【カカシキ譚】鍛造鬼を破壊せよ
●
『ねえちょっと聞いてるの!? 今から鍛造機壊すから手伝ってって言ってんのよ! ハァ!? いいから来なさいよ、この前みたいに私の兵隊になってればいいのよ! まぁ……私のこと気にかけてくれたのは、うれしかったけど……ごにょごにょ』
明石組との騒動を片付けたことで一段落した一連の事件は、こんな電話によってもう一度だけ動き出した。
九条蓮華は争いのタネになるであろうカカシキ妖刀を残らず消し去るべく明石組に抵抗していたが、ファイヴの覚者たちに軽くなびく形で最後のカカシキ妖刀を託すことにした……のだが。
妖刀を作り出す装置である鍛造機の破壊に手こずっていた。
理由は大きく分けて二つある。
ひとつめ。
鍛造機を破壊しようとするとセキュリティが働き、妖刀を作る際に戦ったような『鍛造鬼』が数体現われるのだ。
これを撃破し、機械を破壊しなければならない。
なんでこれを一人でやろうとしたのかと思うところだが
「うるさいわね! わ、わすれてたのよ! わるい!?」
ふたつめ。
カカシキ妖刀があれば昨今の妖被害をもっと減らせるだろうということで現代の陰陽組織が引き渡しを要求してきたのだ。
破壊を行なう当日にも2~3人の覚者が尋ねてくるだろうし、破壊していることを察して強行突破をしかけるかもしれない。
なんでも蓮華の一族とつながりのある組織らしいが……。
「二十年くらい連絡とってなかったみたい。わ、私も父さんが死んでからなんとなくそのまま……べ、べつにいいでしょ! 今まで何も言ってこなかったんだから!」
ということで、目下人手不足である。
蓮華は(遠回しに)助っ人を頼み込んできたようだ……。
『ねえちょっと聞いてるの!? 今から鍛造機壊すから手伝ってって言ってんのよ! ハァ!? いいから来なさいよ、この前みたいに私の兵隊になってればいいのよ! まぁ……私のこと気にかけてくれたのは、うれしかったけど……ごにょごにょ』
明石組との騒動を片付けたことで一段落した一連の事件は、こんな電話によってもう一度だけ動き出した。
九条蓮華は争いのタネになるであろうカカシキ妖刀を残らず消し去るべく明石組に抵抗していたが、ファイヴの覚者たちに軽くなびく形で最後のカカシキ妖刀を託すことにした……のだが。
妖刀を作り出す装置である鍛造機の破壊に手こずっていた。
理由は大きく分けて二つある。
ひとつめ。
鍛造機を破壊しようとするとセキュリティが働き、妖刀を作る際に戦ったような『鍛造鬼』が数体現われるのだ。
これを撃破し、機械を破壊しなければならない。
なんでこれを一人でやろうとしたのかと思うところだが
「うるさいわね! わ、わすれてたのよ! わるい!?」
ふたつめ。
カカシキ妖刀があれば昨今の妖被害をもっと減らせるだろうということで現代の陰陽組織が引き渡しを要求してきたのだ。
破壊を行なう当日にも2~3人の覚者が尋ねてくるだろうし、破壊していることを察して強行突破をしかけるかもしれない。
なんでも蓮華の一族とつながりのある組織らしいが……。
「二十年くらい連絡とってなかったみたい。わ、私も父さんが死んでからなんとなくそのまま……べ、べつにいいでしょ! 今まで何も言ってこなかったんだから!」
ということで、目下人手不足である。
蓮華は(遠回しに)助っ人を頼み込んできたようだ……。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.鍛造機を破壊する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
恐れ入りますが、シーン数が多くなることを考慮して参加人数枠を6人としております。
●シチュエーションデータ
皆さんが蓮華と合流し、軽く準備を整えている所からスタートします。
一部は鍛造鬼との戦闘に、一部は陰陽組織との対応に出ることになります。
前者は戦闘必死。後者も七割方戦闘しそうです。
●エネミーデータ
・鍛造鬼
セキュリティ用に設定されたものらしく、刀を持った大柄な怪物として現われます。妖刀を作ったときのような個体特徴はありません。
刀で切りつけたり殴りつけたりと言った攻撃をします。
出現個体は5体。順当に考えて蓮華とあと4人は要ります。
・陰陽組織
どの程度の実力の人が来るのかはわかりませんが、それなりの覚者が来ています。当日にならないとわかりませんが、恐らく2~3人。
