛馬君である。
「俺にとってこれは修行。誰でもいい、とにかくつえー奴と戦わせろ!」
槐は乱戦を避けるべく牽制射撃をしながらバックダッシュ。
それを刀でがしがし弾いて距離とつめにかかる飛馬。
ドロップキックを仕掛ける悟と、それを盾でフルガードするタヱ子。
相手が鉄壁過ぎて泥沼化確実の乱戦具合である。
そして、泥沼と言えばこの人。(言葉を選んでおります)
「今日こそ勝って、リョージを振り向かせるのデース!」
軽く血の涙を流したリーネ・ブルツェンスカ(CL2000862)が突っ込んできた。
物理防御に拘るタヱ子と異なりリーネは物特バランス防御型。物理防御550オーバーのタヱ子のインパクトに対し、総合防御力で彼女に匹敵しているのだ。
それも最大防御に四ターン要する彼らに対して半分の手数で完了させている。地味に蒼炎の導のかけ直しターンがネックになっている飛馬やタヱ子をしのぐ可能性を秘めているニュースタイルディフェンダーなのだ。当然相当無理もしているが。
「これで天下をとって見せマスネ! あの死兆星が落ちる前にィ!」
●バトルは本来楽しむものだ!
「さーて今回はどんな勝負になるや――らっ?」
榊原 時雨(CL2000418)は背後から飛んできたエアブリットをのけぞり回避。
振り向くと、楠瀬 ことこ(CL2000498)がきゅぴんとしたポーズで立っていた。一応言っておくとタッグ相手である。
「あれー? 今回はほっぺかすらなかった!」
「流石に覚えたわ!」
「いつもの遊びもいいんだけどさ? 一度は正面からーなんて」
ぎゅいんとギターをひと弾きして、ことこは薄く笑った。
「思ったり」
「ええやないの……」
槍を鋭く構える時雨。
「じゃあことこが勝った場合のみ時雨ぴょんはことこのおもちゃになりまーす!」
「させるか! うちが勝ったらスイパラおごらせたる!」
エアブリット全力乱射。
対して正面から空圧ごとぶち抜いて突撃する時雨。
友情(?)のガチンコバトルが今始まった。
ちなみに勝負は、耐久力の差で時雨が勝った。ことこはめっちゃ拗ねた。
肩で荒い息をする緒形 逝(CL2000156)。
対して子供が持つには大きすぎる妖刀を垂直に構えて立つ工藤・奏空(CL2000955)。
「いざ対峙すると、なんだろう……この緊張感」
「――!」
逝は背を丸めて荒く呼吸する状態から、たった一瞬で奏空の眼前に急接近していた。
腕を振り込んでくる。
咄嗟に飛び退こうとするが、足首を掴まれる。
振り上げられ、地面に叩き付けられたかと思いきや、高く放り上げられた。
「おっちゃん……!」
奏空は願いを込めて刀を振り込む。
防御はしない。あえて斬られつつ、逝は奏空の肩にヘッドバッドを打ち付けた。
いや、何かに失敗してヘッドバッドに至ったようだ。
地面を転がる奏空。
手から離れて飛んだ刀に再び飛びつくと、逝にしっかりと向き合うように構える。
「俺のこと、少しは食べてもいいからさ。だから……おっちゃんを奪わないで、悪食!」
時任・千陽(CL2000014)はナイフを逆手に構え、距離を詰めて連続で打ち出していく。
対する天堂・フィオナ(CL2001421)はロングソードの間合いより内側に入られないようにバックスウェーをかけながら、気合いで千陽を打ち払っていた。
「て、手強い……!」
フィオナが感じたのは千陽の隙のなさである。何か一つに特化した覚者はファイヴ内外問わず多いが、千陽のようにバランスを極めたファイターは少ない。
効率を突き詰めて突き詰めて、自分を磨き上げた結果きわめて球に近い形となった石である。
どう打ってもかならず対応してくるのだ。
それはステータス面にも現われていて、高い反応速度から繰り出す攻めの戦法はフィオナの全速力をもってしてようやく対抗できるほどである。