鍛造機の破壊は遠くから見ても丸わかりな現象が起こるので、なんの説明もしなければ全力で強行突破をはかり、破壊を阻止しにくるでしょう。
鍛造機を破壊してまでカカシキ妖刀を無くしたいのは、前にも述べたように明石組のような連中が現われるためです。
明石の偽鍛造機破壊に次ぐ、蓮華最後の願いでもあります。
ちなみに蓮華は前よりちょっとだけ戦闘力が落ちています。なんでかって、愛のあるべろちゅーをしたからだよ。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2016年09月27日
2016年09月27日
■メイン参加者 6人■

●鍛造機と鍛造鬼
九条蓮華の『工房』を訪れたのはこれで二回目だ。
といっても本当に二回目なのは『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)と『教授』新田・成(CL2000538)、そして『正義のヒーロー』天楼院・聖華(CL2000348)だけだ。
彼らは鍛造機の見せる試練を乗り越え、彼らなりの新しい力を手にしている。
硬く冷たいメタルケースを抱きしめ、渚は強く目を瞑った。
その様子を横から眺める緒形 逝(CL2000156)。彼はここへ来るのも九条蓮華と会うのも初めてだが、蓮華自体は『マトモそうな奴が来たわね』とだけ言って普通に受け入れていた。逝がマトモな部類にカウントされるのは非常にレアなケースである。
さておき。
「壊してしまうのが惜しい気持ちも分かりますが、これは九条君のものですし……当人が望む乗れあれば是非もありません」
「当然よ! アタシが壊せって言ったら黙って壊せばいいのよ! それと……来てくれてありがとごにょごにょ……」
「当然だろ、俺たち友達だぜ!」
「聞き流しなさいよ!」
金槌を全力で投擲してくる蓮華。聖華はそれをキャッチしてにっこり笑った。
「俺これでも、鍛造機を壊すことになって良かったって思ってるんだぜ。この装置にあるのはシステムとのやりとりだけだ。善悪の区別がないから、どんなやつにだって利用されちゃうんだ」
「それじゃあ始めよっか。蓮華さん、中衛に下がっててくれる?」
「いいわよ。せいぜい盾になって、身体に気をつけなさいよね!」
「九条君、前後の文脈がつながっていませんよ」
「うるさいわね!」
そんな様子を見て、逝はカタカタと笑っていた。
やりとりに笑ったのかこれから始まる戦いに笑ったのか、それは分からないが……。
「とにかく、戦いが始まったらもう止められないわよ。やられて失敗するか、やって成功するかのどちらかだから。その間に『アンリミテッドエイト』の陰陽師が飛び込んできたら……ちょっとヤバいわ。あいつら本当に大丈夫なのよね!?」
覚悟を決めたのかと思いきや、軽く涙目で振り返る蓮華。
渚と聖華は顔を見合わせて苦笑した。
●陰陽道八将神
蓮華の話すアンリミテッドエイトとは、彼女の一族とつながりがあるという陰陽道の組織である。
そんな彼らを門前で足止め、もしくは説得して帰らせる役目を担っているのが、『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)と『白焔凶刃』諏訪 刀嗣(CL2000002)である。
そんな彼らに手帳に納めたバッジを翳して見せる男がいた。
「我々は陰陽道を祖とする覚者非覚者合同組織、アンリミテッドエイト。妖の討伐やそれに伴う人々の保護を行なっている非営利団体だ。俺は太歳(タイサイ)と名乗ってる」
「へえ、沖縄語みたいな名前だね」
「本名じゃ無い。一昨年襲名したんだ」
太歳は落ち着いた雰囲気の四十歳男性だ。しかし顔つきには強い知性と意志の力があふれ、まるで犯人を地の果てまで追い詰める警官のような雰囲気を持っていた。
その左右には帯刀したクールな男性とバイタリティの高そうな女性がそれぞれ立っている。
「こっちは太陰(タイオン)、俺の妻だ。そして――」
「歳刑(サイギョウ)って呼んでよ。よろしく」
歳刑は軽薄な男のようだ。着ているスーツが高級そうで、被っている帽子もなんだか小洒落ている。
対して、プリンスはきわめてフレンドリーに握手を求めた。
「余はンゲ姫の婿になった者だよ」
ここでの会話が後の結果に大きく響くだろうとプリンスは予測していた。
相手は三人。控えめに見ても弱そうではない。
戦力が把握できない以上、全面対決になったときに打ち負ける可能性が少なからずあった。
もしその状態で鍛造鬼と戦う仲間たちの所に乱入されたら破壊計画が崩壊しかねない。
最悪全滅の後機材を奪われ、良くても機材の一部を持ち去られるだろう。
まずはカカシキ妖刀に彼らが思っていそうな有用性がないことを提示し、それを信用させなければならない。
そのためにも友好関係は――。
「よう正義のパシリども」
握手しようとしたプリンスと歳刑の間に割り込み、刀嗣が早速刀を抜いた。
素早く刀を抜いて数歩下がる歳刑。太歳と太陰も数歩下がって身構えた。
「ねえ……」
「うるせえな。適当に喋って時間稼ぐなんざ性に合わねえ。やりたいようにやらせて貰うぜ」
刀嗣は相手をにらんで言った。
「お前らアレが欲しいんだってな? やめとけ、人様のモン奪うとか略奪とかわんねえんだよ。それでも力ずくで奪うってんならいっそ清々しいぜ……どっちみち、ぶちのめすけどな」
「……」
プリンスは両手で顔を覆った。
フレンドリー作戦失敗である。
刀嗣のつま先から頭までを眺めてヘラヘラと笑う歳刑。
「ふーん」
「……あ?」
「いやあごめん、育ち悪そうだなって思ってさ。昔サウスブロンクスにいたことがあるんだけど、あんたみたいな奴ばっかりだったよ。家族紹介してよ、DVパパとアル中ママでしょ」
「……」
乱雑過ぎるほどの挑発に、刀嗣は刀を下ろして歩み寄った。額をがつんとぶつけ合う。
「やんのか?」
「やろうよ、あっちでさ。そこの人に手伝って貰っていいよ? それともパパ呼ぶ?」
「ハッ……!」
刀嗣は顎で示すと、歳刑と共に路地の向こうへと歩いて行った。
ついていこうとするプリンスに、太歳が回り込んで止める。
「おっと、うちの若いヤツが無礼を働いてすまない。ちゃんとお詫びをしたいんだが、中へ入れて貰えるかな」
「ンー……」
プリンスは苦笑の限りを浮かべ、送受心で仲間へ通信を送った。
●鍛造鬼
一方、工房。
蓮華たちの前に五体の鬼が姿を表わした。
全身が石と鋼でできた刀の鬼、鍛造鬼である。
装置の破壊を察して動き出したバケモノである。そのへんの一般人が触ったなら死ぬだけだが、こちらは百戦錬磨の猛者である。
「アハハハ、さっそく喰らい散らす!」
逝が誰よりも早く飛びかかり、鬼の顔面に刀を叩き付けた。
直撃をくらい、大きくバランスを崩す鬼。
その様子にただならぬ戦闘力を感じた鬼たちが身体から刀を引き抜き、逝への集中攻撃をしかけんとするが――。
「させるか!」
聖華が鬼の足下を駆け抜け、ブレーキをかけて反転。伴った暴風が白い光を纏い、鬼たちを一拍遅れて切りつけた。
「俺の気持ちがいっぱい詰まった妖刀・天楼院。並の切れ味じゃないぜ!」
猛者は一人じゃない。女子供や老人とて油断ならぬ。鬼たちはそれを察すると、それぞれバラバラの方向に散らばった。
回り込み、仕込み杖から刀を抜く成。
抜刀の衝撃が鬼を貫いて背後の壁をえぐった。
攻撃を放ちながら鬼たちの実力を測る。
「ほう、このメンバーできて良かった。栗落花君、回復を」
成が述べたその瞬間、鬼たちは一斉に刀をフルスイング。
逝、成、聖華をそれぞれ一斉に吹き飛ばし、背後の壁に叩き付けた。
あまりの衝撃に壁が崩壊するが、渚はその攻撃を予見していた。
「個性がなくても、これだけ強いんだね。油断しないよ!」
メタルケースを開き、無数の注射器を取り出す。そして渚は振り向きざま、成たちへと投射した。
武器を構えて数歩下がる蓮華。
「倒せそうなの?」
「大丈夫。ちゃんと倒してみせるよ」
「多少のダメージは追うでしょうが、それは承知の上……ところで」
腕に注射し、立ち上がる成。
「鍛造機を壊す前に調査させていただけませんかね。壊すにしても、伝承の形で残すことはできますよ」
「絶対ダメよ。アンタたちが優秀なのは知ってるんだから。うっかりアタシの知らない所で複製できちゃったら嫌よ」
「それもそうですね……」
本来なら刀やその所有者ごと消し去りたかったくらいなのだ。蓮華にとってはカカシキ妖刀の知識すら、本当は消してしまいたいのかもしれない。
「では、改めて」
成は刀を構え、目を強く見開いた。
●陰陽術
「妖刀持った雑魚より俺一人のほうが百倍つええ! テメェらが手こずる奴を代わりに片付けてやるよ! テメェらみてえな雑魚じゃ満足できねえが、身体で試してみるかぁ!?」
「へぇー、やってみせてよ。君みたいなのはアレ得意なんでしょ、バタフライナイフくるくる回すの。うまくできたら五百円あげるよ!」
「ぬかせ雑魚が!」
刀嗣は超高速で刀を振り込んだ。
道ばたのブロック塀を粉砕しながら振り抜き、更に回転して地面のアスファルトまでも粉砕する。