「負けない……!」
フィオナの足と後ろ髪が青く輝き、マントのように広く靡く。
その勢いを、千陽は脇腹への膝蹴りひとつで相殺。ナイフの柄でフィオナを殴り飛ばす。
「時任さん、やっぱつえーな!」
振り返ると、鹿ノ島・遥(CL2000227)が空手の構えをとっていた。
「いえ、これも役目ですので」
「役目ね……」
遥はテンポ良く距離を詰めると、拳を思い切り叩き込んだ。
「知ってるか、時任さん。バトルってほんとは、楽しいもんなんだぜ!」
拳の距離で打ち、払い、更に打ち、息もつかせず繰り広げられる攻防の高速パズルゲーム。考えていないようでいて、遥は組み手となると途端に天才的になる。
いや、逆か。
考えないから、天才なのだ。
千陽の脳裏にチリチリとなにかが沸いた。学生時代にスポーツで遊んだ時の高揚感に近い何か。それにギリギリの緊張感を足したカクテルが脳内にしみこんでいく。
フィオナが青い光と共に飛び込んでくる。
これだ。
バトルは本来……。
●二人の力は無限大
柳 燐花(CL2000695)が残像を生んだ。
四つに分裂した燐花の影を目で追うこと無く、成瀬 翔(CL2000063)はスマホアプリを操作。
デジタル呪符を表示させると、圧縮音声で術を代理詠唱した。
「そこだ!」
燐花の鼻先に突き出されるスマートホン。解き放たれる電撃の竜。
対して翔は全身十箇所が同時に切り裂かれたように血が噴き出した。
「うおっこれってスリリング……!」
「ほら翔、がんばれー」
麻弓 紡(CL2000623)がクーンシルッピをくるくるやって、翔の傷口を瞬間再生させていく。
「さんきゅ!」
「おー」
パチンとハイタッチする翔と紡。
対して燐花はバク転を繰り返して引き下がり、蘇我島 恭司(CL2001015)に背中をぽんと叩かれた。目線だけで恭司を見る。
「こういう催し物に参加されるお方だとは思っておりませんでした」
「まあ、確かにねえ」
いつものような、ソフトな笑い方だ。
「それにしても、やっぱり燐ちゃんは早いねぇ。僕ももう少し速度を意識しようかな」
「私の速度は、お爺様が叩き込んだ基礎がありますから」
力を速さで補う燐花の戦法は、ここへきて鋭い刃へと変わりつつある。
より硬くて重い武器を探していたアステカ民族がカミソリを見つけたようなものだ。
「なるほどねえ」
神具処理のされていない拳銃に術式を付与して連射する恭司。
対して間に割り込んだ紡が弾丸をキャッチ。スリングショットにひっかけると、雷撃と共に発射した。
そんな場へと連続ロンダートからひねりを加えたムーンサルトジャンプで飛び込んでくる魂行 輪廻(CL2000534)。
服装が服装なだけに大変なことになりやしないかと翔は硬直した。
した瞬間を狙って刀を振り込む輪廻。切り込みからわざと柄を話して相手の後ろに回り込んで打撃を加えつつ刀をキャッチという……剣術というよりもはや複合新体操のような動きである。セラミックリボンなど武器にしたらさぞかし絵になるだろう。
「おい輪廻、いくらなんでも危なっかしすぎるぞ。少しは慎みをもて」
周囲を撫でるように激しい雷撃を解き放つ天明 両慈(CL2000603)。
「あら、慎みってこれのことかしらねん♪」
片足をあられもなく上げてぴたりと顔につける輪廻。
どういう理屈かみえそうで見えない。
「女の子の身体は武器になるのよん。目を奪われるようじゃまだまだねん♪」
「地味に女性にも効果があるのが恐ろしい所です」
などと言いながら、ゆだんなく鎖鎌を放つ七海 灯(CL2000579)。
両慈が間に割り込み、鎖を腕に巻き付けて拮抗させる。