斬るというより砕くような力強い斬撃だ。
対して歳刑は刀の曲線を利用して刀嗣の斬撃を受け流し、流す動作そのもので癒やしの技を使って自らを治癒していた。
水行の前衛ヒーラーか。性格の悪さを覗けば渚のタイプに近いかもしれない。
力押しの刀嗣とは相性が悪いはずだが、高い治癒力でもっで刀嗣が攻めきれない状態を作っていた。
「守る一方かよ雑魚!」
「実はそうなんだよー。手加減して負けてくれる?」
「うるせえ!」
歳刑は白い歯を見せて笑いながら、刀嗣の攻撃を次々に受け流していった。
一方、プリンス。
太歳が放つ拳銃の弾を壁際ダッシュでなんとかかわしていた。
「ちょっと待って! 貴公たち、コレのために戦うってことになるよ!? みてこのおっぱい! おっぱい欲しいってコトでいいのかい!?」
プリンスはバトルロワイヤルの時に撮影したんじゃないかって感じのカッコイイ妖シリコンの写真を翳したが、一瞬で写真が打ち抜かれた。
「あ痛っ!」
胸に弾丸が撃ち込まれる。ただの弾ではない。弾頭が体内で複雑に破裂し、腕が千切れて飛ぶんじゃないかってくらいの痛みが走った。
というか軽く千切れかけていた。
銃をリロードする太歳。
「三つ言うことがある」
銃を向け。
「ひとつ、お前たちの言うことは信じられない。ふたつ、妖刀がどんなものかは我々が自分で確かめる。みっつ、邪魔するなら倒す」
「あちゃあ……」
プリンスは太歳と太陰に挟まれ、額に手を当てた。壁を背にしているからなんとか戦えるが、このままだと作戦そのものが失敗する。
『早く倒しちゃってよ。こっちは保ちそうにないよ!?』
●鬼殺し
成は老人である。
といっても現役の大学教授で、雰囲気からしてまだ初老といった具合だ。
そんな彼の強みは技術と知識。それゆえか彼の妖刀は書物という形で実体化した。
それも、先を読むことの出来ない書物だ。
まるでそれまでの全てを蓄積し、まだ見ぬ未来を切り開いていく成そのものといったような本である。
「思えば随分と甘えたことを申し上げたものです。生きる限り人は学び成長するのですから……その先にある力を前借りするなら、ただ生きるだけでは空手形だ」
後に聞いたところによれば、彼の『たね』は芽吹きの可能性を喪った種だったようだ。要約するところ一年先までの寿命を担保にして、その一年を普通に生きたのだから、当たり前の話だったのかもしれない。
「とはいえ」
鬼の斬撃が成を切り裂くが、知ったことでは無い。成は目を見開き、強烈な斬撃でもって鬼の四肢を切り落とした。
横から掴みかかる鬼の腕。しかしそれを、蓮華は鉈で切り落とす。
「アタシも、アンタみたいな先生がいたらよかったのかもごにょごにょ」
「今何か?」
「なんでもないわよ!」
「斬るぞー。うっかり巻き添えにしたら許しておくれ!」
逝は刀を思い切り振りかぶると、横一文字にフルスイング。
放たれた瘴気が咄嗟にかがんだ蓮華たちの頭上を越えて鬼たちを複雑に切り裂いていった。
のけぞる鬼に飛びつき、首をはねていく逝。
落ちた首を片手に乗せて、逝は首を傾げた。
首を傾げる蓮華。
「アンタの知り合いにしてはフツーの奴ね」
「えっ」
どういう感性してるの、と思った渚だが語らっている暇は無い。
鬼が彼女の首を掴み、高くつり上げたのだ。
歯を食いしばり、自らに注射を打ち込む渚。
呼吸が多少止まってもなんとかなる。
その間に……。
「ひっさつ!」
聖華の刀がまばゆく輝き。鬼の腕や胴体をざくざくと斬っていく。
しかし刃筋こそ通れど肉は切れず、血は流れれど傷は開かず、鬼はただその場に脱力し、背中を向けた聖華へ跪くように力尽きた。
咳き込みながら離れる渚。
鬼がゆっくりと歩み寄り、刀を振り上げてくる。
「ありがとう、鍛造鬼。世界が平和になるまで……この力を借りておくね」
メタルケースを叩き付けると、鬼はぐわりと歪んでかき消えた。
自らを維持する力を失ったのだろう。
もうその場に鍛造鬼が現われることは無かった。
「よ、っと……これで心置きなく壊せるわね」
立ち上がった蓮華――たちの脳内に、プリンスのエマージェンシーコールが届いた。
「来る!」
メタルケースを盾にして振り向く渚――が、一瞬にして吹き飛ばされた。
鍛造機に激突し、崩れるように膝を突く。
そこに現われたのは太陰……と、その後ろに続く太歳と歳刑だった。
「動くな! アンリミテッドエイトだ! お前たちを殺人未遂の容疑で……おっと、違った」
太歳は銃を構えたまま口をぱくぱくさせると、頷きながら蓮華たちを見回した。
「たいした腕前だ。今から戦ったら勝てる気がしない」
「けど、一人は確実に死ぬことになるよね。お互いそういうのはナシにしたくない?」
歳刑が刀を下ろしつつ鍛造機に視線をやった。
「アンタら……」
鉈を強く握り込む蓮華。
太陰が彼女を見て悲しそうに首を振った。
「ごめんなさい、蓮華ちゃん。今まで見つけてあげられなくて……。けどこの力は世の中のためになるの。怪我はさせたくないわ。退いて頂戴」
「誰が! アタシが壊すって決めたからには絶対壊すのよ! 死んでもやり遂げて見せ――」
身を乗り出した蓮華を、成が杖で殴りつけた。
気を失って倒れる蓮華。
「ちょっ、なにやってんだ!?」
「退きましょう」
成は逝にアイコンタクトを送った。頷き、聖華と渚を抱える逝。
一方で成は蓮華を抱え上げると、太歳たちに背を向けないように慎重に離れつつ、その場から撤退した。
●鍛造機の『核』
外で倒れていたプリンスと刀嗣を回収し、成たちはいつかのカフェへと逃げ込んだ。
「ごめん、蓮華さん。鍛造機の破壊が……」
「死ぬほど悔しいけど、しょうがないわ。今から行っても主要部分は持ち去られた後だろうし……」
手の中でフォークをへし折りながら、蓮華は強く歯噛みした。
明石組の悲劇を思い出す聖華たち。
一方で刀嗣は満身創痍でソファに寄りかかっていた。
「あの野郎、タイマンのフリして後ろから挟み撃ちにしやがった」
「順当な戦術だと思うよ? 3対2よりも2体1のが勝算あるし……。タイマンとは言ってなかったしね」
同じくボロボロになって蓮華に膝枕を要求し始めるプリンス。目つぶしをしかける蓮華。
「目が!?」
「おっさんはよく事情わからんけど……大丈夫じゃない? ねえ」
視線を受けて、成が持っていたマグカップをテーブルに置いた。
そして懐へ手を入れると、一本の刀をテーブルに放り出す。
それも柄だけの刀だ。『妖刀の種』を彷彿とさせるが……。
「それは……鍛造機の核じゃない! どうしたの!?」
飛びつく蓮華に、成がほほえみかけた。
「見るのは二度目ですからね。主要なパーツがありそうな場所にアタリをつけておりまして……」
「でかしたわ! これで完全なコピーは作れないはず!」
「これで、ある意味破壊したと言えますね」
「でも……」
聖華の呟きに、蓮華は押し黙った。
「分かってるわ。ちゃんと片付ける。できれば、今度も……力を貸して……」
蓮華の声は、弱々しく聞こえた。
次なる戦いの舞台は、もう決まっている。
九条蓮華の『工房』を訪れたのはこれで二回目だ。
といっても本当に二回目なのは『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)と『教授』新田・成(CL2000538)、そして『正義のヒーロー』天楼院・聖華(CL2000348)だけだ。
彼らは鍛造機の見せる試練を乗り越え、彼らなりの新しい力を手にしている。
硬く冷たいメタルケースを抱きしめ、渚は強く目を瞑った。
その様子を横から眺める緒形 逝(CL2000156)。彼はここへ来るのも九条蓮華と会うのも初めてだが、蓮華自体は『マトモそうな奴が来たわね』とだけ言って普通に受け入れていた。逝がマトモな部類にカウントされるのは非常にレアなケースである。
さておき。
「壊してしまうのが惜しい気持ちも分かりますが、これは九条君のものですし……当人が望む乗れあれば是非もありません」
「当然よ! アタシが壊せって言ったら黙って壊せばいいのよ! それと……来てくれてありがとごにょごにょ……」
「当然だろ、俺たち友達だぜ!」
「聞き流しなさいよ!」
金槌を全力で投擲してくる蓮華。聖華はそれをキャッチしてにっこり笑った。
「俺これでも、鍛造機を壊すことになって良かったって思ってるんだぜ。この装置にあるのはシステムとのやりとりだけだ。善悪の区別がないから、どんなやつにだって利用されちゃうんだ」
「それじゃあ始めよっか。蓮華さん、中衛に下がっててくれる?」
「いいわよ。せいぜい盾になって、身体に気をつけなさいよね!」
「九条君、前後の文脈がつながっていませんよ」
「うるさいわね!」
そんな様子を見て、逝はカタカタと笑っていた。
やりとりに笑ったのかこれから始まる戦いに笑ったのか、それは分からないが……。
「とにかく、戦いが始まったらもう止められないわよ。やられて失敗するか、やって成功するかのどちらかだから。その間に『アンリミテッドエイト』の陰陽師が飛び込んできたら……ちょっとヤバいわ。あいつら本当に大丈夫なのよね!?」