そこへ高速飛行で頭上をとった三島 椿(CL2000061)が弓を矢につがえて発射。矢が水の竜に変わり、両慈たちをたちまち飲み込んでいく。そこへ両慈の電撃や翔の電撃、さらには恭司の手製爆弾まで加わって視界が真っ白に染まっていく。
激流を突き抜け、加速する灯。
同じくジグザグな残像を作って加速する燐花。
さらには甘い香りを振りまきながら彼女たちの後ろに回り込む輪廻。
戦いは激しさを極めていく。
紡の放ったパチンコ玉を紙一重でかわし、椿が矢を放つ。それを空中でへし折って駆け抜ける燐花。
入り乱れる戦場の中で、椿は鋭く状況を俯瞰していた。
「強くなりたい」
想いが言葉になってあふれ出ていく。
「負けたくない……!」
椿は大きく高く飛翔すると、矢の束を一斉に弓につがえた。
●肉体こそが最強の武器
刀を抜いて、構え、名目する焔陰 凛(CL2000119)。
周囲を駆け回る御影・きせき(CL2001110)と御白 小唄(CL2001173)が、時折ぶつかり合いながら凛の隙を狙っている。
背後をとったきせきが、目をぎらりと光らせた。
「えーい!」
「甘いわ!」
振り込みコンマ五秒前に身を翻し、きせきの脇腹を斬ってすり抜けていく。
返す刀で連続斬り。
しかし器用に別の刀で防御したきせきは、さらなる斬撃を縦横無尽にはねのけていく。
まるで親に遊んで貰っている子供のような無邪気さだ。
無邪気さがゆえに隙が無く、童心ゆえに殺気がない。気配を読んで後の先をとる凛のスタイルにはかなり相性が悪い相手だ。とはいえこの世は弱肉強食。魑魅魍魎の跋扈する魔境である。
これまで人ならざる化け物だの巨人だのドラゴンだのをぶった切ってきた凛にとって、苦手分野は乗り越えねばならない。
対してきせきは本当に楽しそうだ。
「僕はこういうの、一番むいてるかも! もっといくよー!」
「そこです!」
背後をとった小唄がパンチできせきを吹き飛ばすと、返す刀で凛に殴りかかる。
打ち合いの途中で間合いをとられた。
凛は急いで飛び退き、体勢を整える。
「これは、全力出さんと勝負ができんわ……!」
一方で、明石 ミュエル(CL2000172)はある挑戦をしていた。
「体術使いと、戦ったら……どうなるのかな」
「どうなる、とは」
田中 倖(CL2001407)が眼鏡を中指で押し上げながら歩み寄ってくる。
レンズの反射と手によって隠れた表情は、ミュエルに言いしれぬ不安感をよぎらせる。
まずは捕縛蔓。地面から大量のツルを生やすが、倖は即座にジャンプ。
ミュエルへと一気に距離を詰めてくる。
対してミュエルはポーチからサシェを一個引き抜いて投擲。
爆発した花の香りに耐えながら、倖はミュエルに反転ラビットキックを叩き込んだ。
強制的に身体のバランスを崩され、仰向けに転倒するミュエル。
そのうえにマウントをとって、倖は再び眼鏡のレンズを光らせた。
途中まで協力するフリをして急に裏切るという戦術で勝ち残ってきた倖である。
「僕は決して……『いい人』ではないのですよ」
拳を振り上げ――たその瞬間、横合いから繰り出された紅崎・誡女(CL2000750)のパンチ。
開発テスト用を実戦用に組み替えたバニラカラーのショットガントレットが、倖の頬に激突した。
きりもみ回転して飛んでいく倖。
当然誡女はミュエルを助けたわけではない。
両腕にショットガントレットを装着した誡女の、次なる標的はミュエルである。
ミュエルは自分を中心にサシェをわざとはじけさせ、誡女はそれをガードしながら飛び退く。
次なるサシェをオーバースローで投げつけるミュエル。それをパンチで迎撃する誡女。
炸裂した棘散舞とショットチップがぶつかり合い、誡女の身体に防ぎきれなかったトゲがざくざくと刺さっていく。
「なるほど……」
誡女はうっすらと笑った。
味方と戦うというのは、なかなかどうして楽しめる。
●頂上決戦!