覚悟を決めたのかと思いきや、軽く涙目で振り返る蓮華。
渚と聖華は顔を見合わせて苦笑した。
●陰陽道八将神
蓮華の話すアンリミテッドエイトとは、彼女の一族とつながりがあるという陰陽道の組織である。
そんな彼らを門前で足止め、もしくは説得して帰らせる役目を担っているのが、『アイラブニポン』プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)と『白焔凶刃』諏訪 刀嗣(CL2000002)である。
そんな彼らに手帳に納めたバッジを翳して見せる男がいた。
「我々は陰陽道を祖とする覚者非覚者合同組織、アンリミテッドエイト。妖の討伐やそれに伴う人々の保護を行なっている非営利団体だ。俺は太歳(タイサイ)と名乗ってる」
「へえ、沖縄語みたいな名前だね」
「本名じゃ無い。一昨年襲名したんだ」
太歳は落ち着いた雰囲気の四十歳男性だ。しかし顔つきには強い知性と意志の力があふれ、まるで犯人を地の果てまで追い詰める警官のような雰囲気を持っていた。
その左右には帯刀したクールな男性とバイタリティの高そうな女性がそれぞれ立っている。
「こっちは太陰(タイオン)、俺の妻だ。そして――」
「歳刑(サイギョウ)って呼んでよ。よろしく」
歳刑は軽薄な男のようだ。着ているスーツが高級そうで、被っている帽子もなんだか小洒落ている。
対して、プリンスはきわめてフレンドリーに握手を求めた。
「余はンゲ姫の婿になった者だよ」
ここでの会話が後の結果に大きく響くだろうとプリンスは予測していた。
相手は三人。控えめに見ても弱そうではない。
戦力が把握できない以上、全面対決になったときに打ち負ける可能性が少なからずあった。
もしその状態で鍛造鬼と戦う仲間たちの所に乱入されたら破壊計画が崩壊しかねない。
最悪全滅の後機材を奪われ、良くても機材の一部を持ち去られるだろう。
まずはカカシキ妖刀に彼らが思っていそうな有用性がないことを提示し、それを信用させなければならない。
そのためにも友好関係は――。
「よう正義のパシリども」
握手しようとしたプリンスと歳刑の間に割り込み、刀嗣が早速刀を抜いた。
素早く刀を抜いて数歩下がる歳刑。太歳と太陰も数歩下がって身構えた。
「ねえ……」
「うるせえな。適当に喋って時間稼ぐなんざ性に合わねえ。やりたいようにやらせて貰うぜ」
刀嗣は相手をにらんで言った。
「お前らアレが欲しいんだってな? やめとけ、人様のモン奪うとか略奪とかわんねえんだよ。それでも力ずくで奪うってんならいっそ清々しいぜ……どっちみち、ぶちのめすけどな」
「……」
プリンスは両手で顔を覆った。
フレンドリー作戦失敗である。
刀嗣のつま先から頭までを眺めてヘラヘラと笑う歳刑。
「ふーん」
「……あ?」
「いやあごめん、育ち悪そうだなって思ってさ。昔サウスブロンクスにいたことがあるんだけど、あんたみたいな奴ばっかりだったよ。家族紹介してよ、DVパパとアル中ママでしょ」
「……」
乱雑過ぎるほどの挑発に、刀嗣は刀を下ろして歩み寄った。額をがつんとぶつけ合う。
「やんのか?」
「やろうよ、あっちでさ。そこの人に手伝って貰っていいよ? それともパパ呼ぶ?」
「ハッ……!」
刀嗣は顎で示すと、歳刑と共に路地の向こうへと歩いて行った。
ついていこうとするプリンスに、太歳が回り込んで止める。
「おっと、うちの若いヤツが無礼を働いてすまない。ちゃんとお詫びをしたいんだが、中へ入れて貰えるかな」
「ンー……」
プリンスは苦笑の限りを浮かべ、送受心で仲間へ通信を送った。
●鍛造鬼
一方、工房。
蓮華たちの前に五体の鬼が姿を表わした。
全身が石と鋼でできた刀の鬼、鍛造鬼である。
装置の破壊を察して動き出したバケモノである。そのへんの一般人が触ったなら死ぬだけだが、こちらは百戦錬磨の猛者である。
「アハハハ、さっそく喰らい散らす!」
逝が誰よりも早く飛びかかり、鬼の顔面に刀を叩き付けた。
直撃をくらい、大きくバランスを崩す鬼。
その様子にただならぬ戦闘力を感じた鬼たちが身体から刀を引き抜き、逝への集中攻撃をしかけんとするが――。
「させるか!」
聖華が鬼の足下を駆け抜け、ブレーキをかけて反転。伴った暴風が白い光を纏い、鬼たちを一拍遅れて切りつけた。
「俺の気持ちがいっぱい詰まった妖刀・天楼院。並の切れ味じゃないぜ!」
猛者は一人じゃない。女子供や老人とて油断ならぬ。鬼たちはそれを察すると、それぞれバラバラの方向に散らばった。
回り込み、仕込み杖から刀を抜く成。
抜刀の衝撃が鬼を貫いて背後の壁をえぐった。
攻撃を放ちながら鬼たちの実力を測る。
「ほう、このメンバーできて良かった。栗落花君、回復を」
成が述べたその瞬間、鬼たちは一斉に刀をフルスイング。
逝、成、聖華をそれぞれ一斉に吹き飛ばし、背後の壁に叩き付けた。
あまりの衝撃に壁が崩壊するが、渚はその攻撃を予見していた。
「個性がなくても、これだけ強いんだね。油断しないよ!」
メタルケースを開き、無数の注射器を取り出す。そして渚は振り向きざま、成たちへと投射した。
武器を構えて数歩下がる蓮華。
「倒せそうなの?」
「大丈夫。ちゃんと倒してみせるよ」
「多少のダメージは追うでしょうが、それは承知の上……ところで」
腕に注射し、立ち上がる成。
「鍛造機を壊す前に調査させていただけませんかね。壊すにしても、伝承の形で残すことはできますよ」
「絶対ダメよ。アンタたちが優秀なのは知ってるんだから。うっかりアタシの知らない所で複製できちゃったら嫌よ」
「それもそうですね……」
本来なら刀やその所有者ごと消し去りたかったくらいなのだ。蓮華にとってはカカシキ妖刀の知識すら、本当は消してしまいたいのかもしれない。
「では、改めて」
成は刀を構え、目を強く見開いた。
●陰陽術
「妖刀持った雑魚より俺一人のほうが百倍つええ! テメェらが手こずる奴を代わりに片付けてやるよ! テメェらみてえな雑魚じゃ満足できねえが、身体で試してみるかぁ!?」
「へぇー、やってみせてよ。君みたいなのはアレ得意なんでしょ、バタフライナイフくるくる回すの。うまくできたら五百円あげるよ!」
「ぬかせ雑魚が!」
刀嗣は超高速で刀を振り込んだ。
道ばたのブロック塀を粉砕しながら振り抜き、更に回転して地面のアスファルトまでも粉砕する。
斬るというより砕くような力強い斬撃だ。
対して歳刑は刀の曲線を利用して刀嗣の斬撃を受け流し、流す動作そのもので癒やしの技を使って自らを治癒していた。
水行の前衛ヒーラーか。性格の悪さを覗けば渚のタイプに近いかもしれない。
力押しの刀嗣とは相性が悪いはずだが、高い治癒力でもっで刀嗣が攻めきれない状態を作っていた。
「守る一方かよ雑魚!」
「実はそうなんだよー。手加減して負けてくれる?」
「うるせえ!」
歳刑は白い歯を見せて笑いながら、刀嗣の攻撃を次々に受け流していった。
一方、プリンス。
太歳が放つ拳銃の弾を壁際ダッシュでなんとかかわしていた。
「ちょっと待って! 貴公たち、コレのために戦うってことになるよ!? みてこのおっぱい! おっぱい欲しいってコトでいいのかい!?」
プリンスはバトルロワイヤルの時に撮影したんじゃないかって感じのカッコイイ妖シリコンの写真を翳したが、一瞬で写真が打ち抜かれた。
「あ痛っ!」
胸に弾丸が撃ち込まれる。ただの弾ではない。弾頭が体内で複雑に破裂し、腕が千切れて飛ぶんじゃないかってくらいの痛みが走った。
というか軽く千切れかけていた。
銃をリロードする太歳。
「三つ言うことがある」
銃を向け。
「ひとつ、お前たちの言うことは信じられない。ふたつ、妖刀がどんなものかは我々が自分で確かめる。みっつ、邪魔するなら倒す」
「あちゃあ……」
プリンスは太歳と太陰に挟まれ、額に手を当てた。壁を背にしているからなんとか戦えるが、このままだと作戦そのものが失敗する。
『早く倒しちゃってよ。こっちは保ちそうにないよ!?』
●鬼殺し
成は老人である。
といっても現役の大学教授で、雰囲気からしてまだ初老といった具合だ。
そんな彼の強みは技術と知識。それゆえか彼の妖刀は書物という形で実体化した。
それも、先を読むことの出来ない書物だ。
まるでそれまでの全てを蓄積し、まだ見ぬ未来を切り開いていく成そのものといったような本である。
「思えば随分と甘えたことを申し上げたものです。生きる限り人は学び成長するのですから……その先にある力を前借りするなら、ただ生きるだけでは空手形だ」
後に聞いたところによれば、彼の『たね』は芽吹きの可能性を喪った種だったようだ。要約するところ一年先までの寿命を担保にして、その一年を普通に生きたのだから、当たり前の話だったのかもしれない。
「とはいえ」
鬼の斬撃が成を切り裂くが、知ったことでは無い。成は目を見開き、強烈な斬撃でもって鬼の四肢を切り落とした。
横から掴みかかる鬼の腕。しかしそれを、蓮華は鉈で切り落とす。