それぞれの苛烈なぶつかり合いの果てに、ごく僅かな参加者だけが勝ち残っていく。
「絶対に、勝って……ふりむかせて……」
頭からだらだらと血を流しながら、気合いだけでずかずかと歩くリーネ。
「絶対に、負けない……彼女の、隣に……」
傷ついた翼を畳み、弓をしっかりと構える椿。
リーネの目が凶悪に光り、椿めがけて走り出す。
空圧を伴った矢がリーネの肩を貫く。しかし止まらない。
激しい水流がリーネを飲み込む。しかし止まらない。
椿は無数の矢をいっきにつがえ、引き打ちの限りを尽くした。
が、止まらない。
眼前に迫るリーネ。
振り上げた拳が椿をとらえかけたその瞬間、横合いから小唄が飛びかかってきた。
「わるいけど、手加減なしだよ!」
小唄のボディブローがリーネの脇腹にめり込む。スローになった世界の中で小唄は身を高速で翻して回し蹴り。リーネはもんどりうって吹き飛び、バウンドの果てに気を失った。
次は自分だ。本能的に察した椿は弓をあえて手放し、小唄の胸に手のひらを押し当てた。
引き打ちなど意味が無い。逃げていては勝ち残れない。
『あの場所』に立てない。
「退かない!」
最大術式が発動。
と同時に小唄の拳に力が漲る。
零距離で全力と全力がぶつかり合う。
「フッ……ついに、ここまで勝ち残っちまったか」
懐良は、がらんとした戦場の中心に立っていた。
煙や砂埃であたりがみえなくなっているが、そろそろ勝ち残った誰かが訪れる頃だ。
近づく足音に、前髪をふぁさぁってかき上げながら振り返る。
「さあ、俺と頂上決戦という名のデートをしてくれるのは、誰だ?」
「俺だぜ!」
煙を払い、遥がビッと親指を立てた。
懐良はうつ伏せに倒れた。
きをつけ姿勢で倒れた。
そのまま起き上がらなかった。
「お、おい、露骨にやる気なくすなよ……!」
「ここは椿ちゃんのところじゃーん。親友の横に立つために努力を重ねた美女が自らの形を手に入れるために変幻自在の戦法をもつ俺に勝利して見事勝ち取る感動の展開じゃーん」
「えー、でも小唄とぶつかり合ってギリギリのところだったぜ。俺が両方倒したけど」
「たおすなよー」
「倒すよ!」
ドン、と足を踏みしめる。大地が鳴り、空気が動く。
彼をまく煙が螺旋を描いて立ち上っていくのが、懐良にも見えた。
冗談言ってる場合じゃねえ。ここで引いたら男じゃない。
「いいから、やろうぜ!」
「……」
無言で立ち上がる懐良。
刀を片手で、半身に構えて突き出すように構える。剣道にこんな構えはない、フェンシングの構えだ。
遥の最大リーチが腕と足までしかないことを考慮してのアドバンテージである。
「戦いは始まる前から勝敗が決しいらしいぜ。十分な準備した奴が勝つ」
「戦いは一から終わりまでが楽しいらしいぜ。充分に味わった奴が勝つ」
「フッ……」
「はは……」
二人の考えは相容れない。
相容れないが、同じことだった。
真正面から突撃する遥。
懐良が突きを繰り出すが、それを紙一重で回避。しかし高速で引いた懐良がさらなる突きを心臓部めがけて繰り出していく。
それが、腕の回転によって払われた。
払われたそばから懐良はフォームチェンジ。相手の側面に回転スウェーで回り込んで、両手持ちのフルスイングを繰り出す。
中段受けでガード。腕に巻いた帯に彼のエネルギーが伝わり、刀が弾かれる。
兼良は一旦飛び退き、距離をとった。
戦いとは。
倒せば勝ちのゲームではない。
そんな『つまらない』ものは、地球をかち割って終わりである。
楽しんで勝つ。
優位をとって勝つ。
自分の中に設定した折れない芯をぶつけ合い、振り抜いた時にこそ真の勝利が訪れるのだ。
「あーあ、女の子の汗、翻るスカート、高揚する頬。最後に見たかったよなあ」
「よく言うぜ」
遥は拳を引き、全力を込めていく。
対する懐良もまた、握る刀に激しい炎を纏わせていた。
「お前も、楽しんでるじゃねーか」
「――!」
折れない芯の勝負なれば。
遥の真の勝利とは、相手を自らの土俵に引きずりこみ、『楽しさ』の中で勝負をつけることなのだ。
「こいつ……!」
両者、走る。
衝突。
爆発。
大炎上の末に。
「無敵じゃねえか」
懐良はがくりと膝を突き、倒れた。
お互い楽しく戦えたなら。
勝っても負けても、人類みんな幸せだ。
拳をまっすぐに突き抜いた遥は、目をぱっと開いて笑った。
「よし、楽しかった!」
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
優勝者、キャノシマ遥。
準優勝、軍師懐良。
二人にはファイヴ謹製専用武装が送られます。
そして惜しくも優勝を逃したリーネ、小唄、椿の三名にはMVPが送られます。
お疲れ様でした。
準優勝、軍師懐良。
二人にはファイヴ謹製専用武装が送られます。
そして惜しくも優勝を逃したリーネ、小唄、椿の三名にはMVPが送られます。
お疲れ様でした。