「アタシも、アンタみたいな先生がいたらよかったのかもごにょごにょ」
「今何か?」
「なんでもないわよ!」
「斬るぞー。うっかり巻き添えにしたら許しておくれ!」
逝は刀を思い切り振りかぶると、横一文字にフルスイング。
放たれた瘴気が咄嗟にかがんだ蓮華たちの頭上を越えて鬼たちを複雑に切り裂いていった。
のけぞる鬼に飛びつき、首をはねていく逝。
落ちた首を片手に乗せて、逝は首を傾げた。
首を傾げる蓮華。
「アンタの知り合いにしてはフツーの奴ね」
「えっ」
どういう感性してるの、と思った渚だが語らっている暇は無い。
鬼が彼女の首を掴み、高くつり上げたのだ。
歯を食いしばり、自らに注射を打ち込む渚。
呼吸が多少止まってもなんとかなる。
その間に……。
「ひっさつ!」
聖華の刀がまばゆく輝き。鬼の腕や胴体をざくざくと斬っていく。
しかし刃筋こそ通れど肉は切れず、血は流れれど傷は開かず、鬼はただその場に脱力し、背中を向けた聖華へ跪くように力尽きた。
咳き込みながら離れる渚。
鬼がゆっくりと歩み寄り、刀を振り上げてくる。
「ありがとう、鍛造鬼。世界が平和になるまで……この力を借りておくね」
メタルケースを叩き付けると、鬼はぐわりと歪んでかき消えた。
自らを維持する力を失ったのだろう。
もうその場に鍛造鬼が現われることは無かった。
「よ、っと……これで心置きなく壊せるわね」
立ち上がった蓮華――たちの脳内に、プリンスのエマージェンシーコールが届いた。
「来る!」
メタルケースを盾にして振り向く渚――が、一瞬にして吹き飛ばされた。
鍛造機に激突し、崩れるように膝を突く。
そこに現われたのは太陰……と、その後ろに続く太歳と歳刑だった。
「動くな! アンリミテッドエイトだ! お前たちを殺人未遂の容疑で……おっと、違った」
太歳は銃を構えたまま口をぱくぱくさせると、頷きながら蓮華たちを見回した。
「たいした腕前だ。今から戦ったら勝てる気がしない」
「けど、一人は確実に死ぬことになるよね。お互いそういうのはナシにしたくない?」
歳刑が刀を下ろしつつ鍛造機に視線をやった。
「アンタら……」
鉈を強く握り込む蓮華。
太陰が彼女を見て悲しそうに首を振った。
「ごめんなさい、蓮華ちゃん。今まで見つけてあげられなくて……。けどこの力は世の中のためになるの。怪我はさせたくないわ。退いて頂戴」
「誰が! アタシが壊すって決めたからには絶対壊すのよ! 死んでもやり遂げて見せ――」
身を乗り出した蓮華を、成が杖で殴りつけた。
気を失って倒れる蓮華。
「ちょっ、なにやってんだ!?」
「退きましょう」
成は逝にアイコンタクトを送った。頷き、聖華と渚を抱える逝。
一方で成は蓮華を抱え上げると、太歳たちに背を向けないように慎重に離れつつ、その場から撤退した。
●鍛造機の『核』
外で倒れていたプリンスと刀嗣を回収し、成たちはいつかのカフェへと逃げ込んだ。
「ごめん、蓮華さん。鍛造機の破壊が……」
「死ぬほど悔しいけど、しょうがないわ。今から行っても主要部分は持ち去られた後だろうし……」
手の中でフォークをへし折りながら、蓮華は強く歯噛みした。
明石組の悲劇を思い出す聖華たち。
一方で刀嗣は満身創痍でソファに寄りかかっていた。
「あの野郎、タイマンのフリして後ろから挟み撃ちにしやがった」
「順当な戦術だと思うよ? 3対2よりも2体1のが勝算あるし……。タイマンとは言ってなかったしね」
同じくボロボロになって蓮華に膝枕を要求し始めるプリンス。目つぶしをしかける蓮華。
「目が!?」
「おっさんはよく事情わからんけど……大丈夫じゃない? ねえ」
視線を受けて、成が持っていたマグカップをテーブルに置いた。
そして懐へ手を入れると、一本の刀をテーブルに放り出す。
それも柄だけの刀だ。『妖刀の種』を彷彿とさせるが……。
「それは……鍛造機の核じゃない! どうしたの!?」
飛びつく蓮華に、成がほほえみかけた。
「見るのは二度目ですからね。主要なパーツがありそうな場所にアタリをつけておりまして……」
「でかしたわ! これで完全なコピーは作れないはず!」
「これで、ある意味破壊したと言えますね」
「でも……」
聖華の呟きに、蓮華は押し黙った。
「分かってるわ。ちゃんと片付ける。できれば、今度も……力を貸して……」
蓮華の声は、弱々しく聞こえた。
次なる戦いの舞台は、もう決まっている。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
